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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222521(P2017-222521A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】Pd−Bナノ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/04 20060101AFI20171124BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20171124BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20171124BHJP
【FI】
   C01B35/04 A
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-116913(P2016-116913)
(22)【出願日】2016年6月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「元素間融合を基軸とする物質開発と応用展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 佳吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩和
(57)【要約】      (修正有)
【課題】合金状態図で存在しない、六方最密充填(hcp)構造に配列した構造を持つ新規なPd-Bナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子。パラジウム(Pd)を5〜95モル%、ホウ素(B)を95〜5モル%含む、六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子。不活性ガス条件下でパラジウム(Pd)ナノキューブをボラン(BH3)と反応させることを特徴とするPd-Bナノ粒子の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子。
【請求項2】
パラジウム(Pd)を5〜95モル%、ホウ素(B)を95〜5モル%含む、請求項1に記載のPd-Bナノ粒子。
【請求項3】
パラジウム(Pd)を65〜85モル%、ホウ素(B)を35〜15モル%含む、請求項2に記載のPd-Bナノ粒子。
【請求項4】
不活性ガス条件下でパラジウム(Pd)ナノキューブをボラン(BH3)と反応させることを特徴とする、六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
反応温度が45℃〜80℃、反応時間が1〜3週間であることを特徴とする請求項4記載のPd-Bナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
反応温度が45℃〜65℃、反応時間が2〜3週間であることを特徴とする請求項4記載のPd-Bナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pd-Bナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム(Pd)は装身具や筆記具、医療材料、あるいは排ガス処理用触媒などに多く用いられている貴金属の一つである。近年ではより高性能な有機反応触媒や電極触媒の技術が求められ、遷移金属元素の組み合わせによる材料開発が盛んに行われている。
【0003】
有機合成の分野においてパラジウム(Pd)は、炭素-炭素間の二重・三重結合を還元する水素添加反応などに好適な触媒として多用される金属であるが、このとき炭素に担持させたPdナノ粒子にホウ素(B)をドーピングすることで、水素添加反応のみならずギ酸の電気酸化など複数の反応において、その触媒能が向上することが知られている。
【0004】
すなわち金属の構造や組成比はその性質を大きく変える因子であり、その構造や組成比の制御は材料の特性向上のため非常に重要であるが、Pd-Bの合金状態図からその合金構造や組成比は限られていた。
【0005】
また、既存のPd-B合金については担持体を用いる手法がほとんどであった(特許文献1〜3、非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-184450
【特許文献2】US 2005-0230009 A1
【特許文献3】US 2013-0085088 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】『ホウ化パラジウム触媒によるシンナムアルデヒドの選択的水素化反応』 日本化学雑誌(公開日2011.10.30)大阪大学
【非特許文献2】『Interstitial modification of palladium nanoparticles with boron atoms as a green catalyst for selective hydrogenation』 Nature Communications, 5, 5787-5793, 2014
【非特許文献3】『Boron-Doped Palladium Nanoparticles on Carbon Black as a Superior Catalyst for Formic Acid Electro-oxidation』 Journal of Physical Chemistry C, 113, 8366-8372, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規なPd-Bナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明者らは、合金状態図で存在しない、六方最密充填(hcp)構造に配列した構造を持つPd-Bを作製することに成功した。hcp構造を有するPd-B合金に関する先行文献はなく新規な物質である。
【0010】
本発明は、以下のPd-Bナノ粒子及びその製造方法を提供するものである。
項1. 六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子。
項2. パラジウム(Pd)を5〜95モル%、ホウ素(B)を95〜5モル%含む、項1に記載のPd-Bナノ粒子。
項3. パラジウム(Pd)を65〜85モル%、ホウ素(B)を35〜15モル%含む、項2に記載のPd-Bナノ粒子。
項4. 不活性ガス条件下でパラジウム(Pd)ナノキューブをボラン(BH3)と反応させることを特徴とする、六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子の製造方法。
項5. 反応温度が45℃〜80℃、反応時間が1〜3週間であることを特徴とする項4記載のPd-Bナノ粒子の製造方法。
項6. 反応温度が45℃〜65℃、反応時間が2〜3週間であることを特徴とする項4記載のPd-Bナノ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では合金状態図で存在しない、六方最密充填(hcp)構造に配列した構造を持つPd-B(以下hcp-Pd-Bという)を作製することに成功した。
【0012】
Bドーピング手法は他の金属ナノ結晶においても適応可能であり、また担持体を用いていないため応用範囲は広い。
【0013】
また、Pdナノ結晶の粒径を変えることで、hcp-Pd-Bの粒径を任意にコントロールすることができる。
【0014】
さらに、温度と時間によってPd-Bの構造を制御することが可能である。
【0015】
hcp-Pd-Bの構造はX線回折測定およびTEM観察、EELSマッピングによって明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ホウ素−パラジウム系の相図
図2】参考例1で合成したPd ナノキューブの(a)粉末X 線回折パターン、(b)粒径分布、(c)TEM 画像
図3】本発明のPd-Bナノ粒子のPXRDパターン
図4】本発明のPd-Bナノ粒子のTEM-画像
図5】本発明のPd-Bナノ粒子のSTEM-EELSマッピング
図6】実施例2のPXRDパターンとTEM画像
図7】実施例3のPXRDパターンとTEM画像
図8】比較例1のPXRDパターンとTEM画像
図9】実施例4のPXRDパターンとTEM画像
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、パラジウム(Pd)とホウ素(B)を含むナノ粒子であり、六方最密充填(hcp)構造を含む。本発明のPd-Bナノ粒子は、ナノ粒子の一部がhcp構造を有していればよく、粒子全体がhcp構造を有していてもよい。
【0018】
Pd-Bナノ粒子のhcp構造は、粉末X線回折(PXRD)測定により確認することができる。本発明の好ましいPd-Bナノ粒子は、PXRD測定によりfccのピークは観察されず、hcpのピークのみ観察される。
【0019】
Pd-Bナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜1000 nm程度、より好ましくは1〜100 nm程度、さらに好ましくは1〜20nm程度である。平均粒子径は、例えば高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)により測定できる。
【0020】
Pd-Bナノ粒子の両者のモル比率は、
Pd: 5〜95モル%程度、好ましくは65〜85モル%程度
B: 95〜5モル%程度、好ましくは35〜15モル%程度
である。
【0021】
ホウ素−パラジウム系の相図を図1に示す。この系にはいくつかの定比化合物が存在することが知られている。また、パラジウムの多い領域にはα相とされる固溶域も確認されるが、α相は312℃以下ではわずかしか存在しない。本発明では100℃以下での合成を行っており、この温度範囲においてホウ素とパラジウムは固溶しない系と考えてよい。
【0022】
パラジウム源としては、Pdナノ粒子が挙げられ、Pdナノキューブがより好ましい。
【0023】
ホウ素源としては、ボラン(BH3)又はジボラン(B2H6)が挙げられる。
【0024】
本発明のPd-Bナノ粒子は、不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下でパラジウム源とホウ素源を溶媒中で反応させることにより製造することができる。反応時間は、1時間〜3週間程度、反応温度は、室温から80℃程度である。反応温度を上げると反応時間は短くなる。溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。ホウ素源は、Pdに対し等モル〜過剰量使用する。例えばBH3/B2H6のような気体のホウ素源を用いて長時間反応させる場合、BH3/B2H6は反応系から徐々に分解又は放出により減少するので、反応開始時に過剰量使用するか、反応の途中でBH3/B2H6のような気体のホウ素源を追加することができる。反応時間を短くするとホウ素の含量が少なくなり、反応時間を長くすると、ホウ素の含量が徐々に増加し、最終的に飽和量に到達する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
1.測定機器
試料の結晶構造に関する知見を得るための粉末X線回折(PXRD)にはBruker AXS社製のD8 ADVANCEを用いた。用いたX線はCu Kα1線(λ = 1.5406 Å)であり、動作電圧・電流はそれぞれ35 kV、40 mAであった。また、試料の粒径や形状の観測にはHITACHI社製透過型電子顕微鏡(TEM)HT7700を用い、試料を分散させたエタノール溶液を応研商事社製の銅製支持膜ELS-C10STEMCu100P上に滴下した上で乾燥させた測定試料に加速電圧100 kVで電子線を照射し観測を行った。より精密な測定のため、試料の電子線エネルギー損失分光法(EELS)による元素マッピングを行った。この際に使用したのはシリコン製支持膜と日本電子(JEOL)社製の電子顕微鏡JEM-ARM200Fで、加速電圧は120 kVであった。試料の電子状態分析のため、島津製作所製のESCA-3400を用いたX線光電子分光を測定した。測定にはプローブとしてMg Kα1線(E = 1253.6 eV)を使用した。
【0026】
参考例1:Pdナノキューブの合成と測定
Byungkwon Limらが報告した手法[8]をもとにPdナノキューブを合成した。前駆体としてテトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム (Na2PdCl4) を用い、56.4 mg (0.191 mmol) をイオン交換水3 mLに溶解した(溶液A)。またポリ-N-ビニル2-ピロリドン (PVP)21.2 mg (単量体換算で0.191 mmol) 、L-アスコルビン酸60.1 mg (0.341 mmol) 、及び臭化カリウム301 mg (2.53 mmol) をイオン交換水8 mLに溶解させた水溶液を調製した(溶液B)。
【0027】
オイルバス中で80 ℃に加熱した溶液Bに溶液Aをゆっくりと滴下し、マグネティックスターラーで撹拌しながら3時間反応させた。反応後の溶液は褐色から黒色に変化していた。生成物を固体として得るため水溶液を約5 mLずつ2本の50 mL遠沈管に分取し、それぞれにジエチルエーテル7.5 mLとアセトン17.5 mLを加えて振盪し遠心分離 (7000 rpm, 2分間) を行った。上澄みを除き、黒色の沈殿物に脱イオン水5 mLを加え、ジエチルエーテル、アセトンを同量加えて再び遠心分離を行った。沈殿物にアセトン15 mLを加えて遠心分離を行い真空乾燥させたのち、瑪瑙乳鉢と乳棒で粉末状に粉砕した。
【0028】
得られた黒色の固体の同定のため粉末X線回折(PXRD)とTEMによる観測を行った。Rietveld解析の結果を併せて図2に示す。
【0029】
図2(a)の結果から、平均粒径9.2nmのPdナノキューブが得られたことが確認された。
【0030】
実施例1:ホウ素ドープ型Pdナノ粒子の合成
100 mL三口フラスコに参考例1で合成したPdナノキューブ33 mg (Pd含有量は約0.16 mmol)を撹拌子とともに入れ、3本の口をシリコンオイルバブラーに接続したグリースレスバルブ、セプタム、三方コックで封じた。三方コックの残る2本の管を真空ラインと窒素ラインにそれぞれ繋いだ。
【0031】
フラスコ内やナノ粒子内に残存した空気や水分がボラン(BH3)-THF錯体を損なうことを防ぐため、グリースレスバルブを開放して、系内に窒素ガスを数分間流した。フラスコ内を窒素ガスで満たしたのち、グリースレスバルブを閉じ、オイルバスの温度を80 ℃に設定して撹拌しつつ真空に引いた。
【0032】
20時間の真空引きののち、フラスコに窒素ラインを接続し、グリースレスバルブを開放してフラスコ内部に窒素ガスを流した。バスの温度を45℃に設定し、系内が45℃に戻るまで窒素ガスフロー下で撹拌を続けながら数時間放置し、三方コックとグリースレスバルブを閉じてフラスコを孤立系にし、セプタムからシリンジを通して超脱水THF 2 mLを滴下した。その後、ボラン-THF錯体約4 mL (3.9 mmol, 25当量)を加え、45℃で3週間撹拌した。得られた生成物に対する粉末X線回折(PXRD)パターン、TEM画像、STEM-EELSマッチングの結果を図3〜5に示す。六方最密充填(hcp)構造のPd-Bナノ粒子が得られたことが明らかになった。
【0033】
実施例2:ホウ素ドープ型Pdナノ粒子の合成(反応温度、時間の検討)
三方コックと三口フラスコの間にジムロート冷却器を取り付け、還流条件下での反応を目指した。実施例1に記載した20時間の真空引きまでの前処理後、窒素ラインを接続し、グリースレスバルブを開放してフラスコ内部に窒素ガスを流した。オイルバスを64℃に設定し、系内が64℃になるまで窒素ガスフロー下で撹拌を続けながら数時間放置し、グリースレスバルブを閉じ、三方コック側は先端に逆流を防ぐための逆止弁を取り付けて開放端とした。セプタムからシリンジを通して超脱水THF 2 mLを滴下した。その後、ボラン-THF錯体約4 mL (3.9 mmol, 25当量)を加え、64℃で2週間撹拌した。
【0034】
得られた生成物に対するPXRDパターンとTEM画像の結果を図6に示す。PXRDパターンの結果、hcpモデルにより良い精度で再現されることがわかった。
【0035】
実施例3:ホウ素ドープ型Pdナノ粒子の合成(反応温度、時間の検討)
実施例1に記載した20時間の真空引きまでの前処理後、フラスコに窒素ラインを接続し、グリースレスバルブを開放してフラスコ内部に窒素ガスを流した。オイルバスを35℃に設定し、系内が35℃になるまで窒素ガスフロー下で撹拌を続けながら数時間放置し、三方コックとグリースレスバルブを閉じてフラスコを孤立系にし、セプタムからシリンジを通して超脱水THF 2 mLを滴下した。その後、ボラン-THF錯体約4 mL (3.9 mmol, 25当量)を加え、35℃で1週間撹拌した。
【0036】
得られた生成物に対するPXRDパターンとTEM画像の結果を図7に示す。PXRDパターンの結果、生成物には未反応のPdが残存しているものの、fcc相とhcp相の共存状態にあることが明らかとなった。
【0037】
比較例1:ホウ素ドープ型Pdナノ粒子の合成(反応温度、時間の検討)
実施例1で80℃で20時間の真空引きの後、オイルバスの温度を100℃として1時間放置する操作を加え、これらを前処理とした。一連の前処理ののちフラスコに窒素ラインを接続し、グリースレスバルブを開放してフラスコ内部に窒素ガスを流した。このままオイルバスから出し、系内が室温に戻るまで窒素ガスフロー下で撹拌を続けながら数時間放置し、三方コックとグリースレスバルブを閉じてフラスコを孤立系にし、セプタムからシリンジを通して超脱水THF 2 mLを滴下した。その後、ボラン-THF錯体約4 mL (3.9 mmol, 25当量)を加え、室温で46時間撹拌した。
【0038】
得られた生成物に対するPXRDパターンとTEM画像の結果を図8に示す。PXRDパターンの結果、未反応のPd相に加えてfcc相に酷似したPd5B相が出現していることが明らかとなった。
【0039】
実施例4:ホウ素ドープ型Pdナノ粒子の合成(反応温度、時間の検討)
三方コックと三口フラスコの間にジムロート冷却器を取り付け、還流条件下での反応を目指した。
実施例1に記載した20時間の真空引きまでの前処理後、窒素ラインを接続し、グリースレスバルブを開放してフラスコ内部に窒素ガスを流した。オイルバスを80℃に設定し、系内が80℃になるまで窒素ガスフロー下で撹拌を続けながら数時間放置し、グリースレスバルブを閉じ、三方コック側は先端に逆流を防ぐための逆止弁を取り付けて開放端とした。セプタムからシリンジを通してボラン-THF錯体約4 mL (3.9 mmol, 25当量)を加え、80℃で1週間撹拌した。
【0040】
得られた生成物に対するPXRDパターンとTEM画像の結果を図9に示す。PXRDパターンの結果、hcpモデルにより再現されることがわかった。
【0041】
上記の実施例の結果から、六方最密充填(hcp)構造を含むPd-Bナノ粒子を得るには、反応温度は45℃〜80℃、時間は1〜3週間が好ましいことが判った。より好ましくは、反応温度は45℃〜65℃、時間は2〜3週間が適することも判った。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9