特開2017-222544(P2017-222544A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-222544セラミック基複合材料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222544(P2017-222544A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】セラミック基複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20171124BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20171124BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   C04B35/80 A
   B32B18/00 B
   C04B35/80 G
   C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-119899(P2016-119899)
(22)【出願日】2016年6月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊
【テーマコード(参考)】
4F100
4G019
【Fターム(参考)】
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA19C
4F100AA20A
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100DG01A
4F100DG11A
4F100DJ00A
4F100EH66A
4F100GB31
4F100GB72
4F100JJ03
4F100JK01
4F100JK10
4G019FA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い強度と、高い耐熱温度を備えたセラミック基複合材料およびその製造方法の提供。
【解決手段】ムライト繊維からなる骨材と、ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスと、を有し、モル基準の割合で、Alが60〜67%及びSiOが40〜33%であるムライト繊維と、Alが60〜67%及びSiOが40〜33%であるムライトのマトリックスとからなるセラミック基複合材料。ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成する成形工程S1と、骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程S2と、第1焼成工程の後に前記骨材を構成するムライト繊維の繊維間にムライトからなるマトリックスを充填するマトリックス形成工程S3と、を含むセラミック基複合材料の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムライト繊維からなる骨材と、前記ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスと、を含むセラミック基複合材料。
【請求項2】
前記骨材は、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライト繊維からなる請求項1に記載のセラミック基複合材料。
【請求項3】
前記マトリックスは、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライトからなる請求項2に記載のセラミック基複合材料。
【請求項4】
前記マトリックスは、多孔体である請求項1から3のいずれか1項に記載のセラミック基複合材料。
【請求項5】
前記セラミック基複合材料は、さらに表面を覆うアルミナ層を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミック基複合材料。
【請求項6】
前記アルミナ層は、Alのモル基準での割合が95〜100%である請求項5に記載のセラミック基複合材料。
【請求項7】
前記アルミナ層は、Alのみからなる請求項6に記載のセラミック基複合材料。
【請求項8】
ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成する成形工程と、
前記骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程と、
前記第1焼成工程の後に前記骨材を構成するムライト繊維の繊維間にムライトからなるマトリックスを充填するマトリックス形成工程と、
を含むセラミック基複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記マトリックス形成工程は、
ムライト組成となる前駆体を骨材に含浸する含浸工程と、
前記含浸工程の次に前記前駆体を焼成する第2焼成工程と、
を含む請求項8に記載のセラミック基複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記マトリックス形成工程は、Al、Si、Oを含有する原料ガスを用いたCVD法による請求項8に記載のセラミック基複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記マトリックス形成工程に続いて、前記セラミック基複合材料の表面を覆うアルミナ層を形成するアルミナ層形成工程を有する請求項8から10のいずれか1項に記載のセラミック基複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック繊維を骨材に用いその隙間にセラミックマトリックスを充填したセラミック基複合材料は、高い耐熱性と破壊靭性を有しているので、耐熱合金に変わる素材として期待されている。
【0003】
特許文献1には、いわゆるボディアーマーと言われる防弾チョッキ等の素材、船舶や航空機の被弾に対する耐衝撃用材料として有用な、軽量かつ耐衝撃性及び破壊靭性に優れた低コストの積層型セラミックス基セラミックテキスタイル複合材料の製造方法として、織布、編み構造布、組み紐構造布の少なくとも何れかからなり、かつ所定寸法を有するセラミックテキスタイルを用意し、焼結温度がセラミックス長繊維の熱劣化温度以下とならしめるための焼結助剤としての役目を果たすガラス組成の助剤を配合したマトリックス充填用セラミックスのスラリーを前記セラミックテキスタイルに含浸させることでプリプレグ中間体を作製し、前記プリプレグ中間体を真空脱泡装置内に入れて当該真空脱泡装置内で真空度及び脱泡時間を調整することにより前記プリプレグ中間体に内包する気泡量を制御した後、これを乾燥させることでセラミックス長繊維補強の生セラミックスのプリプレグを作製し、前記プリプレグを複数枚任意方向に積層・加圧して焼結することで前記複数枚のプリプレグを複合一体化させる製造方法が記載されている。
【0004】
そして、特許文献1には、上述の製造方法により軽量かつ耐衝撃性及び破壊靭性に優れた低コストの積層型セラミックス基セラミックテキスタイル複合材料が提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−97654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1では、焼結助剤としての役目を果たすガラス組成の助剤を配合したマトリックス充填用セラミックスのスラリーを使用しているため、もともとマトリックス充填用のセラミックが持っている耐熱温度を低下させ、充分な耐熱温度を発揮することができない。
【0007】
前記課題を鑑み、本発明では、高い強度と、高い耐熱温度を備えたセラミック基複合材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためのセラミック基複合材料は、ムライト繊維からなる骨材と、前記ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスとを含む。
【0009】
ムライト繊維は、アルミナとシリカとを原材料とする繊維の中で、高い耐熱性と強度とを備えているので高強度のセラミック基複合材料を得ることができる。また、ムライト繊維間に充填されたマトリックスは、同材質のムライトからなるので、セラミック繊維の側に原子の拡散が起きてもムライト繊維の表面の組成に影響を与えにくく、高い強度を長く維持することができる。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0010】
前記骨材は、Alのモル基準での割合が60〜67%であり、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライト繊維からなる。
【0011】
Al/SiOのモル組成比において60/40〜67/33の範囲においては、ムライトの固溶範囲内にあり、繰り返し使用してもコランダムあるいはクリストバライトなどが相分離して析出しない。このため相分離による粒界の発生がなく、ムライト繊維に破壊の起点ができにくい。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0012】
前記マトリックスは、Alのモル基準での割合が60〜67%であり、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライトからなる。
【0013】
Al/SiOのモル組成比において60/40〜67/33の範囲においては、ムライトの固溶範囲内にある。このため、骨材が、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライト繊維からなる場合、高温で使用してマトリックスから骨材側へ元素拡散が起きてもセラミック基複合材料の強度を担うムライト繊維の元素の組成比に影響を与えず、ムライト繊維の表面に、コランダムあるいはクリストバライトが析出することを防止でき、繊維の強度低下を防止することができる。
【0014】
前記マトリックスは、多孔体である。これにより、前記マトリックスが多孔体であると、断熱効果が高く、内部のムライト繊維が高温に曝されることを防止することができる。
【0015】
前記セラミック基複合材料は、さらに表面を覆うアルミナ層を有する。これにより、アルミナは、ムライトに比べて高い耐熱性を有しているので、ムライト繊維からなる骨材と、前記ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスと、からなるセラミック基複合材料の表面を覆うことにより、高い耐熱性を確保することができる。
【0016】
前記アルミナ層は、Alのモル基準での割合が95〜100%である。
【0017】
アルミナ層のAlのモル基準での割合が95〜100%であることにより、表面の耐熱性が高くなり、安定して高い強度のセラミック基複合材料を得ることができる。また、多孔質のマトリックスと組み合わせることにより、セラミック基複合材料の表面が高温に曝されても、内部のムライト繊維に熱が伝達されにくくすることができ、より高い耐熱性を有するセラミック基複合材料を提供することができる。
【0018】
前記アルミナ層は、Alのみからなる。これにより、アルミナ層がAlのみからなる場合、より高い融点が確保されるため、さらに高い耐熱性を確保することができる。
【0019】
また、前記課題を解決するための本発明のセラミック基複合材料の製造方法は、ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成する成形工程と、前記骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程と、前記第1焼成工程の後に前記骨材を構成するムライト繊維の繊維間にムライトからなるマトリックスを充填するマトリックス形成工程と、を含む。
【0020】
本発明のセラミック基複合材料の製造方法によれば、ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成しているので、骨材の形成段階ではムライト繊維に柔軟性があり折れにくく、容易に目的の形状を得ることができる。また、目的の形状を得た後、前記骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程を有しているのでムライト繊維の結晶化が進行し強度が高くなる。これと同時にムライト繊維は寸法収縮が生じ、弾性率が高くなり折れやすくなるが、既に目的の形状が得られ、後の工程でムライト繊維が大きく曲げられることはないので、ムライト繊維の折損を最小限にとどめることができる。さらに、第1焼成工程の後にムライトからなるマトリックスを充填しているので、ムライト繊維自体の寸法収縮の影響を小さくすることができ、形状精度の高いセラミック基複合材料を得ることができる。
【0021】
前記マトリックス形成工程は、ムライト組成となる前駆体を骨材に含浸する含浸工程と、前記含浸工程の次に前記前駆体を焼成する第2焼成工程と、を含む。
【0022】
前記マトリックス形成工程は、ムライト組成となる前駆体を骨材に含浸する含浸工程と、前記含浸工程の次に前記前駆体を焼成する焼成工程と、からなるので、マトリックスに耐熱温度を低下させる焼結助剤が含まれず、高い耐熱温度のセラミック基複合材料を得ることができる。前駆体とは、アルミニウムアルコキシド、シリコンアルコキシド、アルミナゾル、シリカゾルなどが挙げられる。
【0023】
前記マトリックス形成工程は、マトリックス形成工程がAl、Si、Oを含有する原料ガスを用いたCVD法による。
【0024】
マトリックス形成工程がAl、Si、Oを含有する原料ガスを用いたCVD法によって行われているので、マトリックスに耐熱温度を低下させる焼結助剤が含むことなくマトリックスを形成することができる。このため高い耐熱温度のセラミック基複合材料を得ることができる。Al、Si、Oを含有する原料ガスとは、例えばアルミニウムアルコキシド、シリコンアルコキシドなどが挙げられる。原料ガスとは、常温で気体である必要は無く、CVD炉に導入する段階で気体であればよい。CVD法で使用するので分子量の小さな原料ガスを使用し、気化させて用いられる。
【0025】
前記マトリックス形成工程に続いて、前記セラミック基複合材料の表面を覆うアルミナ層を形成するアルミナ層形成工程を有する。
【0026】
アルミナの融点は、ムライトの融点(1850℃)よりも高い2072℃であり耐熱性が高い。ムライトよりも耐熱性がアルミナ層を、前駆体法あるいはCVD法で形成するので、ムライト繊維、マトリックスを劣化させること無くアルミナ層を形成することができる。セラミック基複合材料の表面を覆うアルミナ層を形成すると、セラミック基複合材料の耐熱性を高めることができる。
前駆体法では、ムライトの融点(1850℃)より低い温度で前駆体を分解させアルミナ層を形成することができるのでムライト繊維およびムライトからなるマトリックスにダメージを与えることなくアルミナ層を形成することができる。
【0027】
CVD法では、ムライトの融点(1850℃)より低い温度で原料ガスを分解させアルミナ層を形成することができるのでムライト繊維およびムライトからなるマトリックスにダメージを与えることなくアルミナ層を形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
ムライト繊維は、アルミナとシリカとを原材料とする繊維の中で、高い耐熱性と強度とを備えているので高強度のセラミック基複合材料を得ることができる。また、ムライト繊維間に充填されたマトリックスは、同材質のムライトからなるので、セラミック繊維の側に原子の拡散が起きてもムライト繊維の表面の組成に影響を与えにくく、高い強度を長く維持することができる。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】SiOと、Alの相平衡状態図。
図2】本発明のセラミック基複合材料の製造工程を示すフロー図であって、(a)は、骨材を形成する骨材形成工程S1の後、第1焼成工程S2を経て、マトリックス形成工程S3からなるセラミック基複合材料の製造方法を示し、(b)、(c)は、さらにマトリックス形成工程S3を具体的に示したセラミック基複合材料の製造方法であり、(d)は、(a)の工程フローの最後にアルミナ層形成工程S6を追加した表面にアルミナ層を有するセラミック基複合材料の製造方法を示す。
図3】本発明の実施例1のセラミック基複合材料の断面図。
図4】本発明の実施例2のセラミック基複合材料の断面図。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明のセラミック基複合材料は、ムライト繊維からなる骨材と、ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスとを含む。
【0031】
ムライト繊維は、アルミナとシリカとを原材料とする繊維の中で、高い耐熱性と強度とを備えているので高強度のセラミック基複合材料を得ることができる。また、ムライト繊維間に充填されたマトリックスは、同材質のムライトからなるので、セラミック繊維の側に原子の拡散が起きてもムライト繊維の表面の組成に影響を与えにくく、高い強度を長く維持することができる。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0032】
骨材は、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライト繊維からなる。
【0033】
Al/SiOのモル組成比において60/40〜67/33の範囲においては、ムライトの固溶範囲内にあり、繰り返し使用してもコランダムあるいはクリストバライトなどが相分離して析出しない。このため相分離による粒界の発生がなく、ムライト繊維に破壊の起点ができにくい。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0034】
マトリックスは、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライトからなる。
【0035】
Al/SiOのモル組成比において60/40〜67/33の範囲においては、ムライトの固溶範囲内にある。このため、骨材が、Alのモル基準での割合が60〜67%、SiOのモル基準での割合が40〜33%であるムライト繊維からなる場合、高温で使用してマトリックスから骨材側へ元素拡散が起きてもセラミック基複合材料の強度を担うムライト繊維の元素の組成比に影響を与えず、ムライト繊維の表面に、コランダムあるいはクリストバライトが析出することを防止でき、繊維の強度低下を防止することができる。
【0036】
マトリックスは、多孔体である。これにより、マトリックスが多孔体であると、断熱効果が高く、内部のムライト繊維が高温に曝されることを防止することができる。
【0037】
セラミック基複合材料は、さらに表面を覆うアルミナ層を有する。これにより、アルミナは、ムライトに比べて高い耐熱性を有しているので、ムライト繊維からなる骨材と、ムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックスと、からなるセラミック基複合材料の表面を覆うことにより、高い耐熱性を確保することができる。
【0038】
アルミナ層は、Alのモル基準での割合が95〜100%である。
【0039】
アルミナ層のAlのモル基準での割合が95〜100%であることにより、表面の耐熱性が高くなり、安定して高い強度のセラミック基複合材料を得ることができる。また、多孔質のマトリックスと組み合わせることにより、セラミック基複合材料の表面が高温に曝されても、内部のムライト繊維に熱が伝達されにくくすることができ、より高い耐熱性を有するセラミック基複合材料を提供することができる。
【0040】
アルミナ層は、Alのみからなる。これにより、アルミナ層がAlのみからなる場合、より高い融点が確保されるため、さらに高い耐熱性を確保することができる。
【0041】
また、課題を解決するための本発明のセラミック基複合材料の製造方法は、ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成する成形工程と、骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程と、第1焼成工程の後に骨材を構成するムライト繊維の繊維間にムライトからなるマトリックスを充填するマトリックス形成工程と、を含む。
【0042】
本発明のセラミック基複合材料の製造方法によれば、ガラス質のムライト繊維を用いて目的形状の骨材を形成しているので、骨材の形成段階ではムライト繊維に柔軟性があり折れにくく、容易に目的の形状を得ることができる。また、目的の形状を得た後、骨材を焼成し、ムライト繊維を結晶化させる第1焼成工程を有しているのでムライト繊維の結晶化が進行し強度が高くなる。これと同時にムライト繊維は寸法収縮が生じ、弾性率が高くなり折れやすくなるが、既に目的の形状が得られ、後の工程でムライト繊維が大きく曲げられることはないので、ムライト繊維の折損を最小限にとどめることができる。さらに、第1焼成工程の後にムライトからなるマトリックスを充填しているので、ムライト繊維自体の寸法収縮の影響を小さくすることができ、形状精度の高いセラミック基複合材料を得ることができる。
【0043】
マトリックス形成工程は、ムライト組成となる前駆体を骨材に含浸する含浸工程と、含浸工程の次に前駆体を焼成する第2焼成工程と、を含む。
【0044】
マトリックス形成工程は、ムライト組成となる前駆体を骨材に含浸する含浸工程と、含浸工程の次に前駆体を焼成する焼成工程と、からなるので、マトリックスに耐熱温度を低下させる焼結助剤が含まれず、高い耐熱温度のセラミック基複合材料を得ることができる。前駆体とは、アルミニウムアルコキシド、シリコンアルコキシド、アルミナゾル、シリカゾル、高塩基性塩化アルミニウム、などが挙げられる。
【0045】
マトリックス形成工程は、マトリックス形成工程がAl、Si、Oを含有する原料ガスを用いたCVD法による。
【0046】
マトリックス形成工程がAl、Si、Oを含有する原料ガスを用いたCVD法によって行われているので、マトリックスに耐熱温度を低下させる焼結助剤が含むことなくマトリックスを形成することができる。このため高い耐熱温度のセラミック基複合材料を得ることができる。Al、Si、Oを含有する原料ガスとは、例えばアルミニウムアルコキシド、シリコンアルコキシドなどが挙げられる。原料ガスとは、常温で気体である必要は無く、CVD炉に導入する段階で気体であればよい。CVD法で使用するので分子量の小さな原料ガスを使用し、気化させて用いられる。
【0047】
マトリックス形成工程に続いて、セラミック基複合材料の表面を覆うアルミナ層を形成するアルミナ層形成工程を有する。
【0048】
アルミナの融点は、ムライトの融点(1850℃)よりも高い2072℃であり耐熱性が高い。ムライトよりも耐熱性がアルミナ層を、前駆体法あるいはCVD法で形成するので、ムライト繊維、マトリックスを劣化させること無くアルミナ層を形成することができる。セラミック基複合材料の表面を覆うアルミナ層を形成すると、セラミック基複合材料の耐熱性を高めることができる。
前駆体法では、ムライトの融点(1850℃)より低い温度で前駆体を分解させアルミナ層を形成することができるのでムライト繊維およびムライトからなるマトリックスにダメージを与えることなくアルミナ層を形成することができる。
【0049】
CVD法では、ムライトの融点(1850℃)より低い温度で原料ガスを分解させアルミナ層を形成することができるのでムライト繊維およびムライトからなるマトリックスにダメージを与えることなくアルミナ層を形成することができる。
【0050】
(発明を実施するための形態)
図1は、Al−SiO系の化合物の相平衡状態図(相図)を示している(出典:ファインセラミックス事典、ファインセラミックス事典編集委員会編、技法堂出版株式会社発行)。本発明のセラミック基複合材料が利用するムライト(mullite)は、Al−SiO系の化合物の一つである。
【0051】
図2は、本発明のセラミック基複合材料の製造方法の工程フローを示す。
【0052】
図2(a)は、骨材を形成する骨材形成工程S1の後、第1焼成工程S2を経て、マトリックス形成工程S3からなるセラミック基複合材料の製造方法を示している。
【0053】
図2(b)、(c)は、さらにマトリックス形成工程S3を具体的に示したセラミック基複合材料の製造方法である。
【0054】
図2(b)は、(a)の工程フローのマトリックス形成工程S3がCVD法によりマトリックスを形成するマトリックス形成工程S4であるセラミック基複合材料の製造方法を示している。
【0055】
図2(c)は、(a)の工程フローのマトリックス形成工程S3が含浸工程と第2焼成工程からなるマトリックス形成工程S5であり、前駆体法によりマトリックスを形成するセラミック基複合材料の製造方法を示している。
【0056】
図2(d)は、(a)の工程フローの最後にアルミナ層形成工程S6を追加した表面にアルミナ層を有するセラミック基複合材料の製造方法を示している。
【0057】
本発明のセラミック基複合材料のムライト繊維とは、実質的にムライトの結晶構造のみからなる繊維である。コランダムの結晶組織あるいはクリストバライトの結晶組織を含有せず、単一の結晶組織で構成されている。このため、このため相分離による粒界なく、ムライト繊維に破壊の起点ができにくい。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0058】
図1において矢印Aで示す領域は、Al/SiOのモル組成比において60/40〜67/33の範囲であり、ムライトの固溶範囲内(ムライト固溶体が存在する範囲内)である。すなわち、ムライト繊維のAlのモル基準での割合が60%以上(SiOのモル基準での割合が40%以下)であると、クリストバライトなどのSiOに関係する結晶が析出せず、ムライト繊維の組織をムライトの固溶体のみとすることができる。またムライト繊維のAlのモル基準での割合が67%以下(SiOのモル基準での割合が33%以上)であると、コランダムの結晶が析出せず、ムライト繊維の組織をムライトの固溶体のみとすることができる。
【0059】
ムライト繊維が、ムライトの固溶体のみからなると、ムライト繊維を単一の組織で構成することができるので、異なる組織間の界面が存在せず、ムライト繊維の強度的な欠陥を少なくすることができ、高い強度のムライト繊維を得ることができる。
【0060】
本発明のセラミック基複合材料のムライト繊維とは、結晶質の繊維であることが好ましい。
一般にセラミック繊維の製造方法は、2つに大別される。1つは、原料を溶融し細かなノズルを用いて冷却する過程で紡糸する溶融法と、セラミック繊維の前駆体を液状にして、ノズルを用いて紡糸した後、得られた原糸を焼成するゾルゲル法とに分けられる。
【0061】
ムライト繊維などの耐熱温度の高いセラミック繊維は、原料の溶融に必要な温度が高いため、一般にゾルゲル法が用いられる。ゾルゲル法では、ムライト繊維の場合、アルミナの前駆体と、シリカの前駆体とをムライトの組成比が得られるように混合して紡糸される。紡糸では、前駆体を熱で溶融させノズルから引き出し紡糸したのち冷却する製造方法(溶融紡糸法)と、溶媒で液状化させノズルから引き出し溶媒を揮散させる製造方法(乾式紡糸法)とがある。得られた原糸は、焼成されムライト繊維となる。なお、前駆体には、ポリビニルアルコール(PVA)などのバインダが添加されていることが好ましい。
【0062】
ポリビニルアルコールなどのバインダが添加されていると、前駆体がセラミック繊維に変化していく過程で繊維の強度を維持し、切断しにくくすることができる。焼成する過程で、バインダも同時に焼成される。PVAなどのバインダは、アルミナおよびシリカが得られる温度よりも低い温度で炭化するので、バインダを添加することにより原糸を切断させることなく焼成することができる。
【0063】
また、ゾルゲル法で得られたムライト繊維は、焼成温度が高くなるにつれて、非晶質から結晶質に変化する。結晶質の組織は概ね1000℃から発生しはじめ、1260℃で概ね繊維全体の結晶化が終了する。非晶質から結晶質に変化する過程で、ムライト繊維は耐熱性、引っ張り強度が高くなる。一方、同時に弾性率が高くなるので曲げ歪みに対して弱くなり折れやすくなる。このため、ムライト繊維が非晶質の段階で骨材の形状を形成し、さらに熱処理して結晶化させ、さらにマトリックスを形成することにより、ムライト繊維の破断を防止し、耐熱温度および強度の高いセラミック基複合材料を得ることができる。
【0064】
本発明のセラミック基複合材料の骨材とは、ムライト繊維で構成されていればその形態は特に限定されない。例えば、ムライト繊維を複数本束ねたストランドを用いて、巻回して得られたフィラメントワインディング体、製織して得られた織布、組み紐としたブレーディング体を用いることができる。また、短く切断されたムライト繊維を積層した不織布、抄造した抄造体などを利用することができる。また、これらを複数生み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明のセラミック基複合材料のマトリックスはムライトよりなる。マトリックスを構成するムライトは、例えば次の方法で得ることができる。
【0066】
第1の方法は、ムライト組成となるようにアルミナ前駆体と、シリカ前駆体を調合した前駆体を骨材に含浸し、骨材とともに前駆体を焼成する。ムライト組成となるアルミナ前駆体と、シリカ前駆体との比は、焼成後にムライト組成になるように調整される。ムライト組成とは、アルミニウム、珪素の含有量の比が、モル比ベースの(Al:Si)が67:33〜60:40の範囲にあることを示す。
【0067】
第2の方法は、ムライト組成となるようにアルミニウム含有の原料ガスと、珪素含有の原料ガスとを骨材が置かれたCVD炉内に導入し、骨材の繊維の隙間にムライトを析出させる。なお、アルミニウム含有の原料ガスおよび/または珪素含有の原料ガスには、酸素を分子内に有しており、ムライトを構成する酸素の供給源となる。ムライト組成となるアルミニウム含有の原料ガスと、珪素含有の原料ガスとの比は、反応温度、圧力に応じてCVD後にムライト組成になるように調整される。
【0068】
マトリックスを構成するムライトのAlのモル基準での割合が60%以上(SiOのモル基準での割合が40%以下)であると、クリストバライトなどのSiOに関係する結晶が析出せず、マトリックスを構成するムライトの組織をムライトの固溶体のみとすることができる。またマトリックスを構成するムライトのAlのモル基準での割合が67%以下(SiOのモル基準での割合が33%以上)であると、コランダムの結晶が析出せず、マトリックスを構成するムライトの組織をムライトの固溶体のみとすることができる。
【0069】
マトリックスを構成するムライトが、ムライトの固溶体のみからなると、マトリックスを単一の組織で構成することができ、異なる組織間の界面ができず、高い強度のマトリックスを形成することができる。また、ムライト繊維間に充填され、ムライト繊維と接するマトリックスは、同材質のムライトからなるので、セラミック繊維の側に原子の拡散が起きてもムライト繊維の表面の組成に影響を与えにくく、高い強度を長く維持することができる。このため安定して高い強度のセラミック基複合材料を提供することができる。
【0070】
アルミナ層は、CVD法で形成されるCVD膜であると、高純度かつ緻密なアルミナ層を得ることができ、セラミック基複合材料の表面の耐熱性および強度を高くすることができ、より高い耐熱性および強度を有するセラミック基複合材料を提供することができる。アルミナ層は、前駆体法で形成されると、高純度かつ厚いアルミナ層を容易に得ることができ、セラミック基複合材料の表面の耐熱性および強度を高くすることができ、より高い耐熱性および強度を有するセラミック基複合材料を提供することができる。
【0071】
アルミナ層は、Alのモル基準での割合が95〜100%であることが好ましいが、Alのみから構成することがさらに好ましい。Alのみの構成は、図1における右端に対応し、図1において最も高い融点が確保される箇所であり、さらに高い耐熱性を確保することができる。
【実施例】
【0072】
本発明のセラミック基複合材料について、以下実施例1(図3参照)および実施例2(図4参照)を用いて説明する。
【0073】
(実施例1)
実施例1のセラミック基複合材料10は、ムライト繊維の骨材1とムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックス2とからなる。骨材1は、ムライト繊維を1000本束ねたストランドを製織したクロスである。また、マトリックス2は、CVD法によってムライト繊維間に充填されたムライトで構成されている。
【0074】
(実施例2)
実施例2のセラミック基複合材料10は、ムライト繊維の骨材1とムライト繊維間に充填されたムライトからなるマトリックス2とからなる。骨材1は、ムライト繊維を1000本束ねたストランドを製織したクロスである。また、マトリックス2は、アルミナ前駆体と、シリカ前駆体とを含浸し、焼成して得られたムライトで構成されている。実施例2では、さらに外側がCVD法によって形成されたアルミナ層3で覆われている。
【0075】
実施例1のセラミック基複合材料10の製造工程について説明する。
【0076】
<骨材形成工程:S1>
ガラス質のムライト繊維を用いて、クロスを製織する。ムライト繊維は、太さ6μmであり、1000本束ねられてストランドを構成している。製織はストランドの状態で行われている。高弾性率化する前のガラス質のムライト繊維の段階で用いているので、クロスを形成する過程で強く曲げられてもムライト繊維は折損することなく折り曲げることができ、製織に耐えることができる。
【0077】
<第1焼成工程:S2>
骨材形成工程S1で得られたクロスを炉に入れて加熱する。焼成温度は、1300℃である。この第1焼成工程でムライト繊維は充分に結晶化し、高い強度を得ることができる。一方結晶化に伴ってムライト繊維の弾性率は高くなり、曲げに弱くなる。
【0078】
<マトリックス形成工程:S3、S4>
次に、得られた骨材1を、CVD炉に入れ、1200℃に保持するとともにアルミニウムアルコキシドとシリコンアルコキシドとからなる原料ガスをCVD炉に導入し、骨材1を構成するムライト繊維間にムライトからなるマトリックス2が形成される。
【0079】
こうして得られた実施例1のセラミック基複合材料10は、高強度で高い耐熱性を有するムライト繊維を骨材1とし、耐熱温度を下げる焼結助剤を含有することなく骨材を構成するムライト繊維間にムライトからなるマトリックス2を有しているので、高い強度と、高い耐熱性を備えることができる。
【0080】
実施例2のセラミック基複合材料10の製造工程について説明する。
【0081】
<骨材形成工程:S1>
ガラス質のムライト繊維を用いて、クロスを製織する。ムライト繊維は、太さ4μmであり、1000本束ねられてストランドを構成している。製織はストランドの状態で行われている。焼成により高弾性率化する前のガラス質のムライト繊維の段階で製織されているので、クロスを形成する過程で強く曲げられてもムライト繊維は折損することなく折り曲げることができ、製織に耐えることができる。
【0082】
<第1焼成工程:S2>
骨材形成工程S1で得られたクロスを炉に入れて加熱する。焼成温度は、1400℃である。この第1焼成工程でムライト繊維は充分に結晶化し、高い強度を得ることができる。
【0083】
<マトリックス形成工程:S3、S5>
本実施例では、マトリックス形成工程は、含浸工程と、第2焼成工程とからなる。
【0084】
上述の工程で得られた骨材を、アルミナ前駆体であるアルミニウムアルコキシドと、シリカ前駆体であるアルコキシシランとの混合溶液に浸漬させ、含浸する。アルミナ前駆体と、シリカ前駆体の混合物におけるAlとSiのモル組成比は、6:4である。
【0085】
次に、前駆体の含浸された骨材1を焼成する。焼成温度は1100℃である。焼成によって前駆体からムライトを得ることができる。なお、第2焼成工程では、焼成の初期段階では溶媒を揮散させることになるので、初期段階では昇温速度を遅くし、その後昇温速度を早くする。具体的には、150℃までを10℃/hrで昇温し、それ以後を20℃/hrで昇温する。
【0086】
<アルミナ層形成工程:S6>
得られたセラミック基複合材料10の表面にさらにアルミナ層3を形成する。アルミナゾル溶液にセラミック基複合材料10を浸漬したのち、さらに焼成(第3焼成工程)する。なお、第3焼成工程では、焼成の初期段階では溶媒を揮散させることになるので、初期段階では昇温速度を遅くし、その後昇温速度を早くする。具体的には、150℃までを10℃/hrで昇温し、それ以後を20℃/hrで昇温する。
【0087】
こうして得られた実施例2のセラミック基複合材料10は、高強度で高い耐熱性を有するムライト繊維を骨材1とし、骨材1を構成するムライト繊維間にムライトからなるマトリックス2を有している。さらにマトリックス2は、前駆体を用いて製造されているので、製造の過程で分解ガスが発泡し、多孔質のマトリックス2が得られる。さらにセラミック基複合材料10の外側には、アルミナ層3を有している。このため、表面の耐熱性は特に高くすることができる。内部のムライト繊維は多孔質のムライトからなるマトリックス2によって断熱されているので、セラミック基複合材料10の骨材、マトリックスにかかる熱を遮断することができ、の耐熱性を高くすることができる。このため高い強度と、高い耐熱性を備えたセラミック基複合材料10を得ることができる。
【0088】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のセラミック基複合材料は、高い強度と高い耐熱性を要求する工業炉や触媒担体保持材などの分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 骨材
2 マトリックス
3 アルミナ層
10 セラミック基複合材料
図1
図2
図3
図4