【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のn型/p型半導体材料およびその製造方法について説明する。
【0010】
図1は、TiMgN
2で表される化合物の結晶構造を示す模式図である。
【0011】
本発明のn型/p型半導体材料は、TiとMgとNとからなる化合物を含み、この化合物は、一般式TiMgN
2で表され、
図1に示す結晶構造を有する。
図1によればTi原子が白で示され、Mgが黒で示され、N原子が灰色で示され、L1
1の結晶構造を有する。
【0012】
本願発明者らは、このようなTiMgN
2で表される化合物において、単に構成元素を欠損させるだけで、n型あるいはp型の伝導型を制御できることを見出し、本発明に至った。
【0013】
(i)n型半導体材料
本発明のn型半導体材料は、上述のTiMgN
2で表される化合物を含むが、TiMgN
2で表される化合物において、Nの一部が欠損した窒素空孔(欠陥)を有することを特徴とする。本願発明者らは、このような窒素空孔を意図的に形成することにより、ドナーレベルを形成し、電子(キャリア)を生成させることができ、n型半導体材料として機能し得ることを見出した。
【0014】
窒素空孔の濃度は、好ましくは、1×10
15/cm
3以上1×10
20/cm
3以下の範囲である。窒素空孔の濃度が1×10
15/cm
3より小さい場合、十分なキャリアが生成せず、n型半導体として機能し得ない。窒素空孔の濃度が1×10
20/cm
3を超えると、TiMgN
2で表される化合物の結晶構造が維持できず、良質な化合物が得られない恐れがある。
【0015】
(ii)p型半導体材料 本発明のp型半導体材料は、上述のTiMgN
2で表される化合物を含むが、TiMgN
2で表される化合物において、Tiおよび/またはMgの一部が欠損した金属空孔(欠陥)を有することを特徴とする。本願発明者らは、このような金属空孔を意図的に形成することにより、アクセプタレベルを形成し、正孔(キャリア)を生成させることができ、p型半導体材料として機能し得ることを見出した。
【0016】
金属空孔の濃度は、好ましくは、1×10
15/cm
3以上1×10
20/cm
3以下の範囲である。金属空孔の濃度が1×10
15/cm
3より小さい場合、十分なキャリアが生成せず、p型半導体として機能し得ない。金属空孔の濃度が1×10
20/cm
3を超えると、TiMgN
2で表される化合物の結晶構造が維持できず、良質な化合物が得られない恐れがある。
【0017】
なお、窒素空孔あるいは金属空孔の濃度は、例えば、電子顕微鏡等により測定することができる。
【0018】
本発明のn型/p型半導体材料は、基板をさらに備え、TiMgN
2で表される化合物が基板上に位置するエピタキシャル膜であってもよい。より好ましくは、基板は、GaN、AlN、6H−SiCおよび4H−SiCからなる群から選択される。これらの基板は、いずれも、六方晶系の結晶構造を有しており、TiMgN
2で表される化合物が、これら基板のc面に対してエピタキシャル成長できる。特に、4H−SiCであれば、格子定数のミスマッチが1.9%以下であるため、エピタキシャル成長をさせやすいので有利である。このとき、TiMgN
2で表される化合物は、N層/Mg層/Ti層/N層を繰り返し単位として、z軸方向に成長し得る。
【0019】
本発明のn型/p型半導体材料において、TiMgN
2で表される化合物は、高価な元素を含まないので、安価に提供できる。
【0020】
本発明のn型/p型半導体材料において、TiMgN
2で表される化合物は、好ましくは、バンドギャップEgが1.0eV以上1.7eV以下の範囲を有する。これにより、理想的な太陽電池および受光センサーとなるので、有利である。
【0021】
本発明のn型/p型半導体材料において、TiMgN
2で表される化合物は、間接遷移半導体である。このような間接遷移半導体において、単に、窒素空孔あるいは金属空孔を生成するだけで、伝導型の制御を達成できる。
【0022】
次に、本発明のn型/p型半導体材料の例示的な製造方法について説明する。
【0023】
例示的には、パルスレーザ蒸着法(pulse laser deposition:PLD)、熱蒸着法、分子線エピタキシー法(molecular beam epitaxy:MBE)、スパッタリング法、化学気相蒸着法(chemical vapor deposition:CVD)、金属有機物化学気相蒸着法(metal−organic chemical vapor deposition:MOCVD)、および、原子層蒸着法(atomic layer deposition:ALD)からなる群から選択される方法が採用される。中でも、MBE、MOCVDおよびALDは、原子層レベルで制御できるため、好ましい。
【0024】
ここでは、簡単のため、本発明のn型/p型半導体材料が、基板を備えたTiMgN
2で表される化合物からなる薄膜であり、MBEによって製造される場合を例示する。
【0025】
少なくとも、TiソースおよびMgソースそれぞれの金属供給源と、窒素ラジカルを供給できるラジカルガンと、基板加熱可能な成長室とを備えたMBEチャンバ内に基板を配置する。基板は、好ましくは、上述したGaN、AlN、6H−SiCおよび4H−SiCからなる群から選択され、c面である。チャンバ内を所定の圧力(例えば、10
−10Torr)に維持し、基板を加熱(例えば、800℃)する。
【0026】
(1)TiソースからTiを供給、停止し、基板上にTi層を形成する。
(2)ラジカルガンから窒素ラジカルを供給し、停止し、Ti層上にN層を形成する。
(3)MgソースからMgを供給、停止し、N/Ti層上にMg層を形成する。
(4)ラジカルガンから窒素ラジカルを供給し、停止し、Mg/N/Ti層上にN層を形成する。
この(1)〜(4)の工程を繰り返すことにより、原子層レベルで制御されたTiMgN
2で表される化合物からなる薄膜を基板上にエピタキシャル成長させることができる。
【0027】
ここで、n型半導体材料を得たい場合には、工程(2)および(4)において、供給量を制御すれば、Nを欠損させることができるので、窒素空孔を形成することができる。
【0028】
同様に、p型半導体材料を得たい場合には、工程(1)および/または(3)において、供給量を制御すれば、Tiおよび/またはMgを欠損させることができるので、金属空孔を形成することができる。
【0029】
このような原料の供給量は、例えば、ビームフラックスモニター(BFM)などにより測定することによって、制御できる。
【0030】
本発明のn型/p型半導体材料は、ドーパントを添加することなく、単に構成元素を欠損させるだけで伝導型を制御できるので、ドーパントを所定の格子サイトに導入する複雑な制御を不要とできる。また、ドーパントを用いないので、同じチャンバを用いて、本発明のn型半導体材料上にp型半導体材料を連続的に製造し、pn接合を形成する場合であっても、ドーパントによる半導体材料の汚染を生じることはなく、プロセスが簡略化され有利である。
【0031】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1で説明した本発明のn型半導体材料および/またはp型半導体材料を用いた半導体素子について説明する。
【0032】
本発明の半導体素子は、実施の形態1で説明したn型半導体材料および/またはp型半導体材料を用い、pn接合を形成している。このような半導体素子には、代表的には、太陽電池、受光センサーがあり得る。
【0033】
図2は、本発明の半導体素子として太陽電池を示す模式図である。
【0034】
本発明の太陽電池200は、導電性を持つ透明基板210と、その上に設けられた本発明のp型半導体材料220と、p型半導体材料220上に設けられた本発明のn型半導体材料230と、n型半導体材料230上に設けられた金属電極240とを備える。p型半導体材料220とn型半導体材料230とは、pn接合を形成している。
【0035】
透明基板210は、透光性のある任意の導電基板を用いることができ、例示的には、GaN、AlN、6H−SiCおよび4H−SiC等の格子が整合する導電基板であり得る。
【0036】
p型半導体材料220およびn型半導体材料230は、実施の形態1で詳述したとおりであるため、説明を省略する。金属電極240は、Al、Cu、Ni、Ti、Pt等であり得る。
【0037】
このような太陽電池200の動作原理を説明する。pn接合の接合部付近では、p型半導体材料220のキャリアである正孔と、n型半導体材料230のキャリアである電子とが互いに拡散した空乏層を生じる。太陽電池200の透明基板210側から光が照射されると、光は、p型半導体材料220を透過し、pn接合の接合部、次いで、n型半導体材料230にも入射する。
【0038】
このような光の照射により、価電子帯にいる電子は励起され、伝導電子となり、電流を流すキャリアとなる。同時に、電子の抜けた箇所が正孔となり、同じく電流を流すキャリアとなる。空乏層内に生成されたこれらキャリアは、正孔はp型半導体材料220へ、電子はn型半導体材料230へと引き寄せられる。この結果、p型半導体材料220とn型半導体材料230との間に起電力を発生する。このようにして、本発明の太陽電池200は、光エネルギーを電力に変換し得る。
【0039】
本発明の太陽電池200は、例示的には、透明基板210上に、実施の形態1で説明したp型半導体材料220およびn型半導体材料230を形成し、次いで、再度電極形成技術により金属電極240を形成することによって製造される。
【0040】
なお、受光センサーも太陽電池200と同様の構造を有する。p型半導体材料220とn型半導体材料230とのpn接合の接合部近傍に、p型半導体材料220およびn型半導体材料230の禁制帯幅よりも大きなエネルギーを有する光(例えば、1000nm以上1200nm以下の波長の光)が照射されると、キャリアが生成され、光電流が流れる。したがって、本発明による受光センサーは、1000nm以上1200nm以下の波長を有する赤外光を検出するセンサーとして機能し得る。
【0041】
図2を参照して、半導体素子200におけるp型半導体材料220およびn型半導体材料230が、いずれも、実施の形態1で説明した本発明のp型半導体材料およびn型半導体材料である場合を説明してきたが、本発明の半導体素子200はこれに限らない。例えば、半導体素子200のp型半導体材料220が、本発明のp型半導体材料であり、半導体素子200のn型半導体材料230は、例えば、酸素、スカンジウム、バナジウム等のn型ドーパントを含むTiMgN
2であってもよいし、リンをドープしたシリコン等の既存のn型半導体材料であってもよい。あるいは、半導体素子200のn型半導体材料230が、本発明のn型半導体材料であり、半導体素子200のp型半導体材料220は、例えば、炭素、ナトリウム、スカンジウム等のp型ドーパント(条件によってはn型となる場合もあり得る)を含むTiMgN
2であってもよいし、ボロンをドープしたシリコン等の既存のp型半導体材料であってもよい。しかしながら、ドーパントや異なる構成元素による半導体材料の汚染の懸念がなく、プロセスが簡略化されることから、p型半導体材料220およびn型半導体材料230ともに本発明のp型半導体材料およびn型半導体材料が好ましい。
【0042】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0043】
[実施例1]
実施例1では、L1
1の結晶構造を有するTiMgN
2について、結晶の全エネルギー、ならびに、各原子を1個欠損させた場合の状態密度を第一原理計算により算出した。本実施例で行った第一原理計算は、一般化密度勾配近似(GCA)法を採用した密度汎関数理論(DFT)に基づいて行われた。計算には、projector augmented wave(PAW)法を用いた。これら計算は使用したPHASE/0パッケージ(例えば、T.Yamamotoら,Phys.Lett.A373,3989,2009を参照)に含まれる。波動関数を最大340eV運動エネルギーカットオフまで平面波展開した。原子間力が2.5×10
−2eV/Åとなるまで、結晶構造モデルを完全に緩和した。なお、計算では、まず、TiNの格子定数(4.24Å)用い、次いで、格子定数の値を、応力テンソルを用いて最適化した。結果を、
図3〜
図6および表1〜表3に示す。
【0044】
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同様に、L1
0の結晶構造を有するTiMgN
2について、結晶の全エネルギーを第一原理計算により算出した。結果を
図3および表1〜表2に示す。
【0045】
[比較例3]
比較例3では、実施例1と同様に、CHの結晶構造を有するTiMgN
2について、結晶の全エネルギーを第一原理計算により算出した。結果を
図3および表1〜表2に示す。
【0046】
図3は、実施例/比較例1〜3のTiMgN
2の結晶構造を示す図である。
【0047】
図3(A)〜(C)は、それぞれ、実施例1のL1
1の結晶構造、実施例2のL1
0の結晶構造およびCHの結晶構造のTiMgN
2の模式図を示す。
図3中、Ti原子が白で示され、Mgが黒で示され、N原子が灰色で示される。
【0048】
ブリルアンゾーン積分を、実施例1のL1
1結晶構造の12原子ブラベー格子については、8×8×4のk点を用いて、比較例2のL1
0結晶構造の8原子ブラベー格子については、8×8×8のk点を用いて、比較例3のCH結晶構造の16原子ブラベー格子については、8×8×4のk点を用いて行った。
【0049】
【表1】
【0050】
表1は、実施例/比較例1〜3の各結晶構造のTiMgN
2の格子定数の一覧を示す。格子定数は、応力テンソルを用いて算出された。
【0051】
【表2】
【0052】
表2は、実施例/比較例1〜3の各結晶構造のTiMgN
2の単位格子あたりの計算による全エネルギーの一覧を示す。表2では、実施例1のL1
1の結晶構造のTiMgN
2の全エネルギーに対する、比較例2および比較例3のそれらの結果を示す。表2によれば、L1
1の結晶構造を有するTiMgN
2がもっともエネルギーが低いことが分かった。すなわち、一般式TiMgN
2で表され、L1
1の結晶構造を有する化合物が、もっとも安定であり、製造も容易であることが示された。さらに、
図3(A)に示されるように、L1
1の結晶構造を有するTiMgN
2は、N層/Mg層/Ti層/N層を繰り返し単位とする層状構造であることから、エピタキシャル成長されることが示唆される。
【0053】
図4は、実施例1のTiMgN
2の単純格子(a)、第1ブリルアンゾーン(b)およびエネルギーバンド構造(c)を示す図である。
【0054】
菱面体晶である4原子からなる単純格子(
図4(a))について、8×8×8のk点を用いてブリルアンゾーン積分を行った。GGAを用いてL1
1結晶構造のTiMgN
2のバンドギャップを算出した。この結果、
図4(b)および(c)に示されるように、価電子帯の上端(VBM)は、Γ=(0,0,0)に見られ、伝導帯の下端(CBM)は、X=(0.5,0,−0.5)に見られた。このことから、L1
1結晶構造のTiMgN
2は、0.27eVのバンドギャップを有し、間接遷移半導体であることを確認した。また、ハイブリッド計算を用いて算出したバンドギャップの値から、本発明の半導体材料を受光センサーに用いた場合、1000nm〜1200nmの赤外光の受光センシングができることが分かった。
【0055】
図5は、実施例1の状態密度の算出に用いたTiMgN
2の結晶構造を示す図である。
【0056】
実施例1では、
図5に示すように、864個の原子含むL1
1結晶構造を有するTiMgN
2を用いて、状態密度の算出を行った。状態密度の算出は、864個の原子のうち、1個のTi原子、1個のMg原子および1個のN原子をそれぞれ欠損させた場合の形成エネルギーを算出し、欠損による点欠陥(TiまたはMgの金属空孔、あるいは、窒素空孔)の状態密度に及ぼす影響を調べた。
【0057】
図6は、実施例1のTiMgN
2の種々の場合の状態密度を示す図である。
【0058】
図6(a)は、上から、TiMgN
2が欠陥を有しない場合、N原子が1個欠損した場合、Ti原子が1個欠損した場合、および、Mg原子が1個欠損した場合の状態密度を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)のフェルミレベル(E
F)近傍を拡大して示す。ここで、E
Fは、価電子帯の頂上であると規定した。
【0059】
TiMgN
2が欠陥を有しない場合の状態密度は、非特許文献1の結果に一致した。詳細には、E
Fより下約15eVのエネルギーにおいて、窒素の2s半内殻状態が見られ、E
Fより下6.5eVと0eVとの間のエネルギーにおいて、結合状態が見られた。さらに、TiMgN
2が欠陥を有しない場合の状態密度によれば、TiNで見られる結合状態と非結合状態との重なりは、MgがTiN中のTiと置換するにしたがって減少した。このことは、L1
1の結晶構造を有するTiMgN
2が半導体であることを示唆する。
【0060】
一方、
図6(b)によれば、TiMgN
2からN原子が1個欠損した場合、E
Fが約0.4eV価電子帯側にシフトした。このことは、N原子の欠損によって、ドナーレベルが導入され、TiMgN
2はn型半導体材料となることを示す。
【0061】
さらに、
図6(b)によれば、TiMgN
2からTi原子またはMg原子が1個欠損した場合、E
Fが約0.2eV伝導帯側にシフトした。このことは、Ti原子、Mg原子の両方またはいずれか一方の欠損によって、アクセプタレベルが導入され、TiMgN
2はp型半導体材料となることを示す。
【0062】
また、
図6(b)から、L1
1の結晶構造を有するTiMgN
2においてTi、MgおよびN欠損の状態数は、それぞれ、4、2および3と算出され、これらの値は、各元素の価数に等しいことが分かった。
【0063】
ここで、
図5に示す実施例1のL1
1の結晶構造を有するTiMgN
2超格子構造において、N原子が1個欠損した場合の窒素空孔の濃度は、1×10
20/cm
3であった。同様に、Ti原子が1個欠損した場合の金属空孔の濃度は、1×10
20/cm
3であり、Mg原子が1個欠損した場合の金属空孔の濃度は、1×10
20/cm
3であった。このことから、TiMgN
2における窒素空孔の濃度が1×10
15/cm
3以上1×10
20/cm
3以下の範囲であれば、n型半導体材料となり、TiMgN
2における金属空孔の濃度が1×10
15/cm
3以上1×10
20/cm
3以下の範囲であれば、p型半導体材料となることが示された。
【0064】
次に、実施例1のL1
1の結晶構造を有するTiMgN
2(
図5に示す超格子構造)における特定の欠陥(すなわち、Ti空孔、Mg空孔およびN空孔)の形成エネルギーを算出した。平衡成長条件であると仮定し、欠陥の形成エネルギーを算出した。欠陥の形成エネルギーE
fは、次式を用いて求めた。
E
f=E
d−E
host+Σ
in
iμ
i
ここで、E
dは、欠陥を有する超格子構造の形成エネルギーであり、E
hostは、欠陥を有しない超格子構造の形成エネルギーであり、n
iは、元素供給源(Tiソース/Mgソースである金属供給源、または、窒素を供給できるガス供給管)からの原子数であり、μ
iは、各原子の安定相における原子の化学的ポテンシャルである。なお、本実施例では、TiおよびMgの安定相は六方最密充填(hcp)構造であり、Nの安定相はN
2分子であるとした。
【0065】
【表3】
【0066】
表3は、実施例1のL1
1の結晶構造を有する
図5に示すTiMgN
2の超格子構造における、Ti原子、Mg原子およびN原子のそれぞれ1個が欠損した場合の形成エネルギーの一覧を示す。
【0067】
表3に示されるように、N原子が1個欠損した場合の形成エネルギーは、1.99eVであった。一方、Ti原子が1個欠損した場合の形成エネルギーは、8.93eVであり、Mg原子のそれ(4.44eV)の2倍であった。
【0068】
以上説明してきたように、本発明の一般式TiMgN
2で表され、L1
1の結晶構造を有する化合物を含む半導体材料は、化合物にドーパントを添加することなく、化合物中のNの一部が欠損した窒素空孔を有することにより、ドナーレベルが導入され、n型半導体材料となり、化合物中のTiおよび/またはMgの一部が欠損した金属空孔を有することにより、アクセプタレベルが導入され、p型半導体材料となることが示された。