【課題】連続的に容器から噴射されて緻密で均一な泡を形成し、形成された泡が一定の弾力を持ち、かつ形成された泡を対象物へ容易に塗り広げることができる、発泡性エアゾール組成物を提供する。
化学変性セルロースナノファイバーが、酸化セルロースナノファイバー及びエーテル化セルロースナノファイバーから選ばれる1種以上である、請求項3に記載の発泡性エアゾール組成物。
酸化セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基の量が、酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して0.1mmol/g〜3.0mmol/gである、請求項4に記載の発泡性エアゾール組成物。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50である、請求項6に記載の発泡性エアゾール組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<A>> 本発明の発泡性エアゾール組成物
本発明の発泡性エアゾール組成物は、セルロースナノファイバーを含む原液及び噴射剤を少なくとも含み、好ましくはセルロースを含む原液及び噴射剤からなる。本発明の発泡性エアゾール組成物は、さらに必要に応じその他の添加剤を含んでいてもよい。以下、発泡性エアゾール組成物について、詳細に説明する。
【0010】
<噴射剤>
本発明の発泡性エアゾール組成物は、噴射剤を含む。噴射剤の種類は特に限定されず、エアゾール製品に通常使用される噴射剤を含んでいてよい。噴射剤としては、例えば、フロン、液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガス、酸素、空気、ヘリウム及びアルゴンが挙げられる。噴射剤は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、液化石油ガス及び炭酸ガスから選ばれる1種以上が発泡性、起泡性の観点から好ましい。
前記噴射剤の含有率は、特に限定されないが、発泡性エアゾール組成物に対し1〜60質量%であることが好ましい。
【0011】
<原液>
発泡性エアゾール組成物に含まれる原液は、容器に封入する成分のうち、噴射剤を除く成分である。原液の含有率は、発泡性エアゾール組成物に対し、40〜99質量%であることが好ましい。原液は、セルロースナノファイバーを含む。
[1.セルロースナノファイバー]
本発明においてセルロースナノファイバーとは、未変性セルロース又は化学変性セルロースの微細繊維である。セルロースナノファイバーは、通常平均繊維径が3〜500nm程度であり、好ましくは3nm以上500nm以下である。また、本発明におけるセルロースナノファイバーは、平均アスペクト比が通常10以上である。アスペクト比の上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。
セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長の測定は、例えば、セルロースナノファイバーの0.001質量%水分散液を調製し、この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測することにより、数平均繊維径あるいは繊維長として算出することができる。また、平均アスペクト比は下記の式により算出することができる:
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0012】
本発明におけるセルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊すること、セルロース原料を化学変性した後に解繊すること、又は、セルロース原料を解繊した後に化学変性することにより得ることができる。本発明におけるセルロースナノファイバーとして、公知の方法により製造されたセルロースナノファイバーを用いることができ、また市販品を用いてもよい。
【0013】
セルロースナノファイバーの特長として、分散液中において、比較的低いずり速度領域においては高い見掛け粘度を示すが、エアゾール容器から組成物が噴射される際の、噴射剤の圧力と外気の圧力との圧力差に起因する比較的高いずり速度領域においては、低い粘度を示す、いわゆるチクソトロピー性を持つ。従って、本発明の発泡性エアゾール組成物が、原液中にセルロースナノファイバーを含むことにより、噴出時においては原液が均一に噴出され、かつ噴出された後は再び原液の粘度が上昇し被噴射物の表面に保持されるため、気泡が消失して液状になりにくく、泡が一定の弾力を持ち、かつ泡を対象物へ塗り広げやすい、泡が対象物から垂れにくいという効果を十分に発揮し得ると推察される。
【0014】
セルロースナノファイバーの含有率は、原液の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.003質量%以上であり、さらにより好ましくは0.005質量%以上である。
セルロースナノファイバーの含有率は、原液の全質量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、さらにより好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以下又は0.05質量%より少なく、とりわけ好ましくは、0.04質量%以下、0.03質量%以下、0.02質量%以下、又は0.01質量%以下である。
セルロースナノファイバーの含有率は、原液の全質量に対して、0.001〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.001〜1質量%の範囲であることがより好ましく、0.003〜0.5質量%であることがさらに好ましい。セルロースナノファイバーの含有率が、原液の全質量に対して0.001質量%以上であると、泡質の改善効果に十分であり、また10質量%以下であると、泡の保持時間が適度であり、あるいは泡が適度な固さとなり、本発明の発泡性エアゾール組成物を各種用途に好適に用い得る。
【0015】
[1−1.セルロース原料]
本発明におけるセルロースナノファイバーの原料には特に限定はなく、公知のセルロース原料からセルロースナノファイバーを製造することができる。セルロース原料としては、例えば、植物由来の原料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)由来の原料、藻類由来の原料、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))由来の原料、微生物産生物等が挙げられる。本発明のセルロースナノファイバーのセルロース原料はこれらのいずれかであってよく、これらの2種以上の組み合わせであってもよい。本発明におけるセルロースナノファイバーのセルロース原料は、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
【0016】
本発明に用いられるセルロース原料の数平均繊維径は特に制限されるものではなく、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度にすることが好ましい。
【0017】
[1−2.分散]
セルロース原料の解繊処理又は変性処理を行う際には、セルロース原料の分散処理を行って、セルロース原料の分散体を調整してもよい。セルロース原料を分散させる分散媒は、セルロース原料が親水性であることから、水であることが好ましい。
【0018】
[1−3.変性]
本発明では、繊維を構成するセルロースの少なくとも一部が化学変性されている、化学変性セルロースナノファイバーをセルロースナノファイバーとして用いてよい。化学変性により、繊維の微細化が十分に進み、均一な繊維長及び繊維径が得られ、本発明の効果を発揮しやすくなるので、本発明においては化学変性セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。
化学変性セルロースナノファイバーを得るための変性方法は特に限定されないが、例えば、酸化、エーテル化、エステル化、アセチル化、シランカップリング、フッ素変性、及びカチオン化が挙げられ、中でも酸化、エーテル化、カチオン化、又はエステル化が好ましい。以下これらの変性について説明する。
【0019】
[1−3−1.酸化]
本発明において、酸化により変性されているセルロースナノファイバー(以下、酸化セルロースナノファイバーともいう。)を用いる場合、酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基の量は、酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、下限は、好ましくは、0.1mmol/g以上であり、より好ましくは、0.5mmol/g以上であり、さらに好ましくは1.0mmol/g以上であり、さらにより好ましくは1.2mmol/g以上である。また、上限は、好ましくは3.0mmol/g以下であり、より好ましくは2.5mmol/g以下であり、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。したがって、酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基の量は、酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.1mmol/g〜3.0mmol/gであることが好ましく、0.5mmol/g〜3.0mmol/gがより好ましく、1.0mmol/g〜2.5mmol/gがさらに好ましく、1.2mmol/g〜2.0mmol/gがさらにより好ましい。
【0020】
セルロース原料又はセルロース原料を解繊した後に得られるセルロース繊維(以下、解繊セルロース繊維ともいう。)の酸化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロース原料を酸化により変性することにより得られるセルロース繊維(以下、酸化セルロース繊維ともいう。)又は酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.1mmol/g〜3.0mmol/gになるように調整することが好ましい。
【0021】
酸化の方法は特に限定されないが、その例として、N−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中でセルロース原料又は解繊セルロース繊維を酸化する方法が挙げられる。この酸化方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
【0022】
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
【0023】
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾質量1gのセルロースに対して、下限は、好ましくは0.01mmol以上であり、より好ましくは0.05mmol以上である。上限は、好ましくは10mmol以下であり、より好ましくは1mmol以下であり、さらに好ましくは0.5mmol以下である。したがって、N−オキシル化合物の使用量は、絶乾質量1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1〜4mmol/L程度が好ましい。
【0024】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属(例えば臭化ナトリウム等)が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択してよい。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾質量1gのセルロースに対して、下限は、好ましくは0.1mmol以上であり、より好ましくは0.5mmol以上である。上限は、好ましくは100mmol以下であり、より好ましくは10mmol以下であり、さらに好ましくは5mmol以下である。したがって、臭化物及びヨウ化物の合計量は、絶乾質量1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
【0025】
酸化剤としては、特に限定がなく、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷の少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがさらに好ましい。酸化剤の使用量は、例えば、絶乾質量1gのセルロースに対して、下限は、好ましくは0.5mmol以上であり、より好ましくは、1mmol以上であり、さらに好ましくは、3mmol以上である。上限は、好ましくは500mmol以下であり、より好ましくは50mmol以下であり、さらに好ましくは25mmol以下であり、最も好ましくは、10mmol以下である。したがって、酸化剤の使用量は、絶乾質量1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。また、酸化剤の使用量は、例えば、N−オキシル化合物1molに対して、下限が好ましくは1mol以上である。上限は好ましくは40mol以下である。したがって、酸化剤の使用量は、N−オキシル化合物1molに対して、好ましくは1〜40mmolである。
【0026】
セルロースの酸化反応時のpH、温度、反応時間などの条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても反応は効率よく進行する。よって、反応温度は、下限が、好ましくは4℃以上であり、より好ましくは15℃以上である。上限は、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。したがって、反応温度は、4〜40℃が好ましく、また15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。反応液のpHは、下限が、好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上である。上限は、好ましくは12以下であり、より好ましくは11以下である。したがって、反応液のpHは、好ましくは8〜12であり、より好ましくは10〜11程度である。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHが低下する傾向がある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を反応液中に添加して、反応液のpHを上記範囲に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
【0027】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、下限が、通常は0.5時間以上である。上限は、通常は6時間以下であり、好ましくは4時間以下である。したがって、反応時間は、通常は0.5〜6時間、例えば、好ましくは0.5〜4時間程度である。
【0028】
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で塩(例、塩化ナトリウム)が副生して反応を阻害する場合であっても、効率よく酸化させることができる。
【0029】
カルボキシル化を含む、酸化方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾン処理は、通常、オゾンを含む気体とセルロース原料又は解繊セルロース繊維とを接触させることにより行われる。
【0030】
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、下限が、好ましくは50g/m
3以上である。上限が、好ましくは250g/m
3以下であり、より好ましくは220g/m
3以下である。したがって、オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/m
3であることが好ましく、50〜220g/m
3であることがより好ましい。
【0031】
セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対するオゾン添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の固形分を100質量%とした際に、下限が、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下である。したがって、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対するオゾン添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の固形分を100質量%とした際に、0.1〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0032】
オゾン処理温度は、下限が、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは20℃以上である。上限は、好ましくは50℃以下である。したがって、オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。
オゾン処理時間は、特に限定されないが、下限が、通常1分間以上であり、好ましくは30分間以上である。上限は、通常360分間以下である。したがって、オゾン処理時間は、通常1〜360分間程度であり、30〜360分間程度が好ましい。
オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを抑制することができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
【0033】
オゾン処理後に得られる結果物に対してさらに、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料又は解繊セルロース繊維を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
【0034】
酸化セルロース繊維又は酸化セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間などの酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
【0035】
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロース繊維又は酸化セルロースナノファイバーの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる:
【0036】
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース繊維又は酸化セルロースナノファイバー〕=a〔ml〕×0.05/酸化セルロース繊維又は酸化セルロースナノファイバー質量〔g〕。
【0037】
[1−3−2.エーテル化]
エーテル化としては、カルボキシメチル化によるエーテル化、メチル化によるエーテル化、エチル化によるエーテル化、シアノエチル化によるエーテル化、ヒドロキシエチル化によるエーテル化、ヒドロキシプロピル化によるエーテル化、エチルヒドロキシエチル化によるエーテル化、ヒドロキシプロピルメチル化によるエーテル化などが挙げられる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
【0038】
カルボキシメチル化によりセルロース原料又は解繊セルロース繊維を変性する場合、得られるカルボキシメチル化セルロース繊維又はセルロースナノファイバー中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.30が更に好ましい。
【0039】
カルボキシメチル化の方法は特に限定されないが例えば、発底原料としてのセルロース原料又は解繊セルロース繊維をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。カルボキシメチル化反応の際は通常溶媒を用いる。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60質量%以上又は95質量%以下であり、60〜95質量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対し通常は3質量倍以上である。上限は特に限定されないが通常20質量倍以下である。従って、溶媒の量は3〜20質量倍であることが好ましい。
【0040】
マーセル化は通常、発底原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。
マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0倍モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい。従って、0.5〜20倍モルが好ましく、1.0〜10倍モルがより好ましく、1.5〜5倍モルがさらに好ましい。
【0041】
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、通常は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。
【0042】
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常10.0倍モル以下であり、5倍モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、好ましくは0.05〜10.0倍モルであり、より好ましくは0.5〜5倍モルであり、更に好ましくは0.8〜3倍モルである。反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常30分間以上であり、好ましくは1時間以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分間〜10時間であり、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
【0043】
カルボキシメチル化セルロース繊維又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法によって行えばよい。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース塩、CM化セルロース塩)を水素型カルボキシメチル化セルロース(H−CM化セルロース)にする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH
2SO
4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
【0044】
A=[(100×F’−(0.1NのH
2SO
4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのNaOHのファクター
F:0.1NのH
2SO
4のファクター
【0045】
[1−3−3.カチオン化]
カチオン化によりセルロース原料又は解繊セルロース繊維を変性する場合、得られるカチオン化セルロース繊維又はカチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等のカチオン、又は該カチオンを有する基を分子中に含んでいればよい。カチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウムを有する基を含むことが好ましく、四級アンモニウムを有する基を含むことがより好ましい。
【0046】
カチオン化の方法は特に限定されないが例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維にカチオン化剤と触媒を水及び/又はアルコールの存在下で反応させる方法が挙げられる。カチオン化剤としては例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト(例、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハイドライト)又はこれらのハロヒドリン型などが挙げられ、これらのいずれかを用いることで、四級アンモニウムを含む基を有するカチオン化セルロースを得ることができる。
触媒としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属が挙げられる。アルコールとしては例えば、炭素数1〜4のアルコールが挙げられる。
カチオン化剤の量は、好ましくはセルロース原料100質量%に対して5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。上限は通常800質量%以下であり、好ましくは500質量%以下である。
触媒の量は、好ましくはセルロース繊維又は解繊セルロース繊維100質量%に対して0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。上限は通常7質量%以下であり、好ましくは3質量%以下である。
アルコールの量は、好ましくはセルロース繊維又は解繊セルロース繊維100質量%に対して50質量%以上であり、より好ましくは100質量%以上である。上限は通常50000質量%以下であり、好ましくは500質量%以下である。
【0047】
カチオン化の際の反応温度は通常10℃以上、好ましくは30℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。
反応時間は、通常10分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは5時間以下である。
カチオン化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
【0048】
カチオン化セルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、カチオン化剤の添加量、水及び/又はアルコールの組成比率のコントロールによって調整することができる。カチオン置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を示す。言い換えると、カチオン置換度は、「導入された置換基のモル数をグルコピラノース環の水酸基の総モル数で割った値」として定義される。純粋セルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、カチオン置換度の理論最大値は3(最小値は0)である。
【0049】
カチオン化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましい。上限は、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下が更に好ましい。従って、0.01〜0.40であることが好ましく、0.02〜0.30がより好ましく、0.03〜0.20が更に好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01以上であることにより、十分にナノ解繊することができる。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40以下であることにより、膨潤又は溶解を抑制することができ、これにより繊維形態を維持することができ、ナノファイバーとして得られない事態を防止することができる。
【0050】
グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法の一例として、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを変性化剤として用いた場合における例を以下に説明する。試料(カチオン化セルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学)で窒素含有量を測定し、次式によりカチオン化度を算出する。ここでいうカチオン置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値である。
【0051】
カチオン置換度=(162×N)/(1−116×N)
N:窒素含有量
【0052】
[1−3−4.エステル化]
セルロース原料又は解繊セルロース繊維をエステル化して、エステル化セルロース繊維又はエステル化セルロースナノファイバーを得る方法は、特に限定されないが例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる方法が挙げられる。化合物Aについては後述する。
【0053】
セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる方法としては例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維に化合物Aの粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、且つエステル化効率が高くなることから、セルロース原料又は解繊セルロース繊維又はそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
【0054】
化合物Aとしては例えば、リン酸系化合物(例、リン酸、ポリリン酸)、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。化合物Aは、塩の形態でもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またセルロース原料(例、パルプ繊維)のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物は、リン酸基を有する化合物であればよく、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。用いられるリン酸系化合物は、1種、あるいは2種以上の組み合わせでもよい。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸のナトリウム塩がより好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがさらに好ましい。また、反応の均一性が高まり、且つリン酸基導入の効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから、7以下が好ましい。パルプ繊維の加水分解を抑える観点から、pH3〜7がより好ましい。
【0055】
エステル化の方法としては例えば、以下の方法が挙げられる。セルロース原料又は解繊セルロース繊維の懸濁液(例えば、固形分濃度0.1〜10質量%)に化合物Aを撹拌しながら添加し、セルロースにリン酸基を導入する。セルロース原料又は解繊セルロース繊維を100質量部とした際に、化合物Aがリン酸系化合物の場合、化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。これにより、エステル化セルロース繊維又はエステル化セルロースナノファイバーの収率をより向上させることができる。上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。これにより、化合物Aの使用量に見合った収率を効率よく得ることができる。従って、0.2〜500質量部が好ましく、1〜400質量部がより好ましい。
【0056】
セルロース原料又は解繊セルロース繊維に対し化合物Aを反応させる際、さらに化合物Bを反応系に加えてもよい。化合物Bを反応系に加える方法としては例えば、セルロース原料又は解繊セルロース繊維のスラリー、化合物Aの水溶液、又はセルロース原料もしくは解繊セルロース繊維と化合物Aのスラリーに、化合物Bを添加する方法が挙げられる。
【0057】
化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示すことが好ましく、塩基性を示す窒素含有化合物がより好ましい。「塩基性を示す」とは通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で化合物Bの水溶液が桃〜赤色を呈すること、又は/及び化合物Bの水溶液のpHが7より大きいことを意味する。塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。アミノ基を有する化合物として例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。この中でも低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、2〜1000質量部が好ましく、100〜700質量部がより好ましい。反応温度は0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常1〜600分程度であり、30〜480分が好ましい。エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを抑制ことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
【0058】
セルロース原料又は解繊セルロース繊維に化合物Aを反応させた後、通常はエステル化セルロース繊維又はエステル化セルロースナノファイバーの懸濁液が得られる。エステル化セルロース繊維又はエステル化セルロースナノファイバーの懸濁液は必要に応じて脱水される。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料又は解繊セルロース繊維の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後100〜170℃で加熱処理することがより好ましい。
【0059】
リン酸エステル化セルロースにおいては、セルロースにリン酸基置換基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸エステル化セルロース繊維は容易にセルロースナノファイバーまで解繊することができる(このようにセルロースナノファイバーとなるまで行う解繊を、ナノ解繊ともいう。)。リン酸エステル化セルロース繊維のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。これにより、十分な解繊(例えばナノ解繊)が実施できる。上限は、0.40以下が好ましい。これにより、リン酸エステル化セルロース繊維の膨潤又は溶解を抑制し、セルロースナノファイバーが得られない事態の発生を抑制することができる。従って、0.001〜0.40であることが好ましい。また、リン酸エステル化により変性されているセルロースナノファイバー(リン酸エステル化セルロースナノファイバー)のグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。上限は、0.40以下が好ましい。したがって、リン酸エステル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001〜0.40であることが好ましい。
【0060】
リン酸エステル化セルロース繊維に対して、煮沸後冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これにより解繊を効率よく行うことができる。
【0061】
[1−4.解繊]
解繊は、セルロース原料に対して変性処理を施す前に行ってもよいし、セルロース原料に変性処理を施した後の、化学変性されているセルロース繊維(例、酸化セルロース繊維、カルボキシメチル化セルロース繊維、カチオン化セルロース繊維、エステル化セルロース繊維(リン酸エステル化セルロース繊維))に対して行ってもよい。変性により解繊に必要なエネルギーが低減されるため、解繊は、セルロース原料に変性処理を施した後に行うことが好ましい。
【0062】
解繊は、一度に行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回行う場合、それぞれの解繊の時期はいつでもよい。
【0063】
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの方式の装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の、高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。これらの装置は、セルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維(通常は水系分散体)に強力なせん断力を印加することができるので好ましい。
【0064】
効率よく解繊するために、セルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維(通常は水系分散体)に印加する圧力は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維(通常は水系分散体)に上記圧力を印加することができかつ強力なせん断力を印加できるので、湿式の、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましい。
【0065】
また、解繊(好ましくは高圧ホモジナイザーでの解繊)、又は必要に応じて解繊前に行う分散処理に先立って、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理としては、例えば、混合、撹拌、乳化、分散が挙げられ、公知の装置(例、高速せん断ミキサー)を用いて行えばよい。
【0066】
解繊をセルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維の分散体(通常は水系分散体)に対して行う場合、分散体中のセルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維としての固形分濃度は、下限は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、処理するセルロース原料又は化学変性されているセルロース繊維の量に対して液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下であり、好ましくは6質量%以下である。これにより、流動性を保持することができる。
【0067】
[1−5.形態]
セルロースナノファイバーの形態は特に限定されるものではなく、例えば、セルロースナノファイバーの分散液、該分散液の乾燥固形物、該分散液の湿潤固形物、セルロースナノファイバーと水溶性高分子との混合液、該混合液の乾燥固形物、該混合液の湿潤固形物、その他公知の形態のセルロースナノファイバーが挙げられる。ここで、湿潤固形物とは、分散液または混合液と、乾燥固形物との中間の態様の固形物である。
【0068】
セルロースナノファイバーの分散液又はセルロースナノファイバーと水溶性高分子との混合液の、乾燥固形物および湿潤固形物は、該分散液または混合液を脱水及び/又は乾燥して調製すればよい。
【0069】
<原液に含まれ得るその他の任意成分>
原液は、セルロースナノファイバー以外に、他の成分を任意で含んでいてもよい。他の成分に特に限定はないが、例えば、脂肪酸石鹸、界面活性剤、液状分散媒体、無機化合物(例、金属酸化物、金属、無機塩、シリカ系化合物)、セルロースナノファイバー以外の有機化合物(例、オイル類、ガム類、ラテックス類、水溶性高分子類)、保湿剤、紫外線遮蔽剤、及び抗菌防腐剤が挙げられる。
[脂肪酸石鹸]
本発明の発泡性エアゾール組成物は、原液中に脂肪酸石鹸を含んでいてもよい。原液に、アルカリ脂肪酸を配合することにより、原液に脂肪酸石鹸を含有させてもよいし、原液に、脂肪酸とアルカリ剤を配合することにより、原液に脂肪酸石鹸を含有させてもよい。
脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸としては、特に限定されず、公知の脂肪酸であってよく、通常化粧料で使用されているものであってよい。脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和直鎖脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和直鎖脂肪酸;が挙げられる。脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸は、1種のみでもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。前記脂肪酸の配合量は、原液の1〜10質量%の範囲であることが好ましい。1質量%以上では発泡性により優れた吐出物が得られやすい傾向があり、10質量%以下では原液中で析出しにくいなど安定性が良好である。
脂肪酸石鹸を構成するアルカリ剤としては、特に限定されず、公知のアルカリ剤であってよく、通常化粧料で使用されているものであってよい。アルカリ剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びアミノメチルプロパノールが挙げられる。前記アルカリ剤の配合量は、原液の0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0070】
[界面活性剤]
本発明の発泡性エアゾール組成物は、原液中に界面活性剤を含んでいてもよく、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤が含まれることにより、前記発泡性エアゾール組成物が、容器から噴射された後に噴射剤の膨張に伴ってより良好な泡となり得る。界面活性剤の種類は特に限定されず、公知のものを用いてよい。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を挙げることができる。中でも非イオン性界面活性剤が皮膚に対する刺激性が低いという観点から好ましい。
界面活性剤は、1種単独で原液中に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液中に含まれていてもよい。
【0071】
非イオン性界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。この中でも特にポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルが発泡性、起泡性の面が良好であるため好ましい。
【0072】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩が挙げられる。
【0073】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、及び塩化アルキルベンザルコニウムが挙げられる。
【0074】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びアルキルジエチレントリアミノ酢酸が挙げられる。
【0075】
前記界面活性剤の配合量は、原液全体の0.05〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.05質量%以上では起泡性や泡の保持性が十分であり、10質量%以下であると泡の保持時間が適度であり、本発明の発泡性エアゾール組成物を、各種用途に好適に用い得る。
【0076】
[液状分散媒体]
本発明における発泡性エアゾール組成物は、原液中に、各成分を分散させるための液状分散媒体を必要に応じ1種類以上含んでもよい。前記液状分散媒体としては、特に限定されないが、例えば、水及び水溶性有機溶媒が挙げられる。前記水溶性有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1−4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;及びカルビトール類が挙げられる。液状分散媒体は、1種単独で原液中に含まれていてもよく、2種以上の混合媒体として原液中に含まれていてもよい。液状分散媒体は、好ましくは水である。
【0077】
[無機化合物]
本発明における発泡性エアゾール組成物は、原液中に、金属酸化物、金属、無機塩、シリカ系化合物などの無機化合物を、必要に応じ1種類以上含んでもよい。無機化合物は、1種単独で原液中に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液中に含まれていてもよい。
前記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、アルミナ、二酸化亜鉛、ベンガラ、及び黄酸化鉄が挙げられる。
前記金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及び鉄が挙げられる。
前記無機塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、及びリン酸カルシウムが挙げられる。
前記シリカ系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ゼオライト、モンモリロナイト、アスベスト、スメクタイト、マイカ、ヒュームドシリカ、及びコロイダルシリカが挙げられる。
【0078】
[有機化合物]
本発明における発泡性エアゾール組成物は、原液中に、オイル類、ガム類、ラテックス類、水溶性高分子類などの、セルロースナノファイバー以外の有機化合物を、必要に応じ1種類以上含んでもよい。有機化合物は、1種単独で原液に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液に含まれていてもよい。
前記オイル類としては、特に限定されないが、例えば、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナバウロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール(セテアリルアルコール)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸(ベヘン酸)、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル−オクチルドデシル−ベヘニル等のコレステロール及びその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2−エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコーン樹脂;メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類等が挙げられる。これらの中でも、セトステアリルアルコール(セテアリルアルコール)、ステアリン酸、ベヘニン酸(ベヘン酸)、ベヘニルアルコールが泡弾力性、泡保持性の観点から好ましい。
【0079】
前記ガム類としては、特に限定されないが、例えば、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、及びカラギーナンが挙げられる。この中でもキサンタンガムが泡弾力性、泡保持性の観点から好ましい。
【0080】
前記ラテックス類としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合系ラテックス、及びアクリル系ラテックスが挙げられる。
【0081】
前記水溶性高分子類としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アルギン酸、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースが挙げられ、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0082】
本発明における発泡性エアゾール組成物は、原液中に、前記成分の他に、具体的な用途における有効成分を含んでいてもよい。例えば、発泡性エアゾール組成物が、化粧料に使用される場合、例えば、保湿剤、紫外線遮蔽剤、抗菌防腐剤等を1種類以上含んでもよい。
【0083】
前記保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコール等の多価アルコール;ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ、クエン酸など有機酸及びその塩;ヒアルロン酸ソーダなどヒアルロン酸及びその塩;酵母及び酵母抽出液の加水分解物、酵母培養液、乳酸菌培養液など醗酵代謝産物;コラーゲン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性蛋白;コラーゲン加水分解物、カゼイン加水分解物、シルク加水分解物、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のペプチド類及びその塩;トレハロース、キシロビオース、マルトース、蔗糖、ブドウ糖、植物性粘質多糖等の糖類・多糖類及びその誘導体;水溶性キチン、キトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩等のグリコサミノグリカン及びその塩;グリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン酸等のアミノ酸;アミノカルボニル反応物等の糖アミノ酸化合物;アロエ、マロニエ等の植物抽出液;トリメチルグリシン、尿素、尿酸、アンモニア、レシチン、ラノリン、スクワラン、スクワレン、グルコサミン、クレアチニン、DNA、RNA等の核酸関連物質等が挙げられる。この中でも、グリセリン、ジグリセリン、クエン酸及びその塩、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールが泡形成性、水分保持性の観点から好ましい。保湿剤は、1種単独で原液に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液に含まれていてもよい。
【0084】
前記紫外線遮蔽剤としては、特に限定されないが、例えば、パラアミノ安息香酸及びその誘導体;ホモメチル−7N−アセチルアラントイラニレート;ブチルメトキシベンゾイルメタン;ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート等のパラメトキシケイ皮酸誘導体;アミルサリシレート等のサリチル酸誘導体;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル;酢酸液状ラノリン;コガネバナ根抽出エキス;トリアニリノ−p−カルボエチルヘキシルオキシ−トリアジン等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、1種単独で原液に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液に含まれていてもよい。
【0085】
前記抗菌防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、ホウ酸、レゾルシン、トリブロムサラン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、チラム、感光素201号、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、酢酸トコフェロール、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、2,4,4−トリクロロ−2−ヒドロキシフェノール、及びヘキサクロロフェンが挙げられる。これらの中でもフェノキシエタノールが好ましい。抗菌防腐剤は、1種単独で原液に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで原液に含まれていてもよい。
【0086】
<発泡性エアゾール組成物の製造方法>
本発明の発泡性エアゾール組成物の製造方法は、特に限定されず、従前公知の方法により製造することができる。例えば、原液に含まれる各成分を、従来公知の方法で混合(例えばホモミキサー等による混合)して原液を調製し、原液を耐圧性のあるエアゾール容器(例、缶)に充填し、噴射用バルブを装着し、さらに噴射剤を充填して、容器内を加圧することにより、本発明の発泡性エアゾール組成物を得ることができる。製造の際、必要に応じて原液を加熱あるいは冷却してもよい。
<<B>> 本発明のキット
本発明は、エアゾール容器、及びエアゾール容器に充填された発泡性エアゾール組成物を含むキットを提供する。
本発明のキットに含まれる発泡性エアゾール組成物については、上記項目<<A>>で説明したとおりである。
エアゾール容器は、特に限定されず、公知のエアゾール容器であってよく、収容する発泡性エアゾール組成物に応じた耐圧性を備えていればよい。
本発明のキットは、好ましくはバルブを含む。
本発明のキットの製造方法には、特に限定がなく、従前公知の方法により製造することができる。
本発明のキットにおける、エアゾール容器の内圧は、特に限定はないが、25℃において0.3〜1.5MPaとなるように調整されていることが好ましい。
【0087】
本発明の発泡性エアゾール組成物は、消臭剤・芳香剤・クリーナー・ワックス等の家庭用品、化粧品・医薬品等の人体用品、塗料用品、殺虫用品、金属探傷剤・防錆剤等の工業用品、自動車用品等の用途に利用することができる。中でも化粧品に好適に用いられ、中でもパック化粧料に特に好適に用いられる。すなわち、本発明は、パック化粧料である、発泡性エアゾール組成物を提供する。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
<実施例1>
[酸化セルロースナノファイバーの製造]
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが絶乾1gのセルロースに対して5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で固形分1.0%(w/w)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバーの水分散液を得た。酸化セルロースナノファイバーの平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
【0090】
[発泡性エアゾール製品(キット)の製造]
パック化粧料を想定し、下表1に示した配合に従い、原液材料をプロペラ式攪拌機(新東科学社製、機種名:BLh600)を用いて400rpmの回転速度で約30分間撹拌して原液を得た。この原液をエアゾール容器に充填し、エアゾール容器に、さらに噴射剤として液化天然ガス(LPG)を、原液:LPG=96質量%:4質量%の比率で充填し、さらに炭酸ガスを圧力が0.5MPaになるように充填し、さらに噴射形態が泡(フォーム)噴射型である噴射口部品を取り付けることにより、パック化粧料としての発泡性エアゾール組成物を含む発泡性エアゾール製品(キット)を得た。得られた発泡性エアゾール製品について、発泡性エアゾール組成物の適性を評価するために噴射状態を、及びパック化粧料への適性を評価するために、気泡の状態、泡の弾力性、泡の伸ばしやすさ、肌への吸着性を、それぞれ以下の方法により評価した。
【0091】
[噴射状態]
水平なガラス板上に5秒間噴射し、噴射状態を目視観察し以下の評価を行った。
×:ノズルから組成物が発射されず、噴射不可能である。
△:ノズルから組成物が噴射されるが、噴射が不連続である。
○:ノズルから組成物が連続的に噴射される。
【0092】
[気泡の状態]
水平なガラス板上に5秒間噴射し、泡中における気泡の大きさを目視観察し以下の官能評価を行った。
×:泡状ではなく液状で噴射される。
△:気泡が大きい、あるいは不均一である。
○:気泡が緻密、かつ均一である。
【0093】
[泡の弾力性]
水平なガラス板上に5秒間噴射したものを指でつつき、以下の官能評価を行った。
×:弾力がほとんどない
△:弾力はあるが十分でない
○:十分な弾力がある
【0094】
[泡の伸ばしやすさ]
手のひらに5秒間噴射したものを肌に伸ばし、以下の官能評価を行った。
×:伸びにくい
△:伸びるが十分でない
○:非常に伸びやすい
【0095】
[対象物(肌)への吸着性]
手のひらに5秒間噴射したものを肌に伸ばし、以下の官能評価を行った。
×:ほとんど吸着しない
△:わずかに吸着する
○:吸着する
◎:非常によく吸着する
【0096】
<実施例2>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーの水分散液の配合量を、表1に示した通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0097】
<実施例3>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーの水分散液を、以下の方法で製造したカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散液に変更し、表1に示した通りに配合した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0098】
[カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの製造]
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(発底原料の無水グルコース残基当たり2.25倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり1.5倍モル)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。これを水で固形分1%(w/w)とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊しカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを得た。平均繊維径は15nm、アスペクト比は50であった。
【0099】
<実施例4>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーの水分散液を、以下の方法で製造したカルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有組成物(乾燥固形物)の水分散液に変更し、表1に示した通りに配合した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0100】
[カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有組成物(乾燥固形物)水分散液の製造]
実施例3と同様の方法により製造されたカルボキシメチル化セルロースナノファイバー(平均繊維径:15nm、アスペクト比:50)を固形分0.7質量%の水性懸濁液に調整し、調整された水性懸濁液にカルボキシメチルセルロース(商品名:F350HC−4、日本製紙より供給)をカルボキシメチル化セルロースナノファイバーに対して40質量%添加し、ミキサー(TKホモミキサー、プライミクス製)により12,000rpmで60分間攪拌した。撹拌後の水性懸濁液に、水酸化ナトリウム0.5%水溶液を加え、pHを9に調整した後、蒸気圧力0.5MPa.G、ドラム回転数2rpmのドラム乾燥機(D0303、カツラギ工業製)で乾燥し、水分量5質量%のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有組成物(乾燥固形物)を得た。この乾燥固形物を水で固形分1%(w/w)とし、ミキサー(TKホモミキサー、プライミクス製)により6,000rpmで60分間攪拌し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有組成物(乾燥固形物)の水分散液を得た。カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有組成物(乾燥固形物)の1質量%水分散液は、0.7質量%のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー及び0.3質量%のカルボキシメチルセルロースを含む。
【0101】
<比較例1>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーを配合せず、表1に示した配合とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0102】
<比較例2>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーを配合せず、キサンタンガム(製品名:エコーガムF、DSP五協フード アンド ケミカル社製)を表1に示した配合で加えた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0103】
<比較例3>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーを配合せず、ヒドロキシエチルセルロース(製品名:HEC SE550、ダイセルファインケム社製)を表1に示した配合で加えた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0104】
<比較例4>
実施例1において、酸化セルロースナノファイバーを配合せず、ヒドロキシエチルセルロース(製品名:HEC SE550、ダイセルファインケム社製)を表1に示した配合で加えた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1中の、ポリオキシエチレンフィトスタノールは、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルを意味する。
【0107】
表1から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有する実施例1〜4の発泡性エアゾール組成物は、連続的に容器から噴射されて緻密で均一な泡を形成し、形成された泡は一定の弾力を持ち、かつ形成された泡を対象物(肌)へ容易に塗り広げることができる。さらに、泡の対象物(肌)への吸着性が良好であって泡が対象物から垂れにくい。泡の対象物(肌)への吸着性については、実施例3および4の結果から、特にカルボキシメチル化セルロースナノファイバーが良好である。セルロースナノファイバーを含有しない比較例1〜4の組成物は、連続的に容器から噴射されるものの、気泡の状態、泡の弾力性のいずれも不良である。これらの結果は、本発明の発泡性エアゾール組成物は、エアゾール組成物としての十分な適性を持ちつつ、発泡性エアゾール組成物として求められる各種性能を、高い水準で同時に備えることを示す。また、本発明のパック化粧料は、肌への吸着性が良好なことを示す。