【課題】基材や要求性能のなどに応じて、構造中にソフトセグメントを自由に選択することができ、環境負荷が小さく、柔軟性に優れ、金属箔などに対する接着性が良好なポリヒドロキシウレタンの製造方法の提供。
【解決手段】金属に対する密着性に優れる接着剤用の材料となるポリヒドロキシウレタン樹脂を、原材料である環状カーボネート化合物とポリアミン化合物との重付加反応により製造する際に、環状カーボネート化合物として、構造中に芳香族炭化水素基を有する五員環カーボネート(1)と、構造中に柔軟な部分を有する五員環カーボネート(2)をそれぞれ、(1)と(2)との使用比率が、質量比で40:60〜10:90となるようにするポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法。
前記一般式(2)で示される化合物は、カーボネートポリオール、エステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群から選択されるいずれかのポリオールと、ジイソシアネート化合物とを用い、これらを、該ジイソシアネート化合物のイソシアネート基と、前記ポリオールの水酸基の官能基モル当量比が2:1〜3:2となるイソシアネート基が過剰となる範囲で反応させ、その後に、末端に残存したイソシアネート基に対してグリセリンカーボネートを反応させることにより製造されたものである請求項1に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法。
前記ジイソシアネート化合物が、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジル、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI及び、前記ジイソシアネートのいずれかと低分子量のポリオール又はポリアミン化合物との反応物である、2以上のイソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー、からなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物である請求項2に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法。
前記ポリアミン化合物が、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,6−シクロヘキサンジアミン、ピペラジン、キシリレンジアミン、2,5−ジアミノピリジン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルメタンからなる群から選択される少なくともいずれか1種の化合物である請求項1又は3に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法。
前記ポリヒドロキシウレタン樹脂が、その水酸基価が70〜120mgKOH/gの範囲内、そのガラス転移点が10〜30℃の範囲内、その重量平均分子量が10000〜100000の範囲内にある請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法。
【背景技術】
【0002】
金属は一般的に高強度であり耐久性が高いため、様々な分野で活用されている。また、金属は高いガスバリア性を持つことから、食品包装材料や医薬包装材料として、金属箔もしくは金属蒸着膜といった形で用いられている。金属素材を工業的に利用する際には、金属素材を単独で使用するだけではなく、例えば、上記した食品包装材料や医薬包装材料として用いる場合などでは、他の素材と接着して、もしくは金属同士を接着した形で使用されることも多く、その際に使用される金属用接着剤も多く存在する。金属用接着剤としては、例えば、ポリオール化合物とイソシアネート化合物から従来の製造方法により合成したポリウレタン系接着剤があり、数多く開発されている。
【0003】
ここで、従来用いられている金属用接着剤はいずれも石油由来の原材料からなるものであるのに対し、近年、環境問題の観点から、他の材料への代替や、環境負荷の低い製造方法が求められている。また、本発明者らの検討によれば、従来のポリウレタン系接着剤では、金属に対する、十分で良好な状態の接着性を実現できていないという課題がある。
【0004】
環境対応型のポリウレタン系材料として、環状カーボネート化合物とアミン化合物から合成されてなるポリヒドロキシウレタン樹脂が知られている(非特許文献1、非特許文献2参照)。ポリヒドロキシウレタン樹脂は、原料となる環状カーボネート化合物を、二酸化炭素を使用して合成できるため、その構造中に二酸化炭素を固定化した材料となる。このため、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、近年問題となっている温室効果ガス削減に寄与する材料であるといえる。
【0005】
また、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、従来の製造方法により合成されたポリウレタン樹脂(「従来のポリウレタン」と呼ぶ)とは異なり、側鎖に水酸基を持つことが大きな特徴である。そして、この水酸基は、金属表面に存在する吸着水と水素結合を結ぶため、金属に対する接着性が良好であり、従来のポリウレタンより接着力が高いことが知られている(非特許文献3)。
【0006】
しかしその一方で、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、その側鎖に有する水酸基が水素結合を結ぶことにより凝集力が高く、硬く脆い性質を持っている。そのため、金属箔やフィルムのような柔軟な基材に対して接着剤として使用した際には、基材に追従することができず容易に剥離してしまうことが欠点となっていた。
【0007】
これに対し、柔軟性を持つポリヒドロキシウレタン樹脂として、アミン化合物にエーテル結合をもつ化合物を使用することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この手法で使用されるエーテルを含むジアミンは、いずれも市場での入手が困難な物質であり、工業的なスケールでの使用は難しい。また、環状カーボネート化合物にエーテル結合を持つ化合物を使用することも提案されている(特許文献2)。しかし、この製造方法では、エーテル結合を持った化合物を使用することに限定されているが、一般的にエーテル結合は凝集力が弱く、樹脂の強度が低くなるといわれている。
【0008】
ここで、従来のポリウレタンにおけるソフトセグメントの形成には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール或いはポリカーボネートポリオールなどが使用されている。その場合、下記に述べるように、使用するポリオール成分によって得られるポリウレタンの特性は異なるものになる。ポリエーテルポリオールを使用した場合は、耐加水分解性は良好であるが、耐候性、耐酸化劣化性、機械物性が劣るものになる。ポリエステルポリオールを使用した場合は、エーテル系のポリオールを使用した場合に比べ機械物性に優れたものになるが、加水分解を起こすことなどが問題となる。ポリカーボネートポリオールを使用した場合は、耐熱性、耐加水分解性に優れる一方で、低温における柔軟性、伸び、曲げ又は弾性回復性などの低温特性が悪いという問題がある。そのため、樹脂の製造においては、上記したソフトセグメントの形成に使用するポリオール成分によって生じる特性の違いを理解し、樹脂の物性・強度、そのほかの特性を、用途・要求性能に合わせて制御することが必要となる。このため、ソフトセグメント中の結合の種類を自由に選択できることが重要である。これに対し、前記した特許文献1、2に記載された製造方法では、ポリエーテル系の材料のみが使用可能であるため、工業的利用の観点から最適な技術とは言い難い。以上の問題点から、ポリヒドロキシウレタン樹脂は、金属に対する密着性に優れることが知られているものの、既存のポリウレタン系接着剤の代替品として工業的な利用の実現に至っていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法は、金属に対する密着性に優れるポリヒドロキシウレタン樹脂を、2種の特定の構造を持つ環状カーボネート化合物を特定比率で使用し、これらの環状カーボネート化合物とポリアミン化合物との重付加反応により製造する方法であり、下記の点を特徴とする。すなわち、重付加反応の原材料となる環状カーボネート化合物として、前記した一般式(1)で示される化合物(以下、「化合物I」と記載する場合がある)及び一般式(2)で示される化合物(以下、「化合物II」と記載する場合がある)を、「化合物I」と「化合物II」との使用比率が、質量比で40:60〜10:90となるようにして、それぞれ1種以上使用することを特徴とする。なお、本発明において「ポリアミン化合物」とは、2以上のアミノ基を有するアミン化合物のことである。
【0020】
(反応概略)
ポリヒドロキシウレタン樹脂は、環状カーボネート化合物とポリアミン化合物とを、例えば、以下に示すようなスキームにしたがって重付加反応することで製造することができる。
【0022】
本発明の製造方法では、本発明で規定する、一般式(1)で示される化合物(化合物I)と、一般式(2)で示される化合物(化合物II)の、2種類の環状カーボネート化合物を用いる。化合物Iは、その構造中にAで表した芳香族炭化水素基(芳香族環)を有するため、この化合物Iを用いて製造されるポリヒドロキシウレタン樹脂は、その構造中に分子間力による凝集力を持ったセグメントを有するものとなる。一方、一般式(2)で示される化合物(化合物II)は、その構造中に柔軟な構造を有するため、化合物IIを用いて製造されるポリヒドロキシウレタン樹脂も柔軟な特性を持ったものとなる。したがって、化合物Iと化合物IIとを用いて製造されるポリヒドロキシウレタン樹脂は、十分な凝集力と優れた柔軟性を併せ持つものになる。
【0023】
さらに、本発明の製造方法では、上記した化合物Iと化合物IIとを適切な割合となる比率の範囲内で使用し、これらの環状カーボネート化合物とポリアミン化合物との重付加反応を行う。本発明者らの検討によれば、このように構成したことで、本発明によって得られる樹脂は、金属接着力の高いポリヒドロキシウレタン樹脂となる。具体的には、化合物Iの使用量が多すぎると、凝集力が強くなり過ぎ、樹脂が硬く脆くなる。このような樹脂を接着剤に適用すると、剥離時に応力が緩和されなくなり、また、基材への追従もできないため、接着強度の低下へとつながる。一方、化合物IIの使用量が多すぎると凝集力が弱くなり、樹脂自体の強度が低下するため、接着剤として使用した際に凝集破壊を引き起こすこととなる。また、化合物IIの使用量が多くなると、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価も減少するため、金属接着性が低下する。これらのことから、本発明の製造方法では、化合物Iと化合物IIとの使用比率が、質量比でI:II=40:60〜10:90となるようにして用いる。すなわち、本発明では、化合物Iと化合物IIとの使用割合を、上記条件を満足する範囲内で、必要とされる特性に合わせて適宜設計することで、目的とする特性を有するポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることを達成している。以下、化合物I及びIIについて、さらに詳細に説明する。
【0024】
(化合物I)
本発明で使用する化合物Iは、下記一般式(1)で示され、その構造中のAは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。その構造中に、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでいてもよい。なお、上記芳香族炭化水素基は、アルキル基や環状炭化水素基などの置換基を有してもよく、このような置換基を有する場合、上記炭素数は、これらの置換基の炭素を含む値である。また、上記炭素数は、エステル基の炭素を含まない値である。
【0026】
上記一般式(1)中のAは、例えば、下記式で表される構造のいずれかであることが好ましい。下記式中のRは、水素原子又はメチル基を示す。
【0027】
本発明で使用する化合物Iは、例えば、下記式のように、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させることによって合成することができる。具体的には、原材料であるエポキシ化合物を、触媒の存在下、0〜160℃、大気圧〜1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気下で4〜24時間反応させることにより、化合物Iを得ることができる。
【0029】
上記のエポキシ化合物と二酸化炭素との反応の際に用いられる触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどの塩類や、4級アンモニウム塩などを挙げることができる。触媒の使用量は、エポキシ化合物100質量部に対して、1〜50質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがさらに好ましい。また、触媒として用いる塩類の溶解性を向上させるべく、トリフェニルホスフィンなどを併用してもよい。
【0030】
エポキシ化合物と二酸化炭素は、有機溶剤の存在下で反応させることもできる。有機溶剤としては、触媒を溶解しうるものであればよい。このような有機溶剤の具体例として、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤を挙げることができる。
【0031】
化合物Iは、本発明の方法で製造されるポリヒドロキシウレタン樹脂のハードセグメントを構成するためのモノマーである。このため、化合物Iは、その構造中のAとして、特定の芳香族炭化水素基をもつものであることを要する。具体的には、先に挙げたように、芳香族炭化水素基Aは、例えば、ベンゼン環骨格、非縮合ベンゼン環を2個以上有する芳香族多環骨格、及び、2個以上のベンゼン環を有する縮合多環骨格のいずれかである。このような骨格を有する化合物Iの好適な具体例としては、下記式(1−1)〜(1−7)で表される化合物を挙げることができる。なお、下記式中のRは、水素原子又はメチル基を示す。
【0033】
(化合物II)
下記一般式(2)で示される化合物IIは、ポリオール、イソシアネート化合物、及び、グリセリンカーボネートを反応させることによって合成することができる。例えば、カーボネートポリオール、エステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群から選択されるポリオールと、ジイソシアネート化合物とを、イソシアネート基と水酸基の官能基モル当量比が2:1〜3:2となる範囲で反応させた後、末端に残存したイソシアネート基に対してグリセリンカーボネートを反応させることにより得ることができる。より具体的には、まず、ポリオールとジイソシアネート化合物を、イソシアネート基が水酸基に対して過剰となる配合比で混合し、20〜150℃の温度で理論イソシアネート%(NCO%)になるまで反応させる。これにより、ポリオールの末端にイソシアネート化合物が結合した、主鎖の両末端にイソシアネート基を有する化合物を得ることができる。次いで、グリセリンカーボネートを加えて20〜150℃の温度で1〜24時間反応させることで、化合物IIを得ることができる。
【0035】
一般式(2)中のmは1又は2である。Bは、炭素数1〜400の脂肪族炭化水素基であり、その構造中に、環状構造、芳香環、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、カーボネート基、水酸基及びハロゲン原子のいずれかを含んでいてもよい。Yは、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであり、これらの基の構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基及びハロゲン原子のいずれかを含んでいてもよい。なお、上記Bにおいて、脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよく、置換基、環状構造、芳香環を有する場合、上記炭素数はこれらの炭素を含む値である。なお、上記炭素数は、エステル結合、カーボネート基の炭素を含まない値である。また、上記Yにおいて、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、いずれも置換基を有してもよく、置換基を有する場合、上記炭素数はその置換基の炭素を含む値である。なお、上記炭素数は、エステル結合、カーボネート基の炭素を含まない値である。
【0036】
〔ポリオール〕
化合物IIの製造に使用するポリオールとしては、従来公知のポリオールを用いることができる。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、これらについて説明する。
【0037】
ポリエーテルポリオールは、例えば、2価アルコール類にアルキレンオキシドを付加することにより得ることができる。上記2価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシドなどが挙げられる。なお、アルキレンオキシドは2種類以上併用してもよい。
【0038】
ポリエステルポリオールは、例えば、2価アルコール類とジカルボン酸もしくはジカルボン酸誘導体とを重合させることにより得ることができる。上記2価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸などの脂肪族系ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族系ジカルボン酸が挙げられる。なお、2価アルコール類とジカルボン酸は、それぞれ2種類以上を併用してもよい。また、ポリエステルポリオールの別な重合方法としては、2価アルコール類を開始剤としたラクトンの開環重合などが挙げられる。
【0039】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
【0040】
なお、上記したいずれのポリオールも、市場から入手したポリオールを用いてもよい。また、上記したポリオールは、2種類以上を併用して使用することができる。
【0041】
〔イソシアネート化合物〕
本発明を構成する化合物IIの製造に使用するイソシアネート化合物としては、従来公知のジイソシアネートなどのポリイソシアネートを用いることができる。化合物IIの製造に好適なイソシアネート化合物としては、例えば、下記に挙げるような芳香族ジイソシアネートや、脂肪族ジイソシアネートや、脂環式ジイソシアネートや、さらに、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどが使用できる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどが挙げられる。また、上記に挙げたジイソシアネートと、低分子量のポリオール又はポリアミンとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどを使用することができる。
【0042】
〔化合物IIの合成条件等〕
化合物IIを製造する際に行う反応の際には、必要に応じて触媒を加えてもよい。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの、金属と有機酸又は無機酸との塩;有機金属誘導体;トリエチルアミンなどの有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒などを挙げることができる。
【0043】
また、化合物IIを製造する際は、溶剤を用いずに合成してもよいし、有機溶剤を用いて合成してもよい。合成に使用する有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤や、イソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。このような有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
【0044】
(その他のカーボネート化合物)
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上述の化合物I及び化合物IIとともに、さらに化合物I及び化合物II以外の五員環環状カーボネート構造を有するカーボネート化合物(以下、「その他のカーボネート化合物」と呼ぶ)を用いることができる。その他のカーボネート化合物としては、例えば、化合物I及び化合物II以外の構造の、脂肪族又は脂環族の環状カーボネート化合物を用いることができる。その他のカーボネート化合物の具体例としては、下記式(2−1)〜(2−8)で表される化合物を挙げることができる。なお、下記式中のRは、水素原子又はメチル基を示す。
【0046】
(ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法)
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法では、上述したような2種類の五員環環状カーボネート化合物である、化合物Iと化合物IIとを特定比率で用い、ポリアミン化合物との重付加反応により、金属に対する密着性に優れる接着剤の材料となる有用なポリヒドロキシウレタン樹脂を製造する。より具体的には、上記重付加反応する原材料として、化合物I及び化合物IIをそれぞれ1種以上ずつ使用し、且つ、化合物Iと化合物IIとの使用比率が、質量比でI:II=40:60〜10:90となるようにして、五員環環状カーボネート化合物とポリアミン化合物とを重付加反応させる。環状カーボネート化合物とポリアミン化合物とを重付加反応させる工程では、例えば、溶剤の存在下又は非存在下、所定比率の化合物I及び化合物IIと、ポリアミン化合物とを40〜200℃で4〜24時間反応させることにより、目的とするポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。なお、重付加反応させる工程で、先述したその他のカーボネート化合物を使用する場合には、本発明で規定する所定の割合の化合物I及び化合物IIとともに、本発明の効果を損なわない範囲でその他の環状カーボネート化合物を用いる。下記に本発明の製造方法に用いる環状カーボネート化合物以外の成分について説明する。
【0047】
〔ポリアミン化合物〕
本発明の製造方法において使用可能なポリアミン化合物としては、従来公知のいずれの化合物であっても用いることができる。本発明で使用するポリアミン化合物の好適例としては、下記のものが挙げられる。例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,6−シクロヘキサンジアミン、ピペラジンなどの環状脂肪族ポリアミン;キシリレンジアミンなどの芳香環を持つ脂肪芳香族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン、2,5−ジアミノピリジンなどを挙げることができる。これらのポリアミン化合物は、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂の機械物性に合わせて適宜選択して用いることができる。また、2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0048】
〔溶剤〕
本発明の製造方法で行う、環状カーボネート化合物とポリアミン化合物との重付加反応工程は、溶剤下で行うことができる。その場合に使用する溶剤としては、使用する原料及び得られるポリヒドロキシウレタン樹脂に対して不活性な有機溶剤であればよい。このような有機溶剤としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0049】
〔触媒〕
本発明の製造方法では、反応を促進させるべく、触媒の存在下で重付加反応を行うことも好ましい。触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)、ピリジンなどの塩基性触媒;テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウリレートなどのルイス酸触媒などを用いることができる。また、触媒の使用量は、カーボネート化合物とアミン化合物の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましい。
【0050】
(製造したポリヒドロキシウレタン樹脂の物性)
上記の本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、その重量平均分子量が、10000〜100000であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲よりも小さい場合は、接着剤の材料とした際に十分な剥離強度が得られない場合があるので好ましくない。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも大きい場合は、接着剤組成物の材料とした際に、塗工性に劣る傾向があるので好ましくない。また、本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、その水酸基価が70〜120mgKOH/gの範囲内のものであることが好ましい。また、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂のガラス転移点は、10〜30℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移点が上記範囲内であれば、この条件を満足するポリヒドロキシウレタン樹脂を接着剤に用いた場合に、より十分な剥離強度及び凝集力を有するものとなる。
【0051】
(製造したポリヒドロキシウレタン樹脂の用途等)
ポリヒドロキシウレタン樹脂は、その構造中に水酸基を有することを特徴としている。そして、この構造的特徴を有するため、ポリヒドロキシウレタン樹脂を接着剤材料に用いたことで、従来の製造方法によるウレタン樹脂を用いた場合に得られない性能が得られる。具体的には、金属表面には水酸基が存在しているため、その構造中に極性基を有する樹脂は、極性基を有しない樹脂に比して、金属に対する密着性が良好である。ポリヒドロキシウレタン樹脂も、主鎖中に水酸基を有するため、金属に対する密着性が良好である。加えて、先述したように、本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、原材料に用いた化合物Iに由来して発現する適度な凝集力と、原材料に用いた化合物IIに由来する柔軟な構造を実現できることから、金属接着剤用の材料として、より優れたものとなる。
【0052】
本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、その構造中に非極性部分を持たせたり、水酸基量を最適に調整することで、ポリエチレンやポリプロピレンのような非極性部材への接着力を上げることもできる。また、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂の構造中の極性部分と非極性部分の割合を調整することで、本発明によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、例えば、ポリエチレンと金属のような表面特性が異なる異種同士を接着するための接着剤として活用することも可能である。
【0053】
本発明の製造方法において、溶剤の存在下でポリヒドロキシウレタン樹脂を製造した場合は、そのままの状態で接着剤として用いることもできる。また、溶剤を用いて製造した後、貧溶媒を添加してポリヒドロキシウレタン樹脂を沈殿させて回収したり、加熱して溶剤を揮発させた後、用途に適した溶剤に再溶解して使用することもできる。
【0054】
また、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法においては、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂に必要に応じて種々の添加剤を加える構成としてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、加水分解防止剤(カルボジイミドなど)、金属不活性剤などが挙げられる。これらは、2種類以上を併用することもできる。
【0055】
本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、必要に応じて、他の樹脂とブレンドして使用してもよい。使用できる他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂、ロジンやテルペンなどの粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0056】
先に述べたように、本発明の製造方法により得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、その構造的特徴から、金属に対する密着性に優れ、金属接着用の接着剤の材料として有用である。また、本発明によって得られたポリヒドロキシウレタン樹脂は、接着剤の材料として使用する場合に、架橋剤を加えた形態で使用してもよい。架橋剤を添加した形態の接着剤の場合は、接着剤を塗工、圧着後に架橋させることで、より強度の強い接着剤層の形成が可能になる。
【0057】
上記で使用する架橋剤としては、水酸基と反応するものであればいずれも使用できる。具体的には、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、酸無水物、シランカップリング剤などが好ましいものとして例示される。特に好ましくはポリイソシアネートであり、具体的には、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、並びに、これらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット変性体、及びヌレート変性体;ポリメリックMDI、末端イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。架橋剤の添加量は、例えば、架橋後の水酸基価が70mgKOH/gを下回らない範囲で添加可能である。
【0058】
本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン樹脂を接着剤として使用する場合、基材上に直接塗布したしてもよいし、離型紙などに塗布した後、基材上に転写してもよい。この場合の塗布方法は特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター、ロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーター及びディッピングなどの方法が挙げられる。また、上記基材としては、例えば、金属製基材を好適に用いることができる。特に、本発明の方法で得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、金属箔やフィルムと言った柔軟な基材に対して優れた接着性・密着性を示すものであるため、基材としては金属箔やフィルムであることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0060】
<カーボネート化合物の製造>
(製造例1:化合物(I−A)の製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管、及び還流冷却器を備えた反応容器に、エポキシ当量187g/eqのビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「YD−128」、新日鉄住金化学社製)100部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100部、及びヨウ化ナトリウム(和光純薬製)20部を入れて均一に溶解した。撹拌下、炭酸ガスを0.5L/minの速度で導入しながら、100℃で10時間反応した。反応後、イソプロピルアルコールを2000部加えて、析出した白色沈殿をろ取し、乾燥機で乾燥して白色の粉末を得た。
【0061】
赤外分光光度計(商品名「FT−720」、堀場製作所社製)を使用して得られた粉末をIR分析したところ、910cm
-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収ピークが消失し、新たに1800cm
-1付近にカーボネート基(カルボニル基)由来の吸収ピークが生じていることが分かった。このため、得られた粉末は、エポキシ基と二酸化炭素との反応により形成された環状構造のカーボネート基を有する、下記式(I−A)で表される化合物(以下、化合物(I−A)と称す)と確認された。なお、他の例においてもIR分析は上記した装置を用いて行った。
【0062】
【0063】
(製造例2:化合物(I−B)の製造)
製造例1で使用したビスフェノールAジグリシジルエーテルに替えて、エポキシ当量117g/eqのレゾルシノールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX201」、ナガセケムテックス社製)を用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、下記式(I−B)で表される化合物(以下、化合物(I−B)と称す)を得た。なお、下記の構造であることは、製造例1と同様の方法で確認した。
【0064】
【0065】
(製造例3:化合物(II−A)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製)100部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)33.64部を入れた。そして、固形分30%になるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応させた。そして、イソシアネート%(NCO%)が1.89%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート23.62部を加え、さらに5時間反応した。IR分析によって、2260cm
-1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認して化合物(II−A)を得た。
【0066】
(製造例4:化合物(II−B)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製)100部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)44.46部を入れた。そして、固形分30%になるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応した。そして、NCO%が1.74%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート23.62部を加え、さらに5時間反応した。IR分析によって、2260cm
-1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認して化合物(II−B)を得た。
【0067】
(製造例5:化合物(II−C)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製)100部と、トリレンジイソシアネート(TDI)34.83部を入れた。そして、固形分30%になるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れて均一に溶解した後、60℃で7時間反応した。そして、NCO%が1.87%となったことを確認した後、グリセリンカーボネート23.62部を加え、さらに5時間反応した。IR分析によって、2260cm
-1付近のNCOピークが消失していることで、反応の終了を確認して化合物(II−C)を得た。
【0068】
(製造例6:化合物(II−D)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリカーボネートポリオール(商品名「デュラノールT5651」、旭化成ケミカルズ社製)100部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)44.46部を入れた。その後は製造例4と同様にして、化合物(II−D)を得た。
【0069】
(製造例7:化合物(II−E)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール100部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)33.64部を入れた。その後は製造例3と同様にして、化合物(II−E)を得た。
【0070】
(製造例8:化合物(II−F)の製造)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール100部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)44.46部を入れた。その後は製造例4と同様にして化合物(II−F)を得た。
【0071】
<ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造>
(実施例1)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器を用意して内部を窒素置換した後、製造例1で得た化合物I−Aを35部と、製造例3で得た化合物II−Aを65部と、ヘキサメチレンジアミン(HMD)13.61部を入れた。そして、固形分が35%となるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を入れ、均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応させて、ポリヒドロキシウレタン樹脂の溶液を得た。得られた樹脂をIR分析したところ、1800cm
-1付近のカーボネート基(カルボニル基)由来の吸収ピークが消失しており、新たに1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収ピークが生じていることが分かった。以上より、目的とするポリヒドロキシウレタン樹脂が得られていることを確認した。テトラヒドロフラン(THF)を移動相とするGPCにより測定した樹脂の重量平均分子量は、35000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は115.7mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は25℃、融点は88℃であった。なお、ガラス転移点と融点は後述する方法で測定した。
【0072】
(実施例2)
製造例1で得た化合物I−Aを20部と、製造例3で得た化合物II−Aを80部と、エチレンジアミン(EDA)5.66部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は20000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は100.0mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は19℃、融点は79℃であった。
【0073】
(実施例3)
製造例1で得た化合物I−Aを10部と、製造例6で得た化合物II−Dを90部と、メタキシレンジアミン(MXDA)10.24部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量70000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は76.5mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は14℃、融点は77℃であった。
【0074】
(実施例4)
製造例2で得た化合物I−Bを15部と、製造例7で得た化合物II−Eを85部と、ヘキサメチレンジアミン(HMD)11.69部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は50000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は101.1mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は16℃、融点は70℃であった。
【0075】
(実施例5)
製造例1で得た化合物I−Aを20部と、製造例5で得た化合物II−Cを80部と、エチレンジアミン5.63部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は40000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は99.6mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は18℃、融点は80℃であった。
【0076】
(実施例6)
製造例2で得た化合物I−Bを30部と、製造例8で得た化合物II−Fを70部と、1,12ジアミノドデカン27.01gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は80000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は106.6mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は21℃、融点は83℃であった。
【0077】
(実施例7)
実施例4で得た水酸基価が101.1mgKOH/gのポリヒドロキシウレタン樹脂100部に対し、イソシアネート系の架橋剤(商品名「デュラネート24A−100」、旭化成ケミカルズ社製)6.4部を配合してポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。架橋後の水酸基価は、81.1mgKOH/gであった。
【0078】
(比較例1)
製造例1で得た化合物I−Aを100部と、ヘキサメチレンジアミンを25.15部用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は35000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は194.1mgKOH/gであり、また、ガラス転移点は58℃、融点は121℃であった。
【0079】
(比較例2)
製造例3で得た化合物II−Aを100部、ヘキサメチレンジアミンを7.39部用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてポリヒドロキシウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は50,000(ポリスチレン換算)であった。得られた樹脂の水酸基価は66.5mgKOH/gであった。また、ガラス転移点は10℃、融点は69℃であった。
【0080】
(比較例3)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリエステルポリオール(商品名「クラレポリオールP−1010」、株式会社クラレ製)100部、2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン(製品名「BA−2グリコール」、日本乳化剤社製)38.4部、ヘキサメチレンジイソシアネートを25.6部入れた。そして、固形分が35%となるようにDMFを入れて均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応してポリウレタン樹脂の溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は40000であり、また、ガラス転移点は15℃、融点は77℃であった。
【0081】
(比較例4)
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応容器に、数平均分子量1000の、ポリカーボネートポリオール(商品名「デュラノールT5651」、旭化成社製)100部、2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン(製品名「BA−2グリコール」、日本乳化剤社製)29.11部、ヘキサメチレンジイソシアネートを22.89部入れた。そして、固形分が35%となるようにDMFを入れて均一に溶解させた後、撹拌しながら80℃で10時間反応してポリウレタン樹脂の溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は30000であった。また、ガラス転移点は12℃、融点は71℃であった。
【0082】
表1に、実施例のポリヒドロキシウレタン樹脂と、比較例の、ポリヒドロキシウレタン樹脂及び従来のポリウレタン樹脂の組成をまとめて示した。
【0083】
【0084】
<評価>
上記で得た実施例及び比較例で得た各ポリウレタン樹脂について、下記の評価を行い、結果を表2に示した。
【0085】
(ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm))
示差走査熱量計(リガク社製)を使用した熱分析により、実施例及び比較例で得た各樹脂について、ガラス転移点(Tg(℃))及び融点(Tm(℃))を測定した。測定結果を表2に示した。
【0086】
(接着性試験;剥離試験及び剥離状態)
基材として厚み40μmのアルミニウム箔を用い、該アルミ箔に、各例で得た樹脂溶液を乾燥膜厚が2.5μmとなるように塗布し、熱風乾燥器で溶剤を除去した。次に、塗装面同士を合わせた状態で、圧力50kgf/cm
2、温度120℃で2分間圧着した。圧着後、40℃で3日間エージングを行った。その後75mm×15mmに裁断し、Tピール剥離強度をオートグラフにて測定した。
【0087】
[評価基準]
以下の規準で4段階評価し、表2に評価結果を示した。また、評価時における剥離状態について目視で観察し、表2にその結果も合わせて示した。具体的には、接着剤層と基材との間で剥離したものを「界面剥離」とし、接着剤層の間で剥離したものを「凝集破壊」とした。
◎:0.8N/mm以上
○:0.5N/mm以上0.8N/mm未満
△:0.1N/mm以上0.5N/mmN/mm未満
×:0.1N/mm未満
【0088】
【0089】
表2から明らかなように、本発明の実施例の製造方法で得たポリヒドロキシウレタン樹脂は、いずれも金属に対する接着性が良好であることが確認された。すなわち、実施例の樹脂はいずれも、比較例1の樹脂に比べて水酸基価は低いものの、柔軟性に優れるため、アルミニウム箔への接着性が良好であったと考えられる。一方で、比較例2の樹脂は、比較例1の樹脂に比べて柔軟性はあるが、水酸基価が低く、さらに、樹脂自体の強度も低いため樹脂層が破壊され、接着力が低かったと考えられる。また、本発明の製造方法で得た実施例1〜6のポリヒドロキシウレタン樹脂を用いた場合は、比較例3や4のような従来のポリウレタン樹脂と比較しても高い接着性を示した。この理由は、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂は、その構造中に水酸基があることで、金属箔への優れた接着性を実現できたと考えられる。また、実施例1〜6から明らかなように、使用するポリオールの種類によらず、いずれも接着力が高かった。このように、得られる樹脂の骨格を自由に設計できることから、本発明の製造方法は工業的応用に優れた方法である。