は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
前記付加反応は、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピラン、2,3−ジヒドロフラン、アルキルビニルエーテル又はアルキルプロペニルエーテルを付加させる反応である請求項13に記載の消泡剤の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、特定の分子量を有するポリプロピレングリコールを、自動食器洗浄機用洗剤用の消泡剤として使用できることが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような消泡剤では消泡作用が充分でなく、さらに消泡作用の強い消泡剤が望まれていた。
また、洗浄剤組成物には殺菌や漂白のために塩素剤が配合されることがあるが、このような消泡剤を塩素剤と共存させると消泡剤と塩素剤が反応して両者がともに失活してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、消泡作用が強く、さらに塩素剤と共存させた場合の塩素安定性が高い消泡剤を提供することを目的とする。
【0008】
なお、本明細書においてオキシエチレン基(CH
2CH
2O)をEO、オキシプロピレン基(CH
2CH(CH
3)O)をPO、オキシブチレン基(CH
2CH(CH
2CH
3)O)をBOと表示することもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オキシアルキレン鎖としてオキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖を使用し、その末端のヒドロキシル基をアセタール構造で封鎖することによって、消泡作用の強い消泡剤とすることができることを見出した。
また、この消泡剤は、塩素剤と共存させた場合にも高い塩素安定性を発揮させることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の消泡剤は、末端に一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0011】
本発明の消泡剤はその末端に、アセタール構造を有する。
アセタール構造を形成する2つの酸素原子の1つは、アルキレンオキサイド末端に存在していたヒドロキシル基に由来する酸素原子であり、上記一般式(1)では(AO)nの末端に存在する酸素原子である。アセタール構造を形成するもう1つの酸素原子は一般式(1)において炭化水素基R
3と結合している酸素原子である。
このアセタール構造は、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対する付加反応により生成させることができる。消泡剤の末端がヒドロキシル基であると消泡作用が弱いが、末端をアセタール構造にすることで消泡作用が強くなり、消泡剤として好適に使用することができる。
また、末端をアセタール構造にすることにより塩素安定性が高くなる。
【0012】
末端をアセタール構造にすることによる強い消泡作用及び高い塩素安定性は、(AO)nをオキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖とすることでより好適に発揮される。
オキシアルキレン鎖を有する化合物には、一般的にオキシエチレン基が含まれることが多いが、オキシアルキレン鎖がオキシエチレン基を含むと消泡作用が弱くなることを本発明者は見出した。
とくにアルキレンオキサイド末端にアセタール構造を有する消泡剤とした場合、オキシエチレン基の有無による消泡作用の差が顕著であった。そのため、本発明の消泡剤ではオキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖を使用することとした。
【0013】
また、アセタール構造は、酸性下では不安定であり再びヒドロキシル基を生成するが、中性下及びアルカリ性下では安定である。従って、本発明の消泡剤は中性及びアルカリ性の環境下において強い消泡作用及び高い塩素安定性を発揮することができる。
なお、本明細書におけるアセタール構造とは、R
1が水素原子であるアセタール、R
1がアルキル基であるケタールの両方を含む概念である。
【0014】
また、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基が残存していると、アルカリ性下ではヒドロキシル基が酸化されてカルボキシル基になり変色が生じることがあるが、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させると、この反応も生じないため、変色が抑制される。
【0015】
本発明の消泡剤は、一般式(2)で示される構造であることが好ましい。
【化2】
(式中、Xはアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基である。)
【0016】
本発明の消泡剤は、一般式(3)で示される構造であることが好ましい。
【化3】
(式中、R
1及びR
4は水素原子またはアルキル基、R
2、R
3、R
5及びR
6はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3、R
5とR
6はそれぞれ環を形成していてもよい。)
【0017】
本発明の消泡剤は、一般式(4)で示される構造であることが好ましい。
【化4】
(式中、Zは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数である。)
【0018】
本発明の消泡剤において、上記オキシアルキレン鎖は、オキシプロピレン基のみからなることが好ましい。また、上記オキシアルキレン鎖は、オキシブチレン基のみからなることが好ましい。
【0019】
本発明の消泡剤において、上記オキシアルキレン鎖は、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基がブロック重合してなることが好ましい。また、上記オキシアルキレン鎖は、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基がランダム重合してなることが好ましい。
【0020】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(5)で示される構造を有することが好ましい。
【化5】
(式中、R
7は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
7は複数個存在していてもよい。)
【0021】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(6)で示される構造を有することが好ましい。
【化6】
(式中、R
7は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
7は複数個存在していてもよい。)
【0022】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(7)で示される構造を有することが好ましい。
【化7】
【0023】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(8)で示される構造を有することが好ましい。
【化8】
【0024】
本発明の消泡剤の製造方法は、下記一般式(9)で示されるオキシアルキレン鎖含有化合物のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して付加反応を行うことにより上記一般式(1)で示される本発明の消泡剤を合成することを特徴とする。
【化9】
(式中、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0025】
本発明の消泡剤の製造方法において、上記付加反応は、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピラン、2,3−ジヒドロフラン、アルキルビニルエーテル又はアルキルプロペニルエーテルを付加させる反応であることが好ましい。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の消泡剤(A)を含むことを特徴とする。
また、本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤(B)をさらに含むことが好ましく、また、アルカリ剤(C)をさらに含むことが好ましく、塩素剤(D)をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の消泡剤は、消泡作用が強く、さらに塩素剤と共存させた場合の塩素安定性が高いという効果を有する。
また、本発明の消泡剤の製造方法は、副生成物が生じることがなく、かつ、安全に、消泡作用が強く塩素剤と共存させた場合に塩素安定性に優れた消泡剤を製造することができる。
また、本発明の洗浄剤組成物は、泡立ちが少なく、かつ、塩素剤を含む場合に塩素安定性の高い洗浄剤組成物となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化10】
(式中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0030】
本発明の消泡剤におけるAO(オキシアルキレン基)は、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基である。
AOとしては、オキシプロピレン基のみからなってもよく、オキシブチレン基のみからなってもよい。オキシプロピレン基とオキシブチレン基をともに含む場合、AOが複数個結合してなるポリオキシアルキレン鎖[(AO)n]は、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基がブロック重合してなっていてもよく、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基がランダム重合してなっていてもよい。
【0031】
なお、上述したAOの構造の例を化学式で示すと以下のようになる。
式(a)はAOがオキシプロピレン基のみからなる場合、式(b)はAOがオキシブチレン基のみからなる場合を示している。式(c)〜(f)はAOがオキシプロピレン基及びオキシブチレン基がブロック重合してなる場合の一例を示している。
−(PO)y− (a)
−(BO)z− (b)
−(PO)y−(BO)z− (c)
−(BO)z−(PO)y− (d)
−(PO)y−(BO)z−(PO)y− (e)
−(BO)z−(PO)y−(BO)z− (f)
(上記式(a)〜(f)において、(PO)y、(BO)zはそれぞれ、オキシプロピレン基yモルが連続してブロック重合してなる構造、オキシブチレン基zモルが連続してブロック重合してなる構造をそれぞれ表す。)
【0032】
また、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基がランダム重合している場合とは、ポリオキシアルキレン鎖の構造が制御されておらず、オキシアルキレン基に含まれるオキシプロピレン基及びオキシブチレン基の並び方の順序が異なる複数の化合物の混合物である。
【0033】
オキシアルキレン基の平均付加モル数nは、1〜1000であり、nの好ましい範囲は3〜500、より好ましい範囲は3〜100である。
通常、本発明の消泡剤は、オキシプロピレン基、オキシブチレン基の付加モル数の合計n、すなわちAOの付加モル数nが異なる複数の化合物の混合物である。
消泡剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数は整数値であるが、AOの付加モル数を測定した場合の測定値は、消泡剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の平均値(平均付加モル数)として測定される。本発明の対象物である消泡剤のAOの平均付加モル数を測定して、測定値が1〜1000の間に入っていることを確認できれば、AOの付加モル数nは1〜1000の数であると判断できる。
【0034】
また、本発明の消泡剤は、AOの種類が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。具体的には、AOとしてオキシプロピレン基のみを含む化合物、オキシブチレン基のみを含む化合物、オキシプロピレン基とオキシブチレン基を含む化合物の3種類が考えられるが、これら3種類のうちの2種類又は3種類が消泡剤に含まれていてもよい。
また、AOとしてオキシプロピレン基とオキシブチレン基をともに含む場合には、これらがブロック重合してなる化合物とランダム重合してなる化合物が消泡剤にともに含まれていてもよい。
【0035】
一般式(1)におけるR
1は、水素原子またはアルキル基である。
R
1がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)で示される構造は、アセタール構造である。
アセタール構造は、ヒドロキシル基の保護基として用いられる構造であり、ヒドロキシル基末端をアセタール構造とすることで、消泡作用を強くすることができる。また、ヒドロキシル基が塩素剤と反応することによる塩素剤の失活を防止することができる。
【0037】
アセタール構造は中性及びアルカリ性下で安定な構造であるため、中性及びアルカリ性の洗浄剤組成物に使用することに適した消泡剤とすることができる。
また、アセタール構造は、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対する付加反応により生成させることができる。この付加反応は反応率が高いため、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させることができる。
すなわち、アセタール構造は、「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴と「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴を有する。
【0038】
有機合成の分野で用いられる、ヒドロキシル基を保護するための保護基としてアセタール構造以外の保護基(例えば、メチル基、ベンジル基、アセチル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。しかしながら、アセタール構造以外の保護基は、アセタール構造の特徴である「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴、又は、「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴のいずれかを満足しないため、ヒドロキシル基末端を封鎖するための構造として適していない。すなわち、アセタール構造でヒドロキシル基末端を封鎖している本発明の消泡剤には、他の保護基でヒドロキシル基末端を封鎖した化合物にはない有利な効果が存在する。
【0039】
一般式(1)で示される構造には、R
2とR
3が環を形成してなる環状アセタール構造とR
2とR
3が環を形成していない鎖状アセタール構造が含まれる。
はじめに、環状アセタール構造を有する本発明の消泡剤について説明する。
【0040】
環状アセタール構造を有する本発明の消泡剤は、末端に下記一般式(10)で示される構造を有することが望ましい。
【化11】
一般式(10)におけるR
7は、エーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、一般式(1)においてR
2とR
3が結合して環を形成した部分をまとめてR
2と示している。R
2は炭素及び水素のみからなるアルキレン基であってもよく、エーテル結合を含むアルキレン基であってもよい。また、R
2自体に環状構造が含まれていてもよく、環状構造の例としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
R
2自体に環状構造が含まれる場合は、一般式(10)で示される構造の末端が縮合環となっていてもよい。また、R
7は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
7は複数個存在していてもよい。
R
1は水素原子またはアルキル基、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。
【0041】
一般式(10)に含まれるアセタール構造として望ましい構造は、一般式(10)においてR
2が炭素及び水素のみからなるアルキレン基である構造である。
また、R
1が水素原子であることが望ましい。
具体的な例としては、下記一般式(5)に示される6員環構造、又は、下記一般式(6)に示される5員環構造であることが望ましい。
【化12】
(R
7は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
7は複数個存在していてもよい。)
【化13】
(R
7は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
7は複数個存在していてもよい。)
【0042】
環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子以外の置換基(R
7)としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)又はハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。
【0043】
一般式(5)で示される消泡剤の6員環構造のうち、さらに望ましい構造は、下記一般式(11)で示すような、R
1及びR
7が全て水素原子である環構造(テトラヒドロピラニルエーテル)である。
【化14】
テトラヒドロピラニルエーテルは、中性及びアルカリ性環境下での安定性が高く、また、アセタール構造の原料となるジヒドロピランが安価で入手しやすいため、好ましい。
この構造は、後述するように、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることにより得られる。
なお、本明細書におけるジヒドロピランとは3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を意味する。
【0044】
一般式(6)で示される消泡剤の5員環構造のうち、さらに望ましい構造は、下記一般式(12)で示すような、R
1及びR
7が全て水素原子である構造(テトラヒドロフラニルエーテル)である。
【化15】
この構造は、後述するように、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロフランを付加させることにより得られる。
【0045】
一般式(1)に含まれる界面活性剤の構造としては、下記一般式(13)、(14)で示される構造も挙げられる。
【化16】
【化17】
【0046】
式(13)で示す構造は、一般式(10)において、R
2がエーテル結合を含むアルキレン基である構造であり、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロ―1,4−ジオキシンを付加させることにより得られる。
式(14)で示す構造は、一般式(10)において、R
2がR
2自体に環状構造を含む構造であり、一般式(10)で示される構造の末端が縮合環となる構造の一例である。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ベンゾフランを付加させることにより得られる。
【0047】
続いて、鎖状アセタール構造を有する本発明の消泡剤について説明する。
【0048】
鎖状アセタール構造を有する本発明の消泡剤は、末端に下記一般式(15)で示される構造を有することが望ましい。
【化18】
(一般式(15)中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成しておらず、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0049】
上記一般式(15)で示される構造においては、R
1が水素原子であってもアルキル基であってもよく、R
1がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(15)におけるR
2及びR
3は、R
1がアルキル基であるか否かに関係なく、炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
また、R
2及びR
3は、エーテル結合を含む炭化水素基であってもよい。
【0051】
また、一般式(15)においてR
1がアルキル基である構造のうち、末端に下記一般式(7)に示される構造を有することが特に望ましい。
【化19】
上記一般式(7)で示される構造は、一般式(15)においてR
1とR
2が共にメチル基である構造である。
【0052】
上記一般式(7)で示される構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソプロペニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0053】
上記一般式(7)で示される構造の具体的な例としては、下記一般式(16)〜(20)で示される構造等が挙げられる。
【化20】
上記一般式(16)で示される構造は、一般式(7)においてR
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0054】
【化21】
上記一般式(17)で示される構造は、一般式(7)においてR
3がシクロヘキシル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にシクロヘキシルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0055】
【化22】
上記一般式(18)で示される構造は、一般式(7)においてR
3がフェニル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にフェニルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0056】
【化23】
上記一般式(19)で示される構造は、一般式(7)においてR
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0057】
【化24】
上記一般式(20)で示される構造は、一般式(7)においてR
3がベンジル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にベンジルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0058】
また、上記一般式(15)に含まれる構造のうち、末端に下記一般式(8)で示される構造を有することも望ましい。
【化25】
上記一般式(8)で示される構造は、一般式(15)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基である構造である。
【0059】
上記一般式(8)で示される構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0060】
上記一般式(8)で示される構造の具体的な例としては、下記一般式(21)〜(24)で示される構造等が挙げられる。
【化26】
上記一般式(21)で示される構造は、一般式(8)においてR
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0061】
【化27】
上記一般式(22)で示される構造は、一般式(8)においてR
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0062】
【化28】
上記一般式(23)で示される構造は、一般式(8)においてR
3がイソプロピル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソプロピルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0063】
【化29】
上記一般式(24)で示される構造は、一般式(8)においてR
3がイソブチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソブチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0064】
上記一般式(8)で示される構造を得るために用いることができるビニルエーテルのその他の例としては、ジビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
上記一般式(15)で示される構造の他の具体的な例としては、下記一般式(25)〜(26)で示される構造等が挙げられる。
【化30】
上記一般式(25)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がエチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ブテンを付加させることにより得られる。
【0066】
【化31】
上記一般式(26)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がペンチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ヘプテンを付加させることにより得られる。
【0067】
本発明の消泡剤は、末端に一般式(1)で示される構造を有することを特徴としているが、消泡剤全体の構造としては、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで示される構造であることが望ましい。とくに、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される構造であると、消泡作用が特に強いためより望ましい。
【0068】
下記一般式(2)で示される構造の化合物はアセタール構造をその1つの末端に有する化合物であり、片末端アセタール化合物といえる。
【化32】
(式中、Xはアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基である。R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0069】
一般式(2)におけるXのうち、アルコールの残基の好ましい具体例としては、アルコールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルコールの望ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール(エイコサノール)、2−オクチルドデカン−1−オール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール、トリコサノール、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、ペンタコサノール、セリルアルコール、1−ヘプタコサノール、モンタニルアルコール(1−オクタコサノール)、1−ノナコサノール、ミリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、1−ヘントリアコンタノール、1−ドトリアコンタノール、ゲジルアルコール(1−テトラトリアコンタノール)等が挙げられる。
【0070】
アルキルフェノールの残基の好ましい具体例としては、アルキルフェノールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルキルフェノールの望ましい例としては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクチルフェノール、オクチルクレゾール等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の消泡剤は、Xとしてこれらのアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基のうちの1種類のみを有する化合物であってもよく、異なるアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基を有する複数の化合物の混合物であってもよい。
【0072】
また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基の中にはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0073】
下記一般式(3)で示される構造の化合物はアセタール構造をその2つの末端に有する化合物であり、両末端アセタール化合物といえる。
【化33】
(式中、R
1及びR
4は水素原子またはアルキル基、R
2、R
3、R
5及びR
6はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3、R
5とR
6はそれぞれ環を形成していてもよい。(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0074】
両末端アセタール化合物においては、両方の末端が上記一般式(1)で示される構造を有していれば、分子両末端の構造は、同じであってもよく、異なっていてもよい。R
4、R
5及びR
6の好ましい構造は、上述したR
1、R
2及びR
3の好ましい構造とそれぞれ同様にすることができる。
【0075】
一般式(3)で示される両末端アセタール化合物の好ましい構造は、分子両末端がテトラヒドロピラニルエーテルとなっている下記一般式(27)に示される構造である。
【化34】
【0076】
この構造は、ポリプロピレングリコール等の、分子両末端にヒドロキシル基を有する(ポリ)アルキレングリコール1モルに対してジヒドロピランを2モル付加させることによって得られる。
【0077】
下記一般式(4)で示される構造の化合物はアセタール構造をその3つ以上の末端に有する化合物であり、多末端アセタール化合物といえる。
【化35】
(式中、Zは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数である。R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0078】
多末端アセタール化合物においては、各末端が上記一般式(1)で示される構造を有していれば、それぞれの末端の構造は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
一般式(4)で示される多末端アセタール化合物の好ましい構造の一例は、3つの末端がテトラヒドロピラニルエーテルとなっている下記一般式(28)に示される構造である。
【化36】
(一般式(28)中、n
1、n
2、n
3は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であり、n
1≧0、n
2≧0、n
3≧0である。)
【0080】
この構造は、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等の、3つの末端にヒドロキシル基を有するオキシアルキレン鎖含有化合物1モルに対してジヒドロピランを3モル付加させることによって得られる。
【0081】
以下、本発明の消泡剤の製造方法について説明する。
まず、出発物質として、末端に下記一般式(9)で示される構造を有するオキシアルキレン鎖含有化合物を準備する。
【化37】
(式中、(AO)nは、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも1種のオキシアルキレン基からなるオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)
【0082】
一般式(9)で示される構造を有するオキシアルキレン鎖含有化合物としては、市販されている化合物を使用することができる。例えば、商品名「ブラウノン」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ファインサーフ」(青木油脂工業株式会社製)等が挙げられる。
ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール(ポリヘキサメチレングリコールともいう)は両末端アセタール化合物の原料として使用することができる。
3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールにプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドが付加してなる化合物は、多末端アセタール化合物の原料として使用することができる。
3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースが挙げられる。
【0083】
また、上記のオキシアルキレン鎖含有化合物にプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドをさらに付加させて、オキシアルキレン基の平均付加モル数やオキシアルキレン基に含まれるオキシプロピレン基及びオキシブチレン基の割合を調整した上で使用してもよい。
また、アルコールにプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドを付加させた化合物もオキシアルキレン鎖含有化合物として使用することができる。
【0084】
上記オキシアルキレン鎖含有化合物のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して、付加反応を行うことによりヒドロキシル基を封鎖して、一般式(1)で示される構造を得る。
付加反応の具体的な手順は、ヒドロキシル基に付加反応させて得るアセタール構造によって異なるが、例えば、一般式(11)で示される構造(テトラヒドロピラニルエーテル)は、オキシアルキレン鎖含有化合物のヒドロキシル基末端にジヒドロピラン(DHP)を酸触媒と共に有機溶媒下で反応させることにより得ることができる。
【0085】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。この中では、扱いが容易であり、安価であるためp−トルエンスルホン酸が望ましい。
【0086】
上記反応に用いる有機溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0087】
反応の終了は、酸触媒の中和により行う。中和に用いる塩基としては特に限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの溶液等を用いることができる。
【0088】
反応条件は、出発物質の種類や量により適宜定めることができるが、例えば、オキシアルキレン鎖含有化合物としてポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル50〜100gを塩化メチレン溶液25〜100ml中で反応させる場合、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルに対して1〜5当量のジヒドロピランと酸触媒として1〜10mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、0.1時間〜終夜(10時間)室温にて撹拌した後、炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒及び余剰のジヒドロピランを留去する方法が挙げられる。
また、反応に際して溶媒を使用せず、触媒として硫酸を使用した場合にも同様に合成することができる。
【0089】
続いて、本発明の消泡剤を用いた洗浄剤組成物の一例について説明する。
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の消泡剤(A)を含む。さらに、界面活性剤(B)、アルカリ剤(C)、塩素剤(D)等を配合することができる。
【0090】
洗浄剤組成物中における消泡剤(A)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜10重量%であることが好ましい。
消泡剤が複数種類用いられている場合、消泡剤の濃度は各消泡剤の濃度の合計値として定められる。
【0091】
界面活性剤(B)としては、洗浄剤組成物に適用可能なものを使用することができ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン等が挙げられる。
これらの界面活性剤の中では、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミドが特に好ましい。
本発明の洗浄剤組成物中における界面活性剤(B)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜10重量%であることが好ましい。
界面活性剤が複数種類用いられている場合、界面活性剤の濃度は各界面活性剤の濃度の合計値として定められる。
【0092】
アルカリ剤(C)としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が望ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
また、これらのアルカリ剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤(C)の濃度は、特に限定されるものではないが、2〜90重量%であることが好ましい。
アルカリ剤が複数種類用いられている場合、アルカリ剤の濃度は各アルカリ剤の濃度の合計値として定められる。
【0093】
洗洗浄剤組成物のpHは特に限定されるものではないが、消泡剤(A)の末端のアセタール構造の安定性の観点からは、中性〜アルカリ性域であることが望ましい。
中性の洗浄剤組成物とする場合、そのpHが6以上9未満であることが望ましく、弱アルカリ性の洗浄剤組成物とする場合、pHが9以上12未満であることが望ましく、強アルカリ性の洗浄剤組成物とする場合、pHが12以上であることが望ましい。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、堀場製作所製、D−21型を用いて測定することができる。
【0094】
塩素剤(D)としては、例えば、塩素化イソシアヌール酸塩(塩素化イソシアヌール酸ナトリウム、塩素化イソシアヌール酸カリウム等)、トリクロロイソシアヌール酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。
また、これらの塩素剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の消泡剤はその末端にヒドロキシル基を有さず、アセタール構造を有しており、アセタール構造は塩素剤(D)と反応しないので、洗浄剤組成物中の塩素剤(D)の失活が防止される。その結果、消泡剤による消泡作用と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮することのできる洗浄剤組成物となる。
洗浄剤組成物中における塩素剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗浄剤組成物100重量%中、純分で0.1〜30重量%であることが好ましい。
塩素剤が複数種類用いられている場合、塩素剤の濃度は各塩素剤の濃度の合計値として定められる。
【0095】
洗浄剤組成物は、必要に応じて高分子分散剤(E)、キレート剤(F)、溶媒/工程剤(G)、可溶化剤(H)等の、洗浄剤組成物に配合される他の成分を含有してもよい。
高分子分散剤(E)としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、オレフィン−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。なかでも、コスト面、経済性の点から、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量Mw=3,000〜30,000)、ポリマレイン酸−アクリル酸ナトリウム、オレフィン−マレイン酸ナトリウム共重合体等が好適に用いられる。
キレート剤(F)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、ポリアクリル酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、並びに、下記式(29)で示されるポリアスパラギン酸系化合物、下記式(30)で示されるイミノジコハク酸系化合物、下記式(31)で示されるイミノジ酢酸系化合物が挙げられる。
【0096】
【化38】
[式(29)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。s、tは整数である。]
【化39】
[式(30)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【化40】
[式(31)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【0097】
洗浄剤組成物中におけるキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0〜80重量%であることが望ましく、0〜70重量%であることがより望ましく、15〜50重量%であることがさらに望ましい。
溶媒(G)としては、水や一般的に用いられる有機溶媒が挙げられる。工程剤(G)は、剤形が固体の場合の増量剤であり、pHが中性であるものが望ましく、硫酸ナトリウム、粉末シリカ等が挙げられる。
可溶化剤(H)としては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、カプリル酸、オクチル酸及びこれらの塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0098】
本発明の洗浄剤組成物の剤形は、液体、固体(錠剤、粉末等)のいずれでもよく、液体に限定されるものではない。
洗浄剤組成物が固体であり、洗浄剤組成物のpHを直接測定できない場合、洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物10gを水90gと混合した状態(洗浄剤組成物の濃度が10重量%)で測定したpHと定める。
【0099】
本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄される対象物としては、自動洗浄機で洗浄可能な物品が好ましい。食堂、厨房、食品工場、家庭の台所等で使用される食器、調理器具、食材運搬用容器、コンテナー、ケース等が挙げられる。
洗浄対象物の材質としては、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、金属(鉄、ステンレス、アルミ、銀、銅、真鍮、ブリキ、金等)、陶磁器(セラミック)、漆器、ガラス(クリスタルガラス)、木材、竹等が挙げられる。
【0100】
本発明の消泡剤は、洗浄剤組成物に配合して使用される他、他の消泡用途にも使用することができる。例えば、食品工業、排水処理、塗料、製紙工業等の分野等で使用することができる。
【実施例】
【0101】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物として、青木油脂工業株式会社製ファインサーフTDP−04K(30g)を準備し、上記オキシアルキレン鎖含有化合物の塩化メチレン溶液(50ml)に1.5当量のジヒドロピラン(DHP)と、触媒として1mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去して目的生成物を得た。
原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物は、オキシアルキレン基としてオキシプロピレン基を平均付加モル数で4モル含んでいる。
また、アルコール残基(一般式(2)のX)としてトリデシルアルコールの残基(炭素数13)を有している。
得られた生成物は、上記オキシアルキレン鎖含有化合物の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する、片末端アセタール化合物である消泡剤である。
【0103】
(実施例2、3)
実施例1において、オキシアルキレン鎖含有化合物の末端のヒドロキシル基に付加させる物質として、エチルビニルエーテル又は2,3−ジヒドロフランを用いた他は実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する消泡剤を得た。
【0104】
(実施例4、5)
実施例1において、原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物を変更した他は実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する消泡剤を得た。
実施例4で使用したオキシアルキレン鎖含有化合物(青木油脂工業株式会社製ブラウノンEHP−4)は、オキシアルキレン基としてオキシプロピレン基を平均付加モル数で4モル含んでいる。
また、アルコール残基(一般式(2)のX)としてオクチルアルコールの残基(炭素数8)を有している。
実施例5で使用したオキシアルキレン鎖含有化合物(青木油脂工業株式会社製ブラウノンBUP−1900)は、オキシアルキレン基としてオキシプロピレン基を平均付加モル数で32モル含んでいる。
また、アルコール残基(一般式(2)のX)としてブチルアルコールの残基(炭素数4)を有している。
【0105】
(実施例6)
原料としてドデカノール(試薬:30g)を準備し、ブチレンオキサイド70gと、触媒として10mol%のカリウムtert−ブトキシドを加えて4日間40℃にて撹拌した。硫酸を加えて反応を終了させ、未反応のブチレンオキサイドを留去して、アルコールのオキシブチレン基付加物を得た。加えたブチレンオキサイドと留去されたブチレンオキサイドの重量差から、アルコールのオキシブチレン基付加物のオキシブチレン基の平均付加モル数が3であることを確認した。
実施例1において、原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物を上記アルコールのオキシブチレン基付加物に変更した他は、実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する消泡剤を得た。
【0106】
(実施例7)
実施例1において、原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物をポリプロピレングリコール(試薬)に変更し、ジヒドロピランの添加量を3当量に変更した他は実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する消泡剤を得た。
原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物は、オキシアルキレン基としてオキシプロピレン基を平均付加モル数で34モル含んでいる。
得られた生成物は、上記オキシアルキレン鎖含有化合物の両末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、両末端に環状アセタール構造を有する、両末端アセタール化合物である消泡剤である。
【0107】
(比較例1、2)
実施例1において、原料としてのオキシアルキレン鎖含有化合物を変更した他は実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する消泡剤を得た。
比較例1で使用したオキシアルキレン鎖含有化合物(青木油脂工業株式会社製ブラウノンEH−4)は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を平均付加モル数で4モル含んでいる。
また、アルコール残基(一般式(2)のX)としてオクチルアルコールの残基(炭素数8)を有している。
比較例2で使用したオキシアルキレン鎖含有化合物(青木油脂工業株式会社製ファインサーフNDB−800)は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を平均付加モル数で4モル、オキシプロピレン基を平均付加モル数で2モル含んでいる。
また、アルコール残基(一般式(2)のX)としてデシルアルコールの残基(炭素数10)を有している。
【0108】
(比較例3〜5、7)
実施例1、4、5、7で使用したオキシアルキレン鎖含有化合物を消泡剤としてその後の評価試験に使用した。
【0109】
(比較例6)
実施例6で合成したアルコールのオキシブチレン基付加物を消泡剤としてその後の評価試験に使用した。
【0110】
各実施例及び比較例の消泡剤につき下記表1にまとめた。
【表1】
【0111】
(消泡性試験)
各実施例及び比較例で準備した消泡剤0.2g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(ハイテノール330T、第一工業製薬製)0.15g、水15gを目盛付容器に加え、オーバーヘッド型シェーカーを用いて80rpmで1分間撹拌させた後、1分静置後の泡量を測定した。
【0112】
(耐アルカリ性試験)
耐アルカリ性試験は、各実施例及び各比較例に係る消泡剤を、アルカリ剤の粉末にまぶして所定時間放置し、変色の具合を観察することにより行った。
各実施例又は各比較例に係る消泡剤を、水酸化ナトリウム100重量%に対して10重量%まぶした。その後、50℃で2時間静置し、目視により混合物の色を確認した。変色していない場合は、「変色なし」と、褐色に変色していた場合は「褐色に変色」と評価した。
【0113】
消泡性試験及び耐アルカリ性試験の結果につき下記表2にまとめた。
【表2】
【0114】
(塩素安定性試験)
塩素安定性試験では、実施例1、実施例5、比較例1、比較例3、比較例5及び比較例7の消泡剤のいずれかを含む洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物について塩素安定性を評価した。
洗浄剤組成物の組成は、消泡剤を2重量%、低食塩次亜塩素酸ナトリウム水溶液(商品名メックロン:有効塩素濃度12%)を40重量%、水酸化ナトリウム水溶液(濃度48重量%)を8重量%、可溶化剤(キシレンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(濃度40重量%))を20重量%、水を30重量%とした。
【0115】
調製した各洗浄剤組成物につき、有効塩素濃度を下記に示すヨウ素滴定法で測定した。
上記洗浄剤組成物約1gに、ヨウ化カリウム水溶液(濃度約2重量%)50mL及び酢酸10mLを添加して充分に混合することにより混合液を作製した。次に、0.1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で混合液を滴定し、褐色が消えて無色になった点を終点とした。その時のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量に基づき、次式(1)によって有効塩素濃度を算出した。
有効塩素濃度[%]=チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量[mL]×0.3546/洗浄剤組成物採取量[g]・・・(1)
【0116】
上記方法による有効塩素濃度の測定を、洗浄剤組成物の調製直後(0日)、5日、7日経過後にそれぞれ実施した。
洗浄剤組成物は、45℃のインキュベータ内で所定日数保管した。
洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度を100(%)とし、洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度に対する、5日、7日経過後の有効塩素濃度の割合(%)を有効塩素濃度残存率(%)として求めた。
塩素安定性試験における有効塩素濃度残存率を表3に示した。
図1には、塩素安定性試験における有効塩素濃度残存率の経時変化を示すグラフを示した。
【0117】
【表3】
【0118】
表1〜3から、オキシアルキレン鎖がオキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基からなり、末端がアセタール構造となっている本発明の消泡剤は、消泡作用が強く、アルカリ安定性が高いことがわかる。また、本発明の消泡剤は塩素剤と共存させた場合の塩素安定性が高いことがわかる。