【課題】泥水の性状に時間的な変動が生じても、その変動に対応して適量の凝集剤を添加することができる泥水式シールド工法における泥水処理方法および泥水処理設備を提供する。
【解決手段】泥水が流れる泥水流通管45の途中で凝集剤を添加して凝集処理を行うようにした泥水式シールド工法における泥水処理設備10であって、凝集剤移送手段55による凝集剤の泥水流通管45への移送流量を制御する凝集剤ポンプ制御部65aを備え、凝集剤ポンプ制御部65aは、比重計43からの計測信号と流量計47からの計測信号とに基づいて泥水流通管45に対する凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように凝集剤ポンプ57の吐出動作を制御する。
泥水式シールド工法で用いられる泥水に対しその泥水が流れる泥水流路の途中で凝集剤を添加して凝集処理を行うようにした泥水式シールド工法における泥水処理方法であって、
前記凝集剤が添加される前の泥水の比重を計測するとともに、前記凝集剤が添加される前の泥水の流量を計測し、計測した泥水の比重と流量とに基づいて前記泥水流路に対する前記凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように前記泥水流路に対する前記凝集剤の移送流量を制御することを特徴とする泥水式シールド工法における泥水処理方法。
前記凝集剤に対しその凝集剤が流れる凝集剤流路の途中で希釈水を添加して前記凝集剤を希釈するようにし、前記凝集剤流路に対する前記希釈水の移送流量を制御することにより、前記凝集剤の濃度を制御することを特徴とする請求項1に記載の泥水式シールド工法における泥水処理方法。
泥水式シールド工法で用いられる泥水に対しその泥水が流れる泥水流路の途中で凝集剤を添加して凝集処理を行うようにした泥水式シールド工法における泥水処理設備であって、
前記凝集剤が添加される前の泥水の比重を計測する比重計と、前記凝集剤が添加される前の泥水の流量を計測する流量計と、前記凝集剤を前記泥水流路へと移送する凝集剤移送手段と、前記凝集剤移送手段による前記凝集剤の前記泥水流路への移送流量を制御する凝集剤移送流量制御手段とを備え、
前記凝集剤移送流量制御手段は、前記比重計からの計測信号と前記流量計からの計測信号とに基づいて前記泥水流路に対する前記凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように前記泥水流路に対する前記凝集剤の移送流量を制御することを特徴とする泥水式シールド工法における泥水処理設備。
前記凝集剤に対しその凝集剤が流れる凝集剤流路の途中で希釈水を添加して前記凝集剤を希釈するようにし、前記希釈水を前記凝集剤流路へと移送する希釈水移送手段を設けるとともに、前記希釈水移送手段による前記希釈水の前記凝集剤流路への移送流量を制御する希釈水移送流量制御手段を設け、前記希釈水移送流量制御手段は、前記凝集剤流路に対する前記希釈水の移送流量を制御することにより、前記凝集剤の濃度を制御することを特徴とする請求項3に記載の泥水式シールド工法における泥水処理設備。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−256984号公報
【特許文献2】特開平6−182353号公報
【0005】
泥水処理の際に例えばPACを添加する場合、ある添加量において濾過水量がピークになると、それ以上添加量を増やしても濾過水量が増えず、むしろ濾過水量が低下する。したがって、凝集剤過剰添加による再利用泥水の性状悪化や、薬剤費アップ等を避けるため、適正な添加量にする必要がある。
【0006】
PACの必要添加量Xpは、泥水中の懸濁粒子量(土粒子量)に比例し、泥水に含まれる懸濁粒子(SS)1トン当たりのPAC必要添加量は25kgである。
ここで、例えば、泥水の移送量Qが5.0m
3/min、泥水の比重γtが1.35、土粒子真比重Gsが2.65、PAC比重Gpが1.20であり、泥水が流れる泥水流路の途中でPACを添加する場合に、その泥水流路に対するPACの必要移送流量q〔m
3/min〕は、以下のようにして求められる。
【0007】
まず、泥水1m
3中の土粒子重量Wsを下記の式を用いて求める。
Ws=Gs・〔(γt−1)/(Gs−1)〕・V
Gsは2.65、γtは1.35、Vは1であるので、Wsは以下のようにして求められる。
Ws=2.65×〔(1.35−1)/(2.65−1)〕×1
=0.562t/m
3
次に、泥水移送重量Woを下記の式を用いて求める。
Wo=Q・Ws
Qは5.0、Wsは0.562であるので、Woは以下のようにして求められる。
Wo=5.0×0.562=2.810t/min
PACの移送重量をWpとすると、下記の2つの式が成立する。
Wp=q・Gp
Xp=Wp/Wo
これら2つの式からPACの必要移送流量qは下記の式で表すことができる。
q=Xp・Wo/Gp
Xpは25、Woは2.810、Gpは1200であるので、qは以下のようにして求められる。
q=25×2.810/1200
=0.059m
3/min(60L/min)
【0008】
ところで、上記の泥水式シールド工法において、シールド掘進機の掘進区間では、粘性土が主体の領域があったり、砂礫が主体の領域があったり、数種類の土質が入り混じったような領域があったりするなど、地盤の性状が変化することがあり、この場合、泥水の性状が変動し、泥水の比重が時間的に大きく変動することになる。
【0009】
従来の泥水処理方式では、PACの必要移送流量qを上記のようにして求めた0.059m
3/min(60L/min)で一定に固定するため、泥水の性状が一定で泥水の比重が1.35程度で推移する場合はPAC添加量が適正となるものの、泥水の性状が時間的に変動するに伴い泥水の比重が大きく変化する場合、PAC添加量が過剰になったり、逆に過少になったりすることがあり、PAC添加量が過剰の場合、再利用泥水の性状悪化や薬剤費アップを招き、PAC添加量が過少の場合、凝集不良を招くという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、泥水の性状に時間的な変動が生じても、その変動に対応して適量の凝集剤を添加することができる泥水式シールド工法における泥水処理方法および泥水処理設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、第1発明による泥水式シールド工法における泥水処理方法は、
泥水式シールド工法で用いられる泥水に対しその泥水が流れる泥水流路の途中で凝集剤を添加して凝集処理を行うようにした泥水式シールド工法における泥水処理方法であって、
前記凝集剤が添加される前の泥水の比重を計測するとともに、前記凝集剤が添加される前の泥水の流量を計測し、計測した泥水の比重と流量とに基づいて前記泥水流路に対する前記凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように前記泥水流路に対する前記凝集剤の移送流量を制御することを特徴とするものである。
【0012】
第1発明において、前記凝集剤に対しその凝集剤が流れる凝集剤流路の途中で希釈水を添加して前記凝集剤を希釈するようにし、前記凝集剤流路に対する前記希釈水の移送流量を制御することにより、前記凝集剤の濃度を制御するのが好ましい(第2発明)。
【0013】
次に、第3発明による泥水式シールド工法における泥水処理設備は、
泥水式シールド工法で用いられる泥水に対しその泥水が流れる泥水流路の途中で凝集剤を添加して凝集処理を行うようにした泥水式シールド工法における泥水処理設備であって、
前記凝集剤が添加される前の泥水の比重を計測する比重計と、前記凝集剤が添加される前の泥水の流量を計測する流量計と、前記凝集剤を前記泥水流路へと移送する凝集剤移送手段と、前記凝集剤移送手段による前記凝集剤の前記泥水流路への移送流量を制御する凝集剤移送流量制御手段とを備え、
前記凝集剤移送流量制御手段は、前記比重計からの計測信号と前記流量計からの計測信号とに基づいて前記泥水流路に対する前記凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように前記泥水流路に対する前記凝集剤の移送流量を制御することを特徴とするものである。
【0014】
第3発明において、前記凝集剤に対しその凝集剤が流れる凝集剤流路の途中で希釈水を添加して前記凝集剤を希釈するようにし、前記希釈水を前記凝集剤流路へと移送する希釈水移送手段を設けるとともに、前記希釈水移送手段による前記希釈水の前記凝集剤流路への移送流量を制御する希釈水移送流量制御手段を設け、前記希釈水移送流量制御手段は、前記凝集剤流路に対する前記希釈水の移送流量を制御することにより、前記凝集剤の濃度を制御するのが好ましい(第4発明)。
【発明の効果】
【0015】
第1発明および第3発明によれば、凝集剤が添加される前の泥水の比重を計測するとともに、凝集剤が添加される前の泥水の流量を計測し、計測した泥水の比重と流量とに基づいて泥水流路に対する凝集剤の必要移送流量を演算し、算出された必要移送流量となるように泥水流路に対する凝集剤の移送流量を制御するようにされているので、泥水の性状に時間的な変動が生じても、その変動に対応して適量の凝集剤を添加することができる。これにより、凝集剤の過剰添加を抑えることができるので、薬剤費を低減することができる。また、脱水時に発生する濾水中に含まれる薬剤混入を極力抑えることができるので、良質な泥水を作製することができる。また、凝集剤添加量の適正化により、脱水ケーキの含水率を低減することができるとともに、プレスサイクルタイムを短くすることが定量的に可能となる。
【0016】
ところで、凝集剤の添加量が同じであっても、凝集剤の濃度が異なれば凝集効果が異なる。そこで、第2発明または第4発明の構成を採用することにより、すなわち、凝集剤に対しその凝集剤が流れる凝集剤流路の途中で希釈水を添加して凝集剤を希釈するようにし、凝集剤流路に対する希釈水の移送流量を制御することで、凝集剤の濃度を制御することにより、泥水の性状に応じて高濃度の凝集剤あるいは低濃度の凝集剤を添加することができるので、より高い凝集効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明による泥水式シールド工法における泥水処理方法および泥水処理設備の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<泥水式シールド工法の説明>
泥水式シールド工法は、泥水式のシールド掘進機1によりシールドドンネルを形成して行く工法で、シールド掘進機1のカッタ面板2の直後に隔壁3により区画形成した圧力室4に、加圧した泥水を、排泥管5および送泥管6を介して循環充填し、切羽を安定させながら機械掘りするものである。この泥水式シールド工法おいて、発生した掘削土砂は、泥水とともに流体輸送し、泥水処理施設10で掘削土砂を分離し、掘削土砂を分離した泥水を再び循環再利用しつつ掘り進むとともに、シールド掘進機1の後方において図示されないセグメント組立装置により順次セグメントを組み立ててシールドトンネルを構築する。
【0020】
<泥水処理設備の概略説明>
この泥水式シールド工法における泥水処理設備10は、主に、一次処理プラント11、二次処理プラント12および三次処理プラント13を備えている。
一次処理プラント11は、圧力室4から排泥管5を介して排出される、掘削土砂を随伴する排泥水から砂質分を分離処理する。二次処理プラント12は、循環再利用される泥水を除いた一次処理後の余剰泥水から粘土質分やシルト質分を分離除去する。三次処理プラント13は、二次処理により分離された余剰水を調整処理する。以下に、各処理プラント11,12,13についてより具体的に説明する。
【0021】
<一次処理プラントの説明>
一次処理プラント11は、切羽から送られてきた排泥水に含まれる掘削土砂を最初に処理する設備である。この一次処理プラント11は、例えば振動脱水篩方式のサンドコレクター21を備え、サンドコレクター21は、排泥水から砂質分、すなわち礫、砂、粘土およびシルト塊を分離処理する。砂質分が分離除去された排泥水は、サンドコレクター21の泥水受槽22に一旦貯留され、サンドコレクター21に付設されたサイクロン23および配管24を介して二次処理プラントに圧送される。
なお、サンドコレクター21によって分離された砂質分は、一次処理土として、図示されない搬送装置等により、1次土砂ピット25へと送られる。
【0022】
<二次処理プラントの説明>
二次処理プラント12は、主として、調整槽31と、余剰泥水槽32と、フロック生成のためのスラリー槽33と、PACのような無機系の凝集剤を貯留するPAC槽34もしくはDMDACのような有機系の凝集剤を貯留するDMDAC槽35と、脱水装置36とによって構成されている。
【0023】
調整槽31においては、一次処理プラント11から送られる排泥水や、貯泥槽37からの泥水の良液、CMC槽38からのCMC剤(増粘剤)、清水槽39からの清水、後述する三次処理プラント13(濾水槽51)からの濾水などが混合され、シールド工事用の泥水として循環再利用が可能な品質となるように調整される。調整後の泥水は、送泥管6を介してシールド掘進機1の圧力室4に返送される。一方、掘削土が溶け込んだ余剰の泥水は、泥水流通管40を介して余剰泥水槽32に送られる。余剰泥水槽32には、ポンプ41の作動によって槽内から導出された泥水を槽内に還流する泥水循環管42が付設されている。この泥水循環管42には比重計43が配設され、余剰泥水槽32内に貯留されている泥水の比重が比重計43によって計測されるようになっている。
【0024】
余剰泥水槽32の下流側には、スラリー槽33が配設されている。余剰泥水槽32とスラリー槽33とを接続する泥水流通管45には、泥水ポンプ46、流量計47およびラインミキサー48が、余剰泥水槽32からスラリー槽33に向かって順に配設されている。泥水流通管45における流量計47とラインミキサー48との間には、当該泥水流通管45内を流れる泥水に対し、後述する凝集剤移送手段55により凝集剤を添加するための凝集剤添加部45aが設けられている。そして、泥水ポンプ46の作動により、余剰泥水槽32に貯留されている泥水が泥水流通管45を介してスラリー槽33へと圧送され、凝集剤添加部45aで凝集剤が添加される前の泥水の流量が流量計47によって計測され、泥水流通管45内を流れる泥水と凝集剤添加部45aで添加された凝集剤とがラインミキサー48によって混合され、この混合液がスラリー槽33内に導入される。
【0025】
スラリー槽33内においては、泥水と凝集剤とが攪拌されることにより、フロック化が促進されて、シルト質分や粘土質分が沈殿濃縮される。沈殿濃縮されたシルト質分や粘土質分は脱水処理に供されるべく脱水装置36へと送られる
【0026】
脱水装置36としては、例えばフィルタープレスが用いられ、当該脱水装置36による脱水処理によって生じた脱水ケーキは、二次処理土として、ベルトコンベヤ等の搬送装置49により、2次土砂ピット50へと送られる。一方、脱水装置36での脱水処理時に生じた分離水は、三次処理プラント13(濾水槽51)へと送られる。
【0027】
<三次処理プラントの説明>
三次処理プラント13は、脱水装置36からの分離水が導入される濾水槽51を備えている。この濾水槽51において、pH調整等によりその品質をシールド工事の工事用水として使用可能な品質に調整し、かかる調整後の濾水は、配管52を介して調整槽31に送られて、循環泥水の品質を調整するための混合水として使用されるとともに、後述する凝集剤供給管56に送られて、凝集剤を希釈する希釈水として使用される。
【0028】
次に、泥水流通管45内を流れる泥水に対し凝集剤を添加するに際して、PAC槽34もしくはDMDAC槽35に貯留されている凝集剤を泥水流通管45へと移送する凝集剤移送手段55について説明する。
【0029】
<凝集剤移送手段の説明>
凝集剤移送手段55は、凝集剤供給管56を備え、この凝集剤供給管56の途中に凝集剤ポンプ57を配設して構成されている。ここで、凝集剤供給管56は、PAC槽34もしくはDMDAC槽35と、泥水流通管45における凝集剤添加部45aとを接続するための配管である。また、凝集剤ポンプ57は、その吸込側をPAC槽34もしくはDMDAC槽35に向ける一方で、その吐出側を泥水流通管45に向けた状態で設けられ、凝集剤ポンプ制御信号を受けてその動作が制御されるようになっている。また、凝集剤供給管56における凝集剤ポンプ57の吐出側には、流量計58が配設されている。
【0030】
凝集剤移送手段55においては、凝集剤ポンプ57の作動により、PAC槽34もしくはDMDAC槽35に貯留されている凝集剤(PAC,DMDAC)が、凝集剤供給管56を介して泥水流通管45へと圧送され、圧送される凝集剤の移送流量が流量計58によって計測される。
【0031】
なお、凝集剤供給管56における凝集剤ポンプ57と流量計58と間には、当該凝集剤供給管56内を流れる凝集剤に対し、後述する希釈水移送手段60により希釈水を添加するための希釈水添加部56aが設けられている。
【0032】
次に、凝集剤供給管56内を流れる凝集剤に対し希釈水を添加するに際して、濾水槽51に貯留されている濾水を希釈水として凝集剤供給管56へと移送する希釈水移送手段60について説明する。
【0033】
<希釈水移送手段の説明>
希釈水移送手段60は、希釈水供給管61を備え、この希釈水供給管61の途中に希釈水ポンプ62を配設して構成されている。ここで、希釈水供給管61は、凝集剤供給管56における希釈水添加部56aと、濾水槽51とを接続するための配管である。また、希釈水ポンプ62は、その吸込側を濾水槽51に向ける一方で、その吐出側を凝集剤供給管56に向けた状態で設けられている。また、希釈水供給管61における希釈水ポンプ62の吐出側には、流量計63が配設されている。
【0034】
希釈水移送手段60においては、希釈水ポンプ62の作動により、濾水槽51に貯留されている濾水が希釈水として、希釈水供給管61を介して凝集剤供給管56へと圧送され、圧送される希釈水の移送流量が流量計63によって計測される。
【0035】
<自動制御装置の説明>
泥水処理設備10は、設備を構成する各種機器を自動制御する自動制御装置65を備えている。この自動制御装置65は、主として、CPU(中央演算処理装置)、種々のデータや所定プログラム等を記憶するメモリ、およびその他の電気回路等のハードウェア(いずれも図示省略)により構成されている。この自動制御装置65には、比重計43、凝集剤ポンプ57、希釈水ポンプ62および流量計47,58,63がそれぞれ所定信号を伝達可能に接続されている。
【0036】
<CPUの機能モジュールの説明>
自動制御装置65における図示されないCPUにおいては、図示されないメモリから所定プログラムを適宜に読み込んで実行することにより、凝集剤ポンプ制御部65a(本発明の「凝集剤移送流量制御手段」に相当する。)や、希釈水ポンプ制御部65b(本発明の「希釈水移送流量制御手段」に相当する。)などの種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、凝集剤ポンプ57や希釈水ポンプ62の動作制御を行っている。
【0037】
次に、凝集剤ポンプ制御部65aによる凝集剤ポンプ57の動作制御や、希釈水ポンプ制御部65bによる希釈水ポンプ62の動作制御を行うにあたって必要となるPAC必要移送流量、DMDAC必要移送流量および希釈水必要移送流量のそれぞれの計算方法について以下に説明する。
【0038】
まず、以下の計算で用いる主な記号について以下のように定義する。
Q:泥水流量〔m
3/min〕
γt:泥水比重
Gs:土粒子真比重(本例では2.65)
Xp:PAC必要添加量(本例では25kg/sst)
Xd:DMDAC必要添加量(本例では2.1kg/sst)
Gp:PAC比重(本例では1.20)
Gd:DMDAC比重(本例では1.10)
q
P:PAC必要移送流量〔m
3/min〕
q
D:DMDAC必要移送流量〔m
3/min〕
q
W:希釈水必要移送流量〔m
3/min〕
N:希釈倍率
【0039】
<PAC必要移送流量の計算>
まず、泥水1m
3中の土粒子重量Ws〔t/m
3〕を下記の式を用いて求める。
Ws=Gs・〔(γt−1)/(Gs−1)〕・V
ここで、Gsは固定値で本例では2.65であり、Vは1であるので、Wsは以下のようにして求められる。
Ws=2.65×〔(γt−1)/(2.65−1)〕×1
=1.61×(γt−1)
次に、泥水移送重量Wo〔t/min〕を下記の式を用いて求める。
Wo=Q・Ws
=1.61×(γt−1)・Q
PAC移送重量をWp〔kg/min〕とすると下記の2つの式が成り立つ。
Wp=q
P・Gp
Xp=Wp/Wo
ここで、Gpは1200であり、Xpは固定値で本例では25kg/sstであるので、これら2つの式から下記の式が成り立つ。
25=1200・q
P/〔1.61×(γt−1)・Q〕
上記の式からPAC必要移送流量q
P〔m
3/min〕は下記の式(1)で表される。
q
P=25×〔1.61×(γt−1)・Q〕/1200 ・・・(1)
こうして、比重計43からの信号に基づく泥水比重γtと、流量計47からの信号に基づく泥水流量Qと、上記式(1)とによってPAC必要移送流量q
Pを求めることができる。
【0040】
<DMDACの必要移送流量の計算>
XpをXd、GpをGdに置き換え、上記PAC必要移送流量q
Pの計算と同様にして、下記式(2)によりDMDAC必要移送流量q
D〔m
3/min〕を求めることができる。
q
D=2.1×〔1.61×(γt−1)・Q〕/1100 ・・・(2)
【0041】
<希釈水必要移送流量の計算>
希釈水必要移送流量q
W〔m
3/min〕は、泥水の性状等に応じて適宜に設定される希釈倍率Nを用いて下記の式で求められる。
q
W=q
D・(N―1)
この式と上記式(2)とにより、希釈水必要移送流量q
Wは下記(3)で表される。
q
W={2.1×〔1.61×(γt−1)・Q〕/1100}・(N−1)
・・・(3)
【0042】
次に、凝集剤ポンプ制御部65aの処理内容について
図2のフローチャートを用いて説明する。なお、
図2中記号「S」はステップを示し、ステップS1〜ステップS4の処理は所定サイクルタイム毎に繰り返し実行される。
【0043】
<凝集剤必要移送流量制御の説明>
まず、凝集剤ポンプ制御部65aは、比重計43の計測信号を読み込むとともに、流量計47の計測信号を読み込む(S1)。次いで、読み込んだ計測信号に基づいて上記式(1)および式(2)により、PAC必要移送流量q
PとDMDAC必要移送流量q
Dを演算する(S2)。次いで、凝集剤ポンプ57に対し所定の凝集剤ポンプ制御信号を出力して、流量計58の計測信号(フィードバック信号)に基づく凝集剤ポンプ57の実際の移送流量が必要移送流量(q
P+q
D)となるように凝集剤ポンプ57の吐出動作を制御する(S3〜S4)。
【0044】
こうして、PACおよびDMDACが添加される前の泥水の比重を比重計43により計測するとともに、PACおよびDMDACが添加される前の泥水の流量を流量計47により計測し、計測した泥水の比重と流量とに基づいて泥水流通管45に対するPAC必要移送流量q
PおよびDMDAC必要移送流量q
Dを演算し、算出された必要移送流量q
P,q
Dとなるように泥水流通管45に対する凝集剤ポンプ57のPACおよびDMDACの移送流量を制御するようにされているので、泥水の性状に時間的な変動が生じても、その変動に対応して適量の凝集剤を添加することができる。これにより、凝集剤の過剰添加を抑えることができるので、薬剤費を低減することができる。また、脱水時に発生する濾水中に含まれる薬剤混入を極力抑えることができるので、良質な泥水を作製することができる。また、凝集剤添加量の適正化により、脱水ケーキの含水率を低減することができるとともに、プレスサイクルタイムを短くすることが定量的に可能となる。
【0045】
次に、希釈水ポンプ制御部65bの処理内容について
図3のフローチャートを用いて説明する。なお、
図3中記号「T」はステップを示し、ステップT1〜ステップT5の処理は所定サイクルタイム毎に繰り返し実行される。
【0046】
<希釈水必要移送流量制御の説明>
まず、希釈水ポンプ制御部65bは、比重計43の計測信号を読み込むとともに、流量計47の計測信号を読み込む(T1)。次いで、読み込んだ比重計43の計測信号と流量計47の計測信号に基づいて自動設定される希釈倍率Nを読み込む(T2)。次いで、読み込んだ計測信号および希釈倍率Nに基づいて上記式(3)により、希釈水必要移送流量q
Wを演算する(T3)。次いで、希釈水ポンプ62に対し所定の希釈水ポンプ制御信号を出力して、流量計63の計測信号(フィードバック信号)に基づく希釈水ポンプ62の実際の移送流量が必要移送流量q
Wとなるように希釈水ポンプ62の吐出動作を制御する(T4〜T5)。
【0047】
こうして、凝集剤(PACもしくはDMDAC)に対しその凝集剤が流れる凝集剤供給管56の途中で希釈水を添加して凝集剤を希釈するようにし、凝集剤供給管56に対する希釈水の移送流量を制御することで、凝集剤の濃度を制御することにより、泥水の性状に応じて高濃度の凝集剤あるいは低濃度の凝集剤を添加することができるので、より高い凝集効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の泥水式シールド工法における泥水処理方法および泥水処理設備について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。