【解決手段】擬木材の製造方法は、第1工程として擬木本体準備工程を行う。擬木本体準備工程として作業者は、擬木材100を構成する長尺の樹脂製の板状体を用意する。次に、作業者は、第2工程として切削刃準備工程を行う。切削刃準備工程として作業者は、プレーナー90のカンナ刃93の刃部93aに電動グラインダ97を用いて切欠き部201を形成して切削刃200を得る。次に、作業者は、第3工程として、切削工程を行う。切削工程として作業者は、切削刃200をセットしたプレーナー90内に擬木本体101を投入して擬木本体101の表面に木目GWを加工する。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、板状に形成した擬木本体を用意する擬木本体準備工程と、連続して延びる刃部に同刃部を部分的に切り欠いた複数の切欠き部を形成した切削刃を用意する切削刃準備工程と、刃部を擬木本体の表面に切り込ませて切削刃と擬木本体とを相対変位させることにより擬木本体の表面を削る切削工程とを含むことにある。この場合、擬木本体は、ステンレス材などの金属材(アルミニウム材および銅などの非鉄金属も含む)、樹脂材、コンクリート材で構成することができる。また、擬木本体は、パーティクルボード(木片を固めたもの)で構成することもできる。また、切削刃は、擬木本体よりも硬質で擬木本体を削ることができる炭素鋼などの金属材料で構成することができる。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、擬木材の製造方法は、擬木本体の表面を削る切削刃における刃部に切欠き部を部分的に形成して、この切削刃を用いて擬木本体の表面を削ることで擬木本体の表面に木目を加工している。すなわち、本発明に係る擬似木の製造方法においては、切削刃の刃部に切欠き部を形成するだけで擬木材の表面に木目を加工することができるため、1つ1つが異なる木目を形成した擬木材を簡単に製造することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記擬木材の製造方法において、切削刃準備工程は、刃部を欠けさせる工具を用いて人手によって切欠き部を形成することにある。この場合、切欠き部を形成する工具には、小型ハンマー、手持ちヤスリ、鑿(のみ)、電動ヤスリまたは電動グラインダを用いることができる。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、擬木材の製造方法は、切削刃準備工程が刃部を欠けさせる工具を用いて人手によって行われているため、刃部に形成される複数の切欠き部の形状および複数の切欠き部間の間隔が不均一となり、この不均一さによって擬木本体の表面に自然の風合いの木目を形成することができる。また、複数の切削刃にそれぞれ切欠き部を形成した場合においては、切削刃間において切欠き部の形状、形成位置および形成間隔が不揃いとなるため、複数の擬木本体間で表面に自然の風合いの木目を形成することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記擬木材の製造方法において、切削工程は、切削刃および擬木本体のうちの一方を他方に対して人手によって変位させることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、擬木材の製造方法は、切削工程が切削刃および擬木本体のうちの一方を他方に対して人手によって変位させるため、擬木本体の表面に形成される木目を構成する各目が擬木本体の送り方向に直交する幅方向にブレたり広がったりすることで自然の風合いの木目を形成することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記擬木材の製造方法において、切削工程は、原動機によって回転駆動させた切削刃に対して擬木本体を相対変位させることにある。この場合、原動機によって切削刃を回転駆動させる装置としては、切削工具に対して被加工物を変位させるプレーナー(平削り盤、自動カンナ盤、据え付け型電動カンナ盤および固定電動カンナ盤ともいう)または被加工物にして切削工具側を変位させる電動カンナ(手持ち電動カンナともいう)がある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、擬木材の製造方法は、切削工程が原動機によって回転駆動させた切削刃に対して擬木本体を相対変位させるため、作業負担を軽減して短時間に木目を加工することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記擬木材の製造方法において、切削刃は、刃部が擬木本体の幅よりも短い長さに形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、擬木材の製造方法は、切削刃の刃部の長さが擬木本体の幅よりも短い長さに形成されているため、擬木本体の表面の全面に木目を形成するためには表面に対して少なくとも2回以上相対位置を変えて切削刃を当てて加工を行う必要があり、複数の擬木材間においてより不揃いかつ不均一な木目を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る擬木材の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る擬木材100の製造方法における主要な工程の流れを示すフローチャートである。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この擬木材100は、屋内または屋外で床を構成する板材(床材)、テーブルなどの家具を構成する板材、塀または柵を構成する板材、建物の屋根、壁または戸などの建具を構成する板材、さらには植物を栽培するプランターの側壁を構成する板材など家具用または建築用の資材として用いられるものである。
【0018】
まず、擬木材100を製造する作業者は、第1工程として、擬木本体101を用意する。擬木本体101は、
図2(A),(B)にそれぞれ示すように、擬木材100を構成する材料であり、長尺の板状体に形成されている。より具体的には、擬木本体101は、樹脂材を断面が角型で長尺に延びる筒状体に形成して構成されている。この場合、擬木本体101の表面は、凹凸のない平滑面状に形成されている。
【0019】
ここで、長尺とは、一方向における長さがこの一方向に直交する幅方向に対して十分に長い帯状に延びる形状であって、例えば、前記一方向の長さが幅方向の3倍以上の長さに形成されているものである。本実施形態においては、擬木本体101は、幅が120mm、厚さが30mm、長さが2000mmmに形成されている。
【0020】
また、擬木本体101を構成する樹脂材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリスチレン樹脂などの各種樹脂材を単体で、またはこれらの樹脂材に炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ペーパースラッジまたは木屑などの各種材料を混ぜたものを用いることができる。この場合、擬木本体101は、特別に着色することなく樹脂材の色そのもので構成することができるが、樹脂材に顔料および添加材を加えることによって木材の色に着色して構成することが好ましい。そして、この擬木本体101は、図示しない射出成形装置などの成型装置を用いて板状に成形することができる。
【0021】
この擬木本体101を用意する工程が、本発明に係る擬木本体準備工程に相当する。なお、この擬木本体準備工程は、必ずしも作業自身が擬木本体101を成形する必要はなく、既に市販されている樹脂製の板状体を購入して用意するようにしてもよい。また、擬木本体101は、必ずしも中空に形成された筒状体である必要はなく、中実(無垢)体であってもよいことは当然である。
【0022】
次に、作業者は、第2工程として、切削刃200を用意する。ここで、切削刃200は、
図3(A),(B)にそれぞれ示すように、擬木本体101に木目GWを加工するための工具であり、擬木本体101を切削加工するための刃物で構成されている。具体的には、作業者は、
図4(A),(B),
図5にそれぞれに示すプレーナー90に取り付けられているカンナ刃93に部分的に切欠き部201を形成して切削刃200とする。
【0023】
ここで、プレーナー90は、被加工物である木材(図示せず)の表面を薄く削って平滑にするための電動の加工装置である。このプレーナー90は、公知であるため詳しい説明は省略するが、主としてテーブル91、回転胴92、カンナ刃93、前方送りローラ94および後方送りローラ95をそれぞれ備えている。
【0024】
テーブル91は、被加工物を載置して支持するための部分であり、金属製の平板を水平に配置して構成されている。回転胴92は、2つのカンナ刃93を着脱自在に保持して回転駆動させるための円柱状の部品であり、テーブル91の上に対向配置されている。この回転胴92は、図示しない電動モータによって回転駆動する。
【0025】
2つのカンナ刃93は、それぞれ被加工物の表面を削り取る金属製(炭素鋼製)の切削工具であり、被加工物の送り方向に直交する被加工物の幅方向に連続的に延びる鋭利な刃部93aを有して構成されている。これら2つのカンナ刃93は、回転胴92の中心を挟んだ互いに反対側の位置に回転胴92の外周部から刃部93aの刃先を突出した状態で取り付けられている。
【0026】
前方送りローラ94は、テーブル91上を回転胴92側に被加工物を送り込むための回転体であり、ゴムローラによって構成されている。また、後方送りローラ95は、テーブル91上を回転胴92から被加工物を排出するための回転体であり、前方送りローラ94と同じゴムローラによって構成されている。これらの前方送りローラ94および後方送りローラ95は、図示しない電動モータによってそれぞれ回転駆動する。
【0027】
作業者は、上記プレーナー90における回転胴92に取り付けられる2つのカンナ刃93をそれぞれ用意するとともに、これらのカンナ刃93の刃部93aに複数の切欠き部201をそれぞれ形成する。より具体的には、作業者は、
図6に示すように、2つのカンナ刃93を互いに重ね合わせた状態でバイスなどのワーク固定具96に保持させた状態で各刃部93aに電動グラインダ97の回転工具97aを当てて切欠き部201を形成する。
【0028】
この場合、作業者は、2つのカンナ刃93の各刃部93aに沿って任意の間隔を介して任意の幅および深さで複数の切欠き部201を形成する。これにより、2つのカンナ刃93の各刃部93aには、
図5に示すように、それぞれ同じ間隔(位置)、幅、深さの切欠き部201がそれぞれ形成されるとともに、切欠き部201が形成されなかった刃部93aがそのまま刃部202として形成される。
【0029】
この場合、作業者は、擬木本体101の幅方向の長さより短い長さの刃部93aを有するカンナ刃93に切欠き部201を形成して切削刃200を製作している。本実施形態においては、切削刃200は、カンナ刃93の刃部93aの長さが擬木本体101の幅方向の長さの2/3の長さに形成されたカンナ刃93によって製作されている。この切削刃200を用意する工程が、本発明に係る切削刃準備工程に相当する。なお、この切削刃準備工程においては、プレーナー90の既存のカンナ刃93に切欠き部201を形成して切削刃200を用意したが、カンナ刃93自体から製作してもよいことは当然である。
【0030】
次に、作業者は、第3工程として、擬木本体101に木目GWを加工する。具体的には、作業者は、
図3に示すように、前記第2工程で製作した2つの切削刃200をプレーナー90の回転胴92にそれぞれ取り付けた後、プレーナー90の作動を開始させて回転胴92、前方送りローラ94および後方送りローラ95をそれぞれ回転駆動させる(
図3破線矢印参照)。これにより、2つの切削刃200が回転駆動を開始する。
【0031】
次いで、作業者は、擬木本体101をプレーナー90のテーブル91上に載置して回転胴92側に送り込む。この場合、作業者は、テーブル91に対する回転胴92、前方送りローラ94および後方送りローラ95の各高さ位置および回転胴92に保持された2つの切削刃200に対する擬木本体101の幅方向の位置を調整した上で擬木本体101を回転胴92側に送り込む。
【0032】
これにより、擬木本体101は、プレーナー90の前方送りローラ94によって回転胴92に送られるとともに、回転駆動する2つの切削刃200によって表面が削られる。この場合、擬木本体101は、
図7に示すように、切削刃200における刃部202によって溝状に削られるとともに、切欠き部201に対向する部分が削られずに残る。そして、回転胴92を通過した擬木本体101は、前方送りローラ94および後方送りローラ95によってプレーナー90の内部から排出される。
【0033】
これにより、擬木本体101の表面には、切削刃200に対向する部分に刃部202および切欠き部201に対応する溝状の凹凸からなる木目GWが線状に延びて形成される。この場合、作業者は、プレーナー90内に送られる擬木本体101の送り方向を左右方向に若干ずらすことで木目GWをブレさせたり曲げたりすることができる。
【0034】
また、この場合、擬木本体101は、原料である樹脂材が木材の色に着色されているため、切削刃200によって削られた部分は木材の色を維持している。また、切削刃200の長さは擬木本体101の幅の長さ未満であるため、擬木本体101の表面は切削刃200に対向した部分のみ木目GWが加工されるとともに、その余の部分は未加工部分である。
【0035】
したがって、作業者は、木目GWを加工した擬木本体101の表面における木目GWが形成されていない部分に木目GWを形成すべく、再度、プレーナー90に擬木本体101を投入する。この場合、作業者は、擬木本体101における木目GWが形成されていない
表面部分が切削刃200に対向するようにテーブル91上で位置決めして回転胴92内に送り込む。これにより、
図8(A),(B)にそれぞれ示すように、擬木本体101の1つの表面における前面に木目GWが形成される。なお、
図8(A),(B)においては、木目GWを直線状に描いているが、実際には、木目GWは作業者による前記手動操作によっては幅方向にブレた波状に形成されたり曲がって形成されたりするものである。
【0036】
次いで、作業者は、擬木本体101における他の表面(反対側の表面または側面)に木目GWを形成する場合には、前記と同様にして、木目GWを形成する表面を回転胴92側に向けた状態でプレーナー90内に投入する。一方、作業者は、擬木本体101の表面における木目GWが必要な部分に木目GWを形成した場合には、加工不良などの品質検査、清掃および梱包などの各種後工程を経て擬木材100の製造作業を終了するが、これらの後工程については本発明に直接関わらないため、その説明を省略する。なお、作業者は、擬木本体101を木材以外の色で構成している場合には前記第3工程の後、木目GWを形成した擬木材101の表面に木材の色を着色する。これにより、擬木材100が完成する。
【0037】
また、作業者は、他の擬木本体101の表面に木目GWを形成する場合には、前記切削刃200を再度使用してもよいし、新たな擬木本体101ごとに新たな切削刃200を用意してもよい。切削刃200を再度使用する場合、作業者は、プレーナー90内に投入する擬木本体101の位置を変更してプレーナー90内に投入することにより前記した擬木材100とは異なる柄の木目GWを形成した擬木材100を得ることができる。この擬木本体101の表面に切削刃200を用いて木目GWを加工する工程が、本発明に係る切削工程に相当する。
【0038】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、擬木材の製造方法は、擬木本体101の表面を削る切削刃200における刃部202に切欠き部201を部分的に形成して、この切削刃200を用いて擬木本体101の表面を削ることで擬木本体101の表面に木目GWを加工している。すなわち、本発明に係る擬似木の製造方法においては、切削刃200の刃部202に切欠き部201を形成するだけで擬木材100の表面に木目GWを加工することができるため、1つ1つが異なる木目GWを形成した擬木材100を簡単に製造することができる。
【0039】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、擬木材100は、擬木本体101を樹脂材で構成した。しかし、擬木材100は、擬木本体101を自然木をそのまま板状に加工した無垢の木板以外の材料、例えば、ステンレス材などの金属材(アルミニウム材および銅などの非鉄金属も含む)、コンクリート材で構成することができる。また、擬木材100は、擬木本体101をパーティクルボード(木片を固めたもの)で構成することもできる。
【0041】
また、上記実施形態においては、第2工程にて作業者は電動グラインダ97を用いて切欠き部201を形成した。しかし、作業者は、カンナ刃93を切り欠いて切欠き部201を形成することができれば、電動グラインダ97以外の工具、例えば、小型ハンマー、手持ちヤスリ、鑿(のみ)または電動ヤスリを用いて加工してもよい。また、作業者は、フライス盤またはマシニングセンタなどの工作機械を用いて切欠き部201を形成することもできる。
【0042】
また、上記実施形態においては、第3工程にて作業者は、プレーナー90を用いて擬木本体101の表面に木目GWを形成した。すなわち、作業者は、位置が固定されている切削刃200に対して擬木本体101を変位させるように構成した。しかし、切削刃200と擬木本体101とは、互いに相対的に変位するようにすればよい。したがって、作業者は、位置を固定した擬木本体101に対して切削刃200を変位させることもできる。具体的には、例えば、作業者は、バイスなどのワーク固定器具を用いて位置を固定した擬木本体101に対して切削刃200を備えた手動カンナ(図示せず)または電動カンナ(図示せず)などの手押しの加工機具を変位させて擬木本体101の表面に木目GWを形成することができる。これによれば、擬木材100は、手押しの加工機具の送り速度、送り方向の直進性が不安定となるため、画一的な木目GWではなく自然の風合い近い木目GWを形成することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、第3工程にて作業者は、プレーナー90の前方送りローラ94および後方送りローラ95を回転駆動させて擬木本体101を回転胴92に送り込むようにした。しかし、作業者は、前方送りローラ94および後方送りローラ95を回転駆動させずに手動で擬木本体101を回転胴92に送り込むこともできる。これによれば、擬木材100は、擬木本体101の送り速度、送り方向の直進性が不安定となるため、画一的な木目GWではなく自然の風合い近い木目GWを形成することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、切削刃200は、擬木本体101の幅方向の長さよりも短い長さの刃部202を有して構成した。これにより、擬木材100は、擬木本体101の表面に数回に亘って木目GWの加工を行うことで不均一な木目GWを形成することができる。この場合、切削刃200は、刃部202の長さを擬木本体101の幅方向の長さの1/2以下の長さにするとよい。しかし、切削刃200は、擬木本体101の幅方向の長さ以上の長さの刃部202を有して構成することできる。これによれば、作業者は、擬木本体101を1回だけプレーナー90に通すだけで木目GWを表面の全体に形成することができる。この場合、作業者は、切削刃200に対する擬木本体101の幅方向の位置決め位置によって木目GWの柄を調節することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、第3工程にて、2つの切削刃200を用いて擬木本体101に木目GWを加工した。しかし、第3工程においては、少なくとも1つ以上の切削刃200を用いて擬木本体101に木目GWを加工するようにすればよい。