【解決手段】杭の外周面に杭頭補強筋を溶接する溶接システムであって、前記杭に当接した状態の前記杭頭補強筋を保持する保持部材を一方の面に有するとともに、他方の面にガイドレールを有する板状部材と、前記ガイドレールに沿って往復移動可能なよう当該ガイドレールに設置された移動部材と、前記移動部材に設置された溶接トーチと、前記板状部材に設けられ、前記保持部材とは別の位置で前記杭頭補強筋と当接して当該杭頭補強筋を支持する当接部材と、を有し、前記溶接トーチを前記ガイドレールの下方側から上方側へ向かって移動させる際に、当該溶接トーチを用いてアーク溶接を行う溶接装置を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、杭頭補強筋は、現場において杭頭に溶接することで杭頭部に設置されることが一般的である。しかしながら、上記溶接は縦方向の溶接であり、非常に難しい。そのため、作業者の熟練度などに応じて、仕上がりにバラツキが出るおそれがあった。
【0006】
このように、杭頭補強筋を杭頭部に現場で溶接する場合、仕上がりにバラツキが出るおそれがある、という問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、杭頭補強筋を杭頭部に溶接する際に仕上がりにバラツキが出るおそれがある、という問題を解決することが出来る溶接システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である溶接システムは、
杭の外周面に杭頭補強筋を溶接する溶接システムであって、
前記杭に当接した状態の前記杭頭補強筋を保持する保持部材を一方の面に有するとともに、他方の面にガイドレールを有する板状部材と、
前記ガイドレールに沿って往復移動可能なよう当該ガイドレールに設置された移動部材と、
前記移動部材に設置された溶接トーチと、
前記板状部材に設けられ、前記保持部材とは別の位置で前記杭頭補強筋と当接して当該杭頭補強筋を前記杭に当接した状態で支持する当接部材と、
を有し、
前記溶接トーチを前記ガイドレールの下方側から上方側へ向かって移動させる際に、当該溶接トーチを用いてアーク溶接を行う溶接装置を有する
という構成を採る。
【0009】
また、上記溶接システムは、
前記保持部材は、前記杭頭補強筋からみて前記杭が位置する側とは反対側から当該杭頭補強筋を保持する、
という構成を採る。
【0010】
また、上記溶接システムは、
前記当接部材は、前記保持部材が前記杭頭補強筋を保持した状態で、前記杭と前記保持部材とを結ぶ線に直交する方向である前記杭頭補強筋の側面方向から当該杭頭補強筋と当接して当該杭頭補強筋を支持する
という構成を採る。
【0011】
また、上記溶接システムは、
前記溶接トーチは、当該溶接トーチに供給される溶接ワイヤに通電することでアーク溶接を行うよう構成され、
前記溶接ワイヤは、立向き用ワイヤである
という構成を採る。
【0012】
また、上記溶接システムは、
前記杭頭補強筋の下方側端部が位置する位置には、当該杭頭補強筋よりも大きな径を有するエンドタブが前記杭に当接するよう配置されている
という構成を採る。
【0013】
また、上記溶接システムは、
前記エンドタブは略半円形の形状を有しており、前記杭に当接する側の端部に一対の凹み部を有する
という構成を採る。
【0014】
また、上記溶接システムは、
前記杭頭補強筋と前記杭との溶接箇所のうち一方側の溶接を行うことが可能なよう前記溶接トーチの向き及び位置を調整した第1の溶接装置と、前記杭頭補強筋と前記杭との溶接箇所のうち他方側の溶接を行うことが可能なよう前記溶接トーチの向き及び位置を調整した第2の溶接装置と、の少なくとも2つの溶接装置を有する
という構成を採る。
【0015】
また、本発明の他の形態である溶接装置は、
杭の外周面に杭頭補強筋を溶接する溶接装置であって、
前記杭に当接した状態の前記杭頭補強筋を保持する保持部材を一方の面に有するとともに、他方の面にガイドレールを有する板状部材と、
前記ガイドレールに沿って往復移動可能なよう当該ガイドレールに設置された移動部材と、
前記移動部材に設置された溶接トーチと、
前記板状部材に設けられ、前記保持部材とは別の位置で前記杭頭補強筋と当接して当該杭頭補強筋を前記杭に当接した状態で支持する当接部材と、
を有し、
前記溶接トーチを前記ガイドレールの下方側から上方側へ向かって移動させる際に、当該溶接トーチを用いてアーク溶接を行う
という構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成されることにより、杭頭補強筋を杭頭部に溶接する際に仕上がりにバラツキが出るおそれがある、という問題を解決することが出来る溶接システム、溶接装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図14を用いて説明する。
図1は、溶接装置1の構成の一例を示す図である。
図2は、杭6の杭頭部に杭頭補強筋7を当接した状態で、溶接装置1が杭頭補強筋7を保持した際の一例を示す図である。
図3は、杭頭補強筋7の下端部に配置されるエンドタブ8の配置例を示す図である。
図4、
図5は、エンドタブ8の形状の一例を示す図である。
図6は、エンドタブ8の上に杭頭補強筋7を配置した際の様子の一例を示す図である。
図7は、エンドタブの有無による溶接長の差について説明するための図である。
図8乃至
図11は、エンドタブの他の形状の一例を示す図である。
図12は、溶接システムが複数の溶接装置1を用いる際の構成の一例を示す図である。
図13は、杭6と杭頭補強筋7とを溶接した際の溶接個所9a、9bの一例を示す図である。
図14は、杭6の杭頭部の外周面に杭頭補強筋7を溶接した際の状態の一例を示す図である。
【0019】
本発明の第1の実施形態では、鋼管杭などの杭6の外周面に杭頭補強筋7を溶接する溶接装置1を有する溶接システムについて説明する(
図14参照)。本実施形態における溶接装置1は、後述するように、杭6の杭頭部の外周面に杭頭補強筋7を当接させた状態で、磁石2により杭頭補強筋7を保持する。また、溶接装置1は、磁石2により杭頭補強筋7を保持するとともに、ゲージ5により磁石2とは別の位置で杭頭補強筋7を支持する。そして、溶接装置1は、磁石2及びゲージ5により杭頭補強筋7を保持、支持した状態で、杭6の杭頭部と杭頭補強筋7との当接箇所を溶接する。このような構成により、溶接装置1は、杭頭補強筋7が杭6と当接した状態を維持しつつ機械の制御により自動的に溶接を行うことが出来る。その結果、バラツキなく杭頭補強筋7を杭6の杭頭部に溶接することが可能となる。
【0020】
なお、本実施形態においては、杭頭補強筋7の一例として、開先付きの異形棒鋼(例えば、J−BAR)を用いる場合について説明する。J−BARは
図2で示すように、開先が設けられた異形棒鋼であり、杭頭補強筋の一種である。なお、本実施形態における溶接システムが溶接可能な杭頭補強筋7は、開先が設けられた杭頭補強筋7に限定されない。本発明は、杭頭補強筋7として開先を有しない異形棒鋼などを用いる場合にも適用可能である。
【0021】
図1を参照すると、本実施形態における溶接装置1は、板状部材11と、制御部12と、を有している。溶接装置1の板状部材11は、一方の端部で地面と接しており、他方の端部に制御部12を有している。換言すると、板状部材11の上端部には制御部12が設けられている。また、板状部材11は、一方の面に磁石2a、2b(以下、特に区別しない場合は磁石2と表記する)を有するとともに、他方の面にガイドレール111を有している。また、板状部材11には、板状部材11のうち磁石2を有する面側に位置するよう、少なくとも1つのゲージ5が設けられている。
【0022】
板状部材11は、正面視で溶接装置1を地面に設置した際に上下方向となる方向に長辺を有する略長方形の形状を有しており、上記のように、一方の面に磁石2を有するとともに、他方の面にガイドレール111を有している。板状部材11は、例えば、長手方向の長さが約200mmであり、保持する対象となる杭頭補強筋7に応じた長さ(又は、溶接する長さに応じた長さ)を有している。
【0023】
ガイドレール111は、上記のように板状部材11の一方の面(磁石2が設けられている面とは反対側の面)に設けられており、板状部材11の長手方向に設けられている。ガイドレール111の長さは、板状部材11の長さに応じた長さであり、例えば、150〜200mm(例えば、160mm)である。
【0024】
ガイドレール111は、当該ガイドレール111に設置された移動部材3が当該ガイドレール111に沿って板状部材11の長手方向に移動可能なよう、形成されている。具体的には、例えば、ガイドレール111は、平板状の棒に等間隔に歯を設けたラックである。後述するように、移動部材3が有する歯車をガイドレール111と噛み合わせ、当該歯車を回転させることで、移動部材3が上下移動することが出来ることになる。なお、ガイドレール111及び移動部材3の構成は、移動部材3が上下移動可能であれば上記場合に限定されない。ガイドレール111は、その他既知の構成を採用することが出来る。
【0025】
磁石2(保持部材)は、板状部材11のうちのガイドレール111が設けられている面とは反対側の面に設けられている。磁石2は、磁力により杭頭補強筋7を保持する。磁石2は例えば電磁石(永久磁石でも構わない)であり、磁石2に設けられたスイッチの制御(又は、制御部12からの制御)により磁力のON/OFFを制御可能なよう構成されている。
図1で示すように、磁石2は、例えば、板状部材11のうちの上方部分と下方部分の所定位置(例えば、ガイドレール111の上端部及び下端部に対応する位置)の2箇所に設けられている。なお、板状部材11が有する磁石2の数は2つに限定されない。例えば、板状部材11は、1つの磁石2を有していても構わないし、3つ以上の複数の磁石2を有していても構わない。
【0026】
図2で示すように、本実施形態における磁石2は、杭頭補強筋7からみて杭6が位置する側とは反対側から当該杭頭補強筋7を保持する。つまり、杭頭補強筋7は、磁石2(即ち、溶接装置1)と杭6とに挟み込まれる形で、杭6と当接した状態で溶接装置1に保持されることになる。
【0027】
なお、磁石2のうち杭頭補強筋7と当接する面には、杭頭補強筋7の形状に応じた凹部を設けることが出来る(
図2参照)。ただし、磁石2は上記凹部を有していなくても構わない。
【0028】
制御部12は、溶接装置1全体の制御を行なう。制御部12は図示しない電源ケーブルを介して外部電源と接続されており、外部電源から電源の供給を受けることで稼働する。
【0029】
図1で示すように、制御部12は、接続ケーブル122を介して移動部材3と接続されている。制御部12が接続ケーブル122を介して移動部材3に対して指示することで、移動部材3はガイドレール111に沿って上下動することになる。また、制御部12は、接続ケーブル123を介して溶接トーチ4と接続されている。制御部12が接続ケーブルを介して溶接トーチ4に対して指示することで、溶接トーチ4はアーク放電による溶接を行うことになる。
【0030】
制御部12による移動部材3及び溶接トーチ4に対する指示は、例えば、制御部12が有するスイッチ121に対する操作が行われることにより行われる。制御部12は、対応するスイッチ121を操作されることで、例えば、移動部材3に対する上下動の指示や移動部材3の移動速度を制御する指示、溶接トーチ4に対する溶接の実行の指示、などを行うことになる。また、制御部12は、磁石2に対する磁力のON/OFFの指示などを行うよう構成することが出来る。
【0031】
なお、制御部12は、移動部材3に対する指示と溶接トーチ4に対する指示とを、例えば連動して行うことが出来る。具体的には、例えば、制御部12は、移動部材3に対して上方に移動するよう指示するとともに、溶接トーチ4に対して溶接を行うよう指示することが出来る。このような指示により、本実施形態における溶接装置1は、移動部材3が上方へ移動する際に溶接トーチ4により溶接を行うことが出来る。つまり、立向きで上方へ進む溶接を行うことが出来る。その後、所定の長さ分移動部材3が上方へ移動した後、制御部12は、移動部材3に対して移動を止めるよう指示するとともに、溶接トーチ4に対して溶接を止めるよう指示する。これにより、移動部材3は上方への移動を止めることになり、溶接トーチ4は溶接を止めることになる。
【0032】
また、上記のように、制御部12は、移動部材3の上方への移動速度を調整することが出来る。移動速度の調整は、例えば、杭頭補強筋7の径などに応じて調整される溶接部分の肉厚の調整などを目的として行われる。具体的には、上方への移動速度を遅くすることで、溶接部分をより厚くすることが出来る。例えば、制御部12は、1分程度かけて移動部材3が160mm上方へ移動するよう、移動速度を調整する。
【0033】
移動部材3は、上述したように、ガイドレール111に沿って上下方向に往復移動可能なよう当該移動部材3に設置されている。例えば、移動部材3は、ガイドレール111に設けられた歯と嵌合する歯車を有しており、制御部12からの制御により歯車を回転させることで、ガイドレール111に沿って当該ガイドレール111の上方向に移動する。また、移動部材3は、上方への移動を停止した状態になると、自身の重みにより歯車を逆方向に回転させつつ自動で下降する。
【0034】
また、本実施形態における移動部材3は、向き調整部31を介して溶接トーチ4を装備している(
図1参照)。さらに、移動部材3のうち溶接トーチ4側には、カバー32が設けられている。このような構成のため、移動部材3が上下方向に移動すると、当該移動部材3の移動に応じて、向き調整部31及びカバー32、溶接トーチ4も上下方向に移動することになる。
【0035】
本実施形態における移動部材3は、例えば、磁石2により杭頭補強筋7を保持した際に、当該杭頭補強筋7の下端部(杭頭補強筋7と杭6とが当接している位置付近)に位置するよう調整されている。そして、移動部材3は、当該位置から制御部12の制御により上方へ移動する。上述したように、移動部材3が上方へ移動している際に、溶接トーチ4により溶接が行われることになる。その後、所定長さ分(例えば、160mm)上方へ移動した(つまり、所定長さ分溶接を行った)後、移動部材3は、制御部12からの制御により、上方への移動を停止する(溶接トーチ4による溶接も停止する)。そして、移動部材3は、上方向への移動を停止した後、自動で下端部まで下降する。下端部までの移動部材3の下降は、例えば、10〜15秒程度かけて行われる。
【0036】
向き調整部31は、溶接トーチ4の向きを調整する際に用いられる。向き調整部31は、向き調整用ハンドルを有しており、当該向き調整用ハンドルを操作することで、溶接装置1に設置されている溶接トーチ4の向きを調整可能なよう構成されている。向き調整部31による溶接トーチ4の向きの調整は、例えば、溶接を実行する前に溶接トーチ4を杭6と杭頭補強筋7との当接箇所に向ける際の微調整などを行う際に行われる。なお、向き調整部31の構成は既知の技術の採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
カバー32は、耐熱性の素材により構成されており、溶接トーチ4が溶接を行う際に生じる熱が移動部材3などに直接伝わることを防ぐ役割を有している。
図1で示すように、カバー32は、溶接トーチ4が設けられている側に設けられている。従って、例えば装置の右側に溶接トーチ4を設けた場合には、カバー32は装置の右側に設けられることになる。一方で、例えば装置の左側に溶接トーチ4を設けた場合には、カバー32は装置の左側に設けられることになる。
【0038】
溶接トーチ4は、制御部12からの指示に応じて、アーク溶接により溶接を行う。
図2で示すように、溶接トーチ4には溶接ワイヤ41が供給されており、当該溶接ワイヤ41に通電することでアーク溶接を実施することになる。
【0039】
本実施形態における溶接トーチ4は、溶接装置1が杭頭補強筋7を保持、支持した際に、当該杭頭補強筋7と杭6との当接部分に溶接トーチ4が位置するよう、予め位置、向きが調整された状態で溶接装置1に装備されている。つまり、溶接トーチ4は、溶接装置1が杭頭補強筋7を保持、支持した際に、溶接開始位置に位置するよう予め調整されている。なお、溶接トーチ4の位置、向きは、上述した向き調整部31により現場で調整することも出来る。
【0040】
上述したように、溶接トーチ4は接続ケーブル123を介して制御部12と接続されており、制御部12からの制御によりアーク溶接を実施する。溶接トーチ4による溶接は、例えば、移動部材3が上方へ移動する際に行われることになる。従って、溶接トーチ4による溶接も、上方へ向かって行われる。
【0041】
溶接トーチ4に供給される溶接ワイヤ41は、例えば、立向き用に調整されたワイヤであり、立向き溶接を行った際に溶けた鉄が下方へと垂れにくいよう調整されている。具体的には、本実施形態に溶接ワイヤ41は、例えば、軟鋼、高張力用のフラックス入りワイヤであり、下記のような成分を有するよう調整されている。炭素0.05%、ケイ素0.56%、マンガン1.23%、リン0.009%、硫黄0.008、銅0.01%、ニッケル0.01%、クロム0.02%、モリブテン0.02%、バナジウム0.02%。又は、溶接ワイヤ41は、例えば、下記のような成分を有するよう調整されている。炭素0.05%、ケイ素0.62%、マンガン1.30%、リン0.022%、硫黄0.011%、銅0.30%。このように立向き用に調整されたワイヤを用いることで、より確実に溶接を行うことが出来る。
【0042】
なお、
図1では、溶接装置1に対して右側に溶接トーチ4が位置する例を示している。しかしながら、溶接トーチ4は、溶接装置1に対して左側に位置するよう調整しても構わない。この場合、上述したように、溶接トーチ4の位置に応じてカバー32の位置なども調整されることになる。
【0043】
ゲージ5(当接部材)は、杭頭補強筋7の当接箇所に応じた形状を有しており、例えば、杭頭補強筋7の外周面と開先部分の面との接続部分に当接するよう形成されている。ゲージ5は、板状部材11の任意の箇所に設けられており、磁石2が杭頭補強筋7を保持した際に杭頭補強筋7が杭6と当接している状態で磁石2とは別の位置で杭頭補強筋7と当接して当該杭頭補強筋7を支持する。具体的には、
図2で示すように、ゲージ5は、磁石2が杭頭補強筋7を保持した状態で、杭6と磁石2とを結ぶ線に直交する方向である杭頭補強筋7の側面方向から杭頭補強筋7に当接する。これにより、溶接装置1が杭頭補強筋7を保持している状態で、杭6と杭頭補強筋7との当接状態にずれが生じるのを防ぐことが出来る。
【0044】
なお、ゲージ5の厚み(板状部材11の長手方向の長さ)は、任意に調整可能である。また、
図1では溶接装置1が1つのゲージ5を有する場合を示したが、溶接装置1が有するゲージ5の数は1つに限定されない。溶接装置1は、2つ以上の任意の数のゲージ5を有していても構わない。
【0045】
また、
図2では、ゲージ5は、溶接トーチ4が位置する側と同一側から杭頭補強筋7と当接している場合について示している。しかしながら、ゲージ5が位置する位置は、
図2で示す場合に限定されない。ゲージ5は、例えば、溶接トーチ4が位置する側とは反対側から杭頭補強筋7に当接するよう構成しても構わない。
【0046】
溶接装置1は、例えば上記のような構成を有している。上記のような構成により、溶接装置1は、例えば、
図2で示すように杭頭補強筋7を保持、指示して杭頭補強筋7と杭6との当接箇所を下方から上方へ向かって溶接する。つまり、溶接装置1は、当該溶接装置1の磁石2と杭6とで杭頭補強筋7を挟み込むように、杭頭補強筋7が杭6と当接した状態で当該杭頭補強筋7を磁石2により保持する。また、溶接装置1は、磁石2が杭頭補強筋7を保持した状態で、杭頭補強筋7の側面方向からゲージ5を杭頭補強筋7に当接させる。溶接装置1は、例えばこのようにして杭頭補強筋7を保持、支持する。その後、溶接装置1は、杭6と杭頭補強筋7との当接箇所を、下方から上方へ向かって溶接トーチ4を用いて溶接する。
【0047】
また、本実施形態における溶接システムは、
図3で示すように、杭頭補強筋7の下方側端部が位置する位置にエンドタブ8を配置する。エンドタブ8は、杭6の所定位置に予め仮止め溶接されている。杭頭補強筋7は、エンドタブ8及び杭6と当接するように配置され、当該状態で溶接装置1により保持され、溶接されることになる。
【0048】
図4、5は、エンドタブ8の形状の一例を示している。
図4で示すように、エンドタブ8は、例えば、略半円形の形状(扇形の形状)を有している。
【0049】
エンドタブ8は、エンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に当該杭頭補強筋7と当接する当接部分81と、扇型状に形成された凹部でありエンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に当該杭頭補強筋7と当接しないよう構成されている一対の凹部82(82a、82b)と、から構成されている(
図4、
図5参照)。
【0050】
また、凹部82a及び凹部82bは、エンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に、当該凹部82a及び82bの少なくとも一部の上部に杭頭補強筋7が位置するよう形成されている。さらに、凹部82a及び凹部82bは、溶接装置1が溶接する際に形成される脚長に応じた大きさを有している。つまり、凹部82a及び凹部82bは、溶接時に形成される部分に応じた形状に形成されており、溶接時に生じる液体を下方で受け止める(受け止めた液体の一部が杭頭補強筋7の下方へ流れ込む)ことが出来るよう形成されている。このように、凹部82a及び凹部82bは、杭頭補強筋7の下端部分と当接部分81とを当接した際に、一部が杭頭補強筋7の外に位置するとともに、一部が杭頭補強筋7の下に位置するよう構成されている。なお、エンドタブ8は、弦の部分で杭6と当接するよう形成されており、また、凹部82a、82bは、エンドタブ8のうち杭6との当接部分側に設けられている。
【0051】
図6は、エンドタブ8の上に杭頭補強筋7を配置した際の様子の一例を示している。
図6を参照すると、エンドタブ8は、杭頭補強筋7よりも大きい形状を有していることが分かる。また、エンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に、エンドタブ8が有する凹部82a、82bの一部の上部に杭頭補強筋7が位置いていることが分かる。本実施形態における溶接装置1は、このようにエンドタブ8の上に位置するよう保持された杭頭補強筋7を溶接する。その結果、溶接時に生じる液体がエンドタブ8で受け止められるとともに、エンドタブ8と杭頭補強筋7との間の隙間に流れ込んだのちに固まることになる。
【0052】
ここで、溶接を行う際には、溶接ワイヤ41をアーク溶接により溶かして一時的に液体とすることになる。そのため、立向き溶接を行うと、重力の影響により溶けた液体が下方へと落下することになる。従って、立向き溶接により下方から上方へと溶接を行うと、溶接の下端部付近の溶接具合が不安定になりやすいという特徴がある。
【0053】
一方、本願発明の溶接システムは、上記のように、杭頭補強筋7よりも大きい形状を有するエンドタブ8を有している。このような構成により、エンドタブ8により溶けた鉄を受けとめることが出来る。そのため、本実施形態によると、立向き溶接であっても、溶接のはじめからしっかりと溶接をすることが出来る。さらに、エンドタブ8は凹部82を有しており、当該凹部82に溶けた液体が流れ込む。これにより、よりしっかりと溶接を行うことが可能となる。
【0054】
また、立向き溶接の際には、上記のように溶接の下端部付近の溶接具合が不安定になりやすいという特徴がある。そのため、一般的な立向き溶接の場合、溶接の下端部分10〜20mm程度は溶接不良の部分となり、当該溶接不良部分は有効溶接長さに含まれないことになる(
図7参照)。従って、例えば、有効溶接長さ140〜200mmの溶接を行う場合、不良部分である10〜20mm分を含めた150〜220mm分の溶接を行うことが必要となる。一方、本発明の溶接システムは、上記のようにエンドタブ8を有している。そのため、本発明によると、杭頭補強筋7の下端部からしっかりと溶接を行うことが可能である。つまり、本発明の溶接システムによる溶接の場合、溶接不良の部分が存在しないことになる。その結果、例えば、有効溶接長さ140〜200mmの溶接を行う場合、当該有効溶接長さ分の140〜200mmの溶接を行なえば、必要な溶接を十分行うことが出来ることになる。
【0055】
また、エンドタブ8を用いない場合、下端部付近の溶接は行うことが難しいため、溶接を行う際の時間も非常にかかることになる。一方、本発明の溶接システムのようにエンドタブ8を用いることで、杭頭補強筋7の下端部から確実な溶接を行うことが可能となる。その結果、(移動部材3を上方へ移動させる速度により調整される)溶接装置1による溶接時間を節約することが可能となる。このように、エンドタブ8は、溶接時間の節約という面からも非常に大きな効果を有していることになる。
【0056】
なお、本実施形態においては、略半円形の形状(扇形の形状)を有し、当接部分81と一対の凹部82とからなるエンドタブ8を用いるとした。しかしながら、エンドタブ8の形状は、上記説明した場合に限定されない。
【0057】
エンドタブ8は、例えば
図8で示すように、エンドタブ8のうち杭6と当接する箇所に、例えば当接することになる杭6の形状に応じて凹む凹み部を有していても構わない。また、エンドタブ8は、凹部82の大きさが、
図4、
図5で示す場合と比較してより大きくなるよう形成しても構わない。つまり、凹部82の形状は、エンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に、一部が杭頭補強筋7の外に位置するとともに、一部が杭頭補強筋7の下に位置するよう構成されていれば特に限定されない。また、エンドタブ8は、例えば
図9で示すように、
図8で示す当接部分81のうちの一部を切除した形状であっても構わない(なお、切除する位置は、凹部82がふくまれていなければ任意の位置で構わない)。これは、
図4、5で示す形状の場合も同様である。
【0058】
また、エンドタブ8は、例えば
図10で示すように、凹部81が形成されていない扇平型の形状であっても構わない。また、エンドタブ8は、例えば
図11で示すように、略四角形状の角平型の形状であっても構わない。このように、エンドタブ8は、必ずしも凹部82を有していなくても構わない。なお、
図10及び
図11も、エンドタブ8の上部に杭頭補強筋7を設置した際に当該杭頭補強筋7と当接する部分の一部を削除しても構わない。
【0059】
以上が、溶接システムについての説明である。
【0060】
このように、本実施形態における溶接装置1は、磁石2とゲージ5と溶接トーチ4とを有している。このような構成により、溶接装置1は、磁石2とゲージ5とにより杭頭補強筋7を保持、支持した状態で、溶接トーチ4により溶接を行うことが出来る。その結果、バラツキなく杭頭補強筋7を杭6の杭頭部に溶接することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態における溶接システムは、エンドタブ8を有している。このような構成により、杭頭補強筋7の下方側端部にエンドタブ8を配置した状態で溶接装置1により溶接を行うことが出来る。その結果、下方側の溶接が不安定になりやすい立向き溶接を溶接装置1により行ったとしても、当該下方側からしっかりと溶接を行うことが可能となり、よりバラツキなく杭頭補強筋7を杭6の杭頭部に溶接することが可能となる。
【0062】
なお、本実施形態における溶接システムは、
図12、
図14で示すように、杭6の外周面に複数の杭頭補強筋7を溶接することになる。また、溶接を行う際には、
図12、
図13で示すように、杭6と杭頭補強筋7との当接箇所である9aと9bの2箇所を溶接することになる。このような溶接を効率的に行うため、溶接システムは、少なくとも2つの溶接装置1を用いることが望ましい。
【0063】
具体的には、例えば、
図12で示すように、杭頭補強筋7と杭6との当接箇所のうち一方側である9aの溶接を行うことが可能なよう溶接トーチの向き及び位置を調整した溶接トーチ4aを有する第1の溶接装置1と、他方側である9bの溶接を行うことが可能なよう溶接トーチの向き及び位置を調整した溶接トーチ4bを有する第2の溶接装置1と、の少なくとも2つの溶接装置1を用いる。このように少なくとも2つの溶接装置1を用いることで、溶接トーチ4の位置を調整することなく当接箇所9a及び9bを溶接することが出来る。その結果、効率的に杭6と杭頭補強筋7との当接箇所である9aと9bの2箇所を溶接することが可能となる。なお、第1の溶接装置1と第2の溶接装置1とは、例えば、1本分ほどの間隔を空けて杭頭補強筋7を溶接することが望ましい。
【0064】
以上、上記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。