【課題】建具の開度調整装置において、建具を全開乃至半開きの状態から全閉状態に閉動させる際や全閉状態から開動させる際に、煩わしい確認作業やシャッター切替などの人為的操作を不要にし、自動復帰も可能にする。
係留アーム10と係留ベース11とを有し、係留ベース11には、建具5が全閉状態と半開き状態との範囲を開閉するときに係留アーム10の先端部を係合状態のまま移動自在にする常用レール部20と、建具5の半開き時に係留アーム10における先端部をその停止位置から常用レール部20の延長方向へ移動させる延伸レール部21と、延伸レール部21から係留アーム10の先端部をレール外側方へ通過させて係留ベース11から係留アーム10の離脱を可能にさせる外通口22と、延伸レール部21と常用レール部20との接続間を不通と開通とに切り替える設定変更部23とが設けられている。
前記ストッパ部材には、前記係留アームの先端部が前記延伸レール部から前記常用レール部へ向けて移動するときにこの先端部に係合状態で随伴させて当該ストッパ部材を前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間へ復帰移動させる同行部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の建具の開度調整装置。
前記設定変更部は、人為的操作により前記ストッパ部材に対する係合又は離脱を行って前記常用レール部に沿った当該ストッパ部材の摺動状態と摺動不能状態とを切り替え可能にする開放操作具を有していることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の建具の開度調整装置。
前記常用レール部には、前記ストッパ部材によって前記延伸レール部への移動を阻止された前記係留アームの先端部に当接して当該先端部を前記ストッパ部材との間で挟み込む第2ストッパ部材と、
前記第2ストッパ部材による前記係留アームの先端部への当接と離反とを人為的操作によって切り替え可能にする全閉操作具と、
が設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の建具の開度調整装置。
前記常用レール部には、前記ストッパ部材によって前記延伸レール部への移動を阻止された前記係留アームの先端部に当接して当該先端部を前記ストッパ部材との間で挟み込む第2ストッパ部材と、
前記第2ストッパ部材による前記係留アームの先端部への当接と離反とを人為的操作によって切り替え可能にする全閉操作具と、
が設けられ、
前記同行部材には、前記ストッパ部材が前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間を開通させている非常態下において前記第2ストッパ部材が前記係留アームの先端部から離反した状態を前記常用レール部内から当て止めするストッパ返し壁が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の建具の開度調整装置。
鉛直軸まわりに片持ちで揺動する障子によって建具が形成され、前記建具の全閉時において当該建具の外周全周を取り囲む障子枠によって建具枠が形成され、これら建具と建具枠との両者間に跨がるように請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の建具の開度調整装置が設けられていることを特徴とする開閉窓装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建具を半開き位置で停止させるために提案された前記従来技術(特許文献1)では、前記の通り、建具の全閉時に、牽制アームの先端がガイド枠の下端位置(出入口の隣接位置)で停止する設定となっている。
そのため、建具を全閉状態から開く際には、建具を半開き状態にするのか、或いは建具を半開き位置を超えて全開位置まで開かせるのかの違いに基づき、予めシャッターの開閉位置を確認する煩わしさが付随する。当然のことながら、この確認により、シャッターが意図した開閉位置と異なっていることが判明すれば、シャッターを所定の配置に切り替えるための操作が必要になる。従って、これらの確認作業やシャッターの切替操作が非常に面倒で煩わしいものとなっていた。
【0008】
また、このようなシャッターの存在を知らされていない者やシャッターの切替操作に不
慣れな者が建具の開閉を行った場合、建具を半開き状態で停止させることができるという、折角の機能を有効活用できないことがあった。のみならず、建具を半開き状態で停止させたいにも拘わらず、建具が予想以上に開いてしまって由々しき問題に発展したり、建具を半開き位置で停止できないことを原因として風圧等による建具の衝撃的な開閉動作を招来させてしまったりするおそれもあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、建具を全開乃至半開きの状態から全閉状態に閉動させる際や全閉状態から開動させる際に、煩わしい確認作業やシャッター切替などの人為的操作を不要にできる(自動復帰も実現可能にする)建具の開度調整装置、及びこの開度調整装置を採用して構成した開閉窓装置を提供することを目的とする。
また本発明は、たとえ操作の不慣れな者であっても建具を確実に半開き状態で停止させることができ、一方で、建具を全開にする必要のあるときには簡単操作によって建具を半開き状態を超えた任意開度まで開くことができるようにした建具の開度調整装置、及びこの開度調整装置を採用して構成した開閉窓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る建具の開度調整装置は、建具と、この建具まわりの一部又は全部を取り囲んで当該建具の開閉動作を支持する建具枠との両者間に跨がるように設ける建具の開度調整装置において、前記建具の開放時には相互離反し閉鎖時には相互当接する建具側の側縁部と建具枠側の側縁部とに対し各別に振り分けて配置する係留アームと係留ベースとを有しており、前記係留アームには、前記建具側の側縁部又は建具枠側の側縁部における長手方向を振り幅方向として揺動自在に支持する揺動軸が設けられ、前記係留ベースには、前記建具が全閉状態と半開き状態との範囲を開閉動作するときに前記係留アームの先端部を係合状態のまま前記側縁部の長手方向に沿わせて移動自在に保持する常用レール部と、前記建具が半開き状態とされたときに前記係留アームにおける先端部をその停止位置から前記常用レール部の延長方向へ移動自在に保持する延伸レール部と、前記延伸レール部から前記係留アームの先端部をレール外側方へ通過させて当該係留ベースから前記係留アームの離脱を可能にさせる外通口と、前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間を常態下では不通に保持するが非常態下では人為的操作によって開通可能に切り替える設定変更部と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
前記設定変更部は前記常用レールに沿って摺動自在に嵌められたストッパ部材を有しており、前記ストッパ部材は、前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間を不通にしている常態下において前記外通口を閉鎖するシャッター壁を有したものとすることができる。
前記ストッパ部材には、前記係留アームの先端部が前記延伸レール部から前記常用レール部へ向けて移動するときにこの先端部に係合状態で随伴させて当該ストッパ部材を前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間へ復帰移動させる同行部材が設けられたものとしてもよい。
【0012】
前記設定変更部は、人為的操作により前記ストッパ部材に対する係合又は離脱を行って前記常用レール部に沿った当該ストッパ部材の摺動状態と摺動不能状態とを切り替え可能にする開放操作具を有したものとするのがよい。
前記常用レール部には、前記ストッパ部材によって前記延伸レール部への移動を阻止された前記係留アームの先端部に当接して当該先端部を前記ストッパ部材との間で挟み込む第2ストッパ部材と、前記第2ストッパ部材による前記係留アームの先端部への当接と離反とを人為的操作によって切り替え可能にする全閉操作具と、が設けられたものとしてもよい。
【0013】
なおこの場合、前記同行部材をも採用することが可能である。同行部材の採用時には、この同行部材に対して、前記ストッパ部材が前記延伸レール部と前記常用レール部との接続間を開通させている非常態下において前記第2ストッパ部材が前記係留アームの先端部から離反した状態を前記常用レール部内から当て止めするストッパ返し壁が設けられたものとしてもよい。
【0014】
一方、本発明に係る開閉窓装置は、鉛直軸まわりに片持ちで揺動する障子によって建具が形成され、前記建具の全閉時において当該建具の外周全周を取り囲む障子枠によって建具枠が形成されたものであって、これら建具と建具枠との両者間に跨がるように本発明に係る建具の開度調整装置を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建具の開度調整装置、及びこの開度調整装置を採用して構成した開閉窓装置は、建具を全開乃至半開きの状態から全閉状態に閉動させる際や全閉状態から開動させる際に、煩わしい確認作業やシャッター切替などの人為的操作を不要にできる(自動復帰も実現可能にする)。
また本発明に係る建具の開度調整装置、及びこの開度調整装置を採用して構成した開閉窓装置は、たとえ操作の不慣れな者であっても建具を確実に半開き状態で停止させることができ、一方で、建具を全開にする必要のあるときには簡単操作によって建具を半開き状態を超えた任意開度まで開くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係る建具の開度調整装置1と、この開度調整装置1を採用して構成した本発明に係る開閉窓装置2とを示している。また
図8乃至
図13には、開度調整装置1を構成する各部材を示している。
まず、開度調整装置1及び開閉窓装置2について、構成上の概要及び代表的な操作方法を説明する。
【0018】
なお、本実施形態に例示する開閉窓装置2は、
図6及び
図7に示しように鉛直軸まわりに片持ちで揺動する障子(窓)5と、この障子5の全閉時においてそのまわり(外周全周)を取り囲む障子枠(窓枠)6とを有して構成される「辷り出し窓」としてある。
ただ、本発明に係る開度調整装置1では、障子5を辷り出し窓やその他の開閉窓だけでなく、それら以外にも広く適用することが可能であることから、以下では障子5を概念的に上位となる「建具5」と言い換えることにし、同理由によって障子枠6を「建具枠6」
と言い換えることにする。
【0019】
開度調整装置1は、建具5側の側縁部5a又は建具枠6側の側縁部6aのうち一方に設ける係留アーム10と、同他方に設ける係留ベース11とを有している。ここにおいて「建具5側の側縁部5a」及び「建具枠6側の側縁部6a」は、建具5の開閉に伴って互いに当接したり離反したりする配置関係を有したものについて言う。
従って、図例では建具5側の側縁部5aに係留アーム10を設け、建具枠6側の側縁部6aに係留ベース11を設けたものとしたが、これとは反対に、建具5側の側縁部5aに係留ベース11を設け、建具枠6の側縁部6aに係留アーム10を設けてもよい。要は、建具5と建具枠6との両者間で係留アーム10と係留ベース11とを各別に振り分けて配置すればよい。
【0020】
このように構成される開度調整装置1では、建具5と建具枠6との両者間に跨がらせるようにして係留アーム10と係留ベース11とを設けることにより、建具5を、
図3に示す全閉状態から
図2に示す半開き状態までの間で開閉させることができる。すなわち、このときの建具5の開閉動作は二位置切り替え的なものになり、これが開度調整装置1による基本的な動作態様(常態)である。
【0021】
一方で、この開度調整装置1は、建具5が
図2に示す半開き状態にあるときに所定の人為的操作を加えることにより、建具5を
図1に示す開放状態にさせることもできる。この開放状態下では、建具5を、半開き状態を超えて全開状態(
図7では開度90°の場合を例示した)までの間で任意に開かせることができる。
このような動作態様は、例えば、建具5等を清掃したりメンテナンスしたりする場合をはじめとして、建具5の外部から建具5を開ける必要に迫られた場合(例えば、建物高所に対する災害時の消火や救援活動時、或いは防犯目的の侵入時等)などの非常態下で、適宜判断して実施すればよい。
【0022】
なお、言うまでもなく、建具枠6に対して建具5を開閉自在に取り付ける開閉機構(ヒンジ装置)12において、建具5の開度を複数段階で停止できるような機能が備えられている場合では、全閉状態から見て最初の停止位置を半開き状態(
図2)とおいて、その後の停止位置で建具5を各設定開度にすべく開閉動作を行えばよいことになる。
開放状態とさせた建具5を閉じる際には、
図4及び
図5に示す経過を経て、建具5を全閉状態(
図3参照)に戻すことができる。この際、建具5を閉じる操作の他には何ら人為的操作は不要となっている。すなわち、この開度調整装置1は、建具5を閉じるだけで初期状態へと自動復帰が可能となっており、次回、建具5を開く場合を含めていちいち煩わしい操作を行う必要はない。
【0023】
次に、開度調整装置1について詳説する。
図1に基づいて前記したように、この開度調整装置1は、係留アーム10と係留ベース11とを有している。
係留アーム10には、その基端部(揺動の支点側とする方の端部)に、建具5の側縁部5aにおける長手方向(
図1(b)の上下方向)を振り幅方向として、この係留アーム10を揺動自在に支持するための揺動軸15が設けられている。この揺動軸15は取付ブラケット18に支持されており、この取付ブラケット18を介して建具5の側縁部5aに取り付ける構造としてある。尤も、取付ブラケット18は必須部材ではなく、揺動軸15を建具5の側縁部5aに直接的に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
また係留アーム10の先端部には、揺動軸15と軸心方向を平行させて設けた枢軸16によりローラ17が回転自在に保持されている。このローラ17は、後述するように係留アーム10の先端部を係留ベース11に沿って移動させる際の摺動円滑性を高める効果を期待したものである。但し、この摺動円滑性が確保されるのであればローラ17を非回転の突起などに置換することもできる。
【0025】
この係留アーム10は、建具5が開放状態とされているときには建具5の側縁部5aから建具枠6の側縁部6aへ向けて突出するように、取付ブラケット18等との間に適宜係止構造やバネ付勢構造等(いずれも図示は省略する)を設けておき、それより揺動範囲が上方域に限られる設定とするのが好適である。
また、この係留アーム10が建具5の側縁部5aに対して突出状態を保持する角度θ(
図1(b)参照)は、90°未満としておくのが好ましい。この理由は、後述のように本実施形態では係留ベース11に設ける外通口22を係留ベース11の下位側に配置してあり、この外通口22内に嵌り込んだ係留アーム10の先端部が建具5の閉動時には確実に上向きの移動を起こすように、作用的に誘導するためである。詳しくは後述する。
【0026】
なお、係留アーム10は、建具5の閉動時に係留ベース11内を下方へ移動するように構成させる(外通口22を上位側に配置する)ことも可能である。この場合には、建具5の側縁部5aから突出する角度θが90°を超えるように保持させるのがよい。
このような係留アーム10に対し、係留ベース11は、
図8及び
図9に示すように、直線状に配置された常用レール部20と延伸レール部21とを有しており、また延伸レール部21に対して外通口22及び設定変更部23が設けられている。
【0027】
本実施形態では建具枠6の縦方向の側縁部6aに対して係留ベース11を設けるので、常用レール部20及び延伸レール部21は、それらのレール方向(長手方向)を上下方向へ向けて配置する。また常用レール部20が上で延伸レール部21が下になるようにしてある。
常用レール部20と延伸レール部21とは互いに同一のレール幅で、且つ同一のレール深さにして一体的に形成されたものとしてある。具体的には、
図12は常用レール部20の断面図(
図8(b)のC−C断面)であり、
図11は延伸レール部21の断面図(
図8(b)のB−B断面)である。
【0028】
これら両図から明らかなように、常用レール部20及び延伸レール部21は、いずれもレール底部の幅方向両側に一対のウエブ壁を有し、且つこれら両ウエブ壁の各上端部から互いの対向方向へ屈曲させた表面リブを有して、全体としてC型断面構造を呈するようになっている。このC型断面構造の中に、前記した係留アーム10の先端部(ローラ17)を嵌め入れて移動自在にガイドする。両側の表面リブ間に形成されるスリットが、係留アーム10の先端部に設けられた枢軸16を通すための実質的なレール溝として作用し、また両表面リブがローラ17の外れ防止の作用を奏することは言うまでもない。
【0029】
この説明から明らかなように、常用レール部20と延伸レール部21との間には外観的、物理的な区別は生じることはない。しかし、これら両レール部20,21は、作用的に見れば、外通口22が設けられているレール領域を延伸レール部21とし、その他のレール領域を常用レール部20として区別することができる。
更に言えば、常用レール部20は、建具5を全閉状態(
図3)と半開き状態(
図2)との間で開閉する際(常態)に係留アーム10の先端部が移動するレール領域であると言うことができ、延伸レール部21は、建具5を、半開き状態を超えて開放させる際(非常態)に、常用レール部20から延長方向へ向けて係留アーム10の先端部を移動させるレール領域であると言うことができる。
【0030】
延伸レール部21に設けられた外通口22は、延伸レール部21と常用レール部20との両者間にわたって係留アーム10の先端部が移動する方向(
図1(a)の上下方向)に対し、これと直交する方向(
図1(a)の左右方向)へ向けて延伸レール部21のウエブ壁及び表面リブを除去することにより形成されている。
この外通口22は、係留アーム10の先端部を延伸レール部21内とレール外側方との間で自由に通過させ得る開口大きさで形成されている(ウエブ壁についてはローラ17の外径よりも開口幅を大きくさせ、表面リブについては枢軸16の外径よりも開口幅を大きくさせている)。
【0031】
設定変更部23は、延伸レール部21と常用レール部20との接続間を常態時の不通状態(
図2及び
図3)と、非常態時の開通状態(
図1及び
図4)とに切り替えるためのものであって、延伸レール部21と常用レール部20との接続間に設けられるストッパ部材27を核として構成されている。
本実施形態では、ストッパ部材27が長方形状の偏平ブロック体に形成されたものとして、この偏平ブロック体の片方の側面に、外通口22を閉鎖するシャッター壁28が一体的に備えられたものとしてある。ストッパ部材27のブロック長さは、このストッパ部材
27が延伸レール部21と常用レール部20との接続間を不通にしている状況下において、シャッター壁28が外通口22を閉鎖できることを目安に設定してある。
【0032】
またこのストッパ部材27には、常用レール部20内へ向けて延びる同行部材29が設けられたものとしてある。
なお、本実施形態ではストッパ部材27を偏平ブロック体に形成しているので(上下方向に長いので)、このストッパ部材27は延伸レール部21及び常用レール部20に沿ってガタツキなく円滑に摺動させることができる。しかも、偏平ブロック体を採用することで
図12に示すように延伸レール部21や常用レール部20の表面リブ間に嵌る段付きガイド部27aを突設させることが可能であるから、この段付きガイド部27aによって円滑摺動性を一層高められるものとなっている。
【0033】
但し、ストッパ部材27はこれほど大きな形状にすることが限定されるわけではなく、シャッター壁28を備えないような小柄な形体としてもよい。なぜなら、ストッパ部材27は延伸レール部21と常用レール部20との接続間を不通にするか開通させるかの選択ができればよいからである。
従って例えば、ストッパ部材27はピン状又は板状に形成することも可能である。この場合には、延伸レール部21と常用レール部20との接続間のレール底部やウエブ壁を貫通させるように、(ピン状又は板状に形成した)ストッパ部材27を配置し、このストッパ部材27をレール内へ突出させたり非突出となるように没入させたりする構造にすればよい。
【0034】
同行部材29は、建具5が開放状態(
図1)から全閉状態(
図3)へ向けて閉動する過程で、係留アーム10の先端部が延伸レール部21から常用レール部20へ向けて移動するのに伴わせて、ストッパ部材27を随伴させるためのものである。このときの移動に伴い、ストッパ部材27は延伸レール部21と常用レール部20との接続間へと復帰し、同時にシャッター壁28についても、
図1や
図4に示す外通口22の開口位置から、
図5に示す閉鎖途中の状況を経て、
図3に示す完全なる閉鎖位置へと位置が変わる。
【0035】
具体的にこの同行部材29は、
図8及び
図11に示すように、常用レール部20のレール方向と同じ方向を長手方向として形成された基板33と、この基板33の長手方向においてストッパ部材27から遠い方の端部(
図8の上側)に設けられた係合端34と、基板33の長手方向においてストッパ部材27寄りの端部(
図8の下側)に設けられた連結端35とを有している。
【0036】
基板33は、常用レール部20内に係留アーム10の先端部が嵌るスペース(レール深さ)を確保するために、常用レール部20のレール底部に這わせた板形状としてある。
係合端34は係留アーム10の先端部(ローラ17の外周面)と係合するためのもので、基板33の形成素材とされる板材をL字状に屈曲することで形成されている。
連結端35はストッパ部材27に連結するためのもので、この連結端35も、係合端34と同様に基板33の形成素材とされる板材をL字状に屈曲することで形成されている。この連結端35は、ストッパ部材27において常用レール部20のレール底部に接するようになる面に形成された係合溝36に係合される。
【0037】
このようなストッパ部材27に対して、常態時の不通状態(
図2及び
図3)と非常態時の開通状態(
図1及び
図4)との配置を切り替えさせるための操作は、開放操作具40によって行う。
本実施形態ではストッパ部材27に偏平ブロック体を採用している関係上、開放操作具40は、延伸レール部21の下端部に配置してある。
【0038】
図8は開放操作具40の非操作時を示している。すなわち、このとき開放操作具40はその上端部がストッパ部材27の下端部と係合して、ストッパ部材27の下方への移動を当て止めし、その結果、延伸レール部21と常用レール部20との接続間を不通状態(常態)にしている。
これに対して
図9は開放操作具40の操作後を示している。すなわち、このとき開放操作具40はその上端部がストッパ部材27との係合を解除して、ストッパ部材27の下方への移動を許容し、その結果、延伸レール部21と常用レール部20との接続間を開通状
態(非常態)にしている。
【0039】
具体的にこの開放操作具40は、延伸レール部21のレール溝幅を横切る方向に設けられている支点軸41により、延伸レール部21の長手方向に沿って長い操作レバー42が揺動自在に保持された構造としてある。操作レバー42は、支点軸41よりも下側へ延びる部位に対し、延伸レール部21のレール底部との間を反発させるように復帰バネ43が挟み込まれており、操作レバー42の上端部がストッパ部材27を当て止めする状態が保持されている。
【0040】
従って、操作レバー42のレバー下端を延伸レール部21のレール底部へ向けて押しつけるように操作することで、操作レバー42の上端がレール底部から浮き上がり、ストッパ部材27との当接が外れる構造である。このときの当接の外れ現象を確実に生じさせるため、ストッパ部材27にはその下端側表面に、下方ほど肉厚が薄くなる方向のテーパ面を形成させてある。
【0041】
なお、この開放操作具40の細部構造についても、ストッパ部材27の形状や動作構造が変更される場合には、当然のことながらこの変更後のストッパ部材27を動作可能な態様へと置換されることになる。
ところで、建具5の半開き状態(
図2参照)を保持させる場合は、建具5がその外側を吹く風などによって勝手に全閉状態に戻らないようにする工夫を施しておくことが推奨される。
【0042】
そこで本実施形態では、半開き時に常用レール部20内で停止している係留アーム10の先端部(延伸レール部21へ向けた移動は阻止されている)に対して、常用レール部20へ戻る方向の摺動をも阻止できるようにする第2ストッパ部材50を設けた。
また、これに伴い、この第2ストッパ部材50によるストッパ部材27への当接を人為的操作によって解除できるようにするための全閉操作具51を備えさせた。
【0043】
すなわち、第2ストッパ部材50が係留アーム10の先端部に当接しているとき、この係留アーム10の先端部は第2ストッパ部材50とストッパ部材27との間で挟み込まれるようになり、係留アーム10と係留ベース11との相互間距離が不動に固定された状態となる。従って、建具5が意に反して閉動することは決してない。
これら第2ストッパ部材50及び全閉操作具51は、箱形のハウジング53を介して常用レール部20の一方のウエブ壁(外通口22が形成されるのとは異なる方のウエブ壁)の外側に取り付けられる。なお、常用レール部20において、このハウジング53が取り付けられる部位には、ウエブ壁を貫通して第2ストッパ部材50を出没動作させるストッパ用孔54(
図8及び
図9参照)が形成されているものとする。
【0044】
図10及び
図13に示すように、ハウジング53には常用レール部20のレール深さ方向(
図1(a)の上下方向)と軸心を平行させた切替軸56が設けられており、この切替軸56を支点として全閉操作具51が揺動自在に保持されている。そして、この全閉操作具51に対して第2ストッパ部材50がリンク接合されており、全閉操作具51の揺動に伴って第2ストッパ部材50の先端が常用レール部20のレール内へ向けて突出したり没入したりする構造である。
【0045】
第2ストッパ部材50は、係留アーム10の先端部が常用レール部20内を下向きに移動する際に当接する面(上面)が円弧状のカム面として形成され、係留アーム10の先端部が常用レール部20内を上向きに移動する際に当接する面(下面)がレール長手方向と垂直に交差する平坦面として形成されている。
なお、全閉操作具51は、
図10(a)に示すように第2ストッパ部材50を常用レール部20内へ突出させたときの揺動操作ポジションと、
図10(b)に示すように第2ストッパ部材50を常用レール部20内から退出させたときの揺動操作ポジションとのいずれか一方を選択する構造である。
【0046】
すなわち、人為的な操作を加えない限り、第2ストッパ部材50の出没状態が切り替わることはないことを原則としている。そのため、建具5を半開き状態にしておくか、或いは建具5を全閉させるのかの選択には、必ず、操作者の判断が必要になり、それだけ安全性が確保されることになる。
ただ、建具5を半開き状態から開放させるときには全閉操作具51を操作する必要がないので、このとき第2ストッパ部材50は常用レール部20内へ突出したままとなる。従って、この場合、その後に建具5を全閉状態へ向けて閉動させようとすると、依然として第2ストッパ部材50は常用レール部20内へ突出したままとなる。
【0047】
それ故、建具5は全閉状態へ向けた閉動の途中で半開き状態に達した位置で停止することになり、このときにいちいち全閉操作具51を操作する面倒が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、ストッパ部材27に連結されている同行部材29に対し、その側縁部で起立するようになるストッパ返し壁58を設けた。このストッパ返し壁58は、常用レール部20内から第2ストッパ部材50を当て止めすることで、第2ストッパ部材50が常用レール部20内へ突出しない状況を保持できるようにする。
【0048】
すなわち、建具5を半開き状態から開放状態にする過程で、ストッパ部材27が延伸レール部21と常用レール部20との接続間を開通させる位置へ(下向きに)移動するときには、このストッパ部材27に随伴して同行部材29も常用レール部20内を下向きに移動するようになるが、このときストッパ返し壁58は、常用レール部20内で突出している第2ストッパ部材50に当接してレール内から押し退ける(没入させる)作用を奏するようになる。そして、この押し退けた状態をそれ以降も維持させるようになっている。
【0049】
このストッパ返し壁58は、同行部材29における基板33の形成素材とされる板材をL字状に屈曲することで形成されている。このストッパ返し壁58は、基板33の補強材としても有益に作用する。
次に、このような構成の開度調整装置1及び開閉窓装置2について、その動作状況をまとめる。
【0050】
図3に示す建具5の全閉状態から建具5を開くと、係留アーム10の先端部が係留ベース6の常用レール部20内を延伸レール部21へ向けて(下向きに)移動する。このとき常用レール部20内には第2ストッパ部材50が突出しているが、係留アーム10の先端部は第2ストッパ部材50の円弧状カム面を側方へ押し退けるように当接するので、係留アーム10の先端部は更なる移動を許容され、建具5は開動を続ける。
【0051】
しかし、延伸レール部21と常用レール部20との接続間には、レール内を不通にさせる状態でストッパ部材27が停止している。そのため、係留アーム10の先端部はこのストッパ部材27に当接し、それ以上、先(下方)へは進めない。それ故、
図2に示すように建具5は半開き状態で必ず停止する。
このとき、係留アーム10の先端部は第2ストッパ部材50とストッパ部材27との間で挟み込まれるようになり、係留アーム10と係留ベース11との相互間距離は不動に固定された状態となる。従って、建具5が意に反して閉動することは決してない。このようなことから、たとえ開度調整装置1に対して操作の不慣れな者であっても、建具5を確実に半開き状態で停止させることができる。
【0052】
日常的な建具5の使用方法としては、この半開き状態から元の全閉状態(
図3)に閉じるだけであるので、全閉操作具51を操作して第2ストッパ部材50を常用レール部20のレール内から没入させ、建具5を閉じるようにする。
一方、建具5が半開き状態にされている状況下にあって、建具5を更に全開状態へ向けて開放させる必要が生じたとする。この場合には、開放操作具40を操作してストッパ部材27を下方へ移動させる(
図9参照)。これにより、延伸レール部21と常用レール部20との接続間が開通状態となり、係留アーム10の先端部は常用レール部20の延長先である延伸レール部21へと移動することになる。
【0053】
そして、この延伸レール部21には側方に外通口22が形成されていることから、係留アーム10の先端部はこの外通口22を介して延伸レール部21のレール外側方へと引き出されることになり、その結果、建具5は半開状態を超えて全開状態までの範囲内で任意角度に開放できる状況となる(
図1)。
このような開放操作具40の操作は、建具5の内側だけでなく外側からでも行うことができる。そのため、建具5等を清掃したりメンテナンスしたりする場合はもとより、建物高所に対する災害時の消火や救援活動時、或いは防犯目的の侵入時などの非常態下に、極
めて重要で且つ大きな成果をあげることができるものである。
【0054】
開放状態とされた建具5を閉じる場合は、単に建具5を閉じるようにするだけで、他には特別な操作は何ら必要ない。なぜなら、建具5が開放状態とされているとき(
図1)には、既に、同行部材29のストッパ返し壁58が第2ストッパ部材50を当て止めして常用レール部20内へ突出しない状況を保持させており、
図4及び
図5に示すように、係留アーム10の先端部は何ら障害を受けずに常用レール部20内を上向きに移動することができるからである。
【0055】
また、このとき係留アーム10の先端部が上向きに移動するのに伴い、同行部材29を介してストッパ部材27が延伸レール部21と常用レール部20との接続間へと復帰し、同時にシャッター壁28も、
図1や
図4に示す外通口22の開口位置から
図5に示す過程を経て、閉鎖位置(
図3)へと位置が変わるので、開度調整装置1としてのリセットが完了するのである。
【0056】
かくして、煩わしい確認作業やシャッター切替などの人為的操作を不要なまま、建具5を全閉状態に戻すことができ、同時に建具5の次の開動に備えることができる。
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、本発明に係る開度調整装置1は、辷り出し窓や開閉窓に実施可能であることは既に説明したところであるが、窓を扉としてもよいし、窓を開閉する際の揺動軸は鉛直方向とされる場合だけでなく水平方向とされる場合でもよい。また、引き違い式の建具と建具枠との間で実施することも可能である。