【解決手段】一対の外板部2,2の一方の第1外板部21は厚さ方向に交差する長さ方向に配列された第1プレキャストコンクリートパネル23,23…を有し、他方の第2外板部22は長さ方向に配列された第2プレキャストコンクリートパネル24,24…を有し、第1プレキャストコンクリートパネル23と、第2プレキャストコンクリートパネル24とは、厚さ方向に間をあけて配置されるとともに連結部材4Aで連結されたプレキャストコンクリート部材5Aであり、プレキャストコンクリート部材5Aには、対向する第1プレキャストコンクリートパネル23と第2プレキャストコンクリートパネル24との間に内側コンクリート部3Aが形成される内側コンクリート部形成空部51が形成されている。
前記連結部材は、対向する前記プレキャストコンクリートパネルそれぞれに接合され、対向する前記プレキャストコンクリートパネルそれぞれと交差する向きに配置された鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のカルバートの壁構造。
前記連結部材は、前記プレキャストコンクリートパネルおよび前記内側コンクリート部に作用するせん断力を負担するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のカルバートの壁構造。
前記プレキャストコンクリートパネルには、前記内側コンクリート部の鉄筋を支持可能であるとともに前記プレキャストコンクリートパネルと前記内側コンクリート部とを一体化させるずれ止め部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカルバートの壁構造。
前記プレキャストコンクリートパネルには、前記内側コンクリート部の鉄筋が突設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカルバートの壁構造。
プレキャストコンクリート部材製作工程では、前記プレキャストコンクリートパネルに前記内側コンクリート部の鉄筋を接合することを特徴とする請求項9に記載のカルバートの壁構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カルバートで構築する構造物が大規模な場合、底版、頂版、側壁などの各部材が大型となるため、各部材をプレキャスト化しようとすると、製作や運搬などの観点から部材1つあたりの重量が制限されてしまい、所望の大きさの部材を製作することが困難である。このため、カルバートを構成する部材をプレキャスト化しても、現場における組立にかかる労力や工期の削減効果が小さいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、カルバートを構築する際の労力や工期を削減することができるカルバートの壁構造およびカルバートの壁構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るカルバートの壁構造は、厚さ方向の両側に対向して配置された一対の外板部と、該一対の外板部の間に充填された内側コンクリート部と、を有するカルバートの壁構造であって、前記一対の外板部は、それぞれ前記厚さ方向に交差する長さ方向に配列されたプレキャストコンクリートパネルを有し、前記一対の外板部のうちの一方の外板部の前記プレキャストコンクリートパネルと、該プレキャストコンクリートパネルと厚さ方向に対向する他方の外板部の前記プレキャストコンクリートパネルとは、厚さ方向に間をあけて配置されるとともに連結部材で連結されたプレキャストコンクリート部材であり、該プレキャストコンクリート部材には、対向する前記プレキャストコンクリートパネルの間に前記内側コンクリート部が形成される内側コンクリート部形成空部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るカルバートの壁構築方法では、厚さ方向の両側に対向して配置された一対の外板部と、該一対の外板部の間に充填された内側コンクリート部と、を有し、前記一対の外板部は、それぞれ前記厚さ方向に交差する長さ方向に配列されたプレキャストコンクリートパネルを有し、前記一対の外板部のうちの一方の外板部の前記プレキャストコンクリートパネルと、該プレキャストコンクリートパネルと厚さ方向に対向する他方の外板部の前記プレキャストコンクリートパネルとは、厚さ方向に間をあけて配置されるとともに連結部材で連結されたプレキャストコンクリート部材であり、該プレキャストコンクリート部材には、対向する前記プレキャストコンクリートパネルの間に前記内側コンクリート部が形成される内側コンクリート部形成空部が形成されているカルバートの壁構築方法において、前記プレキャストコンクリート部材を製作するプレキャストコンクリート部材製作工程と、前記プレキャストコンクリート部材を前記連結部材が連結する前記プレキャストコンクリートパネルどうしが前記厚さ方向に対向する向きで前記長さ方向に配列するプレキャストコンクリート部材設置工程と、前記長さ方向に配列された前記プレキャストコンクリート部材それぞれの前記内側コンクリート部形成空部に前記内側コンクリート部のコンクリートを一体に充填するコンクリート充填工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、プレキャストコンクリート部材には、対向するプレキャストコンクリートパネルの間には、内側コンクリート部形成空部が形成されている。このため、本発明では、カルバートの側壁を内部に空部が形成されていない中実のプレキャストコンクリート部材を配列して構築する場合と比べて、プレキャストコンクリート部材の重量を軽くすることができる。これにより、本発明では、プレキャストコンクリート部材を、同じ重量の中実のプレキャストコンクリート部材と比べて大型とすることができる。
その結果、プレキャストコンクリート部材の数量を少なくすることができ、カルバートを構築する際の労力や工期を削減することができる。
【0009】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、前記連結部材は、対向する前記プレキャストコンクリートパネルそれぞれに接合され、対向する前記プレキャストコンクリートパネルそれぞれと交差する向きに配置された鋼板であってもよい。
このような構成とすることにより、鋼板がプレキャストコンクリート部材に作用するせん断力を負担することができる。
【0010】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、前記鋼板には、複数の孔部が形成されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、鋼板に形成された孔部を介して、内側コンクリート部形成空部に充填された内側コンクリート部の硬化する前のコンクリートが鋼板の一方側と他方側とに流動できるため、内側コンクリート部形成空部に内側コンクリート部のコンクリートを確実に充填することができる。
【0011】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、前記連結部材は、前記プレキャストコンクリートパネルおよび前記内側コンクリート部に作用するせん断力を負担するように構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、壁構造の耐力を高めることができる。
【0012】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、前記プレキャストコンクリートパネルには、前記内側コンクリート部の鉄筋を支持可能であるとともに前記プレキャストコンクリートパネルと前記内側コンクリート部とを一体化させるずれ止め部材が設けられていることを特徴とすることが好ましい。
このような構成とすることにより、プレキャストコンクリートパネルと内側コンクリート部とを一体化させるずれ止め部材を利用して内側コンクリート部の配筋を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、前記プレキャストコンクリートパネルには、前記内側コンクリート部の鉄筋が突設されていてもよい。
このような構成とすることにより、内側コンクリート部の配筋を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、長さ方向に隣り合う前記プレキャストコンクリートパネルの間に設けられた止水部を有し、該止水部は、長さ方向に隣り合う前記プレキャストコンクリートパネルのそれぞれの対向する端部に互いに連通するように形成された切欠き部の内部に形成され、該切欠き部の表面から内部に突出するように前記プレキャストコンクリートパネルに突設されたボルトと、前記切欠き部の内部に配置された耐震止水板と、前記切欠き部の表面と前記耐震止水版との間に充填された無収縮モルタルと、を有し、前記切欠き部の表面には凹凸が形成されている構成としてもよい。
このような構成とすることにより、切欠き部の表面の凹凸と、切欠き部の表面から突出するボルトに無収縮モルタルが定着するため、地震時に無収縮モルタルが切欠き部から剥離することを防止でき、止水性を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係るカルバートの壁構造では、長さ方向に隣り合う前記プレキャストコンクリートパネルの間に設けられた止水部を有し、該止水部は、長さ方向に隣り合う前記プレキャストコンクリートパネルのそれぞれの対向する端部に互いに連通するように形成された切欠き部の内部に形成され、該切欠き部の表面から内部に突出するように前記プレキャストコンクリートパネルに突設されたボルトと、前記切欠き部の内部に配置された耐震止水板と、前記切欠き部の表面と前記耐震止水版との間に充填された繊維コンクリートと、を有し、前記切欠き部の表面には凹凸が形成されている構成としてもよい。
このような構成とすることにより、切欠き部の表面の凹凸と、切欠き部の表面から突出するボルトに繊維コンクリートが定着するため、地震時に繊維コンクリートが切欠き部から剥離することを防止でき、止水性を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係るカルバートの壁構築方法では、プレキャストコンクリート部材製作工程では、前記プレキャストコンクリートパネルに前記内側コンクリート部の鉄筋を接合してもよい。
このような構成とすることにより、内側コンクリート部の配筋を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カルバートを構築する際の労力や工期を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態によるカルバートの壁構造およびカルバートの壁構築方法について、
図1乃至
図11に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態によるボックスカルバート(カルバート)1は、底版11と、底版11から立設する一対の側壁12A,12Aと、一対の側壁12A,12Aの上部に連結された頂版13と、を有している。本実施形態では、傾斜面14(
図2参照)に沿ってボックスカルバート1が形成されている。
なお、本実施形態では、ボックスカルバート1の側壁12Aの構造が本発明のカルバートの壁構造に相当し、ボックスカルバート1の側壁12Aの構築方法が本発明のカルバートの壁構築方法に相当している。
底版11は、鉄筋コンクリート構造で、現場にて公知の工法で構築されている。底版11には、底版11の上面から突出し、側壁12Aと接合される側壁接合鉄筋111,111…(
図9参照)が設けられている。
【0020】
側壁12Aは、側壁12Aの厚さ方向の両側に配置された鉄筋コンクリート構造の一対の外板部2,2と、一対の外板部2,2の間に充填された鉄筋コンクリート構造の内側コンクリート部3Aと、を有している。側壁12Aの板面に直交する方向を厚さ方向(
図1参照)とし、側壁12Aが延びる方向を長さ方向(
図2参照)とする。
【0021】
図3に示すように、一対の外板部2,2のうちの一方を第1外板部21、他方を第2外板部22とすると、第1外板部21は、長さ方向に配列された複数の第1プレキャストコンクリートパネル23,23…で構成され、第2外板部22は、長さ方向に配列された複数の第2プレキャストコンクリートパネル24,24…で構成されている。第1プレキャストコンクリートパネル23,23…と、第2プレキャストコンクリートパネル24,24…とは、厚さ方向に離間していて、第1プレキャストコンクリートパネル23,23…と、第2プレキャストコンクリートパネル24,24…との間に内側コンクリート部3Aが形成されている。なお、
図3では、内側コンクリート部3Aのコンクリート部分および縦筋の表示を省略している。
【0022】
複数の第1プレキャストコンクリートパネル23,23…は、それぞれ厚さ方向に対向する第2プレキャストコンクリートパネル24,24…と連結部材4Aで連結されている。厚さ方向に対向する第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24と、これらを連結する連結部材4Aとは、プレキャストコンクリート部材5Aを構成している。
【0023】
プレキャストコンクリート部材5Aは、工場などで製作され、側壁12Aを構築する際に長さ方向に配列されて、配列されたプレキャストコンクリート部材5A,5A…それぞれの第1プレキャストコンクリートパネル23と第2プレキャストコンクリートパネル24との間の空間に内側コンクリート部3Aが形成されるように構成されている。
プレキャストコンクリート部材5Aの第1プレキャストコンクリートパネル23と、第2プレキャストコンクリートパネル24との間の空部を内側コンクリート部形成空部51とする。
本実施形態では、5つの長さ方向に配列されたプレキャストコンクリート部材5A,5A…が1つのユニット52となり、このユニット52が長さ方向に配列されている。
【0024】
第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24は、それぞれ内部に鉄筋(縦筋25aおよび横筋25b)が配置され所定の強度および寸法となるように製作されている。
【0025】
第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24には、内側コンクリート部3Aの横筋31(
図3参照)を支持可能であるとともに、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル23それぞれと内側コンクリート部3Aとを一体化させるずれ止め部材6,6…がそれぞれ接合されている。
図3乃至
図7に示すように、ずれ止め部材6は、板面が長さ方向を向き、第1プレキャストコンクリートパネル23の高さ方向の略全体にわたって延在する長尺の鋼板で、第1プレキャストコンクリートパネル23の内側の面(内側コンクリート部3Aが形成される側)から突出している。本実施形態では、ずれ止め部材6は、1つの第1プレキャストコンクリートパネル23に対して長さ方向に間隔をあけて5個ずつ設けられている。
ずれ止め部材6には、内側コンクリート部3Aの横筋31が挿通される鉄筋挿通用孔部61,61…(
図5および
図6参照)が複数形成されている。鉄筋挿通用孔部61,61…は、内側コンクリート部3Aの横筋31の高さ方向のピッチと略同じ間隔でずれ止め部材6に形成されている。
【0026】
なお、第2プレキャストコンクリートパネル24に対しても第1プレキャストコンクリートパネル23と同様にずれ止め部材6が設けられている。以下の第1プレキャストコンクリートパネル23の構成についても、第2プレキャストコンクリートパネル24は有しているものとする。
第1プレキャストコンクリートパネル23は、縦筋25aの上部側がコンクリート部分28の上面よりも上方に突出している。この縦筋25aの上部側は、頂版13のコンクリート部分131(
図1および
図2参照)に埋設される。
【0027】
図8および
図9に示すように、第1プレキャストコンクリートパネル23の下部側には、底版11の側壁接合鉄筋111,111…(
図9参照)がそれぞれ下側から挿入される複数の鉄筋挿入凹部26,26…が互いに長さ方向に間隔をあけて形成されている。鉄筋挿入凹部26,26…それぞれの上部側には、第1プレキャストコンクリートパネル23の縦筋25aの下部側が配置されている。縦筋25aの下部側の側面と鉄筋挿入凹部26との間には隙間が形成されている。
底版11の側壁接合鉄筋111,111…は、それぞれ鉄筋挿入凹部26,26…に挿入されると第1プレキャストコンクリートパネル23の縦筋25aと同軸に配置される。鉄筋挿入凹部26に挿通された側壁接合鉄筋111の側面と鉄筋挿入凹部26との間には隙間が形成されている。
【0028】
鉄筋挿入凹部26は、側壁接合鉄筋111が挿入された状態で、内部にモルタルなどのグラウト材が充填されるように構成されている。このとき、第1プレキャストコンクリートパネル23の縦筋25aの下部側の側面と鉄筋挿入凹部26との隙間、および鉄筋挿入凹部26に挿通された側壁接合鉄筋111の側面と鉄筋挿入凹部26との隙間にグラウト材が充填される。鉄筋挿入凹部26に充填されたグラウト材が硬化することで、側壁接合鉄筋111と第1プレキャストコンクリートパネル23の縦筋25aとが接合され、底版11と側壁12Aとが接合される。
【0029】
図10に示すように、第1プレキャストコンクリートパネル23の下端部には、底版11に対するプレキャストコンクリート部材5Aの高さ調整を行う高さ調整インサート7が設けられている。高さ調整インサート7に底版11に設けられた高さ調整ネジ71を螺合させる量を調整することで、底版11に対するプレキャストコンクリート部材5Aの高さ調整が可能となっている。
【0030】
図3および
図11に示すように、連結部材4Aは、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24の高さ方向の略全体に延在する長尺の鋼板で、その板面が長さ方向を向くように配置されている。
連結部材4Aは、第1プレキャストコンクリートパネル23側の端部が第1プレキャストコンクリートパネル23に接合されたずれ止め部材6の先端部近傍に溶接やボルトなどで接合され、第2プレキャストコンクリートパネル24側の端部が第2プレキャストコンクリートパネル24から突出するずれ止め部材6の先端部近傍に溶接やボルトなどで接合されている。このように、連結部材4Aは、ずれ止め部材6,6を介して第1プレキャストコンクリートパネル23と第2プレキャストコンクリートパネル24とを連結している。
なお、連結部材4Aは、ずれ止め部材6の鉄筋挿通用孔部61,61…を塞がないようにずれ止め部材6に接合されている。
【0031】
本実施形態では、連結部材4Aは、対向する1つの第1プレキャストコンクリートパネル23および1つの第2プレキャストコンクリートパネル24に対して長さ方向に間隔をあけて2個ずつ設けられている。このため、すべてのずれ止め部材6,6…に対して連結部材4Aが接合されているのではなく、連結部材4Aが接合されるずれ止め部材6と連結部材4Aが接合されないずれ止め部材6とが設けられている。
連結部材4Aには、内側コンクリート部3Aのコンクリート材料が硬化していない状態において流通可能なコンクリート材料流通用孔部(孔部)41,41…が高さ方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0032】
図3および
図12に示すように、本実施形態では、長さ方向に隣り合うユニット52,52の境界部分において長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の間に止水部8が形成されている。
長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23には、互いに長さ方向に対向する端面に、互いに対向する側と第2プレキャストコンクリートパネル24と対向しない側に開口する切欠き部231,231がそれぞれ形成されている。長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23それぞれの切欠き部231,231は内部が連通していて2つの切欠き部231,231を合せることで止水用凹部81が形成されている。
止水用凹部81は、表面が粗面であるとともに表面に形成された凸部81aによって凹凸形状に形成され、表面から第1プレキャストコンクリートパネル23,23に設けられたジベルボルト82の頭部側が突出している。
止水用凹部81の内部には、例えばゴムなどで形成され可撓性を有する耐震止水版83が配置されるとともに、耐震止水版83と止水用凹部81の表面との間に無収縮モルタル84が充填されている。
止水用凹部81に設けられた耐震止水版83、無収縮モルタル84、およびジベルボルト82によって止水部8が形成されている。
【0033】
図3に示すように、内側コンクリート部3Aは、鉄筋コンクリート構造で、所定の数量の縦筋(不図示)および横筋31がコンクリート部分に埋設されている。内側コンクリート部3Aの縦筋(不図示)は、上部側がコンクリート部分の上面よりも上方に突出している。内側コンクリート部3Aの縦筋の上部側は、頂版13のコンクリート部分131(
図1参照)に埋設されるように構成されている。
内側コンクリート部3は、配列された複数のプレキャストコンクリート部材5A,5A…それぞれの内側コンクリート部形成空部51,51…の内部全体に一体に形成されている。
本実施形態では、内側コンクリート部3Aには、隣り合うユニット52のプレキャストコンクリート部材5A,5Aにわたるように、長さ方向に延びるアンボンド鋼棒33,33…が高さ方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、アンボンド鋼棒33,33が配置される領域では、連結部材4Aにアンボンド鋼棒33,33が挿通される孔部が形成されている。また、本実施形態では、横筋31は、アンボンド鋼棒33,33と厚さ方向に重なる位置において分割されておらず、連続するように配置されている。なお、横筋31は、アンボンド鋼棒33,33と厚さ方向に重なる位置において分割されていてもよい。
【0034】
頂版13は、鉄筋コンクリート構造で、現場にて公知の工法で構築されている。本実施形態では、頂版13の下枠には、埋め込み型枠132(
図1参照)が使用されている。頂版13には、側壁12Aの第1プレキャストコンクリートパネル23、第2プレキャストコンクリートパネル24および内側コンクリート部3Aそれぞれの縦筋25aの上部側が埋設されている。
【0035】
次に、ボックスカルバート1の側壁12Aの構築方法について説明する。
まず、プレキャストコンクリート部材5Aを製作する(プレキャストコンクリート部材製作工程)。
第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24を製作する。この段階で、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24それぞれにずれ止め部材6,6…を設ける。
第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24を厚さ方向に間隔をあけて対向配置させ、ずれ止め部材6,6に連結部材4Aを溶接またはボルトで締め付けて、連結部材4Aで第1プレキャストコンクリートパネル23と、第2プレキャストコンクリートパネル24とを連結する。これにより、プレキャストコンクリート部材5Aが製作される。
なお、本実施形態では、プレキャストコンクリート部材製作工程は、工場などで行い、製作されたプレキャストコンクリート部材5Aを現場に搬入している。
【0036】
続いて、プレキャストコンクリート部材5Aを底版11の上に設置する(プレキャストコンクリート部材設置工程)。なお、底版11は、プレキャストコンクリート部材設置工程の前に現場にて公知の方法で構築されているものとする。
プレキャストコンクリート部材5Aを底版11の上に長さ方向に配列する。このとき、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24の鉄筋挿入凹部26,26…に底版11の側壁接合鉄筋111,111…を挿入する。
また、底版11に対するプレキャストコンクリート部材5Aの高さ調整を行う。第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24の下端部に設けられた高さ調整インサート7に、底版11に設けられた高さ調整ネジ71を螺合させる量を調整して、底版11に対するプレキャストコンクリート部材5Aの高さを調整する。
【0037】
隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の隙間、隣り合う第2プレキャストコンクリートパネル24,24の隙間、第1プレキャストコンクリートパネル23と底版11との隙間、第2プレキャストコンクリートパネル24と底版11との隙間に、モルタルなどを充填してコーキングを行う。
【0038】
また、長さ方向に隣り合うユニット52,52の境界部分において長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の間に止水部8を形成する。
長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の切欠き部231,231の形成と、切欠き部231,231へのジベルボルト82,82…の設置は、予め工場などで第1プレキャストコンクリートパネル23,23を製作する際に行う。
長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の切欠き部231,231を合せて形成された止水用凹部81に耐震止水版83が配置し、耐震止水版83と止水用凹部81の表面との間に無収縮モルタル84を充填する。無収縮モルタル84が硬化することで止水部8が形成される。
【0039】
続いて、内側コンクリート部3Aの鉄筋(縦筋および横筋31)を配置する配筋工程を行う。
プレキャストコンクリート部材5Aのずれ止め部材6の鉄筋挿通用孔部61,61…に内側コンクリート部3Aの横筋31,31…を挿通する。内側コンクリート部形成空部51に内側コンクリート部3Aの縦筋および横筋31を配置する。
隣り合うユニット52,52のプレキャストコンクリート部材5A,5Aに渡るようにアンボンド鋼棒33,33…を設置する。
【0040】
続いて、内側コンクリート部3Aのコンクリート材料を充填するコンクリート充填工程を行う。
配列されたプレキャストコンクリート部材5Aそれぞれの内側コンクリート部形成空部51にコンクリート材料を一体に充填する。本実施形態では、プレキャストコンクリート部材5Aが内側コンクリート部3Aの型枠を兼ねている。
内側コンクリート部形成空部51に充填されたコンクリート材料は、連結部材4Aに形成されたコンクリート材料流通用孔部41を介して連結部材4Aの長さ方向の両側に行きわたるように構成されている。
内側コンクリート部形成空部51に充填されたコンクリート材料が硬化すると、内側コンクリート部3Aが形成されてボックスカルバート1の側壁12Aが構築される。
【0041】
側壁12Aが構築された後は、現場にて頂版13を構築する頂版構築工程を行う。頂版構築工程では、頂版13の下枠に埋め込み型枠132(
図1参照)を採用し、第1プレキャストコンクリートパネル23、第2プレキャストコンクリートパネル24の縦筋25aの上部側、および内側コンクリート部3Aの縦筋の上部側を頂版13のコンクリート部分131に埋設する。
【0042】
次に、上述した第1実施形態によるカルバートの壁構造およびカルバートの壁構築方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態によるカルバートの壁構造では、プレキャストコンクリート部材5Aの第1プレキャストコンクリートパネル23と第2プレキャストコンクリートパネル24との間には、内側コンクリート部形成空部51が形成されている。このため、本実施形態では、ボックスカルバート1の側壁12Aを内側コンクリート部形成空部51のような空部のない中実のプレキャストコンクリート部材5Aを配列して構築する場合と比べて、プレキャストコンクリート部材5Aの重量を軽くすることができる。これにより、本実施形態では、プレキャストコンクリート部材5Aを、同じ重量の中実のプレキャストコンクリート部材5Aと比べて大型とすることができる。
その結果、プレキャストコンクリート部材5Aの数量を少なくすることができ、ボックスカルバート1を構築する際の労力や工期を削減することができる。
【0043】
また、連結部材4Aは、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24それぞれと交差する向きに配置された鋼板であることにより、プレキャストコンクリート部材5Aに作用するせん断力を負担することができる。
また、連結部材4Aには、複数のコンクリート材料流通用孔部41,41…が形成されていることにより、複数のコンクリート材料流通用孔部41,41…を介して、内側コンクリート部形成空部51に充填された内側コンクリート部3Aの硬化前のコンクリート材料が流動できるため、内側コンクリート部形成空部51に内側コンクリート部3Aのコンクリート材料を確実に充填することができる。
【0044】
また、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24には、内側コンクリート部3Aの鉄筋を支持可能であるとともに、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル23それぞれと内側コンクリート部3Aとを一体化させるずれ止め部材6,6…が設けられていることにより、ずれ止め用の部材を利用して内側コンクリート部3Aの配筋を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、プレキャストコンクリート部材5Aが内側コンクリート部3Aの型枠を兼ねていて、現場において側壁12Aを構築するための型枠の組み立てや撤去などの作業が不要となるため、側壁12Aの構築の労力や工期を削減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、止水部8が、表面が粗面であるとともに表面に凹凸が形成され、表面から第1プレキャストコンクリートパネル23,23に設けられたジベルボルト82の頭部側が突出している止水用凹部81の内部に設けられている。そして、止水部8は、止水用凹部81の内部に配置された耐震止水版83と、耐震止水版83と止水用凹部81の表面との間に充填された無収縮モルタル84とを有している。これにより、止水用凹部81の表面の凹凸と、ジベルボルト82に無収縮モルタル84が定着するため、地震時等の外力作用時に無収縮モルタル84が止水用凹部81から剥離することを防止でき、止水性を高めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図13に示すように、第2実施形態によるカルバートの壁構造では、側壁12Bのプレキャストコンクリート部材5Bおよび内側コンクリート部3Bの構造が第1実施形態による側壁12Aのプレキャストコンクリート部材5Aおよび内側コンクリート部3Aと異なっている。
【0047】
図13乃至
図16に示すように、第2実施形態によるカルバートの壁構造では、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に第1実施形態のようなずれ止め部材6,6…が接合されておらず、内側コンクリート部3Bの第1鉄筋34,34…が接合されている。
この第1鉄筋34,34…は、厚さ方向に延在していて、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24の内側コンクリート部形成空部51側の面から突出している。第1鉄筋34,34…は、長さ方向および高さ方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0048】
第1鉄筋34,34…は、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に埋設された機械式継手に接合されることで第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に接合されている。
なお、内側コンクリート部3Bには第1鉄筋34,34…の他に、長さ方向に延びる横筋および高さ方向に延びる縦筋が複数配列されている。
【0049】
第1鉄筋34,34…の先端部は、基端部側と比べて拡径している。第1鉄筋34,34…の先端部は、対向する第1プレキャストコンクリートパネル23または第2プレキャストコンクリートパネル24の内側面と離間している。第1プレキャストコンクリートパネル23に突設された第1鉄筋34,34…の先端部は、第2プレキャストコンクリートパネル24に突設された第1鉄筋34,34…の先端部よりも第2プレキャストコンクリートパネル24側に配置されている。
【0050】
これらの第1鉄筋34,34…は、高さ方向および長さ方向に配列されているため、内側コンクリート部3Bの縦筋および横筋31が配置される位置を示すガイド部となっている。また、第1鉄筋34,34…は、内側コンクリート部3Bの縦筋および横筋31(
図14参照)が結束されることで内側コンクリート部3Bの縦筋および横筋31を支持することができる。
【0051】
図14、
図16および
図17に示すように、第2実施形態のプレキャストコンクリート部材5Bは、第1プレキャストコンクリートパネル23Aと第2プレキャストコンクリートパネル23Bとを連結する連結部材4Bが第1実施形態の連結部材4Aのような鋼板ではなく、
図14に示すような、4本の帯状の鋼板42〜45が連結された部材で構成されている。
【0052】
連結部材4Bの4本の鋼板42〜45は、それぞれ板面が上下方向を向く向きに配置されている。4本の鋼板42〜45のうちの2つの第1鋼板42,43は、それぞれ厚さ方向に延在し、長さ方向に間隔をあけて配置されている。これらの第1鋼板42,43は、厚さ方向の一方の端部42a,43aが第1プレキャストコンクリートパネル23に接合され、他方の端部42b,43bが第2プレキャストコンクリートパネル24に接合されている。
【0053】
4本の鋼板42〜45のうちの他の2つの第2鋼板44,45は、それぞれ厚さ方向に交差する水平方向に延在し、それぞれの延在方向が交差し上下に重なるように配置されている。これらの第2鋼板44,45のうちの一方の第2鋼板44は、延在方向の一方側の端部44Aが2つの第1鋼板42,43のうちの一方の第1鋼板42の第1プレキャストコンクリートパネル23側の端部42aに接合され、他方側の端部44bが他方の第1鋼板43の第2プレキャストコンクリートパネル24側の端部43bに接合されている。2つの第2鋼板44,45のうちの他方の第2鋼板45は、延在方向の一方側の端部45aが他方の第1鋼板43の第1プレキャストコンクリートパネル23側の端部43aに接合され、他方側の端部45bが一方の第1鋼板42の第2プレキャストコンクリートパネル24側の端部42bに接合されている。
【0054】
このような連結部材4Bは、1つのプレキャストコンクリート部材5Bに対して高さ方向に間隔をあけて複数配置されている。本実施形態では、
図18に示すように、連結部材4Bは、プレキャストコンクリート部材5Bの上部側および下部側それぞれに高さ方向に間隔をあけて2つずつ配置されている。なお、
図18では、説明のために連結部材4Bをハッチングで示している。
【0055】
第2実施形態では、プレキャストコンクリート部材製作工程において、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に第1鉄筋34,34…を接合する。プレキャストコンクリート部材設置工程では、第1鉄筋34,34…が接合された状態のプレキャストコンクリート部材5B,5B…を底版11の上に配列する。配筋工程では、内側コンクリート部3Bの横筋31を、第1鉄筋34,34…の直上または直下に配置する。
【0056】
第2実施形態によるカルバートの壁構造では、底版11の上にプレキャストコンクリート部材5Bを配列して配列されたプレキャストコンクリート部材5Bの内側コンクリート部形成空部51にコンクリート材料を充填して内側コンクリート部3Bを形成する構成であるため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態では、連結部材4Bが帯状の鋼板42〜45を組んだ形態であることにより、第1実施形態と比べて、内側コンクリート部3Bの硬化前のコンクリート材料を内側コンクリート部形成空部51に容易にかつ確実に充填することができる。
また、上記の実施形態では、第1レキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に内側コンクリート部3Bの第1鉄筋34,34…が接合されていて、この第1鉄筋34,34…が内側コンクリート部3Bの縦筋および横筋31の位置を示すとともに、内側コンクリート部3Bの縦筋および横筋31を支持することができるため、現場における内側コンクリート部3Bの配筋作業を軽減することができる。
【0057】
以上、本発明によるカルバートの壁構造およびカルバートの壁構築方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、プレキャストコンクリート部材5A,5A…(5B,5B…)が長さ方向に間隔を開けずに配列されているが、
図19に示すように長さ方向に隣り合うプレキャストコンクリート部材5A,5A(5B,5B)が離間していて、隣り合うプレキャストコンクリート部材5A,5A(5B,5B)の間の部分9は、現場打ちコンクリートで形成してもよい。
このような場合、
図20に示すように、プレキャストコンクリート部材5A(5B)の第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24に、隣り合うプレキャストコンクリート部材5A,5A(5B,5B)の間の部分9のコンクリートに埋設される鉄筋81,81が予め接合されていて、現場での配筋作業を軽減させることができる。
【0058】
また、上記の第1実施形態では、第1プレキャストコンクリートパネル23および第2プレキャストコンクリートパネル24にはずれ止め部材6,6…が設けられているが、設けられていなくてもよい。
また、上記の第2実施形態では、プレキャストコンクリート部材5Bに第1鉄筋34,34…が設けられているが、設けられていなくてもよい。また、第1実施形態において、プレキャストコンクリート部材5Aに第2実施形態のような第1鉄筋34が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、連結部材4A,4Bは、が鋼板や複数の帯状の部材を組んだ形態で構成されているが、第1プレキャストコンクリートパネル23と第2プレキャストコンクリートパネル24とを連結していれば上記以外の形態であってもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、長さ方向に隣り合うユニット52,52の境界部分において長さ方向に隣り合う第1プレキャストコンクリートパネル23,23の間に止水部8が形成されているが、長さ方向に隣り合う第2プレキャストコンクリートパネル24,24の間に必要に応じて止水部8を形成してもよい。また、止水部8の形態は、上記以外の形態であってもよい。
例えば、無収縮モルタル84に代わって繊維コンクリートを充填してもよい。このようにすることにより、地震時に止水部8が第1プレキャストコンクリートパネル23,23から剥離することを更に防止することができ、止水性を高めることができる。