【解決手段】中心電極13と、プラグギャップGを介して中心電極13と対向する接地電極14とを有する点火プラグ10を備えた内燃機関100であって、プラグギャップGの近傍に開口21を有し、プラグギャップGの近傍の混合気を吸入して、プラグギャップGに所定気流を発生する吸入室22と、吸入室22の開口21を開閉する開閉弁23と、開閉弁23の開閉を制御する制御部30とを備えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の燃焼室内では、スワール流やタンブル流等の混合気流が生成されて、混合気流と点火プラグの火花とが接触することにより、混合気が着火して火炎を形成している。しかし、内燃機関の燃焼室内における混合気流は、内燃機関の運転状態や負荷状態に応じて変動し、さらに、同一条件であったとしてもサイクル毎に変動する。特に、内燃機関が低負荷状態では、燃焼室内における混合気流が弱いので、プラグギャップに流入する混合気流も弱くなる。また、排気還流(EGR)を行った状態では、混合気の燃焼性が低下するため、それを補うために一般的には気流を強く流入させるなどの対策を行う。その場合、筒内における混合気流が速くなるので、プラグギャップに流入する混合気流も早くなる。
【0006】
このため、特許文献1−3に記載の構成のように、混合気流をプラグギャップに流入させても、サイクル毎に、導入する混合気自体が変化するので、その流入状態も変化し、毎回、混合気が着火するタイミングが異なって、着火後の火炎核の形成やその成長がばらつくことがあり、安定した混合気の着火及び火炎形成を行うことが困難である。
【0007】
また、特許文献5に記載の構成のように、プラグギャップに発生する火花に燃焼室外からの気体を噴出して、火花と混合気とを積極的に接触させることは有効であるが、この場合、内燃機関の燃焼室の圧力よりも高圧の気体を燃焼室外から燃焼室内に噴出する必要がある。気体として、仮に混合気等を使用することが考えられるが、混合気を高圧にすることが必要であり、そのためにエネルギー消費が大きくなり燃費が悪化する、また、内燃機関が複雑になり大型化してしまう。
【0008】
そこで、本発明では、内燃機関の燃焼室内における混合気流が変動しても、混合気の着火及び火炎形成を安定して行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内燃機関は、中心電極と、プラグギャップを介して中心電極の先端と対向する先端部を含む接地電極とを有する点火プラグを備えた内燃機関であって、前記プラグギャップの近傍に開口を有し、前記プラグギャップの近傍の混合気を吸入して、前記プラグギャップに所定気流を発生する吸入室と、前記吸入室の前記開口を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記制御部は、前記開閉弁を前記点火プラグの点火直前に開弁して点火直後に閉弁することを特徴とする。
【0011】
また、前記制御部は、前記開閉弁を前記点火プラグの点火と略同時に開弁して点火直後に閉弁することを特徴とする。
【0012】
また、前記制御部は、前記開閉弁の閉弁後、次の吸気工程において前記開閉弁を開弁することを特徴とする。
【0013】
また、前記吸入室の前記開口が、燃焼室の混合気流において、前記プラグギャップの下流側に配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記点火プラグの前記接地電極が、前記中心電極と前記吸入室の前記開口との間に位置しないように、前記点火プラグが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内燃機関の燃焼室内における混合気流が変動しても、混合気の着火及び火炎形成を安定して行うことができる。この結果、サイクル毎の火炎核の形成および火炎成長のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施形態における内燃機関100について説明する。
図1は、内燃機関100の燃焼室上部の模式図を示している。
図1に示すように、内燃機関100の各気筒内には、その内部を往復移動するピストン1が設けられている。気筒内におけるピストン1の頂部には燃焼室2が形成されている。燃焼室2には、図示しない吸気通路及び排気通路が連通している。吸気通路の燃焼室2への連通部には吸気弁が設けられ、排気通路の燃焼室への連通部には排気弁が設けられている。吸気通路を介して空気と燃料との混合気が燃焼室2に流入する。
【0018】
各気筒内には、混合気に点火するための点火プラグ10が設けられている。また、各気筒内において点火プラグ10の近傍には、プラグギャップGの近傍の混合気を吸入して、プラグギャップGに所定気流を発生する混合気流発生装置20が設けられている。
【0019】
内燃機関100は、吸気弁及び排気弁の開閉制御、点火プラグ10の点火時期、混合気流発生装置20の作動制御を行う制御部30を備えている。制御部30には、内燃機関100の運転状態を検出するための各種センサが接続されている。また、制御部30は、上述した各種センサからの検出情報に基づいて、吸気弁及び排気弁の開閉、点火プラグ10の点火時期、混合気流発生装置20の作動を制御する。
【0020】
図1において、点火プラグ10は、一端に電力供給を受ける端子を含む本体部11と、本体部11の他端に設けられており、燃焼室2に突出するハウジング12と、ハウジング12の先端に設けられた中心電極13と、中心電極13の先端に対向する接地電極14とを備えている。中心電極13には、端子を介して高電圧が印加される。接地電極14は、ハウジング12からL字状に突出している。接地電極14は、プラグギャップGを介して中心電極13の先端と対向する先端部14aと、先端部14aをハウジング12に支持する基部14bとを備えている。
【0021】
混合気流発生装置20は、プラグギャップGの近傍に開口21を有する吸入室22と、吸入室22の開口21を開閉する開閉弁23と、開閉弁23を開閉する可変バルブ機構(VVT)24とを備えている。
【0022】
吸入室22は、プラグギャップGの近傍の混合気を吸入することができる容量を備えている。すなわち、プラグギャップGの近傍の混合気を吸入して、プラグギャップGの近傍に混合気流を発生することが可能な容量を備えていればよい。
【0023】
開閉弁23は、例えば、ポペット弁形式やニードル弁形式の弁機構である。ポペット弁形式の弁を可変バルブ機構24によって駆動する。可変バルブ機構24は、開閉弁の開閉タイミングやリフト量を可変とする機構であり、制御部30によって、その開閉タイミングやリフト量を制御される。なお、可変バルブ機構24に代えて、ピエゾ素子やソレノイドによって開閉弁23を駆動してもよい。
【0024】
次に、混合気流発生装置20の制御について
図2〜5を参照して説明する。
図2は、クランク角度と燃焼室圧力との関係における開閉弁23の開閉タイミングを示す特性図である、
図3は、開閉弁23の開閉タイミングと、吸入室内圧、火炎核の径、火炎・吸入室間の距離との関係を示す特性図である。
図4、5は、開閉弁23を開弁したときの混合気の流れを示す模式図である。
【0025】
図2に示すように、1回の燃焼サイクルにおいて、開閉弁23は2回開閉制御される。すなわち、
図2において、開閉弁23は、点火プラグ10の点火(図中符号N1)前に、符号V1のタイミングで開弁して、点火後に符号V2のタイミングで閉弁する。また、吸気弁が閉弁(図中符号N2)する前に、符号V3のタイミングで開弁して、続いて符号V4のタイミングで閉弁する。
【0026】
まず、点火プラグ10の点火前後における開閉動作について詳しく説明する。
図3に示すように、点火プラグ10の点火の所定時間前、すなわち、圧縮工程において、開閉弁23を開弁する。このとき、燃焼室2は、吸気通路からの混合気流がピストン1によって圧縮された高圧の混合気で満たされている。この状態において、開閉弁23が開弁されるので、燃焼室2の混合気は、燃焼室2の圧力よりも低圧である吸入室22に吸入される。
【0027】
吸入室22の開口21はプラグギャップGの近傍に設けられているので、
図4に示すように、プラグギャップGの近傍の混合気は燃焼室2の混合気流によらず強制的に吸入室22に吸入される。すなわち、プラグギャップGから吸入室22に向かう所定気流が発生する。そして、この所定気流の発生中に点火プラグ10を点火する。
【0028】
図3の特性線Rに示すように、点火と同時に所定気流の混合気に着火して、火炎核が形成されて、火炎核の成長により火炎核の径が大きくなる。また、
図3の特性線Dに示すように、火炎核の成長によって、火炎と吸入室22との距離が短くなる。火炎が開口21に到達する前に、開閉弁23を閉弁する。この閉弁によって、吸入室22は高圧の未燃混合気で満たされて、
図3の特性線Pに示すように、吸入室22の内部は高圧になる。
【0029】
その後、燃焼室2では混合気の燃焼が行われて、燃焼ガスが排気通路を介して排気される。続いて、次の吸気工程が開始されて、この吸気工程において、開閉弁23を再度開弁する。この際、
図5に示すように、燃焼室2の混合気よりも吸入室22の内部の混合気の方が高圧であるため、前の圧縮工程で流入した吸入室22の内部の未燃混合気は、燃焼室2に吐出される。吸入室22の内部の混合気の吐出後、開閉弁23を閉弁する。そして、圧縮工程が行われて、上述した開閉弁23の制御が繰り返される。
【0030】
図6、7において、内燃機関100の運転条件と開閉弁23の制御について説明する。
図6は、内燃機関100と点火プラグ10及び開閉弁23との制御時期との関係を示す特性図である。また、
図7は、EGR量と点火プラグ10及び開閉弁23との制御時期との関係を示す特性図である。
【0031】
図6において、例えば、登坂時や加速時等に内燃機関100の負荷が増加する場合には、特性線L1に示すように、点火時期を遅角制御している。この場合、特性線L2,L3に示すように、吸入室22の開閉弁23の開閉時期を、この遅角制御に応じて遅角制御する。また、このとき、燃焼室2の混合気圧力は通常運転よりも高くなるので、開閉弁23の開閉期間を短くする制御を行う。
【0032】
また、
図7において、EGRを行って希薄条件の混合気において燃焼を行う場合には、特性線L4に示すように、点火時期を進角制御している。この場合、特性線L5,L6に示すように、吸入室22の開閉弁23の開閉時期を、この進角制御に応じて進角制御する。また、このとき、燃焼室2の混合気圧力は通常運転よりも低くなるので、開閉弁23の開閉期間を長くする制御を行う。また、リーンバーン運転時の希薄条件の混合気においても同様の制御を行う。
【0033】
このように、混合気への点火時に、プラグギャップGの近傍の混合気の気流が乱れていても、この気流に依存せず、毎回、プラグギャップGの近傍に所定気流を発生させることができるので、混合気に着火するタイミングを毎回一定に維持することができ、着火後の火炎核の形成やその成長のばらつきを抑制することができ、安定した混合気の着火及び火炎形成を行うことが可能になる。すなわち、吸入室22及び開閉弁23により発生されるプラグギャップGの近傍の所定気流は、燃焼室2の内部の混合気流よりも強い気流であり、かつ、安定しているので、混合気に着火するタイミングを一定に維持することができる。
【0034】
また、吸入室22に吸入した混合気は、次の吸気工程において燃焼室2に戻されるので、混合気を無駄にすることなく、吸入室22への混合気の吸入、吐出のサイクルを行うことができる。
【0035】
さらに、吸入室22への混合気の吸入、吐出は、吸入室22と燃焼室2との圧力差を利用することによって行われるため、混合気の吸入、吐出に外部の駆動力、例えば、高圧ポンプ等は必要なく、装置の小型化を図ることができる。また、省エネルギー化も可能となる。
【0036】
また、ポペット弁形式やニードル弁形式の弁機構を使用することによって、プラグギャップGの近傍の混合気を直線的に吸入することができる。プラグギャップGの近傍にピンポイントの所定気流を形成することができる。
【0037】
次に第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の構成は、第1の実施形態の構成と略同じであり、混合気を吸入する時期が相違している。点火プラグ10は、燃焼室2の上壁面を構成する図示しないシリンダヘッドに螺合されている。第2の実施形態では、点火プラグ10は、
図8に示すように、接地電極14の基部14bが、吸入室22の開口21から離れて対向するように、その取付角度が規定されている。すなわち、接地電極14の基部14bが、中心電極13に対して吸入室22の開口21と反対側に位置するように、点火プラグ10の取付角度が規定されている。なお、このように点火プラグ10の取付角度を規定するには、点火プラグ10の組み付け作業時に点火プラグ10に位置決め用の目印を付けておき、その目印に基づいて、点火プラグ10の取付角度を規定して取り付けることによって行う。一般的には、接地電極14の基部14bが、ギャップ間への気流の流入を阻害するため点火が不安定になるが、この第2の実施形態では強制的な気流が形成されるため問題ない。
【0038】
点火プラグ10の点火と開閉弁23の開閉動作について説明する。点火プラグ10の点火と同時に、開閉弁23を開弁する。このとき、点火によって形成された火炎核が吸入室22に向かって吸入される。つまり、火炎核が接地電極14の基部14bから離れる方向に吸入される。そして、第1の実施形態と同様に、火炎が開口21に到達する前に、開閉弁23を閉弁する。この閉弁によって、吸入室22は高圧の混合気で満たされる。
【0039】
その後、第1の実施形態と同様に、燃焼室2では混合気の燃焼が行われて、燃焼ガスが排気通路を介して排気される。続いて次の吸気工程が開始されて、この吸気工程において、開閉弁23を再度開閉して、吸入室22の内部の混合気が燃焼室に吐出される。
【0040】
このように、点火プラグ10の点火と同時に開閉弁23を開弁することにより、火炎核が接地電極14の基部14bから離れる方向に吸入される。この結果、火炎核を接地電極14から離間させることができ、火炎核の接地電極14への熱損失を低減することができ、混合気の着火性を向上することができる。これにより、着火後の初期燃焼速度を向上させることができ、希薄燃焼(リーンバーン)の希薄率を向上することができ、内燃機関100の熱効率を向上することが可能になる。
【0041】
なお、点火プラグ10の点火と同時に開閉弁23を開弁していたが、点火プラグ10の点火の直前に開閉弁23を開弁しても、同様の効果を得ることができる。この場合、点火直前から混合気の吸入が開始されるので、より確実に、火炎核を接地電極14の基部14bから離れる方向に吸入することができる。
【0042】
ここで、燃焼室2の内部の混合気流と、吸入室22の開口21による混合気の吸入方向との関係について説明する。第1、2の実施形態において、吸入室22の開口21が、燃焼室2の内部の混合気流において、中心電極13の下流側、すなわち、プラグギャップGの下流側に配置されている。
【0043】
このように、吸入室22の開口21を配置することによって、燃焼室2の内部において、例えば、スワール流またはタンブル流の混合気流が発生している場合、その混合気流の流れに沿って、プラグギャップGの近傍の混合気を吸入室22に吸入できるので、燃焼室2の内部の混合気流の流れに逆らわず、混合気を吸入することができ、プラグギャップGの近傍の混合気を効率よく吸入室22に吸入することができる。
【0044】
次に第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、混合気流発生装置40を、点火プラグ50に一体的に組み込んだ構成である。
図9に示すように、点火プラグ50の本体部51の側部に、混合気流発生装置40が埋設されている。混合気流発生装置40は、中心電極52と接地電極53との間のプラグギャップGに向かって開口する開口41と、この開口41に連通する吸入室42と、開口41を開閉する開閉弁43と、この開閉弁43を開閉する駆動部44とを備えている。開閉弁43を駆動する制御については、第1、2の実施形態の制御と同様である。
【0045】
このように、混合気流発生装置40を点火プラグ50と一体的に構成することによって、混合気流発生装置40を小型化することができ、吸排気通路や吸排気弁等との干渉を抑制することができる。