【解決手段】エンジンECU5と、DOC2と、DOC2の排気上流側に配置された電気ヒータ3を備え、エンジンECU5の指令で、DOC再生処理がなされ、DOC再生処理では、電気ヒータ3の発熱で、DOC2に詰まったPMを焼却するように構成された、ディーゼルエンジンにおいて、エンジン停止操作装置6を備え、電気ヒータ3はDOC入口2aに沿って配置され、エンジン停止操作装置6がエンジン停止操作された場合、その検出に基づくエンジンECU5の指令で、エンジン停止中に、DOC再生処理の実施がなされるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 DOC再生処理での電気ヒータの消費電力が大きくなる。
特許文献1の発明では、電気ヒータはDOCから離間した位置に配置されているため、DOC再生処理で、電気ヒータの熱は排気を介してDOCに詰った未燃焼堆積物に間接的に伝達され、電気ヒータから未燃焼堆積物への熱の伝達ロスが大きくなる。また、この発明では、エンジン運転中に、DOC再生処理の実施がなされるため、電気ヒータから未燃焼堆積物に伝わった熱が排気で持ち去られる。このような理由により、特許文献1の発明では、未燃焼堆積物の焼却に対する電気ヒータの熱効率が低く、その分、DOC再生処理での電気ヒータの消費電力が大きくなる。
【0007】
本発明の課題は、DOC再生処理での消費電力を小さくすることができる、ディーゼルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように、エンジンECU(5)と、排気経路(1)に配置されたDOC(2)と、DOC(2)の排気上流側に配置された電気ヒータ(3)を備え、
図2に例示するように、エンジンECU(5)の指令で、DOC再生処理の実施(S23)がなされ、DOC再生処理では、
図1に例示する電気ヒータ(3)の発熱で、DOC(2)に詰まった未燃焼堆積物が焼却されるように構成された、ディーゼルエンジンにおいて、
図1に例示するように、エンジン停止操作装置(6)を備え、
電気ヒータ(3)はDOC入口(2a)に沿って配置され、
図2に例示するように、エンジン停止操作装置(6)がエンジン停止操作された場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、エンジン停止中に、DOC再生処理の実施(S23)がなされるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の効果】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 DOC再生処理での電気ヒータの消費電力を小さくすることができる。
本発明では、
図1に例示するように、電気ヒータ(3)はDOC入口(2a)に沿って配置されるため、電気ヒータ(3)の発熱は、DOC(2)に詰った未燃焼堆積物に直接に伝わり、電気ヒータ(3)から未燃焼堆積物への熱の伝達ロスが小さくなる。また、
図2に例示するように、エンジン停止中に、DOC再生処理(S23)がなされるため、電気ヒータ(3)から未燃焼堆積物に伝わった熱が排気(9)で持ち去られることがない。これらの理由から、本発明では、未燃焼堆積物の焼却に対する電気ヒータ(3)の熱効率が高く、その分、DOC再生処理(S23)での電気ヒータ(3)の消費電力を小さくすることができる。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 排気上流側DOCの再生時間を短縮することができる。
本発明では、
図1に例示するように、DOC(2)は、排気上流側DOC(2b)とその排気下流側に配置された排気下流側DOC(2c)で構成され、排気上流側DOC(2b)は排気下流側DOC(2c)よりも熱容量が小さく、電気ヒータ(3)は、排気上流側DOC(2b)のDOC入口(2a)に沿って配置されているため、電気ヒータ(3)の熱で排気上流側DOC(2b)の温度が速やかに上昇し、排気上流側DOC(2b)に詰っている未燃焼堆積物が速やかに焼却され、DOC(2)の再生時間を短縮することができる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 DPFの再生効率を高めることができる。
本発明では、
図3に例示するように、DOC活性化処理では、エンジン運転中に、電気ヒータ(3)の発熱で、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)まで昇温された場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、DPF再生処理(S8)がなされるため、排気(9)の温度が低い無負荷や軽負荷運転中でも、速やかに排気上流側DOC(2b)が活性化され、排気(9)が昇温され、排気下流側DOC(2c)も活性化され、更に排気(9)が昇温され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 電気ヒータによる無駄な電力消費を抑制することができる。
本発明では、
図3に例示するように、DOC活性化処理の実施で、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)に到った場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、電気ヒータ(3)への印加電流値(I)を減少(S7)させるように構成されているため、排気上流側DOC(2b)の活性化後は、電気ヒータ(3)による無駄な電力消費を抑制することができる。
【0013】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 DPFの再生効率を高めることができる。
本発明では、
図5(A)に例示するように、ハニカム構造体(10)のうち、中心ハニカム部(10d)のみが前記電気ヒータ(3)とされているため、排気経路(1)外への熱の逃げが起こり難い中心ハニカム部(10d)の電気ヒータ(3)により排気(9)が昇温され、排気(9)の昇温効率が高まり、排気(9)の温度が低い無負荷や軽負荷運転時でも、速やかに排気上流側DOC(2b)が活性化され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
【0014】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 DPFの再生効率を高めることができる。
本発明では、
図5(A)に例示するように、電気ヒータ(3)を構成する中心ハニカム部(10d)は、その周囲を取り囲む周囲ハニカム部(10e)よりも高いセル密度で構成されているため、電気ヒータ(3)の放熱面積が広く、排気(9)の昇温効率が高まり、排気(9)温度が低い無負荷や軽負荷運転時でも、速やかに排気上流側DOC(2b)が活性化され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図5は本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンエンジンを説明する図であり、この実施形態では、立形の直列4気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0017】
エンジンの構成は、次の通りである。
クランク軸(11)の架設方向を前後方向、フライホイール(12)の配置された側を後側、その反対側を前側、前後方向と直交するエンジン幅方向を横方向とする。
図1に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(13)の横一側に組みつけられた吸気マニホルド(14)と、シリンダヘッド(13)の横他側に組み付けられた排気マニホルド(15)を備えている。
図1に示すように、このエンジンは、エンジンECU(5)を備えている。
エンジンECUは、電子制御ユニットの略称で、エンジンECU(5)はマイコンである。
【0018】
図1に示すように、このエンジンは、排気装置を備えている。
排気装置は、排気マニホルド(15)と、排気マニホルド(15)に設けられた過給機(16)の排気タービン(16a)と、排気タービン(16a)の排気出口(16b)から導出された排気導出通路(16c)を備えている。
【0019】
図1に示すように、このエンジンは、吸気装置を備えている。
吸気装置は、過給機(16)のコンプレッサ(16d)と、コンプレッサ(16d)の吸気入口(16e)の吸気上流側に設けられたエアフローセンサ(17)と、コンプレッサ(16d)の過給気出口(16f)と吸気マニホルド(14)の間に配置されたインタークーラ(18)と、インタークーラ(18)と吸気マニホルド(14)の間に配置された吸気絞り弁(19)と、排気マニホルド(15)と吸気マニホルド(14)の間に配置されたEGRクーラ(20)と、EGRクーラ(20)と吸気マニホルド(14)の間に配置されたEGR弁(21)を備えている。EGRは、排気ガス還流の略称である。
吸気絞り弁(19)とEGR弁(21)は、いずれも電動式開閉弁で、これらはエンジンECU(5)を介して電源(4)に電気的に接続されている。エアフローセンサ(17)は吸気温度センサを備え、エンジンECU(5)に電気的に接続されている。電源(5)はバッテリである。
【0020】
図1に示すように、このエンジンは、燃料噴射装置を備えている。
燃料噴射装置は、各燃焼室(23)に設けられた燃料噴射弁(24)と、燃料噴射弁(24)から噴射する燃料を蓄圧するコモンレール(25)と、コモンレール(25)に燃料タンク(26)から燃料を圧送する燃料サプライポンプ(27)を備えている。
燃料噴射弁(24)は電磁式開閉弁を備え、燃料サプライポンプ(27)は、電動式調圧弁を備え、これらはエンジンECU(5)を介して電源(4)に電気的に接続されている。
【0021】
図1に示すように、このエンジンは、調速装置を備えている。
調速装置は、エンジンの目標回転数を設定するアクセルレバー(28)の設定位置を検出するアクセルセンサ(29)と、エンジンの実回転数を検出する実回転数センサ(30)を備え、これらセンサ(29)(30)はエンジンECU(5)に電気的に接続されている。
【0022】
図1に示すように、このエンジンは、始動装置を備えている。
始動装置は、スタータモータ(31)と、キースイッチ(22)を備え、スタータモータ(31)とキースイッチ(22)は、エンジンECU(5)を介して電源(4)に電気的に接続されている。キースイッチ(22)は、OFF位置と、ON位置と、スタート位置を備えている。
【0023】
エンジンECU(5)は、次のような運転制御を行うように構成されている。
エンジンの目標回転数と実回転数の回転数偏差を小さくするように、燃料噴射弁(24)からの燃料噴射量や噴射タイミングを設定し、負荷変動によるエンジンの回転数変動を小さくする。
エンジンの回転数と負荷と吸気量と吸気温度に応じ、吸気絞り弁(19)とEGR弁(21)の開度を調節し、吸気量やEGR率を調節する。
キースイッチ(22)がスタート位置に投入されると、スタータモータ(31)を駆動し、エンジンの始動を行う。キースイッチ(22)がON位置に投入されると、電源(8)からエンジン各部への通電により、エンジン運転状態が維持され、キースイッチ(22)がOFF位置に投入されると、燃料噴射弁(24)からの燃料噴射が停止され、エンジンが停止される。
【0024】
このエンジンは、排気処理装置を備えている。
図1に示すように、排気処理装置は、エンジンECU(5)と、DOC(2)と、DOC(2)の排気上流側に配置された電気ヒータ(3)を備えている。
図2に示すように、この排気処理装置では、エンジンECU(5)の指令で、DOC再生処理(S23)がなされ、DOC再生処理(S23)では、
図1に示す電気ヒータ(3)の発熱で、DOC(2)に詰まった未燃焼堆積物を焼却するように構成されているため、DOC再生処理でDOC(2)の機能を回復することができる。
未燃焼堆積物は、未燃焼燃料やPMの混合物である。PMは、粒子状物質の略称である。
【0025】
図1に示すように、排気処理装置は、エンジン停止操作装置(6)を備えている。
電気ヒータ(3)はDOC入口(2a)に沿って配置されている。
図4に示すように、排気処理装置は、エンジン停止操作装置(6)がエンジン停止操作された場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、エンジン停止中に、DOC再生処理の実施(S23)がなされるように構成されている。
このように、排気処理装置では、電気ヒータ(3)はDOC入口(2a)に沿って配置されているため、電気ヒータ(3)の発熱は、DOC(2)に詰った未燃焼堆積物に直接に伝わり、電気ヒータ(3)から未燃焼堆積物への熱の伝達ロスが小さくなる。また、エンジン停止中に、DOC再生処理の実施(S23)がなされるため、電気ヒータ(3)から未燃焼堆積物に伝わった熱が排気(9)で持ち去られることがない。これらの理由から、本発明では、未燃焼堆積物の焼却に対する電気ヒータ(3)の熱効率が高まり、その分、DOC再生処理での電気ヒータ(3)の消費電力を小さくすることができる。
【0026】
図1に示すように、排気処理装置では、DOC(2)は、排気上流側DOC(2b)とその排気下流側に配置された排気下流側DOC(2c)で構成され、排気上流側DOC(2b)は排気下流側DOC(2c)よりも熱容量が小さく、電気ヒータ(3)は、排気上流側DOC(2b)のDOC入口(2a)に沿って配置されている。
このため、この排気処理装置では、電気ヒータ(3)の熱で排気上流側DOC(2b)の温度が速やかに上昇し、排気上流側DOC(2b)に詰っている未燃焼堆積物が速やかに焼却され、DOC(2)の再生時間を短縮することができる。
【0027】
DOCは、ディーゼル酸化触媒の略称である。
図1に示すように、DOC(2)を構成する排気上流側DOC(2b)と排気下流側DOC(2c)は、いずれも酸化触媒成分を担持する担体を備えている。
担体は、内部に軸長方向に沿う多数のセルが貫通状に並設されたフロースルー型のメタルハニカムであり、セル内に白金やパラジウムやロジウム等の酸化触媒成分が担持されている。
図1に示すように、排気上流側DOC(2b)は、排気下流側DOC(2c)と、同一素材、同一外形、同一セル密度ではあるが、排気下流側DOC(2c)よりも軸長寸法が短く、小容積で、熱容量が小さくなるように構成されている。排気上流側DOC(2b)は、電気ヒータ(4)とは電気的に絶縁されている。
【0028】
図1に示すように、エンジン停止操作装置(6)には、キースイッチ(22)が用いられ、キースイッチ(22)のOFF位置への投入操作がエンジン停止操作となる。
図2に示すように、DOC再生処理は、キースイッチ(22)でエンジン停止操作がされた場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令により、エンジン停止処理の度に行われる。
DOC再生処理は、排気上流側DOC(2b)への未燃焼堆積物の堆積量が所定の再生必要値に至り、かつキースイッチ(22)でエンジン停止操作がされた場合に限り、行うようにしてもよい。排気上流側DOC(2b)への未燃焼堆積物の堆積量は、エンジン運転時の排気温度の累積データに基づいて推定することができる。
エンジン停止処理では、燃料噴射弁(24)からの燃料噴射が停止され、エンジンが停止される。
【0029】
図2に示すエンジンECU(5)によるDOC再生処理の流れは次の通りである。
ステップ(S21)では、エンジン停止操作装置(6)がエンジン停止操作されたか否かが判定され、判定が肯定されるまで、判定が繰り返され、判定が肯定されると、ステップ(S22)に進む。
ステップ(S22)では、エンジン停止処理がなされ、ステップ(S23)に進む。エンジン停止処理では、燃料噴射弁(24)からの燃料噴射が停止され、エンジンが停止される。
ステップ(S23)では、DOC再生処理がなされ、処理は終了する。
DOC再生処理は、所定時間、電気ヒータ(3)の発熱がなされ、その後、自動的に終了する。
DOC再生処理は、排気上流側DOC(2b)への未燃焼堆積物の堆積量推定値が所定の再生終了値に至った後、終了してもよい。
【0030】
図1に示すように、排気処理装置は、排気下流側DOC(2c)の排気下流側に配置されたDPF(7)と、排気上流側DOC(2b)の排気上流側に配置された燃料供給装置(8)を備えている。
図3に示すように、排気処理装置は、次のように構成されている。
DPF(7)のPM堆積量推定値(F)が所定のDPF再生開始判定値(FS)に至っているが、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が排気上流側DOC(2b)の活性化温度領域(T2)に至っていない場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、DOC活性化処理がなされる。
DOC活性化処理では、エンジン運転中に、電気ヒータ(3)の発熱(S4)で、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)まで昇温され、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、DPF再生処理(S8)がなされ、DPF再生処理では、エンジン運転中、燃料供給装置(8)から排気(9)中に燃料が供給され、この燃料の排気上流側DOC(2b)での触媒燃焼で、排気(9)が昇温され、この排気(9)の熱で、DPF(7)に堆積されたPMが焼却されるように構成されている。
このため、排気処理装置では、排気(9)の温度が低い無負荷や軽負荷運転中でも、速やかな排気上流側DOC(2b)の活性化で、排気(9)が昇温され、排気下流側DOC(2c)も活性化され、更に排気(9)が昇温され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
【0031】
DPFは、ディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称であり、DPF(7)は、排気(8)に含まれるPMを捕捉する。
DPF(7)は、内部に軸長方向に沿う多数のセルが並設され、隣り合うセルの入口と出口が交互に目封じされたウォールフロー型のセラミックハニカムである。
【0032】
図1に示すように、DOC(2)とDPF(7)は、排気経路(1)に配置されている。
排気経路(1)は、排気タービン(16a)の排気出口(16b)から導出された排気導出通路(16c)の下流に配置され、途中に上流側DOC収容ケース(1a)と、その排気下流側に配置された下流側DOC収容ケース(1b)を備え、上流側DOC収容ケース(1a)に電気ヒータ(3)と排気上流側DOC(2b)が収容され、下流側DOC収容ケース(1b)に排気下流側DOC(2c)とDPF(7)が収容され、DPF(7)は排気下流側DOC(2c)の排気下流側に収容されている。
【0033】
DPF(7)のPM堆積量の推定は、次のようにして行われる。
排気処理装置は、DPF(7)の出入口の差圧を検出する差圧センサ(32)を備え、差圧センサ(32)はエンジンECU(5)に電気的に接続され、DPF(7)の出入口の差圧に基づいて、エンジンECU(5)がDPF(7)に堆積したPMの堆積量の推定値を演算する。
【0034】
排気上流側DOC(2b)の温度推定は、次のようにして行われる。
図1に示すように、排気処理装置は、排気上流側DOC(2b)のDOC入口側排気温度センサ(34)とDOC出口側排気温度センサ(35)を備え、これらセンサ(34)(35)はエンジンECU(5)に電気的に接続されている。エンジンECU(5)では、これらセンサ(34)(35)からの排気温度の情報に基づいて、排気上流側DOC(2b)の推定温度を演算する。
【0035】
排気上流側DOC(2b)の活性化判定は、次のようにして行われる。
図4(A)に示すように、排気上流側DOC(2b)のDOC入口側排気温度センサ(34)やDOC出口側排気温度センサ(35)からの温度情報や排気(9)への燃料の供給量の情報に基づいて、エンジンECU(5)が排気上流側DOC(2b)の出口排気温度の理論温度を演算し、その理論温度が活性化判定温度(t1)に達し、その実測温度が理論温度と一致した時に、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)にあるものとして、排気上流側DOC(2b)の活性化判定がなされる。
【0036】
図4(B)に示すように、排気処理装置は、排気上流側DOC(2b)の活性化判定があった場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令で、電気ヒータ(3)への印加電流値(I)を減少(S7)させるように構成されている。
このため、排気処理装置では、排気上流側DOC(2b)の活性化後は、電気ヒータ(3)による無駄な電力消費を抑制することができる。
【0037】
図4(B)に示すように、電気ヒータ(3)の発熱処理では、最初、電気ヒータ(3)への印加電流値(I)が最大値に設定され、
図4(A)に示すように、排気(9)への燃料供給が開始され、排気上流側DOC(2b)の活性化判定がなされると、
図4(B)に示すように、電気ヒータ(3)への印加電流値(I)が減少される。この印加電流値(I)は、次第に減少され、最終的に0となる。
【0038】
排気下流側DOC(2c)の温度推定は、次のようにして行われる。
図1に示すように、排気処理装置は、排気下流側DOC(2c)のDOC入口側排気温度センサ(39)とDOC出口側排気温度センサ(38)を備え、これらセンサ(39)(38)はエンジンECU(5)に電気的に接続されている。エンジンECU(5)では、これらセンサ(39)(38)からの排気温度の情報に基づいて、排気下流側DOC(2c)の推定温度を演算する。
排気下流側DOC(2c)の活性化判定は、排気上流側DOC(2b)の活性化判定と同様にして行うことができる。
【0039】
燃料供給装置(8)には、コモンレール式の燃料噴射装置が用いられ、DPF再生処理では、燃料噴射弁(24)からポスト噴射がなされ、燃料が排気(9)に混入され、この燃料が排気上流側DOC(2b)で触媒燃焼されることにより、排気(9)の昇温で、DPF(7)に堆積したPMが焼却される。
ポスト噴射とは、燃焼サイクル中、燃料噴射弁(24)からメイン噴射後、膨張行程または排気行程で燃焼室(23)に行われる燃料噴射である。
ポスト噴射によるDPF再生処理は、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が所定の活性化温度領域(T2)まで昇温された後に行われるが、排気(9)の温度が低い場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令により、吸気絞り弁(19)の開度を絞り、補助的に排気(9)を昇温させる。
DPF再生処理では、DPF(7)の入口排気温度が所定の再生可能温度を維持するよう、ポスト噴射量が調節される。
DPF再生処理では、ポスト噴射に代え、排気管に設けた燃料噴射弁から排気に燃料を噴射する排気管噴射を行ってもよい。
【0040】
DPF(7)に堆積するPM堆積量推定値がDPF(7)の再生終了判定値(FF)を下回った場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令により、DPF再生処理は終了する。
DPF再生処理は、DPF(7)の再生処理が開始された後、DPF(7)の入口排気温度が所定の再生可能温度を維持した時間が所定の再生終了判定値に至った場合に終了させてもよい。DPF(7)の入口排気温度は、排気下流側DOC(2c)のDOC出口側排気温度センサ(38)で検出することができる。
なお、排気処理装置は、DPF(7)の出口側排気温度センサ(33)を備え、DPF(7)の排気側出口温度が所定の異常燃焼基準値を越えた場合、その検出に基づくエンジンECU(5)の指令により、DPF再生処理を緊急終了させる。
【0041】
図1に示すように、排気処理装置は、排気上流側DOC(2b)のDOC入口(2a)に沿うハニカム構造体(10)を備えている。
図5(A)に示すように、ハニカム構造体(10)は、排気経路(1)の排気通過方向に貫通する多数のセル(10a)(10b)を備え、ハニカム構造体(10)のうち、中心ハニカム部(10d)のみが前記電気ヒータ(3)とされている。
このため、排気処理装置では、排気経路(1)外への熱の逃げが起こり難い中心ハニカム部(10d)の電気ヒータ(3)により排気(9)が昇温され、排気(9)の昇温効率が高まり、排気温度が低い無負荷や軽負荷運転時でも、速やかに排気上流側DOC(2b)が活性化され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
電気ヒータ(3)を周囲から取り囲む周囲ハニカム部(10e)は、絶縁体(10f)を介して電気ヒータ(3)と電気的に絶縁されている。
【0042】
図5(A)に示すように、電気ヒータ(3)を構成する中心ハニカム部(10d)は周囲ハニカム部(10e)よりも高いセル密度で構成されている。
このため、排気処理装置では、電気ヒータ(3)の放熱面積が広く、排気(9)の昇温効率が高まり、排気温度が低い無負荷や軽負荷運転時でも、速やかに排気上流側DOC(2b)が活性化され、DPF(2)の再生効率を高めることができる。
セル密度は、ハニカム構造体(10)の中心軸線(10c)と直交する面の単位面積当たりのセルの数で示され、数値が大きい程、セル密度は高くなる。
【0043】
図5(A)(B)に示すハニカム構造体(10)と排気上流側DOC(2b)の関係は、次の通りである。
図5(A)に示すハニカム構造体(10)は、電気ヒータ(3)となる中心ハニカム部(10d)と、電気ヒータ(3)を周囲から取り囲む周囲ハニカム部(10e)のいずれも、内部に軸長方向に沿う多数のセルが貫通状に並設されたフロースルー式のメタルハニカムである。ハニカム構造体(10)と排気上流側DOC(2b)はいずれも円筒径で同じ外径寸法となっており、ハニカム構造体(10)の中心軸線(10c)と排気上流側DOC(2b)の中心軸線(2d)は同一の直線状に位置し、ハニカム構造体(10)の電気ヒータ(3)は、排気上流側DOC(2b)の中心部(36)と対向し、ハニカム構造体(10)の周囲ハニカム部(10e)は、排気上流側DOC(2b)の中心部(36)を取り囲む周囲部(37)と対向している。ハニカム構造体(10)の周囲ハニカム部(10e)と排気上流側DOC(2b)のセル密度は同じに設定されている。
【0044】
図3に示すエンジンECU(5)によるDOC活性化処理とDPF再生処理の流れは、次の通りである。
ステップ(S1)では、DPF(7)のPM堆積量の推定が行われ、ステップ(S2)に進む。
ステップ(S2)では、DPF(7)のPM堆積量の推定値(F)がDPF再生開始の判定値(FS)以上であるか否かが判定され、判定が肯定されるまで、ステップ(S1)とステップ(S2)が繰り返され、ステップ(S2)での判定が肯定されると、ステップ(S3)に進む。
ステップ(S3)では、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化判定温度(T1)以上か否かが判定され、判定が否定された場合、すなわち、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化必要温度領域(T0)にある場合、ステップ(S4)に進み、DOC活性化処理がなされる。
【0045】
ステップ(S4)では、電気ヒータ(3)が発熱され、ステップ(S5)に進む。ステップ(S4)での電気ヒータ(3)への印加電流値(I)は最大値に設定されている。
ステップ(S5)では、排気(9)への燃料供給が開始され、ステップ(S6)に進む。
ステップ(S6)では、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化判定温度(T1)以上か否かが判定され、判定が肯定された場合、すなわち、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)にある場合、ステップ(S7)に進む。
ステップ(S7)では、電気ヒータ(3)への印加電流値(I)を減少させ、DOC再生処理を終了し、ステップ(S8)に進む。
【0046】
ステップ(S8)では、DPF再生処理がなされ、ステップ(S9)に進む。
ステップ(S9)では、DPF(7)のPM堆積量の推定が行われ、ステップ(S10)に進む。
ステップ(S10)では、DPF(7)のPM堆積量推定値(F)がDPF再生終了判定値(FF)以下であるか否かが判定され、判定が肯定された場合、ステップ(S11)に進む。ステップ(S11)では、DPF再生処理が終了され、ステップ(S1)に戻る。
【0047】
ステップ(S3)で、判定が否定された場合、すなわち、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化温度領域(T2)にある場合、ステップ(S8)に進み、DOC活性化処理を行うことなく、ステップ(S8)でDPF再生処理を行う。
ステップ(S6)で、判定が否定された場合、すなわち、排気上流側DOC(2b)の推定温度(T)が活性化必要温度領域(T0)にある場合、ステップ(S4)に戻り、DOC再生処理を継続する。
ステップ(S10)で、判定が否定された場合、すなわち、DPF(7)のPM堆積量推定値(F)がDPF再生終了の判定値(FF)を超えている場合、ステップ(S3)に戻り、再度、DOC活性化処理の要否を判定する。