【解決手段】ディーゼルエンジンの非線形問題に対応した線形実現可能性問題を解くためのハイブリッド型の二次ソルバを利用したモデル予測制御は、最適化変数及び制約を有する凸二次費用関数を解き、プラント運転を最適化するように、出力された解に基づいてプラントを制御する。パーシャルステップ(反復)又はフルステップ(直接的)が試みられるかどうかに応じて、主空間内における反復的かつ直接的な計算の組合せを含む。更に、主及び双対空間アレイ行列が、オフラインで事前演算されて記憶され、かつ、1セットの制約の特定の有効セットと関連した一意の識別子の使用を介して取得される。このようなハイブリッド型の及び/又はオフラインの計算により、解の結果の精度を依然として維持しつつ、演算パワーの低減が可能となる。
内燃エンジンであって、前記エンジンの空気経路内に可変形状タービン(VGT)、排気ガス再循環(EGR)弁、及びEGRスロットルを有する内燃エンジンを制御する方法であって、
線形モデル、1つ又は複数の制約、及び関連した双対空間及び主空間行列アレイに基づいて前記空気経路を制御するモデル予測制御(MPC)コントローラの制約付き最適化問題を定式化することであって、前記線形モデルは、双対及び主空間内における凸二次時変費用関数を備えており、それぞれの前記アレイは、前記1つ又は複数の制約の第1の組合せを備える一意の有効セットリストと関連付けられている、定式化することと、
解を決定するために前記制約付き最適化問題を解くことと、
更新済み有効セットリストでもって前記制約付き最適化問題を更新することと、
それぞれ前記1つ又は複数の制約を充足する要求最適VGTリフト及び要求最適EGR弁流量を生成して前記空気経路を制御するために、前記1つ又は複数の制約のすべての可能な有効セットリストが充足されるまで、前記解くこと及び前記定式化することを反復することであって、
エンジン吸気マニホールド圧に応答する前記要求最適VGTリフトが、前記VGTを制御することにより生成され、
EGR率に応答する前記要求最適EGR弁流量が、前記EGR弁及び前記EGRスロットルを制御することにより生成される、
前記解くこと及び前記定式化することを反復することと、
前記空気経路に関して前記解を実装することと、
を備える方法。
前記フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することは、
パーシャルステップ及び前記フルステップのうちの1つを取得すると決定することと、
前記パーシャルステップが取得されたときに、前記評価用の有効セットリストから前記最も逸脱された可能な制約を除去することと、
前記除去された制約に基づいて、前記1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
を備え、
前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定するようにすることは、
双対実現可能性の最大双対ステップ長を算出することと、
最大主ステップ長を算出することと、
前記最大双対ステップ長と前記最大主ステップ長とを比較することと、
前記最大主ステップ長が前記最大双対ステップ長未満のときに、主空間内において前記フルステップ長を取得することと、
前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満のときに、パーシャルステップを取得することであって、ステップを取得しないこと及びパーシャル主ステップを取得することのうちの1つを備え、
前記パーシャル主ステップは、前記フルステップ長の一部分であり、
制約の数が有効制約の最大数未満であるときに、前記パーシャル主ステップが取得され、かつ、
前記最大数の制約が有効であるときに、ステップは取得されない、
ことと、
を備える、請求項9に記載の方法。
内燃エンジンであって、前記エンジンの空気経路内に可変形状タービン(VGT)、排気ガス再循環(EGR)弁、及びEGRスロットルを有する内燃エンジンを制御するためのシステムであって、
非一時的なコンピュータストレージ媒体に通信自在に結合されたプロセッサ
を備え、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体は、命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
線形モデル、1つ又は複数の制約、及び関連した双対空間及び主空間行列アレイに基づいて前記空気経路を制御するモデル予測制御(MPC)コントローラの制約付き最適化問題を定式化することであって、前記線形モデルは、双対及び主空間内における凸二次時変費用関数を備えており、それぞれの前記アレイは、前記1つ又は複数の制約の第1の組合せを備える一意の有効セットリストと関連付けられている、定式化することと、
解を決定するために前記制約付き最適化問題を解くことと、
更新済み有効セットリストでもって前記制約付き最適化問題を更新することと、
それぞれ前記1つ又は複数の制約を充足する要求最適VGTリフト及び要求最適EGR弁流量を生成して前記空気経路を制御するために、前記1つ又は複数の制約のすべての可能な有効セットリストが充足されるまで、前記解くこと及び前記定式化することを反復することであって、
エンジン吸気マニホールド圧に応答する前記要求最適VGTリフトが、前記VGTを制御することにより生成され、
EGR率に応答する前記要求最適EGR弁流量が、前記EGR弁及び前記EGRスロットルを制御することにより生成される、
前記解くこと及び前記定式化することを反復することと、
前記空気経路に関して前記解を実装することと、
を実行させる命令を記憶している、システム。
解を決定するために前記制約付き最適化問題を解く前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
前記線形モデルの1つ又は複数の最適化変数を制約なし最小値に設定することと、
評価用の有効セットリストを形成するために、前記1つ又は複数の制約のうちの最も逸脱された可能な制約を決定することと、
前記評価用の有効セットリストを一意の識別子に変換することと、
前記一意の識別子に基づいて主及び双対空間アレイを識別することと、
前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定するようにすることと、
フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
前記フルステップ長を取得することと、
前記最も逸脱された可能な制約を現時点の有効セットリストに追加することと、
すべての可能な制約が充足されるまで、前記最も逸脱された可能な制約を追加することにより、前記決定することを反復することと、
を実行させる命令を備える、請求項11に記載のシステム。
フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新する前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
パーシャルステップ及び前記フルステップのうちの1つを取得すると決定することと、
前記パーシャルステップが取得されたときに、前記評価用の有効セットリストから前記最も逸脱された可能な制約を除去することと、
前記除去された制約に基づいて、前記1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
を実行させる命令を備える、請求項12に記載のシステム。
前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定する前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
双対実現可能性の最大双対ステップ長を算出することと、
最大主ステップ長を算出することと、
前記最大双対ステップ長と前記最大主ステップ長とを比較することと、
前記最大主ステップ長が前記最大双対ステップ長未満のときに、主空間内において前記フルステップ長を取得することと、
前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満のときに、パーシャルステップを取得することと、
を実行させる命令を備える、請求項12に記載のシステム。
前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満であるときにパーシャルステップを取得する前記命令は、ステップを取得しない命令及びパーシャル主ステップを取得する命令のうちの1つを備え、
前記パーシャル主ステップは、前記フルステップ長の一部分であり、
有効制約の数が制約の最大数未満であるときに、前記パーシャル主ステップを取得する前記命令が実行され、かつ、
前記最大数の制約が有効であるときに、ステップを取得しない命令が実行される、
請求項14に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図を全体的に参照すると、本開示の実施形態は、制約としてエンジン運転パラメータを有する内燃エンジンプラント(例えば、プラントは、ディーゼルエンジンの空気経路である)の非線形問題に対応する線形実現可能性問題を解くための、ハイブリッド型の、例えばパーシャル及びフルステップの、二次ソルバを利用するMPCコントローラの使用に向けられている。一般に、本開示に記述されるMPC方法は、最適化変数及び制約を有する凸二次費用関数を解き、かつ、規則及び制約を順守しつつ、プラントの運転を最適化するように、出力解に基づいてプラントの運転を管理する。この問題は、離散時間不変モデルとして解くことが可能であるけれども、時変であり、かつ、(反復的計算を利用する)パーシャルステップ又は(直接的計算を利用する)フルステップが試みられるかに応じて、主空間内における反復的及び直接的な計算の組合せを含むことができる。更に、より詳細に後述するように、主及び双対空間アレイ行列が、オフラインで事前演算及び保存されるとともに、1セット又は組の制約のための特定の有効セットに関連付けられた一意の識別子の使用を介して取得される。このようなハイブリッド型の及び/又はオフラインの計算によって、プラントによる実装のための解の結果の精度を依然として維持しつつ演算パワーを低減することが可能となる。
【0013】
本開示には、ディーゼルエンジンの空気経路プラント及びMPC動作、並びに、MPCコントローラを介したこのようなプラント運転の使用方法の様々な実施形態が詳細に説明される。本開示に記述されるアルゴリズムは、当業者には明らかなように、ディーゼルエンジンの空気経路以外のプラントにも適用されうることが、理解されるべきである。
【0014】
図1は、内燃エンジン20を示しており、これは非限定的な例としてディーゼルエンジンである。エンジン20は、複数のシリンダ24を収容するエンジンブロック22を含む。燃料レール26が、燃料供給源(図示されない)に接続されてディーゼル燃料を複数の燃料噴射器28に供給し、それぞれのシリンダ24には燃料噴射器28が設けられる。
【0015】
吸気マニホールド30が、吸入空気をそれぞれのシリンダ24に供給するために複数のシリンダ24に結合される。又、吸気マニホールド30には、吸気マニホールド空気圧を計測するために、吸気マニホールド圧力センサ32も結合される。燃焼ガスは、排気マニホールド34により、複数のシリンダ24及びエンジンブロック22から運び去られる。
【0016】
吸気マニホールド30と排気マニホールド34との間のバイパス経路29は、複数のシリンダ24に供給するために、排気ガスの一部分を排気マニホールド34から吸気マニホールド30に戻るよう再循環させるために結合されたEGR弁40を有する。EGR弁40と共に、EGRクーラ42がバイパス経路29に結合されてもよい。上述のように、EGR弁は、より完全な燃焼とエンジンエミッションの低減との両方を実現するために、変化する量のエンジン排気ガスをエンジンシリンダに戻るように再循環させる。EGR弁40が開けられる量により、排気マニホールド34からバイパス経路29を通って吸気マニホールド30に戻るよう再循環することが可能なエンジン排気ガスの量が制御される。EGRクーラ42は、さもなければ損耗及び断裂の増大をもたらしかねないEGR弁40の過熱の防止を支援する。
【0017】
ガス循環の制御を更に支援するためのEGRスロットル44が、VGT48のコンプレッサ46からの空気流路内に取り付けられる。EGRスロットル44の過熱の防止を支援するためのインタークーラ50が、吸気用の空気流路内のEGRスロットル44上流に取り付けられてもよい。コンプレッサ46は、到来する空気の圧力を増大させる。更には、VGT48はタービン入力ベーンを含み、これらタービン入力ベーンはタービン入力ベーンの角度調整により、開けられ、部分的に開けられ、又は、閉じられて、VGTリフトを制御するとともに、EGRスロットル44を通過した空気がバイパス経路29を介し吸気マニホールド30に再循環されている排気ガスと合流できるようにしてもよい。従って、タービン入力ベーンの角度を制御することにより、VGT48は、VGT48のコンプレッサ46によって提供される吸気マニホールド圧を制御する。又、EGRスロットル44が開けられる量も、VGT48を介して提供される空気であって、バイパス経路29を介して再循環される空気と合流可能な空気の量を制限する。又、バイパス経路29を定義する壁には、EGR率(例えば、新気に対する再循環された空気の比)を計測するために、EGR率センサ43が結合される。なぜなら、EGR率はEGR弁40及び/又はEGRスロットル44の影響を受けるからである。EGR流量又はEGRフローといった別の計測値が、EGR弁40を介した質量再循環空気流に言及してもよい。
【0018】
本開示に記述される実施形態において、エンジン20用のMPCを利用したモデル予測コントローラは、複数の制御入力を使用する。制御入力は、例えば、
図2に示されるように、吸気マニホールド圧力センサ32によって生成される信号から計測又は算出された吸気マニホールド圧、及び/又は、EGR率センサ43によって生成される信号から計測又は算出されたEGR率64であってもよい。1つ又は複数の設定点マップは、制御入力(例えば、吸入圧及びEGR率)のための設定点を規定してもよい。更に、制御入力(例えば、吸入圧、ECUによって推定されたEGR率、及び質量空気流(MAF))の計測値に基づくカルマンフィルタ推定値が使用されてもよい。
【0019】
本開示に記述されるMPCコントローラ方法において、及び、更に詳細に更に後述するように、双対及び主空間アレイに基づいて、凸問題についての単一解が解かれ、この解はオフラインで事前演算又は保存されてもよい。本開示に記述されるMPCコントローラ方法に利用されるシステムとして、
図3は、
図1から
図2のプラント(例えば、ディーゼルエンジンの空気経路)を制御するECU70を示している。ECU70は、コンピュータ使用可能媒体上に有体の形で実施されたコンピュータプログラムを実行可能なプロセッサ61を含むとともに、MPCコントローラを後述するように指図するためにプロセッサによって実行可能な命令を含む。ECU70は、情報を操作又は処理する能力を有する任意のタイプの1つ又は複数のデバイスである中央処理ユニット(CPU)を含んでもよい。CPUを、単一の又は複数のプロセッサによって実施してもよい。
【0020】
ECU70は、例えば、通信経路65を介して、
図3に示されるように、(例えば、EGR弁40、EGRスロットル44、及び/又はVGT48を起動させるために)アクチュエータ及びセンサ(例えば、吸気マニホールド圧力センサ32及び/又はEGR率センサ43)に、通信自在に結合されてもよい。通信経路65は、信号を送信する能力を有する任意の媒体(例えば、導電性ワイヤ、導電性トレース、光導波路、もしくは、類似物)から、又は、信号を送信する能力を有する媒体の組合せから、形成されてもよい。通信経路65は、エンジン20の様々なコンポーネントとECU70を通信自在に結合する。本開示において使用されるように、「通信自在に結合される」という用語は、結合されたコンポーネントが、データ信号(例えば、導電性媒体を介した電気信号、空気を介した電磁信号、光導波路を介した光信号、及び、類似物)を相互に交換する能力を有する、ことを意味する。
【0021】
上述のように、ECU70は、1つ又は複数のプロセッサ61を含んでもよく、このプロセッサ61は、機械可読命令を実行する能力を有する任意のデバイスであってもよい。従って、プロセッサ61は、コントローラ、集積回路、マイクロチップ、コンピュータ、又は任意のその他の演算デバイスであってもよい。プロセッサ61は、通信経路65により、
図3のその他のコンポーネントに通信自在に結合される。従って、通信経路65は、任意の数のプロセッサ61を互いに通信自在に結合してもよく、通信経路に結合されたモジュールが分散演算環境において動作することを許容してもよい。具体的には、モジュールのそれぞれは、データを送信及び/又は受信しうるノードとして作動することができる。
【0022】
又、ECU70は、通信経路65に結合されると共にプロセッサ61に通信自在に結合されたメモリコンポーネント63を含む。メモリコンポーネント63は、非一時的なコンピュータ可読媒体であってもよく、不揮発性コンピュータ可読媒体として構成されてもよい。メモリコンポーネント63は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、又は、機械可読命令がプロセッサ61によりアクセス及び実行可能なように機械可読命令を記憶する能力を有する任意のデバイスを備えてもよい。機械可読命令は、任意のプログラミング言語で記述されたロジック又は1つ又は複数のアルゴリズム(例えば、プロセッサによって直接的に実行されうる機械言語、又は、機械可読命令にコンパイルもしくはアセンブルされてメモリコンポーネント上に記憶されうる、アセンブリ言語、オブジェクト指向プログラミング(OOP)、スクリプティング言語、マイクロコード、など)を備えてもよい。或いは、機械可読命令は、ハードウェア記述言語(HDL)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)構成、又は、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はこれらの均等物、のいずれかを介して実装されたロジックなど)で記述されてもよい。従って、本開示に記述される方法は、事前プログラムされたハードウェア要素として、又は、ハードウェア及びソフトウェアコンポーネントの組合せとして、任意の従来のコンピュータプログラミング言語で実装されてもよい。ECU70は、以下に更に詳細に説明するように、オフラインで事前演算された行列などのコンポーネントを記憶するために追加のストレージ又はデータベース67を更に含む。メモリコンポーネント63は、機械可読命令であって、プロセッサ61によって実行されると、MPCコントローラとして動作するECU70の機能をプロセッサ61が実行するようにする機械可読命令を含んでもよい。
【0023】
ECU70は、ECU70をコンピュータネットワーク71と通信自在に結合するためのネットワークインターフェイスハードウェア69を含む。ネットワークインターフェイスハードウェア69は、通信経路65がネットワークインターフェイスハードウェア69をECU70のその他のモジュールに通信自在に結合するように、通信経路65に結合される。ネットワークインターフェイスハードウェア69は、無線ネットワークを介してデータを送信及び/又は受信する能力を有する任意の装置であってもよい。従って、ネットワークインターフェイスハードウェア69は、任意の無線通信規格に従ってデータを送信及び/又は受信するための通信トランシーバを含むことができる。例えば、ネットワークインターフェイスハードウェアは、有線及び/又は無線コンピュータネットワーク(例えば、無線フィデリティ(Wi−Fi)、WiMax、Bluetooth(登録商標)、IrDA、ワイヤレスUSB、Z−Wave、ZigBee、又はこれらの類似物)上において通信するためのチップセット(例えば、アンテナ、プロセッサ、機械可読命令、など)を含むことができる。
【0024】
本開示に記述されるような二次プログラミング(QP)ソルバは、第1実施形態において、ディーゼルエンジンの空気経路のプラントを制御するための、本開示に記述されるような導出を伴うQPKWIKアルゴリズムを利用する。ディーゼルエンジンの空気経路を制御するためにQPKWIKアルゴリズムを利用することにより、大規模プロセス最適化問題のためのMPC解を求めることが可能となる。この大規模プロセス最適化問題は、多くの変数及び時変制約を含むが、わずかな自由度しか含まず、これにより、演算時間の低減が支援される。時変制御入力としての最適化変数は、例えば、VGTリフト66及びEGR弁の流量68であってもよい。時変線形項又は変数は、例えば、吸気マニホールド圧62及び/又はEGR率64などの制御入力であってもよい。独特にも、QPKWIKアルゴリズムが必要とするのは、ヘッセ行列の逆コレスキー因子の供給のみであり、この逆コレスキー因子は、因数分解された逆BFGS公式(例えば、準ニュートン更新公式)を使用することにより、それぞれの反復において直接的に取得される。結果的に得られる二次プログラムサブ問題は、例えば、3次ではなく2次の自由度を有する解を結果的に有し、必要な演算時間は、より高次の問題よりも短くなる。
【0025】
以下は、QPKWIKアルゴリズムの導出である。
【0026】
以下の凸二次問題は、ECU70により、関連した問題制約を充足しつつ、解かれる対象の凸関数として機能する。
【数1】
【0027】
それぞれの時間ステップkにおいて、
は費用関数における線形項(時変)であり、
は費用関数における二次項(一定)であり、
は制約行列(一定)であり、
は制約ベクトル(時変)であり、
は1つ又は複数の最適化変数(例えば、時変制御入力)である。
は凸状でありかつ制約は線形である、と仮定される。式3.1は、有効な(実現可能な)制約のみを考慮することにより、次式に単純化することができる。
【数2】
【0028】
有効制約とは、以下により詳細に記載するように、不等式有効制約が等式制約として成立するように、可能であると共に最適解を求める際に役割を果たす制約を意味する。最適性を目的として、最小となるべき解に対して成立しなければならないカルーシュ・クーン・タッカー(KKT)条件と、ラグランジュ乗数のベクトルと、を使用することにより、凸問題及び制約が組み合わされて次のラグランジュ関数が形成される。
【数3】
【0029】
式3.3の偏導関数を取得しそれらをゼロに等しくなるよう設定することにより、
及び
の最適値は、以下のように、かつ、充足すべき2セットの式を有する双対問題として式3.4において記述されるように、取得される。
【数4】
【0030】
更に、双対問題が双対実現可能性を有するために、ラグランジュ乗数
のすべてが、ゼロよりも大きいかゼロに等しくなければならない。ゼロに等しいラグランジュ乗数は、無効制約であり、ゼロよりも大きいラグランジュ乗数は、解において役割を果たす有効制約であり、ゼロ未満のラグランジュ乗数は、問題が実現不能であり調査を要することを示す。
の最適値が上述の式3.4を充足し、かつ、ラグランジュ乗数
がすべての無効制約についてゼロであれば、双対費用関数
は、主費用関数
に等しく、相補スラック条件は、双対問題に対する解が主問題に対する解と同一となるように、維持される。
【0031】
従って、有効制約が存在しなければ、式3.4は、凸問題の制約なし最小値(例えば、大域的最小値)を返す。式3.4は、以下の式3.5に示されるように、行列の形態で記述できる。
【数5】
【0032】
その結果、式3.5は、式3.6とすることが可能であり、これは、以下に記述されるように、1つ又は複数の最適化変数
及び1つ又は複数のラグランジアン乗数
の解である。
【数6】
【0033】
ここで、以下の式3.7に記述されるとおり、
【数7】
【0034】
が多数回にわたって反復されるとき、(1)コレスキー分解を使用して
を容易に反転可能とすることにより、かつ、(2)QR因数分解を使用して非正方行列の反転を許容することにより、式3.7を単純化することができる。コレスキー分解との関係において、
などの正定値行列について、行列は、以下の規則を使用して、2つの三角行列Lに分解することができる。
【数8】
【0035】
に対してコレスキー分解を使用すると、以下の式3.9が結果的に得られる。
【数9】
【0036】
n×m行列Nが直交行列と上三角行列Rに分解されるのを許容する分解であるQR因数分解を使用して、以下の規則を使用することができる。
【数10】
【0037】
式3.10のQR因数分解を式3.9に適用すると、次式が結果的に得られる。
【数11】
【0039】
式3.7及び式3.11を組み合わせると、以下に示されるように、KKT条件を解決するために使用されると共に以下のように再定義される行列が得られる。
【数13】
【0040】
従って、式3.13を式3.6に適用することにより、問題に対する解は以下のように与えられる。
【数14】
【0041】
アルゴリズムは、現時点での有効セット(以下においてスクリプトLとして表記される)に基づいてKKT問題を解くので、式3.14Aは、以下の式3.14Bとして書き換えることができる。
【数15】
【0042】
上述の問題を解くことは、それぞれの反復について、計算コストがかかるおそれがあるので、アルゴリズムは、更に単純化されてもよく、かつ、以下のように、有効セットLから新しい有効セットL+1にどのように移動するかを算出してもよい。
【数16】
【0043】
上述の式3.15において、tは、アルゴリズムがとりうる最小長であって依然として双対実現可能性を維持しうる(かつ、主及び双対空間の両方において算出される)最小長であり、
は、現時点の制約セットリストに追加されるべき次の制約である。これに加えて、zが主空間におけるサーチ方向を示すアレイ又は配列であり、かつ、rが、双対空間におけるサーチ方向を示すアレイである場合には、以下が使用されてもよい。
【数17】
【0044】
この結果、最終的なQPKWIK式は、それぞれ、主及び双対空間内において、以下のように単純化されうる。
【数18】
【0045】
tの最小値(双対空間と主空間の両方について算出される)は、解が実現可能領域内に留まるのを保証するように、選択される。
【0046】
第2実施形態において、かつ、本開示に記述されるように、ディーゼルエンジンの空気経路フローのモデル予測制御(MPC)のための二次ソルバとして、HQPKWIKアルゴリズムが利用される。HQPKWIKアルゴリズムは、更に詳細に後述するように、QPKWIKアルゴリズムとは異なるハイブリッドモデルを使用する。第1に、HQPKWIKアルゴリズムは、オフラインで演算された事前演算済み主及び双対空間アレイ(並びに、必要なアレイを取得するためのルックアップアルゴリズム)を利用し、これに対して、QPKWIKアルゴリズムは、(以下の導出により示されるような)反復的なオンライン計算がHQPKWIKアルゴリズムよりも多くの演算パワー及び読み出し専用メモリ(ROM)を利用するように、このようなアレイをオンラインで算出する。
【0047】
例えば、事前演算済みアレイのセットから抽出すべき行列を決定するために、現時点のセットリストLが、以下の疑似コードをルックアップアルゴリズムとして使用して、識別子identifierに変換される。
【数19】
【0048】
一意の識別子が所与のセットリストLについて決定されたら、セットリストに関係すると共に一意の識別子と関連した1ペア又は対のz及びr(主及び双対空間)行列が取得されてもよい。非限定的な例として、l=5となるように5つの制約を有する所与の問題について、現時点の有効セットリストLは、L={1,0,3,0,5}となるように、有効制約1、3、及び5を有してもよい。ルックアップアルゴリズムを使用して、識別子identifierは、以下のように決定することができる。
【数20】
【0049】
従って、一意の識別子identifierは、結果として10進値となる、変換された2進数の合計から、10進数21に決定され、この一意の識別子に対応した主z空間行列及び双対r空間行列が取得されてもよい。或いは、例2において更に後述するように、制約が有効であるならば、1という値が割り当てられてもよく、これから、2進数を決定し10進数に変換して、関連した一意の識別子を求めてもよい。
【0050】
第2に、HQPKWIKアルゴリズムは、主空間について反復的な次ステップ計算アプローチ及び直接的な次ステップ計算アプローチ両方を利用したパーシャル及びフルステップハイブリッドモデルを組み込むことにより、数値解を改善するために、更新QPKWIKアルゴリズムを変更する。対照的に、QPKWIKアルゴリズムは、区域外誤差及び実現不能解を時々結果的にもたらしうる、主空間についての反復的な次ステップ計算を利用する。
【0051】
例えば、QPKWIKアルゴリズムにおいて、式3.15からの以下の主空間解を通じて、(
の使用によって示されるように)主空間内における反復的演算のみが使用される。
【数21】
【0052】
これは、1e−6という容認可能な誤差を上回ると共に実現可能解の境界外であるフルステップ解についての、演算的犠牲及び生じうる誤差を結果的にもたらしうる。従って、ハイブリッド型のQPKWIK解、又は、HQPKWIK、は、フル主ステップではなく、パーシャルステップ(ハーフステップと称してもよいが、必ずしも、フルステップのちょうど半分である必要はない)の取得を許容する。例えば、パーシャルステップは、反復計算を伴っており(式3.15を参照されたい)、主フルステップは、(式3.14Bによって示される)直接的な計算を伴っており、この場合、式は、直接的に解かれ、かつ、ステップの行き先を仮定しない。従って、主空間についての式3.15は、HQPKWIKアルゴリズムの場合に、以下のものとなるように、変更される。
【数22】
【0053】
主及び双対空間行列z及びrの定義をそれぞれ使用して、これは、以下の式に単純化される。
【数23】
【0054】
これは、更に、以下のように単純化することができる。
【数24】
【0055】
図4は、HQPKWIKアルゴリズムのオフライン及びオンライン態様を利用したMPCモデルの動作400のフローチャートを示しており、
図5は、
図4のフローチャートのステップ416の制約付き最適化問題を解くのに関与する特定のHQPKWIKアルゴリズムを示している。
【0056】
図4を参照すると、HQPKWIKアルゴリズムを利用したMPCモデルの動作400は、ステップ404から410を含むオフライン部分402を有する。ステップ404において、動作400は、エンジン20のディーゼル空気経路の非線形モデルを展開し較正する。例えば、入力は、VGT位置(例えば、
図2から
図3のVGT位置80)及びEGT弁角度(例えば、
図2から
図3のEGR弁位置82A)を含んでもよく、出力は、それぞれ、
図2から3の排気/吸気圧62及びEGT率64、並びに、MAFを含んでもよい。入力及び出力は、一般化されてもよく、かつ、必ずしも率に基づいたものとなるように制限されておらず、従って、一般化されかつ率に基づかない入力及び出力に対し、入力及び出力に対する微分操作は、不要である。
【0057】
ステップ406において、線形モデルが非線形プラントから識別されるように、非線形プラントが動作点の周りにおいて線形化される。ステップ408において、システムに対する制約が識別され、制約の例は、最大MAFオーバーシュート、最大EGR率、エンジン運転範囲を示す最大/最小EGR弁コマンド(開コマンドなど)、最大/最小VGTリフト閉コマンド、及び/又は、最大/最小EGRフローコマンドを含んでもよく、しかしながらこれらに制限されない。ステップ410において、双対及び主サーチ方向におけるオフライン行列が、事前演算され、かつ、保存される。これらの行列は、サブ問題を解くのに使用され、このサブ問題は、更に詳細に後述するように、HQPKWIKアルゴリズムに準拠した制約の様々な組合せを使用することにより、かつ、上述したようなQPKWIKの展開に由来するHQPKWIKアルゴリズムの式を適用することにより、生成される。
【0058】
HQPKWIKアルゴリズムを利用したMPCモデルの動作400は、ステップ414から418を含むオンライン部分412を更に有する。ステップ414において、MPC問題(例えば、式3.2)が定式化される。入力の例は、現時点の制約、観察者の推定、センサ入力、ターゲット、及び、これらの類似物である。出力の例は、最適化問題を定義した行列である。
【0059】
ステップ416において、MPC/制約付き最適化問題が解かれ、望ましい制御が出力される。例えば、HQPKWIKアルゴリズムの適用により、式3.2が、現時点の最適化問題について解かれる。このステップ416で適用されるHQPKWIKアルゴリズムについては、以下の
図5に関して更に詳細に説明する。再度
図4を参照すると、ステップ418において、VGT及びEGR弁が、ステップ416で提供された解を介して制御されるように、望ましい制御出力がディーゼル空気経路のプラントに対して提供される。動作400はループ状にステップ414に戻ってステップ414から418を反復して、新しい、継続中の、かつ、次の、最適化問題のセットを解いて解を実装するようにする。
【0060】
図5を参照すると、ステップ416のMPC/制約付き最適化問題を解くために、参照符号500として表されたHQPKWIKアルゴリズムが適用される。HQPKWIKアルゴリズム500は、ステップ501において始まり、ステップ502における、最適化変数の制約なし最小値(例えば、大域的最小値
)への設定に進む。
【0061】
例えば、
【数25】
という凸二次関数の大域的最小値は、勾配を使用することにより、以下のように求められる。
【数26】
【0062】
例えば、以下は、2つの最適化変数
及び
を有する二次費用関数
を極小化するための問題及び解の例である。
問題:
【数27】
解:
【数28】
【0063】
図6Aは、三次元主空間内における凸二次関数
のグラフ表示の一例を示しており、
図6Bは、大域的最小値
(これは、
図6Aの三次元凸費用関数の最小の最底点である)を含む主空間内における凸二次関数のグラフ表示を示している。
図6Bは、更に詳細に後述するように、2つの(有効)制約を有する有効(可能)セットリストL={1,2}を更に示している。
図6Bは、セットリストL={1,2}が有効で可能なものであるときの、制約1に沿った第1反復
、制約2に沿った第2反復
、及び点
を示している。点
の上方においてセットリストL={1,2}により囲まれた領域は、主実現可能領域であり、点
は、更に詳細に後述するようにHQPKWIKアルゴリズム500を介して求められうる最小実現可能解である。本開示に記述される主実現可能性は、すべての制約を充足する領域(「主実現可能領域」と称される)内に点が位置するかどうかに言及する。点が主実現可能領域内に位置するのであれば、その点は実現可能であり、さもなければ、その点は実現不能である。
【0064】
更に、本開示に記述される有効制約対無効制約に関し、不等式制約が有効であると見なされるならば、不等式制約(例えば、
)は、最適な解
を求める際に役割を果たし、かつ、等式制約(例えば、
)として成立する。しかしながら、制約は、(最適点
が、制約に由来する交差点上に位置しないので)無効でありうるけれども、それは、依然として、最適点
が位置する実現可能領域を生成しうる。
【0065】
再度
図5を参照すると、上述のように、ステップ502において制約なし(大域的)最小値
が求められた後に、ステップ504において、最も逸脱された(可能な)制約が決定される。ステップ506において、すべての可能な制約が充足されているならば、アルゴリズムは、ステップ508において終了し、望ましい制御出力を含む解による
図4のステップ418のプラント(例えば、ディーゼル空気経路)の実装に進む。しかし、ステップ506においてすべての可能な制約が充足されていないならば、アルゴリズムは次いでステップ508に進んで、例えば、上述のように、ルックアップアルゴリズムに関して有効セットリストを一意の識別子に変換するようにする。一意の識別子が取得されたら、ステップ512において使用されるべき特定の事前演算された双対及び主空間アレイ(それぞれ、式3.16から3.17のr及びz)を見つけ出して、主及び双対ステップ方向を算出すると共にステップ長を決定するのに、識別子を使用することができる。ステップ514において、ラグランジュ乗数及び最適化変数が更新される。ステップ516において、アルゴリズムは、取得すべきステップのタイプを決定する。
【0066】
例えば、誤差境界内にありかつ双対実現可能性を充足する実現可能ステップ方向に対しては、主フルステップが取得される。このステップの結果として、ステップ520において適切な制約が追加され、アルゴリズムはステップ504に戻って、次の最も逸脱された制約を決定すると共に上述のステップを繰り返す。
【0067】
しかし、その代わりに、主フルステップが双対実現可能性を充足しなければ、主パーシャルステップ(さもなければ、ハーフステップと称される、ただし、必ずしもフルステップの50%である必要はなく、単にフルステップの一部分である)の取得が必要とされてもよい。一時点において有効でありうる最大数の制約が充足されているときには、主なステップ(例えば、主ステップ)は取得されず、従って、解かれるべき次の問題に進むために、1つの制約を除去する必要がある。例えば、ステップ516が、主ハーフ又はフルステップを取得すべきと判定したならば、同一の以前の問題に戻るべく、ステップ518において適切な制約が除去され、したがって、ステップ514のラグランジュ乗数及び最適化変数が、ステップ514において、除去された制約なしで、更新される。アルゴリズムがステップ508に進んで、
図4の動作400のステップ418においてプラントに提供される最小実現可能解としての望ましい制御出力と共に終了するように、アルゴリズムは、ステップ506においてすべての可能な制約が充足されるまで、反復する。
【0068】
従って、実施形態においては、かつ、
図1から
図5を参照すると、VGT48、EGR弁40、及びEGRスロットル44を有する
図1の内燃エンジン20を制御する方法は、本開示に記述されるように、予測モデルでもって線形二次問題を解くことを含み、この予測モデルは、(i)1つ又は複数の有効制約を充足する要求最適エンジンタービン(VGT)リフト66と、(ii)1つ又は複数の有効制約を充足する要求最適EGR弁流量68と、を決定するために、更新アルゴリズムを含む。線形二次問題を解くことは、それぞれの反復において、主パーシャルステップ又は主フルステップである決定済みステップを取得するかどうかを判定することと、線形二次問題が更新アルゴリズムによって解かれるまで、それぞれの反復において、決定済みステップを取得することと、を含む。主パーシャルステップを取得することは反復的計算を実行することを含み、主フルステップを取得することは直接的計算を実行することを含む。
【0069】
図1から
図3を参照すると、方法は、(例えば、吸気マニホールド圧力センサ32によって計測されるような)エンジン吸気マニホールド圧62に応答してVGT48を制御することにより、要求最適エンジンタービンリフト66を生成することを更に含む。例えば、アクチュエータによる(例えば、タービン入力ベーンの角度調整に対応した)VGT位置80の制御により、アクチュエータは従って、VGT48を制御し、エンジン吸気マニホールド圧62に影響を及ぼす。更に、方法は、(例えば、EGR率センサ43によって計測されるような)EGR率64に応答してEGR弁40及びEGRスロットル44を制御することにより、要求最適EGR弁流量68を生成することを含む。例えば、個々のアクチュエータによるEGR弁位置82A及びEGRスロットル位置82Bの個々の制御により、アクチュエータは従って、EGR弁40及びEGRスロットル44をそれぞれ制御し、EGR率64に影響を及ぼす。
【0072】
図7Aから
図7Cは、以下の表1と共に、
図5のHQPKWIKアルゴリズムの適用の一例を示している。
【0074】
図7Aから
図7Cの例のシステムは、2つの最適化変数と、5つの制約と、を含む。この例は、式3.2の二次問題を解いており、かつ、以下の1つ又は複数の項、1つ又は複数の行列、及び、1つ又は複数のベクトルを含む。
【0079】
ステップ502において(表1の反復0において
として示されるように)制約なし(大域的)最小値
が求められた後に、例は、ステップ504において、最も逸脱された可能な制約を決定する。
図7Aから
図7Cの例において、可能な制約は制約1から4となろう。なぜなら、これらは実現可能領域と接しているからである。制約5は、可能とはならず、従って、無効制約となろう。更に、制約1から5のそれぞれは、1つの制約として単一の最適化変数を、又は、複数の制約最適化変数を、含んでもよい。例えば、制約1は、温度制約、圧力制約、又は、温度もしくは圧力制約の組合せを含んでもよい。制約は、例えば、最大レベル、最小レベル、又は動作範囲の制限などの限界を含んでもよい。
【0080】
表1の第1データ行に示されるように、最も逸脱された可能な制約は、制約4となろう。従って、ステップ506においてすべての可能な制約が充足されていないと判定した後に、アルゴリズムは次いで、ステップ510から514までに進んで、双対実現可能性の最大ステップ長について解くようにしている。これは、表1の第1データ行の第3列及び第4列にそれぞれ示されるように、最大主ステップ長であると求められる。最小長が、ここで求められたように、最大主ステップ長であるならば、アルゴリズムは次いで、表1に示されるように、主ステップを取得すると共に評価済み制約(即ち、制約4)を有効セットリストに追加するようにし、従って、ステップ516及び520を経由してステップ504に戻る。
【0081】
システムが制約4により表された境界に沿って点
に位置する反復1において、アルゴリズムはステップ504において、(表1の第2データ行に示されるように)次の最も逸脱された可能な制約は、いまや、制約2であると決定する。しかし、ステップ510から514までが制約2に適用されるので、双対実現可能性の最大ステップ長は、最大主ステップ長未満であると求められる。このことは、フル主ステップが誤差境界ゾーン外となると共に制約2及び4の両方により実現不能となり、従って、制約4を除去する必要があることを示している。次いで、ステップ516において点
までのハーフ(例えば、パーシャル)ステップが取得され、ステップ518において制約4が除去され、ステップ514においてラグランジュ乗数及び最適化変数が、制約4なしに、以前の同一の問題について更新される。反復2において(アルゴリズムは、いまや、点
において始まる状態にある)、制約2が(今回は制約4なしで)再度評価され、ステップ514においてラグランジュ乗数及び最適化変数が更新される。ステップ516において、最大主ステップ長と双対実現可能性の最大ステップ長が比較され、最大主ステップ長が最小長であると求められる。従って、ステップ516は、フル(主)ステップの取得すべきであり、かつ、点
に到達するために制約2を有効セットリストに追加すべきである、と判定する。アルゴリズムは、ステップ506においてすべての可能な制約が充足されるまで、反復3から8までを継続する。
【0082】
更に詳しくは、反復4においてアルゴリズムが点
に位置しかつ制約3を追加しようと試みたときに、最大数の制約が一度に有効であるので、ステップ516において、ステップを取得すべきでないという判定がなされる。従って、アルゴリズムは、点
と同一である点
に更新し、制約1が除去される。しかし、反復5においては、ステップ516において、点
へのハーフステップを取得すると判定され、制約2が有効セットリストから除去される。反復6においては、ステップ520において制約3を追加するために、フルステップが取得されてもよいとステップ516において判定される。反復7においては、フルステップにおいて制約1が追加され、これにより、アルゴリズムが点
から点
に移動され、これは、すべての可能な制限を充足すると共にプラントの出力解である、実現可能領域の最小点である(例えば、
図4のステップ418において利用される)。
【0084】
図8Aから
図8Bを参照すると、
図5のアルゴリズムの使用に関し、別の例が提示される。
図8Aは、2つの最適化変数と4つの制約とを有する主問題のグラフ表示を示している。例えば、後述する所与の
及び
について、問題は、二次費用関数
を極小化すると共に表2の以下の4つの制約を充足する、VGT位置
(単位:%閉)及びEGR弁開き量
(単位:%開)の最適値に関する。
【0086】
具体的には、関連した主問題は、次式のとおりである。
【数33】
【0088】
HQPKWIKアルゴリズム500は、まず、ステップ501において始まり、次いで
図8Bに示されるように、
となるように、ステップ502において、最適化変数を制約なし最小値に設定する。
であるので、ステップ504において、最も逸脱された制約が制約1であると決定される。ステップ506において、アルゴリズム500は、(ステップ504において制約1を最も逸脱された可能な制約として識別しているので)すべての可能な制約が充足されているわけではないと判定し、アルゴリズム500は、ステップ510に進み、ここで、有効セットリストが一意の識別子に変換される。この例においては、有効セットリストは、
となるように、S={制約4,制約3,制約2,制約1}という形をなす。次いで、アルゴリズム500は、ステップ512に進んで、主及び双対ステップ方向を算出すると共にステップ長を決定し、これらは、
であることから、フル主ステップを取得する必要があり、かつ、制約1が追加される必要があることを見出すために実行される。アルゴリズム500は、ステップ514に進み、以下のように、最適化変数
及びラグランジュ乗数
を更新する。
【数35】
【0089】
その後、アルゴリズム500は、フル主ステップが(
図8Cに示されているように、点
及び
の間において)取得されたので、ステップ516に進んで、制約1が追加され、次いでアルゴリズム500は、新たに追加された制約1とともにプロセスを再開するために、ステップ504に戻る。
【0090】
例えば、ステップ504において、アルゴリズム500は、
であるので、新しい最も逸脱された(可能な)制約が制約3であると決定し、従って、ステップ506において、すべての(可能な)制約が充足されているわけではないことを認知し、ステップ510に移動する。ステップ510において、有効セットリストが、
のような一意の識別子に変換される。一意の識別子5と関連した双対及び主空間アレイが取得され、ステップ512において主及び双対ステップ方向が算出されて、
であることを見出すためにステップ長が決定される。アルゴリズム500は、ステップ514に進み、次のように、最適化変数
及びラグランジュ乗数
を更新する。
【数36】
【0091】
その後、アルゴリズム500は、(
図8Dに示されるように、点
及び
の間において)フル主ステップが取得されるので、ステップ516に進み、制約3が追加され、次いで、アルゴリズム500は、新たに追加された制約3と共にプロセスを再開するためにステップ504に戻る。今回は、ステップ504において、プロセスは、(
)別の最も逸脱された可能な制約が存在しないと判定し、次いで、ステップ506において、すべての可能な制約が点
において充足されていると判定される(その結果、アルゴリズム500は、
の解と共に、ステップ508において終了する)。
図8Dに示されるように、点
は、4つの制約によって制約された主実現可能領域のエッジにおける最小点又は解である。
【0092】
図9から
図10を参照すると、HQPKWIKアルゴリズムを検証するために、空気経路(例えば、プラント)を制御する線形MPCを有するディーゼルエンジンの運転サイクルデータが、WLTPサイクルの過渡ベンチデータとして収集され、評価された。これに加えて、本開示に記述されるHQPKWIKアルゴリズムが、ソルバとして使用され、評価された。これらの結果を検証するために、それぞれの時間ステップに対応したそれぞれの個々の問題がMatlabソルバ(オフライン)に与えられ、
図10に示されるように、HQPKWIKアルゴリズムと過渡ベンチデータ結果との間の最大誤差が決定された。
【0093】
例えば反復的な方式に起因した蓄積誤差が、約1e−6という容認可能な値を超過するおそれがあり、このことは、誤差が境界を超過していると共にアルゴリズムが予想通りに機能しないおそれがあることを示している。HQPKWIKアルゴリズムと、主空間内における反復的かつ直接的な計算を利用したハイブリッドアプローチと、を利用することにより、
図10に示されるように、評価された制約が充足されるように、誤差を容認可能な値よりも小さく維持することができる。
図10の結果は、1.5e−5%という誤差指標範囲内であり、このことは、解を、HQPKWIKアルゴリズムを介してオンラインで正確に算出する優れた能力を示している。
【0094】
HQPKWIKアルゴリズムは、ディーゼルエンジンの空気経路のプラントにおいて製造に使用される制約付き最適化ソルバを、更新アルゴリズムを使用しつつ、時間と共に変化する(時変)問題に適用できるようにする、ハイブリッド域空間アルゴリズムである。更新アルゴリズムは、主及び双対空間内において取得されるべく決定されるステップ長に基づいて、問題の最適化変数及びラグランジュ乗数を更新する。又、HQPKWIKアルゴリズムは、小さなROMサイズ(即ち、合計4.63KB)の制限内における動作、ECU上において稼働可能であること、並びに、正しい解及び有限で迅速なタイムフレームを正確に求めることが可能であること、などの課題を、首尾よく克服する。例えば、上述のように、
図10は、約1.5e−5%という最大誤差を示しており、実行例は、約250FLOPSという平均値を結果的にもたらした。留意すべきは、HQPKWIKが有効セット方法であるので、制約が追加されるのに伴って、演算時間及びROMサイズが増大し、従って、本開示に記述されるソルバは、一般に、線形不等式を有する少数の制約を有する、あらゆる制約付き最適化凸問題を解くのに有用である。
【0095】
「実質的に」及び「約」及び「ほぼ」という用語は、本開示では、任意の定量的比較、値、計測値、又はその他の表現に帰ることが可能な不確実性の固有の程度を表すために利用される場合があることに留意されたい。又、これらの用語は、本開示では、対象である主題の基本的機能の変化を結果的にもたらすことなしに、定量的表現が、記述された基準から変化しうる程度を表すのに利用される。
【0096】
本開示では、特定の実施形態が図示及び記述されているが、特許請求の範囲に記載された主題の精神及び範囲を逸脱することなしに、様々なその他の変更及び変形を行ってもよいことを理解されたい。更に、本開示では、特許請求の範囲に記載された主題の様々な態様が記述されているが、これらの態様は、組合せて利用される必要はない。従って、添付の請求項は、特許請求の範囲に記載された主題の範囲に含まれるこれらすべての変更及び変形を含むことが意図されている。
【0097】
1. 可変形状タービン(VGT)、排気ガス再循環(EGR)弁、及びEGRスロットルを有する内燃エンジンを制御する方法であって、
(i)1つ又は複数の制約を充足する要求最適VGTリフトと、(ii)前記1つ又は複数の制約を充足する要求最適EGR弁流量と、を決定するために、更新アルゴリズムを備える予測モデルでもって線形二次問題を解くことであって、
それぞれの反復において、主パーシャルステップ及び主フルステップのうちの1つを備える決定済みステップを取得するかどうかを判定することと、
前記線形二次問題が前記更新アルゴリズムによって解かれるまで、それぞれの反復において前記決定済みステップを取得することであって、
前記主パーシャルステップを取得することは、反復的計算を実行することを含み、
前記主フルステップを取得することは、直接的計算を実行することを含む、
前記決定済みステップを取得することと、
を含む、前記線形二次問題を解くことと、
前記VGTを制御することにより、エンジン吸気マニホールド圧に応答して前記要求最適VGTリフトを生成することと、
前記EGR弁及び前記EGRスロットルを制御することにより、EGR率に応答して前記要求最適EGR弁流量を生成することと、
を含む方法。
【0098】
2. 前記1つ又は複数の制約として1つ又は複数のエンジン運転パラメータを設定して、非線形問題を形成するようにすることと、
前記非線形問題に基づいて前記線形二次問題を導出することであって、前記線形二次問題が凸状でありかつ時変である、ことと、
を更に含む、前記1に記載の方法。
【0099】
3. 解くべき前記線形二次問題が次式を備えており、
【数37】
ここで、
は費用関数における時変線形項、
は前記費用関数における一定の二次項、
は一定の制約行列、
は時変制約ベクトル、
は時変制御入力を備える1つ又は複数の最適化変数、である、
前記2に記載の方法。
【0100】
4. 前記時変制御入力は、VGTリフト及びEGRフローのうちの少なくとも1つを備えており、前記方法は、前記1つ又は複数の制約のうちの有効実現可能制約のみを利用しつつ、ラグランジュ乗数
を追加して、ゼロに等しいか又はゼロよりも大きい1つ又は複数の最適化変数
及び1つ又は複数のラグランジュ乗数
の解を決定し、双対実現可能性を充足するようにすることを更に含む、前記3に記載の方法。
【0101】
5. 前記VGTは、開けられ、部分的に開けられ、又は閉じられるために角度調整されるように構成されたタービン入力ベーンを備えており、
前記有効実現可能制約は、最大EGR率、最小EGR率、最大EGRフローコマンド、最小EGRフローコマンド、前記タービン入力ベーンの最大閉じ量を制御するための最大VGTリフト閉コマンド、及び、前記タービン入力ベーンの最小閉じ量を制御するための最小VGTリフト閉コマンドのうちの少なくとも1つを備えている、前記4に記載の方法。
【0102】
6. 反復的かつ直接的計算方式を定義して現時点の有効セットリストLから新しい有効セットリストL+1にどのように移動するかを決定するために、現時点の有効セットリストLの前記決定された解を単純化し、その結果、以下の単純化されたHQPKWIK式を得ることを更に含み、
【数38】
ここで、tは依然として双対実現可能性を維持している最小長、
は現時点の制約セットリストに追加されるべき次の制約、zは主空間内におけるサーチ方向を示すアレイ、rは双対空間内におけるサーチ方向を示すアレイ、であり、
【数39】
である、前記5に記載の方法。
【0103】
7. 前記z及びrアレイをオンラインで演算することを更に含む、前記6に記載の方法。
【0104】
8. 前記z及びrアレイの部分をオフラインで事前演算することを更に含む、前記6に記載の方法。
【0105】
9. 前記現時点の有効セットリストに少なくとも部分的に基づく一意の識別子の決定の後に、前記z及びrアレイを取得することを更に含む、前記8に記載の方法。
【0106】
10. 前記一意の識別子の前記決定は、前記現時点の有効セットリストの1つ又は複数の2進数から10進値への変換を利用し、前記一意の識別子は、前記10進値を備えている、前記9に記載の方法。
【0107】
11. 内燃エンジンであって、前記エンジンの空気経路内に可変形状タービン(VGT)、排気ガス再循環(EGR)弁、及びEGRスロットルを有する内燃エンジンを制御する方法であって、
線形モデル、1つ又は複数の制約、及び関連した双対空間及び主空間行列アレイに基づいて前記空気経路を制御するモデル予測制御(MPC)コントローラの制約付き最適化問題を定式化することであって、前記線形モデルは、双対及び主空間内における凸二次時変費用関数を備えており、それぞれの前記アレイは、前記1つ又は複数の制約の第1の組合せを備える一意の有効セットリストと関連付けられている、定式化することと、
解を決定するために前記制約付き最適化問題を解くことと、
更新済み有効セットリストでもって前記制約付き最適化問題を更新することと、
それぞれ前記1つ又は複数の制約を充足する要求最適VGTリフト及び要求最適EGR弁流量を生成して前記空気経路を制御するために、前記1つ又は複数の制約のすべての可能な有効セットリストが充足されるまで、前記解くこと及び前記定式化することを反復することであって、
エンジン吸気マニホールド圧に応答する前記要求最適VGTリフトが、前記VGTを制御することにより生成され、
EGR率に応答する前記要求最適EGR弁流量が、前記EGR弁及び前記EGRスロットルを制御することにより生成される、
前記解くこと及び前記定式化することを反復することと、
前記空気経路に関して前記解を実装することと、
を含む方法。
【0108】
12. 前記解を決定するために前記制約付き最適化問題を解くことは、
前記線形モデルの1つ又は複数の最適化変数を制約なし最小値に設定することと、
評価用の有効セットリストを形成するために、前記1つ又は複数の制約のうちの最も逸脱された可能な制約を決定することと、
前記評価用の有効セットリストを一意の識別子に変換することと、
前記一意の識別子に基づいて主及び双対空間アレイを識別することと、
前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定するようにすることと、
フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
前記フルステップ長を取得することと、
前記最も逸脱された可能な制約を現時点の有効セットリストに追加することと、
すべての可能な制約が充足されるまで、前記最も逸脱された可能な制約を追加することにより、前記決定することを反復することと、
を含む、前記11に記載の方法。
【0109】
13. 前記フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することは、
パーシャルステップ及び前記フルステップのうちの1つを取得すると決定することと、
前記パーシャルステップが取得されたときに、前記評価用の有効セットリストから前記最も逸脱された可能な制約を除去することと、
前記除去された制約に基づいて、前記1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
を含む、前記12に記載の方法。
【0110】
14. 前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定するようにすることは、
双対実現可能性の最大双対ステップ長を算出することと、
最大主ステップ長を算出することと、
前記最大双対ステップ長と前記最大主ステップ長とを比較することと、
前記最大主ステップ長が前記最大双対ステップ長未満のときに、主空間内において前記フルステップ長を取得することと、
前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満のときに、パーシャルステップを取得することと、
を含む、前記12に記載の方法。
【0111】
15. 前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満であるときにパーシャルステップを取得することは、ステップを取得しないこと及びパーシャル主ステップを取得することのうちの1つを含み、
前記パーシャル主ステップは、前記フルステップ長の一部分であり、
制約の数が有効制約の最大数未満であるときに、前記パーシャル主ステップが取得され、かつ、
前記最大数の制約が有効であるときに、ステップは取得されない、
前記14に記載の方法。
【0112】
16. 内燃エンジンであって、前記エンジンの空気経路内に可変形状タービン(VGT)、排気ガス再循環(EGR)弁、及びEGRスロットルを有する内燃エンジンを制御するためのシステムであって、
非一時的なコンピュータストレージ媒体に通信自在に結合されたプロセッサ
を備え、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体は、命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
線形モデル、1つ又は複数の制約、及び関連した双対空間及び主空間行列アレイに基づいて前記空気経路を制御するモデル予測制御(MPC)コントローラの制約付き最適化問題を定式化することであって、前記線形モデルは、双対及び主空間内における凸二次時変費用関数を備えており、それぞれの前記アレイは、前記1つ又は複数の制約の第1の組合せを備える一意の有効セットリストと関連付けられている、定式化することと、
解を決定するために前記制約付き最適化問題を解くことと、
更新済み有効セットリストでもって前記制約付き最適化問題を更新することと、
それぞれ前記1つ又は複数の制約を充足する要求最適VGTリフト及び要求最適EGR弁流量を生成して前記空気経路を制御するために、前記1つ又は複数の制約のすべての可能な有効セットリストが充足されるまで、前記解くこと及び前記定式化することを反復することであって、
エンジン吸気マニホールド圧に応答する前記要求最適VGTリフトが、前記VGTを制御することにより生成され、
EGR率に応答する前記要求最適EGR弁流量が、前記EGR弁及び前記EGRスロットルを制御することにより生成される、
前記解くこと及び前記定式化することを反復することと、
前記空気経路に関して前記解を実装することと、
を実行させる命令を記憶している、システム。
【0113】
17. 解を決定するために前記制約付き最適化問題を解く前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
前記線形モデルの1つ又は複数の最適化変数を制約なし最小値に設定することと、
評価用の有効セットリストを形成するために、前記1つ又は複数の制約のうちの最も逸脱された可能な制約を決定することと、
前記評価用の有効セットリストを一意の識別子に変換することと、
前記一意の識別子に基づいて主及び双対空間アレイを識別することと、
前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定するようにすることと、
フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
前記フルステップ長を取得することと、
前記最も逸脱された可能な制約を現時点の有効セットリストに追加することと、
すべての可能な制約が充足されるまで、前記最も逸脱された可能な制約を追加することにより、前記決定することを反復することと、
を実行させる命令を備える、前記16に記載のシステム。
【0114】
18. フルステップ長が取得されるべきと決定されるまで、前記決定されたステップ長に基づいて、1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新する前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
パーシャルステップ及び前記フルステップのうちの1つを取得すると決定することと、
前記パーシャルステップが取得されたときに、前記評価用の有効セットリストから前記最も逸脱された可能な制約を除去することと、
前記除去された制約に基づいて、前記1つ又は複数のラグランジュ乗数及び前記1つ又は複数の最適化変数を更新することと、
を実行させる命令を備える、前記17に記載のシステム。
【0115】
19. 前記識別された主及び双対空間アレイでもって主及び双対ステップ方向を算出して、前記算出された主及び双対ステップ方向の間において前記決定された最小値に基づいてステップ長を決定する前記命令は、前記非一時的なコンピュータストレージ媒体に記憶された命令であって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
双対実現可能性の最大双対ステップ長を算出することと、
最大主ステップ長を算出することと、
前記最大双対ステップ長と前記最大主ステップ長とを比較することと、
前記最大主ステップ長が前記最大双対ステップ長未満のときに、主空間内において前記フルステップ長を取得することと、
前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満のときに、パーシャルステップを取得することと、
を実行させる命令を備える、前記17に記載のシステム。
【0116】
20. 前記最大双対ステップ長が前記最大主ステップ長未満であるときにパーシャルステップを取得する前記命令は、ステップを取得しない命令及びパーシャル主ステップを取得する命令のうちの1つを備え、
前記パーシャル主ステップは、前記フルステップ長の一部分であり、
有効制約の数が制約の最大数未満であるときに、前記パーシャル主ステップを取得する前記命令が実行され、かつ、
前記最大数の制約が有効であるときに、ステップを取得しない命令が実行される、
前記19に記載のシステム。