【解決手段】側壁部251と屋根部252との境界部分253の厚さT1が、屋根部252の頂上部252Cの厚さT2、及び、側壁部251の厚さT3よりも大きいことから、境界部分253は高い強度を有している。従って、この境界部分253を支点として一対の側壁部251の先端(屋根部252と反対側の端部)251C同士が近づくように弁部材24が変形することを抑制することができ、耐圧性を向上させることができる。このとき、弁部材24の全体の肉厚を厚くするのではなく、変形の支点となりやすい境界部分253の肉厚を局所的に厚くすることで、弁部材24の内側及び外側において低圧冷媒L及び高圧冷媒Hの流量の低下を抑制することができる。
筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記側面部における前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成された弁座が設けられるとともに、前記他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、
前記弁部材は、スライド方向に直交する断面において、互いに間隔をあけるとともに弁座面から立設するように配置される一対の側壁部と、該一対の側壁部同士を接続する円弧状の屋根部と、を有し、
前記屋根部の外縁を構成する第1円弧の直径は、前記一対の側壁部の外面同士の間隔よりも大きく、
前記第1円弧の中心は、前記屋根部の内縁を構成する第2円弧の中心よりも、前記弁座面の近くに設定され、
前記側壁部と前記屋根部との境界部分における前記第2円弧の径方向に沿った境界厚さは、前記屋根部の頂上部の厚さ、及び、前記側壁部の厚さよりも大きいことを特徴とするスライド式切換弁。
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1又は2に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたようにピンを設ける構成では、弁部材のうちピンが設けられた部分においては変形を抑制できるものの、その他の部分においては変形が生じ得る。従って、弁部材全体の変形を抑制するためには、弁部材そのものを変形しにくくし、耐圧性(圧力差に対する耐変形性能)を向上させることが望ましい。
【0006】
そこで、弁部材の肉厚を厚くすることによって弁部材の強度を向上させる構成が考えられるが、このような構成では、弁部材の内側の空間が狭くなることによって内側を流れる流体の流量が低下したり、弁部材が大型化することによってスライド式切換弁全体が大型化するだけでなく、弁部材の外側を流れる流体の流量が低下したりする。
【0007】
本発明の目的は、流体の流量の低下を抑制しつつ弁部材の耐圧性を向上させることができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記側面部における前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成された弁座が設けられるとともに、前記他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、前記弁部材は、スライド方向に直交する断面において、互いに間隔をあけるとともに弁座面から立設するように配置される一対の側壁部と、該一対の側壁部同士を接続する円弧状の屋根部と、を有し、前記屋根部の外縁を構成する第1円弧の直径は、前記一対の側壁部の外面同士の間隔よりも大きく、前記第1円弧の中心は、前記屋根部の内縁を構成する第2円弧の中心よりも、前記弁座面の近くに設定され、前記側壁部と前記屋根部との境界部分における前記第2円弧の径方向に沿った径方向厚さは、前記屋根部の頂上部の厚さ、及び、前記側壁部の厚さよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
このような本発明によれば、側壁部と屋根部との境界部分における第2円弧の径方向に沿った境界厚さが、屋根部の頂上部の厚さ、及び、側壁部の厚さよりも大きいことから、境界部分が高い強度を有する。従って、この境界部分を支点として一対の側壁部の先端(屋根部と反対側の端部)同士が近づくように弁部材が変形することを抑制することができ、耐圧性を向上させることができる。このとき、弁部材の全体の肉厚を厚くするのではなく、変形の支点となりやすい境界部分の肉厚を局所的に厚くすることで、弁部材の内側及び外側において流体の流量の低下を抑制することができる。
【0010】
この際、本発明のスライド式切換弁では、前記側壁部の厚さは、前記頂上部の厚さの0.8〜1.6倍であり、前記境界厚さは、前記頂上部の厚さの1.2〜2.0倍であることが好ましい。このような構成によれば、流体の流量の低下をさらに抑制しつつ弁部材の耐圧性をさらに向上させることができる。一方、側壁部の厚さが頂上部の厚さに対して小さすぎると、側壁部において充分な耐圧性が得られにくい。また、側壁部の外面がより外側に位置することで側壁部の厚さが頂上部の厚さに対して大きくなりすぎると、弁部材が大きくなってスライド式切換弁全体の大型化を招く可能性がある。また、内面がより内側に位置することで側壁部の厚さが頂上部の厚さに対して大きくなりすぎると、弁部材の内側の空間が狭くなって流量が低下する可能性がある。
【0011】
また、境界厚さが頂上部の厚さに対して充分な厚さを有していないと耐圧性向上の効果が得られにくい。境界厚さが頂上部の厚さに対して大きすぎると、境界部分の外面がより外側に位置したり、内面がより内側に位置したりする。このため、弁部材が大きくなってスライド式切換弁全体の大型化を招いたり、弁部材の内側の空間が狭くなって流量が低下したりする可能性がある。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、前記いずれかに記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。このような本発明によれば、上記のように流体の流量の低下を抑制しつつ弁部材の耐圧性を向上させることができることから、冷凍サイクルシステムの運転効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスライド式切換弁およびスライド式切換弁によれば、側壁部と屋根部との境界部分における境界厚さが、屋根部の頂上部の厚さ、及び、側壁部の厚さよりも大きいことから、流体の流量の低下を抑制しつつ弁部材の耐圧性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、例えば冷凍サイクル1に設けられるものである。冷凍サイクル1は、ルームエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器3と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器4と、室外熱交換器3と室内熱交換器4との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁5と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁6と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁5に限らず、キャピラリでもよい。
【0016】
この冷凍サイクル1は、
図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室外熱交換器3、膨張弁5、室内熱交換器4、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室内熱交換器4、膨張弁5、室外熱交換器3、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、パイロット電磁弁6による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
【0017】
本発明の実施形態に係る四方切換弁10は、
図2にも示すように、円筒状の弁本体11と、この弁本体11の内部にスライド自在に設けられた弁体12と、圧縮機2の吐出口に連通する継手部材としての高圧側導管(D継手)13と、圧縮機2の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)14と、室内熱交換器4に連通する室内側導管(E継手)15と、室外熱交換器3に連通する室外側導管(C継手)16と、を備えて構成されている。
【0018】
円筒状の弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18と、弁本体11の内部に固定された弁座19と、を有し、全体に密閉されたシリンダーとして構成されている。栓体17,18には、それぞれパイロット電磁弁6に連通された導管17A,18Aが接続されている。弁座19には、低圧側導管14、室内側導管15、及び室外側導管16のそれぞれの先端が挿入されるとともに、後述する第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bを構成する開口が設けられている。弁座19の上面19Aは、弁体12をスライド案内する案内面(弁座面)となっている。
【0019】
弁本体11には、その側面部111に開口した複数のポート11A,11B,11C,11Dが形成されている。すなわち、高圧側導管13が接続されて弁本体11の内部に冷媒を流入させる開口部としての流入ポート11Aと、流入ポート11Aに対して弁本体11の側面部111の径方向反対側にて弁座19に開口する他の開口部としての第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bと、が設けられている。流出ポート11Bは、弁本体11の軸方向略中央に設けられ、第一ポート11Cは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの一方側(
図2の左側)に隣り合って設けられ、第二ポート11Dは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの他方側(
図2の右側)に設けられている。
【0020】
流出ポート11Bには、低圧側導管14が接続され、第一ポート11Cに室内側導管15が接続されることで、当該第一ポート11Cが室内側ポートを構成し、第二ポート11Dに室外側導管16が接続されることで、当該第二ポート11Dが室外側ポートを構成している。低圧側導管14、室内側導管15及び室外側導管16は、それぞれ流出ポート11B、第一、二ポート11C,11D周辺の弁本体11及び弁座19にろう付け固定されている。
【0021】
弁体12は、弁本体11の内周面に摺接する左右一対のピストン体21,22と、一対のピストン体21,22を連結して弁本体11の軸方向に沿って延びる連結部材23と、連結部材23に支持される弁部材24と、を有して構成されている。弁本体11の内部空間は、一対のピストン体21,22間に形成される高圧室R1と、一方のピストン体21と栓体17との間に形成される第一作動室R2と、他方のピストン体22と栓体18との間に形成される第二作動室R3と、に仕切られている。
【0022】
連結部材23は、金属板材からなり、弁本体11の軸方向に沿って延び弁座19の上面19Aと平行に設けられる連結板部23Aと、連結板部23Aの一方側端部が折り曲げられてピストン体21に固定される固定片部23Bと、連結板部23Aの他方側端部が折り曲げられてピストン体22に固定される固定片部23Cと、を有して形成されている。連結板部23Aには、弁部材24を保持する保持孔23Dと、冷媒を流通させる2箇所の貫通孔23Eと、が形成されている。
【0023】
弁部材24は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座19に向かって凹状に開口した椀部25と、この椀部25の開口縁から外方に延びるフランジ部26と、を有して形成されている。椀部25は、平面視で長円形状を有したドーム状に形成され、連結部材23の保持孔23Dに挿入されている。椀部25の内部には、流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させて第二ポート11Dを連通させないか、又は、流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させて第一ポート11Cを連通させないような連通空間R4が形成されている。
【0024】
フランジ部26は、弁座19の上面19Aと摺接する摺接面26Aと、この摺接面26Aに開口して椀部25の内部に連通する開口部25Aと、を有している。このフランジ部26は、弁座19と連結部材23との間に配置される。そして、弁部材24に作用する高圧と低圧の圧力差により摺接面26Aが弁座19の上面19Aに密接され、椀部25の連通空間R4が弁座19に対して閉じられるようになっている。
【0025】
以上の四方切換弁10では、パイロット電磁弁6及び導管18Aを介して第二作動室R3に高圧冷媒が導入されると、
図1、2に示すように、ピストン体22が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向一方側(
図1、2の左側)にスライドされ、第一位置に移動される。また、パイロット電磁弁6及び導管17Aを介して第一作動室R2に圧縮機2から吐出された高圧冷媒が導入されると、ピストン体21が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向他方側(
図1、2の右側)にスライドされ、第二位置に移動される。
【0026】
弁体12が第二位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させる。また、椀部25が第一ポート11Cよりも他方側に位置することから、この第一ポート11Cは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第二位置にある状態は、流入ポート11Aと第一ポート11Cとが連通され、流出ポート11Bと第二ポート11Dとが連通された加温モード(暖房運転)となる。
【0027】
この加温モードでは、圧縮機2から吐出された高圧冷媒Hが高圧側導管13及び流入ポート11Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒Hが第一ポート11C及び室内側導管15を介して室内熱交換器4に供給される。また、室外熱交換器3から室外側導管16及び第二ポート11Dを介して低圧冷媒Lが椀部25の連通空間R4に導入され、この連通空間R4を通過した低圧冷媒Lが流出ポート11B及び低圧側導管14を介して圧縮機2に還流される。
【0028】
一方、弁体12が第一位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させる。また、椀部25が第二ポート11Dよりも一方側に位置することから、この第二ポート11Dは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第一位置にある状態は、流入ポート11Aと第二ポート11Dとが連通され、流出ポート11Bと第一ポート11Cとが連通された冷却モード(冷房運転)となる。
【0029】
以上のような四方切換弁10における弁部材24の詳細について、
図3、4に基づいて説明する。ここで、弁部材24のスライド方向をX方向とし、導管13〜16の延在方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向(弁部材24の幅方向)をY方向とする。
図3(B)は、
図3(A)のA1−A1線に沿った断面図(ZX平面に沿った断面図)であり、
図3(C)及び
図4は、
図3(A)のA2−A2線に沿った断面図(YZ平面に沿った断面図)である。尚、
図3(C)及び
図4は、弁部材24におけるX方向中央の断面図であるが、弁部材24は、X方向中央近傍の所定の範囲S1においても同様の断面を有していてもよい。ここで、範囲S1は、例えば
図3(B)に示すように、弁部材24の椀部25の内面及び外面が平坦になっている範囲であればよい。
【0030】
弁部材24の椀部25は、
図3(C)に示すように、互いに間隔をあけるとともに弁座19の上面19Aから立設するように(Z方向に沿って延びるように)配置される一対の側壁部251と、一対の側壁部251同士を接続する円弧状の屋根部252と、を有する。屋根部252は、
図4に示すように、第1円弧252Aによってその外縁が構成され、第2円弧252Bによってその内縁が構成されるものとする。
【0031】
第1円弧252Aの中心である第1中心O1と、弁座19の上面19Aと、のZ方向における間隔を第1高さH1とし、第2円弧252Bの中心である第2中心O2と、弁座19の上面19Aと、のZ方向における間隔を第2高さH2とすると、第1高さH1の方が第2高さH2よりも低く(即ち、第1中心O1の方が第2中心O2よりも弁座19の上面19Aの近くに)設定されている。第1円弧252Aの半径R1は、第2円弧252Bの半径R2よりも大きく、第1円弧252Aの直径は、一対の側壁部251の外面251A同士の間隔D1よりも大きい。第1円弧252Aは外面251Aに接続されていることから、第1円弧252Aの中心角は180°よりも小さい。第2円弧252Bの直径は、側壁部251の内面251B同士の間隔D2と略等しく、第2円弧252Bの中心角は約180°となっている。
【0032】
ここで、側壁部251と屋根部252との境界部分253の詳細について説明する。上記のように第1円弧252Aの中心角が180°よりも小さいことから、第1円弧252Aと外面251Aとは滑らかに接続されず、角部を有する外側接続部分253Aが形成される。一方、第2円弧252Bの中心角が約180°となっていることから、第1円弧252Aと外面251Aとが滑らかに接続されて内側接続部分253Bが形成される。また、外側接続部分253Aの形成位置は、内側接続部分253Bの形成位置よりも高い(弁座19の上面19Aから離れている)。
【0033】
第2中心O2と外側接続部分253Aとを結ぶ方向における(即ち第2円弧252Bの径方向に沿った)境界部分253の厚さ(境界厚さ)T1は、屋根部252の頂上部(Y方向における略中央且つ上面19Aから最も離れた部分)252Cの厚さT2、及び、側壁部251の厚さT3よりも大きい。尚、頂上部252Cの厚さは、第1半径R1と第2半径R2との差から、第1高さH1と第2高さH2との差を減じた値となる。また、側壁部251の厚さT3は、側壁部251の外面251A同士の間隔D1と内面251B同士の間隔D2との差の半分に等しい。
【0034】
さらに、頂上部252Cの厚さT2と境界厚さT1との比は、1:1.2〜2.0であり、頂上部252Cの厚さT2と側壁部251の厚さT3との比は、1:0.8〜1.6であるものとする。また、厚さT2と厚さT3とは、いずれか一方が他方より大きくてもよいし、互いに略等しくてもよい。
【0035】
尚、弁部材24の椀部25の内面及び外面は、
図3(B)に示すように、X方向において滑らかに連続した曲面となっている。範囲S1以外の部分におけるYZ平面に沿った断面は、椀部25の内面及び外面が滑らかな曲面となるようなものであればよく、各部の厚さ、高さおよび半径のそれぞれの関係は、
図4に示す断面と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、側壁部251と屋根部252との境界部分253の厚さT1が、屋根部252の頂上部252Cの厚さT2、及び、側壁部251の厚さT3よりも大きいことから、境界部分253は高い強度を有している。従って、この境界部分253を支点として一対の側壁部251の先端(屋根部252と反対側の端部)251C同士が近づくように弁部材24が変形することを抑制することができ、耐圧性を向上させることができる。このとき、弁部材24の全体の肉厚を厚くするのではなく、変形の支点となりやすい境界部分253の肉厚を局所的に厚くすることで、弁部材24の内側及び外側において低圧冷媒L及び高圧冷媒Hの流量が低下したり、弁部材24及び四方切換弁10全体が大型化したりすることを抑制することができる。
【0037】
また、第1中心O1の方が第2中心O2よりも弁座19の上面19Aの近くに設定されていることで、境界厚さT1を頂上部252Cの厚さT2よりも容易に大きくすることができる。一方、第1中心O1と第2中心O2とが同程度の高さに設定されたり、第1中心O1の方が第2中心O2よりも弁座19の上面19Aから遠くに設定されたりすると、頂上部252Cの厚さT2が大きくなってしまう。このとき、
図5に二点鎖線で示すように、実線で示す
図4の構成に対し、第1中心O1’が第2中心O2よりも高い位置に設定されることで頂上部の厚さが大きくなると、弁部材24全体が高くなるため高圧冷媒Hの流量が低下してしまう。また、一点鎖線で示すように、
図4の構成に対し、第2中心O2’が第1中心O1よりも低い位置に設定されることで頂上部の厚さが大きくなると、椀部25の内側が狭くなるため低圧冷媒Lの流量が低下してしまう。
【0038】
また、第1円弧252Aの直径が一対の側壁部251の外面251A同士の間隔D1よりも大きいことで、境界部分253の厚さT1を側壁部251の厚さT3よりも容易に大きくすることができる。これに対し、第1円弧252Aの直径が一対の側壁部251の外面251A同士の間隔D1と同程度の場合や小さい場合について
図6に示す。二点鎖線で示すように、実線で示す
図4の構成に対し、頂上部の厚さT2を同程度に保ちつつ第1円弧の半径をR1よりも小さいR1’とした場合、境界厚さが小さくなって耐圧性向上の効果が得られなくなってしまう。また、一点鎖線で示すように、実線で示す
図4の構成に対し、外面同士の間隔を、D1よりも大きく且つR1の2倍に等しいD1’とした場合、側壁部の厚さが大きくなって弁部材24が大型化することにより四方切換弁10全体が大型化したりする。
【0039】
さらに、頂上部252Cの厚さT2と境界厚さT1との比が1:1.2〜2.0であり、頂上部252Cの厚さT2と側壁部251の厚さT3との比が1:0.8〜1.6であることで、低圧冷媒L及び高圧冷媒Hの流量の低下をさらに抑制しつつ弁部材24の耐圧性をさらに向上させることができる。一方、側壁部251の厚さT3が頂上部252Cの厚さT2に対して小さすぎると、側壁部251において充分な耐圧性が得られにくい。また、側壁部251の外面251Aがより外側に位置することで側壁部251の厚さT3が頂上部252Cの厚さT2に対して大きくなりすぎると、弁部材24が外側に大きくなって四方切換弁10全体の大型化を招く可能性がある。また、内面251Bがより内側に位置することで側壁部251の厚さT3が頂上部252Cの厚さT2に対して大きくなりすぎると、弁部材24の内側の連通空間R4が狭くなって流量が低下する可能性がある。
【0040】
また、境界厚さT1が頂上部252Cの厚さT2に対して充分な厚さを有していないと耐圧性向上の効果が得られにくい。境界厚さT1が頂上部252Cの厚さT2に対して大きすぎると、境界部分253の外面(外側接続部分253A)がより外側に位置したり、内面(内側接続部分253B)がより内側に位置したりする。このため、弁部材24が外側に大きくなって四方切換弁10全体の大型化を招いたり、弁部材24の内側の連通空間R4が狭くなって流量が低下したりする可能性がある。
【0041】
さらに、上記のように弁部材24の耐圧性が向上することにより、弁部材24が変形してその内外が連通してしまうことを抑制することができる。また、低圧冷媒L及び高圧冷媒Hの流量の低下が抑制されている。従って、このような弁部材24を備える冷凍サイクル1において運転効率の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0043】
例えば、前記実施形態では、頂上部252Cの厚さT2と境界厚さT1との比が1:1.2〜2.0であり、頂上部252Cの厚さT2と側壁部251の厚さT3との比が1:0.8〜1.6であるものとしたが、これらの比率は必要な耐圧性や流量に応じて適宜に設定されればよく、このような範囲外であってもよい。例えば、屋根部の252のY方向寸法が大きく頂上部252Cに変形が生じやすい場合には、頂上部252Cの厚さT2を、境界厚さT1未満の範囲でさらに大きくしてもよい。また、側壁部251のZ方向寸法が小さく変形が生じにくい場合には、側壁部251の厚さT3をさらに小さくしてもよい。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。