(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223275(P2017-223275A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】ゼンマイ式タイムスイッチ
(51)【国際特許分類】
F16H 33/06 20060101AFI20171124BHJP
F16H 31/00 20060101ALI20171124BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20171124BHJP
F16D 41/12 20060101ALI20171124BHJP
F16F 1/10 20060101ALI20171124BHJP
H01H 43/12 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
F16H33/06
F16H31/00 B
F16D7/02 A
F16D41/12 Z
F16F1/10
H01H43/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-118451(P2016-118451)
(22)【出願日】2016年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 敏臣
【テーマコード(参考)】
3J059
3J062
【Fターム(参考)】
3J059AB11
3J059BA37
3J059BB01
3J059GA50
3J062AA33
3J062AB36
3J062AC01
3J062BA19
3J062CF38
3J062CG01
3J062CG62
3J062CG84
(57)【要約】
【課題】回転軸の周りに筒状部材を設け、ラチェット部材のゼンマイ保持部を筒状部材の外周面で開口する切欠きに嵌めた構造を採用した場合でも、ゼンマイ保持部と回転軸との接触を防止することのできるゼンマイ式タイムスイッチを提供すること。
【解決手段】ゼンマイ式タイムスイッチ1において、回転軸3と第1歯車71との間に摩擦結合部160からなるトルクリミッタ16が構成されている。回転軸3の周りには、ゼンマイ2が巻回された円筒状の筒状部材4と、第1歯車71に対する軸線L周りの一方側への相対回転が阻止されたラチェット部材5とが配置されている。筒状部材4は、周方向に遊びをもって回転軸3と一体に回転可能であり、ラチェット部材5においてゼンマイの内側端部を保持するゼンマイ保持部55が嵌った切欠き46と、切欠き46の径方向内側でゼンマイ保持部55と回転軸3との間に介在する仕切り壁47とが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼンマイを駆動源とするゼンマイ式タイムスイッチであって、
軸線周りに回転可能な回転軸と、
前記回転軸と同軸状に配置され、前記回転軸にトルクリミッタを介して結合された歯車と、
外周面に前記ゼンマイが巻回され、周方向に遊びをもって前記回転軸と一体に回転可能な円筒状の筒状部材と、
前記軸線周りの一方側に回転する際に前記歯車と係合し、前記軸線周りの他方側に回転する際には前記歯車との係合が解除される係合爪、および前記ゼンマイの内側端部を保持するゼンマイ保持部を備えたラチェット部材と、
を有し、
前記筒状部材には、前記筒状部材の外周面で開口して前記ゼンマイ保持部が嵌った切欠きと、前記切欠きの径方向内側で前記ゼンマイ保持部と前記回転軸との間に介在する仕切り壁と、が設けられていることを特徴とするゼンマイ式タイムスイッチ。
【請求項2】
前記トルクリミッタは、前記回転軸と前記歯車との間に設けられた摩擦結合部であることを特徴とする請求項1に記載のゼンマイ式タイムスイッチ。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記回転軸に嵌る第1円筒部と、前記第1円筒部より大の内径をもって前記第1円筒部の軸線方向の一方側に連接し、前記切欠きおよび前記仕切り壁が設けられた第2円筒部と、を有し、
前記仕切り壁は、前記第1円筒部の前記軸線方向の前記一方側の端面と繋がっており、
前記筒状部材は、前記回転軸から径方向外側に突出した軸部が前記仕切り壁に周方向から当接した際に前記回転軸と一体に回転可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のゼンマイ式タイムスイッチ。
【請求項4】
前記仕切り壁の径方向内側の面は、前記第1円筒部の内周面と連続した面を構成し、前記回転軸の外周面に接していることを特徴とする請求項3に記載のゼンマイ式タイムスイッチ。
【請求項5】
前記筒状部材には、径方向外側に突出して前記ラチェット部材を前記歯車とは反対側から面で支持する支持板部を備えていることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のゼンマイ式タイムスイッチ。
【請求項6】
前記筒状部材には、前記ラチェット部材に形成された凸部が嵌って前記ラチェット部材の周方向の位置決めを行う凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか一項に記載のゼンマイ式タイムスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源にゼンマイを用いたゼンマイ式タイムスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機、電子レンジ、トースター等の家電製品には、洗濯時間や調理時間を調節するタイマが設けられている。タイマとしては、使用者がつまみを回すことによってゼンマイを巻き上げ、巻き上げられたゼンマイを駆動源として接点を開閉させるゼンマイ式タイムスイッチが提案されている。
【0003】
かかるゼンマイ式タイムスイッチでは、例えば、つまみが連結された回転軸と、回転軸と同軸状に配置された歯車とが設けられており、歯車の胴部の周りにゼンマイが配置される。また、回転軸と歯車との間にトルクリミッタを設け、回転軸を回転させた後、回転軸を逆回転させた際の歯車の回転を防止することによって、ゼンマイの破損や緩みを防止する構造が採用されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−47275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゼンマイ式タイムスイッチでは、周方向の遊びをもって回転軸と一体に回転可能な円筒状の筒状部材を回転軸の周りに配置し、筒状部材の外周側にゼンマイを巻回した構成が採用される場合がある。この場合、歯車と係合するワンウエイクラッチ用の係合爪、およびゼンマイの内側端部を保持するゼンマイ保持部を備えたラチェット部材を筒状部材と歯車との間に設け、ゼンマイ保持部については、筒状部材の外周面で開口する切欠きに嵌めてラチェット部材と筒状部材とを一体に回転可能とする。
【0006】
しかしながら、上記構成では、回転軸および筒状部材を回転させてゼンマイを巻き上げた際、ラチェット部材のゼンマイ保持部がゼンマイによって径方向内側に押圧されてゼンマイ保持部が内側に変形し、回転軸に食い込むことがある。このような状態になると、例えば、回転軸を回転させた後、回転軸を逆回転させた際、筒状部材と歯車との間にトルクリミッタを設けたにもかかわらず、回転軸の回転がラチェット部材に伝達されてしまい、ゼンマイの破損やゼンマイの緩みが発生する等、好ましくない。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回転軸の周りに筒状部材を設け、ラチェット部材のゼンマイ保持部を筒状部材の外周面で開口する切欠きに嵌めた構造を採用した場合でも、ゼンマイ保持部と回転軸との接触を防止することのできるゼンマイ式タイムスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、ゼンマイを駆動源とするゼンマイ式タイムスイッチであって、軸線周りに回転可能な回転軸と、前記回転軸と同軸状に配置され、前記回転軸にトルクリミッタを介して結合された歯車と、外周面に前記ゼンマイが巻回され、周方向に遊びをもって前記回転軸と一体に回転可能な円筒状の筒状部材と、前記軸線周りの一方側に回転する際に前記歯車と係合し、前記軸線周りの他方側に回転する際には前記歯車との係合が解除される係合爪、および前記ゼンマイの内側端部を保持するゼンマイ保持
部を備えたラチェット部材と、を有し、前記筒状部材には、前記筒状部材の外周面で開口して前記ゼンマイ保持部が嵌った切欠きと、前記切欠きの径方向内側で前記ゼンマイ保持部と前記回転軸との間に介在する仕切り壁と、が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、回転軸を回転させると、筒状部材が回転し、ラチェット部材のゼンマイ保持部が回転するので、ゼンマイを巻き上げることができる。そして、回転軸を開放すると、ゼンマイが解放されるので、ゼンマイの駆動力によって歯車および回転軸を回転させることができる。従って、回転軸によって設定した角度位置から回転軸が原点位置まで戻るまでの時間が設定時間となる。ここで、ゼンマイの内側の端部を保持するラチェット部材のゼンマイ保持部は、筒状部材の切欠きに嵌っているが、筒状部材には、切欠きの径方向内側にゼンマイ保持部と回転軸との間に介在する仕切り壁が設けられている。このため、ゼンマイを巻き上げた際、ゼンマイによってゼンマイ保持部が径方向内側に押圧されても、ゼンマイ保持部と回転軸との接触が仕切り壁によって阻止されるので、ゼンマイ保持部が回転軸に食い込むという事態が発生しにくい。
【0010】
本発明において、前記筒状部材は、前記回転軸に嵌る第1円筒部と、前記第1円筒部より大の内径をもって前記第1円筒部の軸線方向の一方側に連接し、前記切欠きおよび前記仕切り壁が設けられた第2円筒部と、を有し、前記仕切り壁は、前記第1円筒部の前記軸線方向の前記一方側の端面と繋がっており、前記筒状部材は、前記回転軸から径方向外側に突出した軸部が前記仕切り壁に周方向から当接した際に前記回転軸と一体に回転可能である態様を採用することができる。かかる態様によれば、仕切り壁の周方向の強度が大であるため、仕切り壁が損傷しにくい。
【0011】
本発明において、前記仕切り壁の径方向内側の面は、前記第1円筒部の内周面と連続した面を構成し、前記回転軸の外周面に接している態様を採用することができる。かかる態様によれば、仕切り壁の強度が大であるため、仕切り壁が損傷しにくい。
【0012】
本発明において、前記筒状部材には、径方向外側に突出して前記ラチェット部材を前記歯車とは反対側から面で支持する支持板部を備えている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ラチェット部材を確実に支持することができるので、ラチェット部材の変形を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記筒状部材には、前記ラチェット部材に形成された凸部が嵌って前記ラチェット部材の周方向の位置決めを行う凹部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ラチェット部材を筒状部材に適正に位置合わせすることができるので、ゼンマイ式タイムスイッチを組み立てる際、ラチェット部材のゼンマイ保持部を筒状部材の切欠きに嵌めるのが容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、回転軸を回転させると、筒状部材が回転し、ラチェット部材のゼンマイ保持部が回転するので、ゼンマイを巻き上げることができる。そして、回転軸を開放すると、ゼンマイが解放されるので、ゼンマイの駆動力によって歯車および回転軸を回転させることができる。従って、回転軸によって指定した角度位置に回転軸が到達したまでの時間を指定時間とすることができる。ここで、ゼンマイの内側の端部を保持するラチェット部材のゼンマイ保持部は、筒状部材の切欠きに嵌っているが、筒状部材には、切欠きの径方向内側にゼンマイ保持部と回転軸との間に介在する仕切り壁が設けられている。このため、ゼンマイを巻き上げた際、ゼンマイによってゼンマイ保持部が径方向内側に押圧されても、ゼンマイ保持部と回転軸との接触が仕切り壁によって阻止されるので、ゼンマイ保持部が回転軸に食い込むという事態が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチの平面図である。
【
図2】
図1に示すゼンマイ式タイムスイッチを伝達機構に用いた歯車に沿って切断したときの説明図である。
【
図3】本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチの回転軸周辺の構成を示す説明図である。
【
図4】本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチの回転軸周辺を軸線に沿って切断したときの半断面図である。
【
図5】本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチの回転軸の周辺を軸線に対して直交する方向に切断したときの断面図である。
【
図6】本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチの筒状部材の周辺の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1を説明する。なお、以下の説明において、回転軸3の軸線L周りにおいて、ゼンマイ2を巻き上げる方向を時計周りCWとし、ゼンマイ2が巻き戻る方向を反時計周りCCWとして説明する。また、軸線L方向において、カバー12から回転軸3が突出する側を一方側L1とし、ケース11側を他方側L2として説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1の平面図である。
図2は、
図1に示すゼンマイ式タイムスイッチ1を伝達機構7に用いた歯車に沿って切断したときの説明図である。なお、
図1では、カバー等の図示を省略してある。
【0018】
図1および
図2に示すゼンマイ式タイムスイッチ1は、洗濯機、電子レンジ、トースター等の家電製品において、洗濯時間や調理時間を調節するタイマである。ゼンマイ式タイムスイッチ1は、駆動源としてのゼンマイ2と、ゼンマイ2の巻き上げや時間の設定等を行う回転軸3と、ゼンマイ2の動力を伝達する伝達機構7と、ゼンマイ2の付勢力の伝達速度を調節する調速機構8とを備えている。これらの部材等は、ケース11とカバー12の内側に配置され、回転軸3においてカバー12から突出した部分にはつまみ(図示せず)が連結される。つまみやカバー12には、時間を設定するための目盛等の指標が付されている。回転軸3には、伝達機構7の第1歯車71が支持されており、回転軸3と第1歯車71とは、回転軸3の軸線L周りに一体に回転可能である。
【0019】
本形態では、
図3等を参照して後述するように、回転軸3の周りに筒状部材4が配置され、筒状部材4は、周方向に遊びをもって回転軸3と一体に回転可能である。また、筒状部材4の周りには、ゼンマイ2が巻回されているとともに、筒状部材4の周りには、筒状部材4と一体に回転可能なラチェット部材5が配置されている。ここで、ラチェット部材5は、ゼンマイ2の内側端部を保持するゼンマイ保持部55を有しており、ゼンマイ2の外側端部は、ケース11等の保持されている。従って、回転軸3を軸線L周りに時計周りCWの方向に所定の角度位置まで回転させて時間を設定する際、筒状部材4が軸線L周りに時計周りCWの方向に回転する。従って、ラチェット部材5のゼンマイ保持部55が軸線L周りに時計周りCWの方向に回転するので、ゼンマイ2を巻き上げることができる。そして、回転軸3を開放すると、ゼンマイ2が解放されるので、ゼンマイ2の駆動力によって回転軸3および第1歯車71を軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転させることができる。
【0020】
伝達機構7は、第1歯車71、第2歯車72、第3歯車73、および第4歯車74を有している。第2歯車72、第3歯車73、および第4歯車74は各々、ケース11とカバ
ー12とに両端が支持された支軸720、730、740に回転可能に支持されている。第1歯車71は平歯車であり、第2歯車72は、第1歯車71と噛み合う小径歯車721と、小径歯車721より大径の大径歯車722とを有している。第3歯車73は、第2歯車72の大径歯車722と噛み合う小径歯車731と、小径歯車731より大径の大径歯車732とを有している。第4歯車74は、第3歯車73の大径歯車732と噛み合う小径歯車741と、小径歯車741より大径の大径歯車742とを有している。
【0021】
調速機構8は、がんぎ車81と振り子82とを有しており、がんぎ車81および振り子82は各々、ケース11とカバー12とに両端が支持された支軸810、820に回転可能に支持されている。がんぎ車81は、第4歯車74の大径歯車742と噛み合う平歯車811と、周方向に等間隔に設けられたがんぎ爪812とを有している。振り子82は、がんぎ車81のがんぎ爪に係合する2つの振り子爪821を有している。従って、がんぎ車81が回転すると、振り子82が一方方向に回転し、2つの振り子爪821の一方が、複数のがんぎ爪812のうち一つに係合し、がんぎ車81の回転を阻止する方向に負荷を掛ける。この負荷を押し返すようにがんぎ車81がさらに回転すると、振り子82は他方方向に回動する。このように、振り子82が揺動しながら、振り子爪821ががんぎ爪812に対して出入りする。これにより、ゼンマイ2の付勢力の強弱によらず、振り子82の揺動の周期に応じてがんぎ車81が等速回転する。その結果、伝達機構7を構成する各歯車(第1歯車71、第2歯車72、第3歯車73、および第4歯車74)、および回転軸3も一定の速度で回転する。
【0022】
回転軸3等にはカム部材91が設けられている。このため、回転軸3が回転し、設定した時間が経過した際に所定の角度位置に到達すると、カム部材91によって可動部材95が駆動され、接点板92が駆動される。その結果、2つの端子96、97は、短絡した状態と離間した状態とに切り換わるので、洗濯機、電子レンジ、トースター等の家電製品では、2つの端子96、97の状態に基づいて、モータやヒータへの給電を制御することができる。
【0023】
(回転軸3周辺の構成)
図3は、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1の回転軸3周辺の構成を示す説明図であり、回転軸3周辺の斜視図、および回転軸3周辺の分解斜視図である。
図4は、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1の回転軸3周辺を軸線Lに沿って切断したときの半断面図である。
図5は、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1の回転軸3の周辺を軸線Lに対して直交する方向に切断したときの断面図である。
図6は、本発明を適用したゼンマイ式タイムスイッチ1の筒状部材4の周辺の説明図であり、
図6(a)、(b)は、筒状部材4の周辺の斜視図、および筒状部材4の周辺の分解斜視図である。なお、
図3では、第1歯車71およびカム部材91を一点鎖線で示してある。
【0024】
図3および
図4に示すように、ゼンマイ式タイムスイッチ1の回転軸3の周りには、止め輪31と、第1歯車71と、外周面にゼンマイ2が巻回された円筒状の筒状部材4と、板状のラチェット部材5とが回転軸3に対して同軸状に配置されている。また、回転軸3の周りにはカム部材91が固定されている。筒状部材4は、軸線L方向の他方側L2で止め輪31によって軸線L方向の他方側L2の移動が阻止された状態にある。
【0025】
図3、
図4、
図5および
図6に示すように、筒状部材4は、回転軸3に嵌る第1円筒部41と、第1円筒部41より大の内径をもって第1円筒部41の軸線L方向の一方側L1に連接した第2円筒部42とを有しており、第1円筒部41が軸受部となって回転軸3に対して相対回転な状態にある。
【0026】
図6に示すように、第2円筒部42において、軸線L方向の一方側L1の端面420か
ら軸線L方向の他方側L2に離間した位置には、相対向する部分から互いに反対方向に向けて突出した支持板部43、44が突出し、一方の支持板部43には貫通穴430が形成されている。端面420には、支持板部43に対して約120°の角度をなす角度方向に溝状の凹部421、422が形成されている。第2円筒部42の外周面424には、軸線L方向に延在するリブ425が等角度間隔の3個所に設けられている。
【0027】
筒状部材4の第2円筒部42において、支持板部43が形成されている部分には、外周側に向けて開口した切欠き46が形成されており、切欠き46は、支持板部43の貫通穴430と繋がっている。切欠き46は、軸線L方向の他方側L2に設けられた第1切欠き部461と、第1切欠き部461に対して軸線L方向の一方側L1で繋がる第2切欠き部462とからなり、第1切欠き部461の周方向の寸法は、第2切欠き部462の周方向の寸法より短い。
【0028】
筒状部材4の第2円筒部42において、第1切欠き部461の径方向内側には、第1切欠き部461を径方向内側で塞ぐ仕切り壁47が形成されており、仕切り壁47は、第1円筒部41の軸線L方向の一方側L1の端面410と繋がっている。また、仕切り壁47の径方向内側の面470は、第1円筒部41の内周面411と連続した面を構成し、
図5に示すように、回転軸3の外周面30に接している。
【0029】
図3に示すように、回転軸3には軸線Lに対して直交する方向に穴36が形成されており、穴36には、軸体37が嵌っている。この状態では、軸体37の一方の端部(軸部370)は、回転軸3の外周面30から突出している。このため、回転軸3が軸線L周りに回転した際、軸部370が仕切り壁47と周方向から当接した際には、回転軸3と筒状部材4とは軸線L周りに一体に回転するが、軸部370と仕切り壁47とが周方向で離間しているときには、回転軸3が軸線L周りに回転しても、筒状部材4は回転しない。このようにして、筒状部材4は、周方向に遊びをもって回転軸3と一体に回転可能な構成になっている。
【0030】
ラチェット部材5は、筒状部材4の第2円筒部42の周りに位置する円環部51と、円環部51の外縁において180°の角度方向で離間する位置から軸線L周りの反時計回りCCWに延在する2つの腕部52、53とを有している。腕部52、53は各々、
図6を参照して説明した筒状部材4の支持板部43、44によって軸線L方向の他方側L2から面で支持されている。
【0031】
腕部52、53の先端部は、軸線L方向の一方側L1に向けて斜めに折れ曲がった爪部520、530になっている。かかる爪部520、530は、第1歯車71の軸線L方向の他方側L2の面に形成された複数の係合凹部715(
図4参照)と係合している。従って、ラチェット部材5の爪部520、530と第1歯車71の係合凹部715とは、ワンウエイクラッチ15を構成している。従って、第1歯車71に対してラチェット部材5が軸線L周りに反時計周りCCW(軸線L周りの一方側)の方向に回転しようとした際には、爪部520、530が第1歯車71と係合し、第1歯車71に対するラチェット部材5の軸線L周りの反時計周りCCWの相対回転が阻止される。これに対して、第1歯車71に対してラチェット部材5が軸線L周りに時計周りCW(軸線L周りの他方側)の方向に回転しようとした際には、腕部52、53が撓んで爪部520、530による係合が解除されるため、第1歯車71に対するラチェット部材5の軸線L周りの時計周りCWの相対回転が許容される。
【0032】
円環部51の内周縁において腕部52の根元に相当する部分からは、軸線L方向の他方側L2に向けて突出した後、径方向外側に屈曲したゼンマイ保持部55が形成されており、ゼンマイ保持部55は、ゼンマイ2の内側端部を保持している。本形態において、ゼン
マイ保持部55は、筒状部材4の切欠き46に嵌って、先端側は、第1切欠き部461から径方向外側に突出している。ここで、ゼンマイ保持部55は、第1切欠き部461に嵌っているため、第1切欠き部461の周方向の両側の壁部はゼンマイ保持部55に当接している。このため、ラチェット部材5と筒状部材4とは、軸線L周りに時計周りCWの方向および反時計周りCCWの方向のいずれにおいても一体に回転する。
【0033】
また、円環部51の内周縁において、ゼンマイ保持部55に対して約120°の角度をなす角度方向には径方向内側に突出して筒状部材4の凹部421、422に嵌る凸部511、512が形成されている。従って、ラチェット部材5は、凹部421、422に凸部511、512が嵌ることによって、筒状部材4に対して周方向に位置決めされている。
【0034】
第1歯車71の円筒部712は、止め輪76、円筒状のスリーブ77、および摩擦板78によってラチェット部材5に向けて押し付けられている。従って、第1歯車71と回転軸3との間には、摩擦板78と第1歯車71の円筒部712との摩擦結合部160によるトルクリミッタ16が構成されている。
【0035】
(動作)
本形態のゼンマイ式タイムスイッチ1において、回転軸3を軸線L周りに時計周りCWの方向に回転させると、回転軸3の軸部370によって筒状部材4の仕切り壁47が軸線L周りに時計周りCWの方向に押圧されるので、筒状部材4が軸線L周りに時計周りCWの方向に回転する。従って、ラチェット部材5のゼンマイ保持部55が筒状部材4によって軸線L周りに時計周りCWの方向に押圧されて回転するので、ゼンマイ2を巻き上げることができる。その際、回転軸3と第1歯車71との間には、摩擦結合部160(トルクリミッタ16)が構成されているので、第1歯車71は回転しない。なお、ラチェット部材5が軸線L周りに時計周りCWの方向に回転する際、ラチェット部材5と第1歯車71との間のワンウエイクラッチ15は、ラチェット部材5が軸線L周りに時計周りCWの方向に回転することを許容するので、ラチェット部材5は、軸線L周りに時計周りCWの方向に回転する。
【0036】
その際、設定時間を短い方に設定しなおす際には、回転軸3を軸線L周りに時計周りCWの方向に回転させた後、回転軸3を逆方向(軸線L周りに時計周りCWの方向)に回転させる。その際には、回転軸3の軸部370は、筒状部材4の仕切り壁47から離間するので、筒状部材4は軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転しない。また、回転軸3と第1歯車71との間では、摩擦結合部160(トルクリミッタ16)で空周りするので、第1歯車71は回転しない。また、ラチェット部材5が軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転しようとしても、かかる回転は、ラチェット部材5と第1歯車71との間のワンウエイクラッチ15によって阻止される。従って、ラチェット部材5および筒状部材4が軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転しないので、ゼンマイ2が巻き戻ることがない。
【0037】
その後、回転軸3を開放すると、ゼンマイ2が解放されるので、ゼンマイ2の駆動力によって、ラチェット部材5のゼンマイ保持部55が軸線L周りに反時計周りCCWの方向に押圧されると、第1歯車71は、ラチェット部材5によって軸線L周りに反時計周りCCWの方向に押圧され、回転する。また、回転軸3は、第1歯車71によって軸線L周りに反時計周りCCWの方向に押圧され、軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転する。また、回転軸3は、筒状部材4の仕切り壁47によって軸部370が軸線L周りに反時計周りCCWの方向に押圧されるので、軸線L周りに反時計周りCCWの方向に回転する。従って、回転軸3によって設定した角度位置から回転軸3が原点位置まで戻るまでの時間を設定時間とすることができる。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のゼンマイ式タイムスイッチ1では、ゼンマイ2の内側の端部を保持するラチェット部材5のゼンマイ保持部55は、筒状部材4の切欠き46の第1切欠き部461に嵌っているが、筒状部材4には、第1切欠き部461の径方向内側にゼンマイ保持部55と回転軸3との間に介在する仕切り壁47が設けられている。このため、回転軸3を時計周りCWの方向に回転させてゼンマイ2を巻き上げた際、ゼンマイ2によってゼンマイ保持部55が径方向内側に押圧されても、ゼンマイ保持部55と回転軸3との接触が仕切り壁47によって阻止されるので、ゼンマイ保持部55が回転軸3に食い込むという事態が発生しにくい。従って、例えば、回転軸3および筒状部材4を時計周りCWの方向に回転させてゼンマイ2を巻き上げた後、回転軸3を逆方向(反時計周りCCWの方向)に回転させて設定時間を短い方に設定しなおす際、回転軸3の軸部370が筒状部材4の仕切り壁47に当接するまでの間に、ラチェット部材5が回転軸3に連動して逆方向に回転するという事態が発生しにくいので、ゼンマイ2の破損やゼンマイ2の緩み等の発生を抑制することができる。
【0039】
また、筒状部材4において、仕切り壁47は、第1円筒部41の端面410と繋がっている。また、仕切り壁47の径方向内側の面は、第1円筒部41の内周面411と連続した面を構成している。このため、仕切り壁47の強度が大であるため、回転軸3の軸部370が仕切り壁47に周方向から当接して回転軸3と筒状部材4とが一体に回転する態様であっても、仕切り壁47が損傷しにくい。
【0040】
また、筒状部材4には、径方向外側に突出してラチェット部材5を第1歯車71とは反対側から面で支持する支持板部43、44が設けられているため、ラチェット部材5を確実に支持することができる。それ故、ラチェット部材5の変形を抑制することができる。
【0041】
また、筒状部材4には、ラチェット部材5に形成された凸部511、512が嵌ってラチェット部材5の周方向の位置決めを行う凹部421、422が形成されている。このため、ラチェット部材5を筒状部材4に適正に位置合わせすることができるので、ゼンマイ式タイムスイッチ1を組み立てる際、ラチェット部材5のゼンマイ保持部55を筒状部材4の切欠き46に嵌めるのが容易である。
【符号の説明】
【0042】
1…ゼンマイ式タイムスイッチ、2…ゼンマイ、3…回転軸、4…筒状部材、5…ラチェット部材、7…伝達機構、8…調速機構、11…ケース、12…カバー、15…ワンウエイクラッチ、16…トルクリミッタ、37…軸体、41…第1円筒部、42…第2円筒部、43、44…支持板部、46…切欠き、47…仕切り壁、51…円環部、52、53…腕部、55…ゼンマイ保持部、71…第1歯車(歯車)78…摩擦板、160…摩擦結合部、370…軸部、421、422…凹部、425…リブ、430…貫通穴、461…第1切欠き部、462…第2切欠き部、511、512…凸部、520、530…爪部、715…係合凹部、L…軸線