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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223342(P2017-223342A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20171124BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20171124BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20171124BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20171124BHJP
【FI】
   F16H25/22 F
   F16D65/18
   F16D121:24
   F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-121169(P2016-121169)
(22)【出願日】2016年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 明義
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛史
【テーマコード(参考)】
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA46
3J058CC15
3J058CC63
3J058FA01
3J062AA02
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA16
3J062CD12
3J062CD22
3J062CD60
(57)【要約】
【課題】コイルスプリングの破損の抑制または防止が図られたボールねじ装置を提供すること。
【解決手段】ボールねじ装置は、内周にねじが形成された雌ねじ溝を含むボールナットと、外周にねじが形成された雄ねじ溝を含み、ボールナットに挿通されたねじ軸と、雌ねじ溝と雄ねじ溝とにより形成される軌道路Kに収容された複数のボールを含むボール列と、軌道路に収容され、ボール列の第1の端部のボールをボール列側に弾性押圧する第1のコイルスプリング51とを含む。第1のコイルスプリング51は、軌道路への収容前の状態において、軌道路に沿う螺旋状をなしている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周と、前記内周にねじが形成された雌ねじ溝とを含むボールナットと、
外周と、前記外周にねじが形成された雄ねじ溝とを含み、前記ボールナットに挿通されたねじ軸と、
前記雌ねじ溝と前記雄ねじ溝とにより形成される軌道路に収容された複数のボールを含むボール列と、
前記軌道路に収容され、前記ボール列の端部のボールを前記ボール列側に弾性押圧するコイルスプリングとを含み、
前記コイルスプリングは、前記軌道路への収容前の状態において、前記軌道路に沿う螺旋状をなしている、ボールねじ装置。
【請求項2】
前記コイルスプリングは、前記軌道路に収容されかつ前記ボールねじ装置への無負荷の状態において、当該コイルスプリングの軸心が前記軌道路の中心円に対して径方向の内側に寄っている、請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記コイルスプリングは、螺旋状の当該コイルスプリングの外径が前記雌ねじ溝の溝底径よりも小径で、かつ当該螺旋状のコイルスプリングの内径が前記雄ねじ溝の溝底径よりも大径である、請求項1に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ軸の外周の雄ねじ溝とボールナットの内周の雌ねじ溝との間にボール列を介在させるボールねじ装置において、ボール列端のボールと、ボールナットの端部に設けられたポケット状凹部との間に、コイルスプリングを介在させることが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
この種のボール非循環タイプのボールねじ装置では、低い軸力が負荷される状態でねじ軸が回転駆動されるときには、コイルスプリングは収縮しないので、ボール列のボールとボールナットとは相対移動しない。したがって、ボール列のボールとねじ軸との間に滑りを生じながら、ボールナットがストロークする。
【0003】
一方、高い軸力が負荷される状態でねじ軸が回転駆動されるときには、コイルスプリングが収縮し、ボールが、ボールナットおよびねじ軸の双方に対して転動しつつ、ボールナットがストロークする。これにより高効率のねじ伝動が達成される。コイルスプリングは、軌道路への収容前の自由状態で直線状をなしており、螺旋状に曲げられた状態で軌道路に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−505072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合、軌道路への収容状態にあるコイルスプリングには、直線状に復元する方向の弾性力が作用しており、この弾性力を受けてコイルスプリングの外側縁部がボールナットの内周に押し付けられる。
このような構成では、コイルスプリングの収縮時に、螺旋状のコイルスプリングの外側縁部がボールナットの内周に擦れるおそれがある。その結果、コイルスプリングに、摩耗等の破損が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、コイルスプリングの破損の抑制または防止が図られたボールねじ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、内周(30b)と、前記内周にねじが形成された雌ねじ溝(33)とを含むボールナット(30)と、外周(28a)と、前記外周にねじが形成された雄ねじ溝(34)とを含み、前記ボールナットに挿通されたねじ軸(28)と、前記雌ねじ溝と前記雄ねじ溝とにより形成される軌道路(K)に収容された複数のボール(29)を含むボール列(L)と、前記軌道路に収容され、前記ボール列の端部(La)のボール(29a)を前記ボール列側に弾性押圧するコイルスプリング(51,71)とを含み、前記コイルスプリングは、前記軌道路への収容前の状態において、前記軌道路に沿う螺旋状をなしている、ボールねじ装置(22)を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記コイルスプリングは、前記軌道路に収容されかつ前記ボールねじ装置への無負荷の状態において、当該コイルスプリングの軸心(C2)が前記軌道路の中心円(C1)に対して径方向(R)の内側に寄っている、請求項1に記載のボールねじ装置である。
請求項3に記載の発明は、前記コイルスプリングは、螺旋状の当該コイルスプリングの外径(D12)が前記雌ねじ溝の溝底径(DG2)よりも小径で、かつ当該螺旋状のコイルスプリングの内径(D11)が前記雄ねじ溝の溝底径(DG1)よりも大径である、請求項1に記載のボールねじ装置である。
【0009】
なお、前記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によれば、軌道路への収容前の状態において、コイルスプリングが軌道路に沿う螺旋状をなしているので、コイルスプリングが軌道路に収容された状態において、コイルスプリングに、直線状に復元する方向の弾性力が作用しない。そのため、低い軸力が負荷される状態でねじ軸が回転駆動されても、軌道路への収容状態にあるコイルスプリングを、ボールナットの内周に押し付けない状態に保持することが可能である。したがって、コイルスプリングの収縮時等に、コイルスプリングの外側縁部がボールナットの内周に擦れることを抑制または防止でき、これにより、コイルスプリングの破損の抑制または防止が図られたボールねじ装置を提供できる。
【0011】
請求項2によれば、コイルスプリングが軌道路に収容され、かつボールねじ装置への無負荷の状態において、コイルスプリングの軸心が軌道路の中心円に対して径方向の内側に寄っているので、コイルスプリングの収縮時等に、コイルスプリングの外側縁部がボールナットの内周に擦れることを、より効果的に抑制または防止できる。
請求項3によれば、螺旋状のコイルスプリングの外径が雌ねじ溝の溝底径よりも小径で、かつ螺旋状のコイルスプリングの内径が雄ねじ溝の溝底径よりも大径であるので、コイルスプリングが軌道路に収容された状態で、当該コイルスプリングがボールナットの内周やねじ軸の外周に接触することを抑制できる。これにより、コイルスプリングの収縮時等に、コイルスプリングの外側縁部がボールナットの内周に擦れたり、コイルスプリングの内側縁部がねじ軸の外周に擦れたりすることを、より効果的に抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るボールねじ装置が適用されたブレーキ装置の概略断面図であり、非制動時を示している。
図2図2は、前記ボールねじ装置の構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、ブレーキ装置の要部の拡大断面図である。
図4図4は、ボールナットの拡大断面図である。
図5図5は、第1のコイルスプリングを説明するための図である。
図6図6Aおよび図6Bは、図4の切断面線VI−VIに沿って切断した断面図である。図6Aには、第1のコイルスプリングの第2の端部側が示され、図6Bには、第1のコイルスプリングの第1の端部側が示されている。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係るボールねじ装置が適用されたブレーキ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボールねじ装置22が適用されたブレーキ装置1の概略断面図であり、非制動時を示している。ブレーキ装置1は、自動車等の車輪と一体回転するディスク2に摩擦による制動力を付与する装置である。
ブレーキ装置1は、たとえばナックル(図示しない)等に移動可能に支持されたフローティングタイプのキャリパ3と、ディスク2を挟んで配置され、キャリパ3によって互いに接近、離間可能に支持された第1のバックアッププレート4および第2のバックアッププレート5と、第1のバックアッププレート4および第2のバックアッププレート5にそれぞれ固定され、ディスク2の対応する側面をそれぞれ押圧可能な第1のパッド6および第2のパッド7とを備えている。
【0014】
キャリパ3は、互いに固定された第1のボディ8および第2のボディ9と、第2のボディ9に固定されたカバー10とを備えている。第1のボディ8は、第2のボディ9の一端が固定された本体部11と、本体部11に直交状に連結された腕部12とを備えている。第2のバックアッププレート5は、腕部12に固定されている。
第2のボディ9は、第1のボディ8の本体部11に固定された箱状のシリンダ13(ブレーキシリンダに相当)と、シリンダ13の開口を開閉可能に塞ぐ蓋16と、シリンダ13から延設された延設板14とを備える。
【0015】
シリンダ13は、アキシャル方向AXに対向する第1の端部151および第2の端部152を有し、第1の端部151が開放された筒状部15と、筒状部15の第2の端部152に連結された端面板16とを含む。シリンダ13には、アキシャル方向AXに移動可能なピストン17(ブレーキピストンに相当)が収容されている。
ピストン17の一端171は、シリンダ13の一端(筒状部15の第1の端部151に相当)の開放部を通してディスク2側へ突出し、第1のバックアッププレート4に固定されている。
【0016】
ピストン17の外周17aとシリンダ13の内周(筒状部15の内周15bに相当)との両者の間には、両者間を封止する封止部材18が介在している。封止部材18は、シリンダ13の内周(筒状部15の内周15b)に形成された収容溝に収容されるOリングであってもよい。
ピストン17の外周17aとシリンダ13の内周(筒状部15の内周15b)との両者は、両者に設けられたキー溝に跨がって配置されるキー19を介して連結されている。キー19を用いたキー結合を介して、ピストン17のアキシャル方向AXの移動が案内されると共に、シリンダ13に対するピストン17の回転が規制されている。
【0017】
図示しない油圧経路から、シリンダ13内に、ピストン17をディスク2側へ付勢する油圧が供給されるようになっていてもよい。その場合、シリンダ13とピストン17とで油圧アクチュエータが構成される。
キャリパ3は、両パッド6,7をディスク2に押圧して制動力を発生させる機能を果たす。キャリパ3は、電動モータ20と、電動モータ20の回転を減速する減速装置21と、電動モータ20から減速装置21を介して伝達される回転運動をピストン17のアキシャル方向AXの直線運動に変換するボールねじ装置22とを備えている。
【0018】
電動モータ20は、第2のボディ9の延設板14に固定されたモータハウジング23と、出力軸24とを備える。
減速装置21は、電動モータ20の出力軸24の一端に一体回転可能に取り付けられた駆動ギヤ25と、駆動ギヤ25に噛み合うアイドルギヤ26と、アイドルギヤ26に噛み合う被動ギヤ27とを備えている。アイドルギヤ26は、第2のボディ9に回転可能に軸支されている。カバー10は、減速装置21を覆うようにして、第2のボディ9に固定されている。
【0019】
図2は、ボールねじ装置22の構成を示す分解斜視図である。図2において、ピストン17を含めた構成をボールねじ装置22として表している。
図1および図2に示すように、ボールねじ装置22は、入力部材としてのねじ軸28と、ねじ軸28に複数のボール29を介して螺合した回転可能な出力部材としてのボールナット30と、止め輪40と、ピストン17とを備えている。ねじ軸28は、ボールナット30を挿通している。ねじ軸28は、第2のボディ9によって、軸方向(アキシャル方向AX)に移動不能に且つ回転可能に支持されている。ボールナット30は、第2のボディ9によって、軸方向移動可能に且つ回転不能に支持されている。以下、ねじ軸28およびボールナット30の半径方向を、径方向Rとして説明する。
【0020】
図1に示すように、具体的には、ねじ軸28は、蓋16に設けられた支持孔31を挿通した状態に配置されている。ねじ軸28は、ねじ軸支持機構32によって、回転可能に且つ軸方向(アキシャル方向AX)に移動不能に支持されている。ねじ軸支持機構32は、ねじ軸28に一体に設けられ、ねじ軸28の一端281付近においてねじ軸28の外周に設けられたフランジ部282(図2では図示を省略)と、フランジ部282と蓋16との間に、ねじ軸28の軸方向に沿って介装されたスラスト軸受41および調芯ユニット42とを含む。また、ねじ軸支持機構32は、軸方向(アキシャル方向AX)の荷重を検出するための筒状の軸力センサ44と、軸力センサ44の外周に配置される第1のロックナット45と、軸力センサ44および第1のロックナット45に対し、軸方向(アキシャル方向AX)の開口側(図2の右方向)に配置された第2のロックナット46とを含む。
【0021】
ねじ軸28の一端281には、継手43を介して被動ギヤ27が、一体回転可能に連結されている。
図3は、ブレーキ装置1の要部の拡大断面図である。図3に示すように、ボールナット30は、外周30aと、雌ねじ溝33が形成された内周30bとを備える。ねじ軸28は、雄ねじ溝34が形成された外周28aを備える。雌ねじ溝33および雄ねじ溝34の間に列をなすボール29が介在している。
【0022】
ボールナット30の外周30aは、ピストン17の内周17bの回転規制部35と係合する回転規制部36と、ピストン17の内周17bの円筒面部37と嵌合した円筒面部38とを備える。両回転規制部35,36同士の係合により、ピストン17とボールナット30との相対回転が規制されている。
ボールナット30は、ボールナット軸方向(アキシャル方向AX)に関して、ディスク2側の第1の端部301と、第1の端部301とは反対側の第2の端部302とを備える。
【0023】
ボールナット30の第1の端部301が、ピストン17の内周17bの位置決め段部39に接触している。また、ピストン17の内周17bに設けられた環状溝に嵌合した止め輪40が、ボールナット30の第2の端部302の端面303に係合している。これにより、ピストン17とボールナット30とが、アキシャル方向AXに一体移動可能に連結されている。
【0024】
電動モータ20の出力軸24の回転が、減速装置21を介して伝達されて、ねじ軸28が回転すると、ボールナット30が、アキシャル方向AXに移動する。このとき、キー19による案内によって、ピストン17が、ボールナット30と共にアキシャル方向AXに一体に移動する。
図4は、ボールナット30の拡大断面図である。
【0025】
図4に示すように、ボールナット30の雌ねじ溝33および雄ねじ溝34間に螺旋状の軌道路Kが形成されている。ボールナット30の雌ねじ溝33内に保持された複数のボール29は、螺旋状の軌道路Kに沿って並ぶボール列Lを構成している。ボール列Lは、第1の端部Laと第2の端部Lbとを備える。
ボールねじ装置22は、軌道路Kにおいてボール列Lの両側に配置された第1のコイルスプリング(コイルスプリング)51および第2のコイルスプリング52を備える。
【0026】
第1のコイルスプリング51は、ボール列Lの第1の端部Laのボール(端部のボール)29aを、ボール列L側に弾性押圧する第1の端部(端部)511と、第2の端部512とを備える。第1のコイルスプリング51は、たとえば軌道路Kの約半周分に相当する長さを有している。第1のコイルスプリング51の円滑な伸縮動作を実現するため、第1のコイルスプリング51の外径(径方向の幅)は、軌道路Kよりも小径に設けられている。
【0027】
図5は、第1のコイルスプリング51を説明するための図である。
第1のコイルスプリング51は、軌道路Kへの収容前の状態(すなわち、自由状態)において、軌道路Kに沿う螺旋状をなしている。第1のコイルスプリング51は、たとえばばね鋼線を用いて形成されたコイリング後の直線状の第1のコイルスプリング51を、軌道路Kに沿う螺旋状に曲げ、その状態において、たとえば約300〜350℃の低温焼き鈍し(テンパー処理)を施すことにより設けられる。コイルスプリングを螺旋状に曲げた状態で当該コイルスプリングの残留応力が除去されるので、これにより、低温焼き鈍し後のコイルスプリングが、軌道路Kに沿う螺旋状に設けられる。ゆえに、軌道路Kへの収容前の状態で螺旋状の第1のコイルスプリング51を設けることができる。
【0028】
図6Aおよび図6Bは、図4の切断面線VI−VIに沿って切断した断面図である。図6Aには、第1のコイルスプリング51の第2の端部512側が示され、図6Bには、第1のコイルスプリング51の第1の端部511側が示されている。
図5図6Aおよび図6Bに示すように、第1のコイルスプリング51は、螺旋状の第1のコイルスプリング51の内径D1が雄ねじ溝34の溝底径DG1よりも小径である。そのため、第1のコイルスプリング51の軌道路Kへの収容状態では、第1のコイルスプリング51の内側縁部51bがねじ軸28の外周28aに接触し、外周28aを弾性的に押圧している。
【0029】
図4に示すように、第2のコイルスプリング52は、ボール列Lの第2の端部Lbのボール29bを、ボール列L側に弾性押圧する第1の端部521と、第2の端部522とを備える。第2のコイルスプリング52の円滑な伸縮動作を実現するため、第2のコイルスプリング52の外径(径方向の幅)は、軌道路Kよりも小径に設けられている。
図4および図6Aに示すように、ボールナット30の内周30bには、第1のストッパとしての凹部60が形成されている。凹部60は、たとえば、アキシャル方向AXからの鍛造加工により形成されている。
【0030】
図6Aに示すように、ボールねじ装置22は、凹部60に保持されて、凹部60と第1のコイルスプリング51の第2の端部512との間に介在する第1のストッパボール81を備える。第1のコイルスプリング51の第2の端部512は、第1のストッパボール81を介して凹部60によって受けられている。
図6Bに示すように、第1のコイルスプリング51の第1の端部511は、第1の端部Laのボール29aと直接係合している。すなわち、第1のコイルスプリング51の第1の端部511は、第1の端部Laのボール29aに受けられている。
【0031】
図4に示すように、ボールねじ装置22は、軌道路Kに突出する第2のストッパとしての凸部70を備える。凸部70は、たとえば、ボールナット30を貫通するストッパピン(図示しない)の一部であって、雌ねじ溝33内に突出する部分により構成されている。
ボールねじ装置22は、軌道路Kに収容されて、凸部70と第2のコイルスプリング52の第2の端部522との間に介在する第2のストッパボール82を備える。第2のコイルスプリング52の第2の端部522は、軌道路Kに収容された第2のストッパボール82を介して、凸部70により受けられている。
【0032】
低い軸力が負荷される状態でねじ軸28が回転駆動されるときには、コイルスプリング51,52は収縮しないので、ボール列Lのボール29とボールナット30とは相対移動しない。したがって、ボール列Lのボール29とボールナット30の雌ねじ溝33との間に滑りを生じながら、ボールナット30がストロークする。
一方、高い軸力が負荷される状態でねじ軸28が回転駆動されるときには、コイルスプリング51,52が収縮し、ボール列Lのボール29が、ボールナット30およびねじ軸28の双方に対して転動しつつ、ボールナット30がストロークする。これにより高効率のねじ伝動が達成される。
【0033】
ブレーキ装置1の非制動状態から制動状態への切換え時には、高い軸力が負荷されながら、ねじ軸28が所定の一方向に回転駆動される。このとき、第1のコイルスプリング51が収縮するようになる。一方、ブレーキ装置1の制動状態から非制動状態への切換え時には、高い軸力が負荷されながら、ねじ軸28が前記一方向とは反対方向に回転駆動される。このとき、第2のコイルスプリング52が収縮するようになる。
【0034】
以上によりこの実施形態によれば、軌道路Kへの収容前の状態において、第1のコイルスプリング51が軌道路Kに沿う螺旋状をなしているので、第1のコイルスプリング51が軌道路Kに収容された状態において、第1のコイルスプリング51に、直線状に復元する方向の弾性力が作用しない。そのため、低い軸力が負荷される状態でねじ軸28が回転駆動されるときには、軌道路Kへの収容状態にある第1のコイルスプリング51を、ボールナット30の内周30bに押し付けない状態に保持することが可能である。したがって、第1のコイルスプリング51の収縮時に、第1のコイルスプリング51の外側縁部51aがボールナット30の内周30bに擦れることを抑制または防止でき、これにより、第1のコイルスプリング51の破損の抑制または防止が図られたボールねじ装置22を提供できる。
【0035】
また、第1のコイルスプリング51が軌道路Kに収容され、かつボールねじ装置22への無負荷の状態において、螺旋状の第1のコイルスプリング51の内径D1が雄ねじ溝34の溝底径DG1よりも小径である。そのため、第1のコイルスプリング51の軌道路Kへの収容状態では、第1のコイルスプリング51の内側縁部51bがねじ軸28の外周28aに接触し、外周28aを弾性的に押圧している。これにより、第1のコイルスプリング51の収縮時に、第1のコイルスプリング51の外側縁部51aがボールナット30の内周30bに擦れることを、より効果的に抑制または防止できる。
【0036】
図7は、本発明の他の実施形態に係るボールねじ装置22Aが適用されたブレーキ装置の断面図である。図7に示す実施形態において、図1図6Bに示す実施形態に示された各部に対応する部分には、図1図6Bの場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。ボールねじ装置22Aが、ボールねじ装置22と相違する点は、軌道路Kへの収容前の状態において軌道路Kに沿う螺旋状をなすコイルスプリングとして、第1のコイルスプリング51に代えて、第1のコイルスプリング51とは径の異なる第1のコイルスプリング(コイルスプリング)71を採用した点にある。
【0037】
この実施形態によれば、第1のコイルスプリング71は、軌道路Kへの収容前の状態(すなわち、自由状態)において、第1のコイルスプリング71の外径D12が雌ねじ溝33の溝底径DG2よりも小径で、かつ第1のコイルスプリング71の内径D11が雄ねじ溝34の溝底径DG1よりも大径である。そのため、第1のコイルスプリング71が軌道路Kに収容された状態で、第1のコイルスプリング71がボールナット30の内周30bやねじ軸28の外周28aに接触することを抑制できる。これにより、第1のコイルスプリング71の収縮時に、螺旋状の第1のコイルスプリング71の外側縁部71aがボールナット30の内周30bに擦れたり、螺旋状の第1のコイルスプリング71の内周71bがねじ軸28の外周28aに擦れたりすることを、より効果的に抑制または防止できる。
【0038】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、図1図6Bに示す実施形態において、螺旋状の第1のコイルスプリング51の内径D1が雄ねじ溝34の溝底径DG1と同等か、溝底径DG1よりも大径であってもよい。この場合、第1のコイルスプリング51の軌道路Kへの収容状態において、第1のコイルスプリング51の内側縁部51bがねじ軸28の外周28aに接触しなくても、第1のコイルスプリング51の軸心C2(図6Aおよび図6B参照)が軌道路Kの中心円(軌道路Kの中心を通る同心円)C1に対して径方向Rの内側に寄っていればよい。
【0039】
また、前述の各実施形態において、軌道路Kへの収容前の状態において軌道路Kに沿う螺旋状をなすコイルスプリングが、第1のコイルスプリング51,71ではなく、第2のコイルスプリング52に適用されていてもよい。このような構成によれば、第2のコイルスプリング52が軌道路Kに収容された状態において、第2のコイルスプリング52に、直線状に復元する方向の弾性力が作用しない。これにより、第2のコイルスプリング52の収縮時に、螺旋状の第2のコイルスプリング52の外側縁部がボールナット30の内周30bに擦れることを、抑制または防止できる。この場合、第2のコイルスプリング52が軌道路Kに収容されかつボールねじ装置22への無負荷の状態において、第2のコイルスプリング52の軸心が軌道路Kの中心円C1に対して径方向Rの内側に寄っていてもよいし、第2のコイルスプリング52の外径が雌ねじ溝33の溝底径DG2よりも小径で、かつ第2のコイルスプリング52の内径が雄ねじ溝34の溝底径DG1よりも大径であってもよい。
【0040】
また、前述の各実施形態において、ボール列Lの途中部の1箇所または複数箇所にコイルスプリングからなる中間ばねを介在させてもよく、この中間ばねに、軌道路Kへの収容前の状態において軌道路Kに沿う螺旋状をなすコイルスプリングが適用されていてもよい。この場合、中間ばねが軌道路Kに収容されかつボールねじ装置22への無負荷の状態において、中間ばねの軸心が軌道路Kの中心円C1に対して径方向Rの内側に寄っていてもよいし、中間ばねの外径が雌ねじ溝33の溝底径DG2よりも小径で、かつ中間ばねの内径が雄ねじ溝34の溝底径DG1よりも大径であってもよい。
【0041】
その他、本発明は特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0042】
22…ボールねじ装置、22A…ボールねじ装置、28…ねじ軸、28a…外周、29…ボール、29a…第1の端部のボール(端部のボール)、30…ボールナット、30b…内周、33…雌ねじ溝、34…雄ねじ溝、51…第1のコイルスプリング(コイルスプリング)、511…第1の端部(端部)、C1…中心円、C2…軸心、D1…内径、D12…外径、D11…内径、DG1…雄ねじ溝の溝底径、DG2…雌ねじ溝の溝底径、K…軌道路、L…ボール列、La…第1の端部(端部)、R…径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7