【解決手段】複数のヒータ20は、それぞれヒータ20に接続された過熱蒸気ラインに配置された過熱蒸気温度センサ51により検出された過熱蒸気検出温度に基づいて連続的に該ヒータ20の燃焼量を制御するヒータ制御部21を備え、台数制御部60は、要求負荷に応じて過熱を行うヒータ20を設定する台数設定部64と、台数設定部64により過熱を行うヒータに設定されたヒータ20に対して、ヘッダ圧力センサ52により検出された過熱蒸気ヘッダ検出圧力値が所定の圧力値を保つように、ヒータ20に対して流量調整弁14の開度を連続的に制御する蒸気流量制御部65と、を備える蒸気過熱システム1。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の蒸気過熱システムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の蒸気過熱システム1は、蒸気発生装置としてのボイラから供給される飽和蒸気を過熱し、負荷機器に供給するシステムである。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0016】
図1に示すように、蒸気過熱システム1は、複数のヒータ20と、蒸気供給ライン10と、燃料供給ライン30と、過熱蒸気供給ライン40と、過熱蒸気ヘッダ43と、ヘッダ圧力センサ52と、ヘッダ温度センサ53と、制御部としての台数制御部60と、を備える。
【0017】
[ヒータ20について]
ヒータ20は、飽和蒸気を過熱して過熱蒸気を生成するものであり、本実施形態の蒸気過熱システム1では、複数のヒータ20が並列配置される。各ヒータ20は、ガス焚きの燃焼バーナ方式の蒸気過熱装置であり、これらのヒータ20で過熱された過熱蒸気が集合されて負荷機器(図示省略)に供給される。
【0018】
ヒータ20の構成について説明する。本実施形態のヒータ20は、筐体25と、蒸気流通パイプ26と、バーナ(図示省略)と、ヒータ制御部21と、を備える。
【0019】
筐体25は、その内部に蒸気流通パイプ26やバーナ等を収容する。蒸気流通パイプ26は、筐体25の内部にらせん状に形成されて配置される。バーナは、筐体25の上部であって、らせん状に形成される蒸気流通パイプ26の内側の領域に配置される。
また、バーナは、パイロットバーナ及びメインバーナによって構成されている。本実施形態では、蒸気流通パイプ26の内側の領域(燃焼室)をプレパージするプレパージ工程、パイロットバーナを着火する着火トライ工程、パイロットバーナのみを燃焼させるパイロットオンリー工程、メインバーナを点火するメイントライ工程等を経て燃焼が開始される。バーナの燃焼によって蒸気流通パイプ26を通過する飽和蒸気が過熱されて過熱蒸気が生成される。
【0020】
ヒータ制御部21は、着火や燃焼等に関するバーナの制御や燃焼停止をヒータ20ごとに行う。本実施形態の各ヒータ20のヒータ制御部21は、後述する台数制御部60に電気的にそれぞれ接続されている。
ヒータ制御部21は、台数制御部60からの制御信号に基づいて、ヒータ20の燃焼制御の開始、又はヒータ20の燃焼停止を制御する。また、ヒータ制御部21は、台数制御部60からの制御信号に基づいて、過熱蒸気の目標温度及び要求される過熱蒸気量(以下「必要蒸気量」ともいう)を設定する。
【0021】
ヒータ制御部21は、必要蒸気量に基づいて流量調整弁14の開度を調整する。
このように、台数制御部60は、ヒータ20が必要蒸気量を生成するように、ヒータ制御部21を介して、流量調整弁14の開度を調整する。
【0022】
また、ヒータ制御部21は、過熱蒸気温度センサ51により検出される過熱蒸気検出温度が目標温度を維持するように、連続的にバーナの燃焼量を制御する。
このように、ヒータ20によって過熱される過熱蒸気の過熱蒸気温度は、各ヒータ側で個別に比例制御される。
【0023】
[蒸気供給ライン10]
蒸気供給ライン10は、飽和蒸気をヒータ20に供給する供給経路である。本実施形態の蒸気供給ライン10は、メイン蒸気供給ライン11と、該メイン蒸気供給ライン11から分岐する複数の分岐蒸気供給ライン12と、を備える。
【0024】
メイン蒸気供給ライン11は、蒸気発生装置としてのボイラ(図示省略)に接続されている。本実施形態のメイン蒸気供給ライン11は、ボイラで生成された飽和蒸気が集合する飽和蒸気ヘッダ(図示省略)を介してボイラに接続されている。飽和蒸気ヘッダに集合した飽和蒸気は、このメイン蒸気供給ライン11を通じて複数に分岐する分岐蒸気供給ライン12にそれぞれ送られる。
【0025】
分岐蒸気供給ライン12は、その上流側の端部がメイン蒸気供給ライン11に接続されるとともに、その下流側の端部がヒータ20の蒸気流通パイプ26の上流側端部に接続される。分岐蒸気供給ライン12は、ヒータ20の台数に応じて複数分岐している。メイン蒸気供給ライン11を通じて送られた飽和蒸気は、分岐蒸気供給ライン12を通じて各ヒータ20に供給される。
【0026】
また、本実施形態の分岐蒸気供給ライン12には、蒸気流量計13と、流量調整弁14と、ドレンライン15と、スチームトラップ16と、ドレン排出弁17と、が配置される。
【0027】
蒸気流量計13は、分岐蒸気供給ライン12のそれぞれに配置され、分岐蒸気供給ライン12を流れる蒸気の流量を測定する。蒸気流量計13の測定情報は、直接又はヒータ制御部21を介して台数制御部60に送信される。
【0028】
流量調整弁14は、分岐蒸気供給ライン12における蒸気流量計13の下流側にそれぞれ配置される。流量調整弁14は、分岐蒸気供給ライン12を流れる蒸気の流量を調整可能に構成される電動式の流量調整弁である。前述したように、流量調整弁14は、台数制御部60により、ヒータ制御部21を介して制御される。
【0029】
ドレンライン15は、その上流側の端部が分岐蒸気供給ライン12における流量調整弁14の下流側にそれぞれ接続される。ドレンライン15の下流側は、2つに分岐している。
【0030】
スチームトラップ16は、ドレンライン15のそれぞれに配置される。ドレンは、スチームトラップ16で分離され、回収される。
【0031】
ドレン排出弁17は、ドレンライン15のそれぞれに、スチームトラップ16と並列に配置される。ドレン排出弁17は、例えば、開閉制御可能な電磁弁により構成される。
なお、ドレン排出弁17によりヒータ20の起動時の初期ドレンを排出させることができる。
【0032】
[燃料供給ライン30]
燃料供給ライン30は、燃料ガスをヒータ20に供給する燃料ガス供給経路である。本実施形態の燃料供給ライン30は、メイン燃料供給ライン31と、メイン燃料供給ライン31から分岐する複数の分岐燃料供給ライン32と、を備える。
【0033】
メイン燃料供給ライン31は、その上流側の端部が燃料ガス供給源(図示省略)に接続される。燃料ガス供給源から供給された燃料ガスは、メイン燃料供給ライン31を通じて複数に分岐する分岐燃料供給ライン32にそれぞれ送られる。
【0034】
分岐燃料供給ライン32は、その上流側の端部がメイン燃料供給ライン31に接続されるとともに、その下流側の端部がヒータ20に接続される。分岐燃料供給ライン32は、ヒータ20の台数に応じて複数分岐している。メイン燃料供給ライン31を通じて送られた燃料ガスは、分岐燃料供給ライン32を通じて各ヒータ20に供給される。
【0035】
また、本実施形態の分岐燃料供給ライン32には、燃料調整弁33が配置される。燃料調整弁33は、分岐燃料供給ライン32を流れる燃料ガスの流量を調整可能に構成される電動弁である。
【0036】
[過熱蒸気供給ライン40]
過熱蒸気供給ライン40は、ヒータ20によって過熱された過熱蒸気を負荷機器に供給するための供給経路である。本実施形態の過熱蒸気供給ライン40は、複数の過熱蒸気ライン41と、該過熱蒸気ライン41が接続される過熱蒸気集合ライン42と、を備える。
【0037】
過熱蒸気ライン41は、その上流側の端部がヒータ20の蒸気流通パイプ26の下流側の端部に接続される。また、過熱蒸気ライン41の下流側の端部は、過熱蒸気集合ライン42に接続される。ヒータ20で過熱された過熱蒸気は、この過熱蒸気ライン41を通じて過熱蒸気集合ライン42に送られる。また、過熱蒸気ライン41には、逆止弁等が配置されておらず、過熱蒸気が双方向に移動可能になっている。
【0038】
過熱蒸気ライン41には、過熱蒸気温度センサ51が配置される。過熱蒸気温度センサ51は、複数の過熱蒸気ライン41のそれぞれに対応して配置され、ヒータ20によって過熱された過熱蒸気の温度を測定する。過熱蒸気温度センサ51の測定情報は、ヒータ制御部21に送信される。
過熱蒸気温度センサ51は、例えば過熱蒸気ライン41又は蒸気過熱装置であるヒータ20に配置することができる。
【0039】
過熱蒸気集合ライン42は、その下流側の端部が過熱蒸気ヘッダ43に接続される。また、過熱蒸気集合ライン42についても、逆止弁等が配置されておらず、過熱蒸気が双方向に移動可能になっている。
【0040】
過熱蒸気ヘッダ43は、過熱蒸気供給ライン40を通じて各ヒータ20で過熱された過熱蒸気を集合し、負荷機器(図示省略)に供給する。
【0041】
ヘッダ圧力センサ52は、過熱蒸気ヘッダ43の内部の圧力を測定する。ヘッダ温度センサ53は、過熱蒸気ヘッダ43の内部の温度を測定する。これらの測定情報は、台数制御部60に送信される。なお、ヘッダ圧力センサ52により検出される過熱蒸気ヘッダ43の内部の圧力値を過熱蒸気ヘッダ検出圧力値という。
【0042】
次に、複数のヒータ20を制御する蒸気過熱システム1の制御部としての台数制御部60について説明する。
図2は、台数制御部60の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、台数制御部60は、複数のヒータ20の動作を制御する。台数制御部60は、余力蒸気量算出部61と、増台判定部62と、減台判定部63と、台数設定部64と、蒸気流量制御部65と、を備える。
【0043】
[暖気運転モードと通常運転モードについて]
台数制御部60の備える各機能部を説明する前に、ヒータ20の過熱蒸気を発生させるための運転モードについて説明する。ヒータ20は、必要蒸気量を発生させて運転する通常運転モードと、運転開始時に、通常運転モードよりも少ない蒸気量を供給し、目標温度まで過熱蒸気の昇温を行う暖気運転モードと、を有する。
ヒータ制御部21は、台数制御部60から受信する燃焼制御信号に基づいて、ヒータ20を暖気運転モードで燃焼制御を開始させる。
ヒータ制御部21は、過熱蒸気温度センサ51により検出される過熱蒸気検出温度が例えば目標温度に到達した場合、ヒータ20の暖気運転モードでの燃焼制御を終了させて通常運転モードでの燃焼制御に移行させる。
通常運転モードに移行すると、ヒータ制御部21は、必要蒸気量に基づいて流量調整弁14の開度を調整する。また、ヒータ制御部21は、過熱蒸気温度センサ51により検出される過熱蒸気検出温度が目標温度を維持するように、連続的にバーナの燃焼量を制御する。
以上を前提として、台数制御部60の各機能部について説明する。
【0044】
台数制御部60は、要求負荷に応じて過熱を行うヒータ20を増台又は減台する制御を行う。このため、まず増台又は減台するための判定条件について説明する。
【0045】
[増台判定について]
増台判定するためのパラメータとなる余力蒸気量と変動可能蒸気量について説明する。
余力蒸気量とは、燃焼中の各ヒータ20について各蒸気流量計13により検出された蒸気検出流量値の合計(実際蒸気流量)と、燃焼中の各ヒータ20の生成することができる最大蒸気流量値の合計と、の差となる蒸気量を意味する。
余力蒸気量算出部61は、燃焼中の各ヒータ20について各蒸気流量計13により検出された蒸気検出流量値の合計(実際蒸気流量)と、燃焼中の各ヒータ20の最大蒸気流量値の合計と、の差である余力蒸気量を算出する。
【0046】
変動可能蒸気量とは、予め設定される、負荷変動に対する負荷追従が燃焼中のヒータ20の燃焼率を調整することで対応できる蒸気量を意味する。
例えば、ヒータ1台あたりの最大蒸気流量の値を変動可能蒸気量とした場合、余力蒸気量が変動可能蒸気量以上あれば、ヒータ1台あたりの最大蒸気流量に相当する負荷変動が発生したと仮定しても、燃焼中のヒータ20に対する燃焼率を調整することで負荷追従できる。他方、余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回る場合、ヒータ20の燃焼台数を1台増やして、変動可能蒸気量を確保する制御を行う。
【0047】
[増台判定部62について]
このような増台制御を行うため、増台判定部62は、余力蒸気量算出部61により算出する余力蒸気量等に基づいて増台判定条件を満たすか否かを検知する。
具体的には、増台判定部62は、余力蒸気量算出部61により算出された余力蒸気量が予め設定された変動可能蒸気量を下回る状態が予め設定された第1時間(増台判定時間)継続するか否かを検知する。ここで、余力蒸気量が予め設定された変動可能蒸気量を下回った状態が第1時間(増台判定時間)継続する条件を増台判定条件という。
【0048】
[減台判定について]
次に、蒸気負荷減少に伴い、ヒータ20の燃焼台数を1台減少させるか否かを判定する減台判定について説明する。本実施形態におけるヒータ20には、蒸気の最低流量が設定されている。このため、燃焼率が一定レベルを下回った場合に、台数制御部60は、燃焼中のヒータ20を1台ずつ燃焼停止させる制御(「減台制御」という)を行う。ただし、低負荷時は、最低燃焼台数の燃焼を維持する制御を行うように構成される。
【0049】
[減台判定部63について]
減台判定部63は、燃焼中のヒータ20の台数が予め設定された最小燃焼台数を超えている場合に、燃焼中のヒータ20の燃焼率が予め設定された減台燃焼率以下となる状態が、予め設定された第2時間(減台判定時間)継続するか否かを検知する。ここで、燃焼率が予め設定された減台燃焼率以下の状態が、予め設定された第2時間(減台判定時間)継続する条件を減台判定条件という。
【0050】
[台数設定部(増台時)について]
台数設定部64は、要求負荷に応じて過熱を行うヒータ20を設定する。
台数設定部64は、増台判定部62により予め設定された増台判定条件を満たすことが検知された場合、燃焼停止中のヒータ20を選択し、新たに過熱を行うヒータ20として設定する。
具体的には、台数設定部64は、増台判定部62により増台判定条件を満たすことが検知された場合、例えば、燃焼停止中のヒータであって積算燃焼停止時間が最も長いヒータ20を選択し、新たに過熱を行うヒータとして設定することができる。
【0051】
台数制御部60は、台数設定部64によって燃焼対象に設定されたヒータ20のヒータ制御部21に燃焼開始信号を送信する。台数制御部60から燃焼開始信号を受信したヒータ制御部21は、ヒータ20の燃焼制御を開始する。
台数制御部60は、台数設定部64により新たに過熱を行うヒータ20を燃焼開始させるにあたって、ヒータ20を1台ずつ順に稼働させていくものとする。すなわち、暖機運転モードで稼働しているヒータがないことを条件に(全てのヒータ20が稼働していない、あるいは、燃焼中のヒータ20は全て通常運転モードで稼働していることを条件に)、新たなヒータ20を燃焼開始すなわち、暖機運転モードから稼働させる。
【0052】
[台数設定部(減台時)について]
台数設定部64は、減台判定部63により予め設定された減台判定条件を満たすことが検知された場合、燃焼中のヒータ20を選択し、燃焼停止させるヒータ20として設定する。
具体的には、台数設定部64は、減台判定部63により減台判定条件を満たすことが検知された場合、例えば、暖気完了のヒータであって積算燃焼時間が最も長いヒータ20を選択し、燃焼停止するヒータとして設定することができる。
【0053】
台数制御部60は、台数設定部64によって設定された燃焼停止対象のヒータ20のヒータ制御部21に燃焼停止信号を送信する。台数制御部60から燃焼停止信号を受信したヒータ制御部21は、ヒータ20の燃焼を停止させるとともに、当該ヒータ20に接続される分岐蒸気供給ライン12に配置される流量調整弁14を閉じる。
台数制御部60は、台数設定部64により選択された燃焼中のヒータ20を燃焼停止させるにあたって、ヒータ20を1台ずつ順に燃焼停止させていく。すなわち、暖機運転モードで稼働しているヒータがないことを条件に(全てのヒータ20が稼働していない、あるいは、燃焼中のヒータ20は全て通常運転モードで稼働していることを条件に)、燃焼中のヒータ20を燃焼停止させる。
【0054】
以上のように台数設定部64を構成することで、低負荷時においても、必要な蒸気流量を確保するとともに、過熱蒸気の温度を目標温度に維持することができる。また、負荷装置の負荷変動に応じて必要過熱蒸気量に対する追従性を向上させることができ、過熱蒸気供給の安定化を図ることができる。
【0055】
[過熱蒸気量の制御]
次に、蒸気流量制御部65について説明する。蒸気流量制御部65は、台数設定部64により過熱を行うヒータに設定されたヒータ20について、ヘッダ圧力センサ52により検出された過熱蒸気ヘッダ検出圧力値が所定の圧力値を保つように、流量調整弁14の開度を連続的に制御する。
最初に、台数設定部64により過熱を行うヒータに設定されたヒータ20(以下、「燃焼制御対象ヒータ20」という)が全て通常運転モードで稼働している場合(以下、「通常運転時」という)について説明する。
【0056】
[通常運転時]
通常運転時、蒸気流量制御部65は、ヘッダ圧力センサ52により検出される過熱蒸気ヘッダ検出圧力値が所定の圧力値を保つように、必要蒸気量を算出する。蒸気流量制御部65は、算出した必要蒸気量に基づいて、各燃焼制御対象ヒータ20の蒸気発生量が同じになるように、各燃焼制御対象ヒータ20の必要蒸気発生量を算出する。蒸気流量制御部65は、算出した燃焼制御対象ヒータ20の必要蒸気発生量に基づいて、ヒータ制御部21を介して、各ヒータ20に対応する流量調整弁14の開度を連続的に制御する。
なお、前述したように、各ヒータ20の燃焼量(燃焼率)については、過熱蒸気温度センサ51により検出される過熱蒸気検出温度が目標温度を維持するように、各ヒータ制御部21により、個別に比例制御される。
【0057】
[暖気運転時]
次に、燃焼制御対象ヒータ20のうち1台が暖気運転モードの場合(以下、「暖気運転時」という)の蒸気流量制御部65の処理について説明する。
蒸気流量制御部65は、台数設定部64により新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20に対して、パージ等の後、暖気運転モードで運転させる。
より具体的には、蒸気流量制御部65は、予め設定された第1の流量にて飽和蒸気を供給するように、当該ヒータ20に対応する流量調整弁14をヒータ制御部21を介して制御する。
ここで、第1の流量は、通常運転モードにおいて要求される蒸気量よりも少ない蒸気量を設定する。例えば、通常運転モードにおける最大の蒸気量の10〜30%に設定してもよい。こうすることで、過熱される蒸気の温度を早く上昇させることができ、過熱蒸気の発生に係る蒸気供給量及び熱量を削減でき、暖気時間を短縮することができる。また、オーバーヒートを防止することもできる。なお、第1の流量として通常運転モードにおける最大の蒸気量の10〜30%に設定することは一例であって、これに限定されるものではない。
【0058】
蒸気流量制御部65は、暖気運転モードのヒータ20が通常運転モードに移行するまでの間、必要過熱蒸気量の増加に対応するため、暖気運転モード以外の通常運転モードで稼働しているヒータ20の蒸気流量を一時的に増加させる。こうすることで、目標温度付近の過熱蒸気の流量を増加させることで、負荷機器に供給される過熱蒸気を供給することができる。
【0059】
[暖気運転終了時の蒸気量調整]
蒸気流量制御部65は、新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20によって過熱された過熱蒸気の温度である過熱蒸気温度センサ51の温度検出値が所定温度(例えば、目標温度)以上となった場合(以下、「暖気運転終了時」という)に、当該ヒータ20の供給する過熱蒸気量をさらに増加させるように、当該ヒータ20に対応する流量調整弁14をヒータ制御部21を介して制御する。
蒸気流量制御部65は、既に通常運転モードで稼働しているヒータ20の過熱蒸気量を減少させるように、当該ヒータ20に対応する流量調整弁14をヒータ制御部21を介して制御する。
【0060】
この際、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了したヒータ20の過熱蒸気量を増加させる。このとき、既に通常運転モードで稼働しているヒータ20のヒータ制御部21は、ヘッダ圧力センサ52の圧力が一定になるように流量調整弁14を制御し、過熱蒸気量を減少させる。
また、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了したヒータ20の過熱蒸気量の増加速度が、予め設定された第1速度を超えないように流量調整弁14を制御するようにしてもよい。
また、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了したヒータ20における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、既に通常運転モードで稼働しているヒータ20における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、が互いに相殺することで、全体の過熱蒸気温度が目標温度になるように、流量調整弁14を制御するように構成してもよい。
そうすることで、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、負荷機器に供給される過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
【0061】
以上のように、蒸気流量制御部65は、通常運転時には、暖気運転を終了したヒータ20を含む、過熱を行う燃焼中の各ヒータ20の蒸気流量(蒸気発生量)が全て同じ値となるように制御する。
【0062】
[動作説明]
次に、
図3及び
図4を参照して、複数のヒータ20を備える蒸気過熱システム1における増台制御及び減台制御の動作について説明する。
図3には、例示的に1号機から5号機までの5台のヒータ20を備える蒸気過熱システム1において、蒸気負荷増加に伴い、増台制御する場合の動作例を示す。
図4には、例示的に1号機から5号機までの5台のヒータ20を備える蒸気過熱システム1において、蒸気負荷減少に伴い、減台制御する場合の動作例を示す。
図3及び
図4において、横軸は時間を、縦軸は蒸気量及びヒータ20の負荷率(燃焼率)を表す。
【0063】
[増台制御時の動作]
まず、蒸気過熱システム1の増台制御時の動作について、
図3を参照して説明する。
図3を参照すると、時間t
0からt
1にかけて、1号機〜3号機のヒータが負荷率50%で稼働している。
その後、時間t
1において、必要蒸気量が増加し、時間t
2において、1号機〜3号機による余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回る状態が発生する。
時間t
3において、増台判定部62は、1号機〜3号機による余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回る状態が増台判定時間継続したことを検知する。
時間t
3において、増台判定部62により増台判定条件を満たすことが検知されたため、台数設定部64は、燃焼停止中のヒータ20(4号機)を選択し、新たに過熱を行うヒータ20として設定する。
時間t
3において、台数制御部60は、4号機(ヒータ制御部21)に燃焼開始信号を送信することで、4号機(ヒータ制御部21)に燃焼制御を開始させる。
【0064】
4号機は、パージ工程等を経て、時間t
4において、暖気運転モードで燃焼制御を開始する。他方、蒸気流量制御部65は、1号機〜3号機の生成する蒸気流量を増加させることで、目標温度付近の過熱蒸気の流量を増加させる。
これにより、負荷機器に要求される過熱蒸気量を供給することができる。
【0065】
時間t
5において、4号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値が目標温度以上となると、蒸気流量制御部65は、4号機の供給する過熱蒸気量を増加させる。これにより、4号機を暖気運転モードから通常運転モードに移行させる。
時間t
5から時間t
6にかけて、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した4号機の過熱蒸気量を増加させる。このとき、既に通常運転モードで稼働している1号機〜3号機のヒータ制御部21は、ヘッダ圧力センサ52の圧力が一定になるように流量調整弁14を制御し、過熱蒸気量を減少させる。
これにより、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、負荷機器に供給される過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
なお、時間t
5から時間t
6にかけて、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した4号機の過熱蒸気量の増加速度が、予め設定された第1速度を超えないように流量調整弁14を制御するようにしてもよい。
また、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した4号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、既に通常運転モードで稼働している1号機〜3号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、が互いに相殺することで、全体の過熱蒸気温度が目標温度になるように、流量調整弁14を制御するように構成してもよい。
【0066】
蒸気流量制御部65は、4号機の蒸気発生量を増加させることで、時間t
7において、4号機の蒸気発生量は1号機〜3号機の蒸気発生量と同じになる。
【0067】
時間t
7以降も依然として必要蒸気量が増加し、時間t
8において、1号機〜4号機による余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回る状態が発生する。
時間t
9において、増台判定部62は、1号機〜4号機による余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回る状態が増台判定時間継続したことを検知する。
時間t
9において、増台判定部62により増台判定条件を満たすことが検知されたため、台数設定部64は、燃焼停止中のヒータ20(5号機)を選択し、新たに過熱を行うヒータ20として設定する。
時間t
9において、台数制御部60は、5号機(ヒータ制御部21)に燃焼開始信号を送信することで、5号機(ヒータ制御部21)に燃焼制御を開始させる。
【0068】
5号機は、プレパージ工程等を経て、時間t
10において、暖気運転モードで燃焼制御を開始する。他方、蒸気流量制御部65は、1号機〜4号機の生成する蒸気流量を増加させることで、目標温度付近の過熱蒸気の流量を増加させる。
これにより、負荷機器に要求される過熱蒸気量を供給することができる。
【0069】
時間t
11において、5号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値が目標温度以上となると、蒸気流量制御部65は、5号機の供給する過熱蒸気量を増加させる。これにより、5号機を暖気運転モードから通常運転モードに移行させる。
時間t
11から時間t
12にかけて、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した5号機の過熱蒸気量を増加させる。このとき既に通常運転モードで稼働している1号機〜4号機のヒータ制御部21は、ヘッダ圧力センサ52の圧力が一定になるように流量調整弁14を制御し、過熱蒸気量を減少させる。
これにより、負荷機器の要求する過熱蒸気流量を相殺できるとともに、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、負荷機器に供給される過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
【0070】
その後、蒸気流量制御部65は、引き続き5号機の過熱蒸気量を増加させることで、5号機の蒸気発生量が1号機〜4号機の蒸気発生量と同じになる。
【0071】
以上のように、必要蒸気量が増加して増台する場合であっても、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した4号機の過熱蒸気量を増加させる。このとき既に通常運転モードで稼働している1号機〜3号機のヒータ制御部21は、ヘッダ圧力センサ52の圧力が一定になるように流量調整弁14を制御し、過熱蒸気量を減少させる。
これにより、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、負荷機器に供給される過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
なお、時間t
11から時間t
12にかけて、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了したヒータ20の過熱蒸気量の増加速度が、予め設定された第1速度を超えないように流量調整弁14を制御するようにしてもよい。
また、蒸気流量制御部65は、暖気運転を終了した5号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、既に通常運転モードで稼働している1号機〜4号機における過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、が互いに相殺することで、全体の過熱蒸気温度が目標温度になるように、流量調整弁14を制御するように構成してもよい。
【0072】
[減台制御時の動作]
次に、蒸気過熱システム1の減台制御時の動作について、
図4を参照して説明する。
図4を参照すると、時間t
0からt
1にかけて、必要蒸気量が減少し、1号機〜5号機のヒータの燃焼率が低下している。
その後、時間t
1において、1号機〜5号機のヒータの燃焼率が50%(減台燃焼率)以下となる状態が発生した。
その後も必要蒸気量が減少し、時間t
2において、減台判定部63は、1号機〜5号機のヒータの燃焼率が減台燃焼率以下となる状態が、減台判定時間継続したことを検知する。
時間t
2において、減台判定部63により減台判定条件を満たすことが検知されたため、台数設定部64は、1号機を燃焼停止ヒータとして設定する。
時間t
2において、台数制御部60は、1号機に燃焼停止信号を送信することで、1号機は燃焼を停止する。
【0073】
時間t
2において、1号機を燃焼停止させたことで、蒸気流量制御部65は、必要蒸気量を生成させるために、2号機〜5号機の燃焼率が一時的に上げる。
必要蒸気量は依然として減少し、時間t
3において、2号機〜5号機の燃焼率が50%(減台燃焼率)以下となる状態が発生した。
その後も必要蒸気量が減少し、時間t
4において、減台判定部63は、2号機〜5号機のヒータの燃焼率が減台燃焼率以下となる状態が、減台判定時間継続したことを検知する。
時間t
4において、減台判定部63により減台判定条件を満たすことが検知されたため、台数設定部64は、2号機を燃焼停止ヒータとして設定する。
時間t
4において、台数制御部60は、2号機に燃焼停止信号を送信することで、2号機は燃焼を停止する。
【0074】
時間t
4において、2号機を燃焼停止させたことで、蒸気流量制御部65は、必要蒸気量を生成させるために、3号機〜5号機の燃焼率を一時的に上げる。
【0075】
以上のように、必要蒸気量が減少して減台する場合であっても、必要な蒸気流量を確保するとともに、過熱蒸気の温度を目標温度に維持することができる。
以上説明した本実施形態の蒸気過熱システム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0076】
本実施形態の蒸気過熱システム1は、複数のヒータ20におけるそれぞれの過熱蒸気検出温度に基づいてそれぞれのヒータの燃焼量を連続的に制御する複数のヒータ制御部21と、複数のヒータ20を制御する台数制御部60と、を備え、台数制御部60は、要求負荷に応じて過熱を行うヒータ20を設定する台数設定部64と、台数設定部64により過熱を行うヒータに設定されたヒータ20について、ヘッダ圧力センサ52により検出された過熱蒸気ヘッダ検出圧力値が所定の圧力値を保つように、流量調整弁14の開度を連続的に制御する蒸気流量制御部65と、を備える。
これにより、負荷に応じて必要な蒸気流量を確保するとともに、過熱蒸気の温度を目標温度に維持することができる。また、負荷装置の負荷変動に応じて必要過熱蒸気量に対する追従性を向上させることができ、過熱蒸気供給の安定化を図ることができる。
【0077】
また、台数制御部60は、余力蒸気量算出部61により算出された余力蒸気量が変動可能蒸気量を下回った状態が増台判定時間継続する増台判定条件を満たすか否かを検知する増台判定部62を備え、台数設定部64は、増台判定部62により増台判定条件を満たすことが検知された場合、燃焼停止中のヒータ20を選択し、新たに過熱を行うヒータとして設定する。
これにより、余力蒸気量が予め設定された変動可能蒸気量以上ある場合は、負荷変動に対する負荷追従は、燃焼中の蒸気過熱装置に対する燃焼量調整で行え、余力蒸気量が予め設定された変動蒸気量を下回る場合は、燃焼させる蒸気過熱装置を増やすことで、余力蒸気量を確保することができる。
【0078】
また、蒸気流量制御部65は、台数設定部64により新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20を、暖気運転モードで運転させ、過熱蒸気温度センサ51の温度検出値が目標温度以上となった場合に通常運転モードに移行させ、当該ヒータ20の過熱蒸気量をさらに増加させるように流量調整弁14を制御するとともに、既に燃焼しているヒータ20の過熱蒸気量を減少させるように流量調整弁14を制御する。
これにより、新たに設定されたヒータ20が目標温度の過熱蒸気を生成できるまでは、既燃焼中のヒータ20の過熱蒸気量を増やすことで、必要過熱蒸気量を維持し、新たに設定されたヒータ20が目標温度の過熱蒸気を生成できるようになった以降は、当該ヒータ20を含む燃焼中のヒータ20がそれぞれ、同じ量の過熱蒸気を出力するように、複数のヒータ20を効率よく運転させることができる。
【0079】
また、蒸気流量制御部65は、新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20について暖気運転終了時に、当該ヒータ20の過熱蒸気量を増加させる。このとき、既に通常運転モードで稼働しているヒータ20のヒータ制御部21は、ヘッダ圧力センサ52の圧力が一定になるように流量調整弁14を制御し、過熱蒸気量を減少させる。
こうすることで、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
【0080】
また、蒸気流量制御部65は、新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20について暖気運転終了時に、当該ヒータ20の過熱蒸気量の増加速度が、予め設定された第1速度を超えないように流量調整弁14を制御する。
こうすることで、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
【0081】
また、蒸気流量制御部65は、新たに過熱を行うヒータとして設定されたヒータ20について暖気運転終了時に、過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、既に通常運転モードで稼働しているヒータ20の過熱蒸気温度センサ51の温度検出値の目標温度からの偏差と、が互いに相殺されるように、流量調整弁14を制御する。
こうすることで、蒸気流量変化に伴うオーバーシュート及びアンダーシュートを相殺させることができ、過熱蒸気の温度を目標温度を保つように維持させることができる。
【0082】
以上、本発明の蒸気過熱装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0083】
[変形例1]
本実施形態において、ヒータ20をガス焚きの燃焼バーナ方式を適用したが、これに限定されない。例えば、ハロゲンランプ等の別の手段で加熱を行う構成にしてもよい。
【0084】
[変形例2]本実施形態において、台数制御部60は、ヒータ制御部21を介して流量調整弁14を制御しているが、台数制御部60が、流量調整弁14の開度を直接調整するようにしてもよい。