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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223514(P2017-223514A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】磁歪式トルクセンサおよび駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20171124BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   G01L3/10 301J
   F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-118264(P2016-118264)
(22)【出願日】2016年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】地頭所 典行
【テーマコード(参考)】
3J009
【Fターム(参考)】
3J009DA18
3J009EA04
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA35
3J009EA44
3J009FA08
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、かつ精度よくトルクを検出することができる磁歪式トルクセンサおよびこれを備えた駆動装置を提供する。
【解決手段】磁歪特性を有し、中心軸X回りに回転するカウンターシャフト3と、カウンターシャフト3の外周部21に対して所定の間隔を空けて配置され、かつカウンターシャフト3の中心軸Xに平行な検出軸を有しており、カウンターシャフト3に加わるトルクを検出するMIセンサ19と、MIセンサ19を覆うように設けられ、カウンターシャフト3の中心軸Xと直交する方向に磁場Hを印加するバイアス磁界発生部20とを含む、磁歪式トルクセンサ18を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪特性を有し、中心軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸の外周部に対して所定の間隔を空けて配置され、かつ前記回転軸の前記中心軸に平行な検出軸を有しており、前記回転軸に加わるトルクを検出する検出素子と、
前記検出素子を覆うように設けられ、前記回転軸の前記中心軸と直交する方向に磁場を印加するバイアス磁界発生部とを含む、磁歪式トルクセンサ。
【請求項2】
前記検出素子は、磁気インピーダンス(MI:Magneto Impedance)センサを含む、請求項1に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項3】
前記バイアス磁界発生部は、前記検出素子の上方に間隔を空けて配置された磁石と、前記磁石を定位置に固定するための支持部材とを含む、請求項1または2に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項4】
前記支持部材は、前記磁石の一方の極および他方の極の両側から前記磁石を挟むヨークを含む、請求項3に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項5】
前記バイアス磁界発生部は、前記磁石と前記検出素子との間に配置され、前記検出素子の前記検出軸に直交する方向の磁場の変化を検出する回路基板を含む、請求項3または4に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項6】
前記磁石は、永久磁石を含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項7】
前記磁石は、電磁石を含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項8】
前記回転軸は、前記検出素子の前記検出軸の一端から他端まで全体にわたって対向する平滑な周面を前記外周部に有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁歪式トルクセンサを備えた、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪式トルクセンサおよびこれを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式のトルクセンサとして、たとえば特許文献1および2のセンサが公知である。
特許文献1は、車両のハンドルに連結された入力軸と車両の車輪に連結された出力軸との間に設置され、前記ハンドルの回転操作によって発生したねじれを検出する操舵装置用非接触式トルクセンサにおいて、前記入力軸に結合し、中心から同一の半径を持つように外周面に沿って複数のN極磁石とS極磁石とが互いにずれるように配置される磁力発生部と、前記出力軸に連結され、複数の前記N極磁石と前記S極磁石の領域内にそれぞれ位置するように複数のホールが設けられた円筒状の磁気遮蔽部と、前記磁気遮蔽部の外周面から離隔して設けられ、複数の前記ホールを通過する磁力を検出する磁気検出部と、前記磁気検出部の外周面に位置し、前記磁力発生部と前記磁気遮蔽部の相対的なねじれ変化を感知する磁気検出センサ部とを含む、操舵装置用非接触式トルクセンサを開示している。
【0003】
特許文献2は、トルク伝達軸の外周面に磁気歪み効果を有する磁性合金層を設けてなるトルクセンサ用磁歪検出体において、トルク伝達軸の外周面に溶射法により磁性合金層を形成し、無酸化雰囲気中で加熱処理し、溶射層表面に押圧塑性加工を施し、軸の長手方向に対して角度45゜に傾斜する複数の凹条および凸条を規則的間隔毎に形成する製造方法によって得られた磁歪検出体を有するトルクセンサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−512284号公報
【特許文献2】特開平6−34460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、出力軸のねじれ角を検出してトルクを測定するやり方では、出力信号の位相差に基づいてトルクが算出されるが、信号の位相遅れ等によって誤差が生じ易い。また、出力軸の長さがある程度長くないと、トルクを精度よく検出することが難しい。
一方、特許文献2では、たとえば、トルク伝達軸の軸方向に対して+45°および−45°に傾斜する凹条および凸条を形成し、+45°の凹条および凸条の領域における透磁率変化と、−45°の凹条および凸条の領域における透磁率変化とを差動的に検出することによってトルクが算出される。この種の手法では、特許文献1の位相遅れ等の問題は生じないが、凹条や凸条を形成するために軸にローレット加工等の処理を施さなければならないため、その精度も要求される。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態は、簡易な構造で、かつ精度よくトルクを検出することができる磁歪式トルクセンサおよびこれを備えた駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサは、磁歪特性を有し、中心軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸の外周部に対して所定の間隔を空けて配置され、かつ前記回転軸の前記中心軸に平行な検出軸を有しており、前記回転軸に加わるトルクを検出する検出素子と、前記検出素子を覆うように設けられ、前記回転軸の前記中心軸と直交する方向に磁場を印加するバイアス磁界発生部とを含む。
【0008】
この構成によれば、バイアス磁界発生部によって、回転軸の中心軸と直交する方向に磁場が強制的に印加される。この磁場中に検出素子が配置されているので、検出素子を地磁気等の外部磁場から保護することができる。これにより、回転軸の逆磁歪効果によって発生する磁場以外の外部磁場の影響を受けにくくすることができるため、検出軸に平行な方向において磁場の変化を精度よく検出することができる。したがって、回転軸にトルクが発生し、このトルクによる逆磁歪効果によって検出軸に平行な方向の磁場が変化したときに、この磁場の変化を検出し、その変化分に基づいてトルクを精度よく検出することができる。また、上記の検出は、回転軸にローレット加工等の特別な加工を施さなくても行うことができるので、センサの構造を簡易にすることもできる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記検出素子は、磁気インピーダンス(MI:Magneto Impedance)センサを含んでいてもよい。
この構成によれば、ホールセンサや磁気抵抗センサに比べて高感度である磁気インピーダンスセンサを検出素子として使用することで、トルクの検出精度をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記バイアス磁界発生部は、前記検出素子の上方に間隔を空けて配置された磁石と、前記磁石を定位置に固定するための支持部材とを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記支持部材は、前記磁石の一方の極および他方の極の両側から前記磁石を挟むヨークを含んでいてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記バイアス磁界発生部は、前記磁石と前記検出素子との間に配置され、前記検出素子の前記検出軸に直交する方向の磁場の変化を検出する回路基板を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記磁石は、永久磁石を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記磁石は、電磁石を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサでは、前記回転軸は、前記検出素子の前記検出軸の一端から他端まで全体にわたって対向する平滑な周面を前記外周部に有していてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る駆動装置は、本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る駆動装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサの概略構成図である。
図3図3Aおよび図3Bは、図2のカウンターシャフトの軸方向と直交する方向における模式的な断面図である。
図4図4は、図2のカウンターシャフトの軸方向における模式的な断面図(一部)である。
図5図5は、磁歪材料の特性を説明するための図である。
図6図6は、磁気インピーダンスセンサの概略構成図である。
図7図7A図7Cは、磁気インピーダンスセンサの動作原理を説明するための図である。
図8図8は、回路基板の構成を説明するための図である。
図9図9は、前記磁歪式トルクセンサの制御回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動装置1の概略構成図である。
駆動装置1は、たとえば自動車等のトランスミッションとして使用される。当該トランスミッションとしては、エンジンの減速比を段階的に切り替えることができる機構(ステップオートマッチクトランスミッション(ステップAT))、エンジンの減速比を無段階に切り替えることができる機構(無段変速機)のいずれであってもよい。
【0016】
図1の駆動装置1は、インプットシャフト2、本発明の回転軸の一例としてのカウンターシャフト3およびアウトプットシャフト4を含む。
インプットシャフト2にはギア6が接続されており、エンジンからの動力は、ギア6に伝達される。
カウンターシャフト3には、インプットシャフト2のギア6と同期する同期ギア8およびドライブギア9が固定されている。図1では、1つのドライブギア9のみが描かれているが、ドライブギア9は、駆動装置1(トランスミッション)の段数に合わせて複数設けられていてもよい。たとえば、駆動装置1が4速オートマチックトランスミッション(4速AT)の場合には、ドライブギア9は4つ設けられていてもよい。
【0017】
アウトプットシャフト4には、カウンターシャフト3のドライブギア9と同期する同期ギア10が固定されている。また、アウトプットシャフト4には、駆動輪(タイヤ)が接続されている。
エンジンから駆動装置1に動力が入力されると、その動力は、ギア6に伝達される。そして、その動力は、ギア6に同期する同期ギア8を介してドライブギア9に伝達され、アウトプットシャフト4によって駆動輪に伝えられる。これにより、駆動輪が駆動する。
【0018】
駆動装置1では、動力がインプットシャフト2からアウトプットシャフト4に伝達される際、カウンターシャフト3が捻じれて(図1の矢印)応力が発生する。この応力によって発生するトルクが検出され、その検出結果がエンジンの制御システム等にフィードバックされる。
図2は、本発明の一実施形態に係る磁歪式トルクセンサ18の概略構成図である。図3Aおよび図3Bは、図2のカウンターシャフト3の軸方向と直交する方向における模式的な断面図である。図4は、図2のカウンターシャフト3の軸方向における模式的な断面図(一部)である。
【0019】
図1で示したように、本発明の一実施形態に係る駆動装置1では、カウンターシャフト3に加わるトルクが検出される。このトルク検出に、図3Aおよび図3Bに示す磁歪式トルクセンサ18が使用される。
磁歪式トルクセンサ18は、カウンターシャフト3と、本発明の検出素子の一例としてのMI(Magneto Impedance)センサ19と、バイアス磁界発生部20とを含む。
【0020】
カウンターシャフト3は、磁歪特性を有する材料からなる。そのような材料としては、たとえば、鉄、ニッケル、フェライト、鉄−ガリウム系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−ニッケル系合金等の磁歪材料が挙げられる。カウンターシャフト3は、さらに、前述の磁歪材料に、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)等の希土類金属のうちの少なくとも1種を含む材料からなることが好ましい。これにより、カウンターシャフト3の透磁率の変化を一層大きくすることができる。
【0021】
ここで、図5を参照して、磁歪特性を有するカウンターシャフト3の形状変化について説明を加える。
図5に示すように、カウンターシャフト3は磁歪特性を有するため、磁石等によって強制的に発生させた磁場中に置かれると、極性が配向し、磁化方向に沿って伸びる磁歪効果を発現する。一方、外部から力がカウンターシャフト3に加えられ、カウンターシャフト3に歪が生じると(図5では圧縮)、カウンターシャフト3から発生する磁場が変化する逆磁歪効果を発現する。したがって、たとえば図2に示すように、カウンターシャフト3を駆動装置1に組み込んだ状態でカウンターシャフト3にトルクTが加わって応力σおよび応力−σが発生すると、その応力によって逆磁歪効果が発現し、カウンターシャフト3から発生する磁場が変化する。この実施形態では、この磁場の変化をMIセンサ19で検出してトルクを算出する。
【0022】
次に、図6および図7A図7Cを参照して、MIセンサ19の構造および動作原理について説明を加える。
MIセンサ19は、ワイヤ22の回りにコイル23を巻きつけた構造を有している。
ワイヤ22は、アモルファス合金ワイヤからなり、たとえば、FeCoSiB合金磁性ワイヤ、CoSiB合金磁性ワイヤからなる。ワイヤ22は、一端および他端を有する線状に形成されている。ワイヤ22の長さおよび径は、磁歪式トルクセンサ18の大きさにもよるが、たとえば、長さが1.0mm〜2.0mm程度、径が10μm〜20μm程度であってもよい。
【0023】
コイル23は、ワイヤ22に複数回巻きつけられ、その両端部が後述する回路基板29に接続されている。
そして、MIセンサ19では、図7Aに示すように、その周囲に外部磁場が無い状態であり、かつパルス電源24からコイル23にパルス電流が流れていない状態では、ワイヤ22の電子スピンの向きは、コイル23の円周方向に沿って交互に規則的に配向している。この状態で、MIセンサ19に外部磁場Hextが印加されると、図7Bに示すように、その磁場の影響によって電子スピンの向きが、ワイヤ22の軸線方向X(本発明の検出軸の一例)に対して傾斜する。そこへパルス電源24からパルス電流が通電されると、図7Cに示すように、パルス電流によって形成された円周磁場によって電子スピンが回転し、一定の方向に配向する。この回転の際、コイル23に、ワイヤ22の軸線方向Xの磁気ベクトル変化の速度に比例した誘起電圧が発生するので、この誘起電圧の大きさに基づいて外部磁場Hextの値を検出することができる。
【0024】
再び図3A図3Bおよび図4を参照して、MIセンサ19は、ワイヤ22の軸線方向Xがカウンターシャフト3の中心軸(図2のX軸)に平行となるように、カウンターシャフト3の外周部21に対して間隔を空けて配置されている。たとえば、MIセンサ19は、当該外周部21の上方位置において後述する回路基板29に固定されていてもよい(図8参照)。
【0025】
また、カウンターシャフト3は、MIセンサ19の軸線方向Xの一端から他端まで全体にわたって対向する領域25において、平滑な外周面26を有している。つまり、カウンターシャフト3は、その外周部21の全体にわたって平滑な周面を有している必要はなく、少なくとも領域25における外周面26が選択的に平滑になっていてもよい。たとえば、図1に示す同期ギア8およびドライブギア9の取付け部周辺においては、その周面に起伏があってもよい。むろん、カウンターシャフト3は、その外周部21の全体にわたって平滑な周面を有していてもよい。
【0026】
バイアス磁界発生部20は、磁石27、本発明の支持部材の一例としてのヨーク28および回路基板29を含む。
磁石27は、図3Aに示す永久磁石27Aであってもよいし、図3Bに示す電磁石27Bであってもよい。電磁石27Bである場合、磁石27は、柱状の磁性体30の回りにコイル31を巻きつけた構造を有している。
【0027】
ヨーク28は、たとえば鉄等の磁性材料からなり、磁石27の一方の極および他方の極の両側から磁石27を挟む一対のヨーク28を含む。各ヨーク28は一方表面28Aおよび他方表面28Bを有する板状であり、一方表面28A同士を向い合せて磁石27を挟むことによって磁石27を固定(支持)している。たとえば、図3Aに示すように、永久磁石27Aは、N極が一方のヨーク28の上端部に固定され、S極が他方のヨーク28の上端部に固定されることによって、一対のヨーク28に支持されている。また、図3Bに示すように、電磁石27Bは、磁性体30の軸線方向一端が一方のヨーク28の上端部に固定され、他端が他方のヨーク28の上端部に固定されることによって、一対のヨーク28に支持されている。
【0028】
また、図4に示すように、各ヨーク28の幅Wは、MIセンサ19の軸線方向Xに沿う長さLと同じか、それよりも大きくされている。これにより、バイアス磁界発生部20を設置したときに、MIセンサ19をヨーク28で完全に覆うことができる。
そして、磁石27とヨーク28との一体構造物は、MIセンサ19を覆うように設けられている。これにより、MIセンサ19は、一対のヨーク28に区画され、その軸線方向Xの両側が開放された空間35に配置されることになる。
【0029】
磁石27およびヨーク28の一体構造物の設置状態において、磁石27は、MIセンサ19を交差するように配置されている。つまり、永久磁石27Aの場合には、MIセンサ19の軸線方向Xと直交する方向において、N極およびS極がMIセンサ19を挟んで一方側および他方側に配置されている。また、電磁石27Bの場合には、MIセンサ19の軸線方向Xと直交する方向において、磁性体30の軸線方向一端および他端がMIセンサ19を挟んで一方側および他方側に配置されている。これにより、図3Aおよび図3Bに示すように、磁石27によって、一対のヨーク28の下端部間においてMIセンサ19の軸線方向Xと直交する方向に磁場Hを発生させることができる。このような磁場Hは、磁石27の支持部材がヨーク28ではなく、たとえば樹脂部材等の場合でも磁石27から直接発生させることができるが、ヨーク28を使用することによって、磁束をヨーク28の下端部に集中させることができるので、発生磁力を有効に利用することができる。
【0030】
回路基板29は、図8に示すように、たとえば、MIセンサ19のコイル23に流すパルス電流を制御するためのパルス発振回路32、コイル23に発生した誘起電圧を検出し、この誘起電圧の大きさに基づいて外部磁場Hextの値を算出する信号処理回路33、電磁石27Bのコイル31に流す電流を制御するためのバイアス磁界駆動回路34等を含んでいてもよい。
【0031】
次に、磁歪式トルクセンサ18によるトルク検出動作について説明する。
磁歪式トルクセンサ18では、図2図3Aおよび図3Bに示すように、バイアス磁界発生部20の磁石27の作用によって、カウンターシャフト3の中心軸Xと直交する方向に磁場Hが強制的に印加される。この磁場Hはヨーク28で囲まれた空間35の全体に分布する。この空間35に配置されたMIセンサ19に対しては、その軸線方向Xと直交するY1方向に磁場Hが印加されるので、図7Cに示すように、ワイヤ22の電子スピンが一定の方向に配向する。さらに、MIセンサ19は、空間35中に配置されているので、地磁気等の外部磁場から保護される。つまり、バイアス磁界発生部20によって、ワイヤ22の電子スピンが一定方向に揃う初期状態を作り出すことができ、この初期状態も、MIセンサ19がバイアス磁界発生部20に覆われていることで、外部磁場の影響を受けにくくなっている。
【0032】
そして、図2に示すように、カウンターシャフト3にトルクTが加わって応力σおよび応力−σが発生すると、その応力によって逆磁歪効果が発現し、カウンターシャフト3から発生する磁場が変化する。この磁場変化は、図7Bに示す外部磁場HextとしてMIセンサ19によって検出され、その磁場の影響によって電子スピンの向きが、Y1方向に対して傾斜する。
【0033】
そこへパルス電源24からパルス電流が通電されると、図7Cに示すように、パルス電流によって形成された円周磁場によって電子スピンが回転し、初期状態に配向する。この回転の際、コイル23に、ワイヤ22の軸線方向Xの磁気ベクトル変化の速度に比例した誘起電圧が発生するので、この誘起電圧の大きさに基づいて外部磁場Hextの値が検出され、回路基板29の信号処理回路33で処理されることによってカウンターシャフト3に加わったトルク値が算出される。
【0034】
以上のように、磁歪式トルクセンサ18では、カウンターシャフト3の逆磁歪効果によって発生する磁場以外の外部磁場の影響をMIセンサ19が受けにくいので、MIセンサ19の検出軸Xに平行な方向において磁場の変化(Y1方向に対する変化)を精度よく検出することができる。したがって、カウンターシャフト3にトルクTが発生し、このトルクTによる逆磁歪効果によって検出軸Xに平行な方向の磁場が変化したときに、この磁場の変化を検出し、その変化分に基づいてトルクを精度よく検出することができる。また、上記の検出は、カウンターシャフト3にローレット加工等の特別な加工を施さなくても行うことができるので、センサの構造を簡易にすることもできる。
【0035】
さらに、検出素子として、ホールセンサや磁気抵抗センサに比べて高感度であるMIセンサ19を使用することで、トルクの検出精度をさらに向上させることができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、図9に示すように、カウンターシャフト3の軸方向に直交するY1方向に対する磁場の変化を検出するMIセンサ19に加えて、Y1方向とは反対方向のY2方向の磁場の変化を検出する素子として、MIセンサ19´を空間35に配置してもよい。この場合、MIセンサ19,19´で検出された信号を差動アンプ(AMP)38で増幅させてトルクセンサの出力として出力することで、たとえば、カウンターシャフト3の偏心回転、カウンターシャフト3の温度特性による変化、その他の外乱磁場による影響等を考慮して精度よくトルクを検出することができる
一方、Y1,Y2方向に直交するX方向の磁場の変化を検出する素子として、空間35にMIセンサ36を配置し、このMIセンサ36で検出された信号をバイアス磁界駆動回路34にフィードバックしてコイル31に流す電流を制御すれば、空間35内に安定して強制磁場Hを発生させることができる。
【0036】
また、トルクの検出素子としては、MIセンサ19に限らず、ホールセンサ、磁気抵抗センサ等の他の磁気センサを適用してもよい。
また、本発明の磁歪式トルクセンサは、前述のトランスミッション(駆動装置1)に限らず、トルクのモニタリングが必要な各種駆動装置に組み込むことができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 駆動装置
3 カウンターシャフト
18 磁歪式トルクセンサ
19 MIセンサ
19´ MIセンサ
20 バイアス磁界発生部
21 外周部
26 外周面
27 磁石
27A 永久磁石
27B 電磁石
28 ヨーク
29 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9