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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223541(P2017-223541A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】レーザスキャナ
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
   G01C15/00 103E
   G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-118884(P2016-118884)
(22)【出願日】2016年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】古平 純一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3次元の点群データ取得の測定作業と測設作業とを共に実行可能なレーザスキャナを提供する。
【解決手段】測距光を射出する測距発光部と、反射測距光の受光結果に基づき測距を行う測距部と、測距光と既知の関係でレーザポインタ光を照射するポインタ光発光部と、測距光の射出方向を検出する測角部と、測距発光部、測距部、ポインタ光発光部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部9、望遠鏡部9を回転させる回転駆動部と、既知の座標系を有する図面データが格納された記憶部を有する制御演算部17とを具備し、制御演算部17は、測距光を所要の範囲で回転照射し、測距光毎の測距結果と方向角検出結果に基づき3次元の点群データを取得し、3次元の点群データと図面データとに共通した点の測定結果を基に3次元の点群データを図面データとマッチングさせ、図面データ上で指定された測設点に対してレーザポインタ光を照射させる様構成された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を射出する測距発光部と、反射測距光の受光結果に基づき測距を行う測距部と、前記測距光と既知の関係でレーザポインタ光を照射するポインタ光発光部と、前記測距光の射出方向を検出する測角部と、前記測距発光部、前記測距部、前記ポインタ光発光部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、既知の座標系を有する図面データが格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記測距光を所要の範囲で回転照射し、該測距光毎の測距結果と方向角検出結果に基づき3次元の点群データを取得し、該3次元の点群データと前記図面データとに共通した点の測定結果を基に前記3次元の点群データを前記図面データとマッチングさせ、該図面データ上で指定された測設点に対して前記レーザポインタ光を照射させる様構成されたレーザスキャナ。
【請求項2】
前記レーザポインタ光は前記測距光と同軸であり、前記望遠鏡部は鉛直回転され、前記制御演算部は前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時に前記レーザポインタ光が照射される様前記ポインタ光発光部を制御する請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項3】
前記レーザポインタ光は前記測距光と同軸であり、前記望遠鏡部は上下方向に揺動され、前記制御演算部は前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時に前記レーザポインタ光が照射される様前記ポインタ光発光部を制御する請求項1に記載のレーザスキャナ。
【請求項4】
前記制御演算部は、前記測距光の照射による前記3次元の点群データの取得と、前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時の前記レーザポインタ光の照射を同時に実行する請求項2又は請求項3に記載のレーザスキャナ。
【請求項5】
前記レーザポインタ光、前記測距光と同軸な撮像光軸上に設けられた撮像部を更に具備し、該撮像部により前記レーザポインタ光の照射点を含む背景画像を取得可能とした請求項2〜請求項4のうちいずれか1項に記載のレーザスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距光を回転照射し、3次元の点群データを取得するレーザスキャナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、短時間に測定対象物の多数の3次元データ(3Dデータ、3次元点群データ)を取得する為の測量装置として、3次元レーザスキャナが知られている。
【0003】
3次元レーザスキャナは三脚上に設置され、走査部を介してパルス光を回転照射し、測定対象物を走査して、パルス光毎に測距、測角を行うことで、測定対象物の3次元データを取得している。
【0004】
然し乍ら、3次元レーザスキャナは、走査部を高速で回転させながらパルス光を回転照射する構成である為、測設点の指示等、特定の1点を指し示すことは困難である。
【0005】
従って、3次元点群データを取得し、測定対象物の形状を測定すると共に、測設作業を行う場合には、3次元レーザスキャナの他に、レーザポインタ光を照射して測設点を指示するトータルステーション等の測量装置が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−125099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、3次元の点群データ取得の測定作業と測設作業とを共に実行可能なレーザスキャナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、測距光を射出する測距発光部と、反射測距光の受光結果に基づき測距を行う測距部と、前記測距光と既知の関係でレーザポインタ光を照射するポインタ光発光部と、前記測距光の射出方向を検出する測角部と、前記測距発光部、前記測距部、前記ポインタ光発光部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、既知の座標系を有する図面データが格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記測距光を所要の範囲で回転照射し、該測距光毎の測距結果と方向角検出結果に基づき3次元の点群データを取得し、該3次元の点群データと前記図面データとに共通した点の測定結果を基に前記3次元の点群データを前記図面データとマッチングさせ、該図面データ上で指定された測設点に対して前記レーザポインタ光を照射させる様構成されたレーザスキャナに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記レーザポインタ光は前記測距光と同軸であり、前記望遠鏡部は鉛直回転され、前記制御演算部は前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時に前記レーザポインタ光が照射される様前記ポインタ光発光部を制御するレーザスキャナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記レーザポインタ光は前記測距光と同軸であり、前記望遠鏡部は上下方向に揺動され、前記制御演算部は前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時に前記レーザポインタ光が照射される様前記ポインタ光発光部を制御するレーザスキャナに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記制御演算部は、前記測距光の照射による前記3次元の点群データの取得と、前記測距光の光軸が前記測設点と一致した時の前記レーザポインタ光の照射を同時に実行するレーザスキャナに係るものである。
【0012】
更に又本発明は、前記レーザポインタ光、前記測距光と同軸な撮像光軸上に設けられた撮像部を更に具備し、該撮像部により前記レーザポインタ光の照射点を含む背景画像を取得可能としたレーザスキャナに係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測距光を射出する測距発光部と、反射測距光の受光結果に基づき測距を行う測距部と、前記測距光と既知の関係でレーザポインタ光を照射するポインタ光発光部と、前記測距光の射出方向を検出する測角部と、前記測距発光部、前記測距部、前記ポインタ光発光部を含み水平方向、鉛直方向に回転可能な望遠鏡部、該望遠鏡部を回転させる回転駆動部と、既知の座標系を有する図面データが格納された記憶部を有する制御演算部とを具備し、該制御演算部は、前記測距光を所要の範囲で回転照射し、該測距光毎の測距結果と方向角検出結果に基づき3次元の点群データを取得し、該3次元の点群データと前記図面データとに共通した点の測定結果を基に前記3次元の点群データを前記図面データとマッチングさせ、該図面データ上で指定された測設点に対して前記レーザポインタ光を照射させる様構成されたので、測定作業と測設作業の両方を行うことができ、汎用性及び作業性の向上を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナの概略図である。
図2】該レーザスキャナの概略構成図である。
図3】該レーザスキャナに於ける望遠鏡部の光学系を示す構成図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る測設点の指示処理を説明するフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施例に係る望遠鏡部の光学系を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
先ず、図1により、本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナ1の概略について説明する。
【0017】
所定の位置に三脚2を設置し、該三脚2に整準部3が設けられ、該整準部3に基盤部4が設けられている。該基盤部4に水平回転駆動部5が収納されている。該水平回転駆動部5は鉛直に延びる水平回転軸6を有し、該水平回転軸6の上端に水平回転部である托架部7が取付けられている。
【0018】
該托架部7は凹部8を有し、該凹部8には鉛直回転部である望遠鏡部9が収納されている。該望遠鏡部9は鉛直回転軸10を介して、前記托架部7に回転自在に支持されている。前記望遠鏡部9には、測距光軸を有する望遠鏡(レンズユニット)11が設けられ、又前記望遠鏡部9には測距部16(図2参照)等が収納されている。
【0019】
前記托架部7には鉛直回転駆動部12が収納され、該鉛直回転駆動部12は水平軸心を有する前記鉛直回転軸10に連結されている。前記鉛直回転駆動部12によって前記望遠鏡部9が鉛直方向に全周回転される様になっている。前記鉛直回転軸10には鉛直角検出器13が設けられ、該鉛直角検出器13により前記鉛直回転軸10の回転角が検出され、更に該鉛直回転軸10の鉛直角が検出される様になっている。又、前記托架部7には制御演算部17が収納されている。
【0020】
前記水平回転駆動部5は、鉛直軸心を有する前記水平回転軸6に連結され、前記托架部7は前記水平回転駆動部5によって水平方向に全周回転される様になっている。又、前記水平回転軸6には水平角検出器14が設けられ、該水平角検出器14により前記托架部7の回転角が検出され、更に該托架部7の水平角が検出される様になっている。前記鉛直角検出器13、前記水平角検出器14によって、方向角検出器が構成される。
【0021】
而して、前記水平回転駆動部5、前記鉛直回転駆動部12が構成する回転駆動部により、前記望遠鏡部9が鉛直、水平の2方向に所要の状態で回転される。又、前記鉛直角検出器13、前記水平角検出器14によって、鉛直角、水平角がリアルタイムで検出される。
【0022】
次に、図2に於いて、前記レーザスキャナ1の構成の概略を説明する。
【0023】
図2中、17は制御演算部、18は測角部、19は記憶部、21は操作部、22は表示部を示している。
【0024】
前記望遠鏡部9には、前記望遠鏡11、測距発光部24、反射測距光25を受光する前記測距部16、レーザポインタ光26を発するポインタ光発光部27を有している。前記測距発光部24は測距光軸上に測距光(パルスレーザ光線)23を発し、前記望遠鏡11を介して照射される。又、前記ポインタ光発光部27は測距光軸上に前記レーザポインタ光26を発し、前記望遠鏡11を介して照射される。
【0025】
前記測距発光部24は、前記制御演算部17により発光が制御され、前記測距光23を発光する。前記測距部16は、測定点或は測定対象物から反射された前記反射測距光25を受光した際の受光信号に基づき、1パルス毎にパルス光の往復時間を求めて測定点の測距を行う(Time Of Flight)。又、前記測距部16は、測定対象物を再帰反射体(例えばプリズム)としたプリズム測定、或は測定対象物を自然物としたノンプリズム測定が可能となっている。又、前記ポインタ光発光部27は、例えば所定のタイミングで前記レーザポインタ光26をパルス発光する。
【0026】
前記鉛直角検出器13からの鉛直角検出信号は前記測角部18に入力され、該測角部18は鉛直角検出信号に基づき前記鉛直回転軸10の鉛直角を演算する。又、前記水平角検出器14からの水平角検出信号は前記測角部18に入力され、該測角部18は水平角検出信号に基づき前記托架部7の水平角を演算する。前記測距光23による測距毎に鉛直角、水平角が求められ、鉛直角、水平角によって、前記レーザスキャナ1を基準とした各測定点毎の方向角が求められる。
【0027】
前記制御演算部17は、前記鉛直回転駆動部12により前記望遠鏡部9を所定の速度で且つ高速回転で、鉛直方向に全周回転させる。又、前記制御演算部17は、前記水平回転駆動部5により前記望遠鏡部9の鉛直回転に同期させ、前記托架部7を所定の速度で水平回転させる。鉛直回転と水平回転との協働により、所要範囲のレーザスキャンが実行され、所要範囲の3次元の点群データが取得できる。更に、前記制御演算部17は、スキャン速度及びパルス発光の繰返し周波数を設定することで、測定ピッチ(測定点間の間隔)を設定できると共に、前記ポインタ光発光部27による前記レーザポインタ光26の発光のタイミングを設定できる。
【0028】
前記記憶部19には、前記レーザスキャナ1を作動させる為の各種プログラムが格納されている。例えば、測距、測角を実行する為の測定プログラム、前記水平回転駆動部5、前記鉛直回転駆動部12の駆動を制御する為の駆動制御プログラム、前記測距発光部24による前記測距光23の発光を制御する為の測距光制御プログラム、前記ポインタ光発光部27による前記レーザポインタ光26の発光を制御する為のレーザポインタ光制御プログラム、測定ピッチを設定する測定ピッチ設定プログラム、前記レーザポインタ光26の発光のタイミングを設定するタイミング設定プログラム、測定結果と設計図面データとをマッチングさせるマッチングプログラム、前記表示部22に各種情報を表示させる為の表示プログラム等が格納されている。
【0029】
又、前記記憶部19には、測定データ、絶対座標等既知の座標系を有する設計図面データ(以下図面データ)等の各種データを格納する為のデータ格納領域が設けられている。
【0030】
前記操作部21からは、測定範囲、測定密度等の測定条件が入力され、測設点の位置データ(例えば3次元データ)が前記制御演算部17に入力され、或は測定開始、測定停止等の指令が入力される。尚、測設点の位置データについては、図面データに基づき予め設定し、図面データと共に前記記憶部19に記憶させてもよい。
【0031】
前記表示部22には、測定範囲等の測定条件、測定状態が表示され、或は測定結果等が表示される。
【0032】
次に、図3に於いて、前記望遠鏡部9の光学系について説明する。
【0033】
前述した様に、前記望遠鏡部9には、前記レンズユニット(望遠鏡)11、前記測距発光部24、前記測距部16、前記ポインタ光発光部27、内部参照光路28等が収納されている。
【0034】
前記測距発光部24は、発光部29と、ハーフミラーやビームスプリッタ等の光路分割部材31と、第1ビームスプリッタ32とを有している。前記発光部29は、例えば半導体レーザ等であり、前記測距光23として測距光軸上に不可視光である赤外光のレーザ光線を発する。
【0035】
又、前記光路分割部材31は、前記測距光23の一部を反射し、内部参照光33として前記内部参照光路28へと導く様になっている。更に、前記第1ビームスプリッタ32は、不可視光の前記測距光23を反射し、可視光の前記レーザポインタ光26を透過する光学特性を有している。前記測距発光部24は、所要の光強度、所要のパルス間隔等、所要の状態で前記測距光23を発光する様、前記制御演算部17に制御される。
【0036】
又、前記測距部16は、第2ビームスプリッタ34と、光路結合部35と、受光素子36とを有している。前記第2ビームスプリッタ34は、例えばハーフミラーであり、可視光の前記レーザポインタ光26と不可視光の前記測距光23の一部を反射し、前記反射測距光25の一部を透過させる光学特性を有している。前記光路結合部35は、前記第2ビームスプリッタ34を透過した前記反射測距光25と、前記内部参照光路28を通過した前記内部参照光33とを結合させ、前記受光素子36に受光させる様になっている。
【0037】
該受光素子36は、受光した前記反射測距光25と、前記内部参照光33とを、反射光受光信号と内部光受光信号へと変換し、前記制御演算部17へと送出す様になっている。該制御演算部17は、前記測距光23毎に反射光受光信号と内部光受光信号との受光時間差を求め、前記内部参照光33と前記反射測距光25との受光時間差に基づき測距光照射点(測定点)迄の距離を測定する様になっている。
【0038】
前記ポインタ光発光部27は、例えば発光ダイオード(LED)であり、可視光の前記レーザポインタ光26を発する。前記制御演算部17は、前記水平回転駆動部5の駆動、前記鉛直回転駆動部12の駆動、前記鉛直角検出器13と前記水平角検出器14の検出結果に基づき、前記レーザポインタ光26の発光のタイミングを制御する様になっている。
【0039】
測定作業を行う際に、前記発光部29より前記測距光23が射出されると、該測距光23の一部(大部分)は前記光路分割部材31を透過し、前記第1ビームスプリッタ32に入射する。前記測距光23の残部は前記内部参照光33として前記光路分割部材31により反射され、前記内部参照光路28を介して前記測距部16へと導かれる。
【0040】
前記第1ビームスプリッタ32で反射された前記測距光23は、前記第2ビームスプリッタ34に入射し、該第2ビームスプリッタ34により前記測距光23の一部が反射され、投光レンズ等のレンズ群から構成された前記レンズユニット11へと導かれる。尚、前記第1ビームスプリッタ32、前記第2ビームスプリッタ34を透過した前記測距光23は、図示しない反射防止部材により吸収される。
【0041】
前記レンズユニット11により平行光束とされた前記測距光23は、図示しない測定範囲或は測定対象物へと照射される。又、前記望遠鏡部9が前記鉛直回転軸10を中心に回転されることで、前記測距光23は鉛直面内に回転照射される。又、前記水平回転駆動部5が前記托架部7を水平方向に回転させることで、前記測距光23は前記水平回転軸6を中心に水平方向に回転照射される。従って、前記望遠鏡部9の鉛直方向の回転と、前記托架部7の水平方向の回転の協働により、測定範囲の所定範囲或は全域を前記測距光23により走査できる。
【0042】
該測距光23は、前記測定範囲内に走査され、該測定範囲内に存在する測定対象物により反射される。前記反射測距光25は、前記レンズユニット11へ入射し、前記第2ビームスプリッタ34を一部が透過し、前記測距部16へと導かれる。
【0043】
前記第2ビームスプリッタ34を透過した前記反射測距光25は、前記光路結合部35を経て、前記受光素子36に受光される。又、前記内部参照光路28を経た前記内部参照光33が、前記光路結合部35を介して前記受光素子36で受光される。
【0044】
前記制御演算部17は、反射光受光信号と、内部光受光信号との受光時間差に基づき、測距光照射点(測定点)迄の距離を測定する。又、測定点迄の距離と、前記測距光23毎の前記鉛直角検出器13により検出された鉛直角と、前記水平角検出器14により検出された水平角とに基づき、前記制御演算部17が測定点の3次元座標を演算する。前記測距光23毎に測定点の3次元座標値が記録されることで、測定範囲の全域に関する、或は測定対象物に対する3次元の点群データを得ることができる。
【0045】
又、前記ポインタ光発光部27から発せられた前記レーザポインタ光26は、前記第1ビームスプリッタ32を透過し、前記第2ビームスプリッタ34に反射される。これにより、前記レーザポインタ光26の光軸は前記測距光23の光軸と合致し、前記レーザポインタ光26は前記測距光23と同軸で照射される。更に、前記レーザポインタ光26は、前記望遠鏡部9の鉛直方向の回転、前記托架部7の水平方向の回転の協働により、前記測定範囲の全域の任意の位置に照射される。
【0046】
測定作業終了後、測設作業を行う為には、指定した測設点を前記レーザポインタ光26により照射し続け、作業者に測設点を指示する必要がある。
【0047】
次に、図4のフローチャートを用い、前記レーザスキャナ1を用いた3次元の点群データの取得、測設点の指示処理について説明する。
【0048】
STEP:01 先ず、前記レーザスキャナ1を任意の位置に設置、前記整準部3により整準を行う。
【0049】
STEP:02 次に、前記水平回転駆動部5により前記托架部7を水平回転させ、前記鉛直回転駆動部12により前記望遠鏡部9を鉛直回転させ、前記レーザスキャナ1により測定範囲を走査し、測定対象物の3次元の点群データを取得する。
【0050】
STEP:03 3次元の点群データが取得されると、前記制御演算部17は、測定結果の中から既知の点に設けられたプリズム、或は配管のボルト孔等の既知の座標を有する測定点等を選択し、既知点の測定結果を基に測定対象物に対する前記レーザスキャナ1の設置位置を既知化する。又、既知点の測定結果を基に図面データの座標系(図面座標系)に於ける前記レーザスキャナ1の位置を演算する。
【0051】
尚、該レーザスキャナ1が直交する2の壁面に近接して設けられている場合は、前記レーザスキャナ1を水平方向に全周回転させて壁面を走査し、該レーザスキャナ1と各壁面との距離をそれぞれ求め、該距離を基に図面座標系に於ける前記レーザスキャナ1の位置を演算してもよい。又、該レーザスキャナ1を既知の座標を有する基準点に設置する場合には、STEP:03の工程は省略することができる。
【0052】
STEP:04 前記制御演算部17は、前記レーザスキャナ1の図面座標系に於ける位置に基づき、点群データを図面データとマッチングさせ、点群データの座標を図面座標系へと変換する。
【0053】
STEP:05 図面データを基に所定の測設点が指定されると、前記制御演算部17は、測設点の図面座標系の座標を点群データの座標系に座標変換する。前記制御演算部17は、前記水平回転駆動部5を駆動し、前記托架部7を水平回転させ前記望遠鏡部9を指示された測設点へと向ける。該望遠鏡部9の水平方向が前記測設点と一致すると、前記水平回転駆動部5を停止し、停止状態を維持する。次に、前記制御演算部17は、前記鉛直回転駆動部12を駆動させ、前記望遠鏡部9を高速で鉛直回転させると共に、前記ポインタ光発光部27に前記レーザポインタ光26をパルス発光させる。尚、この場合の回転速度は、前記レーザポインタ光26を視認した場合に残像が維持される程度以上とするのが好ましい。
【0054】
ここで、前記望遠鏡部9を鉛直回転させた際の該望遠鏡部9の鉛直角は、前記鉛直角検出器13により常時検出されている。前記制御演算部17は、前記鉛直角検出器13の検出結果に基づき、測距光軸と測設点の座標とが一致した時に前記レーザポインタ光26が照射される様、前記ポインタ光発光部27による前記レーザポインタ光26の発光のタイミングを制御する。
【0055】
従って、前記レーザポインタ光26は、指定された測設点に対してのみ照射される。更に、前記望遠鏡部9が高速で鉛直回転されるので、前記レーザポインタ光26は測設点を連続的に照射している様に認識される。
【0056】
上述の様に、本実施例では、前記レーザスキャナ1により、前記レーザポインタ光26を測設点に対して連続的に照射し、作業者に測設点を指示することで、前記レーザスキャナ1を用いての測設(レイアウト)作業を行うことが可能となる。
【0057】
更に、点群データの取得と測設点の指示とを同時に行うことも可能である。この場合、点群データを取得しつつ、測距光軸が測設点の座標と一致した時に前記レーザポインタ光26を発光させる。
【0058】
従って、前記レーザスキャナ1単体で、測定作業と測設作業の両方を行うことができるので、該レーザスキャナ1の汎用性を高めることができ、作業性を向上させることができる。
【0059】
又、測設点に前記レーザポインタ光26を照射する為、前記レーザスキャナ1を測設点指示装置として使用すれば、トータルステーション等の測量装置を別途設ける必要がなく、作業コストを低減させることができる。
【0060】
更に、前記レーザスキャナ1単体で測定作業と測設作業が行えることで、トータルステーションと前記レーザスキャナ1とを併用した時の様に、トータルステーションの座標系と前記レーザスキャナ1の座標系とのマッチングが不要となるので、処理時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0061】
尚、本実施例では、測設点に前記レーザポインタ光26を照射する際に、前記望遠鏡部9を高速で鉛直回転させているが、該望遠鏡部9を上下方向に揺動させる様にしてもよい。該望遠鏡部9を上下方向に揺動させる場合も、鉛直回転させる場合と同様、前記制御演算部17により前記測距光23の光軸が測設点の座標と一致した時に前記レーザポインタ光26を照射する様前記ポインタ光発光部27の発光が制御される。
【0062】
又、本実施例では、前記ポインタ光発光部27を設け、不可視光の前記測距光23と同軸で可視光の前記レーザポインタ光26を照射しているが、前記測距光23を可視光とする場合には、該測距光23を測設点を指定するレーザポインタ光として使用できるので、前記ポインタ光発光部27は省略することができる。
【0063】
又、前記測距光23の光軸と前記レーザポインタ光26の光軸との間の距離Dが既知である場合には、前記測距光23と前記レーザポインタ光26とは同軸でなくてもよい。この場合、図面座標系から点群データの座標系に変換する際に、距離Dだけ測距光軸を変更させる。
【0064】
次に、図5に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図5中、図3中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第2の実施例では、第2ビームスプリッタ34と光路結合部35との間に第3ビームスプリッタ37を設け、該第3ビームスプリッタ37の反射光軸(撮像光軸)上に撮像部38を設けている。即ち、撮像光軸は、測距光23の光軸、レーザポインタ光26の光軸と同軸となっている。又、前記第3ビームスプリッタ37は、不可視光の前記測距光23及び反射測距光25のみを透過し、可視光の反射レーザポインタ光及び背景光を反射する。
【0066】
前記撮像部38は撮像素子39を有している。該撮像素子39はデジタル画像信号を出力するものであり、例えばCCDやCMOSセンサ等、画素(ピクセル)の集合体で構成されたものであり、各画素は、前記撮像素子39内での位置が特定できる様になっている。
【0067】
ポインタ光発光部27から照射された前記レーザポインタ光26は、測定範囲或は測定対象物で反射され、反射レーザポインタ光は背景光と共にレンズユニット11へ入射し、前記第2ビームスプリッタ34を一部が透過し、前記第3ビームスプリッタ37により反射され、前記撮像素子39に受光される。該撮像素子39から出力されるデジタル画像信号により、前記レーザポインタ光26の照射点を含む2次元の背景画像が取得される。
【0068】
従って、前記レーザポインタ光26の照射位置を画像上で認識することができるので、測設点の位置確認、測設点の指定を視覚的に容易に行うことができる。
【0069】
尚、第1の実施例、第2の実施例では、レーザスキャナ1は測距光23をパルス光とし、TOF方式で測距を行ったが、前記レーザスキャナ1の前記測距光23を変調した連続光とし、射出光と反射光との位相差を求め、該位相差に基づき距離測定を行う様にしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 レーザスキャナ
5 水平回転駆動部
7 托架部
9 望遠鏡部
12 鉛直回転駆動部
13 鉛直角検出器
14 水平角検出器
16 測距部
17 制御演算部
19 記憶部
23 測距光
24 測距発光部
25 反射測距光
26 レーザポインタ光
27 ポインタ光発光部
38 撮像部
図1
図2
図3
図4
図5