(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223569(P2017-223569A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】モータドライバ評価ツール
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
G01R31/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-119667(P2016-119667)
(22)【出願日】2016年6月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】土橋 正典
【テーマコード(参考)】
2G116
【Fターム(参考)】
2G116BA00
2G116BC00
2G116BD07
2G116BD08
2G116BD09
2G116BD10
2G116BD11
2G116BD13
(57)【要約】
【課題】容易にモータドライバを評価する。
【解決手段】モータドライバ評価ツール10は、モータドライバ2を実装することのできる評価基板100と、評価基板100と着脱可能に設けられておりコンピュータ30からの指示に応じてモータドライバ2の駆動制御を行うとともにモータドライバ2の評価に必要な各種情報(VOUT、IOUT、VM、IM、Tjなど)を取得してコンピュータ30に伝達する制御モジュール200とを有する。制御モジュール200は、例えば、モータドライバ2に電力(VM、IM)を供給する電源部210と、モータドライバ2に動作クロック信号CLKを供給する発振部220と、モータドライバ2に各種制御信号Sctrlを供給する制御部230と、モータドライバ2の各種情報を取得する情報取得部240と、コンピュータ30と制御部230との間で通信を行う通信部250と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータドライバを実装することのできる評価基板と、
前記評価基板と着脱可能に設けられておりコンピュータからの指示に応じて前記モータドライバの駆動制御を行うとともに前記モータドライバの評価に必要な各種情報を取得して前記コンピュータに伝達する制御モジュールと、
を有することを特徴とするモータドライバ評価ツール。
【請求項2】
前記制御モジュールは、
前記モータドライバに電力を供給する電源部と、
前記モータドライバに動作クロック信号を供給する発振部と、
前記モータドライバに各種制御信号を供給する制御部と、
前記モータドライバの各種情報を取得する情報取得部と、
前記コンピュータと前記制御部との間で通信を行う通信部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のモータドライバ評価ツール。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記モータドライバ各相の出力電圧値及び出力電流値、前記モータドライバの駆動電圧値及び駆動電流値、並びに、前記モータドライバの温度情報を取得することを特徴とする請求項2に記載のモータドライバ評価ツール。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報取得部で取得された各種情報に基づいて前記モータドライバが異常状態であるか否かを検知することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のモータドライバ評価ツール。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータドライバまたは前記評価基板が正規品でないときに前記モータドライバの評価を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモータドライバ評価ツール。
【請求項6】
前記制御部は、前記モータドライバまたは前記評価基板のID情報または特性情報を取得して正規品であるか否かを識別することを特徴とする請求項5に記載のモータドライバ評価ツール。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のモータドライバ評価ツールと、
前記モータドライバ評価ツールに電力を供給する電源装置と、
前記モータドライバ評価ツールを制御するコンピュータと、
を有することを特徴とするモータドライバ評価システム。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記モータドライバの駆動制御及び情報取得に関する制御パラメータの入力操作を受け付けて前記モータドライバ評価ツールに指示することを特徴とする請求項7に記載のモータドライバ評価システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、前記モータドライバ評価ツールから伝達される各種情報を画面表示することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のモータドライバ評価システム。
【請求項10】
請求項7に記載のモータドライバ評価システムに用いられるコンピュータで実行され、前記モータドライバの駆動制御及び情報取得に関する制御パラメータの入力操作を受け付けて前記モータドライバ評価ツールに指示するとともに前記モータドライバ評価ツールから伝達される各種情報を画面表示するユーザインタフェイスとして、前記コンピュータを機能させることを特徴とするモータドライバ評価ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、モータドライバ評価ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ(例えばステッピングモータ)を適切に駆動するためには、その駆動主体となるモータドライバを正しく評価しておくことが重要となる。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−185718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータドライバを評価するためには、コンピュータや電源装置の他に、オシロスコープやデジタルマルチメータなどの測定機器が別途必要になる。そのため、モータドライバのユーザ(セット設計者など)にとっては、モータドライバの評価環境を整えること自体が煩雑な作業となっていた。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、容易にモータドライバを評価することのできるモータドライバ評価ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているモータドライバ評価ツールは、モータドライバを実装することのできる評価基板と、前記評価基板と着脱可能に設けられておりコンピュータからの指示に応じて前記モータドライバの駆動制御を行うとともに前記モータドライバの評価に必要な各種情報を取得して前記コンピュータに伝達する制御モジュールと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
上記第1の構成から成るモータドライバ評価ツールにおいて、前記制御モジュールは、前記モータドライバに電力を供給する電源部と、前記モータドライバに動作クロック信号を供給する発振部と、前記モータドライバに各種制御信号を供給する制御部と、前記モータドライバの各種情報を取得する情報取得部と、前記コンピュータと前記制御部との間で通信を行う通信部と、を含む構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
上記第2の構成から成るモータドライバ評価ツールにおいて、前記情報取得部は、前記モータドライバ各相の出力電圧値及び出力電流値、前記モータドライバの駆動電圧値及び駆動電流値、並びに、前記モータドライバの温度情報を取得する構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第2または第3の構成から成るモータドライバ評価ツールにおいて、前記制御部は、前記情報取得部で取得された各種情報に基づいて前記モータドライバが異常状態であるか否かを検知する構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成るモータドライバ評価ツールにおいて、前記制御部は、前記モータドライバまたは前記評価基板が正規品でないときに前記モータドライバの評価を禁止する構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第5の構成から成るモータドライバ評価ツールにおいて、前記制御部は、前記モータドライバまたは前記評価基板のID情報または特性情報を取得して正規品であるか否かを識別する構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、本明細書中に開示されているモータドライバ評価システムは、上記第1〜第6いずれかの構成から成るモータドライバ評価ツールと、前記モータドライバ評価ツールに電力を供給する電源装置と、前記モータドライバ評価ツールを制御するコンピュータと、を有する構成(第7の構成)とされている。
【0014】
なお、上記第7の構成から成るモータドライバ評価システムにおいて、前記コンピュータは、前記モータドライバの駆動制御及び情報取得に関する制御パラメータの入力操作を受け付けて前記モータドライバ評価ツールに指示する構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第7または第8の構成から成るモータドライバ評価システムにおいて、前記コンピュータは、前記モータドライバ評価ツールから伝達される各種情報を画面表示する構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されているモータドライバ評価ソフトウェアは、上記第7の構成から成るモータドライバ評価システムに用いられるコンピュータで実行され、前記モータドライバの駆動制御及び情報取得に関する制御パラメータの入力操作を受け付けて前記モータドライバ評価ツールに指示するとともに前記モータドライバ評価ツールから伝達される各種情報を画面表示するユーザインタフェイスとして、前記コンピュータを機能させる構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている発明によれば、容易にモータドライバを評価することのできるモータドライバ評価ツールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】モータドライバ評価システムの全体構成を示すブロック図
【
図2】モータドライバ評価ソフトウェアの実行画面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<モータドライバ評価システム>
図1は、モータドライバ評価システムの全体構成を示すブロック図である。本構成例のモータドライバ評価システム1は、モータドライバ評価ツール10と、電源装置20と、コンピュータ30と、を有する。
【0020】
モータドライバ評価ツール10は、電源装置20から電源電圧Vccの供給を受けて動作し、コンピュータ30との間で相互に通信を行いながら、モータドライバ2を評価するための駆動制御及び情報取得を行う。
【0021】
電源装置20は、商用交流電圧(例えばAC100V)から直流の電源電圧Vcc(例えばDC24V)を生成してモータドライバ評価ツール10に供給するユニットである。
【0022】
コンピュータ30は、モータドライバ評価ツール10の制御主体であり、モータドライバ評価システム1のユーザインタフェイスとして機能し得るスペックを具備していれば、その形態(ノート型、デスクトップ型、タブレット型など)は不問である。
【0023】
<モータドライバ評価ツール>
引き続き、
図1を参照しながら、モータドライバ評価ツール10について説明を行う。本構成例のモータドライバ評価ツール10は、DUT[device under test]ボード100とコントロールボード200とを別個独立に有している。
【0024】
DUTボード100は、モータドライバ2を実装することのできる評価基板であり、コントロールボード200及びモータ3が着脱されるコネクタを複数備えている。例えば、モータドライバ2の駆動対象となるモータ3が2相ステッピングモータである場合には、本図で示したように、DUTボート100のモータ接続端子として、4本のコネクタ(OUT1A、OUT1B、OUT2A、OUT2B)を用意しておけばよい。
【0025】
コントロールボード200は、DUTボード100と着脱可能に設けられた制御モジュールであり、コンピュータ30からの指示に応じてモータドライバ2の駆動制御を行うとともに、モータドライバ2の評価に必要な各種情報を取得してコンピュータ30に伝達する。なお、本図の例において、コントロールボード200には、電源部210と、発振部220と、制御部230と、情報取得部240と、通信部250と、が搭載されている。
【0026】
電源部210は、電源電圧Vcc(例えばDC24V)から所望のモータ駆動電圧VM(例えばDC12V)を生成してDUTボード100(延いてはモータドライバ2)に供給するDC/DCコンバータである。
【0027】
発振部220は、制御部230からの指示に応じてDUTボード100(延いてはモータドライバ2)に動作クロック信号CLKを供給する。
【0028】
制御部230は、通信部250を介してコンピュータ30との相互通信を行いながら、DUTボード100(延いてはモータドライバ2)に各種の制御信号Sctrlを供給したり、情報取得部240で取得された各種情報をコンピュータ30に伝達したりする。制御信号Sctrlとしては、各種イネーブル信号、動作モード切替信号、回転方向切替信号、ないしは、励磁モード切替信号などを挙げることができる。
【0029】
情報取得部240は、モータドライバ2の各種情報を取得する。なお、上記の各種情報としては、モータドライバ2各相の出力電圧値VOUT及び出力電流値IOUT、モータドライバ2の駆動電圧値VM及び駆動電流値IM、並びに、モータドライバ2の温度情報Tj(=ジャンクション温度)を挙げることができる。
【0030】
通信部250は、コンピュータ30と制御部230との間で相互通信を行うための通信インタフェイスである。なお、通信部250としては、コンピュータ30に広く搭載されているUSB[universal serial bus]インタフェイスなどを用いることが望ましい。
【0031】
上記したように、本構成例のモータドライバ評価ツール10には、コンピュータ30からの指示に応じてモータドライバ2の駆動制御を行う機能だけでなく、モータドライバ2の評価に必要な各種情報を取得してコンピュータ30に伝達する機能(=自動出力キャプチャー機能)が設けられている。
【0032】
従って、オシロスコープやデジタルマルチメータなどの測定機器を要することなく、コンピュータ20と電源装置30だけを用意すれば、モータドライバ2の評価環境を整えることができるので、容易にモータドライバ2を評価することが可能となる。
【0033】
また、制御部230には、情報取得部240で取得された各種情報に基づいてモータドライバ2が異常状態(=脱調など)に陥っているか否かを検知し、その検知結果をコンピュータ30にフラグ通知する機能(=自己判断機能)を設けてもよい。このような機能を追加することにより、ユーザは、モータ30に対して出力電圧が正常に印加されているか否かを即座に判断することが可能となる。なお、上記の自己判断機能については、制御部230への実装に代えて、コンピュータ30で実行されるモータドライバ評価ソフトウェアに実装してもよい。
【0034】
<モータドライバ評価ソフトウェア>
図2は、コンピュータ30のモニタに表示されるモータドライバ評価ソフトウェアの実行画面を示す模式図である。モータドライバ評価ソフトウェアは、モータドライバ評価システム1のユーザインタフェイスとして、コンピュータ30を機能させるためのプログラムである。なお、モータドライバ評価ソフトウェアは、コンピュータ30のストレージデバイス(HDD[hard disk drive]、SSD[solid state drive]、フラッシュメモリなど)に格納されており、その他のプログラムと同様、メインメモリに展開されてCPU[central processing unit]により実行される。
【0035】
モータドライバ評価ソフトウェアが実行されると、本図のソフトウェア実行画面Xがコンピュータ30のモニタに表示される。ソフトウェア実行画面Xには、例えば、情報表示領域X1と、第1設定領域X2と、第2設定領域X3と、が含まれている。
【0036】
情報表示領域X1には、主として、モータドライバ評価ツール10から伝達される各種情報が表示される。ここで表示される各種情報としては、例えば、モータドライバ2各相の出力電圧値VOUT及び出力電流値IOUTのオシロスコープ波形、並びに、モータドライバ2の駆動中における温度情報Tjを挙げることができる。上記のオシロスコープ波形は、コンピュータ30のストレージデバイスにセーブ(保存)することも可能である。
【0037】
このような波形確認機能と温度モニタ機能を実装することにより、モータドライバ2の動作状態を一目で把握することができるので、その評価を容易に行うことが可能となる。なお、情報表示領域X1には、モータドライバ2の駆動電圧VMと駆動電流IMから、モータドライバ2の消費電力を表示することも可能である。
【0038】
第1設定領域X2には、主として、モータドライバ2の駆動制御に関する制御パラメータの入力操作を受け付けるためのGUI[graphical user interface]コンポーネントが表示される。なお、第1設定領域X2で設定することのできる制御パラメータとしては、各種電圧値及び電流値、動作クロック信号CLKの発振周波数及びそのオン/オフ、回転方向、ないしは、励磁モードなどを挙げることができる。なお、第1設定領域X2で設定された各種制御パラメータは、モータドライバ評価ツール10(特に制御部230)に伝達されてモータドライバ2の駆動制御に反映される。
【0039】
第2設定領域X3には、主として、モータドライバ2の情報取得と情報表示領域X1での情報表示に関する制御パラメータの入力操作を受け付けるためのGUIコンポーネントが表示される。なお、第2設定領域X3で設定することのできる制御パラメータとしては、チャンネル毎のオン/オフ、ソース選択(VOUT/IOUT)、出力端子選択(OUT1A、OUT1B、OUT2A、OUT2B)、表示目盛間隔、自動サンプリング周波数などを挙げることができる。なお、第2設定領域X3で設定された各種制御パラメータは、モータドライバ評価ツール10(特に情報取得部240)に伝達されてモータドライバ2の情報取得に反映されるとともに、情報表示領域X1での情報表示にも反映される。
【0040】
また、第1設定領域X2及び第2設定領域X3にそれぞれ表示されるGUIコンポーネントとしては、クリック(またはタップ)する毎に選択/非選択が切り替わるトグルボタン、所定範囲内で設定値を選択するためのスライダ、設定値を直接入力するためのテキストボックス、リスト内から1つの設定値を選択するためのドロップダウンリスト、及び、複数の選択肢から1つを選ぶためのラジオボタンなどを挙げることができる。
【0041】
このように、モータドライバ評価ソフトウェアをコンピュータ30で実行することにより、視認性と操作性に優れたソフトウェア実行画面Xを介して、モータドライバ評価ツール10を直感的に制御することが可能となる。
【0042】
<ボード分割の技術的意義>
次に、モータドライバ評価ツール10において、DUTボード100とコントロールボード200が分割されていることの技術的意義について、
図3を参照しながら説明する。
【0043】
図3は、DUTボード、コントロールボード、及び、モータの組み合わせパターンを任意に変更しながらそれぞれの評価を行う様子を示した模式図である。例えば、DUTボート100A及び100B、コントロールボード200A及び200B、並びに、モータ3A及び3Bについては、次のように、8通りの組み合わせ(1)〜(8)が考えられ、その組み合わせ毎に評価X1〜X8を得ることができる。
【0044】
(1)100A−200A−3A : 評価X1
(2)100A−200A−3B : 評価X2
(3)100A−200B−3A : 評価X3
(4)100A−200B−3B : 評価X4
(5)100B−200A−3A : 評価X5
(6)100B−200A−3B : 評価X6
(7)100B−200B−3A : 評価X7
(8)100B−200B−3B : 評価X8
【0045】
従って、評価X1〜X8を適宜比較することにより、DUTボード100A及び100B、コントロールボード200A及び200B、並びに、モータ3A及び3Bのそれぞれについて、正しい個別評価を下すことが可能となる。
【0046】
例えば、組み合わせ(1)でモータドライバ2の発熱異常が生じた場合、まずは、組み合わせ(1)をベースとしつつ、DUTボード100AのみをDUTボード100Bに交換し、組み合わせ(5)についての再評価を行ってみるとよい。組み合わせ(5)でモータドライバ2の発熱異常が生じないようであれば、DUTボード100Aに問題があることを特定することができる。
【0047】
一方、組み合わせ(5)でもモータドライバ2の発熱異常が生じるようであれば、DUTボード100A以外に問題があると考えられる。そこで、次には、組み合わせ(1)をベースとしつつ、コントロールボード200Aのみをコントロールボード200Bに交換し、組み合わせ(3)についての再評価を行ってみるとよい。組み合わせ(3)でモータドライバ2の発熱異常が生じないようであれば、コントロールボード200Aに問題があることを特定することができる。
【0048】
なお、組み合わせ(3)でもモータドライバ2の発熱異常が生じるようであれば、モータ3Aに問題があるか否かを調べる必要がある。そこで、次には、組み合わせ(1)をベースとしつつ、モータ3Aのみをモータ3Bに交換し、組み合わせ(2)についての再評価を行ってみるとよい。組み合わせ(2)でモータドライバ2の発熱異常が生じないようであれば、モータ3Aに問題があることを特定することができる。
【0049】
上記したように、本構成例のモータドライバ評価ツール10であれば、DUTボード100とコントロールボード200が分離されているので、DUTボード毎の評価比較、コントロールボード毎の評価比較、及び、モータ毎の評価比較を容易に行うことが可能となる。また、DUTボード、コントロールボード、及び、モータの組み合わせパターンを任意に変更しながらそれぞれの評価を行い、その評価結果をコンピュータ30に格納しておけば、各評価を自動的に比較して問題の所在を特定することも可能となる。
【0050】
<セキュリティ機能(模倣品対策)>
これまでに説明してきたように、本構成例のモータドライバ評価ツール10は、別途の計測装置を要することなく、容易にモータドライバ2を評価することのできる画期的なツールである。そのため、モータドライバ評価ツール10の評価対象を正規品(自社製品)のモータドライバのみに限定することができれば、市場での優位性を大いに高めることができると考えられる。そこで、以下では、モータドライバ評価ツール10の評価対象から非正規品(他社製品)のモータドライバを除外するための手法について詳細に説明する。
【0051】
図4は、DUTボード100の一構成例を示す模式図である。本構成例のDUTボード100において、モータドライバ実装部110は、正規品(自社製品)のモータドライバ2xのみを実装することができることができるように、その形態(パッケージサイズ、ピン数、ピン配置、及び、ピン間隔など)が規格化されている。従って、この規格を満たさない非正規品のモータドライバ2yについては、モータドライバ評価ツール10の評価対象から排除することができる。
【0052】
ただし、非正規品のモータドライバ2yであっても、その形態が正規品のモータドライバ2xと同規格であった場合には、DUTボード100への実装を排除することができなくなる。また、モータドライバ評価ツール10では、DUTボード100とコントロールボード200が分離されているので、コントロールボード200に非正規品(他社製品)のDUTボードが接続された場合には、モータドライバ実装部110による非正規品(他社製品)の排除機能が形骸化してしまう。
【0053】
そこで、コントロールボード200に搭載された制御部230は、モータドライバ2またはDUTボード100が正規品(自社製品)であるか否かを識別し、これらが正規品ではないと判定したときにモータドライバ2の評価を禁止する機能(=正規品識別機能)を備えている。以下では、正規品の識別手法について具体例を挙げながら説明する。
【0054】
図5は、制御部230による正規品の第1識別例を示す模式図である。本図において、制御部230は、モータドライバ2の不揮発性メモリに格納されているID情報(チップ名など)を取得して、モータドライバ2が正規品(自社製品)であるか否かを識別する。
【0055】
図6は、制御部230による正規品の第2識別例を示す模式図である。本図において、制御部230は、DUTボード100上に搭載された不揮発性メモリに格納されているID情報(ボード名など)を取得して、DUTボード100が正規品(自社製品)であるか否かを識別する。
【0056】
図7は、制御部230による正規品の第3識別例を示す模式図である。本図において、制御部230は、モータドライバ2の外部端子(例えばテストピン)に設けられた静電保護ダイオードの順方向降下電圧Vf(=モータドライバ2の特性情報の一つ)を取得し、その電圧値が所定範囲内であるか否かに応じて、モータドライバ2が正規品(自社製品)であるか否かを識別する。なお、DUTボード100の識別について、上記と同様の手法を採用することも可能である。
【0057】
図8は、制御部230による正規品の第4識別例を示す模式図である。本図において、制御部230は、モータドライバ2に所定のテストコマンド(TEST)を送出して出力電圧VOUT及び出力電流IOUT(=モータドライバ2の特性情報の一つ)を取得し、これが期待値通りであるか否かに応じて、モータドライバ2が正規品(自社製品)であるか否かを識別する。
【0058】
なお、先にも述べたように、制御部230は、モータドライバ2またはDUTボード100が正規品でないと判定したときにモータドライバ2の評価を禁止する機能を備えている。その評価禁止手法としては、例えば、コントロールボード200からDUTボード100(延いてはモータドライバ2)への電力供給や信号出力を禁止してもよいし、若しくはコンピュータ30におけるモータドライバ評価ソフトウェアの実行を禁止してもよい。
【0059】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、ステッピングモータの駆動制御を行うHブリッジ型モータドライバICの評価手段として好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 モータドライバ評価システム
2、2x、2y モータドライバ
3、3A、3B モータ
10 モータドライバ評価ツール
20 電源装置
30 コンピュータ
100、100A、100B DUTボード(評価基板)
110 モータドライバ実装部
200、200A、200B コントロールボード(制御モジュール)
210 電源部
220 発振部
230 制御部
240 情報取得部
250 通信部
X ソフトウェア実行画面
X1 情報表示領域
X2 第1設定領域
X3 第2設定領域