【解決手段】レーダ装置は、抽出部と予測部とペアリング部と再ペアリング部と情報生成部とを備える。抽出部は、所定周期で周波数が変化する送信信号が物標で反射した反射波の差分周波数から、送信信号の周波数が上昇する第1期間及び下降する第2期間で予測ピーク信号に応じた履歴ピーク信号を抽出する。予測部は前回のピーク信号から今回の予測ピーク信号を予測する。ペアリング部は第1期間及び第2期間の履歴ピーク信号をペアリングする。再ペアリング部はペアリング部でペアリングした履歴ピーク信号を含む所定範囲に存在するピーク信号に基づいて前記ペアリング部でペアリングした前記履歴ピーク信号を再ペアリングする。情報生成部はペアリング部でのペアリング結果及び再ペアリング部での再ペアリング結果に応じて物標の情報を生成する。
所定周期で周波数が変化する送信信号と、当該送信信号に基づく送信波が物標で反射した反射波を受信した受信信号との差分周波数から、前記送信信号の周波数が上昇する第1期間および前記周波数が下降する第2期間のそれぞれで、予測ピーク信号に応じた履歴ピーク信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前回のピーク信号に基づき、前記予測ピーク信号として今回のピーク信号を予測する予測部と、
前記第1期間の前記履歴ピーク信号と前記第2期間の前記履歴ピーク信号とをペアリングするペアリング部と、
前記ペアリング部でペアリングした前記履歴ピーク信号を含む所定範囲に存在するピーク信号に基づいて前記ペアリング部でペアリングした前記履歴ピーク信号を再ペアリングする再ペアリング部と、
前記ペアリング部でのペアリング結果および前記再ペアリング部での再ペアリング結果に応じて前記物標の情報を生成する情報生成部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
所定周期で周波数が変化する送信信号と、当該送信信号に基づく送信波が物標で反射した反射波を受信した受信信号との差分周波数から、前記送信信号の周波数が上昇する第1期間および前記周波数が下降する第2期間のそれぞれで、予測ピーク信号に応じた履歴ピーク信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出した前回のピーク信号に基づき、前記予測ピーク信号として今回のピーク信号を予測する予測工程と、
前記第1期間の前記履歴ピーク信号と前記第2期間の前記履歴ピーク信号とをペアリングするペアリング工程と、
前記ペアリング工程でペアリングした前記履歴ピーク信号を含む所定範囲に存在するピーク信号に基づいて前記ペアリング工程でペアリングした履歴ピーク信号を再ペアリングする再ペアリング工程と、
前記ペアリング工程でのペアリング結果および前記再ペアリング工程での再ペアリング結果に応じて前記物標の情報を生成する情報生成工程と、
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するレーダ装置および信号処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を用いて実施形態に係る信号処理方法について説明する。
図1は、実施形態に係る信号処理方法の概要を説明する図である。なお、かかる信号処理方法は、図示しない車両Cに搭載されるレーダ装置によって実行されるものとする。
【0012】
また、かかるレーダ装置は、いわゆるFM−CW(Frequency Modulated−Continuous Wave)方式をとっており、反射波に基づいて物標Tの情報を生成する。ここでは、物標Tが車両Cの前方を走行する先行車両である場合について説明するが、これに限定されるものではない。たとえば、物標Tは、自車両Cの後方を走行する後方車両や自転車、歩行者などの移動体であってもよく、たとえば路側帯や信号機やポール、ガードレールなどの静止物であってもよい。
【0013】
ここで、実施形態に係る信号処理方法について説明する。かかる処理方法において、レーダ装置は、所定周期で周波数が変化する送信波を送信アンテナTxから送信し、当該送信波を反射する物標Tからの反射波を受信アンテナRxで受信する。
【0014】
次に、レーダ装置は、送信波に対応する送信信号と、反射波に対応する受信信号とをミキシングしてビート信号を生成する(ステップS1)。具体的には、レーダ装置は、所定周期で周波数が上昇する第1期間(以下、UP区間と記載する)と、周波数が下降する第2期間(以下、DOWN区間と記載する)とのそれぞれの区間における送信信号と受信信号との差分周波数(ビート周波数)に基づくビート信号を生成する。
【0015】
レーダ装置は、ビート信号をFFT(Fast Fourier Transform)処理して周波数領域の信号(以下、周波数ビート信号と記載する)を生成し、当該周波数ビート信号からピーク信号を抽出する(ステップS2)。レーダ装置は、所定条件に基づきUP区間のピーク信号S11とDOWN区間のピーク信号S12とをペアリングし、ペアデータPを導出する(ステップS3)。
【0016】
ここで、ペアリングとは、同一物標に属するUP区間のピーク信号S11と、DOWN区間のピーク信号S12とを対応付ける処理である。かかる対応付けを行うことで、レーダ装置は、当該物標までの距離、相対速度、および、角度等を導出する。なお、レーダ装置は、異なる物標に属するUP区間のピーク信号S11と、DOWN区間のピーク信号S12とを対応付けるミスペアリング処理を行う場合がある。
【0017】
また、レーダ装置は、過去に導出した物標Tに関するペアデータに基づいて今回のピーク信号を予測ピーク信号として予測し、当該予測ピーク信号を含む幅W0の所定の周波数範囲R0に含まれる履歴ピーク信号を抽出する。レーダ装置は、抽出した履歴ピーク信号をペアリングすることで今回の物標Tに関する履歴ペアデータPを生成する。
図1に示す例では、レーダ装置が履歴ピーク信号S11および履歴ピーク信号S12をペアリングして履歴ペアデータPを生成するものとする。
【0018】
このとき、たとえば同一物体に属する複数の物標に対応する複数のピーク信号を所定の周波数区間で抽出する場合がある。具体的には、先行車両の後方部(たとえば、バックドア)に反射した反射波と底部(たとえば、アンダーカバー)および路面に反射した反射波とを受信した場合などに、比較的狭い周波数範囲に複数のピーク信号が存在する。この場合、レーダ装置は間違ったピーク信号同士をペアリングしてしまう恐れがある。
【0019】
その理由は次のとおりである。レーダ装置が1台の車両の複数の反射点から反射波を受信する場合、それらの複数の反射波に応じた複数のピーク信号を検出する。その中で、前回処理で検出したピーク信号と同一物標に属する今回処理のピーク信号(履歴ピーク信号)を抽出する場合や、前回処理で検出されず今回処理で初めて検出されたピーク信号(新規ピーク信号)を抽出することがある。
【0020】
たとえば、1台の車両の後方部からの反射波により履歴ピーク信号が抽出され、同じ車両の底部からの反射波により新規ピーク信号が抽出される。そして、1台の車両からの複数の反射波のパワーが所定の閾値を超えるときは、履歴ピーク信号と新規ピーク信号とがそれぞれ抽出される。しかしながら、複数の反射波が合成されることで、たとえば、履歴ピーク信号が本来の周波数よりも低周波側および高周波側のいずれかに移動した周波数となることがある。
【0021】
その場合、この履歴ピーク信号から次回処理の履歴ピーク信号の周波数を予測する予測ピーク信号の周波数が本来の周波数とは異なる周波数となる。その結果、ミスペアリングが発生することがある。すなわち、予測ピーク信号が本来の周波数とは異なる周波数となることで、履歴ピーク信号を抽出する所定の周波数範囲が、履歴ピーク信号が存在する周波数とは異なる範囲を対象とする。そして、履歴ピーク信号の近傍周波数に存在する新規ピーク信号が所定の周波数範囲内となった場合、その新規ピーク信号が誤って履歴ピーク信号として抽出される。
【0022】
その結果、例えば、UP区間の新規ピーク信号とDOWN区間の履歴ピーク信号とがペアリングの対象となったり、UP区間の履歴ピーク信号とDOWN区間の新規ピーク信号とがペアリングの対象となったりするなど、ミスペアリングが発生する場合があった。このように、レーダ装置が、ミスペアしたペアデータPに応じて物標Tの情報を生成すると、物標Tが実際の位置とは異なる位置に検出されるなど、当該情報は誤差を含んだものとなり、物標Tの検出精度が低下してしまう。
【0023】
そこで、本実施形態に係る信号処理方法では、レーダ装置は、ペアデータPに含まれる履歴ピーク信号S11、S12を含む所定の周波数範囲Rに存在するピーク信号S21、S22に基づいて、履歴ピーク信号S11、S12を再ペアリングする(ステップS4)。
【0024】
レーダ装置は、ステップS3でのペアリング結果およびステップS4での再ペアリング結果に応じて物標Tの情報を生成する(ステップS5)。
【0025】
このように、レーダ装置は、ペアデータP付近に存在するピーク信号S21、S22を考慮して物標Tの情報を生成することで、ミスペアによる物標Tの検出精度の低下を抑制することができる。以下、かかる信号処理方法を実行するレーダ装置についてさらに説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係るレーダ装置1を示す図である。レーダ装置1は、信号処理装置10と、送信部20と、受信部30とを備える。
【0027】
送信部20は、信号生成部21と、発振器22と、送信アンテナTxとを備える。信号生成部21は、三角波状に波形が変化する変調信号を生成し、発振器22へ供給する。
【0028】
発振器22は、信号生成部21で生成された変調信号に基づいて連続波の信号を周波数変調した送信信号を生成し、送信アンテナTxに出力する。送信アンテナTxは、発振器22から入力された送信信号を送信波として、たとえば自車両Cの進行方向に向けて送信する。
【0029】
受信部30は、例えば4本の受信アンテナRx1〜Rx4(以下、まとめて受信アンテナRxとも記載する)と、各受信アンテナRxに接続された個別受信部31〜34とを備える。受信アンテナRxは、送信波が物標Tに反射した反射波を受信信号として受信する。
【0030】
個別受信部31〜34は、それぞれミキサ41〜44と、A/D変換部51〜54とを備え、受信アンテナRxを介して受信した受信信号に対して各種処理を行う。ミキサ41〜44は、受信信号と発振器22から入力される送信信号とをミキシングすることで、両信号の差分周波数を示すビート信号を生成する。A/D変換部51〜54は、ミキサ41〜44が生成したビート信号をデジタル信号に変換し、信号処理装置10に出力する。
【0031】
なお、ここでは個別受信部31〜34がミキサ41〜44と、A/D変換部51〜54とを備える場合について説明したがこれに限定されない。たとえば個別受信部31〜34が図示しない増幅器やフィルタを備えていてもよい。
【0032】
信号処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)および記憶部(図示せず)などを備えたマイクロコンピュータであり、レーダ装置1全体を制御する。信号処理装置10は、マイクロコンピュータでソフトウェア的に実現される機能として、送信制御部110と、FFT処理部120と、ピーク抽出部130と、静止物判定部140と、方位角算出部150と、ペアリング部160と、再ペアリング部220と、情報生成部200と、予測部210とを備える。
【0033】
送信制御部110は、送信部20の信号生成部21が変調信号を生成するタイミング等を制御する。FFT処理部120は、個別受信部31〜34から出力されるビート信号に対してFFT処理を施すことで、ビート信号を周波数領域の周波数ビート信号に変換する。
【0034】
ピーク抽出部130は、予測部210が予測した予測ピーク信号に応じた所定の周波数範囲R0において、UP区間のピーク信号およびDOWN区間のピーク信号を抽出する。なお、以下、UP区間のピーク信号をUPピーク信号、DOWN区間のピーク信号をDNピーク信号と記載する。また、予測ピーク信号に応じて抽出したUPピーク信号を履歴UPピーク信号、DNピーク信号を履歴DNピーク信号と記載する。履歴UPピーク信号および履歴DNピーク信号をまとめて履歴ピーク信号と記載する。
【0035】
具体的には、ピーク抽出部130は、たとえば周波数ビート信号のうち信号レベルの値が所定の閾値を超えるビート信号をピーク信号として抽出する。ピーク抽出部130は、抽出したピーク信号のうち、UP区間の所定の周波数範囲R0に含まれるUPピーク信号およびDOWN区間の所定の周波数範囲R0に含まれるDNピーク信号を、それぞれ履歴UPピーク信号および履歴DNピーク信号としてペアリング部160に出力する。
【0036】
また、ピーク抽出部130は、履歴UPピーク信号および履歴DNピーク信号を除いたピーク信号を新規UPピーク信号および新規DNピーク信号としてペアリング部160に出力する。ピーク抽出部130は、抽出した全てのピーク信号を静止物判定部140および方位角算出部150に出力する。
【0037】
静止物判定部140は、ピーク抽出部130が抽出したUPピーク信号とDNピーク信号との周波数差に応じて物標Tの相対速度を算出する。静止物判定部140は、自車両Cの車速の情報から、当該UPピーク信号およびDNピーク信号が静止物に対応するピーク信号(以下、静止物ピーク信号と記載する)であるか否かを判定する。静止物判定部140は、判定結果をペアリング部160、再ペアリング部220に出力する。なお、静止物判定部140は、自車両Cの車速に関する情報を、自車両Cの図示しない車速センサから取得するものとする。
【0038】
方位角算出部150は、UP区間およびDOWN区間それぞれにおいて、ピーク信号に基づいて方位角を算出する。方位角算出部150は、たとえばESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法を用いた演算を行うことで方位角を算出する。方位角算出部150は、算出した方位角を再ペアリング部220に出力する。
【0039】
ペアリング部160は、UPピーク信号とDNピーク信号とをペアリングするペアリング処理を行う。ペアリング部160は、履歴ペア部(第1ペア決定部)161と、新規ペア部(第2ペア決定部)162と静止物ペア部163とを備える。
【0040】
履歴ペア部161は、ピーク抽出部130が抽出した履歴UPピーク信号と履歴DNピーク信号とに対してペアリング処理を行い、履歴ペア(履歴ピークペア)を生成する。新規ペア部162は、新規UPピーク信号および新規DNピーク信号に対してペアリング処理を行い、新規ペア(新規ピークペア)を生成する。
【0041】
また、静止物ペア部163は、静止物判定部140で静止物ピーク信号と判定されたUPピーク信号とDNピーク信号とに対してペアリング処理を行い、静止物ペアを生成する。
【0042】
再ペアリング部220は、履歴ピーク信号の近傍に存在する新規ピーク信号に基づいて履歴ピーク信号を再ペアリングする。再ペアリング部220は、検出部170と、組み替え決定部180と、生成部190と、を備える。
【0043】
組み替え決定部180は、UP区間の履歴ピーク信号とDOWN区間の履歴ピーク信号とを対応付ける周波数軸上の関係と、UP区間の新規ピーク信号とDOWN区間の新規ピーク信号とを対応付ける周波数軸上の関係とが交差している場合、所定条件に応じて履歴ペアおよび新規ペアの組み替えを決定する。このように、再ペアリング部220の組み替え決定部180は、所定条件に応じて履歴ペアおよび新規ペアの組み替えを決定することで、履歴ピーク信号の近傍に存在する新規ペアの新規ピーク信号に基づいて履歴ペアに含まれる履歴ピーク信号の再ペアリングを行う。組み替え決定部180は、クロス判定部181と、変更判定部182と、組み替え部183とを備える。
【0044】
クロス判定部181は、履歴ペアおよび新規ペアが交差しているか否かを判定する。
図3に示すように、クロス判定部181は、履歴ペアP1に含まれる履歴UPピーク信号S11および履歴DNピーク信号S12の周波数軸上における大小関係が、新規ペアP2に含まれる新規UPピーク信号S21および新規DNピーク信号S22の周波数軸上における大小関係と交差しているか判定する。
【0045】
具体的に、クロス判定部181は、たとえば新規UPピーク信号S21が、履歴UPピーク信号S11の高周波側または低周波側のどちらか一方に存在するかを検出する。
図3に示す例では、新規UPピーク信号S21は、履歴UPピーク信号S11の高周波側に位置する。
【0046】
次に、クロス判定部181は、新規DNピーク信号S22が、履歴DNピーク信号S12の高周波側または低周波側のどちらか他方に存在する場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とが交差していると判定する。すなわち、新規DNピーク信号S22が新規UPピーク信号S12と同じ側に位置する場合、交差していないと判定する。
図3に示す例では、新規DNピーク信号S22は、履歴DNピーク信号S12の低周波側に位置する。したがって、クロス判定部181は、履歴ペアP1と新規ペアP2とが交差していると判定する。なお、
図3は、履歴ペアP1および新規ペアP2の関係を示す模式図である。
【0047】
図2に戻る。変更判定部182は、履歴ペアP1および新規ペアP2がクロス判定部181によって交差していると判定した場合に、所定条件を満たすか否かに応じて、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えるか否かを判定する。変更判定部182は、距離差判定部182aと、周波数差判定部182bと、方位差判定部182cと、静止物ペア判定部182dとを備える。
【0048】
距離差判定部182aは、
図4に示すように、履歴ペアP1に基づいて算出される物標T1までの距離D1と、新規ペアP2に基づいて算出される物標T2までの距離D2との距離差ΔDを算出する。距離差判定部182aは、算出した距離差ΔDが第1閾値Th1以下である場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定する。第1閾値Th1は、たとえば1mであるものとする。なお、
図4は、距離差ΔDを説明する模式図である。
【0049】
履歴ペアP1に対応する距離D1と新規ペアP2に対応する距離D2とが大きく離れている場合、履歴ペアP1に対応する物標T1と新規ペアP2に対応する物標T2とは異なる物体である可能性が高い。そのため、距離差判定部182aは、2つの物標T1、T2の距離差ΔDが第1閾値Th1より大きい場合、履歴ペアP1と新規ペアP2はそれぞれ異なるペアデータであるとして、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えないと判定する。これにより、履歴ペアP1と新規ペアP2とを誤って組み替えにくくなり、履歴ペアP1のミスペアをより低減することができる。
【0050】
次に、周波数差判定部182bは、
図5に示すように、予測部210が予測するUP区間の予測ピーク信号Pbuと、新規UPピーク信号S21との周波数差W11を算出する。また、周波数差判定部182bは、同様に予測部210が予測するDOWN区間の予測ピーク信号Pbdと、新規DNピーク信号S22との周波数差W12を算出する。周波数差判定部182bは、算出した周波数差W11、W12が第2閾値Th2以下である場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定する。第2閾値Th2はたとえば6BINであるとする。なお、1BINは、約468Hzである。また、
図5は、周波数差を説明するための模式図である。
【0051】
新規UPピーク信号S21および新規DNピーク信号S22が予測ピーク信号と大きく離れている場合、新規ペアP2は所望する物標とは異なる物標である可能性が高い。したがって、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えたペアがミスペアである可能性が高くなる。周波数差判定部182bは、このような場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えないようにする。これにより、履歴ペアP1と新規ペアP2とを誤って組み替えにくくなり、履歴ペアP1のミスペアをより低減することができる。
【0052】
図2に戻る。周波数差判定部182bは、履歴UPピーク信号S11と新規UPピーク信号S21との周波数差F11(
図5参照)を算出する。周波数差判定部182bは、履歴DNピーク信号S12と新規DNピーク信号S22との周波数差F12(
図5参照)を算出する。周波数差判定部182bは、算出した周波数差F11および周波数差F12が略一致する場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定する。
【0053】
周波数差F11と周波数差F12とが略一致する場合は、対応付けを変更した後の履歴ペアP1と新規ペアP2との距離や相対速度が略同一となる。そのため、両方のペアP1、P2が同一物体に属する可能性が高いと判定されるためである。
【0054】
方位差判定部182cは、履歴ペアP1に対応する物標T1と新規ペアP2に対応する物標T2との車両Cの左右方向における差が第3閾値Th3以下の場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定する。第3閾値Th3は、たとえば車両の幅に相当する1.8mであるものとする。物標T1と物標T2とが車両の幅以上に離れている場合、物標T1と物標T2は、たとえば先行車両とその隣車線を走行する車両のように異なる物体である可能性が高い。
【0055】
そこで、方位差判定部182cは、車両Cの左右方向における差が第3閾値Th3より大きい場合は履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えないことで、隣接車両と先行車両とを誤ってペアリングしないようにする。これにより、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えの誤りを抑制することができる。
【0056】
図6に示すように、履歴ペアP1に対応する物標T1と新規ペアP2に対応する物標T2の左右方向における差は、履歴ペアP1の方位角および新規ペアP2の方位角によって算出できる。具体的に、たとえば履歴ペアP1の方位角がθ1、新規ペアP2の方位角が−θ2であり、自車両Cから物標T1までの距離がL11、物標T2までの距離がL12であった場合を考える。
【0057】
この場合、方位差判定部182cは、差L=L11sinθ1+L12sinθ2を算出し、算出した差Lが第3閾値Th3以下の場合に履歴ペアP1を履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替える。このように、方位差判定部182cは、履歴ペアP1の方位角と新規ペアP2の方位角に応じて履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えるか否かを判定する。なお、
図6は、物標T1、T2と方位角θ1、θ2との対応関係を説明する図である。
【0058】
図2に戻る。静止物ペア判定部182dは、新規ペアP2が静止物ペアであるか否かを判定する。具体的には、静止物ペア判定部182dは、新規ペアP2が静止物ペア部163でペアリングされたペアデータと一致する場合、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えないと判定する。これにより、レーダ装置1は静止物ピーク信号と所望のピーク信号とをペアリングするミスペアを抑制することができる。
【0059】
変更判定部182は、距離差判定部182a、周波数差判定部182b、方位差判定部182cおよび静止物ペア判定部182dの全てにおいて履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定した場合、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替え変更を行うと判定する。
【0060】
なお、ここでは、変更判定部182は、各部が行う所定条件の判定結果が全て履歴ペアP1と新規ペアP2との組み替えであった場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定するが、これに限定されない。変更判定部182は、各部が行う判定結果、少なくとも1つの判定結果が組み替えであった場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定してもよい。
【0061】
組み替え部183は、変更判定部182が履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えると判定した場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替える。
【0062】
組み替え部183は、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替えた場合、組み替え後のペアリングの信頼度を算出する。ペアリングの信頼度はたとえばUPピーク信号およびDNピーク信号の角度差やレベル差に基づいて算出される。
【0063】
組み替え部183は、算出した信頼度が所定閾値より低い場合に、履歴ペアP1と新規ペアP2との組み替えを元に戻す。すなわち、組み替え部183は、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替える前のペアリングに戻す。ここで、所定閾値は、履歴ペア決定部161でペアリングを行う場合に履歴ピーク信号がペアか否かを判定する閾値より低いものとする。すなわち、組み替え部183は、履歴ペア決定部161によるペアリングより厳しい条件で組み替え後のペアリングが正しいか否かを判定するものとする。これは、履歴ペア決定部161では、予測ピーク信号に基づいて抽出した履歴ピーク信号のペアリングを行うため、所定区間の履歴UPピーク信号と履歴DNピーク信号とがペアである可能性が高い。また、組み替え部183では、一度履歴ペア決定部161でペアリングした履歴ピーク信号の再ペアリングを行う。したがって、組み替え部183は、履歴ペア決定部161より厳しい条件で組み替え後のペアリングの信頼度を判定することで、組み替え後のミスペアを抑制する。
【0064】
このように、組み替え部183は、信頼度に基づいて組み替えたペアを元に戻すことで、履歴ペアP1と新規ペアP2とを誤って組み替えることがなくなり、ミスペアを抑制することができる。
【0065】
なお、ここでは、組み替え部183が履歴ペアP1と新規ペアP2との組み替えを行った後に、信頼度に基づいて組み替えを元に戻しているが、これに限定されない。たとえば、組み替え部183が履歴ペアP1と新規ペアP2との組み替えを行う前に信頼度を算出し、算出した信頼度が所定閾値以上である場合に組み替えを行うようにしてもよい。また、変更判定部182がかかる信頼度に基づいて組み替えを行うか否かを判定するようにしてもよい。
【0066】
また、組み替え部183は、履歴ペアP1と新規ペアP2とを組み替える場合、たとえば算出した信頼度に応じて、組み替えたペアの一方を組み替え後の履歴ペアP1とし、他方を組み替え後の新規ペアP2としてもよい。たとえば、組み替え部183は、算出した信頼度が大きい方のペアを組み替え後の履歴ペアP1とし、小さい方のペアを組み替え後の新規ペアP2とする。
【0067】
検出部170は、予測ピーク信号に基づく所定の周波数範囲に複数のピーク信号が含まれる場合に、当該複数のピーク信号を検出する。検出部170は、検出した複数のピーク信号のうち、履歴ペアP1の履歴ピーク信号を除くピーク信号をUP区間およびDN区間のそれぞれで検出する。検出部170は、検出したピーク信号を、それぞれ近傍UPピーク信号および近傍DNピーク信号(以下、まとめて近傍ピーク信号と記載する)として生成部190に出力する。
【0068】
生成部190は、組み替え決定部180で組み替え処理を行った履歴ペアおよび検出部170が検出した近傍UPピーク信号および近傍DNピーク信号に基づいて仮ピーク信号を生成し、仮ピーク信号のペアリングを行う。これにより、生成部190は、所定条件に応じて履歴ペアの近傍に存在する近傍ピーク信号に基づいて履歴ペアに含まれる履歴ピーク信号の再ペアリングを行う。生成部190は、生成判定部191と、ピーク生成部192と、仮ピークペア部193とを備える。
【0069】
生成判定部191は、仮ピーク信号を生成するか否かを判定する。生成判定部191は、第2周波数差判定部191a、第2方位差判定部191bおよび静止物ピーク判定部191cを備える。
【0070】
第2周波数差判定部191aは、予測部210が予測するUP区間の予測ピーク信号Pbuと、近傍UPピーク信号との周波数差W21が第4閾値Th4以下である場合に、仮UPピーク信号を生成すると判定する。また、第2周波数差判定部191aは、同様に予測部210が予測するDOWN区間の予測ピーク信号Pbdと、近傍DNピーク信号との周波数差W22が第4閾値Th4以下である場合に、仮DNピーク信号を生成すると判定する。なお、第4閾値Th4はたとえば6BINであるとする。このように、第2周波数差判定部191aは、予測ピーク信号と、近傍ピーク信号との周波数差に応じて仮ピーク信号を生成するか否か判定することで、仮ピーク信号の誤生成を低減することができる。
【0071】
また、第2周波数差判定部191aは、履歴UPピーク信号と近傍UPピーク信号との周波数差F2が第5閾値Th5以下である場合に、仮UPピーク信号を生成すると判定する。なお、第5閾値Th5はたとえば6BINであるとする。
【0072】
ここで、UP区間のビート信号は、DOWN区間のビート信号に比べて、距離および相対速度の影響を受けやすい。そこで、UP区間の履歴UPピーク信号S11および近傍UPピーク信号を比較することで、履歴UPピーク信号S11および近傍UPピーク信号に対応する物標Tが例えば先行車両等同一の物体であるか否かをより高精度に判定することができる。
【0073】
なお、たとえば検出部170で、履歴UPピーク信号S11の周波数を中心にした12BIN(低周波側および高周波側にそれぞれ6BINずつ)の範囲に存在するUPピーク信号を近傍UPピーク信号として検出するとする。この場合、履歴UPピーク信号S11と近傍UPピーク信号との周波数差Fが6BIN以内であることは明らかである。そのため、たとえば第2周波数差判定部191aは周波数差F2を用いた判定を省略するようにしてもよい。
【0074】
第2方位差判定部191bは、履歴UPピーク信号に対応する物標T1と近傍UPピーク信号に対応する物標T2との車両Cの左右方向における距離差L21が第6閾値Th6以下の場合に、仮UPピーク信号を生成すると判定する。あるいは、第2方位差判定部191bは、履歴DNピーク信号に対応する物標T1と近傍DNピーク信号に対応する物標T2との車両Cの左右方向における距離差L22が第6閾値Th6以下の場合に、仮DNピーク信号を生成すると判定する。
【0075】
たとえば第6閾値Th6は、たとえば車両の幅に相当する1.8mであるものとする。距離差L21、L22の具体的な算出方法は、方位差判定部182cが行う方法と同様であるため、説明を省略する。したがって、第2方位差判定部191bは、履歴ペアのピーク信号の方位角および近傍ピーク信号の方位角に応じて仮ピーク信号を生成するか否か判定するとも言える。このように、第2方位差判定部191bは、履歴ペアのピーク信号の方位角および近傍ピーク信号の方位角に応じて仮ピーク信号を生成するか否か判定することで、仮ピーク信号の誤生成を低減することができる。
【0076】
静止物ピーク判定部191cは、近傍UPピーク信号および近傍DNピーク信号が静止物ピーク信号であるか否かを判定する。具体的には、静止物ピーク判定部191cは、近傍UPピーク信号および近傍DNピーク信号が静止物判定部140で静止物ピーク信号であると判定されたピーク信号である場合、仮ピーク信号を生成しないと判定する。このように、静止物ピーク判定部191cは、近傍ピーク信号が静止物ピーク信号であるか否かに応じて仮ピーク信号を生成するか否か判定することで、仮ピーク信号の誤生成を低減することができる。なお、たとえば検出部170で、静止物ピーク信号を近傍UPピーク信号また近傍DNピーク信号として検出しない場合は、静止物ピーク判定部191cによる判定を省略することができる。
【0077】
生成判定部191は、第2周波数差判定部191a、第2方位差判定部191bおよび静止物ピーク判定部191cの全てにおいて仮UPピーク信号または仮DNピーク信号を生成すると判定された場合、仮UPピーク信号または仮DNピーク信号の生成を行うと判定する。
【0078】
なお、ここでは、生成判定部191は、各部が行う所定条件の判定全てで仮ピーク信号を生成すると判定した場合に、仮ピーク信号を生成すると判定するが、これに限定されない。生成判定部191は、各部が行う判定結果、少なくとも1つの判定結果が仮ピーク信号の生成であった場合に、仮ピーク信号を生成すると判定してもよい。
【0079】
これにより、生成判定部191は履歴ペアのピーク信号に対応する物標T1と異なる物体である物標T2に対応するピーク信号、すなわち履歴ペアのピーク信号とは関連性が低いピーク信号を用いた仮ピーク信号の生成を行わないようにすることができる。したがって、生成判定部191は、仮ピーク信号の生成によって物標Tの情報を生成する精度の低下を抑制することができる。
【0080】
ピーク生成部192は、近傍UPピーク信号に基づいて、情報生成部200で物標Tの情報を生成する場合に用いる仮UPピーク信号を生成する。また、ピーク生成部192は、近傍DNピーク信号に基づいて、情報生成部200で物標Tの情報を生成する場合に用いる仮DNピーク信号を生成する。
【0081】
以下、
図7を用いて、ピーク生成部192が行う仮UPピーク信号の生成について説明する。なお、仮DNピーク信号の生成は、仮UPピーク信号と同様であるため説明を省略する。また、ここでは履歴ペアに履歴UPピーク信号S11が含まれるものとする。
図7は、ピーク生成部192が行う仮UPピーク信号の生成について説明する模式図である。
【0082】
ピーク生成部192は、近傍ピーク信号S31および履歴UPピーク信号S11に基づいて仮UPピーク信号を生成する場合、履歴UPピーク信号S11および近傍ピーク信号S31を含む所定の周波数範囲R3のビート信号分布の重心を算出する。ピーク生成部192は、算出した重心を仮UPピーク信号S41とする。
【0083】
ここで、ピーク生成部192が信号分布の重心を算出することで、履歴UPピーク信号S11および近傍ピーク信号S31の信号レベルに応じた仮UPピーク信号S41を生成することができる。これにより、近傍ピーク信号S31がたとえば履歴UPピーク信号S11とは異なる物体に対するピーク信号である場合であっても、単に履歴UPピーク信号S11および近傍ピーク信号S31の中間点を仮UPピーク信号S41とする場合に比べて、近傍ピーク信号S31が仮UPピーク信号S41に与える影響を小さくすることができる。そのため、ピーク生成部192が信号分布の重心を算出することにより、ミスペアによって物標Tの情報生成に与える影響を低減することができる。
【0084】
なお、ここでは、ピーク生成部192が信号分布の重心を算出するとしたがこれに限定されない。たとえばピーク生成部192がUPピーク信号S11および近傍ピーク信号S31の信号レベルに応じた仮UPピーク信号S41を生成すればよい。
【0085】
したがって、たとえば、ピーク生成部192が、近傍ピーク信号S31に応じた重み付けを用いて仮UPピーク信号S41を生成することもできる。具体的には、ピーク生成部192は、たとえば履歴UPピーク信号S11および近傍ピーク信号S31の信号レベルを重みとした加重平均を算出することで、仮UPピーク信号S41を生成するようにしてもよい。このように、近傍ピーク信号S31に応じた重み付けを用いて仮UPピーク信号S41を生成しても、重心を算出する場合と同様に、ミスペアによって物標Tの情報生成に与える影響を低減することができる。
【0086】
仮ピークペア部193は、ピーク生成部192が算出した仮UPピーク信号S41の再ペアリングを行う。ピーク生成部192がUP区間およびDOWN区間の両方で仮ピーク信号を算出した場合、仮ピークペア部193は、仮ピーク信号同士を再ペアリングする。また、ピーク生成部192がUP区間またはDOWN区間の一方で仮ピーク信号を算出した場合、仮ピークペア部193は、仮ピーク信号と履歴ピーク信号とを再ペアリングする。仮ピークペア部193は、再ペアリング結果を情報生成部200に出力する。
【0087】
情報生成部200は、仮ピークペア部193で再ペアリング処理を行ったペアに基づいて物標Tに関する情報を生成する。情報生成部200は、組み替え決定部180で組み替え処理を、また仮ピークペア部193で再ペアリング処理を行ったペアに基づいて自車両Cから物標Tまでの距離や相対速度を物標Tの情報として算出する。
【0088】
これにより、情報生成部200は、組み替え決定部180での組み替え処理および仮ピークペア部193での再ペアリング処理を行ったペアに基づいて情報を生成することができる。そのため、情報生成部200は、ペアリング部160でペアリングを行った履歴ペアの近傍に存在するピーク信号も考慮して物標Tに関する情報を生成することができ、情報生成の精度を向上させることができる。
【0089】
予測部210は、情報生成部200が生成した自車両Cから物標Tまでの距離や相対速度に基づいて、次回の予測ピーク信号を生成する。
【0090】
次に、
図8を用いて、新規ペアを用いた履歴ペアの組み替えおよび仮ピーク信号を用いた再ペアリングを行って物標Tの情報を生成した場合の効果について説明する。
図8は物標Tまでの距離および相対速度を示す図である。
図8に示すグラフの縦軸は、距離または相対速度を示しており、横軸は時間を示している。なお、
図8に示す白色の菱形(◇)は近傍ピーク信号を用いない場合の相対速度を示しており、白色の四角(□)は履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行っていない場合の距離を示している。また、白色の丸(○)は履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行った場合の相対速度を示しており、クロス(×)は履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行った場合の距離を示している。
【0091】
図8に示すように、レーダ装置1が履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行っていない場合、たとえば区間Aにおいて相対速度および距離が大きく変化している。これは、履歴UPピーク信号と履歴DNピーク信号のミスペアにより、相対速度および距離に誤差が含まれるからと考えられる。
【0092】
一方、レーダ装置1が履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行って距離および相対速度を算出した場合、たとえば
図8の区間Aに示すように、相対速度および距離の変化が低減している。これは、履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行うことで、履歴UPピーク信号と履歴DNピーク信号のミスペアによる影響を抑制することができたためと考えられる。
【0093】
このように、本実施形態に係るレーダ装置1は、履歴ペアP1の組み替えや仮ピーク信号の生成を行って物標Tの情報を生成することで、UPピーク信号およびDNピーク信号のミスペアによる影響を抑制することができる。
【0094】
次に、
図9を用いて、実施形態に係るレーダ装置1が実行する信号処理の処理手順について説明する。
図9は、実施形態に係るレーダ装置1が実行する信号処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0095】
図9に示すように、レーダ装置1のFFT処理部120は、送信信号と受信アンテナRxを介して受信した受信信号との差信号であるビート信号に対してFFT処理を行う(ステップS101)。次に、レーダ装置1のピーク抽出部130は、FFT処理後のビート信号からピーク信号を抽出する(ステップS102)。
【0096】
レーダ装置1のペアリング部160は、ピーク抽出部130が抽出したピーク信号に基づいてペアリングを行い、履歴ペアP1および新規ペアP2を生成する(ステップS103)。レーダ装置1の組み替え決定部180は、組み替え処理を実行する(ステップS104)。次に、レーダ装置1は、組み替え処理後の履歴ペアP1を用いて仮ピーク信号の再ペアリング処理を実行する(ステップS105)。
【0097】
情報生成部200は、仮ピーク信号の再ペアリング処理を行った履歴ペアP1に応じて、物標Tの情報を生成する(ステップS106)。予測部210は、物標Tの情報に基づいて次回の履歴ピーク信号を予測し、予測ピーク信号を生成する(ステップS107)。
【0098】
続いて、
図10を用いて、ステップS104にて組み替え決定部180が実行する組み替え処理について説明する。
図10は、実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180が実行する組み替え処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0099】
組み替え決定部180は、履歴ペアP1および新規ペアP2が交差しているか否かを判定する(ステップS201)。履歴ペアP1および新規ペアP2が交差していない場合(ステップS201;No)、組み替え決定部180は、履歴ペアP1および新規ペアP2を組み替えずに処理を終了する。
【0100】
一方、履歴ペアP1および新規ペアP2が交差している場合(ステップS201;Yes)、組み替え決定部180は、履歴ペアP1および新規ペアP2の組み替え条件が成立しているか否かを判定する(ステップS202)。組み替え条件は、組み替え決定部180の変更判定部182が判定する各条件である。
【0101】
組み替え条件が成立しない場合(ステップS202;No)、組み替え決定部180は、履歴ペアP1および新規ペアP2を組み替えずに処理を終了する。組み替え条件が成立する場合(ステップS202;Yes)、組み替え決定部180は、履歴ペアP1および新規ペアP2を組み替える(ステップS203)。
【0102】
次に、組み替え決定部180は、組み替え後の履歴ペアP1の信頼度を算出する(ステップS204)。組み替え決定部180は、算出した信頼度と所定閾値とを比較する(ステップS205)。比較結果、信頼度が所定閾値以上の場合(ステップS205;Yes)、組み替え決定部180は、処理を終了する。一方、信頼度が所定閾値より低い場合(ステップS205;No)、組み替え決定部180は、組み替えた履歴ペアP1を元に戻し(ステップS206)、処理を終了する。
【0103】
図11を用いて、ステップS105にてレーダ装置1が実行する仮ピーク信号の再ペアリング処理について説明する。
図11は、実施形態に係るレーダ装置1が実行する仮ピーク信号の再ペアリング処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下、UP区間における処理について説明するがDOWN区間も同様に処理を行うものとする。
【0104】
レーダ装置1は、予測ピーク信号に基づく所定の周波数範囲内に複数のピーク信号が存在するか否かを判定する(ステップS301)。複数のピーク信号が存在しない場合(ステップS301;No)、レーダ装置1は処理を終了する。複数のピーク信号が存在する場合(ステップS301;Yes)、レーダ装置1の検出部170は、所定の周波数範囲内に存在するピーク信号を検出する(ステップS302)。レーダ装置1の生成部190は、検出部170が検出したピーク信号を用いて仮ピーク信号を生成する条件が成立するか否かを判定する(ステップS303)。仮ピーク信号を生成する条件は、生成判定部191が判定する各条件である。
【0105】
仮ピーク信号を生成する条件が成立しない場合(ステップS303;No)、レーダ装置1は処理を終了する。一方、仮ピーク信号を生成する条件が成立する場合(ステップS303;Yes)、レーダ装置1の生成部190は、検出部170が検出したピーク信号を用いて仮ピーク信号を生成する(ステップS304)。レーダ装置1は、生成した仮ピーク信号の再ペアリングを行い(ステップS305)、処理を終了する。
【0106】
本実施形態に係るレーダ装置1は、新規ペアP2および近傍ピーク信号に応じて履歴ペアP1の組み替えおよび仮ピーク信号の生成を行ったが、これに限定されない。たとえばレーダ装置1が、新規ペアP2および履歴ペアP1に基づいて履歴ペアP1を組み替えるが、近傍ピーク信号の検出を行わず、組み替え後の履歴ペアに基づいて物標Tの情報を生成するようにしてもよい。あるいは、レーダ装置1は、新規ペアP2に基づいて履歴ペアP1の組み替えを行わずに、近傍ピーク信号に基づいて仮ピーク信号を生成し、生成後の仮ピーク信号に基づいて物標Tの情報を生成するようにしてもよい。すなわち、組み替えまたは仮ピーク信号の生成の両方を行わず、どちらか一方を行うようにしてもよい。
【0107】
上記実施形態に係るレーダ装置1は、抽出部(ピーク抽出部)130と、予測部210と、ペアリング部160と、再ペアリング部220と、情報生成部200とを備える。抽出部(ピーク抽出部)130は、所定周期で周波数が変化する送信信号と、当該送信信号に基づく送信波が物標Tで反射した反射波を受信した受信信号との差分周波数(周波数ビート信号)から、送信信号の周波数が上昇する第1期間(UP区間)および周波数が下降する第2期間(DOWN区間)のそれぞれで、予測ピーク信号に応じた履歴ピーク信号を抽出する。予測部210は、抽出部130が抽出した前回のピーク信号に基づき、予測ピーク信号として今回のピーク信号を予測する。ペアリング部160は、第1期間の履歴ピーク信号と第2期間の履歴ピーク信号とをペアリングする。再ペアリング部220は、ペアリング部160でペアリングした履歴ピーク信号を含む所定の周波数範囲Rに存在するピーク信号に基づいてペアリング部160でペアリングした履歴ピーク信号を再ペアリングする。情報生成部200は、ペアリング部160でのペアリング結果および再ペアリング部220での再ペアリング結果に応じて物標Tの情報を生成する。
【0108】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160でペアリングした履歴ピーク信号付近に存在するピーク信号を考慮して物標Tの情報を生成することで、ミスペアによる物標Tの検出精度の低下を抑制することができる。
【0109】
上記実施形態に係るレーダ装置1のペアリング部160は、履歴ペア決定部(履歴ペア部)161と、新規ペア決定部(新規ペア部)162とを備える。履歴ペア決定部161は、抽出部130が抽出した履歴ピーク信号に基づいてペアリングを行い、履歴ピークペア(履歴ペアP1)を決定する。新規ペア決定部162は、履歴ピーク信号を除く新規ピーク信号に基づいてペアリングを行い、新規ピークペア(新規ペア)を決定する。
【0110】
レーダ装置1の再ペアリング部220は、履歴ピークペアの第1期間(UP区間)における履歴ピーク信号と第2期間(DOWN区間)における履歴ピーク信号とを対応付ける周波数軸上の大小関係と、新規ピークペアの第1区間(UP区間)における新規ピーク信号と第2区間(DOWN区間)における新規ピーク信号とを対応付ける周波数軸上の大小関係とが交差している場合、所定条件に応じて履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える組み替え決定部180をさらに備える。
【0111】
これにより、レーダ装置1は、所定条件に応じて履歴ピークペアと、当該履歴ピークペアの近傍に存在する新規ピークペアとを組み替えることができ、履歴ピークペアおよび新規ピークペアに応じた物標Tの情報を生成することができる。そのため、物標Tの検出精度を向上させることができる。
【0112】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、所定条件として履歴ピークペアに基づいて算出される物標T1までの距離D1と新規ピークペアに基づいて算出される物標T2までの距離D2との差ΔDが所定値(第1閾値Th1)以下である場合に、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える。
【0113】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0114】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、所定条件として履歴ピークペアおよび新規ピークペアに含まれる第1期間のピーク信号同士の差F11が、履歴ピークペアおよび新規ピークペアに含まれる第2期間のピーク信号同士の差F12と等しい場合に、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える。
【0115】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0116】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、所定条件として新規ピークペアに含まれるピーク信号と予測ピーク信号との差W11が所定値(第2閾値Th2)以下である場合に、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える。
【0117】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0118】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、新規ピークペアに応じた物標Tが静止物でない場合に、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える。
【0119】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0120】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、履歴ピークペアに対応する方位角と新規ピークペアに対応する方位角とに応じて、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替える。
【0121】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0122】
上記実施形態に係るレーダ装置1の組み替え決定部180は、履歴ピークペアおよび新規ピークペアを組み替えた後のペアリング結果の信頼度が所定閾値より低い場合に、履歴ピークペアおよび新規ピークペアの組み替えを元に戻す。
【0123】
これにより、レーダ装置1は、履歴ピークペアのミスペアをより低減することができる。
【0124】
上記実施形態に係るレーダ装置1の再ペアリング部220は、検出部170と、生成部(ピーク生成部)192と、仮ピークペア部193と、を備える。検出部170は、予測ピーク信号に基づく所定の周波数範囲に存在するピーク信号を検出する。生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信およびペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号に基づいて、仮ピーク信号を生成する。また、仮ピークペア部193は、生成部(ピーク生成部)192が生成した仮ピーク信号をペアリングする。
【0125】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号の近傍のピーク信号を用いて仮ピーク信号を生成することができ、仮ピーク信号に基づいて物標Tの情報を生成することができる。そのため、物標Tの検出精度を向上させることができる。
【0126】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号とペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号との重心に応じて仮ピーク信号を生成する。
【0127】
これにより、レーダ装置1は、ミスペアによって物標Tの情報生成に与える影響を低減することができる。
【0128】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号に応じてペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号に重み付けすることで、仮ピーク信号を生成する。
【0129】
これにより、レーダ装置1は、ミスペアによって物標Tの情報生成に与える影響を低減することができる。
【0130】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号と予測部210で予測した今回のピーク信号との差W21、W22が所定値(第4閾値Th4)以下である場合に仮ピーク信号を生成する。
【0131】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号とは関連性が低いピーク信号を用いた仮ピーク信号の生成を行わないようにすることができ、仮ピーク信号の生成によって物標Tの情報を生成する精度の低下を抑制することができる。
【0132】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号とペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号との第1期間における差F2が所定値(第5閾値Th5)以下の場合に仮ピーク信号を生成する。
【0133】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号とは関連性が低いピーク信号を用いた仮ピーク信号の生成を行わないようにすることができ、仮ピーク信号の生成によって物標Tの情報を生成する精度の低下を抑制することができる。
【0134】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号に応じた物標Tが静止物でない場合に仮ピーク信号を生成する。
【0135】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号とは関連性が低いピーク信号を用いた仮ピーク信号の生成を行わないようにすることができ、仮ピーク信号の生成によって物標Tの情報を生成する精度の低下を抑制することができる。
【0136】
上記実施形態に係るレーダ装置1の生成部(ピーク生成部)192は、検出部170が検出したピーク信号に対応する方位角とペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号に対応する方位角とに応じて仮ピーク信号を生成する。
【0137】
これにより、レーダ装置1は、ペアリング部160がペアリングした履歴ピーク信号とは関連性が低いピーク信号を用いた仮ピーク信号の生成を行わないようにすることができ、仮ピーク信号の生成によって物標Tの情報を生成する精度の低下を抑制することができる。
【0138】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。