特開2017-223623(P2017-223623A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017223623-放射性汚染物質の遮断型保管施設 図000003
  • 特開2017223623-放射性汚染物質の遮断型保管施設 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223623(P2017-223623A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】放射性汚染物質の遮断型保管施設
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
   G21F9/36 541A
   G21F9/36 501Z
   G21F9/36 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-121059(P2016-121059)
(22)【出願日】2016年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】516182225
【氏名又は名称】高橋 更精
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 更精
(57)【要約】
【課題】除染や瓦礫の処理に要するコストを低く抑えると共に、放射能の拡散を防止し、災害が発生したことを後世に伝えるモニュメントになり得る放射性汚染物質の遮断型保管施設を提供する。
【解決手段】集積された瓦礫は粉砕され、この粉砕物をコンクリートの原料の一部として使用する。正六角形柱状の有底で閉蓋可能な収納容器2(コンクリート製六角柱槽という)を製造する。製造された多数のコンクリート製六角柱槽2を水平及び垂直方向連続して積層してハニカム状の遮断型保管施設1を建造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に位置する有底で閉蓋可能な正六角柱状の1つの収納容器の6つの側面に他の6つの正六角柱状収納容器の各1つの側面を接合させたハニカム状集合体に形成され、前記収用容器が放射性汚染物質を含む瓦礫を収納する容器であることを特徴とする放射性汚染物質の遮断型保管施設。
【請求項2】
被災地に堆積する瓦礫を用いて製造される建築材料によって建造されることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染物質の遮断型保管施設。
【請求項3】
収納容器の蓋部分が水平方向になるようにして垂直方向に複数段積み重ねて建造されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の放射性汚染物質の遮断型保管施設。
【請求項4】
ピラミッド状に複数段に積み重ねて建造されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放射性汚染物質の遮断型保管施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦礫を用いた建造物及び瓦礫の利用方法に関し、特に、津波等の災害により発生した瓦礫や原子力発電所の事故等で放出された放射性物質によって汚染された地域の表層土壌、瓦礫の遮断型保管施設に関する。
【0002】
2011年3月11日、東日本大震災が発生し、これに伴って東北地方等の太平洋側沿岸では大津波が発生し、陸に押し寄せた高い津波は、各地で防波堤等を乗り越えて建造物や構造物を破壊した。一方、福島第一原子力発電所では、全電源を喪失して原子炉を冷却できなくなり、大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故が発生した。
【0003】
そして、この大津波により破壊された建造物等が瓦礫となって被災地に大量に堆積して問題となっている。この瓦礫は、一時的に仮置き場に集積された後、一部が焼却処理され、残りは埋め立て処理されている。しかし、これらの処理に要する費用は膨大であると共に、全ての瓦礫を処理する現在においても目途はついていない。また、放射能を帯びた瓦礫については、水洗等によって除染する必要があるが、除染後に生じる除染水は海へ放出され、放射能を拡散するという問題も残る。
【0004】
このような放射性物質によって汚染された地域の表層土壌、瓦礫、汚泥又は焼却灰を安全に且つ大量に保管するための保管施設として、例えば、波形鋼板を連結して形成したドーム状構造物と、ドーム状構造部を支える基礎と、ドーム状構造物内部にドーム状構造物から間隔をおいて設けられた仕切り壁構造体とを備え、仕切り壁構造体はドーム状構造物は内部の所定領域を囲っている壁状体からなるものが提案されている(特許文献1参照。)。他にも高機能セラミックコンクリートを、木造建築、又は鉄骨造建築、又は鉄筋コンクリート造建築、又は鉄骨鉄筋コンクリート造建築、及び/又は構造物の外壁材、又は内壁材として適合させた放射線遮蔽建築及び/又は放射線遮蔽構造物(特許文献2参照。)、災害により生じた瓦礫を被災地において集積し、集積した瓦礫を用いて当該被災地において建築材料を製造し、これを利用して建造物を建造する瓦礫の利用方法(特許文献3参照。)等が提案されている。
【0005】
また、従来から、放射性物質を安全に収容するための放射性汚染物質収納容器が知られている。医療現場にて発生する放射性廃棄物を安全に貯蔵して廃棄処理するために又は放射性物質の保管のために形成した移動式放射線遮蔽容器が開示されている(特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−71107号公報
【特許文献2】特開2013−226466号公報
【特許文献3】特開2014−172140号公報
【特許文献4】特開2007−147580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明もまた、上記のような課題に鑑みなされたものであり、除染や瓦礫の処理に要するコストを低く抑えると共に、放射能の拡散を防止し、災害が発生したことを後世に伝えるモニュメントになり得る放射性汚染物質の遮断型保管施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題に鑑み、放射性汚染物質の遮断型保管施設を、中央部に位置する有底で閉蓋可能な正六角柱状の1つの収納容器の6つの側面に他の6つの正六角柱状収納容器の各1つの側面を接合させたハニカム状集合体に形成され、前記収用容器が放射性汚染物質を含む瓦礫を収納する容器であることを第1の特徴とする。また、被災地に堆積する瓦礫を用いて製造される建築材料によって建造されることを第2の特徴とする。さらに、収納容器の蓋部分が水平方向になるようにして垂直方向に複数段積み重ねて建造されたことを第3特徴とする。さらにまた、ピラミッド状に複数段に積み重ねて建造されたことを第4の特徴とする。
【0009】
本発明に係る正六角柱状の収納容器は、並置させた状態で保管空間の省スペース化を図ることが可能になり、かつ安定的に積み重ねできる。また、ハニカム構造は上下からの圧縮強度が極めて高く、地震による倒壊・破壊に強い。
【0010】
仮に放射性廃棄物を保管処分する場合、高濃度を中心部に、濃度の低いものを外側に併用処分することも可能となり、より安全度の高い最終処分施設となり得る構造物である。本発明は、東日本大震災により排出された、放射性セシウム等を含む「指定廃棄物」を安全に処分する構築施設として提案することにより、事故の風化を防ぐと共に、恒久施設(モニュメント)として、観光施設へと発展させることができる。
【0011】
2011年3月11日に発生した地震・津波により被災した、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、放射性セシウム等を含む廃棄物(焼却灰・下水汚泥・浄水発生土・除染物及び稲わらなどの農林業系副産物)が発生し、その処理が課題となっている。平成23年8月に放射性物質汚染対処特措法が公布され、放射性セシウムの濃度が8000Bq/kg以上は、「指定廃棄物」として国が処理することとされた。
【0012】
2012年3月20日、環境省は「指定廃棄物の今後の処理の方針」をとりまとめて公表し、宮城県・茨城県・栃木県・群馬県及び千葉県の5県において最終処分場候補地の選定作業を進めているが、該当地域の反対もあり進展していない。国は、有識者会議の関与の下で安全の確保を図るとしているが、必要施設であることは認識されつつも、迷惑施設との懸念を払拭するに至っていない。
【0013】
大分県産業科学技術センターによると、低濃度の放射性廃棄物は20cm厚のコンクリート壁で4分の1から5分の1に低減できると言われている。放射能を含んだ廃棄物の処理場所は、福島県内が望ましいが、福島県在住者の感情を考慮すると、周辺5県に最終処分場を造ることを国は決定している。本発明に係る保管施設は、福島県及び指定5県以外にも勿論設置可能である。また、中間処理施設及び最終処分施設に併設できる。
【0014】
そして、本発明によれば、被災地で発生した瓦礫を被災地外へ運送することもなく、瓦礫を埋め立て処理したり、焼却処理する必要がないため、瓦礫の処理に要するコストを低く抑えることができる。また、瓦礫が放射能を帯びていても、被災地の外部に流出しないため、放射能の拡散を防止することもできる。
【0015】
上記遮断型保管施設において、放射能を帯びた瓦礫については、コンクリートで覆うことにより、放射能の拡散を防止することができ、除染を行う必要がないため、放射能汚染を引き起こす虞がない。
【0016】
上記遮断型保管施設は、慰霊碑等のモニュメントとすることができる。これにより、災害による物故者のこと、及び災害が発生したことを忘れずに後世に伝えることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、除染や瓦礫の処理に要するコストを低く抑えると共に、放射能の拡散を防止し、災害が発生したことを後世に伝えるモニュメントとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る放射性汚染物質の遮断型保管施設の一実施例を模式的に示す(a)は側面図、(b)は平面図である。
図2】本発明に係る放射性汚染物質の遮断型保管施設の他の実施例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、上記東日本大震災により発生した放射性物質に汚染された瓦礫を処理する場合を例にとって説明する。
【0020】
集積された瓦礫は粉砕され、この粉砕物をコンクリートの原料の一部として使用し、正六角形柱状の有底で閉蓋可能な収納容器2(以下、コンクリート製六角柱槽という)を製造する。ここで、福島県に堆積された瓦礫、並びに宮城県及び岩手県から集積された瓦礫の一部は、放射能を帯びているものが存在するため、そのような瓦礫については、粉砕した後、コンクリートの原料とせずに、コンクリートで覆うことにより放射能汚染を防止する。尚、放射能を帯びていない瓦礫については、コンクリートブロックに限らず、他の建築材料として利用することも可能である。
【0021】
そして、製造された多数のコンクリート製六角柱槽2を用いて、ハニカム状の遮断型保管施設1を建造する。この遮断型保管施設1は、コンクリート製六角柱槽2を水平及び垂直方向連続して積層して建造されるものであり、図1に示すように、ピラミッド状に建造するのが外圧強度上、また、モニュメントとしての外観意匠上も好適である。尚、ハニカム構造であれば図2に示すように、施設の外形は菱形状等でもよく任意である。
【0022】
尚、上記実施の形態においては、津波により発生した瓦礫を処理する方法を例示したが、人的災害や自然災害によらず、様々な災害において発生した瓦礫に本発明を適用することができる。
【0023】
以上のように、災害により生じた瓦礫を利用して建築された遮断型保管施設をモニュメントとし、これらの建造物にて慰霊祭を行うことにより、災害による物故者のことや、災害が発生したことを後世に語り継ぐことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 遮断型保管施設
2 コンクリート製六角柱槽
3 瓦礫
図1
図2