特開2017-223798(P2017-223798A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223798(P2017-223798A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】電子写真用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
   G03G9/08 325
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-118093(P2016-118093)
(22)【出願日】2016年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】和泉谷 勇太
(72)【発明者】
【氏名】星 正人
(72)【発明者】
【氏名】垣内 宏樹
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA27
2H500EA14B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】帯電立ち上がり性及び帯電安定性に優れる電子写真用トナー、及び該トナーに用いられる電子写真トナー用結着樹脂組成物に関すること。
【解決手段】重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含む電子写真トナー用結着樹脂組成物であって、前記重縮合系樹脂が、水酸基が結合した第一級炭素原子を2つ有し、水酸基間の炭素数が4以上12以下の脂肪族ジオール(アルコールA)を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である、電子写真トナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含む電子写真トナー用結着樹脂組成物であって、前記重縮合系樹脂が、水酸基が結合した第一級炭素原子を2つ有し、水酸基間の炭素数が4以上12以下の脂肪族ジオール(アルコールA)を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である、電子写真トナー用結着樹脂組成物。
【請求項2】
重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有する複合樹脂である、請求項1記載の結着樹脂組成物。
【請求項3】
アルコールAが、直鎖脂肪族ジオールである、請求項1又は2記載の結着樹脂組成物。
【請求項4】
重縮合系樹脂のアルコール成分が、さらに、水酸基が結合した第二級炭素原子を有する脂肪族ジオール(アルコールB)を含有する、請求項1〜3いずれか記載の結着樹脂組成物。
【請求項5】
アルコールAの含有量が、重縮合系樹脂のアルコール成分中、10モル%以上40モル%以下である、請求項1〜4いずれか記載の結着樹脂組成物。
【請求項6】
アルコールAが、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,12-ドデカンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜5いずれか記載の結着樹脂組成物。
【請求項7】
重縮合系樹脂と付加重合系樹脂の質量比(重縮合系樹脂/付加重合系樹脂)が、80/20以上95/5以下である、請求項1〜6いずれか記載の結着樹脂組成物。
【請求項8】
付加重合系樹脂が、スチレン化合物を90質量%以上含有する原料モノマーの付加重合物である、請求項1〜7いずれか記載の結着樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の結着樹脂組成物の軟化点が90℃以上120℃以下であり、さらに、軟化点が125℃以上160℃以下のポリエステルを含有する、請求項8記載の電子写真用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真トナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マシンの高速化に伴い、帯電立ち上がり性と帯電安定性に優れたトナーが要求されている。そこで、トナー用結着樹脂として、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有する電子写真用トナーが提案されている。
【0003】
特許文献1には、低温定着性、高湿下での帯電安定性、及び保存性に優れた電子写真用結着樹脂として、重縮合系樹脂とスチレン系樹脂とを含む、電子写真トナー用結着樹脂であって、前記重縮合系樹脂が、水酸基が結合した第二級炭素原子を2つ以上有する脂肪族多価アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる電子写真トナー用結着樹脂が開示されている。
【0004】
特許文献2には、保存性、及びトナーの飛散抑制に優れ、高グロスであるトナー用結着樹脂組成物として、結晶性ポリエステル及び非晶質複合樹脂を含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステルが、炭素数2〜8の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルであり、前記非晶質複合樹脂が、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーと、ビニル系樹脂部分の原料モノマーと、ポリエステル樹脂部分の原料モノマー及びビニル系樹脂部分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーとを重合させて得られ、該ポリエステル樹脂部分の原料モノマーが、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分であり、該両反応性モノマーの使用量が、ポリエステル樹脂部分のアルコール成分100モルに対して、1〜5モルである、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−107670号公報
【特許文献2】特開2015−169728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、結着樹脂として、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含む電子写真トナーは、帯電立ち上がり性及び帯電安定性が不十分である。
【0007】
本発明は、帯電立ち上がり性及び帯電安定性に優れる電子写真用トナー、及び該トナーに用いられる電子写真トナー用結着樹脂組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含む電子写真トナー用結着樹脂組成物であって、前記重縮合系樹脂が、水酸基が結合した第一級炭素原子を2つ有し、水酸基間の炭素数が4以上12以下の脂肪族ジオール(アルコールA)を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である、電子写真トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーは、帯電立ち上がり性及び帯電安定性に優れるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電子写真トナー用結着樹脂組成物は、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含み、該重縮合系樹脂が、水酸基が結合した第一級炭素原子を2つ有し、水酸基間の炭素数が4以上12以下の脂肪族ジオール(アルコールA)を含有するアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物である点に1つの特徴を有している。
【0011】
結着樹脂に付加重合系樹脂を導入することで、付加重合系樹脂が電荷の保持部位となり帯電安定性が向上するものの、不十分であるためさらなる改善が求められる。また、その一方で、付加重合系樹脂を導入することで帯電立ち上がり性が低下するという課題が生じる。これは、付加重合系樹脂への電荷移動速度が遅いためであると考えられる。
これに対し、本発明では、水酸基が結合した第一級炭素原子を2つ有し、水酸基間の炭素数が4〜12の脂肪族ジオールを用いた重縮合系樹脂を付加重合系樹脂と併用することにより、帯電立ち上がり性を損なうことなく、帯電安定性を大幅に向上させることが可能となった。
帯電立ち上がり性が向上するのは、アルコールAと付加重合系樹脂を併用することにより、分子のパッキング性が高まり、付加重合系樹脂への電荷移動速度が速くなったことがその要因の一つと推定される。
さらに、帯電安定性が向上するのは、アルコールAによって付加重合系樹脂に保持されている電荷の孤立性が高まることによるものと推定される。
【0012】
アルコールAとしては、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0013】
アルコールAが有する水酸基間の炭素数は、トナーの帯電立ち上がり性及び帯電安定性の観点から、4以上であり、そして、12以下、好ましくは6以下であり、4が最も好ましい。また、アルコールAは、直鎖脂肪族ジオールであることが好ましい。これらの観点から、アルコールAとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,12-ドデカンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールの少なくともいずれかがより好ましく、1,4-ブタンジオールがさらに好ましい。
【0014】
アルコールAの含有量は、トナーの帯電立ち上がり性及び帯電安定性の観点から、重縮合系樹脂のアルコール成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
【0015】
本発明において、重縮合系樹脂のアルコール成分は、さらに、アルコールA以外のアルコールとして、水酸基が結合した第二級炭素原子を有する脂肪族ジオール(アルコールB)を含有していることが好ましい。アルコールBとしては、1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール等が挙げられ、これらの中では、1,2-プロパンジオールが好ましい。
【0016】
アルコールBの含有量は、重縮合系樹脂のアルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上であり、そして、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下である。
【0017】
アルコールA及びアルコールB以外のアルコール成分としては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の、式(I):
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0020】
ただし、芳香族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、アルコール成分中、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下であり、芳香族ジオールは実質的に含有していないことがさらに好ましい。ここで、芳香族ジオールを全く含有しない(0モル%)か、微量に含まれていたとしても、芳香族ジオールの含有量が、アルコール成分中、1モル%以下であることを意味する。
【0021】
また、重縮合系樹脂のカルボン酸成分は、少なくとも芳香族ジカルボン酸系化合物を含有する。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらのカルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル、これらの酸の無水物等が挙げられる。なお、本明細書中、カルボン酸系化合物はカルボン酸、カルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む。
【0022】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、トナーの帯電立ち上がり性及び帯電安定性の観点から、重縮合系樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0023】
芳香族ジカルボン酸系化合物以外のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸系化合物、脂環式ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、これらのカルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル、これらの酸の無水物等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸系化合物としてはシクロヘキサンジカルボン酸、これらのカルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル、これらの酸の無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物としては1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、これらのカルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル、これらの酸の無水物等が挙げられる。
さらに、その他の酸として、ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。
【0024】
また、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、分子量調整等の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0025】
重縮合系樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、そして、分子量調整等の観点から、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.85以下である。
【0026】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、温度条件は、180℃以上250℃以下が好ましい。
【0027】
錫化合物としては、例えば、酸化ジブチル錫が知られているが、本発明では、重縮合系樹脂中での分散性が良好である観点から、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
【0028】
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−C結合を有しておらず、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0029】
Sn−O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2以上28以下のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、触媒能の点から、(R1COO)2Sn(ここでR1は炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(ここでR2は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)又はSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)又は酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)又は酸化錫(II)がさらに好ましい。
【0030】
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1以上28以下のアルコキシ基、総炭素数2以上28以下のアルケニルオキシ基又は総炭素数1以上28以下のアシルオキシ基を有する化合物がより好ましく、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートがさらに好ましい。
【0031】
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)1(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)1〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート又はチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましい。これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
【0032】
上記錫(II)化合物及びチタン化合物は、1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0033】
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0034】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物を含む重縮合系樹脂としては、ポリエステル、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、トナーの帯電立ち上がり性及び帯電安定性の観点からは、ポリエステルが好ましい。
【0035】
アミド成分を形成するための原料モノマーとしては、公知の各種ポリアミン、アミノカルボン酸類、アミノアルコール等が挙げられる。
【0036】
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0037】
一方、付加重合系樹脂はスチレン樹脂であることが好ましい。従って、付加重合系樹脂は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体等のスチレン化合物、好ましくはスチレンを含む原料モノマーの付加重合物であることが好ましい。
【0038】
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、付加重合系樹脂の原料モノマー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0039】
スチレン化合物以外に用いられ得る付加重合系樹脂の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
【0040】
付加重合系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができる。温度条件は、付加重合反応の温度条件は原料モノマーと重合開始剤の反応性によって適宜選択されるが、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0041】
付加重合反応の際に用いられる有機溶媒としては、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、付加重合系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0042】
本発明の結着樹脂組成物は、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有していればよく、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂との混合物であってもよいが、重縮合系樹脂の原料モノマー及び付加重合系樹脂の原料モノマーを重合させることにより得られる、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有する複合樹脂であることが好ましい。かかる複合樹脂は、例えば、重縮合系樹脂の原料モノマーによる重縮合反応と付加重合系樹脂の原料モノマーによる付加重合反応とを並行して、又は順次、同一反応容器中で行うことにより得ることができる。重縮合反応と付加重合反応の進行及び完結は、時間的に同時である必要はなく、それぞれの反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。なお、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有する複合樹脂とは、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とが複合化した樹脂を意味する。
【0043】
さらに、本発明において、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とを含有する複合樹脂は、トナーの帯電立ち上がり性及び帯電安定性を向上させる観点から、重縮合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーに加えて、それらのいずれとも反応し得る化合物(両反応性モノマー)を用いて得られるハイブリッド樹脂であることが好ましい。従って、重縮合系樹脂の原料モノマー及び付加重合系樹脂の原料モノマーを重合させて本発明の結着樹脂組成物を得る際に、重縮合反応と付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、本発明の結着樹脂組成物は、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂とが部分的に両反応性モノマーを介して結合したハイブリッド樹脂となり、重縮合系樹脂中に付加重合系樹脂がより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
【0044】
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより一層向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、重縮合系樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、重縮合系樹脂の原料モノマーである。
【0045】
両反応性モノマーの使用量は、重縮合系樹脂のアルコール成分とカルボン酸成分の総量中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上であり、そして、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。なお、本発明において、両反応性モノマーの使用量を算出する際、両反応性モノマーの量は、重縮合系樹脂の原料モノマーとしてアルコール成分及びカルボン酸成分の総量に含める。
【0046】
本発明の結着樹脂組成物の具体的な製造方法としては、
(i) 重縮合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行う方法、
(ii) 重縮合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行い、工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに進める方法、
(iii) 付加重合反応に適した温度条件下で、重縮合反応を行う工程(A)と付加重合反応を行う工程(B)とを並行して行い、反応温度を前記条件下で保持して工程(B)を完結させた後、反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに進める方法
等が挙げられる。(i)、(ii)の方法において、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、重縮合系樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、付加重合系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
【0047】
なお、両反応性モノマーは、複合樹脂の製造において、付加重合系樹脂の原料モノマーとともに用いることが好ましい。
【0048】
本発明においては、重縮合系樹脂と付加重合系樹脂の質量比[重縮合系樹脂/付加重合系樹脂](本発明においては、重縮合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーの質量比とする)、即ち[重縮合系樹脂の原料モノマー/付加重合系樹脂の原料モノマー]は、連続相が重縮合系樹脂であり、分散相が付加重合系樹脂であることが好ましいことから、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは95/5以下である。なお、上記の計算において、両反応性モノマーの量は、重縮合系樹脂原料モノマー量に含める。また、重合開始剤の量は付加重合系樹脂の原料モノマー量に含めない。
【0049】
本発明の結着樹脂組成物の軟化点は、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0050】
また、本発明の結着樹脂組成物のガラス転移温度は、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。トナーの帯電性と環境安定性の観点から、酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは88mgKOH/g以下である。
【0051】
本発明の結着樹脂組成物の数平均分子量は、トナーの帯電安定性の観点から、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上であり、そして、好ましくは4000以下、より好ましくは3500以下である。
【0052】
本発明の結着樹脂組成物を用いることにより、帯電立ち上がり性及び帯電安定性のいずれにも優れる、本発明の電子写真用トナーが得られる。
【0053】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂組成物以外の公知の結着樹脂、例えば、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の結着樹脂組成物の含有量は、全結着樹脂中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0054】
一般に、樹脂の軟化点とガラス転移温度は相関している。しかし、本発明の結着樹脂組成物は、同程度の軟化点を有する樹脂に比べると、ガラス転移温度を高くすることができるため、1種類の樹脂でも、トナーの低温定着性、保存性等を満足することができるが、軟化点の高い樹脂を併用することで、前記の点において、より優れる。
【0055】
本発明の結着樹脂組成物を、軟化点の高い結着樹脂(高軟化点樹脂)と併用する態様において、本発明の結着樹脂組成物の軟化点は、好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0056】
一方、高軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0057】
また、高軟化点樹脂と本発明の結着樹脂組成物の軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下である。
【0058】
高軟化点樹脂の本発明の結着樹脂組成物に対する質量比(高軟化点樹脂/本発明の結着樹脂組成物)は、好ましくは1/3以上、より好ましくは1/2以上であり、そして、好ましくは3/1以下、より好ましくは2/1以下である。
【0059】
高軟化点樹脂の種類は、特に限定されないが、トナーの低温定着性及び帯電立ち上がり性の観点から、ポリエステル(以下、高軟化点ポリエステルともいう)が好ましい。
【0060】
高軟化点ポリエステルの好ましいアルコール成分は、本発明の結着樹脂組成物の重縮合系樹脂のアルコール成分と同様である。
【0061】
また、高軟化点ポリエステルの好ましいカルボン酸成分も、本発明の結着樹脂組成物の重縮合系樹脂のアルコール成分と同様であるが、軟化点を高める観点から、3価以上のカルボン酸系化合物が含まれていることが好ましい。
【0062】
3価以上のカルボン酸系化合物としては1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、これらのカルボン酸と炭素数1以上3以下のアルコールとのエステル、これらの酸の無水物等が挙げられる。
【0063】
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、高軟化点ポリエステルのカルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0064】
従って、芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、3価以上のカルボン酸系化合物の含有量に応じて、高軟化点ポリエステルのカルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上であり、そして、好ましくは97モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0065】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、温度条件は、180℃以上250℃以下が好ましい。
【0066】
好ましいエステル化触媒も、本発明の結着樹脂組成物の重縮合系樹脂に用いられるエステル化触媒と同様である。
【0067】
高軟化点ポリエステルの好適なガラス転移温度、及び酸価は、本発明の結着樹脂組成物と同様である。
【0068】
高軟化点ポリエステルの数平均分子量は、トナーの帯電安定性及び耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは4000以上、より好ましくは4500以上であり、そして、好ましくは6000以下、より好ましくは5500以下である。
【0069】
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0070】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
【0071】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0072】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0073】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0074】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0075】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0076】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0077】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0078】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0079】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点から
は、重合法によるトナーが好ましい。
【0080】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0081】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0083】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0084】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0085】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0087】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0088】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0089】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0090】
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
【0091】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0092】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0093】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0094】
樹脂製造例1〔樹脂1〜7、10、12〕
表1、2に示すポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で10時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。160℃まで冷却した後、表1、2に示すアクリル酸(両反応性モノマー)、スチレン樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、220℃に昇温した後、220℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ハイブリッド樹脂を得た。
【0095】
樹脂製造例2〔樹脂8〕
表2に示す無水ドデセニルコハク酸以外のポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で10時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。160℃まで冷却した後、表2に示すアクリル酸(両反応性モノマー)、スチレン樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温した後、表2に示す無水ドデセニルコハク酸を投入し、210℃にて2時間反応を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ハイブリッド樹脂を得た。
【0096】
樹脂製造例3〔樹脂9〕
表2に示すフマル酸以外のポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で10時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。160℃まで冷却した後、表2に示すアクリル酸(両反応性モノマー)、スチレン樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温した後、表2に示すフマル酸を投入し、210℃にて2時間反応を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ハイブリッド樹脂を得た。
【0097】
樹脂製造例4〔樹脂11〕
表2に示す無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で10時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。200℃まで冷却した後、表2に示す無水トリメリット酸を投入し、210℃にて2時間反応を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル樹脂を得た。
【0098】
樹脂製造例5〔樹脂13〕
表2に示すポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で10時間重縮合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル樹脂を得た。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1〜10及び比較例1〜2
表3に示す結着樹脂100質量部、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)4質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンS-34」(オリエント化学工業(株)製)1質量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学(株)製、融点:140℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmのトナー粒子を得た。
【0102】
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として「アエロジル R-972」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0103】
試験例〔帯電立ち上がり性及び帯電安定性〕
温度25℃、相対湿度50%の環境下で、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業(株)製、平均粒子径:90μm)19.4gとを50mL容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、30秒、60秒、3600秒混合後のトナーの帯電量を、以下の方法により、Q/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
【0104】
〔帯電量の測定〕
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。
【0105】
下記に示す各混合時間後のトナーの帯電量の比率から、帯電立ち上がり性及び帯電安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0106】
〔帯電立ち上がり性〕
混合時間30秒後の帯電量と混合時間60秒後の帯電量の比率(混合時間30秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出した。帯電量の比率が1に近いほど、帯電立ち上がり性に優れ、その比率は、0.75以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0107】
〔帯電安定性〕
混合時間60秒後の帯電量と混合時間3600秒後の帯電量の比率(混合時間3600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出した。帯電量の比率が1に近いほど、帯電安定性に優れ、その比率は0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0108】
【表3】
【0109】
以上の結果より、実施例1〜10のトナーと対比して、アルコールA以外の脂肪族ジオールを使用した結着樹脂を含有した比較例1のトナーは、帯電立ち上がり性及び帯電安定性ともに欠けており、重縮合系樹脂のみを結着樹脂として含有した比較例2のトナーは、帯電立ち上がり性は良好であるものの、帯電安定性に欠けていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の電子写真トナー用結着樹脂組成物は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる電子写真用トナーに好適に用いられるものである。