特開2017-223829(P2017-223829A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223829(P2017-223829A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
   G02B7/02 B
   G02B7/02 D
   G02B7/02 H
   G02B7/02 Z
   G02B7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-118919(P2016-118919)
(22)【出願日】2016年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅士
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AB12
2H044AB28
2H044AD01
2H044AG01
2H044AJ01
(57)【要約】
【課題】光学性能を損なわずにレンズの小型化とレンズ枠の強度確保を実現できるレンズユニットを提供する。
【解決手段】入射側レンズは、円筒状の第1の外周面と、第1の外周面よりも光軸に近く位置して入射側から射出側に進むにつれて光軸からの距離を小さくする第1の傾斜面を有する。射出側レンズは、円筒状の第2の外周面と、第2の外周面よりも光軸に近く位置して入射側から射出側に進むにつれて光軸からの距離が大きくなる第2の傾斜面を有する。レンズ枠は、各レンズの円筒状の外周面を囲むと共に光軸方向位置を決める位置決め部を有する第1枠部と、各レンズの傾斜面を囲む第2枠部を有し、第2枠部の枠内面部は、入射側よりも射出側で光軸からの半径方向の距離が小さく第1の傾斜面に沿う入射側領域と、入射側よりも射出側で光軸からの半径方向の距離が大きく第2の傾斜面に沿う射出側領域を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向の入射側に位置する入射側レンズと、射出側に位置する射出側レンズ;
上記入射側レンズにおいて光軸を中心とする半径方向の周縁に設けた、上記光軸を中心とする円筒状をなす第1の外周面と、上記半径方向で上記第1の外周面よりも上記光軸からの距離が小さく、上記光軸方向の上記入射側から上記射出側に進むにつれて上記光軸からの上記半径方向の距離を小さくする平面状の第1の傾斜面;
上記射出側レンズにおいて光軸を中心とする半径方向の周縁に設けた、上記光軸を中心とする円筒状をなす第2の外周面と、上記半径方向で上記第2の外周面よりも上記光軸からの距離が小さく、上記光軸方向の上記入射側から上記射出側に進むにつれて上記光軸からの上記半径方向の距離を大きくする平面状の第2の傾斜面;
少なくとも上記入射側レンズと上記射出側レンズを挿入する保持孔を内部に有し、上記第1の外周面と上記第2の外周面の外側を囲む第1枠部と、上記第1の傾斜面と上記第2の傾斜面の外側を囲む第2枠部を有するレンズ枠;
上記第1枠部内に設けた、上記光軸方向での上記入射側レンズの位置を決める入射側位置決め部と、上記光軸方向での上記射出側レンズの位置を決める射出側位置決め部;及び
上記第2枠部で上記保持孔の内面を構成し、上記入射側位置決め部により位置決めされた上記入射側レンズの上記第1の傾斜面に沿う入射側領域と、上記射出側位置決め部により位置決めされた上記射出側レンズの上記第2の傾斜面に沿う射出側領域とを有し、上記入射側領域は上記光軸方向における上記入射側よりも上記射出側で上記光軸からの上記半径方向の距離が小さく、上記射出側領域は上記光軸方向における上記入射側よりも上記射出側で上記光軸からの上記半径方向の距離が大きい枠内面部;
を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1記載のレンズユニットにおいて、
上記枠内面部の上記入射側領域は、上記光軸方向と上記半径方向の形成範囲が上記第1の傾斜面と同じで上記光軸に対する傾斜方向が上記第1の傾斜面と逆である仮想傾斜面と交差する関係にあり、
上記枠内面部の上記射出側領域は、上記光軸方向と上記半径方向の形成範囲が上記第2の傾斜面と同じで上記光軸に対する傾斜方向が上記第2の傾斜面と逆である仮想傾斜面と交差する関係にあるレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載のレンズユニットにおいて、上記枠内面部の上記入射側領域は、上記入射側レンズの上記第1の傾斜面と略平行な平面形状を有し、上記枠内面部の上記射出側領域は、上記射出側レンズの上記第2の傾斜面と略平行な平面形状を有しているレンズユニット。
【請求項4】
光軸方向の入射側に位置する入射側レンズと、射出側に位置する射出側レンズ;
上記入射側レンズにおいて光軸を中心とする半径方向の周縁に設けた、上記光軸を中心とする円筒状をなす第1の外周面と、上記半径方向で上記第1の外周面よりも上記光軸からの距離が小さく、上記光軸に対して非平行かつ非垂直な平面状の第1の傾斜面;
上記射出側レンズにおいて光軸を中心とする半径方向の周縁に設けた、上記光軸を中心とする円筒状をなす第2の外周面と、上記半径方向で上記第2の外周面よりも上記光軸からの距離が小さく、上記光軸に対して非平行かつ非垂直な平面状の第2の傾斜面;
少なくとも上記入射側レンズと上記射出側レンズを挿入する保持孔を内部に有し、上記第1の外周面と上記第2の外周面の外側を囲む第1枠部と、上記第1の傾斜面と上記第2の傾斜面の外側を囲む第2枠部を有するレンズ枠;
上記第1枠部内に設けた、上記光軸方向での上記入射側レンズの位置を決める入射側位置決め部と、上記光軸方向での上記射出側レンズの位置を決める射出側位置決め部;及び
上記第2枠部で上記保持孔の内面を構成し、上記光軸方向における上記入射側と上記射出側のそれぞれの端部よりも中間部で上記光軸からの上記半径方向の距離が小さい枠内面部;
を有し、
上記入射側レンズは、上記第1の傾斜面が上記光軸方向で上記入射側から上記射出側に進むにつれて上記光軸からの上記半径方向の距離を小さくする第1の向きで上記レンズ枠の上記保持孔内に保持され、上記枠内面部は、上記入射側レンズが上記光軸方向で上記第1の向きと逆向きであるときに、上記入射側から上記保持孔内への上記第1の傾斜面の挿入を規制すること;及び
上記射出側レンズは、上記第2の傾斜面が上記光軸方向で上記入射側から上記射出側に進むにつれて上記光軸からの上記半径方向の距離を大きくする第2の向きで上記レンズ枠の上記保持孔内に保持され、上記枠内面部は、上記射出側レンズが上記光軸方向で上記第2の向きと逆向きであるときに、上記射出側から上記保持孔内への上記第2の傾斜面の挿入を規制すること;
を特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項4記載のレンズユニットにおいて、上記枠内面部は、上記入射側レンズが上記第1の向きであるときに上記射出側から上記保持孔内への上記第1の傾斜面の挿入を規制し、上記射出側レンズが上記第2の向きであるときに上記入射側から上記保持孔内への上記第2の傾斜面の挿入を規制するレンズユニット。
【請求項6】
請求項4または5記載のレンズユニットにおいて、上記枠内面部は、
上記入射側位置決め部によって上記入射側レンズを上記光軸方向に位置決めした状態で上記第1の傾斜面に対向する、上記第1の傾斜面と略平行な平面状の入射側傾斜内面;及び
上記射出側位置決め部によって上記射出側レンズを上記光軸方向に位置決めした状態で上記第2の傾斜面に対向する、上記第2の傾斜面と略平行な平面状の射出側傾斜内面;
を有しているレンズユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項または2記載のレンズユニットにおいて、
上記入射側位置決め部は、上記光軸と略垂直で上記光軸方向の上記入射側を向く平面であり、上記入射側レンズは、上記入射側から上記入射側位置決め部に当接して上記光軸方向での位置が決まる第1の基準面を有し、
上記射出側位置決め部は、上記光軸と略垂直で上記光軸方向の上記射出側を向く平面であり、上記射出側レンズは、上記射出側から上記射出側位置決め部に当接して上記光軸方向での位置が決まる第2の基準面を有するレンズユニット。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載のレンズユニットにおいて、上記光軸方向で上記射出側レンズよりも上記射出側の位置で上記レンズ枠に取り付けられ、上記第2の傾斜面で反射して射出側へ進む光の少なくとも一部を遮る射出側遮光部材を有するレンズユニット。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載のレンズユニットにおいて、上記光軸方向で上記入射側レンズよりも上記入射側の位置で上記レンズ枠に取り付けられ、上記入射側から上記第1の傾斜面へ向けて進む光の少なくとも一部を遮る入射側遮光部材を備えるレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズと該レンズを保持するレンズ枠とを有するレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯情報端末などの様々な機器に撮像装置が搭載されており、こうした機器の小型化やデザイン性の向上に寄与するために、撮像装置に対する小型化の要求が強まっている。例えば、特許文献1から特許文献5のように、撮像光学系を構成するレンズの周縁形状を、光軸を中心とする円形(円筒)の一部を欠除させた非円形にすることで、レンズの正面投影面積が小さくなり、当該レンズを含む撮像装置全体の小型化を図ることができる。この種の非円形の周縁形状を有するレンズとして、周縁に平面状のカット面を1つ有するDカット形状のレンズや、周縁に2つの平面状のカット面を有する小判形状のレンズなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−003180号公報
【特許文献2】特開2015−114400号公報
【特許文献3】特開2006−267391号公報
【特許文献4】特開2010−243763号公報
【特許文献5】特開2013−105049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなカット面を周縁に有するレンズを用いる場合、カット面で反射した光が撮像面に達し、フレアやゴーストが生じて撮影画像の画像品質が低下するおそれがある。特に、光軸を中心とするレンズの半径方向において光軸からカット面までの距離を小さくするほどレンズを小型化できるが、その反面、光軸に近い位置ほどカット面の面積が大きくなりやすく、有害な反射光が生じるリスクが高まる。そのため、半径方向においてレンズの有効範囲に対して余裕を持たせた位置にカット面を形成する必要があり、レンズの小型化が制約されていた。
【0005】
また、小型化を目的として上記のようなカット面を有するレンズを用いる場合、このレンズを保持するレンズ枠においても小型化を実現するべく、レンズのカット面の外側を囲む部分を薄肉に形成する場合が多い。すると、この薄肉部分での強度確保が課題になる。さらに薄肉部分には、レンズ枠を成形する際のウェルドラインが発生しやすいという問題もある。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、光学性能を損なわずにレンズの小型化とレンズ枠の強度確保を実現できるレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光軸方向の入射側に位置する入射側レンズと、射出側に位置する射出側レンズを、共通のレンズ枠の保持孔内に挿入保持するレンズユニットに関するものである。本発明の第1の態様のレンズユニットは次の構成を備える。入射側レンズは、光軸を中心とする半径方向の周縁に、光軸を中心とする円筒状をなす第1の外周面と、半径方向で第1の外周面よりも光軸からの距離が小さく、光軸方向の入射側から射出側に進むにつれて光軸からの半径方向の距離を小さくする第1の傾斜面とを有する。射出側レンズは、光軸を中心とする半径方向の周縁に、光軸を中心とする円筒状をなす第2の外周面と、半径方向で第2の外周面よりも光軸からの距離が小さく、光軸方向の入射側から射出側に進むにつれて光軸からの半径方向の距離を大きくする第2の傾斜面とを有する。レンズ枠は、入射側レンズの第1の外周面と第2の外周面の外側を囲む第1枠部と、第1の傾斜面と第2の傾斜面の外側を囲む第2枠部を有する。第1枠部内には、光軸方向での入射側レンズの位置を決める入射側位置決め部と、光軸方向での射出側レンズの位置を決める射出側位置決め部を有する。第2枠部には保持孔の内面として、入射側位置決め部により位置決めされた入射側レンズの第1の傾斜面に沿う入射側領域と、射出側位置決め部により位置決めされた射出側レンズの第2の傾斜面に沿う射出側領域とを有する枠内面部が設けられる。枠内面部の入射側領域は光軸方向における入射側よりも射出側で光軸からの半径方向の距離が小さく、枠内面部の射出側領域は光軸方向における入射側よりも射出側で光軸からの半径方向の距離が大きい。
【0008】
枠内面部の入射側領域は、光軸方向と半径方向の形成範囲が入射側レンズの第1の傾斜面と同じで光軸に対する傾斜方向が入射側レンズの第1の傾斜面と逆である仮想傾斜面と交差する関係にあり、枠内面部の射出側領域は、光軸方向と半径方向の形成範囲が射出側レンズの第2の傾斜面と同じで光軸に対する傾斜方向が射出側レンズの第2の傾斜面と逆である仮想傾斜面と交差する関係にあることが好ましい。
【0009】
枠内面部の入射側領域を、入射側レンズの第1の傾斜面と略平行な平面形状とし、枠内面部の射出側領域を、射出側レンズの第2の傾斜面と略平行な平面形状とすることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様のレンズユニットは次の構成を備える。入射側レンズは、光軸を中心とする半径方向の周縁に、光軸を中心とする円筒状をなす第1の外周面と、半径方向で第1の外周面よりも光軸からの距離が小さく、光軸に対して非平行かつ非垂直な第1の傾斜面とを有する。射出側レンズは、光軸を中心とする半径方向の周縁に、光軸を中心とする円筒状をなす第2の外周面と、半径方向で第2の外周面よりも光軸からの距離が小さく、光軸に対して非平行かつ非垂直な第2の傾斜面とを有する。レンズ枠は、入射側レンズの第1の外周面と第2の外周面の外側を囲む第1枠部と、第1の傾斜面と第2の傾斜面の外側を囲む第2枠部を有する。第1枠部内には、光軸方向での入射側レンズの位置を決める入射側位置決め部と、光軸方向での射出側レンズの位置を決める射出側位置決め部を有する。第2枠部には保持孔の内面として、光軸方向における入射側と射出側のそれぞれの端部よりも中間部で光軸からの半径方向の距離が小さい枠内面部を有する。入射側レンズは、第1の傾斜面が光軸方向で入射側から射出側に進むにつれて光軸からの半径方向の距離を小さくする第1の向きでレンズ枠の保持孔内に保持され、レンズ枠の枠内面部は、入射側レンズが光軸方向で第1の向きと逆向きであるときに、入射側から保持孔内への第1の傾斜面の挿入を規制する。射出側レンズは、第2の傾斜面が光軸方向で入射側から射出側に進むにつれて光軸からの半径方向の距離を大きくする第2の向きでレンズ枠の保持孔内に保持され、レンズ枠の枠内面部は、射出側レンズが光軸方向で第2の向きと逆向きであるときに、射出側から保持孔内への第2の傾斜面の挿入を規制する。
【0011】
さらに、レンズ枠の枠内面部は、入射側レンズが第1の向きであるときに射出側から保持孔内への第1の傾斜面の挿入を規制し、射出側レンズが第2の向きであるときに入射側から保持孔内への第2の傾斜面の挿入を規制するとよい。
【0012】
第2枠部における枠内面部を構成する部分として、入射側位置決め部によって入射側レンズを光軸方向に位置決めした状態で第1の傾斜面に対向する、第1の傾斜面と略平行な平面状の入射側傾斜内面と、射出側位置決め部によって射出側レンズを光軸方向に位置決めした状態で第2の傾斜面に対向する、第2の傾斜面と略平行な平面状の射出側傾斜内面を有することが好ましい。
【0013】
各態様のレンズユニットは、光軸と略垂直で光軸方向の入射側を向く平面として入射側位置決め部を構成し、入射側レンズは、入射側から入射側位置決め部に当接して光軸方向での位置が決まる第1の基準面を有するとよい。また、光軸と略垂直で光軸方向の射出側を向く平面として射出側位置決め部を構成し、射出側レンズは、射出側から射出側位置決め部に当接して光軸方向での位置が決まる第2の基準面を有するとよい。
【0014】
本発明の各態様のレンズユニットでは、レンズ枠に遮光部材を取り付けてもよい。例えば、光軸方向で射出側レンズよりも射出側の位置でレンズ枠に取り付けられる射出側遮光部材や、光軸方向で入射側レンズよりも入射側の位置でレンズ枠に取り付けられる入射側遮光部材を備えることができる。射出側遮光部材は、射出側レンズの第2の傾斜面で反射して射出側へ進む光の少なくとも一部を遮る。入射側遮光部材は、入射側から入射側レンズの第1の傾斜面へ向けて進む光の少なくとも一部を遮る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、入射側レンズと射出側レンズがそれぞれ撮像面まで反射光を到達させにくい形状である第1の傾斜面との第2の傾斜面を有しており、各傾斜面からの有害な反射光を抑えながら各傾斜面の形成位置を光軸に近づけて入射側レンズと射出側レンズの小型化を図ることができる。また、レンズ枠では、入射側レンズの第1の傾斜面と射出側レンズの第2傾斜面の外側を囲む第2枠部が、各傾斜面に対応して光軸方向の中間部で光軸からの半径方向の距離が小さくなる枠内面部を有しており、レンズ枠の大型化を伴わずに第2枠部の肉厚を大きくして強度を確保できる。従って、光学性能を損なわずにレンズの小型化とレンズ枠の強度確保を実現したレンズユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した2群レンズユニットを有する撮像装置の側断面図である。
図2】2群レンズユニットの分解斜視図である。
図3】2群枠の斜視図である。
図4】2群レンズユニットの側断面図である。
図5】第1レンズと第2レンズのそれぞれの光軸方向の向きを逆にした状態を仮想的に示した2群レンズユニットの下半部分の側断面図である。
図6】別実施形態の2群レンズユニットの側断面図である。
図7】本発明の実施形態とは異なる比較例のレンズユニットの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に断面を示す撮像装置10の撮像光学系は、第1群G1、第2群G2、第3群G3、第4群G4を有し、第1群G1に含まれる第1プリズムPR1と第4群G4の像側に位置する第2プリズムPR2とでそれぞれ略直角に光束を反射させる屈曲光学系となっている。第1群G1は、被写体(物体)側から順に、第1レンズL1と第1プリズムPRと第2レンズL2を有している。第2群G2は、被写体側から順に第1レンズ(入射側レンズ)L3と第2レンズ(射出側レンズ)L4を有している。第2群G2から第4群G4はそれぞれ、プリズムなどの反射素子を含まないレンズ群である。第2プリズムPR2の射出面に対向する位置に撮像センサ11が設けられている。第1群G1の第1レンズL1を通る光軸を第1光軸O1、第1群G1の第2レンズL2から第4群G4までを通る光軸を第2光軸O2、第2プリズムPR2から撮像センサ11に向かう光軸を第3光軸O3とする。第1光軸O1と第3光軸O3は略平行であり、第2光軸O2に対して略垂直な関係にある。
【0018】
撮像装置10は、第2光軸O2に沿う方向に長い筺体12を有し、筺体12の長手方向の一端部付近に第1群G1が支持され、長手方向の他端付近に第4群G4と第2プリズムPR2と撮像センサ11が設けられている。筺体12の長手方向の中間には2群枠(レンズ枠)13と3群枠14が支持されている。2群枠13は第2群G2を保持するレンズ枠であり、3群枠14は第3群G3を保持するレンズ枠である。2群枠13に第2群G2を組み付けたものが2群レンズユニット15となる。
【0019】
図2以下を参照して2群レンズユニット15の詳細を説明する。以下の説明では、第2光軸O2に沿う方向を光軸方向とする。2群レンズユニット15を基準として、第1群G1が位置する側を光軸方向の入射側、第3群G3から第2プリズムPR2が位置する側を光軸方向の射出側とする。また、第1光軸O1と第3光軸O3に沿う方向を撮像装置10の前後方向とし、第1レンズL1の入射面が向く側を前方、第1レンズL1の射出面が向く側を後方とする。また、第1光軸O1と第2光軸O2と第3光軸O3に対して直交する方向(図1図4の紙面に対して直交する方向)を撮像装置10の幅方向とする。
【0020】
図4に示すように、第2群G2の第1レンズL3は、入射面20と射出面21がいずれも凸面である両凸レンズである。第1レンズL3には、第2光軸O2を中心とする半径方向の周縁に、光軸方向の厚みが略一定の環状周縁部22が設けられている。環状周縁部22は、入射面20の周縁に位置する入射周縁面22aと、射出面21の周縁に位置する基準面(第1の基準面)22bと、入射周縁面22aと基準面22bを接続する外周面(第1の外周面)22cを有している。入射周縁面22aと基準面22bは第2光軸O2に対して略垂直な平面であり、外周面22cは第2光軸O2を中心とする円筒面である。
【0021】
第1レンズL3は、第2光軸O2を中心とする回転対称体から撮像装置10の後方側を向く周縁の一部を切り欠いた形状であり、幅方向のサイズ(直径)よりも前後方向のサイズが小さい。第1レンズL3の切り欠き部分には、入射面20と射出面21を接続するカット面(第1の傾斜面)25が形成されている。カット面25は第2光軸O2に対して非平行かつ非垂直な平面であり、入射面20から射出面21に進むにつれて、第2光軸O2からの半径方向の距離を小さくするように傾斜している。
【0022】
図4に示すように、第2群G2の第2レンズL4は、凸面である入射面30よりも凹面である射出面31の曲率が大きい凹メニスカスレンズである。第2レンズL4には、第2光軸O2を中心とする半径方向の周縁に、光軸方向の厚みが略一定の環状周縁部32が設けられている。環状周縁部32と入射面31の間に、環状周縁部32よりも第2光軸O2に近く位置する段部33が形成されている。環状周縁部32は、段部33の周縁に位置する基準面(第2の基準面)32aと、射出面31の周縁に位置する射出周縁面32bと、基準面32aと射出周縁面32bを接続する外周面(第2の外周面)32cを有している。基準面32aと射出周縁面32bは第2光軸O2に対して略垂直な平面であり、外周面32cは第2光軸O2を中心とする円筒面である。
【0023】
第2レンズL4は、第2光軸O2を中心とする回転対称体から撮像装置10の後方側を向く周縁の一部を切り欠いた形状であり、幅方向のサイズ(直径)よりも前後方向のサイズが小さい。第2レンズL4の切り欠き部分には、入射面30と射出面31を接続するカット面(第2の傾斜面)35が形成されている。カット面35は第2光軸O2に対して非平行かつ非垂直な平面であり、入射面30から射出面31に進むにつれて、第2光軸O2からの半径方向の距離を大きくするように傾斜している。
【0024】
第1レンズL3と第2レンズL4は、第2光軸O2から外周面22cと外周面32cまでの半径方向の大きさが概ね同じである。また、第1レンズL3のカット面25と第2レンズL4のカット面35は、第2光軸O2を中心とする半径方向で概ね同じ範囲に形成されている。
【0025】
図3図4に示すように、2群枠13には、第1レンズL3と第2レンズL4を挿入する保持孔40が光軸方向に貫通形成されている。2群枠13は保持孔40を形成する部分として、第1レンズL3の環状周縁部22の外周面22cと第2レンズL4の環状周縁部32の外周面32cの外側を囲む第1枠部41と、第1レンズL3のカット面25と第2レンズL4のカット面35の外側を囲む第2枠部42を有している。
【0026】
図2図3に示すように、第1枠部41から幅方向の一方と他方に突出する側方突出部43と側方突出部44が設けられる。側方突出部43には光軸方向に貫通するガイド孔45が形成され、筺体12内に固定的に支持された第1ガイドシャフト16(図1)がガイド孔45に対して挿通される。側方突出部44には光軸方向に貫通する回転規制孔46が形成され、筺体12内に固定的に支持された第2ガイドシャフト(図示略)が回転規制孔46に対して挿通される。第1ガイドシャフト16と第2ガイドシャフトはいずれも光軸方向に軸線が向いており、ガイド孔45が第1ガイドシャフト16による案内を受けることよって、2群枠13が光軸方向に移動可能に支持される。第2ガイドシャフトと回転規制孔46によって、第1ガイドシャフト16を中心とする2群枠13の回転が規制される。
【0027】
筺体12内には第1ガイドシャフト16と平行に延びるリードスクリュー17(図1)が支持されており、リードスクリュー17に螺合するナット(図示略)が側方突出部43のナット受け部47に嵌合している。筺体12に支持されたモータ(図示略)によってリードスクリュー17が回転駆動され、リードスクリュー17の回転によってナットが光軸方向に移動する。ナットからナット受け部47に力が伝わり、2群枠13が光軸方向に移動する。詳細な図示を省略するが、3群枠14は、2群枠13と同様の駆動機構によって光軸方向に移動する。撮像装置10の撮像光学系は焦点距離可変であり、2群枠13に支持される第2群G2と3群枠14に支持される第3群G3の光軸方向移動によってズーミング(変倍)動作が行われる。
【0028】
図2ないし図4に示すように、2群枠13は、第1枠部41と第2枠部42で保持孔40の内面形状が異なっている。第1枠部41における保持孔40の内面は、入射側に筒状面50を有し、射出側に筒状面51を有し、筒状面50に続いて規制面(入射側位置決め部)52が形成され、筒状面51に続いて規制面(射出側位置決め部)53が形成されている。筒状面50と筒状面51はいずれも第2光軸O2を中心とする円筒状の内周面の一部であり、第2光軸O2を中心とする半径方向における筒状面50と筒状面51の内径サイズは略等しい。規制面52と規制面53はいずれも第2光軸O2に対して略垂直な平面であり、規制面52が入射側を向き、規制面53が射出側を向いている。規制面52と規制面53の間の光軸方向位置には、第2光軸O2側に向けて突出する中間突出部54が形成されている。
【0029】
図3に示すように、第1枠部41の入射側には、第2光軸O2を中心とする周方向に位置を異ならせて複数(4つ)の凹部55が形成されている。各凹部55は、筒状面50から外径方向(第2光軸O2から離れる方向)に向けて凹設されており、第1枠部41の入射側の端面に開口している。また、第1枠部41の入射側の端面には、2つの位置決め突起56が突設されている。
【0030】
第1枠部41の射出側には、凹部55と同様の複数の凹部57(図2図3に一部が表れている)が設けられている。各凹部57は、筒状面51から外径方向に向けて凹設され、第1枠部41の射出側の端面に開口している。また、第1枠部41の射出側の端面には、位置決め突起56と同様に2つの位置決め突起58(図1図2にそれぞれ一つ表れている)が設けられている。
【0031】
図1ないし図4に示すように、第2枠部42における保持孔40の内面である枠内面部60は、入射側に傾斜内面(入射側領域、入射側傾斜内面)61を有し、射出側に傾斜内面(射出側領域、射出側傾斜内面)62を有している。傾斜内面61は、入射側から射出側に向けて進むにつれて第2光軸O2からの半径方向の距離を小さくする平面であり、傾斜内面62は、入射側から射出側に向けて進むにつれて第2光軸O2からの半径方向の距離を大きくする平面である。つまり、枠内面部60は、光軸方向における入射側と射出側のそれぞれの端部よりも中間部で第2光軸O2からの半径方向の距離が小さくなる略山形形状を有している。第2枠部42のうち枠内面部60の裏側に位置する外面部分は、第2光軸O2と略平行な平面形状である。そのため第2枠部42は、枠内面部60の形状によって、光軸方向の入射側と射出側から中間部に向けて徐々に肉厚を大きくする略山形の断面形状になっている(図4参照)。第2光軸O2に対する傾斜内面61の傾斜角は、第1レンズL3のカット面25と略同じであり、第2光軸O2に対する傾斜内面62の傾斜角は、第2レンズL4のカット面35と略同じである。すなわち、傾斜内面61はカット面25と略平行な平面であり、傾斜内面62はカット面35と略平行な平面である。傾斜内面61と傾斜内面62の間の光軸方向位置には、第2光軸O2側に向けて突出する中間突出部63が形成されている。
【0032】
図2図4に示すように、第1レンズL3は、カット面25の位置が第2枠部42に対応するように第2光軸O2を中心とする周方向位置を合わせ、かつ入射面20を入射側に向け射出面21を射出側に向けて(この第1レンズL3の光軸方向の向きを第1の向きと呼ぶ)、入射側から保持孔40内に挿入して2群枠13に組み付けられる。このときに第1レンズL3が光軸方向で第1の向きと逆向き(入射面20が射出側を向き、射出面21が入射側を向く)であると、第2光軸O2に対するカット面25と傾斜内面61の傾斜方向が互いに逆になり、カット面25と入射面20の境界部分が傾斜内面61に当接して干渉するので、保持孔40への第1レンズL3の挿入が規制される。第1の向きとは逆向きにした仮想の第1レンズL3xを図5に一点鎖線で示した。図5に示す仮想カット面25xは、光軸方向の形成範囲と半径方向の形成範囲がカット面25と略同じで、第2光軸O2に対する傾斜方向がカット面25とは逆の傾斜面である。カット面25xは2群枠13の傾斜内面61と交差する関係にあり、2群枠13の保持孔40に対して図5に示す位置まで第1レンズL3xを挿入することはできない。
【0033】
また、第1レンズL3を第1の向きにして保持孔40に対して射出側から挿入しようとすると、カット面25と入射面20の境界部分が傾斜内面62に当接して干渉するので、射出側からの第1レンズL3の挿入が規制される。
【0034】
第1の向きで入射側から保持孔40に挿入された第1レンズL3は、基準面22bが規制面52に当接することにより光軸方向の位置が決まる(図4参照)。この状態で、カット面25と傾斜内面61の間と、環状周縁部22の外周面22cと筒状面50の間にはそれぞれクリアランスがあり、第1レンズL3は第2光軸O2と直交する平面内での位置調整(調芯)を行うことができる。調芯作業は凹部55に器具を挿入して行うことができる。第1レンズL3の調芯が完了すると、凹部55に接着剤を充填して2群枠13に対して第1レンズL3を固定する。
【0035】
保持孔40内に第1レンズL3を固定した状態で、2群枠13に入射側遮光枠(入射側遮光部材)70を取り付ける。図2に示すように、入射側遮光枠70は、第1枠部41と第2枠部42の入射側の面を覆う板状部材であり、光軸方向に貫通するD字形状の光路開口71を有する。光路開口71に臨む入射側遮光枠70の内縁部は、第1枠部41に対応する部分では第2光軸O2を中心とする円形の円形縁部72となり、第2枠部42に対応する部分では幅方向に延びる直線縁部73となる。
【0036】
入射側遮光枠70は、光路開口71を挟んだ幅方向の一方と他方に位置決め溝74と位置決め溝75を有している。各位置決め溝74,75内に位置決め突起56を挿入することによって、2群枠13への入射側遮光枠70の取り付け位置が決まる。入射側遮光枠70は接着などの手段によって2群枠13に固定される。図4に示すように、2群枠13に取り付けた状態の入射側遮光枠70は、環状周縁部22とカット面25を含む第1レンズL3の周縁部の入射側に位置して、第1レンズL3の周縁部への光の入射を遮断する。特に、入射側遮光枠70のうち直線縁部73に沿う部分は、カット面25に対する入射側の領域に位置しており、カット面25へ向けて進む光の一部を遮断することができる。
【0037】
図2図4に示すように、第2レンズL4は、カット面35の位置が第2枠部42に対応するように第2光軸O2を中心とする周方向位置を合わせ、かつ入射面30を入射側に向け射出面31を射出側に向けて(この第2レンズL4の光軸方向の向きを第2の向きと呼ぶ)、射出側から保持孔40内に挿入して2群枠13に組み付けられる。このときに第2レンズL4が光軸方向で第2の向きと逆向き(入射面30が射出側を向き、射出面31が入射側を向く)であると、第2光軸O2に対するカット面35と傾斜内面62の傾斜方向が互いに逆になり、カット面35と射出面31の境界部分が傾斜内面62に当接して干渉するので、保持孔40への第2レンズL4の挿入が規制される。第2の向きとは逆向きにした仮想の第2レンズL4xを図5に一点鎖線で示した。図5に示す仮想カット面35xは、光軸方向の形成範囲と半径方向の形成範囲がカット面35と略同じで、第2光軸O2に対する傾斜方向がカット面35とは逆の傾斜面である。カット面35xは2群枠13の傾斜内面62と交差する関係にあり、2群枠13の保持孔40に対して図5に示す位置まで第2レンズL4xを挿入することはできない。
【0038】
また、第2レンズL4を第2の向きにして保持孔40に対して入射側から挿入しようとすると、カット面35と射出面31の境界部分が傾斜内面61に当接して干渉するので、入射側からの第2レンズL4の挿入が規制される。
【0039】
第2の向きで射出側から保持孔40に挿入された第2レンズL4は、基準面32aが規制面53に当接することにより光軸方向の位置が決まる(図4参照)。この状態で、カット面35と傾斜内面62の間と、環状周縁部32の外周面32cと筒状面51の間と、段部33と中央突出部54の間にはそれぞれクリアランスがあり、第2レンズL4は第2光軸O2と直交する平面内での位置調整(調芯)を行うことができる。調芯作業は凹部57に器具を挿入して行うことができる。第2レンズL4の調芯が完了すると、凹部57に接着剤を充填して2群枠13に対して第2レンズL4を固定する。
【0040】
保持孔40内に第2レンズL4を固定した状態で、2群枠13に絞り枠(射出遮光部材)80を取り付ける。図2に示すように、絞り枠80は、第1枠部41と第2枠部42の射出側の面を覆う板状部材であり、光軸方向に貫通するD字形状の光路開口81を有する。光路開口81に臨む絞り枠80の内縁部は、第1枠部41に対応する部分では第2光軸O2を中心とする円形の円形縁部82となり、第2枠部42に対応する部分では幅方向に延びる直線縁部83となる。
【0041】
絞り枠80は、光路開口81を挟んだ幅方向の一方と他方に位置決め溝84と位置決め孔85を有している。位置決め溝84によって一方の位置決め突起58を挟持すると共に、位置決め孔85に他方の位置決め突起58を挿入することによって、2群枠13への絞り枠80の取り付け位置が決まる。絞り枠80は接着などの手段によって2群枠13に固定される。図4に示すように、2群枠13に取り付けた状態の絞り枠80は、環状周縁部32とカット面35を含む第2レンズL4の周縁部の射出側に位置して、第2レンズL4の周縁部から第3群G3へ進もうとする光を遮断する。特に、絞り枠80のうち直線縁部83に沿う部分は、カット面35に対する射出側の領域に位置しており、カット面35で反射されて撮像面へ向けて進む光の一部を遮断することができる。
【0042】
以上のように第1レンズL3と第2レンズL4を互いに光軸方向の反対側から2群枠13に組み付けた状態で、第1レンズL3と第2レンズL4の光軸方向位置と、射出面21と入射面30の光軸方向間隔が、2群枠13の保持孔40内の規制面52と規制面53を基準として決まり、第2群G2を含む2群レンズユニット15が構成される。
【0043】
第2群G2における第1レンズL3のカット面25と第2レンズL4のカット面35は、有害な反射光を撮像面(撮像センサ11の受光面)まで到達させにくい構造となっている。図7に示す比較例のレンズユニット15’を参照しながら、その詳細を説明する。なお、図4図7で共通の符号を用いている部分は、共通する構成(部材の形状及び大きさ)を有しているものとする。
【0044】
図7の比較例のレンズユニット15’は、第1レンズL3’のカット面25’と、第2レンズL4’のカット面35’をそれぞれ第2光軸O2と略平行な平面としたものであり、これに対応して2群枠13’の保持孔40’の枠内面部60’も、図4の2群枠13の保持孔40の枠内面部60とは異なっている。より詳しくは、図4に示す実施形態のカット面25の入射側の端部位置(カット面25のうち第2光軸O2からの距離が最も大きい部分)を、第2光軸O2と略平行に射出側に向けて延長したものが図7のカット面25’である。また、図4に示す実施形態のカット面35の射出側の端部位置(カット面35のうち第2光軸O2からの距離が最も大きい部分)を、第2光軸O2と略平行に入射側に向けて延長したものが図7のカット面35’である。2群枠13’の枠内面部60’には、カット面25’に対向する位置に、第2光軸O2と略平行な平面である光軸平行内面61’が形成され、カット面35’に対向する位置に、第2光軸O2と略平行な平面である光軸平行内面62’が形成されている。光軸平行内面61’と光軸平行内面62’の間に中間突出部63’が突設されている。中間突出部63’の先端から第2光軸O2までの距離は、図4に示す実施形態における中間突出部63の先端から第2光軸O2までの距離と略等しい。
【0045】
図7のレンズユニット15’において入射側遮光枠70で遮られずに直線縁部73の至近を通って第1レンズL3’のカット面25’に向かう光線K11を図7に示した。光線K11は、カット面25’で反射されて第2光軸O2に接近する方向に向きを変え、第1レンズL3’の射出面21から出て中間突出部63’の近傍を通って第2レンズL4’の入射面30に入射し、第2レンズL4’の射出面31から出て第3群G3に向けて進む。また、入射側遮光枠70で遮られずに中間突出部63’の近傍を通って第2レンズL4’のカット面35’に向かう光線K12を図7に示した。光線K12は、カット面35’で反射されて第2光軸O2に接近する方向に向きを変え、第2レンズL4’の射出面31から出て、絞り枠80に遮られずに直線縁部83の至近を通って第3群G3に向けて進む。このようなカット面25’ やカット面35’で反射された光線が撮像センサ11の受光面に到達すると、画像にフレアやゴーストが生じるおそれがある。
【0046】
図4に示す実施形態の2群レンズユニット15では、第1レンズL3において、入射側から射出側に進むにつれて第2光軸O2に近づく傾斜面としてカット面25を設定することにより、カット面25で反射された反射光は、図7のカット面25’で反射された反射光に比して射出面21への入射角が大きくなる。そして、図7の光線K11と同条件の光線K1が第1レンズL3に入射した場合には、第1レンズL3のカット面25で反射された光線が射出面21で全反射するように、カット面25の傾斜角が設定されている。
【0047】
また、第2レンズL4において、入射側から射出側に進むにつれて第2光軸O2から離れる傾斜面としてカット面35を設定することにより、カット面35で反射された反射光は、図7のカット面35’で反射された反射光に比して射出面31への入射角が小さくなる。そして、図7の光線K12と同条件の光線K2が第2レンズL4に入射した場合には、第2レンズL4のカット面35で反射された光線が絞り枠80で遮られるように、カット面35の傾斜角が設定されている。
【0048】
このように本実施形態の2群レンズユニット15では、第1レンズL3のカット面25に入射側への立ち上がり角を有する傾斜を与え、第2レンズL4のカット面35に射出側への立ち上がり角を有する傾斜を与えることにより、カット面25とカット面35での反射光が撮像面(撮像センサ11の受光面)まで到達しにくくなり、カット面25とカット面35での反射を起因とするフレアやゴーストを効果的に防ぐことができる。よって、有効径が確保される範囲内で第1レンズL3と第2レンズL4の周縁部分の除去量を大きくして(第2光軸O2からのカット面25とカット面35の距離を小さくして)、撮像装置10の前後方向における第2群G2と2群枠13の小型化を図ることができる。
【0049】
なお、図4の形態では2群レンズユニット15に絞り枠80を設けてカット面35での反射光を遮断しているが、絞り枠80を備えない構成でも、図7の比較例でのカット面35’に比して、カット面35の傾斜によるフレアやゴーストの抑制効果を得ることができる。また、入射側遮光枠70を備えない構成でも、図7の比較例でのカット面25’に比して、カット面25の傾斜によるフレアやゴーストの抑制効果を得ることができる。例えば、入射側遮光枠70や絞り枠80に代えて、2群枠13と3群枠14の間に遮光部材を配したり、3群枠14に遮光部材を取り付けたりすることも可能である。
【0050】
2群枠13の第2枠部42は、第1レンズL3のカット面25と第2レンズL4のカット面35の傾斜形状に対応する傾斜内面61と傾斜内面62を枠内面部60に有する略山形の断面形状を有しており、図7に示す比較例の2群枠13’における第2枠部42’に比して肉厚が大きい。そのため、前後方向での2群枠13の大きさを増大させずに第2枠部42の肉厚を大きくして強度を確保することができる。また、第2枠部42の肉厚を大きくすることで、2群枠13を樹脂などの成形品とする場合にウェルドラインが発生しにくくなり、2群枠13の品質や外観が向上する。2群枠13の第1枠部41と第2枠部42はいずれも、光軸方向に離型する成形型によって容易に生産することが可能な形状であり、製造コストを抑えることができる。
【0051】
また、2群枠13に対する第1レンズL3と第2レンズL4の組み付け方向がカット面25,35と傾斜内面61,62によって定まるため、各レンズL3,L4を誤った向きで組み付けるリスクがなくなり、生産性の向上に寄与する。例えば、図7の比較例では、第1レンズL3’の表裏(入射面20と射出面21の向き)を逆にしても、カット面25’と光軸平行内面61’が略平行である関係は変わらない。また、第2レンズL4’の表裏(入射面30と射出面31の向き)を逆にしても、カット面35’と光軸平行内面62’が略平行である関係は変わらない。そのため、入射周縁面22aを規制面52に当接させる向きで第1レンズL3’を2群枠13’の保持孔40’内に挿入したり、射出周縁面32bを規制面53に当接させる向きで第2レンズL4’を2群枠13’の保持孔40’内に挿入したりする誤挿入が生じ得る。これに対して本実施形態の2群レンズユニット15は、図5に示すように、第1の向きとは逆向きの状態の第1レンズL3xを入射側から挿入したり、第2の向きとは逆向きの状態の第2レンズL4xを射出側から挿入したりする誤挿入を防止できる。
【0052】
以上のように、2群レンズユニット15は、入射側に位置する第1レンズL3と射出側に位置する第2レンズL4がそれぞれ、第2光軸O2に対して所定の方向に傾斜するカット面25とカット面35を有することで、反射光による画像品質の低下を抑えながら各カット面25,35の形成位置を第2光軸O2に近づけて第1レンズL3と第2レンズL4の小型化を図ることができる。また、2群枠13のうちカット面25とカット面35を囲む第2枠部42が、各カット面25,35に対応して光軸方向の中間部で第2光軸O2からの半径方向の距離が小さくなる略山形形状の枠内面部60を有しており、2群枠13の大型化を伴わずに第2枠部42の肉厚を大きくして強度を確保できる。従って、2群レンズユニット15を小型でありながら光学性能と強度に優れたものにすることができる。また、2群レンズユニット15は組み立て作業の行い易さなど生産性の点でも優れている。
【0053】
図6に示す2群レンズユニット115は、第2枠部42の枠内面部160の形状を異ならせた実施形態である。枠内面部160は、第1レンズL3のカット面25に対向する段状内面(入射側領域)161と、第2レンズL4のカット面35に対向する段状内面(射出側領域)162と、光軸方向で段状内面161と段状内面162の間に位置して第2光軸O2側に向けて突出する中間突出部163を有している。図6中に拡大して示すように、段状内面161は、入射側から射出側に向けて進むにつれて第2光軸O2からの半径方向の距離を小さくする(先の実施形態の傾斜内面61と同様の傾斜を有する)平面である傾斜面部161aの途中に、第2光軸O2と略平行な平面である光軸平行面部161bを形成した構成である。段状内面162は、入射側から射出側に向けて進むにつれて第2光軸O2からの半径方向の距離を大きくする(先の実施形態の傾斜内面62と同様の傾斜を有する)平面である傾斜面部162aの途中に、第2光軸O2と略平行な平面である光軸平行面部162bを形成した構成である。中間突出部163は、図4の2群レンズユニット15における中間突出部63と略同じ形状である。
【0054】
段状内面161と段状内面162はそれぞれ第2光軸O2と略平行な平面部分を途中に有しているが、枠内面部160の全体として、入射側と射出側のそれぞれの端部よりも中間部で第2光軸O2からの半径方向の距離が小さい略山形形状になっている。そのため枠内面部160は、図4の2群レンズユニット15における枠内面部60と同様に、第1レンズL3を第1の向きで入射側から保持孔40に挿入可能にさせる一方で、第1レンズL3を第1の向きと逆向きにして入射側から挿入することや、第1レンズL3を第1の向きにして射出側から挿入することを規制する。また、枠内面部160は、第2レンズL4を第2の向きで射出側から保持孔40に挿入可能にさせる一方で、第2レンズL4を第2の向きと逆向きにして射出側から挿入することや、第2レンズL4を第2の向きにして入射側から挿入することを規制する。そして、枠内面部160の略山形形状によって、2群枠13の第2枠部42の肉厚を大きくして強度を確保することができる。つまり、2群枠13の第2枠部42の内面形状は、第1レンズL3のカット面25や第2レンズL4のカット面35と完全に平行な平面形状でなくても成立する。但し、枠内面部160の段状内面161と段状内面162は、第2光軸O2と略平行な平面部分では、図4の枠内面部60の傾斜内面61や傾斜内面62に比して肉厚が小さくなるので、図4の枠内面部60の方が強度確保については有利な形態となる。
【0055】
以上、図示実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、要旨の範囲内で様々な形態を採用することができる。例えば、実施形態の2群レンズユニット15,115は、2群枠13内に第1レンズL3と第2レンズL4の2つのレンズを保持しているが、3つ以上のレンズを共通のレンズ枠内に保持するタイプのレンズユニットにも本発明を適用可能である。具体的には、第1レンズL3と第2レンズL4の間の光軸方向位置に別のレンズを配置する形態や、第1レンズL3よりも入射側あるいは第2レンズL4よりも射出側に別のレンズを配置する形態にすることもできる。後者の形態では、第1レンズL3の入射周縁面22aや第2レンズL4の射出周縁面32bに対して当接させて別のレンズの光軸方向の位置を定めたり、入射周縁面22aや射出周縁面32bとの間に間隔部材(スペーサ)を挟んで別のレンズの光軸方向位置を定めたりすることができる。
【0056】
実施形態の2群レンズユニット15,115は、入射側レンズが両凸レンズの第1レンズL3で、射出側レンズが凹メニスカスレンズの第2レンズL4であるが、本発明のレンズユニットは、入射側レンズと射出側レンズの形状をこれに限定するものではない。また、単レンズではなく貼り合わせレンズなども入射側レンズや射出側レンズとして適用可能である。
【0057】
実施形態では、第2光軸O2を中心とする半径方向の互いの大きさ(外周面22cと外周面32cの半径方向位置、カット面25とカット面35の半径方向位置)が概ね同じである第1レンズL3と第2レンズL4を2群枠13内に保持している。この構成によると、2群枠13の第1枠部41と第2枠部42における外面形状の凹凸を少なくして、撮像装置10の筺体12内にスペース効率良く収まる2群レンズユニット15,115にすることができる。しかし、入射側レンズと射出側レンズの半径方向サイズが異なるタイプのレンズユニットにも本発明を適用可能である。
【0058】
実施形態の第1レンズL3と第2レンズL4はそれぞれ、周方向の一箇所だけにカット面25,35による切り欠き形状を有する、いわゆるDカット形状のレンズであるが、本発明における入射側レンズや射出側レンズは、周方向における傾斜面(カット面)の数を任意に設定することが可能である。例えば、光軸に関して略対称の関係で2つの傾斜面(カット面)を有する小判形状のレンズや、周方向に位置を異ならせて3つ以上の傾斜面(カット面)を有するレンズを採用することもできる。
【0059】
実施形態の2群レンズユニット15,115では、第1レンズL3と第2レンズL4を調芯後に2群枠13に対して接着で固定しているが、本発明ではレンズ枠に対して入射側レンズと射出側レンズを固定する手段を接着に限るものではなく、任意の固定手段や固定構造を採用することができる。
【0060】
実施形態の2群レンズユニット15,115は、撮像装置10における屈曲光学系の第2光軸O2上に位置しているが、このような屈曲光学系ではない光学系を構成するレンズユニットにも本発明を適用することが可能である。また、実施形態の2群レンズユニット15,115は光軸方向に可動であるが、可動でないレンズユニットにも本発明を適用できる。さらに光学系のうち第2群G2以外のレンズユニットにも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 撮像装置
11 撮像センサ
12 筺体
13 2群枠(レンズ枠)
14 3群枠
15 2群レンズユニット
16 第1ガイドシャフト
17 リードスクリュー
20 入射面
21 射出面
22 環状周縁部
22a 入射周縁面
22b 基準面(第1の基準面)
22c 外周面(第1の外周面)
25 カット面(第1の傾斜面)
30 入射面
31 射出面
32 環状周縁部
32a 基準面(第2の基準面)
32b 射出周縁面
32c 外周面(第2の外周面)
35 カット面(第2の傾斜面)
33 段部
40 保持孔
41 第1枠部
42 第2枠部
43 44 側方突出部
45 ガイド孔
46 回転規制孔
47 ナット受け部
50 51 筒状面
52 規制面(入射側位置決め部)
53 規制面(射出側位置決め部)
54 中間突出部
55 57 凹部
56 58 位置決め突起
60 枠内面部
61 傾斜内面(入射側領域、入射側傾斜内面)
62 傾斜内面(射出側領域、射出側傾斜内面)
63 中間突出部
70 入射側遮光枠(入射側遮光部材)
71 光路開口
72 円形縁部
73 直線縁部
74 75 位置決め溝
80 絞り枠(射出遮光部材)
81 光路開口
82 円形縁部
83 直線縁部
84 位置決め溝
85 位置決め孔
115 2群レンズユニット
160 枠内面部
161 段状内面(入射側領域)
162 段状内面(射出側領域)
161a 162a 傾斜面部
161b 162b 光軸方向平面部
163 中間突出部
G1 第1群
G2 第2群
G3 第3群
G4 第4群
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第1レンズ(入射側レンズ)
L4 第2レンズ(射出側レンズ)
O1 第1光軸
O2 第2光軸(光軸)
O3 第3光軸
PR1 第1プリズム
PR2 第2プリズム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7