【解決手段】車載装置は、車両に搭載され、携帯端末と無線通信で接続される車載装置であって、車両の乗員が車両から降車したことを判定する乗員降車判定部と、携帯端末へ送信する無線信号の信号強度を第1の強度と第1の強度よりも弱い第2の強度との間で変更可能であり、無線信号を用いて携帯端末と無線通信を行う無線通信部と、携帯端末との接続状態を確認する接続状態確認部と、携帯端末の車両への置忘れを報知する報知部と、無線通信部の信号強度が第1の強度から第2の強度に変更された場合において、接続状態確認部によって携帯端末が接続された状態と確認され、かつ乗員降車判定部によって乗員が降車したと判定されると、報知部を用いて報知する制御部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1〜
図3を参照して、本発明に係る車載装置の第1の実施の形態を説明する。
(構成)
図1は、車載装置1、車載装置1が搭載される車両3、および車載装置1と通信する携帯端末2の構成を示す図である。車載装置1と携帯端末2は無線による通信が可能であるが、後述するように車載装置1と携帯端末2との距離、および通信に用いられる電波の出力の大きさにより通信ができなくなる。
第1の実施の形態では、ユーザは一人のみを想定する。そのユーザが乗降する車両3には車載装置1が搭載される。ユーザは携帯端末2を所有しており、携帯端末2を常時携帯する意図がある。そのためユーザによる携帯端末2の車両3内への置忘れを検出すると報知する。
【0009】
車両3は、車載装置1と、ドア状態検出部51と、通信アンテナ52と、車内カメラ53と、光源制御部54とを備える。
ドア状態検出部51は、車両3に備えられる各ドアの開閉状態、および施錠状態を検出し、それらの状態を示す信号を車載装置1に出力する。通信アンテナ52は、車載装置1と有線により接続され、車載装置1の外部アンテナとして使用される。すなわち車載装置1は通信アンテナ52を介して携帯端末2と通信を行う。車内カメラ53は、車両3の車内を撮影し撮影して得られた画像を車載装置1に出力する。光源制御部54は、車載装置1の動作指令に基づき車両3に備えられる光源、たとえばヘッドライトや室内灯を制御する。
【0010】
車載装置1は、制御部11と、電源管理部12と、ドア状態入力部13と、車載装置通信部15と、画像入力部16と、報知部17とを備える。
制御部11は、不図示のCPU,ROM,RAMから構成される。ROMに格納されるプログラムがRAMに展開されCPUにより実行されることにより後述する動作を行う。電源管理部12は、ユーザにより操作される不図示のイグニションキースイッチの操作信号を受信し、車載装置1、ドア状態検出部51、車内カメラ53、および光源制御部54の電源を制御する。すなわち本実施の形態では、ユーザによりイグニションキースイッチがOFFに操作されても車載装置1、ドア状態検出部51、車内カメラ53、および光源制御部54の電源は直ちには遮断されない。車載装置1、ドア状態検出部51、車内カメラ53、および光源制御部54の電源は、車載装置1により後述する処理が行われた後に遮断される。ドア状態入力部13は、ドア状態検出部51から車両3に備えられる各ドアの開閉状態、および施錠状態を示す信号を受信する。
【0011】
車載装置通信部15は、無線により通信を行う通信モジュール、たとえばBluetooth(登録商標)や無線LAN通信モジュールである。車載装置通信部15は、通信アンテナ52を介して携帯端末2と無線通信を行う。車載装置通信部15は、携帯端末2と通信可能であるか、すなわち携帯端末2と接続可能か否かを判断する接続確認機能を有する。車載装置通信部15は制御部11の動作指令に基づき通信アンテナ52に供給する電力を制御し、通信アンテナ52が出力する電波の出力を制御する。車載装置通信部15は通信アンテナ52に供給する電力を数段階に制御可能であるが、本実施の形態では最大出力と制限出力の2段階に制御する。車載装置通信部15は通常は最大出力とし、後述する場合に制限出力とする。すなわち、携帯端末2へ送信する無線信号の通常の通信に用いる強度とは、車載装置通信部15が通信アンテナ52へ供給する電力が最大出力である強度である。以下では最大出力から制限出力に切り替えることを、出力を低下させるとも言う。なお、車載装置通信部15が出力する電力が大きいほど、車載装置1から通信アンテナ52を介して送信される無線信号を携帯端末2において受信可能な距離が長くなる。そのため、携帯端末2から送信される無線信号の強度が十分であれば、車載装置通信部15が出力する電力が大きいほど、車載装置1と携帯端末2の間で通信可能な距離が長くなり、通信エリアが拡がる。さらに通信速度を速くすることもできる。
【0012】
画像入力部16は、車内カメラ53から入力される撮影画像を制御部11に出力する。報知部17は、制御部11からの動作指令に基づき光源制御部54を制御する。この制御により光源制御部54は、ヘッドライトを点灯させたり室内灯を点滅させる。
携帯端末2は、携帯端末通信部25を備える。携帯端末通信部25は、アンテナを備える無線通信モジュールであり、無線信号、すなわち電波を用いて車載装置1と通信する。ただし車載装置1はアンテナを備えないので、車両3に備えられるアンテナ52を介して車載装置1と通信する。
【0013】
(車両の平面図)
図2は、車両3の平面図である。図示上方が車両3の進行方向である。車両3は、車載装置1と、通信アンテナ52と、運転席61と、運転席用ドア61dと、助手席62と、助手席用ドア62dと、右後部座席63と右後部座席用ドア63dと、左後部座席64と、左後部座席用ドア64dとを備える。
図2において通信アンテナ52を中心とする2つの同心円である52Sと52Lは、車載装置通信部15と通信可能な領域である通信エリア、すなわち出力制限通信エリア52Sと通常通信エリア52Lを示す。通常通信エリア52Lは、出力制限通信エリア52Sよりも広い。位置A,B,Cは後述する説明に用いる位置である。位置Aは出力制限通信エリア52Sおよび通常通信エリア52Lの内側に存在する。位置Bは出力制限通信エリア52Sの外側および通常通信エリア52Lの内側に存在する。位置Cは出力制限通信エリア52Sおよび通常通信エリア52Lの外側に存在する。
【0014】
運転席用ドア61d、助手席用ドア62d、右後部座席用ドア63d、および左後部座席用ドア64dは前述のドア状態検出部51に接続される。ドア状態検出部51は、これら4つのドアそれぞれについて、開閉状態および施錠状態を検出する。
通常通信エリア52Lは通常時、すなわち車載装置通信部15が最大出力で通信アンテナ52に電力を出力した時の通信エリアである。出力制限通信エリア52Sは制限出力時の通信エリアである。出力制限通信エリア52Sは、通信アンテナ52を中心とし車両3の全ての座席を含む最小の範囲である。制限出力とは、通信エリアが出力制限通信エリア52Sとなるように制限された電力の出力であり、その値は設計または実機テストによりあらかじめ定められる。
携帯端末2が通信エリア外に存在すると、車載装置1から通信アンテナ52を介して送信された無線信号を携帯端末2において受信できないため、車載装置1と携帯端末2とは通信が行えず接続ができない。すなわち、携帯端末2が位置Bにある場合は、車載装置通信部15の通信エリアが通常通信エリア52Lの場合には通信可能であるが、車載装置通信部15の通信エリアが出力制限通信エリア52Sの場合には通信が行えない。また、携帯端末2が位置Aにある場合は、位置Aが出力制限通信エリア52Sの内側なので、車載装置通信部15の通信エリアが上記いずれの場合にも通信可能である。また、携帯端末2が位置Cにある場合は、位置Cが通常通信エリア52Lの外側なので、車載装置通信部15の通信エリアが上記いずれの場合にも通信が行えない。
【0015】
(処理の概要)
車載装置1は、通常は車載装置通信部15の出力を制限せず、車載装置通信部15の通信エリアを通常通信エリア52Lとする。車載装置1はユーザの降車を検出すると、車載装置通信部15の出力を制限して車載装置通信部15の通信エリアを出力制限通信エリア52Sとする。そして車載装置1と携帯端末2の接続状態を確認し、接続中であれば報知部17を用いてユーザに報知する。これは、ユーザが降車したにもかかわらず携帯端末2が出力制限通信エリア52Sの内側、すなわち車両3の内部に残されているので、ユーザが携帯端末2を車内に置忘れたとして報知するものである。
車載装置1は、以下の3つを検出した場合にユーザが降車したと判断する。すなわちユーザによりイグニションキースイッチがOFF操作されたこと、運転席用ドア61dが開けられて閉められたこと、および運転席用ドア61dが施錠されたこと、である。
【0016】
(フローチャート)
車載装置1の制御部11は、電源管理部12がイグニションキースイッチのOFF操作信号を受信すると、
図3により動作が表されるプログラムを実行する。以下に説明する各ステップの実行主体は、制御部11を構成するCPUである。
ステップS101では、所定時間内にドア状態入力部13が運転席用ドア61dの開閉、および施錠を検出したか否かを判断する。運転席用ドア61dの開閉および施錠を検出したと判断する場合はステップS102に進み、運転席用ドア61dの開閉または施錠の少なくとも一方を検出しないと判断する場合は
図3のフローチャートを終了する。本ステップにおいて否定判断される状況とは、たとえば車内での休憩のためにイグニションキースイッチをOFFに操作したが運転席用ドア61dを開けない、すなわち降車しない場合や、ユーザが車両3にすぐに戻るため意図的に施錠をしない場合である。
【0017】
ステップS102では、車載装置通信部15に無線通信のための出力、すなわち通信アンテナ52への供給電力を低下させてステップS103に進む。本ステップの処理により、車載装置通信部15の通信エリアは出力制限通信エリア52Sとなる。
ステップS103では、車載装置通信部15に携帯端末2との接続状態を確認させてステップS104に進む。なお、携帯端末2は、車載装置1から通信アンテナ52を介して送信された無線信号を正常に受信できた場合には、その旨を示す無線信号を通信アンテナ52を介して車載装置1に送信する。車載装置通信部15は、この無線信号を受信できたか否かにより、携帯端末2との接続状態を確認することができる。
【0018】
ステップS104では、ステップS103において携帯端末2との接続が検出されたか否かを判断する。接続が検出されたと判断する場合はステップS105に進み、接続が検出されないと判断する場合は
図3のフローチャートを終了する。本ステップにおいて否定判断される場合とは、ユーザが携帯端末2を所持して車両3から離れた場合である。
ステップS105では、報知部17を用いてユーザに携帯端末2の置忘れを報知し
図3のフローチャートを終了する。
制御部11は、
図3のフローチャートを実行した後に、車載装置1、ドア状態検出部51、車内カメラ53、および光源制御部54の電源を遮断する。
【0019】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車載装置1は、車両3に搭載され、携帯端末2と無線通信で接続される。車載装置1は、車両3の乗員が車両3から降車したことを判定する乗員降車判定部(
図3のステップS101)と、携帯端末2へ送信する無線信号の強度を第1の強度、すなわち通常の通信に用いる最大出力に対応する強度と、第1の強度よりも弱い第2の強度、すなわち制限出力に対応する強度との間で変更可能であり、無線信号を用いて携帯端末2と無線通信を行う無線通信部、すなわち車載装置通信部15と、携帯端末2との接続状態を確認する接続状態確認部(
図3のステップS103)と、携帯端末2の車両3への置忘れを報知する報知部17と、無線通信部の信号強度が第1の強度から第2の強度に変更された場合において、接続状態確認部によって携帯端末2が接続された状態と確認され、かつ乗員降車判定部によって乗員が降車したと判定されると、報知部17を用いて報知する制御部11とを備える。
【0020】
車載装置1は、無線通信の信号強度を通常の通信に用いる強度よりも弱い強度に変更して携帯端末2との接続の有無を評価するので、携帯端末2が出力制限通信エリア52Sに存在するか否か、すなわち携帯端末2が車内に置き忘れてられているか否かを感度よく検出できる。本実施の形態とは異なり、たとえば無線通信を行う際の電界強度を検出しその電界強度を所定の閾値と比較することにより携帯端末2の距離を推定する手法も考えられる。しかし電界強度は距離以外の要因でも変化するので、携帯端末2が車両3の内部に存在するか否かを判断するための電界強度の閾値は、過検出を防止するために厳しく設定する必要があり、携帯端末2の車内への置忘れを検出する感度が悪くならざるを得ない。しかし上述した制御部11によればこのような問題がなく、感度よく携帯端末2の置忘れを検出することができる。
【0021】
(2)制御部11は、乗員降車判定部(
図3のステップS101)により乗員の降車が判定されると、無線通信部の信号強度を第1の強度から第2の強度に変更させ、その後に接続状態確認部(
図3のステップS103)に接続状態を確認させる。
(3)乗員降車判定部(
図3のステップS101)は、車両に備えられるドアの開閉を乗員の降車の判定に用いる。そのため簡易に降車を判定することができる。
(4)報知方法は、車両に搭載され、携帯端末と無線通信で接続される車載装置において実行され、車載装置から携帯端末へ送信する無線信号の信号強度を第1の強度と第1の強度よりも弱い第2の強度との間で変更可能であり、車載装置は、信号強度が第1の強度から第2の強度に変更された場合において、携帯端末と車載装置とが接続された状態と確認され、かつ乗員が降車したと判定されると、携帯端末の車両への置忘れを報知する。
【0022】
(変形例1)
第1の実施の形態では、ユーザが降車したと判断した後に車載装置通信部15の出力を制限した。しかし、イグニションキースイッチがOFFに操作されたことだけを条件として、車載装置通信部15の出力を制限してもよい。すなわち、ユーザによりイグニションキースイッチがOFF操作されると、車載装置1は車載装置通信部15の出力を制限して通信エリアを出力制限通信エリア52Sとする。そして運転席用ドア61dの開閉および施錠を検出すると車載装置1と携帯端末2の接続状態を確認し、接続中であれば報知部17を用いてユーザに報知する。
【0023】
変形例1における制御部11の動作を
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施の形態における
図3に代わって、変形例1において制御部11のCPUにより実行される処理を表すフローチャートである。
図4では
図3と同様の処理には同一のステップ番号を付している。
車載装置1の制御部11は、電源管理部12がイグニションキースイッチのOFF操作信号を受信すると、
図4により動作が表されるプログラムを実行する。
【0024】
ステップS111では、車載装置通信部15に無線通信の出力を低下させてステップS112に進む。続くステップS112では、ドア状態入力部13が運転席用ドア61dの開閉、および施錠を検出したか否かを判断する。運転席用ドア61dの開閉および施錠を検出したと判断する場合はステップS103に進み、運転席用ドア61dの開閉または施錠の少なくとも一方を検出しないと判断する場合はステップS112に留まる。
ステップS103以降の処理は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0025】
上述した変形例1によれば、第1の実施の形態における作用効果に加えて次の作用効果が得られる。
(1)車載装置1は、車両3のイグニションキーの操作情報を受信する操作信号受信部、すなわち電源管理部12を備える。制御部11は、操作信号受信部がイグニションキーがオフに操作された情報を受信すると、無線通信部、すなわち車載装置通信部15の信号強度を携帯端末との通常の通信に用いる強度よりも弱い強度に変更させ、乗員降車判定部により乗員の降車が判定されると、接続状態確認部による接続状態を確認させる。
そのため、乗員の降車を判定する前に信号強度を低下させ、通信エリアを出力制限通信エリア52Sに変更するので、乗員が降車したと判定した後に信号強度を低下させる場合に比べて迅速に接続状態を確認することができる。
【0026】
(変形例2)
ユーザの降車の検出に車内カメラ53が撮影して得られた撮影画像をさらに利用してもよい。この場合は、運転席用ドア61dが開閉され施錠された後に、車内カメラ53が車内を撮影し、その撮影画像からユーザを検出できない場合にユーザが降車したと判断する。
また、運転席61の下に重量センサが備えられ、その重量センサの出力をさらに利用して乗員の降車を検出してもよい。この場合は、運転席用ドア61dが開閉され施錠された後に重量センサの出力を取得し、出力が小さくユーザが座っていないことが推定された場合にユーザが降車したと判断する。
この変形例2によれば、ユーザが降車したことを慎重に判断し、過検出、すなわちユーザが車内に残っているにもかかわらず携帯端末2の車内への置忘れ報知が行われるのを防止することができる。
【0027】
(変形例3)
制御部11は、携帯端末2の置忘れを検出しなかった場合に、置き忘れていないことを報知してもよい。この場合は、置忘れを検出した場合の報知とは判別可能な報知とする。たとえば、置忘れを検出した場合はヘッドライトを点灯し、置忘れを検出しなかった場合は室内灯を点灯する。
【0028】
(変形例4)
報知部17は、音声を用いて報知を行ってもよい。報知部17はたとえば、車両3に備えられるホーンを利用してもよいし、別途音声出力部を備えてもよい。
【0029】
(第2の実施の形態)
図5〜
図7を参照して、車載装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、ユーザが複数人存在することを前提とし、座席ごとに携帯端末の置忘れを報知する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0030】
(構成)
図5は、第2の実施の形態における車載装置1Aの構成を示す図である。
第2の実施の形態における車両3Aは、それぞれの座席に通信アンテナを備える点が第1の実施の形態と異なる。すなわち車両3Aは、第1アンテナ521〜第4アンテナ524を備える。
第2の実施の形態における車載装置1Aは、制御部11のROMに格納されるプログラムが第1の実施の形態と異なる。すなわち制御部11の動作が第1の実施の形態と異なる。
【0031】
車載装置通信部15は、前述の4つのアンテナと信号線で接続され、これらのアンテナを介して携帯端末2と通信する。車載装置通信部15は、アンテナごとに携帯端末2から受信する信号の強度を判別し最も信号強度が強いアンテナを用いて通信する。車載装置通信部15は、それぞれのアンテナに対して供給する電力を制御可能である。車載装置通信部15はそれぞれのアンテナに供給する電力を数段階に制御可能であるが、本実施の形態では一律に最大出力と制限出力の2段階に制御する。換言すると、車載装置通信部15が第1アンテナ521に最大出力で電力を供給する場合は、第2アンテナ522〜第4アンテナ524にも最大出力で電力を供給する。これと同様に、車載装置通信部15が第1アンテナ521に制限出力で電力を供給する場合は、第2アンテナ522〜第4アンテナ524にも制限出力で電力を供給する。ただしアンテナの個体差やアンテナの設置位置の影響により、アンテナごとに具体的な制限出力の値は異なる。詳しくは後述する。車載装置通信部15は通常は最大出力とし、後述する場合に制限出力とする。
携帯端末2の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0032】
(車両の平面図)
図6は、第2の実施の形態における車両3Aの平面図である。運転席61には第1アンテナ521が備えられ、助手席62には第2アンテナ522が備えられ、右後部座席63には第3アンテナ523が備えられ、左後部座席64には第4アンテナ524が備えられる。第1アンテナ521〜第4アンテナ524は、不図示の信号線により車載装置1と接続される。それぞれのアンテナと座席と通信エリアの関係は同様なので、代表して第1アンテナ521と運転席61と通信エリア61S、61Lとの関係を説明する。
第2の実施の形態では、運転席61に着席するドライバー、助手席62、右後部座席63、および左後部座席64の少なくとも1席に着席する同乗者をあわせてユーザと呼ぶ。いずれのユーザも携帯端末2を所持している。
【0033】
通信エリア61Sは、第1アンテナ521に供給される電力が制限出力である場合に、車載装置通信部15が第1アンテナ521を介して通信可能な携帯端末2の存在する領域である。通信エリア61Lは、第1アンテナ521に供給される電力が最大出力である場合に、車載装置通信部15が第1アンテナ521を介して通信可能な携帯端末2の存在する領域である。通信エリア61Sは、第1アンテナ521を中心とし運転席61を含む最小の範囲である。第1アンテナ521へ供給される制限出力は、第1アンテナ521を介した通信が可能なエリアが前述の通信エリア61Sとなる電力出力である。通信エリア61Lは通信エリア61Sよりも広い。すなわち第1アンテナ521は、少なくとも運転席61を通信範囲に含む。
【0034】
(処理の概要)
車載装置1は、通常は車載装置通信部15の出力を制限せず、それぞれのアンテナへ最大出力で電力を供給する。そのため各アンテナの通常時の通信エリアは、通信エリア61L、62L、63L、64Lである。
車載装置1はドアの開閉を検出すると、車載装置通信部15の各アンテナへの供給電力を制限出力に低下させ、通信エリアを狭める。そして開閉されたドアに対応するアンテナを介して携帯端末2との接続が確認されると報知部17を用いてユーザに報知する。
【0035】
(フローチャート)
第2の実施の形態における制御部11の動作を
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態における
図3に代わって、第2の実施の形態において制御部11のCPUにより実行される処理を表すフローチャートである。
図7では
図3と同様の処理には同一のステップ番号を付している。制御部11は常に
図7により動作が表されるプログラムを実行している。
ステップS121では、ドア状態入力部13がいずれかのドア61d〜64dの開閉を検出したか否かを判断する。いずれかのドアの開閉を検出したと判断する場合はステップS122に進み、いずれのドアの開閉または施錠の少なくとも一方を検出しないと判断する場合はステップS121に留まる。
【0036】
ステップS122では、第1アンテナ521〜第4アンテナ524への供給電力を制限出力に低下させる。続くステップS123では車載装置通信部15に携帯端末2との接続状態を確認させてステップS124に進む。なお、携帯端末2は、車載装置1から第1アンテナ521〜第4アンテナ524のいずれかを介して送信された無線信号を正常に受信できた場合には、その旨を示す無線信号を当該アンテナを介して車載装置1に送信する。車載装置通信部15は、この無線信号を受信できたか否かにより、携帯端末2との接続状態を確認することができる。なお、携帯端末2の送信出力によっては、車載装置1と携帯端末2が複数のアンテナを介して通信可能な場合もあるが、このような場合には、携帯端末2から受信した無線信号において最も高い信号強度が得られるアンテナを選択して、携帯端末2との接続状態を確認すればよい。
ステップS124では、ステップS121において開閉を検出したドアに対応するアンテナを介して携帯端末2との接続が確認されたか否かを判断する。たとえば、ステップS121において左後部座席用ドア64dの開閉を検出した場合は、第4アンテナ524を介して携帯端末2との接続が確認されたか否かを判断する。接続が検出されたと判断する場合はステップS105に進み、接続が検出されないと判断する場合は
図7のフローチャートを終了する。
【0037】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車両3Aは、複数の座席61〜64と、複数の座席のそれぞれに対応する複数のドア61d〜64dと、複数の座席のそれぞれを少なくとも通信範囲に含む無線通信部と有線接続される複数のアンテナ521〜524を備える。乗員降車判定部(
図7のステップS121)はドアの開閉を乗員の降車の判定に用いる。制御部11は、乗員降車判定部により乗員の降車が判定されると、無線通信部の信号強度を携帯端末との通常の通信に用いる強度よりも弱い強度に変更させ(
図7のステップS122)、その後に接続状態確認部が、乗員降車判定部が降車の判定に用いたドア対応する座席を少なくとも通信範囲に含むアンテナを介して携帯端末との接続を確認すると、報知部17を用いて報知する。
そのため、車両3Aのそれぞれの乗員が置き忘れた携帯端末2を検知し、置忘れを報知することできる。
【0038】
(第2の実施の形態の変形例1)
乗員の降車の検出に車内カメラ53が撮影して得られた撮影画像をさらに利用してもよい。たとえば、異なる時刻に撮影された複数の撮影画像からそれぞれ人物を検出し、検出された人物の数が減少することを降車判断の追加条件としてもよい。さらに、開閉されたドアと検出されなくなった人物の位置とが対応するか否かをあわせて判断してもよい。また、それぞれの座席に重量センサが備えられ、その重量センサの出力をさらに利用して乗員の降車を検出してもよい。
【0039】
(第2の実施の形態の変形例2)
全ての座席にアンテナが備えられなくてもよい。特定の座席、たとえば着席率が高い運転席と後部右だけにアンテナが備えられ、その2席への携帯端末2の置忘れだけを検出してもよい。
【0040】
(第2の実施の形態の変形例3)
車両3Aはアンテナを3つのみ備え、この3つのアンテナを用いて三角測量の仕組みにより車内の任意の位置における携帯端末2の有無を判定してもよい。すなわち、携帯端末2から送信されて3つのアンテナでそれぞれ受信された無線信号の強度に基づいて、車内での携帯端末2の有無を判定すると共に、携帯端末2が存在する場合はその位置を判定できる。これにより、任意の座席における携帯端末2の置忘れを検知することができる。この場合は、座席数に関わらずアンテナの数を3に抑えることができる。また、制限出力時の通信エリアを座席ごとに合わせて調節する必要がない。なお、4つ以上のアンテナを用いてもよい。
【0041】
(第2の実施の形態の変形例4)
車載装置1は、ドアの開閉を検出した場合に、開閉されたドアに対応するアンテナへの供給電力を制限出力に低下させるとともに、それ以外のアンテナへの供給電力を停止させてもよい。この変形例によれば、開閉されたドアに対応する座席への携帯端末2の置忘れを容易に検出できる。
【0042】
プログラムは不図示のROMに格納されるとしたが、プログラムは不揮発性メモリに格納されていてもよい。また、車載装置が不図示の入出力インタフェースを備え、必要なときに入出力インタフェースと媒体を介して、他の装置からプログラムが読み込まれてもよい。ここで媒体とは、例えば入出力インタフェースに着脱可能な記憶媒体、または通信媒体、すなわち有線、無線、光などのネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号、を指す。また、プログラムにより実現される機能の一部または全部がハードウエア回路やFPGAにより実現されてもよい。
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。