特開2017-224376(P2017-224376A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224376(P2017-224376A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】磁気記録装置及び磁気記録方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/02 20060101AFI20171124BHJP
   G11B 5/31 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   G11B5/02 S
   G11B5/31 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-49439(P2017-49439)
(22)【出願日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】15/181,490
(32)【優先日】2016年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100181490
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍弘
(72)【発明者】
【氏名】米田 貞春
(72)【発明者】
【氏名】青山 勉
【テーマコード(参考)】
5D033
5D091
【Fターム(参考)】
5D033AA05
5D033BA22
5D033BA71
5D033BA80
5D033BB21
5D033BB43
5D033BB51
5D033CA00
5D091AA10
5D091BB07
5D091CC11
5D091CC30
5D091DD30
5D091FF20
5D091HH20
(57)【要約】
【課題】磁気記録媒体に記録される信号の品質の実質的な低下を防止することが可能なマイクロ波アシスト磁気ヘッドを有する磁気記録装置及び磁気記録方法を提供する。
【解決手段】磁気記録装置は、磁気記録媒体、磁気記録媒体に印加される記録磁界を発生させる主磁極及び主磁極に近接し、磁気記録媒体に記録磁界と重畳的に印加されるマイクロ波磁界を発生させるスピントルク発振子を有するマイクロ波アシスト磁気ヘッド、主磁極を励磁させるための記録用コイルに記録電流波形データに則して記録電流を供給する記録電流供給部と、スピントルク発振子に駆動電流を供給する駆動電流供給部と、記録電流波形データに基づいて駆動電流供給部を制御する駆動電流制御部を備える。駆動電流制御部は、記録電流波形データに含まれる極性反転間隔が閾値時間を超えるか否かを指標とし、磁気記録媒体に記録された信号の品質を低下させないように駆動電流供給部を制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体への信号の記録時に当該磁気記録媒体に対して印加される記録磁界を発生させる主磁極及び前記主磁極に近接して設けられ、前記磁気記録媒体に対して前記記録磁界と重畳的に印加されるマイクロ波磁界を発生させるスピントルク発振子を有するマイクロ波アシスト磁気ヘッドと、
前記主磁極から前記記録磁界を発生させるための記録電流を、前記信号に基づいて生成される記録電流波形データに従って、前記主磁極を励磁させるための記録用コイルに供給する記録電流供給部と、
前記スピントルク発振子に駆動電流を供給する駆動電流供給部と、
前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を、前記記録電流波形データに基づいて制御する駆動電流制御部と
を備え、
前記駆動電流制御部は、前記記録電流波形データに含まれる一の極性反転時からその次の極性反転時までにより定義される極性反転間隔が閾値時間を超えるか否かを指標とし、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を実質的に低下させないように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させないように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値が、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値よりも小さくなるように、前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御し、前記閾値時間を超えてから前記極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値が、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値よりも小さくなるように、前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記マイクロ波アシスト磁気ヘッドは、前記主磁極と磁路を形成するトレーリングシールドをさらに有し、
前記スピントルク発振子は、前記主磁極と、前記トレーリングシールドとの間のライトギャップに設けられており、
前記閾値時間は、前記磁気記録媒体における一の記録ビットが前記ライトギャップに相当する距離を移動するのに要する時間の1倍〜3倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を評価する信号品質評価部と、
前記信号品質評価部による評価に基づき、前記駆動電流制御部にフィードバックされるフィードバック情報を生成するフィードバック情報生成部と
をさらに備え、
前記フィードバック情報生成部は、前記信号品質評価部による評価結果に基づいて前記閾値時間を変更し、変更後の前記閾値時間に関する情報を含む前記フィードバック情報を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項8】
磁気記録媒体への信号の記録時に当該磁気記録媒体に対して印加される記録磁界を発生させる主磁極と、前記主磁極に近接して設けられ、前記磁気記録媒体に対して前記記録磁界と重畳的に印加されるマイクロ波磁界を発生させるスピントルク発振子とを有するマイクロ波アシスト磁気ヘッドを用いて、前記磁気記録媒体に信号を記録する磁気記録方法であって、
前記信号に基づいて生成される記録電流波形データに則して、前記主磁極から前記記録磁界を発生させるための記録電流を、前記主磁極を励磁させるための記録用コイルに供給する工程と、
前記スピントルク発振子に駆動電流を供給する工程と
を有し、
前記駆動電流を供給する工程において、前記記録波形データに含まれる一の極性反転時からその次の極性反転時までにより定義される極性反転間隔が閾値時間を超えるか否かを指標とし、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を実質的に低下させないように前記駆動電流を制御することを特徴とする磁気記録方法。
【請求項9】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流を制御することを特徴とする請求項8に記載の磁気記録方法。
【請求項10】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させないように前記駆動電流を制御することを特徴とする請求項8に記載の磁気記録方法。
【請求項11】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合には、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、所定の電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給し、
前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合には、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に供給される前記駆動電流の電流値よりも小さい電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給することを特徴とする請求項8に記載の磁気記録方法。
【請求項12】
前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給し、前期閾値時間を超えてから前記極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に供給される前記駆動電流の電流値よりも小さい電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給することを特徴とする請求項8に記載の磁気記録方法。
【請求項13】
前記マイクロ波アシストヘッドは、前記主磁極とともに磁路を形成するトレーリングシールドをさらに有し、
前記スピントルク発振子は、前記主磁極と前記トレーリングシールドとの間のライトギャップに設けられており、
前記閾値時間は、前記記録媒体における一の記録ビットが前記ライトギャップに相当する距離を移動するのに要する時間の1倍〜3倍に設定されることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の磁気記録方法。
【請求項14】
前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を評価する工程と、
前記評価に基づき、前記駆動電流の制御に関するフィードバック情報を生成する工程と
をさらに有し、
前記フィードバック情報は、前記評価に基づいて変更された前記閾値時間に関する情報を含むことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の磁気記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波アシスト磁気ヘッドを有する磁気記録装置及び磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド及び媒体を用いた磁気記録の分野においては、磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、磁気記録媒体及び磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。
【0003】
磁気記録媒体は、磁性微粒子が集合した不連続媒体であり、各磁性微粒子は単磁区構造となっている。この磁気記録媒体において、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子によって構成される。そのため、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、隣接する記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかしながら、磁性微粒子を小さくすると、磁性微粒子の体積の減少に伴い磁性微粒子の磁化の熱安定性が低下するという問題が生じる。
【0004】
この問題への対策として、磁性微粒子の磁気異方性エネルギーKuを大きくすることが考えられるが、このKuの増加は、磁気記録媒体の異方性磁界(保磁力)の増大をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる記録磁界強度の上限は、ヘッド内の磁気コアを構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。そのため、磁気記録媒体の異方性磁界が、この記録磁界強度の上限から決まる許容値を超えると、磁気記録媒体への記録が不可能となってしまう。
【0005】
現在、このような熱安定性の問題を解決する1つの方法として、Kuの大きな磁性材料で形成された磁気記録媒体を用いる一方で、記録時に媒体に補助的にエネルギーを与えて実効的な記録磁界強度を低下させるエネルギーアシスト記録が提案されている。この補助的なエネルギー源としてマイクロ波磁界を用いる記録方式は、マイクロ波アシスト磁気記録(Microwave Assisted Magnetic Recording, MAMR)と呼ばれ、実用化に向けて研究開発が進められている。
【0006】
マイクロ波アシスト磁気記録では、磁気記録媒体の記録層の磁化にかかる実効磁界(Heff)に応じた周波数の媒体面内方向のマイクロ波磁界が印加されることで、記録層の磁化の歳差運動が励起され、磁気ヘッドによる記録能力がアシストされる。
【0007】
マイクロ波アシスト磁気記録方式を採用する磁気ヘッドの一例として、図14に示すように、磁気記録媒体100’に印加するための記録磁界を発生させる主磁極6’と、トレーリングシールド7’と、それらの間のライトギャップ(write gap)に設けられてなる、磁性薄膜の多層構造を有するスピントルク発振子(Spin Torque Oscillator, STO)10’と、リーディングシールド8’とを備える磁気ヘッドが提案されている。この磁気ヘッドにおいては、スピントルク発振子10’の自励発振により面内方向のマイクロ波磁界HMを発生させ、当該マイクロ波磁界HMが磁気記録媒体100’に印加されることで記録層の磁化の歳差運動が誘起され、記録層における垂直方向の磁化反転がアシストされる。
【0008】
このような磁気ヘッドにおいて、一般に、書き込み動作を実行するときには、常にスピントルク発振子10’に対して直流電流(駆動電流)が印加されている。ところで、かかる磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体100’に信号を記録する際に主磁極6’から記録磁界HWを発生させるための記録電流波形には、通常、相対的に長い極性反転間隔と相対的に短い極性反転間隔とが含まれる。ここで、極性反転間隔とは、一の極性反転時からその次の極性反転時までの間隔を意味する。この相対的に長い極性反転間隔の記録電流に応じた書き込み動作によって、磁気記録媒体100’に記録された信号のビットエラーレート(BER)が劣化してしまうという問題がある。このBERの劣化は、図14に示すように、トレーリングシールド7’のABS側端面の近傍で、主磁極6’からの記録磁界HWが戻る戻り磁界HR(記録磁界とは逆方向の磁界)が発生するが、この戻り磁界HRに起因すると考えられる。すなわち、この戻り磁界HRとスピントルク発振子10’から発生するマイクロ波磁界HMとが磁気記録媒体100’に対して重畳的に印加されることで、磁気記録媒体100’に記録された信号の消去や劣化等、記録信号の品質低下を引き起こしてしまうという問題がある。
【0009】
このような問題を解決するために、従来、記録電流波形における一定時間間隔内での極性反転数(磁化反転数)が基準値以下である場合に、スピントルク発振子に対する直流通電をオフ(OFF)にし、当該磁化反転数が基準値を超える場合に、スピントルク発振子に対する直流通電をオン(ON)にするように、スピントルク発振子に対して直流電流を供給する手段を制御するマイクロ波アシスト磁気ヘッドが提案されている(特開2014−211933号公報)。
【0010】
このマイクロ波アシスト磁気ヘッドにおいては、記録電流波形の一定時間間隔内での極性反転数(磁化反転数)を指標として、スピントルク発振子に対する直流通電のオン及びオフを決定する。そのため、記録電流波形の一定時間間隔の設定によっては、相対的に長い極性反転間隔に応じた信号を記録する際にもスピントルク発振子に対して直流電流が印加されるおそれがあり、磁気記録媒体に記録される信号の品質低下の問題を解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−211933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、磁気記録媒体に記録される信号の品質の実質的な低下を防止することが可能なマイクロ波アシスト磁気ヘッドを有する磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体への信号の記録時に当該磁気記録媒体に対して印加される記録磁界を発生させる主磁極及び前記主磁極に近接して設けられ、前記磁気記録媒体に対して前記記録磁界と重畳的に印加されるマイクロ波磁界を発生させるスピントルク発振子を有するマイクロ波アシスト磁気ヘッドと、前記主磁極から前記記録磁界を発生させるための記録電流を、前記信号に基づいて生成される記録電流波形データに従って、前記主磁極を励磁させるための記録用コイルに供給する記録電流供給部と、前記スピントルク発振子に駆動電流を供給する駆動電流供給部と、前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を、前記記録電流波形データに基づいて制御する駆動電流制御部とを備え、前記駆動電流制御部は、前記記録電流波形データに含まれる一の極性反転時からその次の極性反転時までにより定義される極性反転間隔が閾値時間を超えるか否かを指標とし、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を実質的に低下させないように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御することを特徴とする磁気記録装置を提供する(発明1)。
【0014】
なお、「磁気記録媒体に記録された信号の品質を実質的に低下させないように駆動電流供給部による駆動電流の供給を制御する」とは、駆動電流供給部による駆動電流の供給が制御されることなく、すなわちスピントルク発振子に駆動電流が供給され続け、マイクロ波磁界が重畳的に印加され続けた状態で磁気記録媒体に記録された信号よりも、磁気記録媒体に記録された信号の品質を向上させるように駆動電流供給部により駆動電流の供給を制御することを意味するものとする。
【0015】
上記発明(発明1)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御してもよいし(発明2)、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させないように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御してもよい(発明3)。
【0016】
また、上記発明(発明1)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値が、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値よりも小さくなるように、前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御してもよい(発明4)。
【0017】
さらに、上記発明(発明1)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記駆動電流制御部は、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御し、前記閾値時間を超えてから前記極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値が、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に前記駆動電流供給部により供給される前記駆動電流の電流値よりも小さくなるように、前記駆動電流供給部による前記駆動電流の供給を制御してもよい(発明5)。
【0018】
上記発明(発明1)において、前記マイクロ波アシスト磁気ヘッドは、前記主磁極と磁路を形成するトレーリングシールドをさらに有し、前記スピントルク発振子は、前記主磁極と、前記トレーリングシールドとの間のライトギャップに設けられており、前記閾値時間は、前記磁気記録媒体における一の記録ビットが前記ライトギャップに相当する距離を移動するのに要する時間の1倍〜3倍であるのが好ましい(発明6)。
【0019】
上記発明(発明1)において、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を評価する信号品質評価部と、前記信号品質評価部による評価に基づき、前記駆動電流制御部にフィードバックされるフィードバック情報を生成するフィードバック情報生成部とをさらに備え、前記フィードバック情報生成部は、前記信号品質評価部による評価結果に基づいて前記閾値時間を変更し、変更後の前記閾値時間に関する情報を含む前記フィードバック情報を生成するのが好ましい(発明7)。
【0020】
また、本発明は、磁気記録媒体への信号の記録時に当該磁気記録媒体に対して印加される記録磁界を発生させる主磁極と、前記主磁極に近接して設けられ、前記磁気記録媒体に対して前記記録磁界と重畳的に印加されるマイクロ波磁界を発生させるスピントルク発振子とを有するマイクロ波アシスト磁気ヘッドを用いて、前記磁気記録媒体に信号を記録する磁気記録方法であって、前記信号に基づいて生成される記録電流波形データに則して、前記主磁極から前記記録磁界を発生させるための記録電流を、前記主磁極を励磁させるための記録用コイルに供給する工程と、前記スピントルク発振子に駆動電流を供給する工程とを有し、前記駆動電流を供給する工程において、前記記録波形データに含まれる一の極性反転時からその次の極性反転時までにより定義される極性反転間隔が閾値時間を超えるか否かを指標とし、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を実質的に低下させないように前記駆動電流を制御することを特徴とする磁気記録方法を提供する(発明8)。
【0021】
上記発明(発明8)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流を制御してもよいし(発明9)、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させないように前記駆動電流を制御してもよい(発明10)。
【0022】
上記発明(発明8)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合には、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、所定の電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給し、前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合には、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から当該極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に供給される前記駆動電流の電流値よりも小さい電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給してもよい(発明11)。
【0023】
上記発明(発明8)において、前記記録電流波形データに含まれる前記極性反転間隔が前記閾値時間を超える場合に、前記極性反転間隔の開始点を定義する極性反転時から前記閾値時間の間、前記スピントルク発振子から前記マイクロ波磁界を発生させるように前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給し、前期閾値時間を超えてから前記極性反転間隔の終了点を定義する極性反転時までの間、前記極性反転間隔が前記閾値時間以下である場合に供給される前記駆動電流の電流値よりも小さい電流値の前記駆動電流を前記スピントルク発振子に供給してもよい(発明12)。
【0024】
上記発明(発明8)において、前記マイクロ波アシストヘッドは、前記主磁極とともに磁路を形成するトレーリングシールドをさらに有し、前記スピントルク発振子は、前記主磁極と前記トレーリングシールドとの間のライトギャップに設けられており、前記閾値時間は、前記記録媒体における一の記録ビットが前記ライトギャップに相当する距離を移動するのに要する時間の1倍〜3倍に設定されるのが好ましい(発明13)。
【0025】
上記発明(発明8)において、前記磁気記録媒体に記録された信号の品質を評価する工程と、前記評価に基づき、前記駆動電流の制御に関するフィードバック情報を生成する工程とをさらに有し、前記フィードバック情報は、前記評価に基づいて変更された前記閾値時間に関する情報を含むのが好ましい(発明14)。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、磁気記録媒体に記録される信号の品質の実質的な低下を防止することが可能なマイクロ波アシスト磁気ヘッドを有する磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録装置を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態におけるヘッドジンバルアセンブリ(HGA)を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの全体構造を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの要部の構成を概略的に示す断面図(XZ面)である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ヘッドにおける主磁極層を概略的に示す平面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ヘッドの概略構成を示す、ABS側から見た平面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ヘッドのABS近傍における概略構成を示す部分拡大断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態におけるスピントルク発振子の概略構成を示す断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る磁気記録装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
図10A図10Aは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される記録電流波形データの一例を示す波形図である。
図10B図10Bは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される駆動電流波形データの一例を示す出力波形図である。
図10C図10Cは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される駆動電流波形データの一例を示す出力波形図である。
図10D図10Dは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される駆動電流波形データの一例を示す出力波形図である。
図10E図10Eは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される駆動電流波形データの一例を示す出力波形図である。
図11A図11Aは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される単位駆動電流波形及びその基礎となる記録電流波形データの一の極性反転間隔の部分の一例を示す出力波形図である。
図11B図11Bは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される単位駆動電流波形及びその基礎となる記録電流波形データの一の極性反転間隔の部分の一例を示す出力波形図である。
図11C図11Cは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される単位駆動電流波形及びその基礎となる記録電流波形データの一の極性反転間隔の部分の一例を示す出力波形図である。
図11D図11Dは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される単位駆動電流波形及びその基礎となる記録電流波形データの一の極性反転間隔の部分の一例を示す出力波形図である。
図11E図11Eは、本発明の一実施形態における電流制御部にて生成される単位駆動電流波形及びその基礎となる記録電流波形データの一の極性反転間隔の部分の一例を示す出力波形図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係る磁気記録装置において、相対的に短い極性反転間隔に応じて記録される信号と、相対的に長い極性反転間隔に応じて記録される信号とにおいて、マイクロ波磁界によるアシスト効果の有無によるSN比の違いを説明するためのグラフである。
図13図13は、実施例における再生信号のSN比の測定結果を示すグラフである。
図14図14は、従来のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について説明する前に、本明細書において用いられる用語の定義を行う。本実施形態に係るマイクロ波アシスト磁気ヘッドのスライダ基板の素子形成面に形成された積層構造若しくは素子構造において、基準となる層又は素子から見て、基板側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。また、基準となる層又は素子から見て、媒体対向面側を「前方」とし、その反対側を「奥方」又は「後方」とする。さらに、本実施形態に係るマイクロ波アシスト磁気ヘッドにおいて、必要に応じ、いくつかの図面中、「X、Y及びZ軸方向」を規定している。ここで、Z軸方向は、上述した「上下方向」であり、+Z側がトレーリング側に相当し、−Z側がリーディング側に相当する。また、Y軸方向はトラック幅方向であり、X軸方向はハイト方向である。
【0029】
[磁気記録装置の構成]
図1は、本実施形態に係るマイクロ波アシスト磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドを備えるヘッドジンバルアセンブリ(HGA)を概略的に示す斜視図であり、図3は、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの全体構成を模式的に示す斜視図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る磁気記録装置は、スピンドルモータ202の回転軸周りに回転する複数の磁気ディスク100と、複数の駆動アーム211が設けられたアセンブリキャリッジ装置210と、各駆動アーム211の先端部に取り付けられており、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1を有するヘッドジンバルアセンブリ(HGA)212と、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1の書き込み及び読み出し動作等を制御する制御部230とを備える。制御部230には、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1の駆動制御回路以外に、磁気記録装置の制御を行うマイクロプロセッサ等も含まれる。
【0031】
本実施形態において、磁気記録媒体としての磁気ディスク100は、垂直磁気記録用であり、例えば、ディスク基板の上に、軟磁性裏打ち層、中間層及び磁気記録層(垂直磁化層)等が順次積層された構造を有している。
【0032】
アセンブリキャリッジ装置210は、磁気ディスク100の記録ビットが並ぶトラック上に、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1を位置決めするための装置である。アセンブリキャリッジ装置210において、駆動アーム211は、ピボットベアリング軸213に沿った方向にスタックされており、ボイスコイルモータ(VCM)214によってピボットベアリング軸213を中心にした角揺動が可能に構成されている。
【0033】
なお、本実施形態における磁気記録装置の構造は、上述した構造に限定されるものではなく、磁気ディスク100、駆動アーム211、HGA212及びマイクロ波アシスト磁気ヘッド1は、単数であってもよい。
【0034】
図2に示すヘッドジンバルアセンブリ212において、サスペンション220は、ロードビーム221と、ロードビーム221に固着され、かつ弾性を有するフレクシャ222と、ロードビーム221の基部に設けられたベースプレート223とを有する。また、フレクシャ222上には、リード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドを含む配線部材224が設けられている。本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッド1を備える磁気ヘッドスライダ30(図3参照)は、各磁気ディスク100の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション220の先端部においてフレクシャ222に固着されている。
【0035】
さらに、配線部材224の一端が、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッド1の端子電極に電気的に接続されている。なお、本実施形態におけるサスペンション220の構造も、上述した構造に限定されるものではない。
【0036】
図3に示すように、磁気ヘッドスライダ30は、浮上特性に直接関与するABS(媒体対向面)70を有し、磁気ディスク100の進行方向M(空気の流れと同じ方向)側の側面端(磁気ディスク100の進行方向Mの奥側の側面端)にマイクロ波アシスト磁気ヘッド1を備える。マイクロ波アシスト磁気ヘッド1は、記録ヘッド1Bと再生ヘッド1Aとを備える。
【0037】
[マイクロ波アシスト磁気ヘッドの構成]
次に、図面を参照しつつ、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドについて説明する。図4は、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの、媒体対向面であるABSと交差する方向に沿った断面図(XZ面)である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッド1は、スライダ基板2と、スライダ基板2の素子形成面上に積層形成された再生ヘッド1A及び記録ヘッド1Bとを有する。また、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1は、磁気ディスク100に対向する媒体対向面であるABS70を有する。
【0039】
再生ヘッド1Aは、ABS70の近傍に配置され、磁気ディスク100からの信号磁界を検出するためのMR素子4と、スライダ基板2の素子形成面上に形成された磁性材料からなる下部シールド層3及び上部シールド層5とを有する。
【0040】
下部シールド層3及び上部シールド層5は、主として、MR素子4が、雑音となる外部磁界を受けることを防止するために設けられる。下部シールド層3及び上部シールド層5は、例えばフレームめっき法又はスパッタリング法等によって形成された磁性材料からなる磁性層である。下部シールド層3及び上部シールド層5は、それぞれ、例えば、NiFe(パーマロイ)、FeSiAl(センダスト)、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN、若しくはCoZrTaCr等、又はこれらの材料の多層膜等の軟磁性材料により構成される。下部シールド層3及び上部シールド層5の厚さは、それぞれ、例えば0.1〜3μm程度である。
【0041】
MR素子4は、MR効果を利用して信号磁界を感受する磁気センサであり、例えば、面内通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCIP−GMR(Current In Plane-Giant Magneto-Resistive)積層体、垂直通電型巨大磁気抵抗効果を利用したCPP−GMR(Current Perpendicular to Plane-Giant Magneto-Resistive)積層体、又はトンネル磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunneling Magneto-Resistive)積層体のいずれであってよい。
【0042】
これらのMR効果を利用したMR素子4は、高い感度で磁気ディスク100からの信号磁界を感受することができる。なお、MR素子4がCPP−GMR積層体又はTMR積層体である場合、下部シールド層3及び上部シールド層5は、電極としての役割も果たすことができる。一方、MR素子4がCIP−GMR積層体である場合、MR素子4と下部シールド層3との間及びMR素子4と上部シールド層5との間には、それぞれ絶縁層が設けられ、さらに、MR素子4に電気的に接続されたMRリード層が設けられる。
【0043】
記録ヘッド1Bは、垂直磁気記録用であって、主磁極層6と、トレーリングシールド7と、リーディングシールド8と、主磁極層6及びトレーリングシールド7の間のギャップ(ライトギャップ)に位置するスピントルク発振子10と、第1コイル9a及び第2コイル9bとを有する。
【0044】
主磁極層6は、第1コイル9a及び第2コイル9bに記録電流IWを印加することにより発生した磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの磁気記録層(垂直磁化層)まで集束させながら導くための導磁路を構成している。
【0045】
主磁極層6は、ABS70からハイト方向後方に向かって延びており、主磁極部61及び補助磁極部62を含む。主磁極部61及び補助磁極部62は、設計仕様によっては上下(Z方向)逆に配置することもできる。
【0046】
補助磁極部62は、ABS70よりも後退した位置からハイト方向に延びている。この補助磁極部62は、例えば、主磁極部61に対してトレーリング側に配置されているとともに、図5に示すように、矩形型の平面形状(幅W2)を有している。補助磁極部62は、上述したように、主磁極部61のリーディング側に配置されていてもよい。
【0047】
主磁極部61は、ABS70からハイト方向後方に向かって延びている。この主磁極部61は、例えば、図5に示すように、ABS70からハイト方向後方に向かって延びる幅の狭い第1磁極部611と、第1磁極部611の後方に連続する幅の広い第2磁極部612とを含む。
【0048】
第1磁極部611は、実質的な磁束の放出部分であり、記録トラック幅を規定する一定の幅W1を有している。第2磁極部612は、第1磁極部611に磁束を供給する部分であり、第1磁極部611の幅W1よりも大きな幅W2を有している。第2磁極部612の幅W2は、ハイト方向前方において第1磁極部611へ近づくに従って次第に狭くなる。第1磁極部611が小さな幅W1を有することで、微細な書き込み磁界の発生が可能となり、トラック幅を高記録密度化に対応した微小値に設定することが可能となる。
【0049】
主磁極部61は、ABS70において、例えば、上辺側(+Z側)が下辺側(−Z側)より広く、下方向(−Z方向)に向かうに従い、その幅が狭くなる、いわゆる逆台形形状の端面61aを有する(図7参照)。
【0050】
主磁極層6(主磁極部61及び補助磁極部62)は、高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料により構成されており、例えば、Feを主成分とする鉄系合金材料(FeNi、FeCo、FeCoNi、FeN又はFeZrN等)である軟磁性材料により構成され得る。主磁極部61と補助磁極部62とを別体にして、それぞれ異なる軟磁性材料により構成されるようにしてもよい。例えば、主磁極部61が、補助磁極部62よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料により構成されるようにしてもよい。
【0051】
ABS70の近傍に位置する主磁極部61のトレーリング側(+Z側)端面及びリーディング側(−Z側)端面は、ABS70に向って主磁極部61の厚さ(Z方向厚さ)を漸減させるようにテーパ状に構成されている(図6参照)。これにより、主磁極部61(第1磁極部611)から発する記録用磁束を、ABS70においてより集束させることができる。
【0052】
トレーリングシールド7及びリーディングシールド8は、主磁極部61から発して広がった記録用磁束を取り込む機能を有する。トレーリングシールド7は、ABS70に達しており、磁気ディスク100の記録層(垂直磁化層)の下に設けられた軟磁性裏打ち層からリターンしてきた磁束の導磁路としての役割を果たしている。トレーリングシールド7及びリーディングシールド8の厚さ(ABS70に面した部分におけるハイト方向の最小厚さ)T7,T8(図6参照)は、例えば、0.05〜1μm程度に設定され得る。トレーリングシールド7及びリーディングシールド8は、例えば、高飽和磁束密度を有する、NiFe(パーマロイ)又は主磁極層6と同様の鉄系合金材料等により構成され得る。
【0053】
主磁極部61とトレーリングシールド7との間のライトギャップには、書き込み時に主磁極層6(主磁極部61)からの記録磁界に重畳させるマイクロ波磁界を発生するスピントルク発振子10が設けられている。なお、スピントルク発振子10の構成の詳細については、後述する。
【0054】
ABS70からハイト方向後方において、主磁極層6とトレーリングシールド7との間に、それらを電気的に絶縁する絶縁体からなる第1バックギャップ層7bが配置され、主磁極層6とリーディングシールド8との間に、それらを電気的に絶縁する絶縁体からなる第2バックギャップ層8bが配置される。
【0055】
第1コイル9a及び第2コイル9bは、磁気ディスク100への磁気記録のための磁束を発生させるものであり、例えば、銅(Cu)等の高導電性材料により構成されている。第1コイル9a及び第2コイル9bは、それぞれ、連結部7a,8a、第1バックギャップ層7b及び第2バックギャップ層8bを中心として巻回された巻回構造(スパイラル構造)を有する。第1コイル9a及び第2コイル9bは、それぞれ、一方端から他方端に至るまで連続する2ターンループ形状に構成されており、絶縁層IL1,IL2の略上部に前ターン部をそれぞれ有する。
【0056】
第1コイル9a及び第2コイル9bの前ターン部よりもハイト方向奥方の部位には、絶縁層IL3を介して非磁性層NMLが設けられている。この非磁性層NMLは、トレーリングシールド7の上にも連続的に設けられており、ABS70にまで至っている。非磁性層NMLは、主として保護層として機能を果たしている。
【0057】
なお、本実施形態において、第1コイル9a及び第2コイル9bのターン数は2ターンであるが、この態様に限定されるものではなく、1〜4ターンの範囲内で適宜設定され得る。
【0058】
第1コイル9a及び第2コイル9bは複数のターンを有しており、巻回されているコイル間隙にはドライ膜の絶縁層IL4が埋め込まれていることが望ましい。ドライ膜の絶縁層IL4としては、いわゆるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜されたアルミナ等の材料から構成されることが好ましい。ドライ膜の絶縁層IL4をコイル間隙に確実に充填・形成するためには、特に、コイルの形状が重要であり、特に、コイルが深さ方向に逆テーパ形状とならないようにすることが望ましい。
【0059】
記録電流供給部91aは、端子92,93を介して第1コイル9a及び第2コイル9bのそれぞれに接続されている。駆動電流供給部91bは、端子94,95を介して、主磁極層6(主磁極部61)及びトレーリングシールド7のそれぞれに接続される。
【0060】
図8を参照して、スピントルク発振子10の構成の詳細を説明する。
図8に示すように、スピントルク発振子10は、シード層11a及びバッファー層11bを含む下地積層体11と、スピン注入層12と、非磁性スペーサ層13と、磁界発生層14と、Ru等からなる厚み0.5〜20nm程度のキャップ層15とがこの順に積層されてなる積層素子である。スピントルク発振子10は、下地積層体11側からキャップ層15側に向けて直流電流を流すことで、磁界発生層14の磁化が歳差運動し、磁界発生層14から高周波磁界(マイクロ波磁界)を発生させることができる。
【0061】
シード層11aは、例えば、タンタル(Ta)と他の金属の少なくとも1種とを含む非晶質構造又は微結晶構造を有する合金層である。当該他の金属としては、3d遷移金属を例示することができ、具体的には、バナジウム(V)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)からなる群より選択される少なくとも1種の金属、好ましくは、鉄(Fe)、コバルト(Co)又はニッケル(Ni)である。シード層11aの膜厚は、0.4〜5nmであるのが好ましく、0.8〜3nmであるのがより好ましい。
【0062】
バッファー層11bは、[001]面配向六方最密構造を有する、周期表の第6族金属のうちの少なくとも1種と、周期表の第9族金属のうちの少なくとも1種とを含む合金層である。バッファー層11bが第6族金属と第9族金属とを含む合金層であることで、[001]面配向六方最密構造をとることができるとともに、バッファー層11b上に積層形成されるスピン注入層12の結晶性、配向性を良好にすることができ、薄膜であっても配向性に優れる膜とすることができる。
【0063】
バッファー層11bを構成する第6族金属としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられ、第9族金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等が挙げられる。バッファー層11bは、これらのうち、第6族金属としてのクロム(Cr)と、第9族金属としてのコバルト(Co)、ロジウム(Rh)又はイリジウム(Ir)とを含む合金層であるのが好ましい。バッファー層11bの膜厚は、0.4〜5nmであるのが好ましく、0.8〜3nmであるのがより好ましい。
【0064】
スピン注入層12は、膜面に対して垂直方向の磁気異方性(垂直磁気異方性)を有する強磁性層であり、[CoFe/Ni]n、[Co/Pt]n、[Co/Pd]n等の磁性体同士の多層膜又は磁性体と非磁性体との多層膜により構成される。なお、「n」は括弧内に示す積層構造の繰り返し積層数である。また、スピン注入層12を構成する材料として、CoPt、FePt、MnGa等の垂直磁気異方性を有する合金を用いることもできる。スピン注入層12が[CoFe/Ni]nにより構成される場合、Niの膜厚はCoFeの膜厚と同一又はそれよりも厚くするのが好ましい。CoFeの膜厚は0.1〜1nmであるのが好ましく、0.1〜0.4nmであるのがより好ましい。Niの膜厚は0.2〜1.5nmであるのが好ましく、0.2〜0.6nmであるのがより好ましい。積層構造の繰り返し積層数nは、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜20である。スピン注入層12は、スピントルク発振子10の積層方向に電流を流すことで、電子をスピン偏極させ、当該電子を磁界発生層14に注入させる役割を果たす層である。スピン注入層12の膜厚は、好ましくは0.6〜15nm、より好ましくは1〜10nmである。スピン注入層12によるスピン偏極率を高めるため、スピン注入層12と非磁性スペーサ層13との間にスピン偏極率の高い磁性体層(図示を省略)が存在していてもよい。特に、スピン注入層12が[CoFe/Ni]nにより構成される場合、スピン偏極率の小さいNiを含むため、磁性体層を有するのが好ましい。かかる磁性体層を構成する材料としては、CoFe、CoFeB等の軟磁性合金、Co2MnSi、Co2FeSi等のCo基ホイスラー合金、FeCr、FeV等の負のスピン偏極を有する材料等を例示することができる。上記磁性体層の膜厚は、好ましくは0.1〜8nm、より好ましくは0.4〜4nmである。
【0065】
非磁性スペーサ層13は、Cu、Ag、Au、Cr、Al等のスピン透過率の高い非磁性金属により構成されていてもよいし、MgO層、Al23層等のトンネルバリア層であってもよい。非磁性スペーサ層13の膜厚は、例えば、0.5〜5nm程度に設定され、好ましくは1.5〜3nm程度に設定され得る。非磁性スペーサ層13の膜厚が上記範囲内であることで、スピン注入層12と磁界発生層14との交換結合状態を最適に調整することができる。
【0066】
磁界発生層14は、イニシャル状態(電流が流れておらず、磁界も印加されていない状態)での磁化の向きが膜面に略平行である材料により構成される強磁性層である。発生するマイクロ波磁界の強度は、磁界発生層14の飽和磁化Ms(emu/cm3)が大きく、その膜厚が厚いほど増大するため、磁界発生層14は飽和磁化Msの大きい材料により構成されるのが好ましく、その膜厚は、ライトギャップ(write gap)に収まる所定の範囲で厚くするのが好ましい。磁界発生層14の構成材料としては、例えば、[FeCo/Ni]m、FeCo、FeCoAl、FeCoSi、FeCoB、FeNi等の軟磁性材料や、負の垂直磁気異方性を有するCoIr、[Fe/Co]m等が挙げられる。なお、「m」は括弧内に示す積層構造の繰り返し積層数である。磁界発生層14の構成材料として[FeCo/Ni]mが用いられる場合、FeCoの膜厚をNiの膜厚より厚くするのが好ましく、FeCoの膜厚は好ましくは0.4〜4nm、より好ましくは0.8〜2nmであり、Niの膜厚は好ましくは0.1〜1nm、より好ましくは0.1〜0.5nmである。積層構造の繰り返し積層数mは、好ましくは1〜20であり、より好ましくは3〜10である。磁界発生層14の膜厚は2〜20nm程度であり、より好ましくは5〜15nm程度である。
【0067】
[マイクロ波アシスト磁気ヘッドの作用効果]
本実施形態におけるマイクロ波アシスト磁気ヘッド1において、記録電流供給部91aから第1コイル9a及び第2コイル9bに記録電流が供給されることにより発生した磁束は、主磁極層6により、書き込みがなされる磁気ディスク100の磁気記録層(垂直磁化層)まで集束させながら導かれ、主磁極層6(主磁極部61)のABS70側の端面61aから、記録磁界が発生する。
【0068】
それとともに、駆動電流供給部91bから供給される駆動電流(直流電流)IOPは、主磁極層6(主磁極部61)、スピントルク発振子10及びトレーリングシールド7の順に流れる。駆動電流IOPが流れることで、スピン注入層12の磁化により電子がスピン偏極する。スピン注入層12のスピン偏極率が正である場合、スピン注入層12のマジョリティスピン(majority spin)と逆方向に偏極したスピン電子がスピン注入層で反射され、磁界発生層14に注入される。この反射したスピン電子が磁界発生層14の磁化に作用することで、磁界発生層14の磁化の歳差運動が誘起され、磁界発生層14からマイクロ波磁界が発生する。このマイクロ波磁界を、主磁極層6からの記録磁界に重畳させることで、磁気異方性エネルギーKuの大きい磁気ディスク100に信号を記録することができる。
【0069】
ところで、信号の記録時に、マイクロ波磁界を定常的に発生させていると、記録磁界がトレーリングシールド7に戻る戻り磁界(記録磁界とは逆向きの磁界)をマイクロ波磁界がアシストしてしまい、磁気ディスク100に記録された信号の品質を低下させてしまうという問題が生じる(図14に示す従来のマイクロ波アシスト磁気ヘッドを参照)。後述するように、信号の記録時、記録電流波形データDWW図10A参照)に従って、記録電流供給部91aから第1コイル9a及び第2コイル9bに記録電流が供給される。この記録電流波形データDWWには、一の極性反転時からその次の極性反転時までによって定義される極性反転間隔GPRが複数含まれる。記録電流波形データDWWは、磁気ディスク100に記録される信号に応じて生成されるため、それに含まれる複数の極性反転間隔GPRの時間間隔は、必ずしも一定であるとは限らず、通常は、相対的に短い極性反転間隔GPRと相対的に長い極性反転間隔GPRとを含む。図12に示すグラフのように、相対的に短い極性反転間隔GPRに応じて記録される信号S1は、当該極性反転間隔GPRの間にマイクロ波磁界を発生させ続けることで、マイクロ波磁界を印加しない場合に比べて高SN比で記録される。しかし、相対的に長い極性反転間隔GPRに応じて記録される信号S2は、当該極性反転間隔GPRの間にマイクロ波磁界を発生させ続けると、マイクロ波磁界を印加しない場合に比べてSN比が低下してしまうという問題が生じる。
【0070】
そこで、本実施形態においては、以下に説明する制御部230によりマイクロ波磁界の発生を制御して、磁気ディスク100に記録された信号の品質の実質的な低下を防止することができる。
【0071】
[制御部の構成]
次に、制御部230の構成を説明する。
図9に示すように、制御部230は、電流制御部90、記録電流供給部91a、駆動電流供給部91b及び記録信号回路部96を含む。記録信号回路部96は、制御部230に含まれるリード/ライトチャネルに含まれる回路であり、記録信号を電流制御部90に出力する。
【0072】
電流制御部90は、記録電流供給部91a及び駆動電流供給部91bによる記録電流IW及び駆動電流IOPの生成及び供給を制御する。
【0073】
電流制御部90による制御方法を説明する。図10Aは、電流制御部90により生成される記録電流波形データの一例を示す出力波形図であり、図10B〜10Eは、電流制御部90により生成される駆動電流波形データの一例を示す出力波形図であり、図11A〜11Eは、電流制御部90により生成される単位駆動電流波形を示す波形図である。なお、図10A〜11Eにおいて、縦軸のNWは記録電流IWの規格化電流値を、NOPは駆動電流IOPの規格化電流値を表し、横軸は時間Tを表す。
【0074】
まず、電流制御部90は、ユーザインターフェース等(図示を省略する)を介して入力され、磁気ディスク100に記録される記録信号から、当該記録信号の符号化されたビット列に基づいて、記録電流供給部91aより記録電流IWを供給するための記録電流波形データDWW図10A参照)を生成する。記録電流波形データDWWは、記録信号のビット列における符号の配列に応じて極性が反転する矩形波として生成される。通常、記録電流波形データDWWは、種々の時間間隔を有する複数の極性反転間隔GPRを含む。
【0075】
次に、電流制御部90は、当該記録電流波形データDWWに基づき、駆動電流供給部91bによる駆動電流IOPの発生・供給のための駆動電流波形データDOPW図10B〜10E参照)を生成する。
【0076】
本実施形態において、電流制御部90は、記録電流波形データDWWにおける極性反転間隔GPR図10A参照)が閾値時間THを超えているか否かを指標として、すなわち極性反転間隔GPRが閾値時間THを超えているか否かを判断し、その判断結果に基づいて、駆動電流波形データDOPW図10B〜10E参照)を生成する。ここで、閾値時間THは、例えば、磁気ディスク100における一の記録ビットが、ライトギャップに相当する距離(ダウントラック方向における距離)を移動するのに要する時間の1倍〜3倍であるのが好ましい。
【0077】
具体的には、電流制御部90は、記録電流波形データDWWにおける各極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPを生成し、当該単位駆動電流波形UOPを順につなげることで、駆動電流波形データDOPWを生成する。
【0078】
例えば、図11Aに示すように、極性反転時間T1から極性反転時間T2までの極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内であると判断された場合、所定の駆動電流IOPを生成可能な単位駆動電流波形UOPを生成する。この駆動電流IOPの電流値は、主磁極層6(主磁極部61)からの記録磁界に重畳させることで、信号記録を効果的にアシスト可能な程度の磁界強度のマイクロ波磁界をスピントルク発振子10から発生させるのに必要な電流値である。すなわち、当該極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPは、当該極性反転間隔GPRの期間内に所定の駆動電流IOPを供給することを意味する、単位矩形波UOPとして生成される。
【0079】
一方、極性反転時間T1から極性反転時間T2までの極性反転間隔GPRが閾値時間THを超えていると判断された場合、磁気ディスク100に記録された信号の品質を実質的に低下させないような駆動電流IOPを生成可能な単位駆動電流波形UOPを生成する。
【0080】
例えば、当該極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPは、当該極性反転間隔GPRの開始点を定義する極性反転時T1から閾値時間THの間は所定の駆動電流IOPを供給するが、その後、当該極性反転間隔GPRの終了点を定義する極性反転時T2までは駆動電流IOPを供給しないことを意味する、単位矩形波UOPとして生成され得る(図11B参照)。極性反転時T1から閾値時間THの間に供給される駆動電流IOPの電流値は、極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内であると判断された場合に供給される駆動電流IOPの電流値(図11A参照)と同一である。
【0081】
また、極性反転時間T1から極性反転時間T2までの極性反転間隔GPRが閾値時間THを超えていると判断された場合、当該極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPは、当該極性反転間隔GPRの期間内に駆動電流IOPが供給されないことを意味する、単位矩形波UOPとして生成されてもよい(図11C参照)。
【0082】
さらに、極性反転時間T1から極性反転時間T2までの極性反転間隔GPRが閾値時間THを超えていると判断された場合、当該極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPは、極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内である場合に供給される駆動電流IOPの電流値(図11A参照)よりも小さい電流値の駆動電流IOPを供給することを意味する、単位矩形波UOPとして生成されてもよい(図11D参照)。
【0083】
さらにまた、極性反転時間T1から極性反転時間T2までの極性反転間隔GPRが閾値時間THを超えている場合、当該極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPは、当該極性反転間隔GPRの開始点を定義する極性反転時T1から閾値時間THの間は駆動電流IOPを供給するが、その後、当該極性反転間隔GPRの終了点を定義する極性反転時T2までは、極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内である場合に供給される駆動電流IOPの電流値(図11A参照)よりも小さい電流値の駆動電流IOPを供給することを意味する、単位矩形波UOPとして生成されてもよい(図11E参照)。極性反転時T1から閾値時間THの間に供給される駆動電流IOPの電流値は、極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内であると判断された場合に供給される駆動電流IOPの電流値(図11A参照)と同一である。
【0084】
なお、図11A〜11Eにおいては、記録電流波形データDWWにおける一方の極性(マイナス側)に対応する単位駆動電流波形UOPを生成する例を示しているが、当然のことながら、記録電流波形データDWWにおける他方の極性(プラス側)に対応する単位駆動電流波形UOPも同様にして生成され得る。
【0085】
このように、記録電流波形データDWWに含まれる各極性反転間隔GPRに応じた単位駆動電流波形UOPを生成し、各単位駆動電流波形UOPを時間軸に沿って順につなげる。これにより、駆動電流波形データDOPWが生成される(図10B〜10E)。
【0086】
図11Bに示すようにして生成される単位駆動電流波形UOPから生成される駆動電流波形データDOPW図10B)に従ってスピントルク発振子10への駆動電流IOPの供給が制御されることで、相対的に長い極性反転間隔GPR(閾値時間THを超える極性反転間隔GPR)に対応する信号を記録する際に、記録磁界の磁界勾配があがる。そのため、当該信号の品質を向上させることができる。
【0087】
また、図11Cに示すようにして生成される単位駆動電流波形UOPから生成される駆動電流波形データDOPW図10C)に従ってスピントルク発振子10への駆動電流IOPの供給が制御されることで、相対的に長い極性反転間隔GPR(閾値時間THを超える極性反転間隔GPR)に対応する信号を記録する際に、スピントルク発振子10に駆動電流IOPが供給されない。そのため、マイクロ波アシスト磁気ヘッド1における消費電力を低減することができる。
【0088】
さらに、図11Dに示すようにして生成される単位駆動電流波形UOPから生成される駆動電流波形データDOPW図10D)に従ってスピントルク発振子10への駆動電流IOPの供給が制御されることで、相対的に長い極性反転間隔GPR(閾値時間THを超える極性反転間隔GPR)に対応する信号を記録する際に、当該極性反転間隔GPRの終了点を定義する極性反転時においてもスピントルク発振子10の発振状態を維持することができる。そのため、その次の極性反転間隔GPRに対応する信号を記録する際、特に当該次の極性反転間隔GPRが閾値時間TH以下である場合に、スピントルク発振子10の発振の遅延を抑制することができ、当該信号の品質をより向上させることができる。
【0089】
さらにまた、図11Eに示すようにして生成される単位駆動電流波形UOPから生成される駆動電流波形データDOPW図10E)に従ってスピントルク発振子10への駆動電流IOPの供給が制御されることで、相対的に長い極性反転間隔GPR(閾値時間THを超える極性反転間隔GPR)に対応する信号を記録する際に、記録磁界の磁界勾配があがる。そのため、当該信号の品質を向上させることができる。また、当該極性反転間隔GPRの終了点を定義する極性反転時においてもスピントルク発振子10の発振状態を維持することができるため、その次の極性反転間隔GPRに対応する信号を記録する際に、スピントルク発振子10の発振の遅延を抑制することができ、当該信号の品質をより向上させることができる。
【0090】
上記のようにして生成された記録電流波形データDWWに基づいて、記録電流供給部91aは記録電流IWを生成し、第1コイル9a又は第2コイル9bに供給する。それとともに、駆動電流波形データDOPWに基づいて、駆動電流供給部91bは駆動電流IOPを生成し、スピントルク発振子10に供給する。これにより、閾値時間TH以下の極性反転間隔GPRに対応して記録磁界が磁気ディスク100に印加されるときには、スピントルク発振子10から発生するマイクロ波磁界が当該記録磁界と重畳的に磁気ディスク100に印加されるため、高SN比で信号を記録することができる。一方、閾値時間THを超える極性反転間隔GPRに対応して記録磁界が磁気ディスク100に印加されるときには、スピントルク発振子10からのマイクロ波磁界の発生が制御されることになるため、磁気ディスク100に記録された信号の品質の実質的な低下を防止することができる。
【0091】
上述したように、本実施形態に係る磁気記録装置においては、閾値時間TH以下の極性反転間隔GPR(相対的に短い極性反転間隔GPR)に対応する信号は、スピントルク発振子10から発生するマイクロ波磁界によるアシスト効果を受け、高SN比にて記録され得る。一方、閾値時間THを超える極性反転間隔GPR(相対的に長い極性反転間隔GPR)に対応する信号は、スピントルク発振子10から発生するマイクロ波磁界の影響による実質的な品質低下が引き起こされない。そのため、本実施形態によれば、相対的に長い極性反転間隔GPRに対応する信号は、当該極性反転間隔GPR(相対的に長い極性反転間隔GPR)の間マイクロ波磁界が印加され続けて記録された信号よりも高SN比にて記録され得る。閾値時間THの設定等によっては、相対的に長い極性反転間隔GPRに対応して記録された信号のSN比が変動することもあるが、それでも相対的に長い極性反転間隔GPRの間マイクロ波磁界が印加され続けて記録された信号よりも高SN比にて記録され得る。よって、本実施形態に係る磁気記録装置によれば、磁気ディスク100に記録される信号の品質を実質的に低下させることなく、高SN比で信号を記録することができる。
【0092】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0093】
上記実施形態において、制御部230に含まれるリード/ライトチャネルによって、磁気ディスク100に記録された信号の品質を評価し、当該品質の評価結果に基づいて、閾値時間THに関する情報を含むフィードバック情報を生成してもよい。すなわち、磁気記録装置は、磁気ディスク100に記録された信号の品質を評価する信号品質評価部と、当該信号品質評価部による評価に基づき、電流制御部90にフィードバックされるフィードバック情報を生成するフィードバック情報生成部とを備えていてもよい。この場合において、フィードバック情報に含まれる閾値時間THに関する情報としては、信号品質評価結果に基づいて変更された閾値時間THに関する情報を例示することができる。本実施形態における磁気記録装置は、予め所定の閾値時間THを設定し、記録電流波形データDWWにおける極性反転間隔GPRが当該閾値時間THを超えるか否かを指標として駆動電流波形データDOPWを生成する。この閾値時間THの設定が適切であればよいが、不適切であると、当該駆動電流波形データDOPWに従ってスピントルク発振子10に駆動電流IOPを印加して記録された信号の品質が低下してしまうおそれがある。例えば、極性反転間隔GPRが閾値時間TH以内であると判断され、当該極性反転間隔GPRの期間内に駆動電流IOPが供給されたにもかかわらず、当該極性反転間隔GPRに対応して記録された信号の品質が低下している場合には、閾値時間THをより短く再設定する必要があると考えられる。このような場合に、フィードバック情報生成部は、変更後のより短い閾値時間THに関する情報を含むフィードバック情報を生成し、電流制御部90に出力する。電流制御部90は、当該フィードバック情報に基づいて閾値時間THを変更し、変更後の閾値時間THを用いて、駆動電流波形データDOPWを生成する。これにより、記録される信号の品質低下をより効果的に防止することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0095】
[実施例1]
図1〜9に示す構成を有する磁気記録装置を用いて、磁気ディスクに信号を記録し、当該信号をマイクロ波アシストヘッド1の再生ヘッド1Aにて読み出し、再生信号のSN比(dB)を測定した。結果を図13に示す。
【0096】
なお、信号記録時には、記録される信号に基づいて図10Aに示すような記録電流波形データDWWを生成し、図11A及び11Bに示すようにして単位駆動電流波形UOPを生成し、図10Bに示すような駆動電流波形データDOPWを生成した。磁気ディスクに記録した信号は、相対的に短い極性反転間隔GPR1に応じた信号S1、相対的に長い極性反転間隔GPR3に応じた信号S3及びそれらの中間の極性反転間隔GPR2に応じた信号S2を含むものとした。駆動電流波形データDOPWを生成する際の閾値時間THと、各信号S1〜S3に対応する極性反転間隔GPR1〜GPR3との関係は、以下の式に示す通りである。
PR1 < GPR2 < TH < GPR3
【0097】
極性反転間隔GPR1,GPR2に対応する単位駆動電流波形UOPは、図11Aに示すようにして生成され、極性反転間隔GPR3に対応する単位駆動電流波形UOPは、図11Bに示すようにして生成された。
【0098】
[比較例1]
信号記録時に、図11Aに示すような電流値の駆動電流IOPを印加し続けた以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクに信号を記録し、当該信号をマイクロ波アシストヘッド1の再生ヘッド1Aにて読み出し、再生信号のSN比(dB)を測定した。結果を図13に示す。
【0099】
[参考例1]
信号記録時に駆動電流IOPを印加しなかった以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクに信号を記録し、当該信号をマイクロ波アシストヘッド1の再生ヘッド1Aにて読み出し、再生信号のSN比(dB)を測定した。結果を図13に示す。
【0100】
図13は、各信号S1〜S3のSN比(dB)を示すグラフである。図13に示す結果から、実施例1のように記録される信号に基づく記録電流波形データDWWにおける極性反転間隔GPRの長さに応じて、駆動電流IOPの供給を制御することで、相対的に短い極性反転間隔GPRに対応する信号S1のSN比を向上させることができるとともに、相対的に長い極性反転間隔GPR3に対応する信号S3の品質低下を防止可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0101】
1…マイクロ波アシスト磁気ヘッド
6…主磁極層
10…スピントルク発振子
90…電流制御部
91a…記録電流供給部
91b…駆動電流供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14