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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224409(P2017-224409A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】透明導電体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20171124BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20171124BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20171124BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171124BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171124BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20171124BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20171124BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20171124BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20171124BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   C01G33/00 A
   B32B9/00 A
   B32B15/08 D
   H01B5/14 B
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/28
   H05B33/02
   H05B33/04
   C01G19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-117142(P2016-117142)
(22)【出願日】2016年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】新開 浩
(72)【発明者】
【氏名】玉川 祥久
(72)【発明者】
【氏名】田邊 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉徳
【テーマコード(参考)】
3K107
4F100
4G048
5G307
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD16
3K107DD17
3K107DD22
3K107DD24
3K107DD44X
3K107DD46X
3K107FF14
3K107GG12
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4F100AB17C
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4G048AB01
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4G048AC06
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4G048AE05
5G307FA02
5G307FB01
5G307FC03
5G307FC04
(57)【要約】
【課題】パターニングが容易であるとともに、パターニングされても優れた水蒸気バリア性を維持することが可能な透明導電体を提供すること。
【解決手段】透明導電体100は、透明樹脂基材10、第1の金属酸化物層12、銀合金を含む金属層16、及び第2の金属酸化物層14をこの順で備える。第1の金属酸化物層12は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方を含有する。酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、第1の金属酸化物層12に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、第2の金属酸化物層14に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量よりも大きく、第1の金属酸化物層12における上記含有量は45mol%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、銀合金を含む金属層、及び第2の金属酸化物層をこの順で備える透明導電体であって、
前記第1の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方を含有し、
酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、
前記第1の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、前記第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量よりも大きく、
前記第1の金属酸化物層における前記含有量は45mol%以上である透明導電体。
【請求項2】
前記第1の金属酸化物層は、前記第2の金属酸化物層を溶解するリン酸、酢酸、硝酸及び弗酸を含有するエッチング液に溶解しない、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項3】
前記第1の金属酸化物層は酸化スズを含有し、前記酸化スズをSnOに換算したときに、前記金属酸化物の合計に対するSnOの含有量が30mol%以上である、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項4】
前記第1の金属酸化物層は酸化ニオブを含有し、前記酸化ニオブをNbに換算したときに、前記金属酸化物の合計に対するNbの含有量が50mol%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項5】
前記第1の金属酸化物層がアモルファスである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項6】
前記第1の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの少なくとも一つを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項7】
前記第2の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを含有し、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、それぞれZnO、In、TiO及びSnOに換算したときに、前記4成分の合計に対するZnOの含有量が20〜50mol%、Inの含有量が20〜35mol%、TiOの含有量が10〜15mol%、及びSnOの含有量が12〜30mol%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項8】
前記銀合金は、構成元素として、Ag、Pd及びCuを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項9】
前記第1の金属酸化物層の一部が露出するようにパターニングされており、
前記透明樹脂基材及び前記第1の金属酸化物層を備え、前記第1の金属酸化物層が露出する第1積層部と、
前記透明樹脂基材、前記第1の金属酸化物層、前記金属層、及び前記第2の金属酸化物層を備える第2積層部と、を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の透明導電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電体は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、及びエレクトロルミネッセンスパネル(有機EL、無機EL)などのディスプレイ、並びに、太陽電池などの透明電極として使用されている。また、これらの他に、電磁波遮断膜及び赤外線防止膜等にも使用されている。透明導電体における金属酸化物層の材料としては、酸化インジウム(In)に錫(Sn)を添加したITOが広く用いられている。
【0003】
透明導電体は、透明性に加えて、用途に応じて種々の特性に優れることが求められている。また、パターニングの微細化に伴い、製造プロセスの観点からも、種々の材質のものが検討されている。例えば、特許文献1では、酸化インジウム又は酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物層と金属層との積層構造を有する透明導電膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−157929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明性と導電性とを兼ね備える透明導電体は、種々の用途に用いられている。例えば、有機デバイスの電極として用いられる場合、有機層の信頼性を確保するために、水分の透過を抑制することが求められる。このような透明導電体は、パターニングプロセスを行うことによって、導電部と絶縁部とが形成される。このようなパターニングプロセスを円滑に行うため、エッチング性にも優れることが求められる。
【0006】
そこで、本発明では、パターニングが容易であるとともに、パターニングされても優れた水蒸気バリア性を維持することが可能な透明導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一つの側面において、透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、銀合金を含む金属層、及び第2の金属酸化物層をこの順で備える透明導電体であって、第1の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方を含有し、酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、第1の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量よりも大きく、第1の金属酸化物層における含有量は45mol%以上である透明導電体を提供する。
【0008】
上記透明導電体の第2の金属酸化物層は、金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量が第1の金属酸化物層よりも小さいので、第2の金属酸化物層の方が第1の金属酸化物層よりも、リン酸、酢酸、硝酸及び弗酸を含有するエッチング液に溶解され易い。このため、当該エッチング液によって、第2の金属酸化物層及び金属層を除去して、容易にパターニングをすることができる。
【0009】
エッチングされずに残存する第1の金属酸化物層は、水蒸気バリア性に優れる。これによって、上記透明導電体は、パターニングされても優れた水蒸気バリア性を維持することができる。したがって、例えば、パターニングされた透明導電体上に有機層等が積層されたデバイスを作製した場合に、有機層への水分の侵入が抑制され、デバイスの信頼性を向上することができる。
【0010】
第1の金属酸化物層は、第2の金属酸化物層を溶解するリン酸、酢酸、硝酸及び弗酸を含有するエッチング液に溶解しないことが好ましい。これによって、パターニングを容易にしつつ、水蒸気バリア性を一層向上することができる。
【0011】
第1の金属酸化物層は酸化スズを含有し、酸化スズをSnOに換算したときに、金属酸化物の合計に対するSnOの含有量が30mol%以上であってもよい。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性とを一層高い水準で両立することができる。また、耐アルカリ性も向上することができる。
【0012】
第1の金属酸化物層は酸化ニオブを含有し、酸化ニオブをNbに換算したときに、金属酸化物の合計に対するNbの含有量が50mol%以上であってもよい。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性とを一層高い水準で両立することができる。
【0013】
第1の金属酸化物層はアモルファスであってもよい。これによって、第1の金属酸化物層における水蒸気バリア性を一層向上することができる。
【0014】
第1の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方を含有し、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、それぞれZnO、In、TiO及びSnOに換算したときに、上記4成分の合計に対するZnOとTiOの合計の含有量が20〜55mol%であってもよい。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性とを一層高い水準で両立しつつ、耐アルカリ性を向上することができる。
【0015】
第2の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを含有し、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、それぞれZnO、In、TiO及びSnOに換算したときに、上記4成分の合計に対するZnOの含有量が20〜50mol%、Inの含有量が20〜35mol%、TiOの含有量が10〜15mol%、及びSnOの含有量が12〜30mol%であってもよい。これによって、エッチング液への溶解性が向上し、パターニングが一層容易となる。
【0016】
金属層における銀合金は、構成元素として、Ag、Pd及びCuを有していてもよい。これによって、金属層のマイグレーション等の劣化が一層抑制され、透明導電体の耐食性を向上することができる。
【0017】
上記透明導電体は、幾つかの実施形態において、第1の金属酸化物層の一部が露出するようにパターニングされており、透明樹脂基材及び第1の金属酸化物層を備え、第1の金属酸化物層が露出する第1積層部と、透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、金属層、及び第2の金属酸化物層を備える第2積層部と、を備えていてもよい。このようにパターニングされていても、第1積層部及び第2積層部は第1の金属酸化物層を備えることから、水蒸気バリア性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
パターニングが容易であるとともに、パターニングされても優れた水蒸気バリア性を維持することが可能な透明導電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る透明導電体の断面図である。
図2図2は、別の実施形態に係る透明導電体の断面図である。
図3図3は、さらに別の実施形態に係る透明導電体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は、透明導電体の一実施形態を示す断面図である。透明導電体100は、フィルム状の透明樹脂基材10と、第1の金属酸化物層12と、金属層16と、第2の金属酸化物層14とがこの順に配置された積層構造を有する。
【0022】
本明細書における「透明」とは、可視光が透過することを意味しており、光をある程度散乱してもよい。光の散乱度合いについては、透明導電体100の用途によって要求されるレベルが異なる。一般に半透明といわれるような光の散乱があるものも、本明細書における「透明」の概念に含まれる。光の散乱度合いは小さい方が好ましく、透明性は高い方が好ましい。透明導電体100全体の全光線透過率は、例えば84%以上であり、好ましくは86%以上であり、より好ましくは88%以上である。この全光線透過率は、積分球を用いて求められる、拡散透過光を含む透過率であり、市販のヘイズメーターを用いて測定される。
【0023】
透明樹脂基材10は、特に限定されず、可撓性を有する有機樹脂フィルムであってもよい。有機樹脂フィルムは有機樹脂シートであってもよい。有機樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、並びにトリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0024】
透明樹脂基材10は、剛性の観点からは厚い方が好ましい。一方、透明樹脂基材10は、透明導電体100を薄膜化する観点からは薄い方が好ましい。このような観点から、透明樹脂基材10の厚みは、例えば10〜200μmである。透明樹脂基材の屈折率は、光学特性に優れる透明導電体とする観点から、例えば1.50〜1.70である。なお、本明細書における屈折率は、λ=633nm、温度20℃の条件下で測定される値である。
【0025】
透明樹脂基材10は、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、及びオゾン処理からなる群より選ばれる少なくとも一つの表面処理が施されたものであってもよい。透明樹脂基材は、樹脂フィルムであってもよい。樹脂フィルムを用いることによって、透明導電体100を柔軟性に優れたものとすることができる。これによって、タッチパネル用途の透明導電体、フレキシブルな有機EL照明等の有機デバイス用の透明電極、及び電磁波シールド等に一層好適に用いることできる。
【0026】
第1の金属酸化物層12は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方を含有する。酸化スズは例えばSnOであり、酸化ニオブは例えばNbである。第1の金属酸化物層12は、酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、第1の金属酸化物層12に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、45mol%以上である。当該含有量の上限は、バルクの導電性を維持する観点から、例えば90mol%以下である。この含有量が90mol%を超えると、バルクの導電性が低下する傾向にある。
【0027】
上記モル基準の含有量は、酸化スズ及び酸化ニオブとは異なる金属酸化物については、常温常圧において、最も安定的に存在する金属酸化物に換算して求められる値である。以下の各金属酸化物の含有量も同様にして求められる。
【0028】
第1の金属酸化物層12が酸化スズを含有する場合、酸化スズをSnOに換算したときに、第1の金属酸化物層12に含まれる金属酸化物の合計に対するSnOの含有量は30mol%以上であることが好ましい。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性を一層高い水準で両立することができる。SnOの上記含有量の上限は、透過率を高く維持する観点から、例えば80mol%以下である。
【0029】
第1の金属酸化物層12が酸化ニオブを含有する場合、酸化ニオブをNbに換算したときに、金属酸化物の合計に対するNbの含有量が50mol%以上であることが好ましい。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性を一層高い水準で両立することができる。Nbの上記含有量の上限は、優れた耐アルカリ性を維持する観点から、例えば80mol%以下である。
【0030】
第1の金属酸化物層12は、酸化スズ及び酸化ニオブの両方を含んでいてもよいし、酸化スズ及び酸化ニオブとは異なる金属酸化物を含有していてもよい。異なる酸化物としては、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンが挙げられる。第1の金属酸化物層12は、これらのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばInである。酸化チタンは例えばTiOである。
【0031】
第1の金属酸化物層12が、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方と、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含む場合、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの5成分を、それぞれSnO、Nb、ZnO、In及びTiOに換算したときに、上記5成分の合計に対するSnO及びNbの合計の含有量は、例えば45〜80mol%である。上記5成分に対するZnO、In及びTiOの合計の含有量は、例えば20〜55mol%である。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性とを一層高い水準で両立しつつ、耐アルカリ性を向上することができる。第1の金属酸化物層12に含まれる各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、同一金属元素で酸化数が互いに異なる酸化物を含んでいてもよい。
【0032】
第1の金属酸化物層12は、光学特性の調整、及び金属層16の保護といった機能を兼ね備える。第1の金属酸化物層12は、その機能を大きく損なわない範囲で、上術の金属酸化物の他に、微量成分又は不可避的成分を含んでいてもよい。第1の金属酸化物層12に含まれる金属酸化物の全体に対する上記5成分の合計の割合は95mol%以上であってもよく、97mol%以上であってもよい。第1の金属酸化物層12は、上記5成分以外の金属酸化物を含んでいなくてもよい。
【0033】
第1の金属酸化物層12は、透明であり、リン酸、酢酸、硝酸及び弗酸を含有するエッチング液に溶解しないものであることが好ましい。このエッチング液は、リン酸、酢酸、及び硝酸を含むPAN系エッチング液と、弗酸とを配合して調製できる。
【0034】
第1の金属酸化物層12は、アモルファスであることが好ましい。これによって、第1の金属酸化物層12の水蒸気バリア性を一層向上することができる。第1の金属酸化物層12は、組成を調整することによってアモルファスにすることができる。
【0035】
第2の金属酸化物層14は、酸化物を含む透明の層であり、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、主成分として含有する。第2の金属酸化物層14は、主成分として上記4成分を含むことによって、優れた導電性と優れた透明性を兼ね備えた第2の金属酸化物層14とすることができる。酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばInである。酸化チタンは例えばTiOであり、酸化スズは、例えばSnOである。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。第2の金属酸化物層14に含まれる各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、同一金属元素で酸化数が互いに異なる酸化物を含んでいてもよい。
【0036】
第2の金属酸化物層14は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、それぞれZnO、In、TiO及びSnOに換算したときに、上記4成分の合計に対するSnOの含有量は好ましくは12〜30mol%である。SnOの含有量を上述の範囲にすることによって、高い導電性とエッチング液への溶解性を十分に高い水準で両立することができる。SnOの上記含有量は、より好ましくは15〜25mol%である。
【0037】
上記4成分の合計に対するZnOの含有量は、優れた透明性と優れた導電性を両立する観点から、好ましくは20〜50mol%であり、より好ましくは30〜50ml%である。上記4成分の合計に対するInの含有量は、優れた透明性と高い導電性を両立する観点から、好ましくは20〜35mol%であり、より好ましくは、22〜30mol%である。上記4成分の合計に対するTiOの含有量は、高い導電性と優れた耐食性を両立する観点から、好ましくは10〜15mol%であり、より好ましくは12〜15mol%である。
【0038】
第2の金属酸化物層14は、上述の金属酸化物とは異なる金属酸化物を含んでいてもよい。例えば、酸化ニオブを含んでいてもよい。ただし、酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、第2の金属酸化物層14に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、同様にして求められる第1の金属酸化物層における同含有量よりも小さい。すなわち、第2の金属酸化物層14に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、45mol%未満であり、好ましくは12〜30mol%であり、より好ましくは15〜25mol%である。これによって、高い導電性とエッチング液への溶解性を十分に高い水準で両立することができる。
【0039】
第2の金属酸化物層14は、光学特性の調整、金属層16の保護、導電性、エッチング液への溶解性及び耐アルカリ性の確保といった機能を兼ね備える。第2の金属酸化物層14は、その機能を大きく損なわない範囲で、上述の成分の他に、微量成分又は不可避的成分を含んでいてもよい。第2の金属酸化物層14に含まれる金属酸化物の全体に対する上記4成分の合計の割合は、例えば95mol%以上であってもよく、97mol%以上であってもよい。第2の金属酸化物層14は、上記4成分以外の金属酸化物を含んでいなくてもよい。
【0040】
第1の金属酸化物層12と第2の金属酸化物層14とは、互いに異なる組成を有する。これによって、一つの工程で、第2の金属酸化物層14及び金属層16のみをエッチングして除去し、第1の金属酸化物層12をそのまま残存させることができる。
【0041】
第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14の厚さは、透明性を一層向上する観点から、例えば80nm以下である。一方、耐食性を一層向上するとともに生産性を向上する観点から、上記厚さは、例えば20nm以上である。
【0042】
第1の金属酸化物層12及び第2の金属酸化物層14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び、成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、酸化物ターゲット、金属又は半金属ターゲットを用いることができる。
【0043】
第2の金属酸化物層14の上には配線電極等が設けられてもよい。後述する金属層16を導通する電流は、第2の金属酸化物層14の上に設けられる配線電極等から、第2の金属酸化物層14を経由して、第2の金属酸化物層14の上に設けられる別の配線電極等に導かれる。このため、第2の金属酸化物層14は、高い導電性を有することが好ましい。このような観点から、第2の金属酸化物層14単層での表面抵抗値は、例えば1.0×10+7Ω/sq以下であることが好ましく、5.0×10+6Ω/sq.以下であることがより好ましい。
【0044】
金属層16は、主成分として銀合金を含む層である。金属層16が高い透明性と導電性を有することによって、透明導電体100の全光線透過率を十分高くしつつ表面抵抗を十分に低くすることができる。銀合金の構成元素としては、Agと、Pd、Cu、Nd、In、Sn、及びSbから選ばれる少なくとも1種と、が挙げられる。銀合金の例としては、Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Cu、Ag−In−Sn、及びAg−Sn−Sbが挙げられる。
【0045】
銀以外の金属の含有量は、耐食性と透明性を一層向上させる観点から、金属層16を基準として例えば0.5〜5質量%である。銀合金は銀以外の金属としてPdを含有することが好ましい。これによって、高温高湿環境下における耐久性を一層向上することができる。銀合金におけるPdの含有量は例えば1質量%以上であってもよい。銀合金は、Ag及びPdとともにCuを含むことが好ましい。これによって、金属層16のマイグレーション等の劣化が一層抑制され、透明導電体100の耐食性を向上することができる。
【0046】
金属層16の厚さは、例えば1〜30nmである。透明導電体100の水蒸気透過率を十分に低くしつつ全光線透過率を十分に高くする観点から、金属層16の厚さは好ましくは4〜20nmである。金属層16の厚さが大きすぎると全光線透過率が低下する傾向にある。一方、金属層16の厚さが小さすぎると全光線透過率及び耐食性が低下する傾向、及び表面抵抗が高くなる傾向がある。
【0047】
金属層16は、透明導電体100の全光線透過率及び表面抵抗を調整する機能を有している。金属層16は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲットを用いることができる。
【0048】
透明導電体100は低い水蒸気透過率を有することが好ましい。透明導電体100の水蒸気透過率(WVTR)は、パターニングされる前の状態で、例えば5×10−3g/m/day以下であってもよく、5×10−4g/m/day以下であってもよい。透明導電体100は、このような低い水蒸気透過率を有することによって、水蒸気を十分にブロックできるため、特に有機デバイスの透明電極として好適に用いることができる。本明細書における水蒸気透過率(WVTR)は、日立ハイテクノロジーズ社製のMOCON法水蒸気透過率測定装置(AQATRAN)等の市販の測定装置を用いて測定される値である。
【0049】
透明導電体100における第2の金属酸化物層14の少なくとも一部、及び金属層16の少なくとも一部は、エッチング等によって除去されていてもよい。この場合、金属層16及び第2の金属酸化物層14によって、導体パターンが形成される。第1の金属酸化物層12の一部も、エッチング等によって除去されていてもよい。
【0050】
透明導電体100の抵抗値は、例えば30Ω/sq.以下である。従来は、透明電極として、100nm以上の厚みを有するITO膜が用いられてきたが、十分に抵抗を低くすることが困難であった。透明導電体100は、上述の厚みを有するITOよりも抵抗を低くすることが可能であり、低い抵抗を有することが求められる用途の透明電極として好適に用いられる。また、透明導電体100は、液晶スクリーン、及びアンテナに用いることもできる。
【0051】
図2は、透明導電体の別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体101は、透明樹脂基材10、第1の金属酸化物層12、金属層16、及び第2の金属酸化物層14をこの順に有する導電部40(第2積層部)と、第2の金属酸化物層14及び金属層16を有さず、且つ、透明樹脂基材10及び第1の金属酸化物層12を有する非導電部30(第1積層部)とを備える。導電部40と非導電部30とは互いに隣り合うように形成されている。
【0052】
透明導電体101は、図1の透明導電体100の第2の金属酸化物層14及び金属層16をエッチングで除去することによって得られる。非導電部30では、第1の金属酸化物層12の表面(一方の主面)が露出している。一方、導電部40は、第1の金属酸化物層12の上記表面上に金属層16及び第2の金属酸化物層14を備えており、導体パターンを構成する。
【0053】
透明導電体101は、導電部40のみならず、非導電部30にも第1の金属酸化物層12を備える。第1の金属酸化物層12は優れた水蒸気バリア性を有する。このため、パターニングされた透明導電体101は、優れた水蒸気バリア性を維持することができる。透明導電体101の水蒸気透過率(WVTR)は、例えば5×10−2g/m/day以下であってもよく、1×10−2g/m/day以下であってもよい。所定形状の導体パターンを有する透明導電体101は、優れた水蒸気バリア性を有することから、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機薄膜太陽電池等の有機デバイス、調光フィルム及び電子ペーパーなどの各種表示装置において、透明電極用、帯電防止用、電磁波シールド用の透明電極として好適に用いることができる。
【0054】
図3は、透明導電体のさらに別の実施形態を示す模式断面図である。透明導電体102は、透明樹脂基材10を挟むようにして一対のハードコート層20を備える点で、図1の透明導電体100と異なっている。その他の構成は、透明導電体100と同様である。
【0055】
透明導電体102は、一対のハードコート層20として、透明樹脂基材10の第1の金属酸化物層12側の主面上に第1のハードコート層22と、透明樹脂基材10の第1の金属酸化物層12側とは反対側の主面上に第2のハードコート層24とを備える。すなわち、透明導電体102は、第2のハードコート層24、透明樹脂基材10、第1のハードコート層22、第1の金属酸化物層12、金属層16及び第2の金属酸化物層14がこの順に積層された積層構造を有している。第1のハードコート層22と第2のハードコート層24の厚み、構造及び組成は、同一であってもよく異なっていてもよい。また、必ずしも第1のハードコート層22と第2のハードコート層24の両方を備える必要はなく、どちらか一方のみを備えていてもよい。
【0056】
ハードコート層20を設けることによって、透明樹脂基材10に発生する傷を十分に抑制することができる。ハードコート層20は、樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物を含有する。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物、及び電子線硬化性樹脂組成物から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、及びメラミン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0057】
樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む組成物である。なお、(メタ)アクリロイル基なる表記は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む意味である。硬化性化合物は、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上のエネルギー線反応性基を含む多官能モノマー又はオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0058】
硬化性化合物は、好ましくはアクリル系モノマーを含有する。アクリル系モノマーとしては、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及び3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、ウレタン変性アクリレート、及びエポキシ変性アクリレート等も挙げられる。
【0059】
硬化性化合物として、ビニル基を有する化合物を用いてもよい。ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、及び、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられる。ただし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0060】
樹脂組成物は、硬化性化合物を紫外線によって硬化させる場合、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、種々のものを用いることができる。例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系等の公知の化合物から適宜選択すればよい。より具体的には、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(以上商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)、及び、KAYACURE DETX−S(商品名、日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0061】
光重合開始剤は、硬化性化合物の質量に対して、0.01〜20質量%、又は0.5〜5質量%程度とすればよい。樹脂組成物は、アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えた公知のものであってもよい。アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えたものとしては、例えば、紫外線硬化型樹脂であるSD−318(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、及び、XNR5535(商品名、長瀬産業(株)製)等が挙げられる。
【0062】
樹脂組成物は、塗膜の強度を高めること、及び/又は、屈折率を調整すること等のために、有機微粒子及び/又は無機微粒子を含んでいてもよい。有機微粒子としては、例えば、有機珪素微粒子、架橋アクリル微粒子、及び架橋ポリスチレン微粒子等が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、酸化珪素微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化鉄微粒子等が挙げられる。これらのうち、酸化珪素微粒子が好ましい。
【0063】
微粒子は、その表面がシランカップリング剤で処理され、(メタ)アクリロイル基、及び/又はビニル基等のエネルギー線反応性基が表面に膜状に存在しているものも好ましい。このような反応性を有する微粒子を用いると、エネルギー線照射の際に、微粒子同士が反応したり、微粒子と多官能モノマー又はオリゴマーとが反応したりして、膜の強度を強くすることができる。(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤で処理された酸化珪素微粒子が好ましく用いられる。
【0064】
微粒子の平均粒径は、ハードコート層20の厚みよりも小さく、十分な透明性を確保する観点から、100nm以下であってもよく、20nm以下であってもよい。一方、コロイド溶液の製造上の観点から、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。有機微粒子及び/又は無機微粒子を用いる場合、有機微粒子及び無機微粒子の合計量は、硬化性化合物100質量部に対して、例えば5〜500質量部であってもよく、20〜200質量部であってもよい。
【0065】
エネルギー線で硬化する樹脂組成物を用いると、紫外線等のエネルギー線を照射することによって、樹脂組成物を硬化させることができる。したがって、このような樹脂組成物を用いることが製造工程上の観点からも好ましい。
【0066】
第1のハードコート層22は、樹脂組成物の溶液又は分散液を、透明樹脂基材10の一方面上に塗布して乾燥し、樹脂組成物を硬化させて作製することができる。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、及びスクイズ法などが挙げられる。第2のハードコート層24も、第1のハードコート層22と同様にして、透明樹脂基材10の他方面上に作製することができる。
【0067】
第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みは、例えば0.5〜10μmである。厚みが10μmを超えると、厚みムラやシワなどが生じ易くなる傾向にある。一方、厚みが0.5μmを下回ると、透明樹脂基材10中に可塑剤又はオリゴマー等の低分子量成分が相当量含まれている場合に、これらの成分のブリードアウトを十分に抑制することが困難になる場合がある。なお、反りを抑制する観点から、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みは、同程度にすることが好ましい。
【0068】
第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の屈折率は、例えば1.40〜1.60である。透明樹脂基材10と第1のハードコート層22の屈折率の差の絶対値が0.1以下であること好ましい。透明樹脂基材10と第2のハードコート層24の屈折率の差の絶対値も0.1以下であることが好ましい。第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24と透明樹脂基材10との屈折率の差の絶対値を小さくすることで、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24の厚みのムラによって発生する干渉ムラの強度を抑制することができる。
【0069】
上記各実施形態に係る透明導電体100,101,102を構成する各層の厚みは、以下の手順で測定することができる。集束イオンビーム装置(FIB,Focused Ion Beam)によって透明導電体100,101,102を切断して断面を得る。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて当該断面を観察し、各層の厚みを測定する。測定は、任意に選択された10箇所以上の位置で測定を行い、その平均値を求めることが好ましい。断面を得る方法として、集束イオンビーム装置以外の装置としてミクロトームを用いてもよい。厚みを測定する方法としては、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。また蛍光X線装置を用いても膜厚を測定することが可能である。
【0070】
透明導電体100,101,102の厚みは、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。このような厚みであれば、薄化の要求レベルを十分に満足することができる。透明導電体100,101,102の全光線透過率は、例えば84%以上もの高い値とすることができる。
【0071】
透明導電体100,101,102を有機デバイスに用いる場合、透明導電体100,101,102は、有機デバイスの正極として用いられる。そして、パターニングされた第2の金属酸化物層14の上には、第2の金属酸化物層14側から、有機層、反射電極(負極)、及び封止膜をこの順で備える。有機層は水分によって容易に劣化するが、正極として高い水蒸気バリア性を有する透明導電体100,101,102を用いることによって、有機デバイスの長寿命化を図ることができる。また、透明導電体100,101,102は、有機デバイスの負極としても用いることが可能である。
【0072】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の透明導電体102は一対のハードコート層20を有しているが、第1のハードコート層22及び第2のハードコート層24のどちらか一方のみを備えていてもよい。また、透明樹脂基材10の一方面上にハードコート層を設け、他方面上に塗布により複数の光学調整層を設けてもよい。この場合、第1の金属酸化物層12、金属層16及び第2の金属酸化物層14は、この光学調整層の上に設けてもよい。さらに、透明導電体100,101,102には、その機能が大きく損なわれない範囲で、上述の層以外に任意の位置に任意の層を設けてもよい。
【実施例】
【0073】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1〜5,比較例1〜7]
(透明導電体の作製)
図1に示すような透明導電体を作製した。透明導電体は、透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、金属層及び第2の金属酸化物層がこの順で積層された積層構造を有していた。各実施例及び各比較例の透明導電体を以下の要領で作製した。
【0075】
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:125μm)を準備した。このPETフィルムを透明樹脂基材として用いた。PETフィルムの上に、DCマグネトロンスパッタリングによって、第1の金属酸化物層、金属層及び第2の金属酸化物層を順次形成した。各実施例及び各比較例における第1の金属酸化物層及び第2の金属酸化物層は、表1及び表2に示す組成を有するターゲットを用いて形成した。例えば、実施例1のターゲットは、SnOとZnOを45:55のモル比率で含有していた。ただし、比較例7では、Alターゲットを用いて、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスによる反応性スパッタリングによって作製したAlN層を、第1の金属酸化物層とした。
【0076】
各実施例及び各比較例で形成された第1の金属酸化物層及び第2の金属酸化物層は、比較例7の第1の金属酸化物層を除いて、使用したターゲットと同じ組成を有していた。表1及び表2には、第1の金属酸化物層及び第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnOとNbの合計のモル基準の含有量も併せて示した。各実施例における第1の金属酸化物層及び第2の金属酸化物層の厚さは40nmとした。
【0077】
表1に示す全ての実施例において、金属層は、Ag−Pd−Cu(Ag:Pd:Cu=99.0:0.7:0.3(質量%))ターゲットを用いて形成した。金属層の厚さは10nmとした。
【0078】
(透明導電体の評価)
各実施例及び各比較例の透明導電体における、第1の金属酸化物層及び第2の金属酸化物層の結晶性を、XRDを用いて評価した。すなわち、X線回折法による回折角(2θ)が20〜60°の範囲において、回折ピークが観測された場合を結晶質、回折ピークが観測されなかった場合をアモルファスと判定した。例えば、ZnOを含む第1金属酸化物層及び第2の金属酸化物層については、ZnOの(002)面からの回折ピークの有無で判定できる。ZnOを含まない場合であっても、TiO、Nb、又はAlNの(002)面からの回折ピークの有無で判定できる。判定結果を、表1及び表2の結晶性の欄に示す。表1及び表2中、「C」は結晶質を示し、「A」はアモルファスを示す。
【0079】
各実施例及び比較例の透明導電体のエッチング性を以下の手順で評価した。まず、リン酸、酢酸及び硝酸を含むPAN系エッチング液と弗酸とを混合してエッチング液を準備した。このエッチング液に透明導電体を室温で10分間浸漬してエッチングを行った。その後、全光線透過率測定を行って、第2の金属酸化物層、金属層及び第1の金属酸化物層が溶解されているか否かを判定した。
【0080】
溶解の有無は、全光線透過率を測定することによって確認した。全光線透過率(透過率)は、ヘイズメーター(商品名:NDH−7000、日本電色工業社製)を用いて測定した。エッチング後の全光線透過率が、透明樹脂基材の全光線透過率と一致した場合は、第2の金属酸化物層、金属層及び第1の金属酸化物層の全てが溶解したものと判定した。エッチング後の全光線透過率が、第1の金属酸化物層及び透明樹脂基材の積層体と一致した場合は、第2の金属酸化物層及び金属層が溶解したものと判定した。エッチング前後で全光線透過率が変わらなかった場合は、第2の金属酸化物層、金属層及び第1の金属酸化物層のいずれもが溶解しなかったものと判定した。
【0081】
表1の「溶解性」の欄には、第1の金属酸化物層が溶解したか不溶であったかを示した。表2の「溶解性」の欄には、第2の金属酸化物層が溶解したか不溶であったかを示した。表3の「エッチング性」の欄には、第2の金属酸化物層及び金属層が溶解したもの「A」、第2の金属酸化物層、金属層及び第1の金属酸化物層の全てが溶解したもの「B」と示した。なお、第2の金属酸化物層、金属層及び第1の金属酸化物層のいずれもが溶解しなかった実施例及び比較例はなかった。
【0082】
各実施例及び比較例の透明導電体の水蒸気バリア性を以下の手順で評価した。日立ハイテクノロジーズ社製のMOCON法水蒸気透過率測定装置(AQATRAN)を用いて、40℃、90%RHの条件で水蒸気透過率を測定した。測定は、上述の「エッチング性」の評価前後において行った。測定結果を表3に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すとおり、各実施例の透明導電体は、エッチング後においても、優れた水蒸気バリア性を維持できることが確認された。また、各実施例の透明導電体は、エッチング性に優れており、容易にパターニングできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示によれば、パターニングが容易であるとともに、パターニングされていても優れた水蒸気バリア性を維持することが可能な透明導電体が提供される。
【符号の説明】
【0088】
10…透明樹脂基材、12…第1の金属酸化物層、14…第2の金属酸化物層、16…金属層、20…ハードコート層、22…第1のハードコート層、24…第2のハードコート層、100,101,102…透明導電体。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2017年6月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
第1の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方と、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含む場合、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの5成分を、それぞれSnO、Nb、ZnO、In及びTiOに換算したときに、上記5成分の合計に対するSnO及びNbの合計の含有量は、例えば45〜80mol%である。上記5成分に対するZnO、In及びTiOの合計の含有量は、例えば20〜55mol%である。このような組成を有することによって、優れた水蒸気バリア性とエッチング液への不溶性とを一層高い水準で両立しつつ、耐アルカリ性を向上することができる。
【手続補正書】
【提出日】2017年10月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材、第1の金属酸化物層、銀合金を含む金属層、及び第2の金属酸化物層をこの順で備える透明導電体であって、
前記第1の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも一方と、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンから選ばれる少なくとも一つと、を含有し、
酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、
前記第1の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は、前記第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量よりも大きく、
前記第1の金属酸化物層において、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの5成分を、それぞれSnO、Nb、ZnO、In及びTiOに換算したときに、前記5成分の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は45〜80mol%であり、前記5成分の合計に対するZnO、In及びTiOの合計の含有量は20〜55mol%であり、
前記第2の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズを含有し、酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、前記第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量は35mol%以下である透明導電体。
【請求項2】
前記第1の金属酸化物層は、前記第2の金属酸化物層を溶解するリン酸、酢酸、硝酸及び弗酸を含有するエッチング液に溶解しない、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項3】
前記第1の金属酸化物層は酸化スズを含有し、前記酸化スズをSnOに換算したときに、前記金属酸化物の合計に対するSnOの含有量が30mol%以上である、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項4】
前記第1の金属酸化物層は酸化ニオブを含有し、前記酸化ニオブをNbに換算したときに、前記金属酸化物の合計に対するNbの含有量が50mol%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項5】
前記第1の金属酸化物層がアモルファスである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項6】
前記第2の金属酸化物層は、酸化スズ及び酸化ニオブをそれぞれSnO及びNbに換算したときに、前記第2の金属酸化物層に含まれる金属酸化物の合計に対するSnO及びNbの合計のモル基準の含有量が12〜30mol%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電体
【請求項7】
前記第2の金属酸化物層は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン及び酸化スズの4成分を、それぞれZnO、In、TiO及びSnOに換算したときに、前記4成分の合計に対するZnOの含有量が20〜50mol%、Inの含有量が20〜35mol%、TiOの含有量が10〜15mol%、及びSnOの含有量が12〜30mol%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項8】
前記銀合金は、構成元素として、Ag、Pd及びCuを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項9】
前記第1の金属酸化物層の一部が露出するようにパターニングされており、
前記透明樹脂基材及び前記第1の金属酸化物層を備え、前記第1の金属酸化物層が露出する第1積層部と、
前記透明樹脂基材、前記第1の金属酸化物層、前記金属層、及び前記第2の金属酸化物層を備える第2積層部と、を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の透明導電体。