特開2017-224575(P2017-224575A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224575(P2017-224575A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20171124BHJP
   H01M 8/04119 20160101ALI20171124BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20171124BHJP
   B60L 11/18 20060101ALN20171124BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 K
   H01M8/10
   B60L11/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-121028(P2016-121028)
(22)【出願日】2016年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】平光 雄介
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】田代 圭介
【テーマコード(参考)】
5H026
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H026AA06
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD04
5H125BD05
5H125BD06
5H125BD12
5H125EE36
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA52
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB13
5H127BB32
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DB55
5H127DC02
5H127DC03
5H127DC07
5H127DC14
5H127DC22
5H127DC23
5H127DC27
5H127DC34
5H127DC69
5H127DC72
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】燃料電池の運転状態に合致した最適な手法により水素ガスや空気を湿度低下させて酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料極10b及び空気極10cの触媒層の劣化が生じるセル電圧Vの電圧増加時B、高電圧時C及び電圧低下時Dの各運転状態において、劣化防止のための湿度低下に要求される条件(湿度の低下幅や応答性等)に基づき、予め各運転状態に対し制御量を含めて最適な制御内容となるようにそれぞれ湿度低下手法b〜dを設定する。燃料電池10の運転中には、運転状態が切り換わる毎に対応する湿度低下手法b〜dを選択・実行して湿度低下を達成し、触媒層上での酸化還元反応を抑制する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層を有する燃料極及び空気極を備え、前記燃料極に燃料ガスを供給すると共に前記空気極に空気を供給して発電する燃料電池において、
前記燃料電池の出力電力に応じて変動する前記燃料電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記燃料電池の稼動状態に応じて変化する複数の電圧状態に対応して選択される複数の湿度低下手法から現在の前記燃料電池の電圧状態に対応する湿度低下手法を選択して湿度低下を実行する湿度低下手段と
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記複数の電圧状態として、前記電圧が低下方向に変化する第1状態、前記電圧が所定値以上となる第2状態、前記電圧が増加方向に変化する第3状態の内、少なくも2つ以上の状態を有すると共に、該2つ以上の状態のそれぞれに対応した前記湿度低下手法が予め設定され、
前記湿度低下手段は、前記複数の電圧状態の内何れかの状態が発生したときに湿度低下を要すると判定し、該発生した状態に対応する湿度低下手法を選択して実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記湿度低下手段は、前記電圧が低下方向に変化した場合には低下率が大であるほど、前記電圧が所定値以上の場合にはアイドル相当値に接近するほど、前記電圧が増加方向に変化した場合には増加率が大であるほど、それぞれ目標湿度をより低下側に設定し、該目標湿度に基づき前記湿度低下手法を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記湿度低下手段は、湿度低下を要しない場合の通常制御時の湿度を前記目標湿度の上限とし、前記電圧が低下方向に変化した場合に前記目標湿度の下限を最も低くし、前記電圧が増加方向に変化した場合には前記目標湿度の下限を最も高くし、該上限と下限との間で目標湿度を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記複数の湿度低下手法は、湿度低下を目的としたセル温度の上昇制御、無加湿ガスの比率増加制御、セル圧力の低下制御、ガス流量の増加制御の内の互いに異なる何れかの制御内容が設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記複数の湿度低下手法は、湿度低下を目的としたセル温度の上昇制御、無加湿ガスの比率増加制御、セル圧力の低下制御、ガス流量の増加制御の内の同一の制御内容が設定されると共に、該設定された制御内容に適用する制御量を異にする
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層を有する燃料極及び空気極を備え、燃料極に湿度調整した燃料ガスを供給すると共に空気極に湿度調整した空気を供給して発電する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりに伴い、化石燃料に頼ることのないクリーンエネルギー発電の一つとして燃料電池システムが注目されている。例えば自動車に搭載される燃料電池システムには固体高分子型燃料電池が用いられており、固体高分子膜の両側に触媒として白金(Pt)を担持した燃料極及び空気極を貼り合わせてMEAを構成し、そのMEAをガス拡散層及びセパレータにより挟持した単セルを多数積層して製作される。
【0003】
このように構成された燃料電池は、燃料極に湿度調整した燃料ガスを供給すると共に空気極に湿度調整した空気を供給することで発電反応が開始される。発電反応は燃料極及び空気極の触媒層で進行するため、触媒層の劣化を抑制することは、燃料電池の耐久性を高める上で重要な課題となっている。
触媒層の劣化を促進する要因として、触媒層上で生じる酸化還元反応の繰り返しが挙げられる。例えば、車両の加減速に伴い燃料電池に要求される出力電力が変動すると、燃料電池の運転状態はアイドル運転と発電運転との間で変化し、それに伴い単セルの電圧(以下、セル電圧という)は、アイドル運転時の高電圧域と発電運転時の低電圧域との間で変動する。このようなセル電圧の増加及び低下に伴って触媒層上では酸化還元反応が繰り返され、これにより特に空気極側の触媒層の白金粒子はオストワルド成長による凝集や白金溶出によって発電反応比面積が減少し、これらの現象が触媒層の劣化を進行させる要因となる。
【0004】
このような不具合への対策として、例えば特許文献1に記載の技術では、セル電圧が所定範囲(例えば0.6〜0.9V)にあるときに触媒層上で生じる酸化還元反応が白金凝集・溶出の要因になっていることに着目し、燃料電池の負荷変動が検出されたときにセル電圧を検出し、そのセル電圧が所定範囲にある場合には、燃料極に供給する水素ガスや空気極に供給する空気の湿度を低下させて酸化還元反応の抑制を図っている。湿度低下の手法としては、例えば加湿器によって行われる水素ガスや空気の加湿量を抑制することで湿度を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−179749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、触媒層の白金凝集・溶出の要因になり得る酸化還元反応は燃料電池の種々の運転状態で発生し、その運転状態に応じて、例えば酸化還元反応の抑制のために要求される湿度の低下幅や湿度低下の応答性等が相違し、必然的に湿度を低下させる最適な手法も異なる。
このため特許文献1の技術のように、セル電圧が所定範囲にあることを条件として湿度低下のために単一の手法(加湿器による加湿量の抑制等)を適用するだけでは、燃料電池の運転状態に合致した最適な湿度低下を実現できない。結果として、例えば湿度の低下幅が不足した場合には酸化還元反応を十分に抑制できなくなり、また、湿度低下の応答性が悪い場合には発生直後の酸化還元反応を迅速に抑制できなくなることから、白金凝集・溶出に起因する触媒層の劣化を確実に防止できるとは言い難かった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料電池の運転状態に合致した最適な手法により水素ガスや空気を湿度低下させて酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料電池システムは、触媒層を有する燃料極及び空気極を備え、前記燃料極に燃料ガスを供給すると共に前記空気極に空気を供給して発電する燃料電池において、前記燃料電池の出力電力に応じて変動する前記燃料電池の電圧を検出する電圧検出手段と、前記燃料電池の稼動状態に応じて変化する複数の電圧状態に対応して選択される複数の湿度低下手法から現在の前記燃料電池の電圧状態に対応する湿度低下手法を選択して湿度低下を実行する湿度低下手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
このように構成した燃料電池システムによれば、燃料電池の稼動状態に応じて変化する複数の電圧状態に対応して選択される複数の湿度低下手法から現在の電圧状態に対応する湿度低下手法が選択され、その湿度低下手法の実行により湿度低下が達成される。電圧状態に応じて湿度低下のための最適な制御内容は相違するが、電圧状態に対応する湿度低下手法が選択されるため、電圧(ひいては燃料電池の運転状態)に合致した最適な制御内容により燃料ガスや空気の湿度が低下され、燃料極や空気極の触媒層上での酸化還元反応を抑制可能となる。
【0010】
その他の態様として、前記複数の電圧状態として、前記電圧が低下方向に変化する第1状態、前記電圧が所定値以上となる第2状態、前記電圧が増加方向に変化する第3状態の内、少なくも2つ以上の状態を有すると共に、該2つ以上の状態のそれぞれに対応した前記湿度低下手法が予め設定され、前記湿度低下手段が、前記複数の電圧状態の内何れかの状態が発生したときに湿度低下を要すると判定し、該発生した状態に対応する湿度低下手法を選択して実行することが好ましい。
【0011】
この態様によれば、電圧が低下方向に変化する第1状態、電圧が所定値以上となる第2状態、電圧が増加方向に変化する第3状態の内、少なくとも2つ以上の状態に対応して湿度低下手法が予め設定され、これらの複数の電圧状態の内何れかの状態が発生したときに、湿度低下を要すると判定されて対応する湿度低下手法が選択・実行される。
その他の態様として、前記湿度低下手段が、前記電圧が低下方向に変化した場合には低下率が大であるほど、前記電圧が所定値以上の場合にはアイドル相当値に接近するほど、前記電圧が増加方向に変化した場合には増加率が大であるほど、それぞれ目標湿度をより低下側に設定し、該目標湿度に基づき前記湿度低下手法を実行することが好ましい。
【0012】
この態様によれば、電圧の低下率が大であるほど、電圧がアイドル運転相当値に接近するほど、電圧の増加率が大であるほど、それぞれ触媒層上での酸化還元反応に起因する白金凝集・溶出の可能性が高まるが、それに応じて目標湿度が低下側に設定されることから酸化還元反応をより確実に抑制可能となる。
その他の態様として、前記湿度低下手段が、湿度低下を要しない場合の通常制御時の湿度を前記目標湿度の上限とし、前記電圧が低下方向に変化した場合に前記目標湿度の下限を最も低くし、前記電圧が増加方向に変化した場合には前記目標湿度の下限を最も高くし、該上限と下限との間で目標湿度を設定することが好ましい。
【0013】
この態様によれば、触媒層上での酸化還元反応に起因する白金凝集・溶出の可能性は、電圧が低下方向に変化した場合が最も高いことから湿度低下の必要性も最も高くなるが、それに応じて目標湿度の下限が最も低くされることから、十分な湿度低下により触媒層上での酸化還元反応がより確実に抑制される。また、白金凝集・溶出の可能性は、電圧が増加方向に変化した場合が最も低いことから湿度低下の必要性も最も低くなるが、それに応じて目標湿度の下限が最も高くされることから、過剰な湿度低下による燃料電池の効率低下が未然に防止される。
【0014】
その他の態様として、前記複数の湿度低下手法が、湿度低下を目的としたセル温度の上昇制御、無加湿ガスの比率増加制御、セル圧力の低下制御、ガス流量の増加制御の内の互いに異なる何れかの制御内容が設定されていることが好ましい。
この態様によれば、複数の湿度低下手法として互いに異なる制御内容が設定され、現在の電圧に対応する湿度低下手法の制御内容により湿度低下がなされる。
【0015】
その他の態様として、前記複数の湿度低下手法が、湿度低下を目的としたセル温度の上昇制御、無加湿ガスの比率増加制御、セル圧力の低下制御、ガス流量の増加制御の内の同一の制御内容が設定されると共に、該設定された制御内容に適用する制御量を異にすることが好ましい。
この態様によれば、複数の湿度低下手法として同一の制御内容が設定されると共に、制御内容に適用する制御量が異にされ、現在の電圧に対応する制御量により湿度低下手法の制御内容が実行されて湿度低下がなされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池の運転状態に合致した最適な手法により水素ガスや空気を湿度低下させて酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の燃料電池システムを搭載した電動車両を示す全体構成図である。
図2】実施形態の燃料電池システムを示す構成図である。
図3】燃料電池の運転状態がアイドル運転と発電運転との間で変化した状況を示すタイムチャートである。
図4】FC-ECUが実行する湿度低下ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を電動車両に搭載される燃料電池システムに具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の燃料電池システムを搭載した電動車両を示す全体構成図である。
本実施形態の電動車両1は、モータ2を走行用動力源とすると共に、その電源として2次電池3及び燃料電池システム4を備えたハイブリッド燃料電池車両である。周知のように2次電池3は、化学反応により直流電力を充放電可能な電池であり、燃料電池システム4は、後述する燃料電池10での水素ガスを用いた電気化学反応により発電するシステムである。基本的にモータ2は2次電池3からの電力により駆動され、燃料電池システム4は主に2次電池3を充電するレンジエクステンダの機能を果たすと共に、その出力電力が補助的にモータ2の駆動にも利用される。
【0019】
モータ2にはインバータ5を介して2次電池3が接続され、インバータ5は直流・交流間の変換機能を奏する。即ち、モータ2の力行制御時には、2次電池3や燃料電池システム4からの直流電力がインバータ5により三相交流電力に変換されてモータ2を駆動し、モータ2の回生制御時には、モータ2からの三相交流電力がインバータ5により直流電力に変換されて2次電池3に充電される。
【0020】
2次電池3には、ダイオード6を介して外部電源を利用した充電用のAC-DCコンバータ7が接続されている。AC-DCコンバータ7の電源プラグ8を外部電源に接続すると、外部電源からの交流電力がAC-DCコンバータ7により直流電力に変換されて2次電池3に充電され、その際に2次電池3側からAC-DCコンバータ7への電流の逆流がダイオード6により阻止される。
【0021】
一方、2次電池3及びインバータ5には燃料電池システム4が接続されており、その構成を図2に示す。
燃料電池システム4は、燃料電池10、水素タンク11、エアブロアー12、加湿装置13、DC-DCコンバータ14等から構成される。本実施形態の燃料電池10は固体高分子型燃料電池であり、所期の電圧が得られるように多数の単セルを積層して直列接続してなる。それぞれの単セルは、固体高分子膜10a(電解質)の両側に触媒として白金(Pt)を担持した燃料極(負極)10b及び空気極(正極)10cを貼り合わせてMEA(Membrane Electrode Assembly:膜/電極接合体)を構成し、そのMEAを多孔質のガス拡散層及びガス流路を有するセパレータにより挟持してなる。このような構成は典型的な燃料電池10の構成に倣うため、図2では図示を省略する。
【0022】
燃料電池10の燃料極10bの上流側には燃料ガスである水素ガスを供給する水素供給ライン15が接続され、水素供給ライン15の上流側は高圧の水素ガスを貯蔵する水素タンク11に接続されている。水素タンク11の吐出口近傍には水素ガスを供給・停止するための元弁17が設けられ、元弁17の下流側で水素供給ライン15は加湿水素ライン15aと無加湿水素ライン15bとに分岐されている。加湿水素ライン15a上には流量調整弁18及び加湿装置13が設けられ、加湿水素ライン15aを流通する水素ガスが加湿装置13により加湿されて加湿水素ガスが生成されるようになっている。
【0023】
無加湿水素ライン15b上には流量調整弁20が設けられ、この無加湿水素ライン15bは加湿装置13を迂回することで水素タンク11から吐出されたままの低湿度の水素ガスが無加湿水素ガスとして流通している。加湿水素ライン15aと無加湿水素ライン15bとは下流側で互いに合流して燃料電池10の燃料極10bに接続されている。このため、それぞれの流量調整弁18,20の開度に対応して加湿水素ライン15a及び無加湿水素ライン15bのガス流通量が変化し、それに応じて燃料極10bに供給される水素ガスの湿度を加湿水素ガスと無加湿水素ガスとの間で任意に調整可能となっている。
【0024】
燃料電池10の燃料極10bには水素戻しライン21の一端が接続され、水素戻しライン21の他端は水素供給ライン15の元弁17の下流側に接続されている。水素戻しライン21上には背圧弁22及びポンプ23が設けられ、背圧弁22の開閉に応じて燃料極10bから水素ガスが適宜排出されることで燃料極10bが所期の圧力に保たれると共に、背圧弁22から排出された水素ガスがポンプ23により水素戻しライン21を経て水素供給ライン15側に戻されるようになっている。
【0025】
一方、燃料電池10の空気極10cの上流側には空気を供給する空気供給ライン25が接続され、空気供給ライン25の上流側は大気を圧縮・供給するエアブロアー12に接続されている。エアブロアー12の吐出口近傍には空気を供給・停止するための元弁27が設けられ、元弁27の下流側で空気供給ライン25は加湿空気ライン25aと無加湿空気ライン25bとに分岐されている。加湿空気ライン25a上には流量調整弁28及び上記した加湿装置13が設けられ、加湿空気ライン25aを流通する空気が加湿装置13により加湿されて加湿空気が生成されるようになっている。
【0026】
無加湿空気ライン25b上には流量調整弁29が設けられ、この無加湿空気ライン25bは加湿装置13を迂回することでエアブロアー12から吐出されたままの低湿度の空気が無加湿空気として流通している。加湿空気ライン25aと無加湿空気ライン25bとは下流側で互いに合流して燃料電池10の空気極10cに接続されている。このため、それぞれの流量調整弁28,29の開度に対応して加湿空気ライン25a及び無加湿空気ライン25bでの空気の流量が変化し、それに応じて空気極10cに供給される空気の湿度を加湿空気と無加湿空気との間で任意に調整可能となっている。
【0027】
燃料電池10の燃料極10bには空気戻しライン30の一端が接続され、空気戻しライン30の他端はエアブロアー12の吸込口に接続されている。空気戻しライン30上には背圧弁31が設けられ、背圧弁31の開閉に応じて空気極10cから空気が適宜排出されることで空気極10cが所期の圧力に保たれると共に、背圧弁31から排出された空気が空気戻しライン30を経てエアブロアー12側に戻されるようになっている。
【0028】
なお、燃料極10bで発電に利用されなかった残留水素ガスは外部に排出または水素供給ライン15側に回収され、同じく空気極10cで発電に利用されなかった空気は外部に排出されるが、その構成は本発明の要旨とは関係ないため説明及び図示を省略する。
一方、燃料電池10は一対の冷却ライン32,33を介してラジエータ34と接続され、一方の冷却ライン32にはウォータポンプ35が介装されている。結果として燃料電池10、一方の冷却ライン32、ラジエータ34、他方の冷却ライン33からなる環状の冷却回路36が形成され、内部に充填された冷却水がウォータポンプ35の駆動により循環する。
【0029】
燃料電池10の出力端子にはDC-DCコンバータ14が接続され、DC-DCコンバータ14はダイオード37を介して2次電池3及びインバータ5に接続されている。これにより燃料電池10の出力電力が2次電池3の充電やモータ2の駆動に利用されると共に、その際に2次電池3やモータ2から燃料電池10への電流の逆流がダイオード37により阻止される。
【0030】
以上のように構成された燃料電池10の運転中には、水素供給ライン15を経て燃料極10bに供給された水素が触媒作用により水素イオンと電子に分解され、水素イオンは固体高分子膜10aを透過して空気極10cに到達する。固体高分子膜10aを透過不能な電子は図示しない外部回路を経て空気極10cに到達し、これにより燃料極10bをマイナス、空気極10cをプラスとして直流電圧が発生する。空気極10cでは、空気供給ライン25を経て供給された空気、固体高分子膜10aを透過した水素イオン、及び外部回路を経てきた電子が反応して水が生成される。
【0031】
このような燃料電池10の運転のために、FC-ECU40により燃料電池システム4を構成する各機器が制御される。FC-ECU40の入力側には、燃料電池10を構成する単セルの電圧(セル電圧)を検出する電圧センサ41(セル電圧検出手段)、燃料極10bの水素ガスの湿度Hhを検出する水素湿度センサ42、空気極10cの空気の湿度Hoを検出する空気湿度センサ43が接続されると共に、図示はしないが、燃料極10b及び空気極10cの圧力(以下、セル圧力という)を検出する圧力センサ、燃料極10b及び空気極10cの温度(以下、セル温度という)を検出する温度センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0032】
またFC-ECU40の出力側には、水素供給ライン15及び空気供給ライン25の各元弁17,27及び各流量調整弁18,20,28,29、エアブロアー12、加湿装置13、水素戻しライン21の背圧弁22及びポンプ23、空気戻しライン30の背圧弁31、及びDC-DCコンバータ14等のデバイス類が接続されている。
例えばFC-ECU40は、水素タンク11及びエアブロアー12の元弁17,27を共に所定の開度で開弁し、水素タンク11から吐出される水素ガスを水素供給ライン15を経て燃料極10bに供給すると共に、エアブロアー12から吐出される空気を空気供給ライン25を経て空気極10cに供給する。
【0033】
また、燃料極10bに供給される水素ガス及び空気極10cに供給される空気を所期の湿度に調整するために、FC-ECU40は以下の制御を実行する。まず、加湿装置13の制御により加湿水素ライン15aを流通する加湿水素ガスの湿度を調整し、同様に、加湿装置13の制御により加湿空気ライン25aを流通する加湿空気ガスの湿度を調整する。そして、加湿水素ライン15a及び無加湿水素ライン15bの流量調整弁18,20を開度制御して、加湿水素ガスと無加湿水素ガスとを所定比率で混合することによって燃料極10bに供給される水素ガスを所期の湿度に調整する。同様に、加湿空気ライン25a及び無加湿空気ライン25bの流量調整弁28,29を開度制御して、加湿空気と無加湿空気とを所定比率で混合することによって空気極10cに供給される空気を所期の湿度に調整する。
【0034】
またFC-ECU40は、背圧弁22,31の開度制御により燃料極10bの水素ガス及び空気極10cの空気を適宜排出し、これにより燃料電池10を所期のセル圧力に保つと共に、水素についてはポンプ23を駆動して水素戻しライン21を経て水素供給ライン15側に戻し、空気については空気極10cと大気圧との圧力差を利用して空気戻しライン30経てエアブロアー12側に戻す。
【0035】
またFC-ECU40は、ウォータポンプ35を駆動して冷却回路36内で冷却水を循環させ、燃料電池10で発生した熱をラジエータ34から大気中に放出することにより燃料電池10を所期のセル温度に保つ。
一方、インバータ5にはモータECU45が接続され、このモータECU45によりモータ2の駆動制御等が実行される。例えばモータECU45はインバータ5を駆動制御し、2次電池3や燃料電池10から供給される出力電力によりモータ2を駆動する一方、モータ2による回生電力を2次電池3に充電する。
【0036】
また、AC-DCコンバータ7にはバッテリECU49が接続され、外部電源への電源プラグ8の接続時には、このバッテリECU49によりAC-DCコンバータ7が制御されて2次電池3が充電される。
以上のFC-ECU40、モータECU45及びバッテリECU49は、上位ユニットに相当する車両ECU46に接続されており、各ECU40,45,46,49は、それぞれ入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。
【0037】
車両ECU46は、電動車両1の総合的な制御を行うための制御ユニットであり、この車両ECU46からの指令を受けた下位の各ECU40,45,49により、上記のような燃料電池システム4の運転制御、モータ2の駆動制御や2次電池3の充電制御等が実行される。
そのために車両ECU46には、アクセルセンサ47からのアクセル開度等の各種検出情報が入力されると共に、バッテリECU49を介してバッテリモニタリングユニット48から2次電池3のSOC(充電率:State Of Charge)や温度TBAT等が入力され、FC-ECU40を介して燃料電池システム4の運転状態が入力され、モータECU45を介してモータ2の運転状態が入力される。
【0038】
そして車両ECU46は、アクセルセンサ47により検出されたアクセル開度等に基づき電動車両1の走行に必要な要求出力を算出し、その要求出力を達成するようにモータECU45に指令信号を出力する。この指令信号に基づき、モータECU45によりモータ2が駆動されて要求トルクが達成される。
また車両ECU46は、2次電池3のSOCや車両走行のための要求出力に基づき燃料電池システム4の出力電力を算出し、その出力電力を達成するようにFC-ECU40に指令信号を出力する。例えば、2次電池3のSOCが所定値未満まで低下して充電を要する場合、或いは2次電池3からの電力供給のみではモータ2が要求出力を達成不能と判定した場合、車両ECU46は燃料電池10の出力電力を増加側に設定する。
【0039】
FC-ECU40側では、出力電力の達成のために燃料極10bに供給すべき水素ガス量及び空気極10cに供給すべき空気量を算出し、各元弁17,27及び各流量調整弁18,20,28,29の開度制御により水素ガス及び空気の供給量を調整して、要求された出力電力を達成する。例えば上記のように出力電力が増加側に制御された場合には、水素ガス量及び空気量が増加側に調整されて出力電力が増加され、その増加分が2次電池3の充電やモータ2の駆動に利用される。無論、このような燃料電池10の出力電力の制御に対応して、水素ガスや空気の湿度、セル圧力やセル温度等に関しても最適制御する。
【0040】
以上のようなFC-ECU40による出力電力の制御により、例えば図3のタイムチャートに示すように、燃料電池10の運転状態はアイドル運転と発電運転との間で変化する。アイドル運転時の燃料電池10は、自己の運転に要する電力(エアブロアー12やウォータポンプ35等の消費電力)相当だけを発電しており、このときのセル電圧Vは相対的に高電圧域(0.9〜1.0V)に保たれている。そして、このアイドル運転から出力電力が増加して発電運転に移行すると、燃料電池10の内部抵抗に起因してセル電圧Vは低下して低電圧域(0.5〜0.8V)に切り換えられる。
【0041】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、触媒層の白金凝集・溶出の要因になり得る酸化還元反応を抑制するために、単一の湿度低下の手法を適用する特許文献1の技術では、燃料電池10の運転状態に合致した最適な湿度低下を実現できずに触媒層の劣化を確実に防止できないという問題がある。
このような点を鑑みて本発明者は、燃料電池10の運転状態毎に予め湿度低下の達成に最適な手法(以下、湿度低下手法という)をそれぞれ設定し、現在の燃料電池10の運転状態に対応する湿度低下手法を選択して湿度低下する対策を見出した。以下、この知見の下に実施される触媒層の劣化防止について説明する。
【0042】
まず、湿度低下を目的として利用可能な制御内容として、本実施形態では以下の4種に着目した。但し、これらの制御内容に限るものではなく、任意に追加或いは削除してもよい。
燃料電池10を冷却する冷却回路36のウォータポンプ35の回転速度を低下または停止させ、冷却水の流量を低下または流量0とする。これにより燃料電池10のセル温度が上昇して、燃料極10bの水素ガスや空気極10cの空気の湿度が低下する(本発明のセル温度の上昇制御であり、以下、制御内容1という)。
【0043】
また、燃料極10bに供給される水素ガスや空気極10cに供給される空気の湿度を低下させる。湿度低下の対象は水素ガスでもよいし、空気でもよいし、水素ガス及び空気の双方でもよい。具体的には、加湿装置13による水素ガスや空気の加湿を抑制するか、或いは流量調整弁18,20,28,29の開度制御により、加湿水素ガスに対する無加湿水素ガスの混合比率、加湿空気に対する無加湿空気の混合比率を増加させる(本発明の無加湿ガスの比率増加制御であり、以下、制御内容2という)。
【0044】
また、背圧弁22,31を開側に制御して燃料電池10のセル圧力を低下させる。圧力低下に伴い燃料極10bの水素ガスや空気極10cの空気の湿度が低下する(本発明のセル圧力の低下制御であり、以下、制御内容3という)。圧力低下の対象は燃料極10bでもよいし、空気極10cでもよいし、燃料極10b及び空気極10cの双方でもよい。
また、水素ガスに関しては、元弁17の開度を増加させて燃料極10bへの水素ガスの供給量を増加させる。空気に関しては、エアブロアー12の回転速度を増加させて空気極10cへの空気の供給量を増加させる。これらの処理は何れか一方でもよいし、双方の処理を実行してもよい。多量のガス流入により燃料極10bの水素ガスや空気極10cの空気が乾燥し、結果として湿度が低下する。なお、この現象を生起させるには、流入する水素ガスや空気がある程度低湿度である必要がある(本発明のガス流量の増加制御であり、以下、制御内容4という)。
【0045】
本実施形態では、燃料電池10の運転状態毎に最適な湿度低下手法を実行すべく、以上の制御内容1〜4を適宜組み合わせて予め3種の湿度低下手法b〜dを設定しているが、その説明に先立ち、燃料電池10の運転状態の区分について述べる。
まず、図3に示したように燃料電池10の運転状態はセル電圧Vと相関し、運転状態をセル電圧Vで表すと4種の状況に大別できる。即ち、燃料電池10が発電運転中でセル電圧Vが低電圧域に保たれている状況(以下、低電圧時Aという)、発電運転からアイドル運転への移行中でセル電圧Vが増加方向に変化している状況(以下、電圧増加時Bという)、アイドル運転中でセル電圧Vが高電圧域(アイドル相当値)に保たれている状況(以下、高電圧時Cという)、アイドル運転から発電運転への移行中でセル電圧Vが低下方向に変化している状況(以下、電圧低下時Dという)である。
【0046】
そこで本発明者は、これらの4種のセル電圧Vの状況において水素ガスや空気の湿度低下の要否、及び湿度低下を要する場合には湿度低下手法に要求される条件について考察した。
まず各セル電圧Vの状況(A〜D)において、触媒層上でのPt反応及びPt反応による触媒層の劣化状態を下表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
セル電圧Vの低電圧時Aでは、触媒層上でPtの還元反応が生起されるが、この還元反応は触媒層を劣化させる要因にはならない。よって、セル電圧Vが低電圧域に長時間とどまっても(発電継続を意味する)触媒層の劣化は進行せず、劣化防止のための水素ガスや空気の湿度低下が不要と見なせることから、このセル電圧Vの状況に対応する湿度低下手法は設定されない。
【0049】
セル電圧Vの電圧増加時B(本発明の第3状態に相当)では、触媒層上でのPtの反応は還元から酸化に変化し、このときの反応状態の変化は僅かではあるが触媒層を劣化させる要因になり得る共に、その劣化への影響度はセル電圧Vの増加率が大である場合ほど高まる。よって、劣化防止のためには水素ガスや空気の湿度を多少なりとも低下させることが望ましい。また、低電圧時Aから電圧増加時Bへの移行は、例えば運転者の急激なアクセルオフ等により発生するため、電圧増加時Bへの移行に伴って迅速に湿度低下させる必要があり、湿度低下に良好な応答性が要求される。
【0050】
以上の電圧増加時Bにおいて湿度低下手法(以下、bを付して他と区別する)に要求される条件を鑑みて、図4のステップS9に示すように、セル電圧Vの増加率(変化率V’)から目標湿度を算出するマップを設定しており、当該マップに基づき、湿度低下手法bを実行する際の目標湿度が設定される。図に示すように目標湿度は、湿度低下を要しない場合の通常制御時の湿度を上限Hmaxとし、セル電圧Vの増加率が大であるほど低下側に設定されるが、その下限Hminは、後述する他の湿度低下手法c,dのマップ特性に比較すると最も高く設定されている。このため、湿度低下手法bによる実施される湿度低下は相対的に軽度のものとなる。
【0051】
また、良好な応答性を実現するため、この湿度低下手法bには上記した全ての制御内容1〜4が組み合わされている。これによりセル温度の上昇制御、無加湿ガスの比率増加制御、セル圧力の低下制御、及びガス流量の増加制御が一斉に実行され、それぞれが湿度低下方向に作用することで良好な応答性が実現される。また、このように迅速な湿度低下が要求されるもののマップに基づく目標湿度の低下幅は少ないため、各制御に適用される制御量としては、例えば後述する湿度低下手法dよりも相対的に小さな値が適用される。
【0052】
セル電圧Vの高電圧時C(本発明の第2状態に相当)では、触媒層上でPtの酸化反応が生起され、アイドル運転が継続されるほど酸化劣化が進行すると共に、この劣化現象は高電圧域近傍の低電圧側でも生じ、高電圧域で最も顕著となる。よって、劣化防止のために水素ガスや空気の湿度を低下させることが、上記した電圧増加時Bよりも強く要求される。その反面、このときの燃料電池10は定常的なアイドル運転中のため、湿度低下に電圧増加時Bほどの応答性は要求されない。また、アイドル運転のためにガス流量を低下させていることから、逆にガス流量を増加させる制御内容4は実行し難い。
【0053】
以上の高電圧時Cにおいて湿度低下手法(以下、cを付す)に要求される条件を鑑みて、図4のステップS7に示すようにマップを設定している。目標湿度は、通常制御時の湿度を上限Hmaxとし、所定値V0以上の領域において高電圧域に接近するほど低下側に設定され、その下限Hminは、上記した湿度低下手法bのマップ特性に比較すると低められている。所定値V0は、無視できない触媒層の劣化現象が生じる下限のセル電圧Vとして予め設定された値である。このため湿度低下手法cによる実施される湿度低下は、湿度低下手法bに比較してより大幅なものとなる。
【0054】
また、それ程の応答性は要求されないため、この湿度低下手法cには制御内容1,2が組み合わされ、これによりセル温度の上昇制御、及び無加湿ガスの比率増加制御が実行される。各制御に適用される制御量としては、マップに基づく湿度の低下幅が比較的大きいことから、湿度低下手法bよりも大きな値が適用される。
セル電圧Vの電圧低下時D(本発明の第1状態に相当)では、触媒層上でのPtの反応は酸化から還元に変化し、このときの反応状態の変化は触媒層を劣化させる重篤な要因になる共に、その劣化への影響度はセル電圧Vの低下率が大である場合ほど高まる。よって、劣化防止のためには水素ガスや空気の湿度を大幅に低下させることが、他の運転状態に比較して最も強く要求される。また、高電圧時Cから電圧低下時Dへの移行は、例えば運転者の急激なアクセルオン等により発生するため、電圧低下時Dへの移行に伴って迅速に湿度低下させる必要があり、湿度低下に良好な応答性が要求される。
【0055】
以上の電圧低下時Dにおいて湿度低下手法(以下、dを付す)に要求される条件を鑑みて、図4のステップS5に示すようにマップを設定している。目標湿度は、通常制御時の湿度を上限Hmaxとし、セル電圧Vの低下率(変化率|V’|)が大であるほど低下側に設定されるが、その下限Hminは、他の湿度低下手法b,cのマップ特性に比較すると最も低く設定されている。このため、湿度低下手法dによる実施される湿度低下は、他の湿度低下手法b,cに比較して最も大幅なものとなる。
【0056】
また、良好な応答性を実現するため、この湿度低下手法dには上記した全ての制御内容1〜4が組み合わされると共に、マップに基づく湿度の低下幅が大きいことを受けて、各制御に大きな制御量が適用される。
なお、以上の各湿度低下手法b〜dに関する説明から明らかなように、湿度低下手法cと湿度低下手法b,dとは互いに異なる制御内容が設定されていることから、本願の請求項5の複数の湿度低下手法の関係に相当し、湿度低下手法bと湿度低下手法dとは互いに同一の制御内容が設定されると共に、制御内容に適用する制御量を異にしていることから、本願の請求項6の複数の湿度低下手法の関係に相当する。
【0057】
次に、以上のような各種設定に基づき、FC-ECU40により実行される湿度低下処理について説明する。この湿度低下処理を実行するときのFC-ECU40が、本発明の湿度低下手段として機能する。
図4はFC-ECU40が実行する湿度低下ルーチンを示すフローチャートであり、FC-ECU40は燃料電池10の運転中に当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
【0058】
まず、ステップS1でセル電圧Vを検出する。このときのセル電圧Vは全ての単セルの電圧を平均化した値でもよいし、特定の単セルの電圧でもよい。次いでステップS2で、セル電圧Vの単位時間当たりの変化率V’が負であるか否か、即ちセル電圧Vが低下中の電圧低下時Dであるか否かを判定する。
ステップS2の判定がNo(否定)のときにはステップS3に移行し、セル電圧Vが所定値V0以上であるか否か、即ちセル電圧Vが高電圧域に保たれる高電圧時Cを含め、触媒層の劣化現象が生じるような高いセル電圧Vであるか否かを判定する。ステップS3の判定がNoのときにはステップS4に移行し、セル電圧Vの変化率V’が正であるか否か、即ちセル電圧Vが増加中の電圧増加時Bであるか否かを判定し、Noのときには一旦ルーチンを終了する。
【0059】
また、ステップS2の判定がYes(肯定)のときにはステップS5に移行し、図示のマップに基づきセル電圧Vの変化率|V’|(低下率)から目標湿度を算出する。そして、続くステップS6で制御量を大として湿度低下手法d(制御内容1〜4)を実行し、その後にルーチンを終了する。
また、ステップS3の判定がYesのときにはステップS7に移行し、図示のマップに基づきセル電圧Vから目標湿度を算出する。続くステップS8では、制御量を大として湿度低下手法c(制御内容1,2)を実行する。
【0060】
また、ステップS4の判定がYesのときにはステップS9に移行し、図示のマップに基づきセル電圧Vの変化率V’(増加率V’)から目標湿度を算出する。続くステップS10では、制御量を小として湿度低下手法c(制御内容1〜4)を実行する。
以上のように本実施形態の燃料電池システム4によれば、触媒層の劣化の可能性がある燃料電池10の運転状態、即ちセル電圧Vの電圧増加時B、高電圧時C及び電圧低下時Dの各運転状態において、触媒層の劣化防止のための湿度低下に要求される条件(湿度の低下幅や応答性等)を考慮した上で、予め各運転状態に対し制御量を含めて最適な制御内容となるようにそれぞれ湿度低下手法b〜dを設定し、燃料電池10の運転状態が切り換わる毎に、その運転状態に対応する湿度低下手法b〜dを選択・実行して湿度低下を達成している。
【0061】
従って、常に燃料電池10の運転状態に合致した最適な湿度低下手法b〜dにより水素ガスや空気の湿度が低下されることから、燃料極10bや空気極10cの触媒層上での酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる。
また、セル電圧Vの電圧増加時Bには、その増加率が大であるほど目標湿度を低下側に設定し、高電圧時Cには、セル電圧Vが高電圧域に接近するほど目標湿度を低下側に設定し、電圧低下時Dには、セル電圧Vの低下率が大であるほど目標湿度を低下側に設定している。セル電圧Vの低下率が大であるほど、セル電圧Vが高電圧域に接近するほど、セル電圧Vの増加率が大であるほど、それぞれ触媒層上での酸化還元反応に起因する白金凝集・溶出の可能性が高まるが、それに応じて目標湿度が低下側に設定されることから酸化還元反応をより確実に抑制することができる。
【0062】
さらに、各運転状態(B〜D)での触媒層の白金凝集・溶出の可能性に基づき、湿度低下の必要性が極めて高い電圧低下時Dには目標湿度の下限を最も低くし、湿度低下の必要性が低い電圧増加時Bには目標湿度の下限を最も高くしている。電圧低下時Dには十分な湿度低下により触媒層上での酸化還元反応をより確実に抑制でき、また電圧増加時Bには過剰な湿度低下による燃料電池10の効率低下を未然に防止することができる。
【0063】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電動車両1に搭載される燃料電池システム4に具体化したが、これに限るものではなく、例えば定置型の燃料電池システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
4 燃料電池システム
10 燃料電池
10b 燃料極
10c 空気極
41 電圧センサ(セル電圧検出手段)
40 FC-ECU(湿度低下手段)
図1
図2
図3
図4