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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224577(P2017-224577A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】車両用燃料電池の電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20171124BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20171124BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20171124BHJP
【FI】
   H01M8/04 P
   B60L11/18 G
   H01M8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-121031(P2016-121031)
(22)【出願日】2016年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】平光 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中根 一芳
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】田代 圭介
【テーマコード(参考)】
5H026
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H026AA06
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD02
5H125EE27
5H125EE42
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB91
5H127DB99
5H127DC45
5H127DC46
5H127FF04
5H127FF12
(57)【要約】
【課題】アクセル踏込み操作時の要求出力の増加に呼応して燃料電池の出力電力を増加させる際に、燃料極や空気極の触媒層上の酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止できる車両用燃料電池の電力制御装置を提供する。
【解決手段】2次電池3のSOCがSOC判定値S未満の状態でアクセル踏込み操作が行われた場合(S1がYes)、アクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1以上のときには、燃料電池4aの出力電力を通常通り増加させる一方(S2−3)、アクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1未満のときには、出力電力の増加を通常時よりも抑制する(S2−4)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の出力電力をモータに供給して走行し、アクセル踏込み操作に応じて増加する要求出力に対応すべく前記燃料電池の出力電力を増加させる電動車両において、
前記アクセル踏込み操作時のアクセル開度が予め設定された第1のアクセル判定値未満のときに前記燃料電池の出力電力の増加を抑制する出力電力抑制手段を備えた
ことを特徴とする車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項2】
前記燃料電池とは別に前記モータに電力を供給する充放電手段の充電率が低下したときに、前記燃料電池の出力電力を増加させて前記充放電手段に充電する充電制御手段をさらに備え、
前記出力電力抑制手段は、前記充放電手段の充電率が予め設定された充電率判定値未満であっても、前記アクセル開度が前記第1のアクセル判定値未満のときには前記燃料電池の出力電力の増加を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項3】
前記第1のアクセル判定値は、前記充放電手段の充電率の増加に応じて増加側に設定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項4】
前記出力電力抑制手段は、前記充放電手段の充電率が前記充電率判定値以上で且つ前記アクセル開度が前記第1のアクセル判定値よりも大きな値に設定された第2のアクセル判定値未満のときに前記燃料電池の出力電力の増加を中止する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項5】
前記出力電力抑制手段は、前記アクセル踏込み操作の開始からの経過時間に応じて前記燃料電池の出力電力に対する抑制を次第に緩和する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項6】
前記出力電力抑制手段は、前記第1のアクセル判定値未満の領域において前記アクセル開度が大であるほど、前記燃料電池の出力電力の増加に対する抑制を早期に緩和する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【請求項7】
前記充電率判定値を任意に入力可能な充電率設定部をさらに備えた
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の車両用燃料電池の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の出力電力をモータに供給して走行し、アクセルの踏込み操作時には、それに応じて増加する要求電力に対応すべく燃料電池の出力電力を増加させる車両用燃料電池の電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりに伴い、化石燃料に頼ることのないクリーンエネルギー発電の一つとして燃料電池システムが注目されている。例えば車両に搭載される燃料電池システムには固体高分子型燃料電池が用いられており、固体高分子膜の両側に触媒として白金(Pt)を担持した燃料極及び空気極を貼り合わせてMEAを構成し、そのMEAをガス拡散層及びセパレータにより挟持した単セルを多数積層して製作されている。燃料極には湿度調整した燃料ガスが供給され、空気極には湿度調整した空気が供給され、これにより燃料極及び空気極の触媒層で発電反応が進行して燃料電池の発電が開始される。
【0003】
このような燃料電池を搭載した燃料電池車両では、例えば特許文献1に記載の技術のように、運転者によるアクセル開度等に基づき燃料電池の出力電力が制御される。例えばアクセルの踏込み操作時には、車両走行に必要な要求出力が増加側に設定され、その要求出力をモータが2次電池からの電力供給のみでは達成不能な場合に、燃料電池の出力電力が増加側に制御されて電力不足分を補っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−143851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように燃料電池の発電反応は燃料極及び空気極の触媒層で進行するため、触媒層の劣化を抑制することは、燃料電池の耐久性を高める上で重要な課題となっている。
触媒層の劣化を促進する要因として、触媒層上で生じる酸化還元反応の繰り返しが挙げられる。例えば、車両の加減速に伴い燃料電池に要求される出力電力が変動すると、燃料電池の運転状態はアイドル運転と発電運転との間で変化し、それに伴い単セルの電圧(以下、セル電圧という)は、アイドル運転時の高電圧域と発電運転時の低電圧域との間で変動する。このようなセル電圧の増加及び低下に伴って触媒層上では酸化還元反応が繰り返され、これにより特に空気極側の触媒層の白金粒子がオストワルド成長による凝集や白金溶出によって発電反応比面積が減少し、結果として触媒層の劣化を進行させてしまう。
【0006】
触媒層の劣化現象は、特にセル電圧の低下を伴うアイドル運転から発電運転への移行時に顕著に発生し、この状況は、上記特許文献1の技術が想定するアクセル踏込み操作時に相当する。しかしながら、特許文献1の技術によれば、要求出力に対する2次電池の不足電力分を補うべく無条件で燃料電池の出力電力を増加させているため、アクセル踏込み操作が行われる度に燃料電池は顕著な劣化現象が生じる運転状態を繰り返すことになる。よって特許文献1の技術は、このときの触媒層上での酸化還元反応を抑制する対策にはなり得なかった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アクセル踏込み操作時の要求出力の増加に呼応して燃料電池の出力電力を増加させる際に、燃料極や空気極の触媒層上の酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる車両用燃料電池の電力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用燃料電池の電力制御装置は、燃料電池の出力電力をモータに供給して走行し、アクセル踏込み操作に応じて増加する要求出力に対応すべく前記燃料電池の出力電力を増加させる電動車両において、前記アクセル踏込み操作時のアクセル開度が予め設定された第1のアクセル判定値未満のときに前記燃料電池の出力電力の増加を抑制する出力電力抑制手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
このように構成した車両用燃料電池の電力制御装置によれば、アクセル開度が第1のアクセル判定値未満の場合は、運転者の加速要求への応答の必要性が低いことから、燃料電池の出力電力の増加を抑制したとしてもドライバビリティは悪化しない。そして、出力電力の増加が抑制されることによりセル電圧の低下が緩慢になる(セル電圧の低下率が小さくなる)ため、セル電圧の低下による触媒層上での酸化還元反応が抑制される。
【0010】
その他の態様として、前記燃料電池とは別に前記モータに電力を供給する充放電手段の充電率が低下したときに、前記燃料電池の出力電力を増加させて前記充放電手段に充電する充電制御手段をさらに備え、前記出力電力抑制手段が、前記充放電手段の充電率が予め設定された充電率判定値未満であっても、前記アクセル開度が前記第1のアクセル判定値未満のときには前記燃料電池の出力電力の増加を抑制することが好ましい。
【0011】
この態様によれば、充放電手段の充電率が充電率判定値未満のときには早期充電が望ましいが、この場合であってもアクセル開度が第1のアクセル判定値未満で加速要求への応答の必要性が低いときには、出力電力の増加が抑制される。このため、より多くの場合に触媒層上での酸化還元反応を抑制可能となる。
その他の態様として、前記第1のアクセル判定値が、前記充放電手段の充電率の増加に応じて増加側に設定されることが好ましい。
【0012】
この態様によれば、充放電手段の充電率が高いほど、換言すると充放電手段を充電する必要性が低いほど、燃料電池の出力電力の増加が抑制され易くなり、充放電手段の充電率に応じて出力電力の増加抑制をよりきめ細かく実行可能となる。
その他の態様として、前記出力電力抑制手段が、前記充放電手段の充電率が前記充電率判定値以上で且つ前記アクセル開度が前記第1のアクセル判定値よりも大きな値に設定された第2のアクセル判定値未満のときに前記燃料電池の出力電力の増加を中止することが好ましい。
【0013】
この態様によれば、充電率が充電率判定値以上で且つアクセル開度が第2のアクセル判定値未満の場合には、出力電力の増加が中止されることにより燃料電池を停止することが可能になりセル電圧が低電圧域に保たれるため、一層確実に触媒層上での酸化還元反応が抑制される。
その他の態様として、前記出力電力抑制手段が、前記アクセル踏込み操作の開始からの経過時間に応じて前記燃料電池の出力電力に対する抑制を次第に緩和することが好ましい。
【0014】
この態様によれば、アクセル踏込み操作の開始からの経過時間に応じて出力電力に対する抑制が次第に緩和されることから、結果として出力電力の増加を抑制できると共に、アクセル踏込み操作が短時間で中止された場合には、増加後の最終的な出力電力も低められる。このため、一層確実に触媒層上での酸化還元反応を抑制可能となる。
その他の態様として、前記出力電力抑制手段が、前記第1のアクセル判定値未満の領域において前記アクセル開度が大であるほど、前記燃料電池の出力電力の増加に対する抑制を早期に緩和することが好ましい。
【0015】
この態様によれば、アクセル開度が大であるほど出力電力の増加に対する抑制が早期に緩和され、結果として出力電力が急速に増加する。このため、運転者の加速要求が高い場合には、出力電力が急速に増加して加速要求に応答可能となり、逆に加速要求が低い場合には、出力電力の増加が緩慢化して触媒層の劣化防止に貢献する。
その他の態様として、前記充電率判定値を任意に入力可能な充電率設定部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この態様によれば、充電率設定部により入力された充電率判定値が高いほど、燃料電池の出力電力の増加抑制の処理が実行される可能性が高まる。出力電力の増加が中止されると、充放電手段のみでモータを駆動するため電力消費が甚だしく充電率低下の要因になるが、出力電力の増加抑制の処理では、抑制されるとはいえ燃料電池の出力電力だけは充放電手段の電力が節減される。このため、より確実にユーザーの要望に沿った充放電手段の充電率を保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用燃料電池の電力制御装置によれば、アクセル踏込み操作時の要求出力の増加に呼応して燃料電池の出力電力を増加させる際に、燃料極や空気極の触媒層上の酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の燃料電池の電力制御装置を搭載した電動車両を示す全体構成図である。
図2】燃料電池の運転状態がアイドル運転と発電運転との間で変化した状況を示すタイムチャートである。
図3】車両ECUが実行する出力増加抑制ルーチンを示すフローチャートである。
図4】2次電池のSOC及びアクセル踏込みからの経過時間tに応じて燃料電池の出力電力を算出するためのマップを示す説明図である。
図5】2次電池のSOCから第1のアクセル判定値A1を算出するためのマップを示す説明図である。
図6】アクセル開度APSから抑制緩和係数cを算出するためのマップを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した車両用燃料電池の電力制御装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の燃料電池の電力制御装置を搭載した電動車両を示す全体構成図である。
本実施形態の電動車両1は、モータ2を走行用動力源とすると共に、その電源として2次電池3(充放電手段)及び燃料電池システム4を備えたハイブリッド燃料電池車両である。周知のように2次電池3は、化学反応により直流電力を充放電可能な電池であり、燃料電池システム4は、燃料電池4aでの水素ガスを用いた電気化学反応により発電するシステムである。基本的にモータ2は2次電池3からの電力により駆動され、燃料電池システム4は主に2次電池3を充電するレンジエクステンダの機能を果たすと共に、その出力電力が補助的にモータ2の駆動にも利用される。
【0020】
モータ2にはインバータ5を介して2次電池3が接続され、インバータ5は直流・交流間の変換機能を奏する。即ち、モータ2の力行制御時には、2次電池3や燃料電池システム4からの直流電力がインバータ5により三相交流電力に変換されてモータ2を駆動し、モータ2の回生制御時には、モータ2からの三相交流電力がインバータ5により直流電力に変換されて2次電池3に充電される。
【0021】
なお、図示はしないが2次電池3には充電用のAC-DCコンバータが接続され、外部電源の交流電力がAC-DCコンバータにより直流電力に変換されて2次電池3に充電されるようになっている。
また、2次電池3及びインバータ5には燃料電池システム4が接続されている。燃料電池システム4に備えられた固体高分子型燃料電池4aは、固体高分子膜の両側に触媒として白金(Pt)を担持した燃料極(負極)及び空気極(正極)を貼り合わせてMEA(Membrane Electrode Assembly:膜/電極接合体)を構成し、そのMEAをガス拡散層及びセパレータにより挟持した単セルを多数積層して製作されている。
【0022】
燃料電池4aの動作原理は周知であるため、詳細は説明しないが、燃料極に水素タンク7からの水素ガスを湿度調整して供給すると共に、空気極に湿度調整した空気を供給することで運転される。燃料極に供給された水素ガスは触媒作用により水素イオンと電子に分解され、水素イオンは固体高分子膜を透過して空気極に到達し、電子は図示しない外部回路を経て空気極に到達し、これにより燃料極をマイナス、空気極をプラスとして直流電圧が発生する。また空気極では、空気供給ラインを経て供給された空気、固体高分子膜を透過した水素イオン、及び外部回路を経てきた電子が反応して水が生成される。
【0023】
燃料電池4aの出力端子にはDC-DCコンバータ8が接続され、DC-DCコンバータ8は2次電池3、インバータ5及び充放電装置6に接続されている。これにより燃料電池4aの出力電力が2次電池3及び充放電装置6の充電やモータ2の駆動に利用可能となっている。
このような燃料電池4aの運転のために燃料電池システム4を構成する各機器(例えば、水素ガス及び空気を切換制御する制御弁やガス加湿用の加湿装置等)はFC-ECU9に接続され、このFC-ECU9より燃料電池4aの運転状態が制御される。
【0024】
一方、インバータ5にはモータECU10が接続され、このモータECU10によりモータ2の駆動制御が実行される。例えばモータECU10はインバータ5を駆動制御し、2次電池3や燃料電池4a或いは充放電装置6から供給される出力電力によりモータ2を駆動する一方、モータ2の回生制御時には回生電力を2次電池3や充放電装置6に供給する。
【0025】
また、2次電池3にはバッテリECU11が接続され、このバッテリECU11により2次電池3の充放電制御が実行されると共に、バッテリECU11は2次電池3のSOC(充電率:State Of Charge)の算出や温度TBATの検出等も実行する。
以上のFC-ECU9、モータECU10、バッテリECU11は、上位ユニットに相当する車両ECU13に接続されており、各ECU9〜11,13は、それぞれ入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。
【0026】
車両ECU13は、電動車両1の総合的な制御を行うための制御ユニットであり、この車両ECU13からの指令を受けた下位の各ECU9〜11により、上記のような燃料電池4aの運転制御、モータ2の駆動制御や2次電池3の充電制御等が実行される。
そのために、車両ECU13の入力側には、アクセル開度APSを検出するアクセルセンサ14やSOC設定部15(充電率設定部)等のセンサ・スイッチ類が接続されると共に、FC-ECU9、モータECU10、バッテリECU11が接続されており、アクセル開度APS等の検出情報と共に、燃料電池システム4、モータ2、2次電池3のそれぞれの運転情報が入力される。
【0027】
SOC設定部15は、電動車両1のユーザーが2次電池3の目標SOCを任意に設定するための入力装置である。SOC設定部15が未入力の場合には、初期値(例えば35%)が2次電池3の目標SOCとして設定されるが、例えば目的地のキャンプ場で2次電池3を電源として使用する予定の場合、ユーザーはSOC設定部15を操作してより高い目標SOC(例えば60%)を入力する。この目標SOCに基づく車両ECU13の充放電制御により、目的地までの走行中に2次電池3のSOCが高められて電源としての使用が可能となる。
【0028】
そして車両ECU13は、アクセルセンサ14により検出されたアクセル開度APS等に基づき電動車両1の走行に必要な要求出力を算出し、その要求出力を達成するようにモータECU10に指令信号を出力する。この指令信号に基づき、モータECU10によりモータ2が駆動されて要求トルクが達成される。
また車両ECU13は、2次電池3のSOCや車両走行のための要求出力に基づき燃料電池システム4の出力電力を算出し、その出力電力を達成するようにFC-ECU9に指令信号を出力する。例えば、2次電池3のSOCが低下して充電を要する場合、或いは2次電池3からの電力供給のみではモータ2が要求出力を達成不能と判定した場合、車両ECU13は燃料電池4aの出力電力を増加側に設定する。
【0029】
FC-ECU9側では、出力電力の達成のために燃料極に供給すべき水素ガス量及び空気極に供給すべき空気量を算出し、算出したガス供給量に調整することにより要求出力電力を達成する。無論、このような水素ガス及び空気の供給制御と並行して、水素ガスや空気の湿度、セル圧力やセル温度等に関しても最適制御する。例えば上記のように出力電力が増加側に制御された場合には、水素ガス量及び空気量が増加側に調整されて出力電力が増加され、その電力増加分がバッテリECU11の充放電制御により2次電池3に充電されると共に(充電制御手段)、同じく電力増加分がモータECU10の力行制御によりモータ2の駆動に利用される。
【0030】
以上のようなFC-ECU9による出力電力の制御により、例えば図2のタイムチャートに示すように、燃料電池4aの運転状態はアイドル運転と発電運転との間で変化する。アイドル運転時の燃料電池4aは、自己の運転に要する電力相当だけを発電しており、このときのセル電圧V(上記単セルの電圧)は相対的に高電圧域(0.9〜1.0V)に保たれている。そして、このアイドル運転から出力電力が増加して発電運転に移行すると、燃料電池4aの内部抵抗に起因してセル電圧Vは低下して低電圧域(0.5〜0.8V)に切り換えられる。
【0031】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、アクセル踏込み操作時において2次電池3からの電力供給のみではモータ2が要求出力を達成不能な場合に、特許文献1の技術では無条件で燃料電池4aの出力電力を増加させているため、アクセル踏込み操作毎に燃料電池4aが顕著な劣化現象が生じる運転状態、即ちアイドル運転から発電運転への移行を繰り返して触媒層の劣化を進行させてしまうという問題がある。
【0032】
このような点を鑑みて本発明者は、燃料電池4aの出力電力を増加させる必要性が、アクセル踏込み状態や2次電池3のSOC等の諸条件に応じて相違することに着目した。即ち、アクセル踏込み操作に応じた加速要求に応答する必要性が高い場合には、触媒層の劣化の要因になったとしても出力電力を増加すべきであるが、加速要求への応答の必要性が低い場合には、出力増加を多少抑制して触媒層の劣化防止を図る余地が存在することを見出した。以下、この知見の下にアクセル踏込み操作時に実施される燃料電池4aの出力増加抑制処理について説明する。
【0033】
図3は車両ECU13が実行する出力増加抑制ルーチンであり、車両ECU13はアクセル踏込み操作時に当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
今、説明の便宜上、電動車両1が走行中であり、運転者によりアクセル踏込み操作が行われたものとする。
まず、ステップS1で2次電池3のSOCが予め設定されたSOC判定値S未満であるか否かを判定する。本実施形態ではSOC判定値Sが2次電池3の目標SOCと連携して設定され、ユーザーがSOC設定部15により目標SOCを入力すると、その目標SOCがSOC判定値Sとして設定される。以下の説明では、SOC設定部15が未入力であり、SOC判定値Sとして初期値(35%)が設定されているものとする。但し、SOC判定値Sはこれに限ることはなく、例えば任意の固定値を設定してもよい。
【0034】
ステップS1の判定がYes(肯定)のときにはステップS2に移行し、アクセルセンサ14により検出されたアクセル開度APSが予め設定された第1のアクセル判定値A1未満であるか否かを判定する。ステップS2の判定がNo(否定)のときにはステップS3に移行し、燃料電池4aの出力電力を抑制することなく通常通り増加させた後、一旦ルーチンを終了する。
【0035】
この状況では、SOCがSOC判定値S未満であるため早期に2次電池3を充電するのが望ましく、且つアクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1以上であるため運転者の加速要求に応答する必要もある。よって、燃料電池4aの触媒層の劣化防止よりも加速要求への応答を優先しているのである。
また、ステップS2の判定がYesのときにはステップS4に移行し、燃料電池4aの出力電力の増加を通常時よりも抑制する(出力電力抑制手段)。具体的には、図4に示すマップに従って、2次電池3のSOC及びアクセル踏込みからの経過時間tに応じて燃料電池4aの出力電力を算出する。なお、このときの出力電力はFC-ECU9に指令するための目標値であり、実際の出力電力は燃料電池4aの応答特性に応じた遅れを持って追従することになる。
【0036】
アクセル踏込みからの経過時間tとしては、2sec,10sec,20sec,30sec,40sec,50sec,60secが設定されており、例えばアクセル踏込みから2secが経過すると2secの特性線(以下、特性線20と称し、他の特性線についても同様に呼称する)に従って、10secが経過すると特性線10に従って、20secが経過すると特性線20に従って、2次電池3の実SOCに対応する出力電力が順次算出される。基本的に各特性線2〜60は、目標SOC(35%)を起点として実SOCが低下するほど増加側の出力電力が求められ、且つ経過時間tが大の特性線ほど(換言するとアクセル踏込みから時間経過するほど)より大きな出力電力が求められるように設定されている。
【0037】
図4のマップの特性は、次式(1),(2)で表すことができる。
y=a(x−b) ……(1)
a=ct……(2)
ここに、yは燃料電池4aの出力電力、xは2次電池3の実SOC、bは目標SOC(35%)、tはアクセル踏込みからの経過時間、cは係数である。
【0038】
従って、一例として図中に示すように、2次電池3が所定SOC0にある状態でアクセル踏込み操作が行われると、特性線2〜60の順に、各特性線に従ってSOC0に対応する出力電力が順次算出され、それに伴い燃料電池4aの出力電力が次第に増加する。なお、燃料電池4aの出力電力により2次電池3は次第に充電されるため、アクセル踏込みからの時間経過と共に実SOCは若干増加するが、説明の便宜上、図では省略している。
【0039】
このような出力電力の算出の結果、例えばアクセル踏込み操作が10sec後に中止された場合、出力電力は0から次第に増加し、10sec後に特性線10上でSOC0に対応するW1に達し、その時点でアクセル踏込み操作の中止と共に0に復帰する。また、アクセル踏込み操作が60sec継続した場合、出力電力は60sec後に特性線60上でSOC0に対応するW2に達する。
【0040】
特性線60は、出力電力の増加を抑制しない場合の特性線でもあるため、上記したステップS3の処理では、アクセル踏込みと同時に出力電力がSOC0に対応するW2まで直ちに増加する。これに対してステップS4の処理によれば、アクセル踏込み操作の開始時には出力電力が強く抑制され、その抑制が経過時間tに応じて次第に緩和されることになる。このため出力電力の増加が遅延されることから、抑制無しのステップS3の処理の場合に比較して同一タイミング(同一の経過時間t)での出力電力が抑制され、結果として出力電力の増加が抑制されることになる。
【0041】
また、多くの場合のアクセル踏込み操作は60secも継続することなく中止されるため、この場合には、増加後の最終的な出力電力も抑制無しのステップS3の処理の場合に比較して低められる。
このときの燃料電池4aはセル電圧の低下を伴ってアイドル運転から発電運転に移行するが、セル電圧の低下状況は図2に破線で示すように、実線の抑制無しの場合(特許文献1の制御状況でもある)に比較してより緩慢(換言すると低下率が小)なものとなり、且つセル電圧の低下幅が縮小される場合もある。
【0042】
この状況では、SOCがSOC判定値S未満であるため早期に2次電池3を充電するのが望ましいが、アクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1未満のため、運転者の加速要求への応答の必要性は低い。よって、加速要求への応答よりも燃料電池4aの触媒層の劣化防止を優先して、出力電力の増加を抑制しているのである。
一方、上記ステップS1でNoの判定を下したときにはステップS5に移行し、アクセル開度APSが予め設定された第2のアクセル判定値A2未満であるか否かを判定する。この第2のアクセル判定値A2は、第1のアクセル判定値A1よりも大きな値に設定されている。ステップS5の判定がNoのときにはステップS6に移行し、上記ステップS3と同じく燃料電池4aの出力電力を抑制することなく通常通り増加させる。
【0043】
ステップS3の場合に比較して、この状況ではSOCがSOC判定値S以上であるため、それほど2次電池3の充電を急ぐ必要はないが、アクセル開度APSがより大であるため運転者の加速要求への応答の必要性がより高い。よって、ステップS3の場合と同じく、燃料電池4aの触媒層の劣化防止よりも加速要求への応答を優先しているのである。
また、ステップS5の判定がYesのときにはステップS7に移行し、燃料電池4aの出力電力の増加を中止する(出力電力抑制手段)。即ち、この時点の燃料電池4aがアイドル運転にあればアイドル運転を継続し、多少でもセル電圧を低下させた発電運転にあるときには、その時点の運転状態を継続する。このときの2次電池3はある程度のSOCが確保されており、要求出力を達成できる電力をモータ2に供給可能なため、燃料電池4aの出力電力を必要としないとの観点に基づく処理である。
【0044】
なお、アクセル踏込み操作中の2次電池3の放電によりSOCがSOC判定値S未満まで低下すれば、ステップS1からステップS2に移行し、上記のようなアクセル開度APSに応じたステップS3または4の出力電力制御が実行される。
以上詳述したように本実施形態の車両用燃料電池4aの電力制御装置によれば、2次電池3のSOCがSOC判定値S未満の状態でアクセル踏込み操作が行われた場合、アクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1以上のときには燃料電池4aの出力電力を通常通り増加させる一方、アクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1未満のときには出力電力の増加を通常時よりも抑制している。
【0045】
後者の状況(APS<A1)では運転者の加速要求への応答の必要性が低いことから、燃料電池4aの出力電力の増加を多少抑制したとしてもドライバビリティは悪化せず、出力電力の増加が抑制されることによりセル電圧の低下が緩慢になると共に、セル電圧の低下幅が縮小される場合もある。よって、セル電圧の低下による触媒層上での酸化還元反応が抑制され、酸化還元反応に伴う白金凝集・溶出に起因する触媒層の劣化を確実に防止することができる。
【0046】
加えて、2次電池3のSOCがSOC判定値S未満で早期充電が望ましい場合であっても、アクセル開度が第1のアクセル判定値A1未満で加速要求への応答の必要性が低いときには出力電力の増加を抑制している。このため、より多くの場合に触媒層上での酸化還元反応を抑制でき、結果として触媒層を劣化させる運転状態に移行する機会が減少し、この点も触媒層の劣化防止に貢献する。
【0047】
また、2次電池3のSOCがSOC判定値S以上の場合、アクセル開度APSがより大きな第2のアクセル判定値A2未満であることを条件として、燃料電池4aの出力電力の増加を中止している。これにより燃料電池4aを停止することが可能となりセル電圧が低電圧域に保たれることから、一層確実に触媒層上での酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の劣化を確実に防止することができる。
【0048】
また、アクセル踏込み操作中には、図4のマップに基づきアクセル踏込みからの経過時間tに応じた特性線から2次電池3の実SOCに対応する出力電力を順次算出している。これにより、経過時間tに応じて燃料電池4aの出力電力に対する抑制が次第に緩和されることから、結果として出力電力の増加を抑制できると共に、アクセル踏込み操作が短時間で中止された場合には、増加後の最終的な出力電力も低められる。このため、一層確実に触媒層上での酸化還元反応を抑制することができる。
【0049】
また、SOC設定部15による目標SOCの入力に連携してSOC判定値Sが設定され、それに応じて図3のステップS1でのSOCに対する判定特性が変更される。例えば、ユーザーが2次電池3のSOCを温存すべく増加側の目標SOCを入力すると、高いSOC判定値Sに基づくSOCの判定の結果、ステップS7よりもステップS4の処理が実行される可能性が高まる。ステップS7の処理では2次電池3のみでモータ2を駆動するため電力消費が甚だしくSOC低下の要因になるが、ステップS4の処理では、抑制されるとはいえ燃料電池4aの出力電力だけは2次電池3の電力が節減される。即ち、この燃料電池4aの出力増加の抑制処理についてもSOC温存に好適な制御内容に切り替わるため、より確実にユーザーの要望に沿った2次電池3のSOCを保つことができる。
【0050】
以上で本実施形態の説明を終えるが、本実施形態は種々に変更可能であり、以下に第1及び第2変形例を説明する。
第1変形例の特徴は、2次電池3のSOCに応じて第1のアクセル判定値A1を可変設定する点にある。
図5はSOCから第1のアクセル判定値A1を算出するためのマップを示しており、SOCが高いほど第1のアクセル判定値A1が増加側に算出される。よって、2次電池3のSOCが高いほど、換言すると2次電池3を充電する必要性が低いほど、図3のステップS3よりもステップS4の処理が実行される可能性が高まり、燃料電池4aの出力電力の増加が抑制され易くなる。結果として変形例1によれば、2次電池3のSOCに応じて出力電力の増加抑制をよりきめ細かく実行でき、より多くの場合に触媒層上での酸化還元反応を抑制できることから、触媒層の劣化防止を一層確実なものとすることができる。
【0051】
なお、同様の発想に基づき、2次電池3のSOCが高いほど第2のアクセル判定値A2を増加側に算出してもよい。この場合には、ステップS7で出力電力の増加が中止され易くなるため、重複する説明はしないが、触媒層の劣化防止を一層確実に達成できる。
第2変形例の特徴は、アクセル開度APSに応じて図4のマップの特性を決定する要件の1つである係数cを可変設定する点にある。
【0052】
上記したように燃料電池4aの出力電力の増加に対する抑制は経過時間tに応じて次第に緩和され、その緩和速度は係数cによって定まり、係数cが大であるほど抑制が早期に緩和されて出力電力がより急速に増加する。この意味で、以下の説明では係数cを抑制緩和係数cと称する。
図6はアクセル開度APSから抑制緩和係数cを算出するためのマップを示しており、アクセル開度APSが大であるほど抑制緩和係数cが増加側に算出される。よって、アクセル開度APSが大であるほど、換言すると運転者の加速要求が高いほど、図4のマップに基づく出力電力の増加に対する抑制が早期に緩和され、結果として出力電力が急速に増加する(出力電力抑制手段)。このため、運転者の加速要求が高い場合には、通常時に比較すれば抑制されるものの出力電力が急速に増加して加速要求に応答でき、逆に加速要求が低い場合には、出力電力の増加が緩慢化することにより触媒層の劣化防止に貢献する。よって、この変形例2によれば、運転者の加速要求への応答と触媒層の劣化防止とをより高次元で両立させることができる。
【0053】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態の図3のフローチャートでは、2次電池3のSOCがSOC判定値S未満の場合を前提として、ステップS2でアクセル開度APSに応じて燃料電池4aの出力電力の増加を抑制するか否かを決定したが、SOCを考慮することなく、ステップS2の処理を実行してもよい。
【0054】
また上記実施形態では、図4のマップに基づき出力電力の増加に対する抑制を次第に緩和したが、出力電力の増加を抑制する手法はこれに限るものではなく任意に変更可能である。例えばアクセル開度APSが第1のアクセル判定値A1未満の場合に、燃料電池4aの出力電力の増加を予め設定した上限値に制限するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電動車両
2 モータ
3 2次電池(充放電手段)
4a 燃料電池
11 バッテリECU(充電制御手段)
13 車両ECU(出力電力抑制手段、充電制御手段)
15 SOC設定部(充電率設定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6