【実施例】
【0062】
(実施例1)
Si粉末とMgO粉末とMg
2SiO
4粉末とを4:1:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.6:1)。この混合粉末をAr雰囲気、1Paで1350℃に加熱し、発生したガスを上部に設置した蒸着板上で400℃に冷却し析出させて回収した。回収した析出材料をアルミナボールミルで粉砕し、平均粒子径をメディアン径D50で5μmに調整した。
【0063】
こうして得た粉末に対してCuKα線を用いたXRD測定を行った。XRDデータを
図1に示す。Si、MgO、Mg
2SiO
4の各結晶ピークが確認できた一方で、MgSiO
3の結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0064】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.18(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.91(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=0.99(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.04(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=1.37(>1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.67(>1.1)であり、他方、MgSiO3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.05(<1.1)であった。
【0065】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=2.31であり、結晶粒子径は12.2μmであった。
【0066】
(実施例2)
Si粉末とMgO粉末とSiO
2粉末とを19:18:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.9:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgO、Mg
2SiO
4の各結晶ピークが確認できた一方で、MgSiO
3の結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0067】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.19(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=1.02(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=1.02(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.03(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=22(>1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.72(>1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.02(<1.1)であった。
【0068】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=14.8であり、結晶粒子径は32.8μmであった。
【0069】
(実施例3)
Si粉末とMgO粉末とSiO
2粉末とを7:4:3のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.4:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgSiO
3、Mg
2SiO
4の各結晶ピークが確認できた一方で、MgOの結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0070】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.16(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.94(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=0.98(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.01(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=1.04(<1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.70(>1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.53(>1.1)であった。
【0071】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=1.94であり、結晶粒子径は10.3μmであった。
【0072】
(実施例4)
Si粉末とMgO粉末とSiO
2粉末とを2:1:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.33:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgSiO
3の各結晶ピークが確認できた一方で、MgO、Mg
2SiO
4の結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0073】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.15(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.92(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=0.99(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP/B=1.04(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=1.03(<1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.00(<1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.85(>1.1)であった。
【0074】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=1.69であり、結晶粒子径は8.50μmであった。
【0075】
(実施例5)
Si粉末とMgO粉末とSiO
2粉末とを3:2:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.5:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、Mg
2SiO
4の各結晶ピークが確認できた一方で、MgSiO
3、MgOの結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった
【0076】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.19(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=1.01(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=0.99(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.02(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=1.05(<1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=2.14(>1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.03(<1.1)であった。
【0077】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=2.12であり、結晶粒子径は11.1μmであった。
【0078】
(実施例6)
Si粉末とMgO粉末とを1:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:1:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgOの各結晶ピークが確認できた一方で、Mg
2SiO
4、MgSiO
3の結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0079】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.15(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=1.05(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=1.01(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.01(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=28.6(>1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.07(<1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.01(<1.1)であった。
【0080】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=17.5であり、結晶粒子径は38.1μmであった。
【0081】
(実施例7)
Si粉末とMgSiO3粉末とを2:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.33:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgSiO
3の各結晶ピークが確認できた一方で、MgO、Mg
2SiO
4の結晶ピーク、SiO
2のアモルファスピーク及び結晶ピーク、並びに金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0082】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.14(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.95(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=1.01(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP/B=1.02(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=0.99(<1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.04(<1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.93(>1.1)であった。
【0083】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=1.47であり、結晶粒子径は7.93μmであった。
【0084】
(比較例1)
Si粉末とSiO
2粉末を1:1のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Siの結晶ピークは確認できなかった。しかし、SiO
2のアモルファスピークは確認され、P1/B1=1.28(>1.25)であった上、2x+y>zが満足されているので、得られた酸化珪素粉末はSiとSiO
2の混合物でアモルファス状態と見ることができる。
【0085】
(比較例2)
Si粉末とMg粉末を1:0.6のモル比で混合した(Si:Mg:O=1:0.6:1)。この混合粉末を実施例1と同じ条件で加熱、析出させ、粉末化した。得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行った。XRDデータを
図2に示す。Si、MgO、Mg
2SiO
4の各結晶ピーク、及びSiO
2のアモルファスピークが確認できた。その一方で、金属Mg及びMgSi合金の結晶ピーク、並びにMgSiO
3の結晶ピークは確認できなかった。
【0086】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.28(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.98(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=1.00、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.08であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=6.42(>1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=2.82(>1.1)であり、他方、MgSiO
3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.07(<1.1)であった。
【0087】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=9.09であり、結晶粒子径は41.6μmであった。
【0088】
(比較例3)
容器を2つ用意し、一方の容器にSi粉末とSiO
2粉末を1:1のモル比で混合して仕込み(Si:Mg:O=1:0:1)、もう一方の容器に金属Mgを上記Siに対して0.6の割合で仕込んだ。Ar雰囲気、1Paの条件下で、一方の容器は1350℃に加熱し、もう一方の容器は450℃に加熱し、2容器からガスを発生させた。これらのガスを上部に設置した蒸着板上で冷却した。他の条件は実施例1と同じとした。
【0089】
得られた粉末に対して実施例1と同じXRD測定を行ったところ、Si、MgO、Mg
2SiO
4、MgSiO
3の各結晶ピーク、及びSiO
2のアモルファスピークが確認できた。一方、金属Mg及びMgSi合金の結晶ピークは確認できなかった。
【0090】
すなわち、SiO
2のアモルファスピーク強度はP1/B1=1.31(<1.25)、結晶ピーク強度はP2/B2=0.99(<1.1)であった。また、金属Mgの結晶ピーク強度はP3/B3=0.96(<1.1)、MgSi合金の結晶ピークはP4/B4=1.03(<1.1)であった。一方、MgOの結晶ピーク強度はP5/B5=2.62(>1.1)、Mg
2SiO
4の結晶ピーク強度はP6/B6=1.66(>1.1)、MgSiO3の結晶ピーク強度はP7/B7=1.21(<1.1)であった。
【0091】
また、Siの結晶ピーク強度はP8/B8=3.67であり、結晶粒子径は13.5μmであった。
【0092】
(電池評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3において製造された粉末試料に対して次の手順で電池評価を実施した。
【0093】
粉末試料と非水系(有機系)バインダーであるPIバインダーと、導電助材であるKBとを80:15:5の重量比で混合し、有機系のNMPを溶媒として混練してスラリーとした。作製したスラリーを銅箔上に塗工し、350℃で30min真空熱処理することで負極とした。この負極と対極(Li箔)と電解液(EC:DEC=1:1)と電解質(LiPF6 1mol/L)とセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルム30μm厚)とを組み合わせてコインセル電池を作製した。
【0094】
作製されたコインセル電池に充放電試験を実施した。充電は、電池の両極間の電圧が0.05Vに達するまでは0.5Cの定電流で行い、電圧が0.05Vに達した後は電流が0.01Cになるまで定電位充電で行った。放電は、電池の両極間の電圧が1.5Vに達するまでは0.1Cの定電流で行った。
【0095】
この充放電試験により、初期充電容量、及び初期放電容量を測定して、初期効率を求めた。結果を粉末試料の主要な仕様(Mg/Si比、含有物質、Si結晶粒子径)と共に表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1〜実施例7では、Mgがドープされているが、結晶Si及び適切な種類のMg含有化合物が含有され、その一方でSiO
2や金属Mg、MgSi合金が存在せず、Si結晶粒子径も40nm以下に抑制されているため、比較例1で得られたSiとSiO
2の混合物と比べて、Mgドープによる初期効率の改善効果が顕著である。
【0098】
比較例2では、固相法ではあるが、機械的な合金化法ではなく、焼成法のため、反応の不均一は比較的軽いが、それでもSiO
2が生じており、何よりも高熱処理のためにSi結晶粒子径が増大した。これらによる影響のため初期効率の改善効果が小さい上に、充放電容量が大きく低下した。
【0099】
比較例3では、実施例と同じ気相法のため、Si結晶粒子径は小さいものの、不均一なドープ反応により、不適切な組合せである3種類のMg含有化合物が生じると共に、SiO2 が生じ、比較例1よりも更に初期効率が低下する結果になった。