特開2017-224665(P2017-224665A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧
特開2017-224665ワイヤ及びその製造方法、並びに、コイル部品
<>
  • 特開2017224665-ワイヤ及びその製造方法、並びに、コイル部品 図000003
  • 特開2017224665-ワイヤ及びその製造方法、並びに、コイル部品 図000004
  • 特開2017224665-ワイヤ及びその製造方法、並びに、コイル部品 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-224665(P2017-224665A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】ワイヤ及びその製造方法、並びに、コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20171124BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20171124BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20171124BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20171124BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   H01F15/00 A
   H01F17/04 A
   H01F15/10 G
   H01F27/28 L
   H01F5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-117592(P2016-117592)
(22)【出願日】2016年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
(72)【発明者】
【氏名】麻生 裕文
(72)【発明者】
【氏名】國塚 光祐
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB01
5E043AB09
5E043EA01
5E043EB01
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA03
5E070CA02
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】製造が容易な同軸状のワイヤを提供する。
【解決手段】本発明によるワイヤは、導体からなる芯線1と、芯線1の外周を覆う絶縁皮膜2と、絶縁皮膜2の外周を覆い、無電解めっきの反応開始点となる触媒を含む触媒吸着皮膜3と、触媒吸着皮膜3の外周を覆う外周導体4を備える。本発明によれば、絶縁皮膜2の外周に触媒吸着皮膜3が設けられていることから、無電解めっきを行うことにより、厚さの均一な外周導体4を容易に形成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなる芯線と、
前記芯線の外周を覆う絶縁皮膜と、
前記絶縁皮膜の外周を覆い、無電解めっきの反応開始点となる触媒を含む触媒吸着皮膜と、
前記触媒吸着皮膜の外周を覆う外周導体と、を備えることを特徴とするワイヤ。
【請求項2】
前記触媒吸着皮膜がポリピロールを含むことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項3】
導体からなる芯線の外周が絶縁皮膜で覆われた被覆導線を用意し、前記被覆導線の外周に触媒吸着皮膜を形成する工程と、
前記触媒吸着皮膜に吸着された触媒を反応開始点として無電解めっきを行うことにより、前記触媒吸着皮膜の外周に外周導体を形成する工程と、を備えることを特徴とするワイヤの製造方法。
【請求項4】
巻芯部と、
前記巻芯部に巻回された請求項1又は2に記載のワイヤと、
前記ワイヤの一端に位置する前記芯線及び前記外周導体が共通に接続された第1の端子電極と、
前記ワイヤの他端に位置する前記芯線及び前記外周導体が共通に接続された第2の端子電極と、を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項5】
前記ワイヤは、隣接するターンが前記巻芯部上において離間するよう巻回されていることを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ及びその製造方法に関し、特に、高周波信号の伝送に適したワイヤ及びその製造方法に関する。また、本発明はこのようなワイヤを用いたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、高周波コイル部品などに用いられるワイヤとしては、芯線の外周が絶縁皮膜で覆われた被覆導線が用いられる。これに対し、特許文献1には、絶縁皮膜の外周をさらに別の導体で覆った同軸状のワイヤが開示されている。特許文献1に記載されたワイヤは、絶縁皮膜上に外周導体が直接形成された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−153079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁皮膜上に均一な外周導体を直接形成することは非常に難しいという問題があった。また、特許文献1に記載されたワイヤは、芯線と外周導体をそれぞれ別の信号経路として利用していることから、芯線部分の高周波特性(特に、高周波帯域における交流抵抗)については、通常の被覆導線を用いた場合と変わりがなかった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、製造が容易な同軸状のワイヤを提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、同軸状のワイヤを用いることにより高周波帯域における交流抵抗が改善されたコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるワイヤは、導体からなる芯線と、前記芯線の外周を覆う絶縁皮膜と、前記絶縁皮膜の外周を覆い、無電解めっきの反応開始点となる触媒を含む触媒吸着皮膜と、前記触媒吸着皮膜の外周を覆う外周導体と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明によるワイヤの製造方法は、導体からなる芯線の外周が絶縁皮膜で覆われた被覆導線を用意し、前記被覆導線の外周に触媒吸着皮膜を形成する工程と、前記触媒吸着皮膜に吸着された触媒を反応開始点として無電解めっきを行うことにより、前記触媒吸着皮膜の外周に外周導体を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、絶縁皮膜の外周に触媒吸着皮膜が設けられていることから、無電解めっきを行うことにより、厚さの均一な外周導体を容易に形成することができる。
【0010】
本発明において、前記触媒吸着皮膜はポリピロールを含むことが好ましい。これによれば、触媒としてパラジウムを吸着させることが可能となる。
【0011】
本発明によるコイル部品は、巻芯部と、前記巻芯部に巻回された上記のワイヤと、前記ワイヤの一端に位置する前記芯線及び前記外周導体が共通に接続された第1の端子電極と、前記ワイヤの他端に位置する前記芯線及び前記外周導体が共通に接続された第2の端子電極と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、芯線と外周導体を短絡して使用していることから、表皮効果によって高周波帯域における交流抵抗を大幅に低減することが可能となる。
【0013】
本発明において、前記ワイヤは、隣接するターンが前記巻芯部上において離間するよう巻回されていることが好ましい。これによれば、外周導体の表面に十分な絶縁皮膜を設けることなく、隣接するターン間における短絡を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば同軸状のワイヤを容易に製造することが可能となる。また、高周波帯域における交流抵抗が改善されたコイル部品を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるワイヤWの構造を説明するための断面図である。
図2図2は、ワイヤWの製造方法を説明するための工程図である。
図3図3は、ワイヤWを用いたコイル部品10の構成を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるワイヤWの構造を説明するための断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態によるワイヤWは、導体からなる芯線1と、芯線1の外周を覆う絶縁皮膜2と、絶縁皮膜2の外周を覆う触媒吸着皮膜3と、触媒吸着皮膜3の外周を覆う外周導体4からなる4層構造を有している。
【0019】
芯線1は銅(Cu)などの良導体からなる細線であり、その表面が絶縁皮膜2で覆われている。芯線1の径は、例えば20μm〜100μm程度である。絶縁皮膜2は、イミド変性ポリウレタンなどの絶縁材料からなる。通常のワイヤは、これら芯線1と絶縁皮膜2からなる被覆導線であるが、本実施形態によるワイヤWは、絶縁皮膜2の外周が触媒吸着皮膜3で覆われており、さらに触媒吸着皮膜3の外周が外周導体4で覆われている。
【0020】
触媒吸着皮膜3は、無電解めっきの反応開始点となる触媒を含む樹脂からなる。特に限定されるものではないが、触媒吸着皮膜3の材料としては、ポリピロールを用いることが好ましい。触媒吸着皮膜3の材料としてポリピロールを用いれば、無電解めっきの反応開始点となる触媒として、パラジウムを吸着させることができる。
【0021】
外周導体4は、触媒吸着皮膜3の外周を覆うめっき層であり、その膜厚は例えば1.0μm〜5.0μm程度である。外周導体4の材料としては銅(Cu)を用いることが好ましく、その表面に防錆被覆や絶縁皮膜を施しても構わない。このように、本実施形態によるワイヤWは、芯線1と外周導体4を含む同軸構造を有している。
【0022】
次に、本実施形態によるワイヤWの製造方法について説明する。
【0023】
まず、図2(a)に示す被覆導線W0を用意する。被覆導線W0は、芯線1の外周が絶縁皮膜2で覆われた構造を有しており、高周波コイルなどのワイヤとして一般的に用いられるものである。後述するように、本実施形態によるワイヤWは芯線1と外周導体4を共通導体として用いることが好ましく、このような用途においては、芯線1と外周導体4との間の絶縁性を十分に確保する必要性が低いことから、絶縁皮膜2の膜厚は一般的な被覆導線における絶縁皮膜2の膜厚よりも薄くても構わない。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、被覆導線W0の外周に触媒吸着皮膜3を形成する。上述の通り、触媒吸着皮膜3の材料としてはポリピロールを用いることが好ましく、この場合、無電解めっきの反応開始点となる触媒としてパラジウムを吸着させておく。触媒の吸着は、触媒吸着皮膜3の形成前に置ける原料状態で行っても構わないし、触媒吸着皮膜3を形成した後に行っても構わない。また、触媒吸着皮膜3の材料としてポリピロールを用いる場合であっても、物性を調整するために他の樹脂材料などを添加しても構わない。
【0025】
そして、触媒吸着皮膜3に吸着された触媒を反応開始点として無電解めっきを行う。これにより、触媒吸着皮膜3の外周には、ほぼ均一な膜厚を有するめっき層が形成される。このめっき層をそのまま外周導体4として用いても構わないし、めっき層を下地導体としてさらに電解めっきを行うことにより、めっき厚を増大させたものを外周導体4として用いても構わない。
【0026】
以上の工程により、本実施形態によるワイヤWが完成する。このように、本実施形態によるワイヤWの製造工程においては、触媒吸着皮膜3を利用して外周導体4をめっき形成していることから、均一な膜厚を有する外周導体4を容易に形成することが可能となる。
【0027】
図3は、本実施形態によるワイヤWを用いたコイル部品10の構成を示す略斜視図である。
【0028】
図3に示すコイル部品10は、第1及び第2の鍔部21,22とこれらを接続する巻芯部23からなるドラム型のコア20と、コア20の巻芯部に巻回されたワイヤWとを備える。コア20は、Ni−Zn系フェライトなど比較的透磁率の高い磁性材料によって構成され、第1及び第2の鍔部21,22と巻芯部23が一体化された構造を有している。
【0029】
図3に示すように、第1及び第2の鍔部21,22には、それぞれ第1及び第2の端子電極31,32が形成されている。第1及び第2の端子電極31,32は、導電性ペーストなどを用いて第1及び第2の鍔部21,22の表面に直接形成された導体であっても構わないし、第1及び第2の鍔部21,22に取り付けられた端子金具であっても構わない。
【0030】
そして、第1の端子電極31にはワイヤWの一端が継線され、第2の端子電極32にはワイヤWの他端が継線されている。ここで、第1の端子電極31には、ワイヤWの一端に位置する芯線1及び外周導体4が共通に接続され、第2の端子電極32には、ワイヤWの他端に位置する芯線1及び外周導体4が共通に接続される。つまり、本実施形態においては、芯線1と外周導体4にそれぞれ別個の信号を与えるのではなく、芯線1と外周導体4を並列配線として利用し、同一の信号を与えている。
【0031】
外周導体4は膜厚が例えば1μm〜5μm程度と薄いことから、芯線1と比べると直流抵抗が高く、このため、芯線1と外周導体4を並列接続しても芯線1のみの直流抵抗に比べて大きく低下することはない。しかしながら、高周波帯域においては表皮効果が生じることから、表面積の大きい外周導体4の交流抵抗は非常に低くなる。これにより、芯線1と外周導体4を並列接続すると、芯線1のみの交流抵抗に比べて大幅(約1/2)に低下する。ここで、芯線1のみによって同様の交流抵抗を得るためには、芯線1の径を大幅(約2倍)に増大させる必要があるが、本実施形態においては、芯線1と外周導体4を並列接続していることから、芯線1の径を増大させることなく、交流抵抗を大幅に低下させることが可能となる。
【0032】
尚、芯線1と外周導体4を同じ端子電極に共通接続するためには、ワイヤWの一端及び他端を対応する端子電極に熱圧着又はレーザー溶接すればよい。これにより、加熱された部分においては、芯線1と外周導体4との間に存在する絶縁皮膜2及び触媒吸着皮膜3が溶融・変性するため、継線部分において芯線1と外周導体4が短絡され、それぞれ対応する端子電極31又は32に共通接続されることになる。
【0033】
ワイヤWの最外層を構成する外周導体4は、表面がそのまま露出していても構わないし、表面に絶縁皮膜が設けられていても構わない。外周導体4の表面がそのまま露出している場合は、図3に示すように、隣接するターン間が巻芯部23上において互いに離間するよう、スペースを空けて巻回する必要がある。これにより、隣接するターン間における外周導体4の短絡が防止されるので、所望のコイル特性を得ることが可能となる。尚、外周導体4の表面が絶縁皮膜で覆われている場合であっても、隣接するターン間を離間させて巻回すれば、絶縁皮膜の膜厚が非常に薄い場合や絶縁性が不十分な場合であっても、隣接するターン間における短絡を確実に防止することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
例えば、図3に示すコイル部品10は、ワイヤWを1本のみ用いた2端子型のインダクタンス素子であるが、本発明によるワイヤの用途がこれに限定されるものではなく、コモンモードフィルタなど、ワイヤを複数本用いたコイル部品に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 芯線
2 絶縁皮膜
3 触媒吸着皮膜
4 外周導体
10 コイル部品
20 コア
21,22 鍔部
23 巻芯部
31,32 端子電極
W ワイヤ
W0 被覆導線
図1
図2
図3