【解決手段】半導体装置は、基板と、基板に形成されたトランジスタを有する回路と、周波数信号を発生する発振回路と、発振回路からの周波数信号に従って基板電圧を発生する基板電圧発生回路と、回路のスタンバイ期間において発振回路の周波数信号の周波数を変更する制御回路とを備える。
前記回路のスタンバイ期間は、前記回路のアクティブ状態からスタンバイ状態に移行するスタンバイ移行期間と前記スタンバイ状態を維持するスタンバイ安定期間とを含み、
前記制御回路は、前記スタンバイ移行期間と前記スタンバイ安定期間とで前記発振回路の周波数信号の周波数を変更する、請求項1記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のたゆまざる微細化によって集積度および動作速度などの性能向上と、単一素子あたりの消費電力低減とを続けてきた。しかしながら、素子の加工寸法が50nmを下回る世代に至り、性能向上と消費電力低減の両立が困難になっている。
【0003】
このような問題が生じている原因として、例えば、キャリアの速度飽和による動作電流の限界、ゲート酸化膜からのリーク電流の増大などがあり、これらを解決するための代表的手段として、高誘電率ゲート絶縁膜や、歪シリコンなどの高移動度チャネルが開発されている。前者は、極薄膜化したゲート絶縁膜を通じて流れるトンネルリーク電流を抑えることで、主に電子回路の待機状態における消費電力を低減するものである。また、後者は、同一の素子寸法における出力電流を増大させることにより、動作速度を向上させたり、あるいは動作速度が一定の状態において消費電力を低減させるものである。
【0004】
一方で、微細化の進行に伴う新たな課題として、素子のばらつきの増大がより深刻になってきている。素子のばらつきが大きくなると、全ての回路を正常に動作させるために必要な電圧マージンを確保させる必要から、微細化と共に進めてきた電源電圧の低減が困難になる。
【0005】
これは、単一素子あたりの消費電力の低減を困難にすることになり、微細化と共に集積度の上がった半導体チップの消費電力を増大させてしまう。さらに、素子のばらつきが大きいと、消費電力性能の悪い素子がチップ全体の消費電力を大幅に増大させてしまうことにもなる。このため、これまで可能であった、微細化によって同一面積のチップでの消費電力を変えずに回路規模や機能を増大させることが困難になってきている。
【0006】
素子のばらつきを抑制して半導体チップの性能を向上することが可能な技術として、特許文献1(特開2005−251776号公報)に示すようなシリコンオンインシュレータ(SOI:Silicon On Insulator)技術が開示されている。この技術は、従来のSOI技術と異なり、SOI層および埋め込み絶縁(BOX:Buried Oxide)層を非常に薄くしたSOI基板を用いて完全空乏型SOI(FDSOI:fully-depleted Silicon-On-Insulator)素子を形成すると共に、BOX層の裏面からバイアス電圧を印加することによって、素子の閾値電圧を変化させることを可能とするものである。
【0007】
これにより、素子の閾値電圧を変化させることにより半導体チップの性能を向上させるとともに、活性状態(アクティブ状態)と、非活性状態(スタンバイ状態)とで閾値電圧を変えることにより消費電力の低減も可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、実施形態に基づく半導体チップ1の構成を説明する図である。
図1に示されるように、半導体チップ1は、入出力インタフェース機能を有するIO回路2と、メモリであるSRAM(Static Random Access Memory)3と、電圧生成部4と、各種の電源電圧を供給する電源回路5と、CPU(Central Processing Unit)6とを備える。電源回路5は、電源電圧VDDおよび接地電圧VSSを生成して供給しても良いし、外部からの入力を受けて他の回路に供給するようにしても良い。電圧生成部4は、基板バイアス電圧を生成する回路を含む。
【0017】
図2は、実施形態に基づくCPUを構成するトランジスタの断面構造図である。
図2に示されるように、SOTB構造を有するトランジスタとしてNチャネルMOSトランジスタ100およびPチャネルMOSトランジスタ101が示されている。
【0018】
SOI基板102と、SOI基板102の上層部には、ウェル領域104が形成されている。ウェル領域104は、p型の不純物が導入されたp型の半導体領域である。
【0019】
ウェル領域104の上部には、NチャネルMOSトランジスタ100用の基板バイアス電極108が設けられる。また、基板バイアス電極108の両側には素子分離膜106が設けられる。基板バイアス電極108は、電源線PLと接続されている。
【0020】
また、BOX層110を介してトランジスタの表面にはゲート電極114と、ソース電極112と、ドレイン電極116とが設けられる。
【0021】
また、隣接するPチャネルMOSトランジスタとの境界領域には素子分離膜106が設けられる。
【0022】
SOI基板102の上層部にはウェル領域105が形成されている。
ウェル領域105は、n型の不純物が導入されたn型の半導体領域である。
【0023】
ウェル領域105の上部には、PチャネルMOSトランジスタ101用の基板バイアス電極124が設けられる。また、基板バイアス電極124の両側には素子分離膜106が設けられる。基板バイアス電極124は、電源線NLと接続されている。
【0024】
また、BOX層110を介してトランジスタの表面にはゲート電極120と、ソース電極122と、ドレイン電極118とが設けられる。
【0025】
図3は、実施形態に基づくトランジスタに印加される基板バイアス電圧を説明する図である。
【0026】
図3(A)は、アクティブモードにおける基板バイアス電圧の印加状態が示されている。具体的には、NチャネルMOSトランジスタには、基板バイアス電圧として接地電圧VSSが供給される。PチャネルMOSトランジスタには、基板バイアス電圧として電源電圧VDDが供給される。
【0027】
図3(B)は、スタンバイモードにおける基板バイアス電圧の印加状態が示されている。
【0028】
具体的には、NチャネルMOSトランジスタには、基板バイアス電圧として電圧VBNが供給される。PチャネルMOSトランジスタには、基板バイアス電圧として電圧VBPが供給される。電圧VBNは、接地電圧VSSよりも低い負電圧である。電圧VBPは、電圧VDDよりも高い正電圧である。
【0029】
図4は、閾値電圧の変化に基づくトランジスタ特性を説明する図である。
図4に示されるように、低閾値(Low Vth)のトランジスタ特性と、高閾値(High Vth)のトランジスタ特性とが示されている。
【0030】
閾値電圧が低閾値から高閾値に変化することによりトランジスタ特性が変化する。本例においては、印加する基板バイアス電圧をアクティブモードとスタンバイモードとで切り替えることによりトランジスタ特性を変化させる。
【0031】
具体的には、アクティブモードにおいては、低閾値のトランジスタ特性となるように基板バイアス電圧を印加し、スタンバイモードにおいては、高閾値のトランジスタ特性となるように基板バイアス電圧を印加する。
【0032】
図5は、アクティブモードとスタンバイモードとにおけるリーク電流を説明する図である。
【0033】
図5に示されるように、アクティブモードからスタンバイモードに移行する場合に基板バイアス電圧を大きくする場合が示されている。たとえば、PチャネルMOSトランジスタの場合について説明する。
【0034】
これにより、低閾値のトランジスタ特性から高閾値のトランジスタ特性に変化し、スタンバイモードの場合にリーク電流が減少する。
【0035】
図6は、実施形態に基づく電圧生成部4の構成を説明するブロック図である。
図6に示されるように、電圧生成部4は、コントローラ206と、リングオシレータ204P,204N(総称してリングオシレータ204と称する)と、電源調整回路208P,208N(総称して電源調整回路208と称する)と、チャージポンプ回路202P,202N(総称してチャージポンプ回路202と称する)と、トランジスタSWP,SWNとを含む。なお、“P”の符号は、PチャネルMOSトランジスタ用の回路であることを意味し、“N”の符号は、NチャネルMOSトランジスタ用の回路であることを意味する。
【0036】
リングオシレータ204Pは、チャージポンプ回路202Pに出力する発振信号(周波数信号)を生成する。
【0037】
リングオシレータ204Nは、チャージポンプ回路202Nに出力する発振信号(周波数信号)を生成する。
【0038】
電源調整回路208Pは、リングオシレータ204Pに供給する電圧レベルを調整する。
【0039】
電源調整回路208Nは、リングオシレータ204Nに供給する電圧レベルを調整する。
【0040】
リングオシレータ204Pは、電源調整回路208Pを介して入力される電圧レベルに従って発振信号の周波数を調整する。
【0041】
リングオシレータ204Nは、電源調整回路208Nを介して入力される電圧レベルに従って発振信号の周波数を調整する。
【0042】
一例として電圧レベルを高く設定することにより発振信号の周波数を高く設定することが可能である。
【0043】
トランジスタSWPは、電源電圧VDDと電源線PLとの間に設けられ、そのゲートはコントローラ206からの制御信号の入力を受ける。
【0044】
トランジスタSWNは、接地電圧VSSと電源線NLとの間に設けられ、そのゲートはコントローラ206からの制御信号の入力を受ける。
【0045】
コントローラ206は、アクティブモードおよびスタンバイモードにおいて各種制御信号を出力し、電源線PLおよびNLにそれぞれ基板バイアス電圧を供給する。
【0046】
具体的には、コントローラ206は、アクティブモードにおいて、トランジスタSWPのゲートに制御信号(「L」レベル)を出力する。また、トランジスタSWNのゲートに制御信号(「H」レベル)を出力する。
【0047】
これに伴い、トランジスタSWPおよびSWNは、活性化される。電源線PLは、電源電圧VDDと接続される。また、電源線NLは、接地電圧VSSと接続される。PチャネルMOSトランジスタには、当該電源電圧VDDが基板バイアス電圧として供給される。NチャネルMOSトランジスタには、当該接地電圧VSSが基板バイアス電圧として供給される。
【0048】
コントローラ206は、スタンバイモードにおいて、トランジスタSWPのゲートに制御信号(「H」レベル)を出力する。また、トランジスタSWNのゲートに制御信号(「L」レベル)を出力する。これに伴い、トランジスタSWPおよびSWNは、非活性化される。また、コントローラ206は、リングオシレータ204P,204Nおよび電源調整回路208P,208Nに指示して、リングオシレータ204P,204Nからそれぞれ発振信号を出力する。また、コントローラ206は、スタンバイモードのスタンバイ期間においてリングオシレータ204P,204Nからそれぞれ出力する発振信号の周波数を変更する。
【0049】
リングオシレータ204P,204Nで生成された発振信号は、チャージポンプ回路202P,202Nにそれぞれ入力される。
【0050】
チャージポンプ回路202Pは、リングオシレータ204Pで生成された発振信号に従って電源電圧VDDよりも高い電圧VBPを出力するように昇圧動作を実行する。
【0051】
チャージポンプ回路202Nは、リングオシレータ204Nで生成された発振信号に従って接地電圧VSSよりも低い電圧VBNを出力するように降圧動作を実行する。
【0052】
スタンバイモードにおいて、電源線PLには、チャージポンプ回路204Pで昇圧された電圧VBPが供給される。また、電源線NLには、チャージポンプ回路204Nで降圧された電圧VBNが供給される。したがって、PチャネルMOSトランジスタには、当該電圧VBPが基板バイアス電圧として供給される。NチャネルMOSトランジスタには、当該電圧VBNが基板バイアス電圧として供給される。
【0053】
図7は、実施形態に基づくスタンバイモードにおけるリングオシレータの発振信号の周波数の調整および電力について説明する図である。
【0054】
図7(A)に示されるように、アクティブモードからスタンバイモードへのスタンバイ移行期間においては、コントローラ206は、電源調整回路208P,208Nに指示してリングオシレータ204P,204Nで生成される発振信号の周波数を高く設定する。
【0055】
これに伴い、チャージポンプ回路202P,202Nから出力される基板バイアス電圧が所望の電圧レベルに早期に設定することが可能となる。スタンバイ移行期間において、早期に所望の電圧レベルに設定される。
【0056】
そして、所望の電圧レベルに設定された後、すなわちスタンバイ移行期間が経過した後のスタンバイ安定期間には周波数を低く設定する。スタンバイ移行期間の後のスタンバイ安定期間においては、コントローラ206は、電源調整回路208P,208Nに指示してリングオシレータ204P,204Nで生成される発振信号の周波数を低く設定する。
【0057】
これに伴い、チャージポンプ回路202P,202Nから出力される基板バイアス電圧を所望の電圧に維持しつつリングオシレータ204P,204Nにおける消費電力を低くすることが可能である。
【0058】
図7(B)に示されるように、スタンバイ移行期間において、基板バイアス電圧が設定されることによりトランジスタの閾値電圧が高く設定される。これに伴いリーク電流が減少して、消費電力を低減することが可能である。
【0059】
したがって、リングオシレータ回路およびチャージポンプ回路の消費電力は低い状態となるためさらに消費電力を低減することが可能である。
【0060】
一方、リングオシレータ204P,204Nの発振信号の周波数を変更しない場合には、点線で示した消費電力となり、リングオシレータ回路およびチャージポンプ回路の消費電力を低減することにより半導体チップ全体としてさらに省電力化を図ることが可能である。
【0061】
図8は、実施形態に基づく電源調整回路208Pの回路構成を説明する図である。
図8に示されるように、電源調整回路208Pは、トランジスタ300〜304を含む。
【0062】
トランジスタ300は、NチャネルMOSトランジスタである。トランジスタ302,304は、PチャネルMOSトランジスタである。
【0063】
トランジスタ302は、電源電圧VDDとリングオシレータ204の電源入力ノードN1との間に配置され、そのゲートは、内部ノードN0と接続される。
【0064】
トランジスタ304は、内部ノードN0とリングオシレータ204の電源入力ノードN1との間に設けられ、そのゲートは、制御信号の入力を受ける。
【0065】
トランジスタ300は、接地電圧VSSと内部ノードN0との間に設けられ、そのゲートは制御信号の入力を受ける。当該制御信号は、コントローラ206から出力される。
【0066】
コントローラ206は、電源調整回路208Pに対してスタンバイ移行期間において制御信号(「H」レベル)を出力する。そして、スタンバイ安定期間において制御信号(「L」レベル)を出力する。
【0067】
制御信号が「H」レベルに設定されると、トランジスタ300が導通する。これに伴いトランジスタ302のゲートは、接地電圧VSSと接続される。したがって、トランジスタ302が導通して、リングオシレータ204の電源入力ノードN1には、電源電圧VDDが供給される。
【0068】
一方、制御信号が「L」レベルに設定されると、トランジスタ300はオフとなる。一方、トランジスタ304は、導通する。トランジスタ304が導通することにより内部ノードN0は、リングオシレータ204の電源入力ノードN1と電気的に接続される。
【0069】
したがって、トランジスタ302は、ダイオード接続された状態となる。それゆえ、電源入力ノードN1には、電源電圧VDDからトランジスタ302の閾値電圧分低い電圧が供給される。これに伴い、リングオシレータ204の発振信号の周波数が調整される。
【0070】
電源調整回路208Nについても同様に適用することが可能である。
図9は、実施形態に基づくSRAM3のメモリセルMCの構成を説明する図である。
【0071】
図9に示されるように、メモリセルMCの構成が示されている。メモリセルMCは、2つの転送トランジスタAT1,AT2と、駆動トランジスタNT1,NT2と、負荷トランジスタPT1,PT2(負荷素子)とから構成される。
【0072】
負荷トランジスタPT1と、駆動トランジスタNT1とは電源電圧VDDと接地電圧VSSとの間に直列に接続され、そのゲートは、記憶ノードNP2と接続される。
【0073】
負荷トランジスタPT2と、駆動トランジスタNT2とは電源電圧VDDと接地電圧VSSとの間に直列に接続され、そのゲートは、記憶ノードNP1と接続される。
【0074】
負荷トランジスタPT1と、駆動トランジスタNT1の接続ノードは、記憶ノードNP1を形成する。
【0075】
負荷トランジスタPT2と、駆動トランジスタNT2の接続ノードは、記憶ノードNP2を形成する。
【0076】
転送トランジスタAT1は、記憶ノードNP1とビット線BLとの間に接続され、そのゲートはワード線WLと接続される。
【0077】
転送トランジスタAT2は、記憶ノードNP2とビット線/BLとの間に接続され、そのゲートはワード線WLと接続される。
【0078】
上記の構成においては、CPUを構成するトランジスタの基板バイアス電圧を供給する構成について説明したが、メモリを構成するメモリセルMCのトランジスタの基板バイアス電圧についても同様に適用可能である。
【0079】
以上、本開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。