【解決手段】N型の半導体基板SBと、半導体基板SB上のP型のエピタキシャル層EPとからなる基板を有する固体撮像素子において、画素PEが並ぶ画素領域PERと、画素領域PERの周囲の周辺回路領域CRとの間の分離領域IRのエピタキシャル層EPを貫通する溝DTを形成し、溝DT内を埋め込む絶縁膜からなるDTI構造DTIを形成する。これにより、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間における当該基板内での電子の移動を防ぐ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
また、以下では、固体撮像素子の上面側から光を入射する素子を例として説明するが、BSI(Back Side Illumination、裏面照射)型の固体撮像素子においても、同様の構造またはプロセスフローを用いた場合には、以下の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0017】
また、符号「
−」および「
+」は、導電型がN型またはP型の不純物の相対的な濃度を表しており、例えばN型不純物の場合は、「N
−」、「N」、「N
+」の順に不純物濃度が高くなる。
【0018】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造について>
以下に、
図1および
図2を用いて、本実施の形態1の半導体装置の構造を説明する。
図1は、本実施の形態である半導体装置の構成を示す平面図である。
図2は、本実施の形態の半導体装置を示す断面図である。
図1には、固体撮像素子(半導体チップ)全体の模式的な平面構造を示している。
図2は、
図1のA−A線における断面図である。
【0019】
また、ここでは画素の一例として、CMOSイメージセンサにおいて画素実現回路として使用される4トランジスタ型の画素を想定して説明を行うが、それに限るものではない。すなわち、各画素には、1つのフォトダイオードを備えた受光領域の周囲に、転送トランジスタと、周辺トランジスタである3つのトランジスタとが配置されている。ここで、周辺トランジスタとは、リセットトランジスタ、増幅トランジスタおよび選択トランジスタを指す。なお、各画素には複数のフォトダイオードが形成されていてもよい。
【0020】
本実施の形態の半導体装置である固体撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであり、主に近赤外光(NIR:Near Infrared Rays)を受光して撮像を行う素子である。ここでいう近赤外光(近赤外線)の波長は、例えば800〜1000nmである。固体撮像素子ISは、
図1に示すように、画素領域(画素アレイ領域)PERと、画素領域PERの周囲を平面視において囲む周辺回路領域CRとを有している。また、固体撮像素子ISは、平面視において、画素領域PERの周囲を囲む位置であって、環状の周辺回路領域CRの内側の位置に、分離領域IRを有している。言い換えれば、平面視において、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間には、分離領域IRが介在している。
【0021】
画素領域PERには、複数の画素PEが行列状に配置されている。つまり、固体撮像素子ISを構成する半導体基板の上面には、複数の画素PEが、固体撮像素子ISを構成する半導体基板の主面に沿うX方向およびY方向にアレイ状に並んでいる。
図1に示すX方向は、画素PEが配列されている行方向に沿う方向である。また、当該X方向に対して直交するY方向は、画素PEが配列されている列方向に沿う方向である。X方向はY方向に対して直交している。
【0022】
平面視において、
図1に示す各画素PEの面積の大部分は、受光部(受光素子)であるフォトダイオードが占めている。画素領域PER、画素PEおよびフォトダイオードは、平面視において矩形の形状を有している。
【0023】
周辺回路領域CRは、画素読み出し回路、出力回路、行選択回路および制御回路を備えている。
【0024】
なお、本願では、半導体基板と、当該半導体基板上に形成されたエピタキシャル層(エピタキシャル成長層、半導体層)とをまとめて基板または半導体基板と呼ぶ場合がある。上記フォトダイオードはエピタキシャル層を含む半導体基板の上面に形成されており、上述した各種の回路を構成する電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域およびチャネルは、エピタキシャル層を含む半導体基板の上面に位置する。
【0025】
複数の画素PEのそれぞれは、照射される光の強度に応じた信号を生成する。行選択回路は、複数の画素PEを行単位で選択する。行選択回路によって選択された画素PEは、生成した信号を出力線に出力する。読み出し回路は、画素PEからに出力された信号を読み出して出力回路に出力する。
【0026】
読み出し回路は、複数の画素PEの信号を読み出す。出力回路は、読み出し回路が読み出した画素PEの信号を、固体撮像素子ISの外部に出力する。制御回路は、固体撮像素子IS全体の動作を統括的に管理し、固体撮像素子ISの他の構成要素の動作を制御する。
【0027】
図2に、分離領域IRと、X方向(
図1参照)において当該分離領域IRを挟む画素領域PERおよび周辺回路領域CRとを含む断面を示す。
図2の画素領域PERには、X方向における画素領域PERの端部に配置された2つの画素PEを示している。また、
図2の周辺領域には、例えば、上述した画素読み出し回路、出力回路、行選択回路および制御回路のいずれかを構成するトランジスタ(電界効果トランジスタ)Q1を示している。分離領域IRは、画素領域PERと周辺回路領域CRとを分離する領域であり、画素領域PERと周辺回路領域CRとの相互間における電子および光の移動を防ぐためのDTI構造DTIを有する。
【0028】
図2に示すように、固体撮像素子は、N
−型の半導体基板SBと、半導体基板SBの上面に接して半導体基板SB上に形成されたP型のエピタキシャル層(半導体層)EPとを有している。半導体基板SBの厚さ、つまり半導体基板SBの主面と、当該主面の反対側の裏面までの距離は、例えば600μm以上である。ここでの半導体基板SBの厚さは、例えば700μmである。
【0029】
半導体基板SBのN型不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))の濃度は、例えば1×10
16atm/cm
3未満であり、具体的には例えば1×10
15程度である。エピタキシャル層EPの膜厚は、例えば5μmより大きく10μm以下である。エピタキシャル層EPのP型の不純物(例えばB(ホウ素))の濃度は、例えば1×10
16〜1×10
17atm/cm
3程度である。半導体基板SBの抵抗率は、例えば1〜20Ωcm程度であり、エピタキシャル層EPの抵抗率は、例えば1〜20Ωcm程度である。
【0030】
画素領域PERおよび周辺回路領域CRでは、エピタキシャル層EPの上面に、素子同士を分離する素子分離領域(素子分離部、素子分離膜)EIが形成されている。素子分離領域EIは、エピタキシャル層EPの上面に形成された溝内に埋め込まれた酸化シリコン膜などの絶縁膜により構成されている。画素領域PERでは、隣り合う画素PE同士の間のエピタキシャル層EPの上面に素子分離領域EIが形成されており、素子分離領域EIから露出する領域(活性領域)のエピタキシャル層EPの上面には、フォトダイオードPDが形成されている。素子分離領域EIはSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有しているが、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)構造を有していてもよい。
【0031】
フォトダイオードPDは、エピタキシャル層EPの上面に形成されたP
+型半導体領域PRと、P
+型半導体領域PRの底面に接してP
+型半導体領域PRの下のエピタキシャル層EP内に形成されたN型半導体領域NRとからなる。すなわち、フォトダイオードPDは、P
+型半導体領域PRおよびN型半導体領域NRのPN接合により構成されている。N型半導体領域NRのN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))の濃度は、例えば1×10
16〜1×10
17atm/cm
3程度である。つまり、N型半導体領域NRは、半導体基板SBよりも不純物濃度が高い。
【0032】
隣り合う画素PE同士の間の素子分離領域EIの直下のエピタキシャル層EP内には、素子分離領域EIの底面に接するエピタキシャル層EPの上面から、エピタキシャル層EPの途中深さに亘ってP
+型半導体領域PIが形成されている。P
+型半導体領域PIは、隣り合う画素PE同士の間で電子が移動することを防ぐ役割を有する。すなわち、分離領域であるP
+型半導体領域PIは、N型半導体領域NRおよびN型半導体領域NRよりも深い位置のエピタキシャル層EP内に光が入射した際、光電変換により生じた電子が、最も近いN型半導体領域NRではなく他の画素PEのN型半導体領域NRに移動して蓄積されることを防ぐために設けられた半導体領域である。
【0033】
ここで、図には示していないが、各画素PEには、フォトダイオードPDの他に、エピタキシャル層EPの上部に形成された転送トランジスタと、周辺トランジスタであるリセットトランジスタ、増幅トランジスタおよび選択トランジスタとが配置されている。フォトダイオードPDのN型半導体領域NRは、転送トランジスタのソース領域を構成する。固体撮像素子により撮像を行った場合、近赤外線などの光を受光したフォトダイオードPDに電荷が信号として発生し、当該電荷を、転送トランジスタにより転送用トランジスタドレイン領域に接続された浮遊拡散領域に転送する。この信号は、増幅トランジスタおよび選択トランジスタにより増幅されて上記出力線に出力される。このようにして、撮像により得られた信号を読出すことができる。なお、リセットトランジスタは、浮遊拡散領域に溜まった電荷をリセットするために用いられる。
【0034】
周辺回路領域CRでは、エピタキシャル層EPの上面にチャネル領域を有するトランジスタQ1が形成されている。ここでは、トランジスタQ1はNチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)であるものとして説明するが、トランジスタQ1はPチャネル型のMISFETでもよい。トランジスタQ1は、素子分離領域EIにより規定された活性領域において、エピタキシャル層EPの上面上にゲート絶縁膜GFを介して形成されたゲート電極GEを有している。ゲート電極GEの横のエピタキシャル層EPの上面には、平面視においてゲート電極GEを挟むように、ソース・ドレイン領域SDが形成されている。トランジスタQ1は、ゲート電極GEおよびソース・ドレイン領域SDからなる。
【0035】
ゲート絶縁膜GFは例えば酸化シリコン膜からなり、ゲート電極GEは例えばポリシリコン膜からなる。ソース・ドレイン領域SDは、エピタキシャル層EPの上面にN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))が導入されたN型半導体領域からなる。トランジスタQ1が動作する際には、ソース・ドレイン領域SDの間のエピタキシャル層EPの上面にチャネルが形成される。図示は省略するが、ソース・ドレイン領域SDおよびゲート電極GEのそれぞれの上面は、CoSi(コバルトシリサイド)などからなるシリサイド層により覆われている。
【0036】
エピタキシャル層EP上には、素子分離領域EI、フォトダイオードPDおよびトランジスタQ1を覆うように層間絶縁膜CLが形成されている。層間絶縁膜CLは、複数の絶縁膜を積層した積層膜である。例えば、層間絶縁膜CLは、エピタキシャル層EP上に堆積した窒化シリコン膜からなるライナー膜(エッチングストッパ膜)と、当該ライナー膜上に堆積された酸化シリコン膜とを含む。層間絶縁膜CLの上面は平坦化されている。
【0037】
分離領域IRの半導体基板SB上には、エピタキシャル層EPの上面から下面まで達する溝DTが形成されている。溝DTは、素子分離領域EIの下面に開口されている。ここで、溝DTの形成範囲は、素子分離領域EIの下面の位置からエピタキシャル層EPの底面までの間、または、フォトダイオードPD若しくはトランジスタQ1のチャネル領域が形成されたエピタキシャル層EPの上面からエピタキシャル層EPの下面までの間のいずれとも解釈することができる。いずれの場合においても、半導体基板SBの主面に対して垂直な方向における溝DTの深さは、素子分離領域EIが埋め込まれた溝の深さ、および、フォトダイオードPDの形成深さよりも大きい。
【0038】
ここでは、溝DTは、フォトダイオードPDおよびトランジスタQ1のチャネル領域が形成されたエピタキシャル層EPの上面からエピタキシャル層EPの下面に亘って形成されているものとして説明を行う。すなわち、溝DTは、分離領域IRに形成された素子分離領域EIを貫通している。つまり、溝DTは、当該素子分離領域EIおよび当該素子分離領域EIが埋め込まれた溝よりも幅が小さい。
【0039】
すなわち、溝DTの深さは、エピタキシャル層EPの厚さと同等であり、例えば5μmより大きく10μm以下である。実際には、溝DTの底面は半導体基板SBの途中深さまで達していることが考えられる。なお、図ではP
+型半導体領域PIはエピタキシャル層EPの途中深さまで形成されており、P
+型半導体領域PIの底部はエピタキシャル層EPの底面まで達していない。言い換えれば、P
+型半導体領域PIの底部(底面)とエピタキシャル層EPの底面とは離間している。
【0040】
これは、P
+型半導体領域PIがイオン注入法でエピタキシャル層EPの上面に形成されており、イオン注入法では、対象基板の上面から3〜5μm程度までしか不純物イオンを打ち込むことができないためである。
図1に示すように、分離領域IRは画素領域PERを囲んでいるため、画素領域PERのエピタキシャル層EPは、周辺回路領域CRのエピタキシャル層EPに対して、溝DTにより完全に分離されている。
【0041】
図2に示す溝DT内には、絶縁膜IL0からなるDTI(Deep Trench Isolation)構造(素子分離部)DTIが形成されている。絶縁膜IL0は複数の絶縁膜を積層した積層構造を有しているが、図では絶縁膜IL0を構成する各膜同士の境界の図示を省略し、絶縁膜IL0を1つの膜として示している。絶縁膜IL0は、例えば、半導体装置の製造工程において、流動性が高く被覆率が高い膜と、流動性が低く被覆率が低い膜と、流動性が高く被覆率が高い膜とを順に積層した構造を有している。これらの膜は、いずれも例えばTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜などからなる。つまり、絶縁膜IL0およびDTI構造DTIは、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0042】
絶縁膜IL0の一部は、層間絶縁膜CLの上面を覆っており、絶縁膜IL0の他の一部は、層間絶縁膜CLを貫通する開口部(溝)の内側と、素子分離領域EIおよびエピタキシャル層EPを貫通する溝DTの内側とに埋め込まれている。DTI構造DTIは、素子分離領域EIの上面から溝DTの底面に亘って形成されている。すなわち、DTI構造DTIの底部は半導体基板SBの主面に達している。なお、DTI構造DTIは、素子分離領域EIの底面に接するエピタキシャル層EPの上面から、溝DTの底面に亘って形成されていると解釈することもできる。
【0043】
絶縁膜IL0の上面は平坦化されている。素子分離領域EI上および層間絶縁膜CL上の絶縁膜IL0は、層間絶縁膜(コンタクト層)の一部を構成している。周辺回路領域CRには、絶縁膜IL0および層間絶縁膜CLを貫通するコンタクトホールが複数形成されている。複数のコンタクトホールのそれぞれは、ゲート電極GEまたはソース・ドレイン領域SDのそれぞれの上面に形成されたシリサイド層(図示しない)の上面に達している。各コンタクトホール内には、例えば主にW(タングステン)からなるプラグ(コンタクトプラグ、接続部)CPが埋め込まれており、上記シリサイド層を介して、ゲート電極GEまたはソース・ドレイン領域SDのそれぞれに電気的に接続されている。
【0044】
図示は省略しているが、コンタクトホールおよびプラグCPは、画素領域PERに形成された転送トランジスタおよび周辺トランジスタのそれぞれにも接続されている。ただし、フォトダイオードPDにはプラグCPは接続されていない。各プラグCPの上面は、絶縁膜IL0の上面と同じ高さの面において平坦化されている。
【0045】
層間絶縁膜CL、絶縁膜IL0およびプラグCPのそれぞれの上には、複数の配線層が積層されている。当該複数の配線層の数は適宜変更することができるが、ここでは構造を分かりやすくするため、配線層が3つあるものとして説明をする。すなわち、層間絶縁膜CL、絶縁膜IL0およびプラグCPのそれぞれの上には、第1配線層、第2配線層および第3配線層が順に積層されている。
【0046】
第1配線層は、層間絶縁膜CL、絶縁膜IL0およびプラグCPのそれぞれの上に形成された複数の配線M1と、配線M1の側壁および上部を覆う層間絶縁膜IL1と、層間絶縁膜IL1を貫通して配線M1の上面に接続された複数のビア(接続部)V1とを有している。配線M1は、例えば主にAl(アルミニウム)からなるパターンであり、プラグCPの上面に接続されている。つまり、配線M1はプラグCPを介して、エピタキシャル層EPの上面近傍に形成された各種の半導体素子に電気的に接続されている。層間絶縁膜IL1は、例えば酸化シリコン膜からなり、その上面はビアV1の上面と同一面内で平坦化されている。ビアV1は、例えば、層間絶縁膜IL1を貫通するビアホール内に埋め込まれた、主にCu(銅)からなる金属膜からなる。
【0047】
第2配線層は、第1配線層上に形成された層間絶縁膜IL2と、層間絶縁膜IL2を貫通する複数の配線溝のそれぞれの内部に埋め込まれた複数の配線M2とを有している。配線M2は主にCu(銅)からなるパターンであり、その上面は、層間絶縁膜IL2の上面と同一面内で平坦化されている。配線M2は、ビアV1を介して配線M1に電気的に接続されている。層間絶縁膜IL2は、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0048】
第2配線層上には、接続層を介して第3配線層が形成されている。接続層は、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILVと、層間絶縁膜ILVを貫通して配線M2の上面に接続された複数のビア(接続部)V2とを有している。第3配線層は、当該接続層の上に形成された配線M3と、配線M3の側壁および上部を覆う層間絶縁膜IL3とを有している。配線M3は、例えば主にAl(アルミニウム)からなるパターンでありビアV2を介して配線M2の上面に接続されている。層間絶縁膜IL3は、例えば酸化シリコン膜からなり、その上面は平坦化されている。
【0049】
画素領域PERにおいて、配線M1、M2、ビアV1およびV2は、フォトダイオードPDの直上には形成されていない。これは、金属膜からなる配線M1、M2、ビアV1およびV2が、フォトダイオードPDの上方からマイクロレンズMLを介して照射される光を遮蔽することを防ぐためである。ただし、画素領域PERの端部では、フォトダイオードPDの直上を覆うように配線M3が形成されている。このように配線M3を形成して画素PEを遮光する目的の1つは、撮像時に光が照射されない画素PEにおいて得られる微弱な信号を検出することにある。画素領域PERの当該端部以外の領域では、フォトダイオードPDの直上に配線M3は形成されていない。
【0050】
画素領域PERにおいて、第3配線層上には、カラーフィルタCFおよび複数のマイクロレンズMLが形成されている。マイクロレンズMLは、複数の画素の1つ1つに対応して1つ配置されている。カラーフィルタCFは、所定の波長の光を透過し、他の波長の光を遮断する材料からなる膜であり、所望の波長の光を各画素PEにおいて受光させるために用いられる。画素領域PER内において、カラーフィルタCFは、複数種類配置されていてもよい。マイクロレンズMLは、上面が半球状となっている絶縁膜からなる。
【0051】
撮像時において、撮像素子に照射された光は、マイクロレンズML、カラーフィルタCF、各配線層を順に透過してフォトダイオードPDに達する。これにより入射光がフォトダイオードPDのPN接合に照射されて、フォトダイオードPDおよびフォトダイオードPDの下のエピタキシャル層EPにおいて光電変換が起こる。その結果、電子が発生し、この電子は、フォトダイオードPDのN型半導体領域NR内に電荷として溜まる。このように、フォトダイオードPDは、入射光の光量に応じた信号電荷を、その内部に生成する受光素子、つまり光電変換素子である。
【0052】
なお、入射光が光電変換されて生じる電子は、N型半導体領域NR内のみならず、N型半導体領域NRの下のエピタキシャル層EP内においても生じる。エピタキシャル層EP内に生じた電子は、電子が溜まりやすいN型半導体領域NRに集まり、N型半導体領域NR内に電荷として蓄積される。したがって、P型の半導体層であるエピタキシャル層EPの厚さが大きい程、撮像により得られる電子の量が増大し、固体撮像素子の感度が向上する。
【0053】
また、N型半導体領域NRとエピタキシャル層EPとの間のPN接合も、フォトダイオードPDを構成している。ここでは、エピタキシャル層EPの上面に高濃度のP
+型半導体領域PRを形成することを説明したが、フォトダイオードPDは、P
+型半導体領域PRを有さず、N型半導体領域NRおよびエピタキシャル層EPのみにより構成されていてもよい。
【0054】
<半導体装置の効果について>
以下に、
図34に示す比較例を用いて本実施の形態の半導体装置の効果について説明する。
図34は、比較例である半導体装置を示す断面図である。
図34では、
図2と同様に、固体撮像素子の画素領域PERの端部、分離領域IRおよび周辺回路領域CRを示している。本実施の形態の固体撮像素子および比較例の固体撮像素子は、いずれも近赤外光の受光により撮像を行うことを目的とする素子である。
【0055】
比較例の固体撮像素子は、N型の半導体基板SBと、その上に形成されたN型のエピタキシャル層EPNを有しており、画素領域PERおよび周辺回路領域CRのエピタキシャル層EPNの上面には、P型のウェル(半導体領域)WL1が、エピタキシャル層EPNの上面からエピタキシャル層EPNの途中深さに亘って形成されている。画素領域PERおよび周辺回路領域CRにおける素子分離領域EI、フォトダイオードPDおよびトランジスタQ1の構造は、本実施の形態と同様である。また、エピタキシャル層EPN上の構造は、絶縁膜IL0(
図2参照)が形成されていない点を除き、本実施の形態と同様である。
【0056】
画素領域PERのウェルWL1の底部には、ウェルWL1よりもP型不純物濃度が高いP
+型のウェルWL2が形成されている。また、分離領域IRにおいて、素子分離領域EIの底面の下には、エピタキシャル層EPNの上面からエピタキシャル層EPNの途中深さに亘ってN型のウェルWL3が形成されている。ウェルWL3は、画素領域PERのウェルWL1と、周辺回路領域CRのウェルWL1とを分離するために形成されている。すなわち、N型のウェルWL3内には電子が溜まりやすいため、周辺回路領域CRのウェルWL1内に生じた電子が、当該ウェルWL3を通って画素領域PERに移動することにより、画素PEが誤った信号を検出することを防いでいる。
【0057】
このため、ウェルWL3は、ウェルWL1と同等の深さまで形成されている。ウェルWL1の形成深さは、例えばエピタキシャル層EPNの上面から3〜5μmである。この3〜5μmという値は、不純物イオンの注入装置によりイオン注入を行ってP型のウェルWL1を形成することができる限界の数値である。これ以上深いウェルを形成することは、エピタキシャル層EPN内に多くの欠陥が生じる原因となるため、困難である。
【0058】
ここで、波長が長い近赤外光を受光する撮像素子では、P型の半導体領域、つまり、ここではウェルWL1の形成深さが大きい程、撮像により得られる電子の量が増大し、固体撮像素子の感度が向上する。なお、ウェルWL1、WL2よりも下のN型のエピタキシャル層EPN内および半導体基板SB内で電子が発生しても、当該電子は電荷が溜まりやすいエピタキシャル層EPN内および半導体基板SB内に留まるため、当該電子をフォトダイオードPDにより検出することはできない。
【0059】
上記比較例では、P型のウェルWL1、WL2を形成することができる深さに限界があるため、光電変換が行われる領域を拡大することで撮像素子の感度を向上させることが困難である。特に、近赤外光は可視光に比べて波長が長いため、光電変換が可能な領域であるP型の半導体領域、つまりウェルWL1の深さが小さいと、撮像素子の感度を向上させることが困難である。
【0060】
そこで、本発明者らは、P型の半導体基板上に、P型のエピタキシャル層を形成することで得られる半導体基板を用いて撮像素子を形成することを検討した。また、ここでは、電荷の発生する領域を広く確保するため、エピタキシャル層の厚さを5μmより大きくしている。このような撮像素子を形成した結果、比較例に比べて近赤外光の感度を2倍上昇させることができた。しかし、発明者らは以下のような問題があることを見出した。
【0061】
すなわち、P型の半導体基板上にP型のエピタキシャル層を形成した場合、暗電流が増大する第1の問題と、周辺回路領域近傍の画素においてノイズまたは暗電流が多く発生し、これにより、撮像を行って得られた画像にむらが生じる第2の問題とが発生する。これらの問題は、互いに接続された半導体基板およびエピタキシャル層がいずれも同一の導電型を有することで、電子が半導体基板およびエピタキシャル層の内部を容易に移動することにある。
【0062】
例えば、暗電流またはノイズが発生する状況としては、例えば、半導体基板内に生じた電子が画素領域のエピタキシャル層内に移動する場合、または、周辺回路領域のエピタキシャル層内の電子が、画素領域のエピタキシャル層内に移動する場合が考えられる。なお、ノイズは、周辺回路から画素領域に電子が移動することで生じる。これに対し、
図34に示すN型のウェルWL3を形成しても、周辺回路領域および画素領域間の電子の移動を防ぐことはできない。なぜならば、5μmよりも大きいエピタキシャル層の上面にイオン注入法でウェルWL3を形成しても、ウェルWL3の形成深さには限界があり、エピタキシャル層の底部まで達しないからである。このため、周辺回路領域に生じた電子は、ウェルWL3の下のエピタキシャル層内または半導体基板内を移動し、画素において検出される。
【0063】
また、画素領域と周辺回路領域との間の分離領域に、エピタキシャル層の上面から半導体基板の上面まで達するDTI構造を形成したとしても、上記のような電子の移動を防ぐことはできない。なぜならば、周辺回路領域に生じた電子は、DTI構造の下のP型の半導体基板内を移動して画素領域のエピタキシャル層に移動するからである。このように、P型の半導体基板およびP型のエピタキシャル層を基板として有する固体撮像素子では、感度を向上させることはできても、暗電流などの発生を防ぐことは困難である。
【0064】
そこで、本発明者らは、N
−型の半導体基板上にP型のエピタキシャル層を形成し、かつ、エピタキシャル層を貫通するDTI構造を形成することで、感度の向上と、暗電流およびノイズの発生の防止とを両立することが可能であることを見出した。すなわち、
図2に示すように、本実施の形態では、N
−型の半導体基板SB上にP型のエピタキシャル層EPが形成されており、分離領域IRには、エピタキシャル層EPを貫通するDTI構造DTIが形成されている。
【0065】
本実施の形態では、P型のエピタキシャル層EPを5μmより大きい厚さで形成することで、比較例のようにイオン注入法でP型のウェルWL1(
図34参照)を形成する場合に比べて、光電変換を行う領域(深さ)を拡大することができる。このため、固体撮像素子の感度を向上させることができる。近赤外光は可視光線に比べて波長が長いため、このように光の照射方向において大きい光電変換領域を設けることが、感度向上の観点から有効である。
【0066】
このとき、N
−型の半導体基板SB内に電子が発生し、または、エピタキシャル層EP内で発生した電子が半導体基板SB内に移動したとしても、それらの電子がエピタキシャル層EP内に移動して暗電流となることを防ぐことができる。これは、半導体基板SBの導電型がN型であり、半導体基板SB内において電子が多数キャリアであることで、半導体基板SB内の電子は、P型のエピタキシャル層EPへ移動しにくいためである。したがって、フォトダイオードPDの直下で生じた電子が、半導体基板SBを介して、当該フォトダイオードPDを有する画素PEとは異なる他の画素PEに移動することを防ぐことができ、また、周辺回路領域CRのエピタキシャル層EP内の電子が、半導体基板SBを介して画素PEに移動することを防ぐことができる。これにより、画素領域PERにおける暗電流の発生およびノイズの発生を防ぐことができる。
【0067】
また、分離領域IRにおいて、エピタキシャル層EPの上面から半導体基板SBの上面に達するDTI構造DTIが形成されていることで、周辺回路領域CRのエピタキシャル層EP内の電子が、画素領域PERに移動することを防ぐことができる。すなわち、DTI構造DTIにより周辺回路領域CRおよび画素領域PERのそれぞれのエピタキシャル層EPを分離することで、それらのエピタキシャル層EP間において直接電子が移動することを防ぐことができる。加えて、DTI構造DTIの底部がN
−型の半導体基板SBの上面に接することで、周辺回路領域CRのエピタキシャル層EP内の電子が、半導体基板SB内を経由して画素領域PERに移動することを防ぐことができる。これにより、画素領域PERにおける暗電流の発生およびノイズの発生を防ぐことができる。
【0068】
以上より、本実施の形態の半導体装置では、固体撮像素子の感度を向上させ、かつ、暗電流の発生およびノイズの発生を防ぐことができるため、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0069】
なお、N
−型の半導体基板SBおよびP型のエピタキシャル層EPを有する固体撮像素子の分離領域IRにおいて、DTI構造DTIを形成せず、比較例のようにN型のウェルWL3またはP型のウェルをイオン注入法により形成しても、周辺回路領域CRおよび画素領域PER間の電子の移動を防ぐことはできない。イオン注入法では、それらのウェルをエピタキシャル層EPの底部まで深く形成することができないためである。
【0070】
<半導体装置の製造方法について>
以下に、
図3〜
図9を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。
図3〜
図9は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を説明する断面図であり、
図2に対応する場所における断面図である。つまり、
図3〜
図9の各図では、左から順に画素領域PER、分離領域IRおよび周辺回路領域CRを示している。画素領域PERは、
図1に示すように、周辺回路領域CRに囲まれており、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間に分離領域IRが存在する。
【0071】
半導体装置の製造工程では、まず、
図3に示すように、例えば単結晶シリコン(Si)からなるN
−型の半導体基板SBを準備する。その後、半導体基板SBの上面上にエピタキシャル成長法を用いてP型のエピタキシャル層EPを形成する。エピタキシャル層EPの厚さは5μmより大きく、10μm以下である。エピタキシャル層EPの形成工程では、半導体基板SB上にB(ホウ素)を加えながらエピタキシャル成長層を成膜する。これにより、エピタキシャル層EPは比較的低濃度のP型半導体層となる。
【0072】
次に、エピタキシャル層EPの主面に複数の溝を形成し、それらの溝内に素子分離領域EIを形成する。これにより、素子分離領域EIから半導体基板SBの上面が露出する領域、つまり活性領域を規定(区画)する。素子分離領域EIは、例えばSTI法またはLOCOS法などにより形成することができる。ここでは、素子分離領域EIはSTI法により形成されている。素子分離領域EIは、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により上記溝内に形成された酸化シリコン膜からなる。分離領域IRには、画素領域PERを平面視において囲むように素子分離領域EIを形成する。ここで活性領域を規定することで、画素領域PERに行列状に並ぶ複数の画素PEが形成される。
【0073】
次に、隣り合う画素PE同士を互いに分離するための不純物注入、つまり画素間分離注入を行う。すなわち、隣り合う画素PE同士の間の素子分離領域EIの直下のエピタキシャル層EPの上面に、P型の不純物(例えばB(ホウ素))をイオン注入法などにより打ち込むことで、半導体基板の上面にP
+型半導体領域PIを形成する。エピタキシャル層EPの厚さが大きいため、P
+型半導体領域PIの底部は半導体基板SBの主面に達しない。
【0074】
画素間分離注入を行うことにより、後に形成する画素PE間において、電子に対するポテンシャル障壁を形成する。これにより、互いに隣接する画素PE同士の間で電子が拡散することを防ぎ、撮像素子の感度特性を向上させることが可能となる。
【0075】
次に、エピタキシャル層EP上にゲート絶縁膜GFを介してゲート電極GEを形成する。ここでは、エピタキシャル層EP上に例えば酸化法により酸化シリコン膜を形成した後、例えばCVD法を用いて当該酸化シリコン膜上にポリシリコン膜を形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、当該ポリシリコン膜および当該酸化シリコン膜を加工する。これにより、当該ポリシリコン膜からなるゲート電極GEと、当該酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜とを形成する。この工程では、画素領域PERの図示していない領域では、転送用トランジスタまたは周辺トランジスタを構成するゲート絶縁膜およびゲート電極も形成される。
【0076】
次に、画素領域PERのエピタキシャル層EPの上面に、N型半導体領域NRおよびP
+型半導体領域PRを含むフォトダイオードPDを形成する。すなわち、画素領域PERの半導体基板SBの主面に、N型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))を、例えばイオン注入法により打ち込むことで、活性領域のうち、受光部を形成する領域にN型半導体領域NRを形成する。また、画素領域PERの半導体基板SBの主面に、P型の不純物(例えばB(ホウ素))を、例えばイオン注入法により打ち込むことで、活性領域のうち、受光部を形成する領域にP
+型半導体領域PRを形成する。N型半導体領域NRの形成深さは、P
+型半導体領域PIよりも浅い。
【0077】
ここで、上記イオン注入法による打ち込みは、フォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト膜(図示しない)と、転送用トランジスタのゲート電極とをマスク(注入阻止マスク)として用いて行う。
【0078】
次に、フォトダイオードPDが形成されていない箇所の活性領域内の一部にN型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))を、例えばイオン注入法により打ち込むことで、N型の不純物領域であるソース・ドレイン領域SDを形成する。また、この工程により、転送トランジスタのドレイン領域を構成する浮遊拡散領域(浮遊拡散容量部)を形成する。これにより、ソース・ドレイン領域SDと、ゲート電極GEとを有するNチャネル型のトランジスタQ1を周辺回路領域CRに形成する。また、画素領域PERの図示していない領域では、浮遊拡散領域をドレイン領域として有し、N型半導体領域NRをソース領域として有する転送トランジスタを形成する。また、画素領域PERの各画素PEには、周辺トランジスタとして、ソース・ドレイン領域およびゲート電極を有する増幅トランジスタ、リセットトランジスタおよび選択トランジスタが形成される。
【0079】
次に、図示は省略するが、画素領域PERおよび分離領域IRを覆い、周辺回路領域CRのトランジスタQ1を露出する絶縁膜を形成した後、周知のサリサイドプロセスを行うことで、ソース・ドレイン領域SDおよびゲート電極GEのそれぞれの上面にシリサイド層を形成する。シリサイド層(図示しない)は、例えばNiSi(ニッケルシリコン)またはCoSi(コバルトシリコン)からなる。
【0080】
当該シリサイド層は、上記絶縁膜(図示しない)を形成した後、当該絶縁膜およびトランジスタQ1の上部を覆うように、Ni(ニッケル)またはCo(コバルト)を主に含む金属膜をスパッタリング法により形成した後、熱処理を行って当該金属膜と、ソース・ドレイン領域SDおよびゲート電極GEのそれぞれの上面とを反応させることで形成することができる。その後、未反応の余分な当該金属膜を除去することで、
図3に示す構造を得ることができる。
【0081】
次に、
図4に示すように、エピタキシャル層EP上に層間絶縁膜CLを形成する。層間絶縁膜CLは、例えば、エピタキシャル層EP上にCVD法などにより窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を積層することで形成する。つまり、層間絶縁膜CLは、当該窒化シリコン膜からなるライナー膜と、その上の厚い酸化シリコン膜とを含む積層膜である。当該ライナー膜は、後にコンタクトホールを形成する際のエッチングストッパ膜として機能する。なお、ここでは当該ライナー膜および当該酸化シリコン膜を1つの膜として図示している。続いて、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、層間絶縁膜CLの上面を研磨して平坦化する。
【0082】
次に、
図5に示すように、フォトリソグラフィ技術により層間絶縁膜CL上にフォトレジストパターンを形成した後、当該フォトレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことで、分離領域IRの層間絶縁膜CLおよび素子分離領域EIを除去し、これにより素子分離領域EIに覆われていたエピタキシャル層EPの上面を露出させる。
【0083】
その後、当該フォトレジストパターンを除去した後、層間絶縁膜CLをマスクとして用いてドライエッチングを行うことで、分離領域IRのエピタキシャル層EPを開口する。つまり、分離領域IRに、エピタキシャル層EPを貫通する溝DTを形成する。当該ドライエッチング工程では、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜などに対して選択比を有し、シリコン膜に対してエッチングレートが高い条件でエッチングを行う。溝DTおよびその上の開口部は、平面視において画素領域PERを囲んでいる。溝DTの底面には、半導体基板SBの主面が露出している。
【0084】
次に、
図6に示すように、溝DT内を含むエピタキシャル層EP上に、例えばCVD法などを用いて絶縁膜IL0を形成(堆積)することで、溝DT内を絶縁膜IL0により完全に埋め込む。これにより、溝DT内に、絶縁膜IL0からなるDTI構造DTIを形成する。ここでは、複数の絶縁膜を積層することで、当該複数の絶縁膜からなる絶縁膜IL0を形成する。なお、絶縁膜IL0を1つの膜により形成してもよい。本実施の形態では、溝DT内に空隙は形成せず、溝DT内は絶縁膜IL0により完全に埋め込まれる。
【0085】
絶縁膜IL0の形成工程では、絶縁膜IL0を構成する膜を成膜した後、流動性を有する当該膜を固めるため、加熱を行う。当該加熱は、RTA(Rapid Thermal Annealing)であり、その温度は700℃以下である。なお、本実施の形態の製造工程では、溝DTを形成した後の工程を、すべて700℃以下の温度で行う。
【0086】
次に、
図7に示すように、層間絶縁膜CL上にフォトレジストパターン(図示しない)を形成し、当該フォトレジストパターンをマスクとしてドライエッチングを行うことで、絶縁膜IL0および層間絶縁膜CLを加工する。これにより、複数のコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの底部では、ゲート電極GEおよびソース・ドレイン領域SDのそれぞれが絶縁膜IL0および層間絶縁膜CLから露出している。すなわち、コンタクトホールは絶縁膜IL0および層間絶縁膜CLを貫通している。各コンタクトホールの底部では、ゲート電極GEおよびソース・ドレイン領域SDのそれぞれの上面を覆うシリサイド層(図示しない)が露出している。この工程では、図示していない転送トランジスタおよび周辺トランジスタのそれぞれの電極を露出するコンタクトホールも形成する。
【0087】
次に、
図8に示すように、複数のコンタクトホール内を含む絶縁膜IL0上に金属膜を形成した後、絶縁膜IL0上の当該金属膜を、例えばCMP法により研磨することで除去する。これにより絶縁膜IL0の上面を露出させることで、複数のコンタクトホールのそれぞれに埋め込まれた当該金属膜からなるプラグ(コンタクトプラグ)CPを形成する。プラグCPは、例えば、コンタクトホール内の側壁および底面を覆う窒化チタン膜と、当該底面上に当該窒化チタン膜を介してコンタクトホール内に埋め込まれたタングステン膜とを含む積層膜により構成される。当該窒化チタン膜はバリアメタル膜であり、CVD法またはスパッタリング法により形成する。また、タングステン膜は、主導体膜であり、例えばCVD法により形成する。
【0088】
次に、
図9に示すように、絶縁膜IL0およびプラグCPのそれぞれの上に、第1配線層、第2配線層、接続層、第3配線層、カラーフィルタCFおよびマイクロレンズMLを順に形成する。その後、半導体基板SBをダイシングすることで切削し、これにより半導体基板SBを個片化することで、複数の半導体チップ、つまり複数の固体撮像素子を得ることができる。ダイシング工程では、周辺回路領域CRを平面視において囲むスクライブライン(図示しない)を切削する。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0089】
具体的には、
図8に示す構造を得た後、
図9に示すように、絶縁膜IL0およびプラグCPのそれぞれの上に、例えばスパッタリング法によりアルミニウム膜を形成する。その後、当該アルミニウム膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて加工することで、プラグCPに電気的に接続された当該アルミニウム膜からなる配線M1を形成する。なお、各画素PEにおいて、フォトダイオードPDの直上にはアルミニウム膜を残していない。
【0090】
続いて、絶縁膜IL0上および配線M1上に、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL1を形成する。その後、例えばCMP法により層間絶縁膜IL1の上面を研磨し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、層間絶縁膜IL1を貫通し、配線M1の上面を露出する複数のビアホールを形成する。続いて、各ビアホール内を埋め込むように層間絶縁膜IL1上に銅膜をスパッタリング法により形成した後、CMP法などにより、層間絶縁膜IL1上の銅膜を除去することで、当該銅膜からなるビアV1を各ビアホール内に形成する。これにより、配線M1、層間絶縁膜IL1およびビアV1を有する第1配線層を形成する。
【0091】
続いて、第1配線層上に、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL2を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、層間絶縁膜IL2を貫通し、ビアV1の上面を露出する複数の配線溝を形成する。続いて、ビアV1の形成工程と同様の工程を行って、各配線溝の内部を埋め込む銅膜からなる配線M2を形成する。すなわち、配線M2は、いわゆるシングルダマシン法により形成される。層間絶縁膜IL2および配線M2は、第2配線層を構成している。
【0092】
続いて、第2配線層の形成工程と同様の工程を行うことで、接続層を形成する。つまり、第2配線層上に層間絶縁膜ILVを形成した後、層間絶縁膜ILVを貫通し、配線M2の上面を露出する複数のビアホールを形成する。その後、各ビアホールを埋め込む銅膜からなるビアV2を形成する。層間絶縁膜ILVおよびビアV2は、接続層を構成している。
【0093】
続いて、配線M1および層間絶縁膜IL1の形成工程と同様の工程を行うことで、接続層上に配線M3および層間絶縁膜IL3を形成する。つまり、アルミニウム膜からなり、ビアV2に接続された配線M3のパターンを複数形成し、続いて、複数の配線M3を覆う層間絶縁膜IL3を層間絶縁膜ILV上に形成する。これにより、配線M3および層間絶縁膜IL3からなる第3配線層を形成する。
【0094】
カラーフィルタCFは、例えば層間絶縁膜IL3上に、所定の波長の光を透過し、他の波長の光を遮断する材料からなる膜を成膜することで形成する。カラーフィルタCF上のマイクロレンズMLは、カラーフィルタCF上に形成した膜を、平面視において円形のパターンに加工した後、例えば当該膜を加熱することで当該膜の上面および側壁からなる表面を丸め、これにより当該膜をレンズ状に加工することで形成する。
【0095】
<半導体装置の製造方法の効果>
以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について説明する。
【0096】
図34に示す比較例を用いて説明したように、N型の半導体基板SBおよびN型のエピタキシャル層EPNを含む基板の上面にP型のウェルWL1を形成した場合、近赤外光の感度を向上させることが困難である問題がある。これに対し、P型の半導体基板およびP型のエピタキシャル層を含む基板を用いて撮像素子を形成した場合、感度を向上させることはできるが、暗電流およびノイズが発生するという問題が生じる。
【0097】
そこで、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、
図3〜
図9を用いて説明したようにN
−型の半導体基板SB上にP型のエピタキシャル層EPを形成し、分離領域IRに、エピタキシャル層EPを貫通するDTI構造DTIを形成することで、撮像素子の感度の向上と、暗電流またはノイズの発生の防止とを実現している。つまり、本実施の形態の半導体装置について説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0098】
加えて、ここでは、DTI構造DTIを形成する箇所を、素子分離領域EIが形成された領域に限定している。つまり、溝DTを、活性領域に形成していない。言い換えれば、DTI構造DTIおよび溝DTのそれぞれの全体は、平面視において分離領域IRに形成された素子分離領域EIの内側に形成されている。これにより、溝DT上の層間絶縁膜CLの開口部、および、溝DTのそれぞれを形成する際のエッチングにより、活性領域のエピタキシャル層EPの上面にダメージが生じ、当該ダメージが画素領域PERの活性領域または周辺回路領域CRの活性領域に形成された半導体素子に影響を与えることを防ぐことができる。
【0099】
また、ここでは、トランジスタQ1、転送トランジスタ、周辺トランジスタおよびフォトダイオードPDなどの半導体素子を形成した後に溝DTおよびDTI構造DTIを形成しているが、DTI構造DTIを構成する絶縁膜IL0を形成する際の最高温度を700℃としている。これにより、DTI構造DTIの形成工程の温度により、各トランジスタなどの半導体素子の特性が変動することを防ぐことができる。
【0100】
また、本実施の形態では、上記のように溝DTの形成時のエッチングダメージが素子に影響を及ぼすことを防ぐことができ、かつ、製造工程の温度により半導体素子の特性が変動することを防ぐことができるため、溝DTおよびDTI構造DTIの形成工程の追加に伴い、素子形成条件を再調整する必要がない。したがって、半導体装置の開発期間を短縮することができ、製造コストを低減することができる。
【0101】
<変形例>
以下に、
図10を用いて、本実施の形態の半導体装置およびその製造方法の変形例について説明する。
図10は、本実施の形態の変形例である半導体装置を示す平面図であり、
図1に対応するものである。
【0102】
図1では、分離領域IRを平面視において矩形の環状構造を有する領域として形成している。しかし、当該矩形の領域の角部に分離領域IRを形成せず、矩形の画素領域PERの角部と周辺回路領域CRとが接するようなレイアウトを採用してもよい。すなわち、
図10に示すように、分離領域IRを環状に形成せず、分離領域IRを、平面視において矩形形状を有する画素領域PERの4辺に沿うように4箇所に形成してもよい。
【0103】
この場合、
図3に示すDTI構造DTIも、
図10に示す分離領域IRと同様に、画素領域PERの4辺に沿って4つ形成される。延在するそれらの4つのDTI構造DTIのそれぞれの延在方向における端部は、互いに接続されず離間している。このため、画素領域PERの角部と周辺回路領域CRとの間では、エピタキシャル層EPを貫通する溝DT(
図3参照)は形成されていない。
【0104】
平面視において、画素領域PERの4辺に沿う溝DTの幅であって、当該4辺のそれぞれに直交する方向における溝DTの幅は、一定である。ここで、平面視において分離領域IRのDTI構造DTIを、矩形の環状構造を有するレイアウトで形成した場合、画素領域PERの角部と、分離領域IRの外側の角部との間の対角線の長さは、溝DTの上記幅よりも大きい。つまり、矩形の環状構造を有する溝DTは、平面視における角部において他の領域よりも幅が大きい箇所がある。このように、幅が大きい溝DT内を埋め込むようにDTI構造DTIを形成しようとすると、DTI構造DTIの形状を安定して形成することが困難であり、半導体装置の信頼性が低下する虞がある。
【0105】
そこで、本変形例では、画素領域PERの角部の近傍にはDTI構造DTIを形成していない。つまり、平面視において、DTI構造DTIは、折れ曲がるレイアウトを有していない。このため、ここでは溝DTを安定して埋込むことができる。
【0106】
(実施の形態2)
以下では、
図11および
図12を用いて、本実施の形態2である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、DTI構造の内部に空隙を形成することについて説明する。
図11および
図12は、本実施の形態である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0107】
ここでは、まず、
図3〜
図5を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、基板の上面近傍にフォトダイオードPDおよびトランジスタQ1などの素子を形成し、層間絶縁膜CLと、溝DTとを形成する。
【0108】
次に、
図11に示すように、溝DT内を含むエピタキシャル層EP上に、例えばCVD法により絶縁膜IL0を形成することにより、層間絶縁膜CLの上面を絶縁膜IL0により覆い、かつ、溝DT内に絶縁膜IL0を埋め込む。ただし、溝DT内は絶縁膜IL0により完全には埋め込まれず、溝DT内の中心部には、周囲を絶縁膜IL0に囲まれた空隙SPが形成される。これにより、溝DT内の絶縁膜IL0および空隙SPを有するDTI構造DTIを形成する。
【0109】
ここで、絶縁膜IL0は単層または複数層の膜により形成するが、少なくとも、成膜工程において流動性が低く被膜性が低い膜を有する。
【0110】
絶縁膜IL0を複数層の膜により形成する場合には、まず、
図5に示す構造を得た後、流動性が高く、被膜性が高い第1絶縁膜をCVD法により形成する。このとき、溝DTは完全には埋め込まれない。
【0111】
続いて、流動性が低く、被膜性が低い第2絶縁膜をCVD法により形成する。第2絶縁膜は溝DT内の下方よりも上方において厚く形成される。したがって、溝DTの上部では、溝DTの対向する側壁のそれぞれを覆う第2絶縁膜同士が大きい膜厚で形成されるため、互いに接近する。ここでは、溝DTの対向する側壁のそれぞれを覆う第2絶縁膜同士は、互いに接触してもよいし、接触しなくてもよい。すなわち、第2絶縁膜を形成した時点で、溝DT内に閉塞された空隙SPが形成されていてもよいが、第2絶縁膜が閉塞せず、空隙SPが未だ形成されていなくてもよい。
【0112】
続いて、流動性が高く、被膜性が高い第3絶縁膜をCVD法により形成する。これにより、第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜からなる絶縁膜IL0が形成される。第2絶縁膜が溝DT内で閉塞し、空隙SPが形成されている場合には、空隙SPよりも上に第3絶縁膜が堆積する。第2絶縁膜が溝DT内で閉塞していない場合には、第3絶縁膜が溝DT内の表面を覆い、かつ、溝DTの上部において、溝DTの対向する側壁のそれぞれを覆う第3絶縁膜同士が互いに接触する。すなわち、絶縁膜IL0が溝DTの上部において閉塞し、これにより空隙SPが形成される。
【0113】
第1絶縁膜および第3絶縁膜は、O
3TEOS膜からなる。例えばO
3TEOS膜からなる第1絶縁膜および第3絶縁膜は、良好な段差被覆性を有し、かつ、良好な流動性を有する。したがって、溝DTの側面にスキャロップと呼ばれる凹凸が形成されている場合でも、溝DTの側面にO
3TEOS膜からなる第1絶縁膜を形成することにより、溝DTの側面に形成される第1絶縁膜の表面を平坦化することができる。つまり、このような凹凸を覆い、溝DT内の表面を平坦化するために、流動性の良好な第1絶縁膜を形成する必要がある。
【0114】
また、第2絶縁膜は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)ガスを含むガスを用いたPECVD法により形成することができる。このTEOSガスを含むガスを用いたプラズマ化学気相成長(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition;PECVD)により形成された酸化シリコン膜は、PTEOS膜と称される。
【0115】
また、ここでは、TEOSガスに代え、シラン(SiH
4)ガスを含むガスを用いたPECVD法により、酸化シリコン膜からなる第2絶縁膜を形成してもよい。このSiH
4ガスを含むガスを用いたPECVD法により形成された酸化シリコン膜は、P−SiO膜と称される。以下では、PTEOSまたはP−SiOからなる膜を、「PTEOS膜など」と呼ぶ場合がある。
【0116】
PTEOS膜などの段差被覆性は、O
3TEOS膜からなる第1絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれの段差被覆性より低い。また、PTEOS膜などの流動性は、O
3TEOS膜の流動性より低い。つまり、第2絶縁膜は、第1絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれに比べ、被膜性能が低く、カバレッジが悪い特性を有する。したがって、第2絶縁膜により、側壁および上面を有する層を覆う場合、当該側壁に形成される第2絶縁膜の膜厚は、当該上面上に形成される第2絶縁膜の膜厚よりも小さい。特に、当該側壁に沿う第2絶縁膜のうち、下方の第2絶縁膜の方が膜厚が小さく、上方の第2絶縁膜の方が膜厚が大きい。
【0117】
なお、第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれの成膜時の流動性には違いがあるが、いずれの膜も成膜の時点では流動性を有している。したがって、第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれを成膜する毎に、熱処理(RTA)を行って各絶縁膜を固体化する必要がある。第1絶縁膜、第2絶縁膜および第3絶縁膜のそれぞれに対して行う計3回の熱処理は、いずれも700℃以下で行う。
【0118】
絶縁膜IL0を形成した後は、絶縁膜IL0の上面を例えばCMP法により研磨して平坦化する。ただし、層間絶縁膜CLの上面は絶縁膜IL0から露出させない。その後の工程は、
図7〜
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図12に示す撮像素子が得られる。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0119】
本実施の形態の撮像素子は、DTI構造DTIが空隙SPを有している点で、前記実施の形態1と異なる。空隙SPは、溝DTの底部近傍から上部に亘って上下方向に長く形成される。素子同士の間を電気的に分離するDTI構造DTIが空隙SPを有する場合、絶縁性は高くなる。したがって、本実施の形態では、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができ、加えて、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間の絶縁性を高めることができる。つまり、電子が画素領域PERと周辺回路領域CRとの間で移動する可能性をより低減することができるため、暗電流およびノイズの発生を効果的に防ぐことができる。
【0120】
また、トランジスタQ1を含む周辺回路が駆動した際、トランジスタQ1などの素子から微量の光が発生する。このとき、トランジスタQ1などから生じた光が画素領域PERに入ると、暗電流およびノイズの発生の原因となる。これに対し、本実施の形態では、溝DT内に空隙SPが存在することにより、当該光を周辺回路領域CR側に反射し、画素領域PERの光電変換領域に当該光が入射することを防ぐことができる。
【0121】
すなわち、周辺回路領域CRで生じた光が、例えばエピタキシャル層EPおよび絶縁膜IL0を介して空隙SPの側壁に達した際、絶縁膜IL0と空隙SPとのそれぞれの屈折率が異なることに起因して反射が起こり、光は周辺回路領域CR側に戻る。これにより、暗電流などの発生を防ぐことができる。
【0122】
<変形例1>
以下では、
図13および
図14を用いて、本実施の形態2の変形例1である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、DTI構造が埋め込まれた溝の近傍の半導体基板およびエピタキシャル層の表面にP型半導体領域を形成することについて説明する。
図13および
図14は、本実施の形態の変形例1である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0123】
ここでは、まず、
図3〜
図5を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、基板の上面近傍にフォトダイオードPDおよびトランジスタQ1などの素子を形成し、層間絶縁膜CLと、溝DTとを形成する。
【0124】
次に、
図11に示すように、溝DT内を含むエピタキシャル層EP上に、例えばCVD法により絶縁膜IL0を形成することにより、層間絶縁膜CLの上面を絶縁膜IL0により覆い、かつ、溝DT内に絶縁膜IL0を埋め込む。ただし、溝DT内は絶縁膜IL0により完全には埋め込まれず、溝DT内の中心部には、周囲を絶縁膜IL0に囲まれた空隙SPが形成される。これにより、溝DT内の絶縁膜IL0および空隙SPを有するDTI構造DTIを形成する。
【0125】
次に、
図13に示すように、層間絶縁膜CLをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いてイオン注入工程を行うことで、P型の不純物(例えばB(ホウ素)またはBF
2(二フッ化ホウ素))を、溝DTの表面である半導体基板SBおよびエピタキシャル層EPのそれぞれの表面に打ち込む。これにより、溝DTの表面には、P型半導体領域PBRが形成される。上記イオン注入工程では、半導体基板SBの主面に対して斜め方向からイオン注入を行ってもよい。P型半導体領域PBRのP型不純物のピーク濃度は、例えば1×10
17atm/cm
3である。
【0126】
なお、ここでイオン注入によりP型半導体領域PBRを形成することについて説明したが、P型半導体領域PBRは、プラズマドーピングにより形成してもよい。すなわち、溝DTを形成して
図5に示す構造を得た後、プラズマ化したホウ素イオンの雰囲気において、半導体基板SBにバイアス電圧を印加することで、ホウ素を溝DTの表面に導入する方法により、P型半導体領域PBRを形成することができる。
【0127】
また、P型半導体領域PBRは、ホウ素を含む膜で溝DTの表面を覆った後に熱処理を行って形成してもよい。すなわち、溝DTを形成して
図5に示す構造を得た後、例えば、ホウ素を含む有機膜であるPBF(Poly Bolon Film)を塗布して溝DTの表面を覆い、続いて熱処理(RTA)を行うことで、PBF内のホウ素を溝DTの表面に拡散させ、これによりP型半導体領域PBRを形成することができる。また、PBFを形成せず、CVD法などにより、ホウ素を含むシリコン膜により溝DTの表面を覆い、続いて熱処理(RTA)を行うことで、当該シリコン膜内のホウ素を溝DTの表面に拡散させ、これによりP型半導体領域PBRを形成してもよい。
【0128】
次に、
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、溝DT内に、絶縁膜IL0からなるDTI構造DTIを形成する。ここではDTI構造DTIは空隙SPを有しているが、前記実施の形態1と同様に、空隙SPは形成されていなくてもよい。その後の工程は、
図7〜
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図14に示す撮像素子が得られる。これにより、本変形例の半導体装置が完成する。
【0129】
本変形例では、溝DTの側壁および底面であるエピタキシャル層EPおよび半導体基板SBのそれぞれの表面に、P型半導体領域PBRが形成されている点のみ、
図11および
図12を用いて説明した半導体装置と異なる。したがって、本変形例では、
図11および
図12を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0130】
さらに、本変形例では、溝DTの表面で発生する電子が、画素領域PERの光電変換領域または周辺回路領域CRに移動することを防ぐことができる。すなわち、溝DTはドライエッチング法により形成された凹部であり、その表面はドライエッチングによりダメージを受け、電子が発生しやすくなっていることが考えられる。この場合、溝DTの表面で生じた電子が光電変換領域または周辺回路に流出すると、半導体素子が正常に動作しなくなる虞がある。これに対し、本変形例のP型半導体領域PBRは多量の正孔を有し、当該正孔が電子を捕えるため、電子の流出を防ぐことができる。また、P型半導体領域PBRを構成するP型不純物がポテンシャル障壁となるため、当該表面で生じる電子が拡散することを防ぐことができる。
【0131】
<変形例2>
以下では、
図15および
図16を用いて、本実施の形態2の変形例2である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、DTI構造と、DTI構造が埋め込まれた溝との間に、高誘電率膜を形成することについて説明する。
図15および
図16は、本実施の形態の変形例2である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0132】
ここでは、まず、
図3〜
図5を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、基板の上面近傍にフォトダイオードPDおよびトランジスタQ1などの素子を形成し、層間絶縁膜CLと、溝DTとを形成する。
【0133】
次に、
図15に示すように、酸化法またはCVD法により、溝DTの表面を覆う酸化シリコン膜からなる絶縁膜IFを形成する。続いて、例えばCVD法を用いて、溝DTの表面を覆う絶縁膜HKを形成する。絶縁膜HKは、酸化シリコンおよび窒化シリコンのいずれよりも誘電率が高い膜、つまり、いわゆるhigh−k膜である。絶縁膜HKは、例えばHf(ハフニウム)を含む膜からなる。具体的には、絶縁膜HKは例えば酸化ハフニウム(HfO)からなる。
【0134】
次に、溝DT上の余分な絶縁膜HKを除去する。続いて、
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、溝DT内に、絶縁膜IF、HKを介してDTI構造DTIを形成する。なお、ここではDTI構造DTI中に空隙SPが形成されているが、前記実施の形態1と同様に、溝DT内に空隙SPが形成されていなくてもよい。これにより、DTI構造DTIと、溝DTの表面との間に絶縁膜IF、HKが設けられる。
【0135】
その後の工程は、
図7〜
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図16に示す撮像素子が得られる。これにより、本変形例の半導体装置が完成する。
【0136】
本変形例では、溝DT表面が絶縁膜IF、HKにより覆われている点のみ、
図11および
図12を用いて説明した半導体装置と異なる。したがって、本変形例では、
図11および
図12を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0137】
また、本変形例では、溝DTの側壁および底面であるエピタキシャル層EPおよび半導体基板SBのそれぞれの表面の上に、絶縁膜IFを介して絶縁膜HKが形成されている。絶縁膜HKは、負の固定電荷を有する膜であるため、絶縁膜IFを介して絶縁膜HKに対向するエピタキシャル層EPの表面および半導体基板SBの表面には、正孔が誘起される。
【0138】
本実施の形態の変形例1において上述したように、溝DTの表面には電子が生じ得るが、上記のように誘起された生じた正孔と当該電子とが再結合するため、当該電子が画素領域PERおよび周辺回路領域CRに拡散することを防ぐことができる。よって、当該電子が暗電流となること、または、当該電子によりトランジスタQ1が正常に動作しなくなることなどを防ぐことができる。
【0139】
なお、絶縁膜HKの膜厚は、例えば50nm以上である。このように十分な膜厚を有する絶縁膜HKを形成することで、絶縁膜HKの負の固定電荷を増大させることができる。
【0140】
<変形例3>
以下では、
図17〜
図20を用いて、本実施の形態2の変形例3である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、層間絶縁膜(コンタクト層)の形成前に、DTI構造の埋め込み用溝を形成した後、当該溝の表面にP型半導体層を形成し、続いて、層間絶縁膜形成用の膜によりDTI構造を形成することについて説明する。
図17〜
図20は、本実施の形態の変形例3である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0141】
ここでは、まず、
図3を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、基板の上面近傍にフォトダイオードPDおよびトランジスタQ1などの素子を形成する。
【0142】
次に、
図17に示すように、フォトレジスト膜PR1からなるレジストパターンを、トランジスタQ1上およびエピタキシャル層EP上に形成する。フォトレジスト膜PR1は、画素領域PERおよび周辺回路領域CRを覆い、分離領域IRの素子分離領域EIの上面の一部のみを露出するレジストパターンである。
【0143】
次に、
図18に示すように、フォトレジスト膜PR1をマスクとして用いてドライエッチングを行うことにより、溝DTを形成する。すなわち、素子分離領域EIを開口した後、素子分離領域EIが埋め込まれている溝の底面から半導体基板SBの主面まで達する開口部を形成する。これにより、これらの開口部からなる溝DTを形成する。続いて、フォトレジスト膜PR1をマスクとして用いて、
図13を用いて説明した方法と同様のイオン注入を行うことにより、溝DTの表面にP型半導体領域PBRを形成する。その後、フォトレジスト膜PR1を除去する。
【0144】
次に、
図19に示すように、溝DT内を含むエピタキシャル層EP上に、例えばCVD法により絶縁膜IL0を形成することにより、溝DT内にDTI構造DTIを形成する。当該絶縁膜IL0の形成方法は、
図11を用いて説明した方法と同様である。ただし、絶縁膜IL0は、例えばゲート電極GEの膜厚よりも大きい膜厚で形成する。そのために、絶縁膜IL0を構成する膜のうち、例えば上記第3絶縁膜を大きい膜厚で形成する。
【0145】
その後の工程は、
図7〜
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図20に示す撮像素子が得られる。これにより、本変形例の半導体装置が完成する。
【0146】
本変形例では、
図13および
図14を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例では、プラグCPを形成する層(コンタクト層)の層間絶縁膜と、溝DT内のDTI構造DTIとを同一工程により形成することで、半導体装置の製造工程を削減することができる。したがって、半導体装置の製造コストを低減することができる。また、エピタキシャル層EPの上面上において、当該層間絶縁膜の膜厚にばらつきが生じることを防ぐことができる。
【0147】
(実施の形態3)
以下では、
図21〜
図26を用いて、本実施の形態3である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、DTI構造内の空隙中に金属膜を埋め込むことについて説明する。
図21、
図22、
図24〜
図26は、本実施の形態である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図23は、本実施の形態である半導体装置の製造工程を説明する平面図である。
図24は
図23のB−B線における断面であり、
図25は
図23のC−C線における断面である。
【0148】
ここでは、まず、
図21に示すように、
図3〜
図5および
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、基板の上面近傍にフォトダイオードPDおよびトランジスタQ1などの素子を形成し、層間絶縁膜CLと、溝DTとを形成する。続いて、
図7および
図8を用いて説明した工程を行うことで、コンタクトホール内に埋め込まれたプラグCPを形成する。なお、コンタクトホールを形成する際、コンタクトホールは空隙SPに接しない。すなわち、空隙SPは閉塞された状態を維持している。
【0149】
次に、
図22に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、分離領域IRの絶縁膜IL0の上面の一部に溝D1を形成する。溝D1は、空隙SPの直上に形成され、絶縁膜IL0の上面から空隙SPに達する貫通孔である。これにより、空隙SPは、周囲を完全に閉塞された状態ではなくなる。溝D1を形成する際に行うドライエッチングは、溝D1の底部が空隙SPに達した後も続けて行われるため、空隙SPの底部の絶縁膜IL0も除去される。これにより、空隙SPの底部には、半導体基板SBの主面が露出する。つまり、空隙SPの底面は、半導体基板SBの主面に達する。
【0150】
ここで、溝D1は、平面視において環状のレイアウトを有する分離領域IR、空隙SPおよび溝DTと同様に環状に形成するのではなく、後の説明で用いる
図23に示すように、平面視において、分離領域IR内の一部のみに形成されていればよい。ここでは、平面視において、分離領域IRの複数の箇所に溝D1を形成している。平面視における溝D1の短手方向の幅は、平面視における溝DTの短手方向の幅よりも小さい。
【0151】
次に、
図23、
図24および
図25に示すように、溝D1内および空隙内に金属膜MFを埋め込む。金属膜MFは、例えばバリアメタル膜である窒化チタン膜と、窒化チタン膜上に堆積されたタングステン膜とからなる。すなわち、ここでは、例えばCVD法またはスパッタリング法を用いて窒化チタン膜を形成することで、絶縁膜IL0の上面、溝D1の側壁および空隙SPの表面を窒化チタン膜により覆う。続いて、例えばCVD法を用いてタングステン膜を形成することにより、窒化チタン膜の表面をタングステン膜により覆う。
【0152】
これにより、空隙SP内および溝D1内は、窒化チタン膜およびタングステン膜からなる積層膜である金属膜MFにより完全に埋め込まれる。その後、層間絶縁膜CL上の金属膜MFを、例えばCMP法を用いて研磨することで除去し、これにより層間絶縁膜CL上の絶縁膜IL0の上面を露出させる。この研磨工程により、金属膜MFが空隙SP内および溝D1内にのみ残る。なお、絶縁膜IL0上の金属膜MFは、研磨法ではなくエッチングにより除去してもよい。
【0153】
図23に示すように、溝D1は分離領域IRに複数開口されている。つまり、平面視において環状に形成された空隙SP(
図21参照)の一部の直上には溝D1が形成されていない。ただし、
図25に示すように、金属膜MFは、直上に溝D1が開口されていない空隙SP内も埋め込むように形成される。つまり、
図23に示すDTI構造DTIの表面より深い領域では、平面視において環状構造を有する金属膜MFが形成されている。
【0154】
なお、
図25に示すように、溝D1が形成されていない領域では、空隙SPが形成されていた領域の底部がエッチングされていないため、金属膜MFの底部は半導体基板SBの主面に達しておらず、半導体基板SBの主面と金属膜MFとの間には絶縁膜IL0が介在している。
【0155】
その後の工程は、
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図26に示す撮像素子が得られる。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。ここでは、金属膜MFの上面に、配線M1を接続する。なお、コンタクトホールおよびプラグCPの形成工程と、溝D1および金属膜MFの形成工程とは、どちらを先に行ってもよい。
【0156】
金属膜MFの底面の一部は半導体基板SBの主面に接しているため、金属膜MFと半導体基板SBとは電気的に接続され、同電位となる。したがって、配線M1および金属膜MFを介して、半導体基板SBに所望の電位を印加することができる。半導体基板SBには、例えば電源電圧Vddを印加する。
【0157】
本実施の形態の半導体装置は、DTI構造DTIの内部に金属膜MFが埋め込まれている点のみ、前記実施の形態1と異なる。よって、本実施の形態では、前記実施の形態1の半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0158】
また、本実施の形態の金属膜MFは、酸化シリコン膜などの絶縁膜に比べて光を透過しにくい。よって、周辺回路領域CRの素子(例えばトランジスタQ1)の駆動などに起因して周辺回路領域CRのエピタキシャル層EP内に光が生じた場合に、周辺回路領域CRのエピタキシャル層EP内から画素領域PERのエピタキシャル層EP内に向かう光を金属膜MFにより遮蔽することができる。よって、暗電流などの発生を防ぐことができる。
【0159】
また、半導体基板SBに電源電圧Vddを印加することにより、エピタキシャル層EP内で生じた余剰電子を効果的に半導体基板SBに引き寄せることができる。したがって、クロストークおよび暗電流の発生を防ぐことができる。ここでいうクロストークとは、所定の画素PEに照射された光によりエピタキシャル層EPの深い領域で生じた電子が移動して、当該画素PEとは異なる他の画素PEのフォトダイオードPDにより検出されることを指す。このようなクロストークが生じると、撮像により得られる画像の画質が低下するなどの問題が起こる。本実施の形態では、例えばP
+型半導体領域PIの下を迂回して隣接する画素PEに移動しようとする電子を、電圧が印加された半導体基板SBに捕獲させることができる。
【0160】
また、溝D1は、分離領域IRに沿って環状に形成されることが考えられるが、この場合、溝D1内に埋め込まれた金属膜MFの上面上を跨ぐように、他の素子などに電気的に接続された配線M1(
図26参照)を形成することができない。これに対し、本実施の形態では、
図23に示すように、溝D1を分離領域IRに沿って環状に形成するのではなく、部分的に形成している。よって、第1配線層を構成する配線M1のレイアウトの自由度を高めることができる。これにより、半導体装置の微細化が容易となる効果が得られる。
【0161】
なお、半導体基板SBは、例えば抵抗率が100mΩcm以下の低抵抗なN型半導体基板であってもよい。この場合、例えば、半導体装置の製造工程において最初に用意する半導体基板SBのN型不純物の濃度を、1×10
19atm/cm
3とする。したがって、半導体基板SBのN型不純物濃度は、N型半導体領域NRのN型不純物濃度より高い。これにより、半導体基板SBの抵抗値を下げることができ、また、金属膜MFと半導体基板SBとの間の接続抵抗を低減することができる。よって、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0162】
<変形例1>
以下では、
図27および
図28を用いて、本実施の形態3の変形例1である半導体装置の構造および製造方法について説明する。ここでは、分離領域において、DTI構造と画素領域との間のエピタキシャル層の上面にN型のウェルを形成することについて説明する。
図27は、本実施の形態の変形例1である半導体装置を示す平面図である。
図28は、本実施の形態の変形例1である半導体装置を示す断面図である。
図28は、
図27のD−D線における断面図である。
【0163】
図27および
図28に示すように、本変形例では、画素領域PERの周囲のエピタキシャル層EPの上面に、N型の半導体領域であるウェルGRを形成する。ウェルGRは、素子分離領域EIを形成する工程の後であって、トランジスタQ1の表面にシリサイド層を形成する前のいずれかのタイミングにおいて、イオン注入法によりN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を打ち込むことにより形成する。
【0164】
ウェルGRは、分離領域IRにおいて、溝DTよりも画素領域PER側に位置する活性領域に形成されている。つまり、ウェルGRは、隣り合う素子分離領域EIの間において素子分離領域EIから露出するエピタキシャル層EPの上面に形成されている。ウェルGRは、エピタキシャル層EPの上面から、エピタキシャル層EPの途中深さに亘って形成されている。ウェルGRの形成深さは、例えばP
+型半導体領域PIの形成深さと同等であり、溝DTの深さよりも浅い。
【0165】
ウェルGRの上面には、ウェルGRよりもN型不純物濃度が高く、ソース・ドレイン領域SDと同様の濃度および形成深さを有するN型の半導体領域DRが形成されている。半導体領域DRは、例えば、ソース・ドレイン領域SDを形成するために行うイオン注入工程において、ソース・ドレイン領域SDと同時に形成することができる。半導体領域DRの上面には、層間絶縁膜CLおよび絶縁膜IL0を貫通するプラグCPが、当該上面を覆うシリサイド層(図示しない)を介して接続されている。当該プラグCPの上面には、配線M1が接続されている。
【0166】
その他の構造は、
図26を用いて説明した構造と同様である。なお、金属膜MFが形成されていない前記実施の形態1または前記実施の形態2の半導体装置に対して本変形例のウェルGRを形成してもよい。
【0167】
ウェルGRはガードリング領域であり、ウェルGRには、配線M1、プラグCP、シリサイド層(図示しない)、半導体領域DRを介して電源電圧Vddが印加される。これにより、本変形例では、溝DTの表面であって、画素領域PER側の表面、つまりエピタキシャル層EPとDTI構造DTIとの界面において生じた電子が、画素領域PERの画素PEに移動することを防ぐことができる。これは、電源電圧Vddが印加されたウェルGRに電子が引き寄せられるためである。これにより、溝DTの表面に電子が発生することに起因する暗電流およびノイズを画素PEが検出することを防ぐことができる。
【0168】
<変形例2>
以下では、
図29〜
図31を用いて、本実施の形態3の変形例2である半導体装置の製造方法について説明する。ここでは、DTI構造内に埋め込まれる金属膜と、トランジスタなどに接続されるプラグとを同一の工程で形成することについて説明する。
図29〜
図31は、本実施の形態の変形例2である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0169】
ここでは、まず、
図29に示すように、
図3〜
図5、
図11および
図7を用いて説明した工程と同様の工程を順に行うことで、フォトダイオードPD、トランジスタQ1、層間絶縁膜CL、溝DT、DTI構造DTI、空隙SPおよびコンタクトホールを形成する。
【0170】
次に、
図30に示すように、
図22を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、空隙SPの直上に溝D1を形成する。
【0171】
次に、
図31に示すように、バリアメタル膜である窒化チタン膜と、タングステン膜とを順に形成することにより、空隙SP内、溝D1内、および、コンタクトホール内を埋め込む。その後、絶縁膜IL0上の余分な金属膜を、CMP法またはエッチング法により除去する。これにより、空隙SP内および溝D1内には金属膜MFが埋め込まれ、コンタクトホール内にはプラグCPが形成される。その後の工程は、
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図26に示す撮像素子が得られる。これにより、本変形例の半導体装置が完成する。
【0172】
本変形例では、金属膜MFとプラグCPとを同一工程により形成することで、半導体装置の製造工程を削減することができる。したがって、半導体装置の製造コストを低減することができる。また、エピタキシャル層EPの上面上において、当該層間絶縁膜の膜厚にばらつきが生じることを防ぐことができる。
【0173】
<変形例3>
以下では、
図32および
図33を用いて、本実施の形態3の変形例3である半導体装置の製造方法について説明する。ここでは、DTI構造内の空隙の直上に形成する溝と、コンタクトホールとを同一の工程で形成し、かつ、DTI構造内に埋め込まれる金属膜とプラグとを同一の工程で形成することについて説明する。
図32および
図33は、本実施の形態の変形例3である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0174】
ここでは、まず、
図29に示すように、
図3〜
図5および
図11を用いて説明した工程と同様の工程を順に行うことで、フォトダイオードPD、トランジスタQ1、層間絶縁膜CL、溝DT、DTI構造DTIおよび空隙SPを形成する。
【0175】
次に、
図32に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、溝D1と、トランジスタQ1などの直上のコンタクトホールとを形成する。ここで形成するコンタクトホールは前記実施の形態1で説明したコンタクトホールと同様の構造を有している。また、ここで形成する溝D1は、前記実施の形態2で説明した溝D1と同様の構造を有している。本変形例の特徴の1つは、溝D1とコンタクトホールとを同一のエッチング工程により形成することにある。
【0176】
次に、
図33に示すように、
図31を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、空隙SP内および溝D1内の金属膜MFと、コンタクトホール内のプラグCPとを形成する。その後の工程は、
図9を用いて説明した工程と同様に行うことで、
図26に示す撮像素子が得られる。これにより、本変形例の半導体装置が完成する。
【0177】
本変形例では、溝D1とコンタクトホールとを同一の工程により形成し、金属膜MFとプラグCPとを同一工程により形成することで、半導体装置の製造工程を削減することができる。したがって、半導体装置の製造コストを低減することができる。また、エピタキシャル層EPの上面上において、当該層間絶縁膜の膜厚にばらつきが生じることを防ぐことができる。
【0178】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。