【課題】出力電圧の生じる出力端子が接地電位と短絡される地絡状態が継続した場合でも、定格値よりも高い電流が継続して流れることを抑制し、スイッチング電源装置の劣化等を抑制することのできるスイッチング制御装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子をオフとさせることによりコイルに流れるコイル電流を制限して過電流保護を行う電流制限部と、スイッチング電源装置の出力電圧が生じる出力端が接地電位と短絡する短絡状態を検知すると、前記スイッチング素子をオフに維持して出力をシャットダウンさせるモードへ移行させ、その後、前記スイッチング素子のスイッチングを再開させる自己復帰モードへ移行させることを繰り返す短絡保護部と、を備え、前記短絡保護部は、前記短絡状態が所定回数検知されると、前記電流制限部により前記コイル電流を制限する過電流保護レベルを低く変更するスイッチング制御装置としている。
前記短絡保護部は、前記第1カウント信号に基づいて起動して第2クロック信号をカウントし、カウント結果に基づく第2カウント信号を出力することにより前記自己復帰モードへ移行させる第3カウンタを更に有することを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
前記短絡保護部は、前記出力電圧に基づく電圧と基準電圧とが入力されるコンパレータと、インバータと、前記コンパレータの出力と前記インバータの出力とが入力されるAND回路と、を更に有し、
前記第1カウンタは、複数の順次接続される第1Dフリップフロップを有し、
前記第3カウンタは、複数の順次接続される第2Dフリップフロップを有し、
1段目の前記第1Dフリップフロップのクロック端子には、前記第1クロック信号が入力され、
前記AND回路の出力端は、前記各第1Dフリップフロップのリセット端子に接続され、
最終段の前記第1DフリップフロップのQ出力端子から前記第1カウント信号が出力され、
1段目の前記第2Dフリップフロップのクロック端子には、前記第2クロック信号が入力され、
前記各第2Dフリップフロップのリセット端子には、前記第1カウント信号が入力され、
最終段の前記第2DフリップフロップのQ出力端子から前記第2カウント信号が出力され、
前記インバータの入力端には、前記第2カウント信号が入力される、ことを特徴とする請求項8に記載のスイッチング制御装置。
前記短絡保護部は、前記短絡状態が前記所定回数検知されると、異常を示すエラー信号を装置外部へ出力することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の自己復帰型のスイッチング電源装置では、過電流保護を行う電流レベルは定格値(推奨動作値)より高い値としており、地絡状態が継続した場合、出力をシャットダウンさせるモードと再起動とが繰り返され、再起動のたびに定格値より高い電流が流れる状態となる。この場合、スイッチング電源装置の劣化または破壊を招く虞があった。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、出力電圧の生じる出力端子が接地電位と短絡される地絡状態が継続した場合でも、定格値よりも高い電流が継続して流れることを抑制し、スイッチング電源装置の劣化等を抑制することのできるスイッチング制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係るスイッチング制御装置は、スイッチング素子と、コイルと、を有するスイッチング電源装置に用いられるスイッチング制御装置であって、
前記スイッチング素子をオフとさせることにより前記コイルに流れるコイル電流を制限して過電流保護を行う電流制限部と、
前記スイッチング電源装置の出力電圧が生じる出力端が接地電位と短絡する短絡状態を検知すると、前記スイッチング素子をオフに維持して出力をシャットダウンさせるモードへ移行させ、その後、前記スイッチング素子のスイッチングを再開させる自己復帰モードへ移行させることを繰り返す短絡保護部と、を備え、
前記短絡保護部は、前記短絡状態が所定回数検知されると、前記電流制限部により前記コイル電流を制限する過電流保護レベルを低く変更する構成としている(第1の構成)。
【0008】
また、上記第1の構成において、前記短絡保護部は、前記短絡状態が生じると起動して第1クロック信号をカウントし、カウント結果に基づく第1カウント信号を出力することにより前記短絡状態を検知する第1カウンタと、
前記短絡状態が生じると起動して前記第1カウント信号をカウントし、前記第1カウント信号を所定数カウントすると、その旨を示す検出信号を出力することで前記過電流保護レベルを変更する第2カウンタと、を有することとしてもよい(第2の構成)。
【0009】
また、上記第2の構成において、前記第2カウンタは、複数の順次接続されるDフリップフロップを有し、1段目の前記Dフリップフロップのクロック端子には、前記第1カウント信号が入力されることとしてもよい(第3の構成)。
【0010】
また、上記第3の構成において、前記短絡保護部は、前記出力電圧に基づく電圧と基準電圧とが入力されるコンパレータを更に有し、前記各Dフリップフロップのリセット端子は、前記コンパレータの出力端に接続されることとしてもよい(第4の構成)。
【0011】
また、上記第2〜第4のいずれかの構成において、前記電流制限部は、前記検出信号に応じてオンオフを切替えられるスイッチと、
定電流が流される経路に配置され、前記スイッチにより両端間を接続される抵抗素子を含んだ抵抗部と、
前記抵抗部の一端に生じる電圧と、前記コイル電流の検出信号に基づく電圧とが入力されるコンパレータと、を有することとしてもよい(第5の構成)。
【0012】
また、上記第5の構成において、前記第2カウンタは、複数の前記検出信号を出力し、
前記電流制限部は、複数の前記スイッチおよび複数の前記抵抗素子を含んだ前記抵抗部を有することとしてもよい(第6の構成)。
【0013】
また、上記第6の構成において、前記第2カウンタは、複数の順次接続されるDフリップフロップを有し、
1段目の前記Dフリップフロップのクロック端子には、前記第1カウント信号が入力され、
少なくとも一部の前記Dフリップフロップの各Q出力端子の出力に一対一に対応して前記検出信号は出力されることとしてもよい(第7の構成)。
【0014】
また、上記第2〜第7のいずれかの構成において、前記短絡保護部は、前記第1カウント信号に基づいて起動して第2クロック信号をカウントし、カウント結果に基づく第2カウント信号を出力することにより前記自己復帰モードへ移行させる第3カウンタを更に有することとしてもよい(第8の構成)。
【0015】
また、上記第8の構成において、前記短絡保護部は、前記出力電圧に基づく電圧と基準電圧とが入力されるコンパレータと、インバータと、前記コンパレータの出力と前記インバータの出力とが入力されるAND回路と、を更に有し、
前記第1カウンタは、複数の順次接続される第1Dフリップフロップを有し、
前記第3カウンタは、複数の順次接続される第2Dフリップフロップを有し、
1段目の前記第1Dフリップフロップのクロック端子には、前記第1クロック信号が入力され、
前記AND回路の出力端は、前記各第1Dフリップフロップのリセット端子に接続され、
最終段の前記第1DフリップフロップのQ出力端子から前記第1カウント信号が出力され、
1段目の前記第2Dフリップフロップのクロック端子には、前記第2クロック信号が入力され、
前記各第2Dフリップフロップのリセット端子には、前記第1カウント信号が入力され、
最終段の前記第2DフリップフロップのQ出力端子から前記第2カウント信号が出力され、
前記インバータの入力端には、前記第2カウント信号が入力される、こととしてもよい(第9の構成)。
【0016】
また、上記第1〜第9のいずれかの構成において、前記短絡保護部は、前記短絡状態が前記所定回数検知されると、異常を示すエラー信号を装置外部へ出力することとしてもよい(第10の構成)。
【0017】
また、本発明の別態様に係るスイッチング電源装置は、上記いずれかの構成としたスイッチング制御装置を備えることとしている。
【0018】
また、本発明の別態様に係る車載用電子機器は、上記構成のスイッチング電源装置を備えることとしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、出力電圧の生じる出力端子が接地電位と短絡される地絡状態が継続した場合でも、定格値よりも高い電流が継続して流れることを抑制し、スイッチング電源装置の劣化等を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<スイッチング電源装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
図1に示すスイッチング電源装置20は、入力電圧Vinを降圧して出力電圧Voutを生成して出力する降圧型DC/DCコンバータである。スイッチング電源装置20は、スイッチング制御装置1と、出力段15と、を備えている。
【0023】
スイッチング制御装置1は、上側スイッチング素子2と、下側スイッチング素子3と、駆動制御部4と、オシレータ5と、スロープ電圧生成部6と、エラーアンプ7と、電流制限部8と、ソフトスタート部9と、短絡保護部10と、を有し、これらの各構成要素を1チップに集積化した半導体装置(IC)である。また、スイッチング制御装置1は、外部との電気的接続を確立するための外部端子T1〜T5も有している。
【0024】
出力段15は、各々ディスクリートな素子であるコイルL1、出力コンデンサC1、抵抗R1、および抵抗R2を含んでいる。pチャネルMOSFETで構成される上側スイッチング素子2のソースには、外部端子T1を介して入力電圧Vinが印加される。上側スイッチング素子2のドレインは、nチャネルMOSFETで構成される下側スイッチング素子3のドレインに接続される。下側スイッチング素子3のソースは、接地電位の印加端に接続される。なお、上側スイッチング素子をnチャネルMOSFETで構成する場合は、別途、ブートストラップ用のコンデンサ等が必要となる。
【0025】
上側スイッチング素子2と、下側スイッチング素子3との接続点は、外部端子T2を介してコイルL1の一端に接続される。コイルL1の他端は、出力コンデンサC1の一端に接続される。出力コンデンサC1の他端は、接地電位の印加端に接続される。コイルL1と出力コンデンサC1との接続点は出力端子Toに接続され、出力端子Toに出力電圧Voutが生じる。
【0026】
出力端子Toと接地電位の印加端との間には、抵抗R1と抵抗R2が直列に接続される。抵抗R1と抵抗R2との接続点は、外部端子T3を介してエラーアンプ7の反転入力端(−)に接続される。外部端子T3には、出力電圧Voutを抵抗R1、R2によって分圧して生成される帰還電圧Vfbが生じる。従って、エラーアンプ7の反転入力端には、帰還電圧Vfbが印加される。
【0027】
エラーアンプ7の一方の非反転入力端(+)には、基準電圧Vref1が印加される。エラーアンプ7の他方の非反転入力端(+)には、ソフトスタート部9によって生成されるソフトスタート電圧Vssが印加される。
【0028】
ソフトスタート部9は、外部端子T4を介して外付けの設定用コンデンサC2が接続される。ソフトスタート部9は、例えば、起動時にコンデンサC2に定電流を流す制御を行うことで設定用コンデンサC2を充電し、充電によってコンデンサC2に生じる電圧をソフトスタート電圧Vssとして生成する。設定用コンデンサC2の容量値を設定することで充電時のソフトスタート電圧Vssの上昇速度を設定し、ソフトスタート時間を設定できる。ソフトスタート電圧Vssは、上昇によって基準電圧Vref1を上回った後に一定となる。
【0029】
エラーアンプ7は、基準電圧Vref1とソフトスタート電圧Vssのうち低い方の電圧と帰還電圧Vfbとの差分を増幅し、誤差電圧ERRとして電流制限部8に出力する。スロープ電圧生成部6は、オシレータ5が出力するクロック信号CKに同期して生成する鋸歯状の電圧に、コイルL1に流れるコイル電流ILの検出信号を加算することでスロープ電圧SLPを生成し、電流制限部8に出力する。
【0030】
電流制限部8は、誤差信号ERRとスロープ電圧SLPに基づいて駆動制御部4に制御信号Scrを出力することでコイルL1に流れるコイル電流ILを制限し、出力電圧Voutを一定となるよう制御する。また、電流制限部8は、過電流を検出して電流制限を行う過電流保護機能も有している。電流制限部8の詳細については後述する。
【0031】
駆動制御部4は、オシレータ5が所定周期で出力するクロック信号CKと電流制限部8からの制御信号Scrに基づいて上側スイッチング素子2および下側スイッチング素子3のゲートを駆動することで、各スイッチング素子をオンオフ制御する。上側スイッチング素子2および下側スイッチング素子3は、PWM(Pulse Width Modulation)によってスイッチングされる。
【0032】
短絡保護部10は、帰還電圧Vfbに基づいて出力端子Toの接地電位との短絡(地絡)を検出し、出力をシャットダウンしたり、その後、再起動を行なったりする回路である。また、短絡保護部10は、地絡状態が継続したことを検出すると、異常を示すエラー信号Seを外部端子T5を介して外部へ出力する機能も有する。短絡保護部10の詳細については後述する。
【0033】
<電流制限部の構成>
図2は、電流制限部8の具体的な構成を示す図である。電流制限部8は、電圧・電流変換回路81と、定電流回路82と、電圧・電流変換回路83と、コンパレータ84と、スイッチ85と、抵抗R81〜R84と、を有している。
【0034】
抵抗R81の一端には、電源電圧V81が印加される。抵抗R81の他端は、電圧・電流変換回路81の一端に接続される。電圧・電流変換回路81の他端は、接地電位の印加端に接続される。電圧・電流変換回路81は、エラーアンプ7から出力される誤差電圧ERRを、当該電圧に応じた大きさの電流Ithに変換する。抵抗R81と電圧・電流変換回路81との接続点P1は、コンパレータ84の一方の非反転入力端(+)に接続される。従って、電流Ithが流れることによる抵抗R81における電圧降下によって接続点P1に生じる電圧Vthがコンパレータ84の非反転入力端に印加される。
【0035】
抵抗R82の一端には、電源電圧V82が印加される。抵抗R82と抵抗R83は直列に接続され、抵抗R83の一端は定電流回路82の一端に接続される。定電流回路82の他端は、接地電位の印加端に接続される。定電流回路82は、過電流検出用に所定の一定電流Iocpを流す回路である。抵抗R83と定電流回路82との接続点P2は、コンパレータ84の他方の非反転入力端(+)に接続される。抵抗R83の両端間に接続されるトランジスタであるスイッチ85は、短絡保護部10に含まれる後述する検出出力部106Bによってオンオフを切替えられる。従って、通常時にスイッチ85はオフであり、電流Iocpが流れることによる抵抗R82および抵抗R83における電圧降下によって接続点P2に生じる電圧Vocpがコンパレータ84の非反転入力端に印加される。
【0036】
抵抗R84の一端には、電源電圧V83が印加される。抵抗R84の他端は、電圧・電流変換回路83の一端に接続される。電圧・電流変換回路83の他端は、接地電位の印加端に接続される。電圧・電流変換回路83は、スロープ電圧生成部6から出力されるスロープ電圧SLPを、当該電圧に応じた大きさの電流Islpに変換する。抵抗R84と電圧・電流変換回路83との接続点P3は、コンパレータ84の反転入力端(−)に接続される。従って、電流Islpが流れることによる抵抗R84における電圧降下によって接続点P3に生じる電圧Vslpがコンパレータ84の反転入力端に印加される。
【0037】
コンパレータ84は、電圧Vthと電圧Vocpのうち高い方の電圧を電圧Vslpと比較し、比較結果としての制御信号Scrを駆動制御部4に出力する。
【0038】
図3は、電流制限部8の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図3に示すように、まずクロック信号CKが立ち上がると(タイミングt1)、駆動制御部4はセットされて上側スイッチング素子2をオン、下側スイッチング素子3をオフとする。これにより、上側スイッチング素子2と下側スイッチング素子3との接続点のスイッチング電圧SW(
図1)はHighレベルとなる。それと共に、コイルL1に流れるコイル電流ILは上昇を開始する。
【0039】
クロック信号CKの立ち上がりをトリガとしてスロープ電圧生成部6は鋸歯状の電圧の生成を開始し、コイルL1に流れるコイル電流ILの検出信号を加算するので、スロープ電圧SLPは上昇し、これに応じて電圧Vslpは低下する。通常時は、誤差信号ERRに応じた電圧Vthは、電圧Vocpよりも高い。電圧Vslpが低下によって電圧Vthに達すると(タイミングt2)、制御信号ScrはHighレベルに立ち上がる。
【0040】
駆動制御部4は、制御信号Scrの立ち上がりによってリセットされ、上側スイッチング素子2をオフ、下側スイッチング素子3をオンとする。これにより、スイッチング電圧SWは立ち下がり、コイルL1に流れるコイル電流ILは低下する。制御信号Scrの立ち上がりをトリガとしてスロープ電圧生成部6は、鋸歯状の電圧をリセットするので、スロープ電圧SLPは急に減少してから緩やかに減少する。これに応じて、電圧Vslpは、急に上昇してから緩やかに上昇する。従って、制御信号Scrは立ち上がり後、すぐにLowレベルに立ち下がる。その後、クロック信号CKが立ち上がると(タイミングt3)、再び上側スイッチング素子2がオンとされてコイルL1に流れるコイル電流ILが上昇し、以降上記の動作と同様となる。
【0041】
このように、帰還電圧Vfbに基づいて生成された誤差信号ERRに応じた電圧VthによってコイルL1に流れる電流が制限され、上側スイッチング素子2のオンデューティが調整されることで出力電圧Voutが一定となるよう制御される。ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vref1以下となる起動時は、帰還電圧Vfbがソフトスタート電圧Vssと一致するように制御され、ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vref1を上回った定常時は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1と一致するように制御される。
【0042】
<短絡保護部について>
図4は、短絡保護部10の具体的な構成を示す図である。
図4に示すように短絡保護部10は、コンパレータ101と、AND回路102と、インバータ103と、HICCUPモード移行カウンタ104と、自己復帰モード移行カウンタ105と、短絡回数カウンタ106と、を有している。
【0043】
コンパレータ101の反転入力端(−)には、帰還電圧Vfbが印加され、非反転入力端(+)には、基準電圧Vref2が印加される。
【0044】
HICCUPモード移行カウンタ104は、出力端子Toが地絡した状態の場合に出力をシャットダウンさせるHICCUPモードへ移行するためのカウンタであり、オシレータ104Aと、順次接続される複数のDフリップフロップ104Bと、を含んでいる。
【0045】
1段目のDフリップフロップ104Bのクロック端子にはオシレータ104Aが出力するクロック信号が入力される。最終段を除くDフリップフロップ104Bは、それぞれ自己のQバー出力端子とD端子とが短絡されると共に、自己のQバー出力端子が次段のDフリップフロップ104Bのクロック端子に接続される。最終段のDフリップフロップ104Bは、Qバー出力端子とD端子とが短絡されると共に、Q出力端子からの出力がカウント信号CT1となる。
【0046】
自己復帰モード移行カウンタ105は、HICCUPモードの後に再起動させる自己復帰モードへ移行するためのカウンタであり、オシレータ105Aと、順次接続される複数のDフリップフロップ105Bと、を含んでいる。
【0047】
1段目のDフリップフロップ105Bのクロック端子にはオシレータ105Aが出力するクロック信号が入力される。最終段を除くDフリップフロップ105Bは、それぞれ自己のQバー出力端子とD端子とが短絡されると共に、自己のQバー出力端子が次段のDフリップフロップ105Bのクロック端子に接続される。最終段のDフリップフロップ105Bは、Qバー出力端子とD端子とが短絡されると共に、Q出力端子からの出力がカウント信号CT2となる。
【0048】
カウント信号CT1は、自己復帰モード移行カウンタ105に含まれる各Dフリップフロップ105Bのリセット端子に入力される。カウント信号CT2はインバータ103に入力される。AND回路102の一方の入力端にはコンパレータ101の出力が入力され、他方の入力端にはインバータ103の出力が入力される。
【0049】
短絡回数カウンタ106は、カウント信号CT1をカウントすることで短絡回数をカウントするカウンタであり、順次接続される複数のDフリップフロップ106Aと、検出出力部106Bと、を含んでいる。
【0050】
1段目のDフリップフロップ106Aのクロック端子にはカウント信号CT1が入力される。最終段を除くDフリップフロップ106Aは、それぞれ自己のQバー出力端子とD端子とが短絡されると共に、自己のQバー出力端子が次段のDフリップフロップ106Aのクロック端子に接続される。最終段のDフリップフロップ106Aでは、Qバー出力端子がD端子に短絡されており、Q出力端子からの出力であるカウント信号CT3がセット信号として検出出力部106Bに入力される。コンパレータ101の出力は、リセット信号として検出出力部106Bに入力される。コンパレータ101の出力は、各Dフリップフロップ106Aのリセット端子に入力される。
【0051】
検出出力部106Bは、カウント信号CT1(即ち短絡回数)を所定回数カウントしたことを検出した検出信号DET1を出力する。検出信号DET1は、
図2に示すように電流制限部8に含まれるスイッチ85をオンオフさせる信号として出力される。また、検出出力部106Bは、検出信号DET1と同等の信号であるエラー信号Seを外部端子T5(
図1)を介して外部へ出力もする。
【0052】
ここで、Dフリップフロップを複数順次接続して構成されるカウンタの動作について、便宜上、3つのDフリップフロップが接続された例を挙げて
図7を用いて説明する。
図7に示すタイミングチャートは、上段から順に、1段目のDフリップフロップのクロック端子に入力されるクロック信号CLK、1段目のDフリップフロップのQ出力端子の出力信号Qout1、2段目のDフリップフロップのQ出力端子の出力信号Qout2、および3段目のDフリップフロップのQ出力端子の出力信号Qout3の各波形例を示す。最終段である3段目のDフリップフロップのQ出力端子からの出力信号Qout3はクロック信号CLKを4つカウントしたところでHighレベルへ立ち上がっており、出力信号Qout3をカウント信号とすることができる。Dフリップフロップを接続する個数によってカウント数を調整することができる。
【0053】
同様の原理により、HICCUPモード移行カウンタ104および自己復帰モード移行カウンタ105については、カウント信号CT1およびCT2をクロック信号のカウント結果として用いることができ、短絡回数カウンタ106については、カウント信号CT3をカウント信号CT1のカウント結果として用いることができる。
【0054】
次に、短絡保護部10の動作について
図5のタイミングチャート、および
図6のフローチャートを参照して説明する。
図5のタイミングチャートは、上段から順に、出力電流Iout、コイルL1に流れるコイル電流IL、出力電圧Vout、カウント信号CT1、カウント信号CT2、および検出信号DET1(エラー信号Se)の各波形例を示す。
【0055】
出力端子Toが接地電位と短絡する地絡が生じたときに
図6に示すフローチャートが開始される。このとき、
図5に示すように出力電圧Voutがほぼ0Vまで低下する。出力電圧Voutの低下によって出力電圧Voutが所定の短絡保護電圧閾値を下回ると(
図5のタイミングt11、
図6のステップS1のY)、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回るので、コンパレータ101の出力がHighレベルに立ち上がる。すると、AND回路102の出力がHighレベルに立ち上がるので、各Dフリップフロップ104Bのリセットが解除され、HICCUPモード移行カウンタ104においてオシレータ104Aの出力するクロック信号のカウントが開始される(HICCUPモード移行カウンタ104の起動)。このとき、各Dフリップフロップ106Aのリセットが解除され、短絡回数カウンタ106においてカウント信号CT1のカウントが開始される(短絡回数カウンタ106の起動)。検出信号DET1はLowレベルであるので、電流制限部8におけるスイッチ85はオフであり、抵抗R83は有効となっている。
【0056】
このとき、地絡状態によってコイル電流ILには過電流が生じるが、電流制限部8において電圧Vthが電圧Vocpよりも低くなるので(
図3でVocpとVthが上下逆の関係)、電圧Vslpが電圧Vocpに達したタイミングにて上側スイッチング素子2がオフとされ、コイル電流ILが過電流保護レベル(OCPレベル)Thocp1で制限される(
図5)。
【0057】
HICCUPモード移行カウンタ104がクロック信号を所定数カウントすると、カウント信号CT1がHighレベルに立ち上がる(
図5のタイミングt12)。これにより、地絡状態が検知される。これを受けて、駆動制御部4は、上側スイッチング素子2および下側スイッチング素子3ともにスイッチングを停止させ、オフを維持させる。これにより、出力がシャットダウンされるHICCUPモードへ移行される(
図6のステップS2)。このとき、コイル電流ILはゼロまで低下する。
【0058】
カウント信号CT1はHighレベルとなるが、短絡回数カウンタ106はカウント信号CT1を所定数Nだけ未だカウントはしていない(
図6のステップS3のN)。
【0059】
また、カウント信号CT1がHighレベルとなることにより、各Dフリップフロップ105Bのリセットが解除され、自己復帰モード移行カウンタ105はオシレータ105Aの出力するクロック信号のカウントを開始する(自己復帰モード移行カウンタ105の起動)。そして、自己復帰モード移行カウンタ105がクロック信号を所定数カウントするとカウント信号CT2がHighレベルに立ち上がる(
図5のタイミングt13)。これを受けて、駆動制御部4は上側スイッチング素子2および下側スイッチング素子3のスイッチングを再開させ、ソフトスタート部9は動作を開始する。これにより、再起動が行われる自己復帰モードへ移行される(
図6のステップS5)。このとき、
図5に示すように、コイル電流ILは、ソフトスタートにより制限されつつ、定常状態に至ると過電流保護レベルThocp1によって制限される。
【0060】
カウント信号CT2がHighレベルとなると、インバータ103の出力がLowレベルとなるので、AND回路102の出力がLowレベルとなり、各Dフリップフロップ104Bはリセットされる。これにより、カウント信号CT1はLowレベルとなる。すると、各Dフリップフロップ105Bはリセットされ、カウント信号CT2はLowレベルとなる。即ち、カウント信号CT2はHighレベルに立ち上がった後、すぐにLowレベルに立ち下がる。
【0061】
すると、インバータ103の出力がHighレベルとなるので、コンパレータ101の出力がHighレベルであれば、AND回路102の出力がHighレベルとなり、HICCUPモード移行カウンタ104はクロック信号のカウントを開始する(HICCUPモード移行カウンタ104の起動)。そして、所定数のカウントが行われるとカウント信号CT1はHighレベルに立ち上がる(
図5のタイミングt14)。すると、先述と同様に、出力がシャットダウンされるHICCUPモードへ移行される。以降、HICCUPモードと自己復帰モードが繰り返される。
【0062】
即ち、
図6のステップS1、S2、S3、およびS5が繰り返され、短絡回数カウンタ106がカウント信号CT1を所定数Nだけカウントすると(ステップS3のY)、カウント信号CT3がHighレベルに立ち上がる。これにより、検出出力部106Bはセットされ、Highレベルに立ち上げた検出信号DET1を出力する(
図5のタイミングt15)。以降、検出出力部106Bはリセットされるまで検出信号DET1をHighレベルに保持させる。
【0063】
検出信号DET1がHighレベルとなるので、電流制限部8におけるスイッチ85がオンとされ、抵抗R83はバイパスされて無効となる。これにより、抵抗R82とR83との合成抵抗値から抵抗R82のみの抵抗値へ減少するので、抵抗における電圧降下が小さくなり、電圧Vocpは上昇する。従って、以降、自己復帰モードへ移行するたびに、コイル電流ILは、過電流保護レベルThocp1よりも低く変更された過電流保護レベルThocp2によって制限される(
図5のタイミングt16〜t17、t18〜t19、
図6のステップS4)。
【0064】
また、検出信号DET1がHighレベルとなると、エラー信号Seも同様にHighレベルとなって外部へ出力される。これにより、短絡状態が継続している異常状態を外部へ報知することができる。なお、スイッチング制御装置1に例えばTSD(Thermal Shut Down)部と、上記エラー信号SeとTSD部の異常出力信号が入力されるOR回路とを設け、OR回路の出力信号をエラー出力信号として外部へ出力してもよい。これにより、短絡が継続した状態と過熱状態の少なくともいずれかの異常が生じれば、OR回路のエラー出力信号がHighレベルとなり、外部へ異常状態を報知できる。
【0065】
その後、地絡状態が解除されると(ステップS1のN)、コンパレータ101の出力がLowレベルとなる。これにより、駆動制御部4は、スイッチングを行う通常動作へ移行する(
図6のステップS6)。このとき、短絡回数カウンタ106の各Dフリップフロップ106Aはリセットされ、検出出力部106Bもリセットされて検出信号DET1(エラー信号Se)をLowレベルとする。これにより、電流制限部8におけるスイッチ85がオフとなり、抵抗R83は有効となる。従って、過電流保護レベルがThocp1へリセットされる(過電流保護レベルが高く戻される)。
【0066】
また、AND回路102の出力がLowレベルとなるので、HICCUPモード移行カウンタ104の各Dフリップフロップ104Bがリセットされてカウンタ信号CT1がLowレベルとなり、自己復帰モード移行カウンタ105の各Dフリップフロップ105Bもリセットされる。
【0067】
このように本実施形態によれば、出力端子Toが接地電位と短絡する地絡状態が生じた場合にHICCUPモードと自己復帰モードが繰り返され、初めは自己復帰モードのときに定格値よりも高い過電流保護レベルThocp1によってコイル電流ILは制限される。しかしながら、地絡状態が継続すると、過電流保護レベルがThocp1から定格値以下のThocp2へ低く変更されるので、定格値より高い電流が流れ続けることは抑制される。従って、スイッチング制御装置1(半導体装置)の劣化や破壊を抑制することができる。
【0068】
<変形例について>
次に、上述した実施形態の一変形例について説明する。
図8は、上述した
図4に示す短絡保護部10における短絡回数カウンタ106の変形例を示す構成図である。また、
図9は、上述した
図2に示す電流制限部8の変形例を示す構成図である。
【0069】
図8に示す変形例に係る短絡回数カウンタ1061は、複数順次接続されるDフリップフロップ1061Aと、検出出力部1061Bと、を有している。1段目のDフリップフロップ1061Aのクロック端子には、カウント信号CT1が入力される。そして、1段目より後で最終段よりも前の段の少なくとも1つのDフリップフロップ1061AのQ出力端子からの出力が検出出力部1061Bへ入力される。また、最終段のDフリップフロップ1061AのQ出力端子からの出力も検出出力部1061Bへ入力される。検出出力部1061Bは、各Q出力端子からの各出力に一対一に対応して検出信号DET1〜DETnを出力する。
【0070】
また、
図9に示す変形例に係る電流制限部801は、電圧・電流変換回路81と、定電流回路82と、電圧・電流変換回路83と、コンパレータ84と、スイッチ851〜85nと、抵抗R81、R82と、抵抗R831〜R83nと、抵抗R84と、を有している。
【0071】
抵抗R831〜R83nは、抵抗R82と定電流回路82との間に直列接続される。抵抗R831〜R83nのそれぞれの両端間には、トランジスタであるスイッチ851〜85nが接続される。検出出力部1061Bからの各検出信号DET1〜DETnは、それぞれスイッチ851〜85nをオンオフさせる。
【0072】
このような構成によれば、出力端子Toが接地電位と短絡する地絡が生じた場合、カウント信号CT1のカウント数が増えるごとに、順次、前段側のDフリップフロップ1061AのQ出力端子からHighレベルに立ち上がった出力が検出出力部1061Bに入力される。これにより、検出出力部1061Bは、順次、検出信号DET1〜DETnをHighレベルに立ち上げて保持しつつ出力する。
【0073】
従って、電流制限部801において、スイッチ851〜85nが順次オフからオンへ切替わってゆく。これにより、抵抗R831〜R83nが順次バイパスされて無効とされ、抵抗値は徐々に低下する。よって、電圧Vocpは徐々に上昇する。従って、自己復帰モードへ移行するときのコイル電流ILが制限される過電流保護レベルが徐々に低くなる。
【0074】
即ち、このような実施形態によれば、地絡状態が継続すると、徐々に過電流保護レベルが低く変更され、なるべく電流を流しながらも、定格値より高い電流が流れ続けることを抑制できる。
【0075】
なお、この場合、検出信号DET1〜DETnの少なくともいずれかをエラー信号Seとして外部へ出力するようにしてもよい。
【0076】
<車両への適用>
上述した実施形態に係るスイッチング制御装置を含めたスイッチング電源装置は、特には車両に搭載される各種電子機器へ適用することが好適である。スイッチング電源装置の劣化や破壊を抑制できる上記の技術は、自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格であるISO26262なども策定されている状況では重要となる。
【0077】
地絡状態が生じた場合に完全に出力を停止させるのではなく、自己復帰モードによって動作を継続する本実施形態に係るスイッチング電源装置は、例えば、動作を継続させる必要性の高い例えば
図10に示すような車載用の各種表示装置X(液晶ディスプレイ等)に適用することが好適である。例えば、表示装置Xに含まれるマイコンやLEDへの電源供給に用いることができる。表示装置Xは、車両の運転席前方のダッシュボードに設けられ、例えば、カーナビゲーション情報、車両後方の撮像画像、スピードメータ、タコメータ、燃料計、燃費計、シフトポジション等の各種画像を表示し、ユーザに様々な情報を伝えることが可能である。
【0078】
<その他>
なお、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0079】
例えば、本発明のスイッチング電源装置は、上述したような降圧型に限らず、昇圧型や昇降圧型などにも適用可能である。