【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト/太陽光発電システム維持管理技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】本実施形態における太陽電池監視システムは、取得部により取得された太陽電池から出力された電力における取得された電流値および電圧値に基づいて、電力の出力値が良好となるときの電流値および電圧値である動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値方向に関する電流電圧特性曲線を導出する導出部と、導出された電流電圧特性曲線における電流値を、動作ポイントを基準として設定された電圧値から上限値までの間で積分した積分値が、基準値に比して所定値以上減少しているか否かを判定する第1判定部と、所定値以上減少していると判定された場合、太陽電池が異常であることを示す情報を出力する出力部とを備える太陽電池監視システムである。
前記第2判定部は、前記電流電圧特性曲線に基づいて導出された電力を電圧値で微分した微分値を導出し、導出した微分値に基づいて、前記太陽電池の異常の種別を判定する、
請求項3記載の太陽電池監視システム。
前記第2判定部は、前記導出した微分値が1回ゼロとなる場合、前記太陽電池の異常は、前記導出した微分値が複数回ゼロとなる場合の第1異常とは異なる種別の異常であると判定する、
請求項4または請求項5記載の太陽電池監視システム。
前記第1異常とは異なる種別の異常とは、前記太陽電池の並列抵抗の減少に起因する第2異常、前記電力における電圧値の低下に起因する第3異常、および/または前記太陽電池の直列抵抗の増大に起因する第4異常を含む、
請求項6記載の太陽電池監視システム。
前記導出部により導出された電流電圧特性曲線における動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる第1の電圧値に対応する前記電力を電圧値で微分した微分値、および前記動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる第2の電圧値に対応する前記電力を電圧値で微分した微分値に基づいて、前記異常の種別を判定する異常種別判定部を、更に備える、
請求項4から7のうちいずれか1項記載の太陽電池監視システム。
前記異常種別判定部は、異常の種別が対応付けられた種別判定マップを参照し、前記第1の電圧値に対応する前記電力を電圧値で微分した微分値、および前記第2の電圧値に対応する前記電力を電圧値で微分した微分値に基づいて、前記異常の種別を判定する、
請求項8記載の太陽電池監視システム。
前記異常の種別は、前記太陽電池の並列抵抗の減少に起因する第2異常、前記電力における電圧値の低下に起因する第3異常、および/または前記太陽電池の直列抵抗の増大に起因する第4異常を含む、
請求項11または請求項12項記載の太陽電池監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明の太陽電池監視システム、および太陽電池監視プログラムの実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
(太陽電池監視システムの構成)
図1は、第1の実施形態の太陽電池監視システム1の構成図である。図示する例では、電力線と通信線とを区別せずに示す。太陽電池監視システム1は、発電ユニット10−1から発電ユニット10−n、および管理装置100を備える。「n」は任意の自然数である。発電ユニット10−1から発電ユニット10−n、および管理装置100は、ネットワークNWを介して互いに通信する。ネットワークNWは、LAN(Local Area Network)や、WAN(Wide Area Network)等を含む。また、ネットワークNWは、有線でも無線でもよく、これらの組み合わせでもよい。以下、発電ユニット10−1から発電ユニット10−nを区別しない場合は、「発電ユニット10」と称する。
【0010】
以下、一例として発電ユニット10−1について説明する。発電ユニット10−nは、発電ユニット10−1と同様の機能構成のため説明を省略する。また、本実施形態では、一例として、発電ユニット10は、住宅に設けられているものとして説明するが、この限りではない。発電ユニット10は、例えば産業用として工場や、空地等に設けられてもよい。
【0011】
発電ユニット10−1は、太陽電池モジュールを含む。太陽電池モジュールは、並列に接続されたストリング12A−1から12A−kを含む。「k」は任意の自然数である。ストリング12A−1は、それぞれ直列に接続された発電装置14A−1−1から14A−1−nを含む。ストリング12A−2は、それぞれ直列に接続された発電装置14A−2−1から14A−2−nを含む。ストリング12A−kは、それぞれ直列に接続された発電装置14A−k−1から14A−k−nを含む。以下、ストリング12A−1から12A−kを区別しない場合は、「ストリング12」と称する。また、発電装置14A−k−1から14A−k−nを区別しない場合は、「発電装置14」と称する。
【0012】
発電装置14は、例えば太陽光発電装置である。発電装置14は、接続部20を介して電力変換装置30と電気的に接続されている。発電装置14は、太陽光のエネルギーを、直流電力に変換し、変換した直流電力を電力変換装置30へ出力する。
【0013】
HEMS(Home Energy Management System)50は、表示部や、操作部、制御部などを含む。表示部は、例えば、発電装置14の発電量や、HEMS50に接続された電気機器などの所定間隔(例えば、日ごと、週ごと、月ごと)における電力消費量を表示する。また、表示部は、ストリング12に対する異常の判定結果を表示してもよい。制御部は、利用者による操作部の操作に基づいて、表示部に表示される内容を切り替えたり、HEMS50に接続された電気機器を制御したりする。
【0014】
管理装置100は、通信部110、および表示部112を備える。通信部110は、発電ユニット10と通信するための通信インターフェースである。表示部112は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)などの表示装置である。管理装置100は、発電ユニット10から情報を取得し、取得した情報を表示部112に表示させる。
【0015】
(接続部および電力変換装置の構成)
図2は、接続部20および電力変換装置30の機能構成を示す図である。接続部20は、検出部22、および接続通信部24を備える。検出部22は、ストリング12により出力された電力における電流値および電圧値を検出する。検出部22は、例えば、ストリング12ごとに電力における電流値および電圧値を検出する。接続通信部24は、電力変換装置30と通信するための通信インターフェースである。接続通信部24は、検出部22により検出された電流値および電圧値の情報を電力変換装置30に送信する。
【0016】
電力変換装置30は、電力変換部32、電流電圧取得部34、変換制御部36、特性導出部38、第1判定部40、第2判定部42、種別判定部44、記憶部46、および通信部50を備える。変換制御部36、特性導出部38、第1判定部40、第2判定部42、および種別判定部44のうち、一部または全部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよい。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアで実現されてもよい。記憶部46は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの記憶装置により実現される。記憶部46には、後述する基準データ47および種別判定マップ48が記憶されている。
【0017】
電力変換部32は、PCS(Power Conditioning System)である。電力変換部32は、発電装置14により発電された直流電力を交流電力に変換する。電力変換部32は、例えば不図示のDC(Direct Current)−DCコンバータや、インバータ、ゲート駆動部などを有する。DC−DCコンバータは、ストリング12により出力された直流電力を、所望の電流および電圧の直流電力に変換して、HEMS50に出力する。インバータは、複数のスイッチング素子を備える。インバータは、ゲート駆動部により出力されたゲート制御信号に基づいてスイッチング素子をオンオフ制御する。この制御によって、DC−DCコンバータにより変換された直流電力は、交流電力に変換される。ゲート駆動部は、変換制御部36により出力された信号に基づいて、ゲート制御信号を生成する。
【0018】
電流電圧取得部34は、接続部20の検出部22により検出された電流値および電圧値を取得する。
【0019】
変換制御部36は、電力変換部32の稼働状態を制御する。変換制御部36は、例えば
特性導出部38から入力された信号に基づいて、スイッチング素子のデューティ比を演算する。変換制御部36は、演算したデューティ比に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成して、生成したPWM信号を出力する。
【0020】
特性導出部38は、電流電圧取得部34により取得された電流値および電圧値に基づいて、動作ポイントを導出する。動作ポイントは、例えば最大電力点追従制御(MPPT;Maximum Power Point Tracking)を行うためのポイントである。特性導出部38は、例えば、予め決定された範囲内でストリング12により出力された電力における電圧値または電流値を変えながら、ストリング12が出力する電力が最大となる動作ポイント(電流値および電圧値)を求める。
【0021】
例えば、特性導出部38は、山登り法を用いて動作ポイントを導出する。特性導出部38は、電圧値を一方向(増加傾向または減少傾向)に変化させる。特性導出部38は、電圧値の変化により電力値が増加から減少に転換した場合に、電圧値を変化させる方向を逆方向に制御する。特性導出部38は、上述した制御を繰り返すことにより、電力値が最大となる動作ポイントを導出する。
【0022】
また、特性導出部38は、動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値方向に関する電流電圧特性曲線を導出する。動作ポイントを基準として設定された電圧値とは、例えば動作ポイント付近の電圧値である。動作ポイント付近とは、例えば動作ポイントを基準として設定される所定範囲内のポイントである。また、動作ポイント付近には、動作ポイントを含んでいてもよい。また、動作ポイント付近の電圧値は、例えば発電装置14の稼働を制限しない(出力を所定値以上低下させない)程度の電圧値である。開放電圧値とは、無負荷状態のストリング12の電圧である。例えば、特性導出部38は、ストリング12の出力側を無負荷状態に制御して開放電圧値を取得する。
【0023】
第1判定部40は、電流電圧特性曲線における電流値を、動作ポイント付近の電圧値から上限値までの間で積分した積分値が、基準値に比して所定値以上減少しているか否かを判定する。上限値とは、例えば、開放電圧値である。
【0024】
第2判定部42は、電流電圧特性曲線における電流値の変化に基づいて、ストリング12の異常を判定する。また、第2判定部は、前記電流電圧特性曲線に基づいて導出された電力を電圧値で微分した微分値を導出し、導出した微分値に基づいて、ストリング12の異常の種別を判定する。
【0025】
種別判定部44は、電流電圧特性曲線における動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる2点の電圧値に対応する電流値の変化に基づいて、ストリング12の異常の種別を判定する。また、種別判定部44は、電流電圧特性曲線における動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる第1の電圧値に対応する電力を電圧値で微分した微分値、および動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる第2の電圧値に対応する電力を電圧値で微分した微分値に基づいて、異常の種別を判定する。
【0026】
通信部50は、上述した特性導出部38、第1判定部40、第2判定部42、または種別判定部44の処理内容を管理装置100に送信する。
【0027】
(電力変換装置の動作)
図3は、電力変換装置30により実行される処理の流れを示すフローチャートである。 本処理は、複数のストリング12のうち、着目するストリング12ごとに実行される。なお、本処理は、着目する太陽電池モジュールごとに実行されてもよい。
【0028】
まず、電流電圧取得部34は、検出部22により検出された電流値および電圧値を取得する(ステップS100)。次に、特性導出部38は、取得した電流値および電圧値に基づいて、動作ポイントの電圧値Vpmおよび電流値Ipmを取得する(ステップS102)。
【0029】
次に、特性導出部38は、電圧値Vpmを変化させて開放電圧値Vocを取得する(ステップS104)。次に、特性導出部38は、電圧値Vpmと開放電圧値Vocとの範囲の電流電圧特性曲線PLを取得する(ステップS106)。例えば、特性導出部38は、電圧値の変化ごとに電流値を取得する。特性導出部38は、変化させた電圧値と取得した電流値とに基づいて、電流電圧特性曲線PLを生成する。
【0030】
次に、第1判定部40は、電流電圧特性曲線PLにおける電流値を、電圧値Vpmから開放電圧値Vocまでの間で積分した積分値(以下、実測積分値MI)を導出する(ステップS108)。
【0031】
図4は、実測積分値MIを説明するための図である。図中、横軸は電圧値を示し、縦軸は電流値を示している。図中において網掛された領域の面積が実測積分値MIである。図中のIscは短絡電流を示し、図中のIpmは動作ポイントPに対応する電流値である。
【0032】
次に、第1判定部40は、基準データ47から基準値を取得する(ステップS110)。例えば、第1判定部40は、動作ポイントPに基づいて基準値を取得する。基準値は、動作ポイントPに対して予め設定された積分値である。例えば、基準値は、動作ポイントPごとに設定された基準の電流電圧特性曲線における電流値を、電圧値から開放電圧値までの間で積分した積分値である。
【0033】
基準の電流電圧特性曲線PLは、公知の手法により決定される。例えば、基準の電流電圧特性曲線PLは、実験的に求められてもよいし、発電ユニット10に含まれる着目するストリング12とは別のストリング12の電流電圧特性曲線に基づいて導出されてもよい。別のストリング12は、例えば、着目するストリング12が設置された条件と同条件で設置されたストリングである。同条件とは、例えば、太陽光を受光する受光面が同方向に向けられていることである。
【0034】
なお、例えば、実測積分値MIが導出されたストリング12の設置条件と、基準値が導出されたストリングの設置条件とが異なる場合、第1判定部40は、実測積分値MIを補正してもよい。補正された実測積分値MIは、ストリング12の設置条件を、基準値が導出されたストリングの設置条件と同様にしたと仮定された場合の積分値である。補正値は、例えば2つのストリングにおける、日射量の差や温度差などの各種設置条件の差分値により決定される。また、補正は、基準値に対して行われてもよい。
【0035】
次に、第1判定部40は、基準値に対する実測積分値MIの減少率を導出する(ステップS112)。
【0036】
次に、第1判定部40は、実測積分値MIの減少率およびストリング12の電力の出力が所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS114)。
【0037】
所定の条件とは、例えば、実測積分値MIの減少率が所定の指標の範囲に含まれるか否かを判定するための条件である。所定の指標の範囲とは、例えば積分値に対する減少率±α(%)、出力低下の割合±β(%)で表すことができる。ここで、
図5は、実測積分値MIの減少率とストリング12の電力の出力低下率との関係を示す図である。図中、縦軸はストリング12の電力の出力低下率を示し、横軸は実測積分値MIの減少率を示している。
【0038】
図5において、第1−1閾値および第1−2閾値は、実測積分値減少率(%)に対する指標の範囲を示し、第2−1閾値および第2−2閾値は、出力低下率(%)に対する指標の範囲を示している。ステップS114における所定の条件とは、実測積分値MIの減少率が、第1−1閾値以上、且つストリング12の電力の出力低下率が第2−1閾値以上であることである。第1−1閾値は、例えば1%以上から9%以下程度の値である。より好ましくは、第1−1閾値は、3%以上から4%以下程度の値である。第2−1閾値は、第1−1閾値に比して小さい値である。第2−1閾値は、例えば0.5%以上から4%以下程度の値である。より好ましくは、第2−1閾値は、1%以上から2%以下程度の値である。図示する例では、実測積分値MIの減少率が3.77%(第1−1閾値)以上、且つストリング12の電力の出力低下率が1.48%以上(第2−1閾値)である場合、第1判定部40は、着目するストリング12に異常が存在すると判定する。
【0039】
ここで、第1判定部40は、着目するストリング12について、「異常が存在する可能性が高い」または「異常が存在する疑いがある」ことについて判定してもよい。第1判定部40は、着目するストリング12における、実測積分値MIの減少率が第1−2閾値以上、且つストリング12の電力の出力低下率が第2−2閾値以上である場合、「異常が存在する可能性が高い」と判定する。例えば、第1−2閾値は、第1−1閾値に3%以上〜8%以下程度の値を加算した値である。図示する例では、第1−2閾値は、8.77である。例えば、第2−2閾値は、第2−1閾値に1.5〜2.5%程度の値を加算した値である。図示する例では、第2−2閾値は、3.48%である。例えば、第1−1閾値と第1−2閾値との差は5%程度(基準となる減少率から±2.5%程度)であることが好適である。例えば、第2−1閾値と第2−2閾値との差は2%程度(基準となる出力低下率から±1%)であることが好適である。
【0040】
第1判定部40は、以下の(1)および(2)の条件の一方または双方を満たす場合、着目するストリング12に「異常が存在する疑いがある」と判定してもよい。(1)の条件は、ストリング12の電力の出力低下率が第2−1閾値以上、実測積分値MIの減少率が第1−1閾値以上、且つ第1−2閾値以下であることである。(2)の条件は、実測積分値MIの減少率が第1−1閾値以上、ストリング12の電力の出力低下率が第2−1閾値以上、且つ第2−2閾値以下であることである。
【0041】
ステップS114の所定の条件を満たさない場合、第1判定部40は、着目するストリング12は正常であると判定し(ステップS116)、本フローチャートにおける処理を終了する。所定の条件を満たさない場合、ストリング12は正常に稼働しているためである。この場合、第1判定部40は、通信部50を用いて、判定結果を管理装置100に送信しもよい。
【0042】
また、所定の条件を満たす場合、第2判定部42は、電流電圧特性曲線PLに基づいてストリング12が出力する電力を導出し、導出した電力を電圧値で1階微分して、微分値を導出する(ステップS118)。例えば、第2判定部42は、ストリング12が出力する電力値と電圧値との関係を示す出力特性を導出し、導出した出力特性に基づいて、電圧値に対応する微分値を導出する。次に、第2判定部42は、微分値が基準値と複数回一致したか否かを判定する(ステップS120)。基準値とは、例えば0(ゼロ)である。また、基準値は、所定の範囲を有する値として定められてもよい。微分値が基準値と複数回一致する場合、第2判定部42は、着目するストリング12にIscモードの異常(第1異常)が存在すると判定する(ステップS122)。Iscモードとは、ストリング12の電力の出力低下は電流値の低下に起因する異常である。
【0043】
図6は、微分値と、ストリング12により出力された電力における電圧値との関係を示す図である。図中、縦軸は微分値を示し、横軸はストリング12により出力された電力における電圧値を示している。図中の電圧値は、電圧値Vpmから開放電圧値Vocの間における、ある範囲の電圧値である。図示する例では、微分値が3箇所でゼロとなっている。このように、微分値が複数回ゼロになった場合、着目するストリング12の異常は、Iscモードに分類される。
【0044】
微分値が基準値と複数回一致しない場合(微分値が基準値と1回のみ一致する場合)、種別判定部44は、第1微分値、および第2微分値を、種別判定マップ48にプロットし、プロットした結果に基づいて第1異常とは異なる異常の有無および種別を判定する(ステップS124)。第1微分値および第2微分値は、電圧値Vpmから開放電圧値Vocの間の2つの電圧値に対応する微分値である。第1微分値は、電圧値Vpmから第1電圧(例えば10V程度)増加させた電圧値に対応する微分値である。第2微分値は、電圧値Vpmから第2電圧(例えば20V程度)増加させた電圧値に対応する微分値である。
【0045】
図7は、種別判定マップ48の一例を示す図である。図中、横軸は、第1微分値を示している。図中、縦軸は、第2微分値を示している。種別判定マップ48は、例えば、第1微分値と第2微分値との関係ごとに、異常の種別が対応付けられた情報である。第1微分値と第2微分値との関係は、第1領域A1から第4領域A4で分類される。第1領域A1は、第1微分値、第2微分値共に最も低い場合に属する領域である。第2領域A2は、第1領域A1の次に第1微分値、第2微分値共に低い場合に属する領域である。次いで第3領域が、第2領域A2の次に第1微分値、第2微分値共に低い場合に属する領域である。次いで第4領域は、第3領域A3の次に第1微分値、第2微分値共に低い場合に属する領域である。領域の境界線は図示する例に限定されるものではなく、例えば管理者等により任意の境界線が設定されてもよく、ストリング12の性能、規模等に応じて設定されてもよい。境界線は、直線に限定されず、曲線や階段状の線でもよい。
【0046】
異常の種別には、上述したIscモードに加え、更にVocモード、Rsモード、またはRshモードが含まれる。Vocモードは、ストリング12の電圧低下に起因する異常である。Rsモードは、ストリング12の直列抵抗の増大に起因する異常である。直列抵抗とは、例えば、発電装置14に含まれる半導体の抵抗や、半導体と電極との間のコンタクト抵抗などである。直列抵抗が増加することで、発電効率が低下する。Rshモードは、ストリング12の並列抵抗が減少することに起因する異常である。並列抵抗とは、発電装置14の漏れ電流による抵抗成分である。例えば、発電装置14の正極と負極の絶縁性が悪いと並列抵抗は低下し、発電効率が低下する。
【0047】
第1領域A1は、実測積分値MIの減少率およびストリング12の電力の出力が所定の条件を満たしたが、正常であると判定される領域である。Vocモードは、第2領域A2に対応付けられる。Rsモードは、第3領域A3に対応付けられる。Rshモードは、第4領域A4に対応付けられる。
【0048】
種別判定部44は、第1微分値、および第2微分値を、種別判定マップ48にプロットし、プロットした値に対応付けられた領域を取得する。種別判定部44は、取得した領域に基づいて、異常の有無および種別を判定する。
【0049】
次に、種別判定部44は、判定した異常の有無および種別を管理装置100に送信する(ステップS126)。これにより本フローチャートの処理は終了する。
【0050】
なお、微分値が1回も基準値と一致しない場合、第2判定部42は、ストリング12を正常と判定してもよい。また、異常の有無および種別を判定した後、種別判定部44は、異常の種別に基づいて、ステップS110の基準値を補正してもよい。記憶部46には、例えば、異常の種別ごとに対応付けられた補正値が記憶されている。第1判定部40は、補正後の基準値と、ステップS108で導出された実測積分値MIとを比較して、比較の結果に基づいて、ストリング12が異常であるか否か、または正常であるか否か判定してもよい。
【0051】
上述した例では、電圧値に対する電力の変化量に基づいて、異常の有無および異常種別を判定する例について説明したが、これに限られない。電力の変化は、電圧値または電流値の変化に依存するため、電圧値に対する電流値の変化量、または電力に対する電流値の変化量に基づいて、異常の有無および異常種別の判定がされてもよい。
【0052】
例えば、実施形態の種別判定マップ48は、第1電圧値を基準とした所定の電圧範囲における電流値の変化量および第2電圧値を基準とした所定の電圧範囲における電流値の変化量ごとに、異常の種別が対応付けられた種別判定マップであってもよい。この場合、種別判定部44は、第1電圧を中心として所定の電圧範囲を設定し、設定した所定の電圧範囲における電流値の第1変化量を導出すると共に、第2電圧を中心として所定の電圧範囲を設定し、設定した所定の電圧範囲における電流値の第2変化量を導出する。そして、種別判定部44は、導出した第1変化量および第2変化量を、それぞれ種別判定マップ48にプロットし、プロットした値に対応付けられた領域を取得し、取得した領域に基づいて、異常の有無および種別を判定してもよい。
【0053】
また、上述したフローチャートにおいて、一部の処理が実行されてもよい。例えば上述したフローチャートにおいて、電力変換装置30は、Iscモードを判定する処理を省略し、異常の有無および種別を判定する処理を実行してもよい。例えば、この場合、電力変換装置30は、実績積分値MIを導出する処理や、減少率および電力の出力が所定の条件を満たすか否かを判定する処理等(例えば、上述したステップS104からステップS120)を省略してもよい。更に、この場合、電力変換装置30は、第1微分値、および第2微分値を導出し、導出した第1微分値、および第2微分値を種別判定マップ48にプロットした結果に基づいて第1異常とは異なる異常の有無および種別を判定する。
【0054】
また、電力変換装置30は、Iscモードを判定する処理を実行し、他の異常(Vocモード、Rsモード、またはRshモード)の有無および種別を判定する処理を省略してもよい。また、電力変換装置30は、Iscモードを判定する処理を、他の異常(Vocモード、Rsモード、またはRshモード)の有無および種別を判定する処理の後に実行してもよい。
【0055】
管理装置100は、判定した異常の有無および種別を電力変換装置30から取得する。管理装置100は、取得した異常の有無および種別を表示部112に表示させる。
図8は、管理装置100の表示部112に表示されるインターフェース画像IMの一例を示す図である。
図8のインターフェース画像IMには、ストリング12に異常があると判定された場合の表示例が示されている。
図8の例では、表示される項目として、「発電ユニットID」、「ストリングID」、「異常の種別」、「設置場所」、「管理者情報」等が示されているが、表示される項目や画面レイアウト等については、これに限定されるものではない。「発電ユニットID」は、異常のストリング12を含む発電ユニット10の識別情報を示している。「ストリングID」は、異常のストリング12が存在することを示す情報を示している。また、「異常の種別」は、異常の種別を示す情報を示しており、「設置場所」は、発電ユニット10の設置場所を示している。また、「管理者情報」は、発電モジュールの管理者の住所または連絡先を示している。なお、インターフェース画像IMは、HEMS50が備える表示部に表示されてもよい。
【0056】
また、表示部112には、
図5で示した実測積分値MIの減少率と、ストリング12の電力の出力低下率との関係を示す情報が表示されてもよい。また、表示部112には、
図6で示した電流電圧特性曲線PLの微分値と、ストリング12により出力された電圧値との関係を示す情報が表示されてもよい。また、表示部112には、
図7で示した第1微分値、および第2微分値が種別判定マップ48にプロットされた結果が表示されてもよい。
【0057】
異常の有無および種別は、例えば、管理装置100の表示部112に表示される。この場合、発電ユニット10を保守する保守担当者は、表示部112に表示された情報によって、ストリング12の異常の有無および種別を特定することができる。そして、保守担当者は、ストリング12の異常の度合や、ストリング12の修理の緊急度などを認識することができる。したがって、第1の実施形態によれば、保守担当者は、異常の内容に応じて、そのまま放置してもよい程度の異常であるか、至急確認に行かなければならない異常であるかを推測することができるため、発電ユニット10に対するメンテナンスの作業効率を向上させることができる。
【0058】
以上説明した第1の実施形態の太陽電池監視システム1は、電流電圧特性曲線における電流値を、動作ポイントを基準として設定された電圧値から上限値までの間で積分した積分値が、基準値に比して所定値以上減少していると判定した場合、ストリング12が異常であることを示す情報を出力する。この結果、太陽電池の稼働の制限を緩和して太陽電池の異常を判定することができる。
【0059】
また、第1の実施形態の太陽電池監視システム1は、電流電圧特性曲線における動作ポイントを基準として設定された電圧値から開放電圧値の間に含まれる第1の電圧値および第2の電圧値に対する電流値の変化に基づいて、ストリング12の異常の有無および種別を判定する。この結果、太陽電池の異常の有無だけでなく、異常の種別も判定することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する機能などについての説明は省略する。第2の実施形態では、ストリング12の異常の判定に関する処理は、管理装置100で行われる。
【0061】
図9は、第2の実施形態の太陽電池監視システム1Aの機能構成を示す図である。太陽電池監視システム1Aは、電力変換装置30Aおよび管理装置100Aを備える。電力変換装置30Aは、電力変換部32、電流電圧取得部34、変換制御部36、および通信部50を備える。電力変換部32、電流電圧取得部34、変換制御部36、および通信部50は、それぞれ第1の実施形態において同じ符号が付与された機能部と同様の機能構成であるため、説明を省略する。
【0062】
管理装置100Aは、通信部110、表示部112、特性導出部120、第1判定部122、第2判定部124、種別判定部126、および記憶部130を備える。通信部110、表示部112、特性導出部120、第1判定部122、第2判定部124、種別判定部126、および記憶部130は、それぞれ第1の実施形態の通信部50、表示部112、特性導出部38、第1判定部40、第2判定部42、種別判定部44、および記憶部46と同様の機能構成のため説明を省略する。記憶部130は、基準データ132、および種別判定マップ134を含む。基準データ132、および種別判定マップ134は、それぞれ基準データ47、および種別判定マップ48と同様であるため説明を省略する。
【0063】
電力変換装置30Aは、検出部22により検出された電流値および電圧値を取得し、取得した電流値および電圧値を管理装置100Aに送信する。管理装置100は、電力変換装置30Aにより送信された電流値および電圧値を取得する。特性導出部120は、取得した電流値および電圧値に基づいて、動作ポイントを探索させる指示信号を、電力変換装置30Aに送信する。特性導出部120は、動作ポイントの電圧値Vpmおよび電流値Ipmを取得する。また、特性導出部120は、電力変換装置30Aを制御して、電圧値Vpmを変化させ開放電圧値Vocを取得する。特性導出部120は、電圧値Vpmと開放電圧値Vocとの範囲の電流電圧特性曲線PLを取得する。
【0064】
そして、第1判定部122は、実測積分値MIの減少率に基づいて、着目するストリング12の異常を判定する。第2判定部124は、電流電圧特性曲線PLに基づいてストリング12が出力する電力を導出し、導出した電力を電圧値で1階微分した微分値に基づいて、着目するストリング12の異常を判定する。種別判定部126は、第1微分値、および第2微分値を、種別判定マップ48にプロットし、プロットした結果に基づいて第1異常とは異なる異常の有無および種別を判定する。
【0065】
以上説明した第2の実施形態によれば、管理装置100Aが、ストリング12の異常の有無および種別の判定を行うため、電力変換装置30Aの処理負荷を軽減させることができる。
【0066】
なお、上述した実施形態における特性導出部38(120)、第1判定部(40)122、第2判定部42(124)、種別判定部(44)126、および記憶部(46)130の機能部は、1つの装置に備えられてもよいし、複数の装置に分散されて備えられてもよい。機能部が複数の装置に備えられた場合、複数の装置に備えられた各機能部が協働して処理を実行する。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態または実験結果を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態または実験結果に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。