【解決手段】エントランス室(13)と、該エントランス室(13)の屋外側に設けられた第1風除室(11)とを有し、屋外からエントランス室(13)内への虫の侵入を防止する建物の防虫システム(10)に、第1風除室(11)の屋外側の玄関扉(16)とエントランス室(13)側の外側内扉(17)の両方が閉まった状態において、外側内扉(17)のエントランス室(13)側の室圧が第1風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室圧を調整する室圧調整装置(20)を設ける。
建物の出入口空間となるエントランス室(13)と、該エントランス室(13)の屋外側に設けられた風除室(11)とを有し、屋外から上記エントランス室(13)内への虫の侵入を防止する建物の防虫システムであって、
上記風除室(11)の屋外側の第1の扉(16)と上記エントランス室(13)側の第2の扉(17)の両方が閉まった状態において、上記第2の扉(17)の上記エントランス室(13)側の室圧が上記風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室圧を調整する室圧調整装置(20)を備えている
ことを特徴とする建物の防虫システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような風除室が設けられた建物では、エントランス室と風除室との間の出入口に扉が設けられ、出入口を閉塞できるように構成されている。
【0005】
しかしながら、通常、扉を閉めても、扉と該扉を受け止める枠との間には僅かに隙間が形成される。そのため、扉を閉めることで、屋外の風が風除室及びエントランス室に吹き込むのを阻止することはできても、扉の開放時に風除室に侵入した虫が、風除室とエントランス室との間の扉と枠との僅かな隙間を掻い潜ってエントランス室に侵入するおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋外から建物のエントランス室内への虫の侵入を防止する建物の防虫システムにおいて、虫の侵入をより確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、建物の出入口空間となるエントランス室(13)と、該エントランス室(13)の屋外側に設けられた風除室(11)とを有し、屋外から上記エントランス室(13)内への虫の侵入を防止する建物の防虫システムであって、上記風除室(11)の屋外側の第1の扉(16)と上記エントランス室(13)側の第2の扉(17)の両方が閉まった状態において、上記第2の扉(17)の上記エントランス室(13)側の室圧が上記風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室圧を調整する室圧調整装置(20)を備えている。
【0008】
第1の発明では、室圧調整装置(20)が、第1の扉(16)と第2の扉(17)とが閉められて風除室(11)が閉塞された状態において、第2の扉(17)のエントランス室(13)側の室圧が風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室の室圧を調整する。これにより、風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、第2の扉(17)と枠との隙間では、第2の扉(17)の両側の室圧差により、エントランス室(13)側から風除室(11)に向かって空気が流通する。そのため、第1の扉(16)の開放時に屋外から風除室(11)に虫が侵入したとしても、風除室(11)の虫は、第2の扉(17)と枠との隙間から風除室(11)へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜ってエントランス室(13)側へ侵入できなくなる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記風除室(11)の床面は、上記第2の扉(17)側が上記第1の扉(16)側よりも高くなる段差部(30)を有している。
【0010】
第2の発明では、第1の扉(16)の開放時に、地面を這う地這虫(X)が風除室(11)に侵入した場合に、床面の段差部(30)が障壁となって、地這虫(X)が段差部(30)より第2の扉(17)側へ侵入できなくなる。つまり、地這虫(X)が建物内に侵入したとしても、風除室(11)に止められる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、上記段差部(30)には、蹴込を這い上がる虫が該段差部(30)の上側床面(32)に到達しないように、該上側床面(32)への侵入を阻止する返し部材(33)が設けられている。
【0012】
第3の発明では、風除室(11)に侵入した地這虫(X)の中に、段差部(30)の蹴込を這い上がることができる虫がいたとしても、返し部材(33)が障壁となって、虫が段差部(30)の上側床面(32)に到達できなくなる。
【0013】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、上記室圧調整装置(20)は、上記風除室(11)の屋外側の第1の扉(16)と上記エントランス室(13)側の第2の扉(17)の両方が閉まった状態において、上記風除室(11)の室圧を、屋外の大気圧よりも高くなるように調整する。
【0014】
第4の発明では、室圧調整装置(20)が、第1の扉(16)と第2の扉(17)とが閉められて風除室(11)が閉塞された状態において、風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも高くなるように風除室(11)の室圧を調整する。これにより、風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、第1の扉(16)と枠との隙間では、第1の扉(16)を挟む屋外の大気圧と風除室(11)の室圧との圧力差により、風除室(11)から屋外に向かって空気が流通する。そのため、屋外の虫は、風除室(11)から第1の扉(16)と枠との隙間を通って屋外へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜って風除室(11)へ侵入できなくなる。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、上記風除室(11)と上記エントランス室(13)との間に設けられ、上記風除室(11)との間に上記第2の扉(17)が設けられる一方、上記エントランス室(13)との間に第3の扉(18)が設けられた内側風除室(12)を備え、上記室圧調整装置(20)は、上記内側風除室(12)の屋外側の上記第2の扉(17)と上記エントランス室(13)側の上記第3の扉(18)の両方が閉まった状態において、上記内側風除室(12)の室圧を、上記風除室(11)の室圧より高く且つ上記エントランス室(13)の室圧より低くなるように調整する。
【0016】
第5の発明では、風除室(11)とエントランス室(13)との間に内側風除室(12)がさらに設けられている。そのため、第1の扉(16)の開放時に、虫が風除室(11)に侵入してしまったとしても、エントランス室(13)に到達するには、2枚の扉を超えなければならず、虫のエントランス室(13)への侵入が非常に困難になる。
【0017】
また、第5の発明では、室圧調整装置(20)が、第2の扉(17)と第3の扉(18)が閉められて内側風除室(12)が閉塞された状態において、内側風除室(12)の室圧を、屋外側の風除室(11)よりも高く且つエントランス室(13)の室圧よりも低くなるように調整する。そのため、内側風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、風除室(11)と内側風除室(12)との室圧差により、第2の扉(17)と枠との隙間において内側風除室(12)から風除室(11)へ空気が流れ、この空気流れによって、風除室(11)に侵入した虫が内側風除室(12)へ侵入できなくなる。また、同様に、内側風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、内側風除室(12)とエントランス室(13)との室圧差により、第3の扉(18)と枠との隙間においてエントランス室(13)から内側風除室(12)へ空気が流れ、この空気流れによって、内側風除室(12)に侵入した虫がエントランス室(13)へ侵入できなくなる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、上記第1の扉(16)と上記第2の扉(17)は、同時に開放されないように、一方の扉の開放時には、他方の扉が開放されないようにロックされるように構成され、上記第2の扉(17)と上記第3の扉(18)は、同時に開放されないように、一方の扉の開放時には、他方の扉が開放されないようにロックされるように構成されている。
【0019】
第6の発明では、第1の扉(16)の開放時には、第2の扉(17)が開放されないようにロックされ、第2の扉(17)の開放時には、第1の扉(16)が開放されないようにロックされる。また、第2の扉(17)の開放時には、第3の扉(18)が開放されないようにロックされ、第3の扉(18)の開放時には、第2の扉(17)が開放されないようにロックされる。このような構成により、各風除室(11,12)において前後に設けられた2つの扉が同時に開放されないため、第1〜第3の扉(16〜18)の全てが同時に開放されることがない。そのため、屋外とエントランス室(13)とが連通してしまうことがない。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、室圧調整装置(20)を設け、風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、第2の扉(17)のエントランス室(13)側の室圧が風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室圧を調整することとしている。そのため、風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、風除室(11)のエントランス室(13)側の第2の扉(17)の隙間では、第2の扉(17)の両側の室圧差により、エントランス室(13)側から風除室(11)に向かって空気が流通することとなる。これにより、屋外から風除室(11)に虫が侵入しても、風除室(11)の虫は、第2の扉(17)と枠との隙間から風除室(11)へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜ってエントランス室(13)側へ侵入できなくなる。従って、第1の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入を確実に防止することができる。
【0021】
また、第2の発明によれば、風除室(11)の床面に、第2の扉(17)側が第1の扉(16)側よりも高くなる段差部(30)を形成することとしたため、地面を這う地這虫(X)が風除室(11)に侵入した場合に、床面の段差部(30)が障壁となって、虫が段差部(30)より第2の扉(17)側へ侵入できなくなる。つまり、地這虫(X)が建物内に侵入したとしても、風除室(11)に止められる。従って、第2の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0022】
また、第3の発明によれば、風除室(11)の床面の段差部(30)に返し部材(33)を設けたため、風除室(11)に侵入した地這虫(X)の中に、段差部(30)の蹴込を這い上がることができる虫がいたとしても、返し部材(33)が障壁となって、虫が段差部(30)の上側床面(32)に到達できなくなる。従って、第3の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0023】
また、第4の発明によれば、室圧調整装置(20)を、風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも高くなるように風除室(11)の室圧を調整するように構成している。そのため、風除室(11)の屋外側の第1の扉(16)の隙間では、第1の扉(16)を挟む屋外の大気圧と風除室(11)の室圧との圧力差により、風除室(11)から屋外に向かって空気が流通することとなる。これにより、屋外の虫は、風除室(11)から第1の扉(16)と枠との隙間を通って屋外へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜って風除室(11)へ侵入できなくなる。従って、第4の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0024】
また、第5の発明によれば、風除室(11)とエントランス室(13)との間に内側風除室(12)をさらに設けることとした。そのため、第1の扉(16)の開放時に、虫が風除室(11)に侵入してしまったとしても、エントランス室(13)に到達するには、2枚の扉を超えなければならず、虫のエントランス室(13)への侵入をより確実に防止することができる。特に、床面に地這虫(X)の侵入を阻害する段差部(30)が設けられた風除室(11)の奥側にさらなる風除室(内側風除室)を設けたため、地這虫(X)のエントランス室(13)への侵入を効果的に防止することができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、室圧調整装置(20)を、内側風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時に、内側風除室(12)の室圧が、屋外側の風除室(11)よりも高く且つエントランス室(13)の室圧よりも低くなるように調整するように構成することとした。そのため、内側風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、風除室(11)と内側風除室(12)との室圧差により、第2の扉(17)と枠との隙間において内側風除室(12)から風除室(11)へ空気が流れ、この空気流れによって、風除室(11)に侵入した虫が内側風除室(12)へ侵入できなくなる。また、同様に、内側風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、内側風除室(12)とエントランス室(13)との室圧差により、第3の扉(18)と枠との隙間においてエントランス室(13)から内側風除室(12)へ空気が流れ、この空気流れによって、内側風除室(12)に侵入した虫がエントランス室(13)へ侵入できなくなる。従って、第5の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0026】
また、第6の発明によれば、第1〜第3の扉(16〜18)を、隣り合う扉の一方の開放時には、他方の扉が開放されないようにロックされるように構成した。この構成により、各風除室(11,12)において前後に設けられた2つの扉が同時に開かない。そのため、屋外と内側風除室(12)とが風除室(11)を介して連通することがなく、風除室(11)とエントランス室(13)とが内側風除室(12)を介して連通することがない。従って、第6の発明によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。ハエ等の飛来虫は、第1〜第3の扉(16〜18)が同時に開放されると、風除室(11)から一気にエントランス室(13)へ侵入してしまうおそれがある。そのため、第1〜第3の扉(16〜18)が同時に全て開放されることがない第6の発明は、特に、建物内に侵入しようとする虫のうち、ハエ等の飛来虫のエントランス室(13)への侵入防止に効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る建物の防虫システム(10)が適用された建物のエントランス部分を示している。防虫システム(10)は、食品や医薬品工場等のクリーンルーム等、高い清浄度が求められる内部空間を備えた建物に設けられる。本実施形態1では、防虫システム(10)が設けられる建物が医薬品工場である例について説明する。
【0030】
以下、防虫システム(10)の詳細な構成、動作及び作用について説明する。
【0031】
−防虫システムの構成−
防虫システム(10)は、第1風除室(風除室)(11)と、第2風除室(内側風除室)(12)と、エントランス室(13)と、第1風除室(11)と第2風除室(12)とエントランス室(13)の室圧を調整する室圧調整装置(20)と、段差部(30)と、エアカーテン装置(40)と、外灯(50)とを備えている。第1風除室(11)及び第2風除室(12)は、建物内において、エントランス室(13)の屋外側に設けられている。防虫システム(10)の各室は、玄関開口からエントランス室(13)に至る動線上において、玄関開口側から第1風除室(11)、第2風除室(12)、エントランス室(13)の順に配置されている。
【0032】
[第1風除室]
図1及び
図2に示すように、第1風除室(11)は、建物において、上記玄関開口が形成された屋外に隣接する位置に区画されている。第1風除室(11)を区画する外壁に形成された玄関開口には、玄関扉(第1の扉)(16)が取り付けられている。一方、第1風除室(11)の第2風除室(12)側(エントランス室(13)側)の内壁に形成された開口には、外側内扉(第2の扉)(17)が取り付けられている。玄関扉(16)及び外側内扉(17)は、セミエアタイト仕様に構成されている。また、玄関扉(16)及び外側内扉(17)には、図示しないロック機構が設けられ、玄関扉(16)及び外側内扉(17)は、インターロック制御により、一方の開放時には他方が開放されないようにロックされるように構成されている。
【0033】
[第2風除室]
第2風除室(12)は、建物において、玄関開口からエントランス室(13)に至る動線上の第1風除室(11)とエントランス室(13)との間に区画されている。第2風除室(12)の第1風除室(11)側(屋外側)の内壁に形成された開口には、上述の外側内扉(17)が取り付けられている。一方、第2風除室(12)のエントランス室(13)側の内壁に形成された開口には、内側内扉(第3の扉)(18)が取り付けられている。内側内扉(18)も、玄関扉(16)及び外側内扉(17)と同様に、セミエアタイト仕様に構成されている。また、内側内扉(18)にも、図示しないロック機構が設けられ、外側内扉(17)及び内側内扉(18)は、インターロック制御により、一方の開放時には他方が開放されないようにロックされるように構成されている。
【0034】
[エントランス室]
エントランス室(13)は、防虫システム(10)が有する建物内の3つの室(第1風除室(11)、第2風除室(12)、エントランス室(13))のうち、最も内側に区画されている。エントランス室(13)には、エレベータ室、階段室、クリーンルーム(15)等に廊下(14)が隣接している。
【0035】
[室圧調整装置]
室圧調整装置(20)は、給気通路(21)と、排気通路(22)と、外気処理機(23)と、排気ファン(24)と、フィルターユニット(25)と、第1〜第3給気ダンパ(26a〜26c)と、第1〜第3排気ダンパ(27a〜27c)と、コントローラ(28)とを備えている。
【0036】
給気通路(21)は、屋外から建物内へ空気を導くように、屋外から建物内に向かって延びている。給気通路(21)は、建物内(
図2の天井裏)において3つに分岐し、各分岐部は、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室において開口している。第1風除室(11)において開口する分岐部には、開度可変の第1給気ダンパ(26a)が設けられ、第2風除室(12)において開口する分岐部には、開度可変の第2給気ダンパ(26b)が設けられ、エントランス室(13)において開口する分岐部には、開度可変の第3給気ダンパ(26c)が設けられている。
【0037】
排気通路(22)は、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室から屋外へ空気を排出するように、各室から屋外に向かって延びている。排気通路(22)は、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室において流入部が開口し、3つの流入部が天井内において1つに合流して屋外まで延びている。排気通路(22)の合流前の部分(流入部)であって、第1風除室(11)から延びる部分には、開度可変の第1排気ダンパ(27a)が設けられ、第2風除室(12)から延びる部分には、開度可変の第2排気ダンパ(27b)が設けられ、エントランス室(13)から延びる部分には、開度可変の第3排気ダンパ(27c)が設けられている。
【0038】
外気処理機(23)は、給気通路(21)の分岐部よりも上流側に設けられ、粗塵フィルタ(23a)と給気ファン(23b)とを備えている。粗塵フィルタ(23a)は、給気通路(21)に取り込まれた外気中の塵埃や虫を除去する。給気ファン(23b)は、給気通路(21)において粗塵フィルタ(23a)の下流側に設けられ、給気通路(21)に外気を取り込み、粗塵フィルタ(23a)を通過させて塵埃を除去して清浄な状態にして吸い込み、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室に向かって送風する。
【0039】
排気ファン(24)は、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室において開口する3つの流入部の合流部よりも下流側(屋外側)に設けられている。排気ファン(24)は、排気通路(22)を介して第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室から空気を引き込み、該空気を屋外へ排出する。つまり、排気ファン(24)は、排気通路(22)を介して各室内の空気を屋外に排気する。
【0040】
フィルターユニット(25)は、ケースと、該ケース内部に設けられた粗塵フィルタとを有している。フィルターユニット(25)は、排気通路(22)の第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室において開口する3つの流入部の合流部よりも下流側(屋外側)であって、排気ファン(24)よりも上流側に設けられている。フィルターユニット(25)は、排気ファン(24)の停止時に、虫が屋外から排気通路(22)を介して各室へ侵入することを防止する。
【0041】
コントローラ(28)は、屋外、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室に設けられた圧力センサ(図示省略)から検出値(大気圧、室圧)が送信され、各圧力センサの検出値に基づいて、各室の室圧を調整する。
【0042】
具体的には、コントローラ(28)は、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室圧を、第1風除室(11)の室圧が大気圧(屋外)よりも高く、第2風除室(12)の室圧が第1風除室(11)の室圧よりも高く、エントランス室(13)の室圧が第2風除室(12)の室圧よりも高くなるように調整する。コントローラ(28)は、各室の室圧を、第1〜第3排気ダンパ(27a〜27c)の開度を変更することによって所望の室圧に調整する。
【0043】
なお、本実施形態では、コントローラ(28)は、屋外とエントランス室(13)との間に設けられる3つの扉(玄関扉(16)、外側内扉(17)、内側内扉(18))の全てが閉まっている時に、第1風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも10Pa程度高く、第2風除室(12)の室圧が第1風除室(11)の室圧よりも10Pa程度高く、エントランス室(13)の室圧が、第2風除室(12)の室圧よりも10Pa程度高くなるように各室圧を調整する。即ち、第1風除室(11)の室圧は、大気圧+10Pa、第2風除室(12)の室圧は、大気圧+20Pa、エントランス室(13)の室圧は、大気圧+30Paとなる。
【0044】
[段差部]
図1〜
図3に示すように、第1風除室(11)の床面には、内側内扉(18)側が玄関扉(16)側よりも高くなる段差部(30)が形成されている。段差部(30)は、下側の床面(31)と上側の床面(32)との高低差が15〜20cm程度になるように構成されている。また、段差部(30)には、蹴込を這い上がる虫が該段差部(30)の上側の床面(32)に到達しないように、該床面(32)への侵入を阻止する返し部材(33)が設けられている。返し部材(33)は、本実施形態では、上がり框も構成している。
【0045】
具体的には、返し部材(33)は、段差部(30)の蹴込面を覆う蹴込板部(33a)と、該蹴込板部(33a)の上端部から玄関扉(16)側(屋外側)に延びる横板部(33b)と、該横板部(33b)の屋外側端部から下方に延びる縦板部(33c)と、該縦板部(33c)の下端部から蹴込板部(33a)に向かって水平方向に延びる戻し板部(33d)とを有している。このような形状の返し部材(33)により、第1風除室(11)に地這虫(X)が侵入し、この地這虫(X)が蹴込板部(33a)を這い上がったとしても、地這虫(X)は、蹴込板部(33a)の上部で横板部(33b)によってそれ以上上方へ進むのを阻害され、また、段差部(30)の上側の床面(32)への侵入も阻害される。そのため、蹴込板部(33a)を這い上がる地這虫(X)は、横板部(33b)の下面に沿って、玄関扉(16)側へ進み、縦板部(33c)の内面(蹴込板部(33a)側の面)に沿って下降せざるを得ない。また、縦板部(33c)の下端部において戻し板部(33d)が僅かに出っ張っているため、縦板部(33c)の内面に沿って下降する地這虫(X)は、縦板部(33c)の外面(玄関扉(16)側の面)に回り込めずに落下することとなる。
【0046】
[エアカーテン装置]
エアカーテン装置(40)は、玄関扉(16)の外側上方に設けられ、上方から下方へ空気を吹き出すことによって、該玄関扉(16)の外側に空気の幕(エアカーテン)を形成する。このエアカーテンにより、玄関開口から建物内への虫の侵入が防止される。エアカーテンは、特に、ハエ等の飛来虫の侵入に効果的である。なお、本実施形態では、飛来虫のうち、比較的大型の蛾やハエの侵入を防止するために、風速7m/s以上のエアカーテンが形成されるエアカーテン装置(40)を用いている。また、本実施形態では、図示を省略しているが、エアカーテン装置(40)のさらに外側に人の通過を感知する人感センサが設けられており、この人感センサが人の通過を感知したことにより、エアカーテン装置(40)が作動してエアカーテンを形成するようにしている。
【0047】
[外灯]
外灯(50)は、夜間等に玄関扉(16)付近を照らすために、玄関ポーチ(玄関扉(16)の外側上方)に設けられている。本実施形態では、外灯(50)として、虫が反応して寄り付き易い紫外線領域(波長400nm以下)の光を低減した低誘虫照明を用いている。夜間、光を放つ照明器具には虫が集まり易いが、このような外灯(50)を用いることにより、虫が玄関扉(16)付近に集まり難くなる。
【0048】
なお、玄関扉(16)付近の外灯(50)として低誘虫照明を用いることと同様の趣旨から、玄関扉(16)及び玄関扉(16)が設けられる第1風除室(11)の外壁の少なくとも一部が、ガラス等、内部の光が屋外へ漏れるような素材が用いられている場合には、そのガラス面に、紫外線領域(波長400nm以下)の光を透過させない紫外線カットフィルムを貼り付けるのが好ましい。これにより、夜間に建物内の光が屋外へ漏れても、虫が玄関扉(16)付近に集まり難くなる。
【0049】
−動作及び作用−
次に、防虫システム(10)における動作及び作用について説明する。
【0050】
室圧調整装置(20)が、第1風除室(11)、第2風除室(12)及びエントランス室(13)の各室圧を調整する。具体的には、外気処理機(23)の給気ファン(23b)と排気ファン(24)とを稼働させ、コントローラ(28)が第1〜第3排気ダンパ(27a〜27c)の開度を調節して、3つの扉(玄関扉(16)、外側内扉(17)、内側内扉(18))の全てが閉まっている状態で、第1風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも10Pa高く、第2風除室(12)の室圧が第1風除室(11)の室圧よりも10Pa高く、エントランス室(13)の室圧が、第2風除室(12)の室圧よりも10Pa高くなるように各室圧を調整する。
【0051】
これにより、玄関扉(16)、外側内扉(17)及び内側内扉(18)とこれらをそれぞれ受け止める枠との間の隙間において、エントランス室(13)側から屋外へ向かって空気が流通する。具体的には、玄関扉(16)の隙間では、第1風除室(11)から屋外へ向かって空気が流れ、外側内扉(17)の隙間では、第2風除室(12)から第1風除室(11)に向かって空気が流れ、内側内扉(18)の隙間では、エントランス室(13)から第2風除室(12)に向かって空気が流れる。このようにして各扉の隙間では、風速4m/s程度の気流が形成される。そのため、各扉の屋外側にいる虫は、各扉と枠との隙間から吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜ってエントランス室(13)側の室内に侵入できなくなる。つまり、屋外の虫が各扉の隙間からエントランス室(13)へ侵入できなくなる。
【0052】
また、この状態において、人が建物内に入るために、玄関扉(16)に近づくと、人感センサが人の接近を感知してエアカーテン装置(40)に信号を送信し、エアカーテン装置(40)がエアカーテンを形成する。建物内に入る人は、このエアカーテンを通り抜ける際に、衣服や靴に付着した虫が掃われる。また、人が第1風除室(11)内に入るために、玄関扉(16)が開放されている際には、エアカーテンが障壁となって飛来虫の侵入が防止される。また、このとき、玄関扉(16)に付着した虫もエアカーテンによって掃われる。
【0053】
そして、人が第1風除室(11)に入ると、インターロック制御により、玄関扉(16)が閉じられない限り、外側内扉(17)は開放できないようにロックされている。そのため、玄関扉(16)が開いているために、万一、飛来虫が第1風除室(11)に侵入してしまっても、外側内扉(17)が閉じているため、飛来虫は第2風除室(12)に入れず、人と共に第1風除室(11)に止められる。
【0054】
一方、第1風除室(11)には、段差部(30)が設けられている。人は、ここで、靴を脱ぎ、上履きに履き替える。これにより、万一、靴と共に地這虫(X)が第1風除室(11)に侵入していても、段差部(30)の下側の床面(31)に靴を脱ぐことにより、地這虫(X)も下側の床面(31)に止められる。また、段差部(30)には、返し部材(33)が設けられているため、第1風除室(11)に侵入した地這虫(X)は、段差部(30)を這い上がったとしても、返し部材(33)の内面を這い回るだけで、段差部(30)の上側の床面(32)には到達しない。つまり、第1風除室(11)に侵入した地這虫(X)は、段差部(30)及び返し部材(33)により、段差部(30)の上側の床面(32)には到達できずに、下側の床面(31)に止められる。
【0055】
その後、第1風除室(11)では、玄関扉(16)の閉鎖後に、外側内扉(17)が開放される。これにより、段差部(30)の下側の床面(31)に靴を脱いだ人が、第2風除室(12)に進入可能となる。
【0056】
そして、人が第2風除室(12)に入ると、また、インターロック制御により、外側内扉(17)が閉じられない限り、内側内扉(18)は開放できないようにロックされている。そのため、外側内扉(17)が開いているために、万一、虫が第1風除室(11)から第2風除室(12)に侵入してしまっても、内側内扉(18)が閉じているため、虫はエントランス室(13)に入れず、人と共に第2風除室(12)に止められる。
【0057】
その後、第2風除室(12)では、外側内扉(17)の閉鎖後に、内側内扉(18)が開放される。これにより、第2風除室(12)に居る人が、エントランス室(13)に進入可能となる。
【0058】
以上のような本防虫システム(10)の作用により、3つの扉(玄関扉(16)、外側内扉(17)、内側内扉(18))の閉鎖時だけでなく開放時にも、屋外の虫がエントランス室(13)に侵入し難くなる。また、低誘虫照明からなる外灯(50)や、玄関扉(16)及び第1風除室(11)の外壁のガラス部分に貼り付けられた紫外線カットフィルムにより、夜間、玄関扉(16)付近が光に照らされても、夜光虫が寄り付き難くなる。このことによっても、屋外の虫がエントランス室(13)に侵入し難くなる。
【0059】
−実施形態1の効果−
本防虫システム(10)によれば、室圧調整装置(20)を設け、第1風除室(11)の2枚の扉(玄関扉(16)及び外側内扉(17))の閉鎖時に、外側内扉(17)のエントランス室(13)側の室圧(第2風除室(12)の室圧)が第1風除室(11)の室圧よりも高くなるように各室圧を調整することとしている。そのため、第1風除室(11)のエントランス室(13)側の外側内扉(17)の隙間では、外側内扉(17)の両側の室圧差により、エントランス室(13)側の第2風除室(12)から第1風除室(11)に向かって空気が流通することとなる。これにより、屋外から第1風除室(11)に虫が侵入しても、第1風除室(11)の虫は、外側内扉(17)と枠との隙間から第1風除室(11)へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜ってエントランス室(13)側の第2風除室(12)へ侵入できなくなる。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入を確実に防止することができる。
【0060】
また、本防虫システム(10)によれば、第1風除室(11)の床面に、外側内扉(17)側が玄関扉(16)側よりも高くなる段差部(30)を形成することとしたため、地面を這う地這虫(X)が第1風除室(11)に侵入した場合に、床面の段差部(30)が障壁となって、虫が段差部(30)より外側内扉(17)側へ侵入できなくなる。つまり、地這虫(X)が建物内に侵入したとしても、第1風除室(11)に止められる。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0061】
また、本防虫システム(10)によれば、第1風除室(11)の床面の段差部(30)に返し部材(33)を設けたため、第1風除室(11)に侵入した地這虫(X)の中に、段差部(30)の蹴込を這い上がることができる虫がいたとしても、返し部材(33)が障壁となって、虫が段差部(30)の上側床面(32)に到達できなくなる。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0062】
また、本防虫システム(10)によれば、室圧調整装置(20)を、第1風除室(11)の2枚の扉の閉鎖時に、第1風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも高くなるように第1風除室(11)の室圧を調整するように構成している。そのため、第1風除室(11)の屋外側の玄関扉(16)の隙間では、玄関扉(16)を挟む屋外の大気圧と第1風除室(11)の室圧との圧力差により、第1風除室(11)から屋外に向かって空気が流通することとなる。これにより、屋外の虫は、第1風除室(11)から玄関扉(16)と枠との隙間を通って屋外へ吹く空気流れによって、該隙間を掻い潜って第1風除室(11)へ侵入できなくなる。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0063】
また、本防虫システム(10)によれば、第1風除室(11)とエントランス室(13)との間に第2風除室(12)をさらに設けることとした。そのため、玄関扉(16)の開放時に、虫が第1風除室(11)に侵入してしまったとしても、エントランス室(13)に到達するには、2枚の扉を超えなければならず、虫のエントランス室(13)への侵入をより確実に防止することができる。特に、床面に地這虫(X)の侵入を阻害する段差部(30)が設けられた第1風除室(11)の奥側にさらなる風除室(第2風除室(12))を設けたため、地這虫(X)のエントランス室(13)への侵入を効果的に防止することができる。
【0064】
また、本防虫システム(10)によれば、室圧調整装置(20)を、第2風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時に、第2風除室(12)の室圧が、屋外側の第1風除室(11)よりも高く且つエントランス室(13)の室圧よりも低くなるように調整するように構成することとした。そのため、第2風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、第1風除室(11)と第2風除室(12)との室圧差により、外側内扉(17)と枠との隙間において第2風除室(12)から第1風除室(11)へ空気が流れ、この空気流れによって、第1風除室(11)に侵入した虫が第2風除室(12)へ侵入できなくなる。また、同様に、第2風除室(12)の2枚の扉の閉鎖時には、第2風除室(12)とエントランス室(13)との室圧差により、内側内扉(18)と枠との隙間においてエントランス室(13)から第2風除室(12)へ空気が流れ、この空気流れによって、第2風除室(12)に侵入した虫がエントランス室(13)へ侵入できなくなる。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。
【0065】
また、本防虫システム(10)によれば、3つの扉(16〜18)を、インターロック制御により、隣り合う扉の一方の開放時には、他方の扉が開放されないようにロックされるように構成した。この構成により、各風除室(11,12)において前後に設けられた2つの扉が同時に開かない。そのため、屋外と第2風除室(12)とが第1風除室(11)を介して連通することがなく、第1風除室(11)とエントランス室(13)とが第2風除室(12)を介して連通することがない。従って、本防虫システム(10)によれば、屋外からエントランス室(13)への虫の侵入をより確実に防止することができる。ハエ等の飛来虫は、3つの扉(16〜18)が同時に開放されると、第1風除室(11)から一気にエントランス室(13)へ侵入してしまうおそれがある。そのため、3つの扉(16〜18)が同時に全て開放されることがない本防虫システム(10)は、特に、建物内に侵入しようとする虫のうち、ハエ等の飛来虫のエントランス室(13)への侵入防止に効果がある。
【0066】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0067】
上記実施形態1では、第1風除室(11)及び第2風除室(12)を設けることとしていたが、第2風除室(12)を省略することとしてもよい。この場合、室圧調整装置(20)は、第1風除室(11)の室圧が屋外の大気圧よりも10Pa高く、エントランス室(13)の室圧が第1風除室(11)の室圧よりも10Pa高くなるように各室圧を調整することとする。このような形態であっても、本発明の効果を奏する。
【0068】
また、防虫システム(10)の適用箇所は、食品や医薬品工場に限られない。例えば、ビル等の施設等に適用してもよい。
【0069】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。