特開2017-225448(P2017-225448A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225448(P2017-225448A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】フィルタリング部材
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/12 20060101AFI20171201BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20171201BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C12M1/12
   G01N1/10 B
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 520Z
   B01D29/04 530A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-136716(P2017-136716)
(22)【出願日】2017年7月13日
(62)【分割の表示】特願2012-146625(P2012-146625)の分割
【原出願日】2012年6月29日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】岡野定 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】野田 英之
(72)【発明者】
【氏名】福薗 真一
(72)【発明者】
【氏名】原田 邦男
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4D116
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD12
2G052AD29
2G052AD52
2G052BA22
2G052DA12
2G052DA33
2G052EA03
2G052EA14
2G052GA29
2G052JA09
4B029AA09
4B029BB01
4B029GB02
4B029GB05
4B029HA06
4B029HA10
4D116AA30
4D116BB01
4D116BC01
4D116BC06
4D116BC77
4D116DD01
4D116FF11B
4D116KK06
4D116QB48
4D116QB50
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】外部由来の汚染や交差汚染のため高感度・高精度の測定が困難である。
【解決手段】(1) 液体を保持する容器の底部に液体を濾過するフィルタを有するフィルタユニットと、(2) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部を介して前記フィルタユニットを着脱可能であり、前記フィルタユニットの装着時には、その内側の面と前記フィルタユニットの外側の面とが気密性を保つように接した状態で前記フィルタによる濾過が可能であり、かつ、その濾液を第二の開口部を介して排出するアタッチメントカバーとでフィルタリング部材を構成する。
【選択図】図1−4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する容器と、前記容器の底部を形成するように設けられ液体を濾過するフィルタとを有するフィルタユニットと、
第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部を介して前記フィルタユニットを内部空間に着脱可能であり、前記フィルタユニットの装着時には、その内側の面と前記フィルタユニットの外側の面とが気密性を保つように接した状態で前記フィルタによる濾過が可能であり、かつ、その濾液を第二の開口部を介して排出するアタッチメントカバーと
を有し、
前記アタッチメントカバーは、前記フィルタユニットの側面及び底部を覆うように、前記フィルタユニットを装着する
フィルタリング部材。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタリング部材において、
前記アタッチメントカバーの第二の開口部は、濾過口への取り付け時に、前記濾過口の内側に挿入可能なテーパー形状を有する
ことを特徴とするフィルタリング部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を含むサンプルの濾過に使用するフィルタリング部材及び当該部材を使用したフィルタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞を1細胞毎に解析し、細胞の状態を評価する手法が注目されている。この手法は、単一細胞解析と呼ばれ、医薬品製造における無菌検査、iPS (induced Pluripotent Stem) 細胞に代表される再生医療において重要な解析手法の1つである。
【0003】
サンプル中の極めて少数の細胞を物理的・化学的・生物学的に解析する計測方法では、一般に、高い感度及び精度が要求される。このため、この種の計測では、無菌環境下でサンプルを濾過して不要な媒質を除き、測定対象とする細胞をフィルタで濃縮する手法が用いられている。また、必要に応じ、解析用の試薬の反応を活性化又は不活性化することを目的として、解析用の試薬を加えたフィルタを加熱若しくは冷却し、又はフィルタを解析用装置等に移動させることがある。
【0004】
無菌検査においては、サンプルの濾過、試薬の反応及び解析対象の移動の際に用いられる部材が無菌でなければならない。しかも、無菌検査では、サンプルの取り扱いが容易なだけでなく、様々な汚染源(例えば作業者、測定環境、濾過後の不要なサンプル)からの汚染の防止が求められる。さらに、サンプル同士が雑じり合う汚染、すなわち交差汚染の防止は、少数の貴重な細胞を高感度かつ高精度に解析する上で、極めて重要である。
【0005】
以下、生物発光法による菌体の計測方法の背景技術を記載する。医薬品製造分野・化粧品製造分野・臨床医学・基礎生化学等では、サンプルの品質管理のため、サンプル中の菌体の有無や菌体数の計測が幅広く実施されている。例えば医薬品製造分野では、厚生労働省により定められた日本薬局方を規格として、医薬品原料や中間体、最終製品、製薬用水に含まれる菌体(細菌・真菌)の管理が必須であり、日々、菌数の計測が実施されている。
日本薬局方に規定されている細菌や真菌数の主な計測方法は培養法である。
【0006】
【表1】
【0007】
培養法では、サンプルをフィルタで濾過して菌体を捕捉した後、菌体を捕捉したフィルタを寒天平板培地に載せて培養する。この際、1個の生菌は、1個のコロニーを形成する。培養法は、この特性を利用し、目視により計測可能なコロニーの数(CFU:Colony Forming Unit)を数えることにより、サンプル中の生菌数を定量する。なお、死菌は培養しても増殖することはなく、コロニーも形成しないため、目視により視認されることはない。
【0008】
ところで、製薬業界では、製薬用水のように貧栄養下の菌体を検出対象とする。このため、その培養には、約1週間もの長時間が必要とされ、そのことが検出上の課題となっている。そして、そのことが、中間体の製造や最終製品の出荷の段階で検査結果待ちを生じさせる原因となっており、事業者にとって培養法は時間的・経済的な負担となっている。
【0009】
一方、菌体を迅速に計測できる方法として、蛍光染色法が知られている。特許文献1には、蛍光染色法で使用する微生物採取キットの一例が記載されている。特許文献1に記載の微生物採取キットは、プレフィルタとしての異物除去用フィルタと、微生物採取用フィルタを組み合わせて使用するものであり、濾過ベース本体の再利用が可能であることを特徴とする。
【0010】
最近の蛍光染色法では、菌体を含むサンプルのフィルタリング後に、蛍光色素を用いて菌体内のDNA(Deoxyribonucleic acid)を染色するが、生菌内のDNAと死菌内のDNAを同時に染色する蛍光色素と、死菌内のDNAのみを染色する蛍光色素の2種類を使用する方法がある。この方法によれば、生菌と死菌を別々に計測することが可能である。
【0011】
しかし、蛍光染色法では、これらの蛍光色素と同じ波長の蛍光を発するものであれば、菌体以外の微粒子やゴミなども一緒に検出してしまう。このため、蛍光染色法は、菌体検出結果の真偽が不安定であるという問題を抱えている。
【0012】
この他、蛍光計測以外の原理を使用する菌体迅速計測方法として、ATP(Adenosine TriPhosphate, アデノシン三リン酸)生物発光法が知られている。この方法の検出対象となるATP分子は、全ての生物の細胞内に存在し、細胞の生命活動に必要とするエネルギー源となる有機化合物である。生物発光法は、ATPと化学反応して光を生じるルシフェラーゼとルシフェリンを使用して、細胞から抽出したATPとルシフェラーゼ、ルシフェリンの発光反応により生じた発光を計測し、発光量から細胞数を見積もる。
【0013】
従来法では、生菌や死菌由来のATP、遊離状態のATPを含むサンプルに対して、(1) 生菌以外のATPの除去、(2) 生菌内のATPの抽出、(3) 生菌由来のATPと発光試薬(ルシフェラーゼ・ルシフェリン等)による発光反応と発光計測の三段階が実施される。
【0014】
生菌1個当りのATP内包量は、細菌1CFU当りの換算で約1.5 × 10-18 mol/CFU(0.001 fmol/CFU = 1 amol/CFU)と極めて微量である(非特許文献1)。また、現状の一般的な生物発光法のATP検出感度は1 × 10-15〜1 × 10-16 mol(1〜0.1 fmol)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−291940号公報
【特許文献2】特許第32527153号公報
【特許文献3】米国特許第5141639号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Analytical Biochemistry 第319巻第287-295頁,2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本出願の発明者は、ATP計測感度1.0 × 10-18 molという現時点では容易に達成することができないレベルの超高感度なATP計測技術を開発中である。この開発過程で、発明者は、通常では想像できないほど微量なレベルでATPの汚染が発生し得ることを突き止めた。そして、発明者は、この汚染の問題を解決しなければ、1.0 × 10-18 molレベルで信頼できる計測結果を得ることができないとの知見を得るに至った。すなわち、発明者は、目標レベルの計測結果を得るには、1amol ATPの汚染も許されない計測環境の達成が必要であるとの考えに至った。
【0018】
従来の菌体迅速測定においては、菌体を含むサンプルを濾過する際に、作業者は、フィルタ自体若しくはフィルタが固定された容器をピンセットや指先で直接把持し、濾過口に接続・設置している。その後、作業者は、サンプルをフィルタ上へ直接注ぎ込むか、サンプルを満たした容器をフィルタが固定された容器と接続した後に、濾過を開始している。濾過後、作業者は、必要に応じてフィルタ上に試薬を加え、試薬の反応の促進や捕捉した菌体の生育を促すために、フィルタ自体若しくはフィルタを固定した部材を直接把持しながら恒温装置にセットする。この後、必要に応じ、フィルタを洗浄することで試薬を除き、フィルタに捕捉された菌体を物理的・化学的・生物学的に解析する。この際、作業者は、フィルタ自体若しくはフィルタを固定した部材を直接把持して解析装置等に移動させている。
【0019】
これらのフィルタやフィルタを固定した容器との接触が必要な複数の操作において、作業者や測定環境からの汚染により、フィルタやフィルタを固定した容器の非汚染状態が損なわれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書は、前述した課題を解決する複数の手段を含み、その一部には、以下に示す「フィルタリング部材」及び「フィルタリング方法」が含まれる。
【0021】
例えば手段の一つには、「(1) 液体を保持する容器の底部に液体を濾過するフィルタを有するフィルタユニットと、(2) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部を介して前記フィルタユニットを着脱可能であり、前記フィルタユニットの装着時には、その内側の面と前記フィルタユニットの外側の面とが気密性を保つように接した状態で前記フィルタによる濾過が可能であり、かつ、その濾液を第二の開口部を介して排出するアタッチメントカバーとを有するフィルタリング部材」がある。
【0022】
また例えば手段の一つには、「(1) 液体を保持する容器の底部に液体を濾過するフィルタを有するフィルタユニットと、(2) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部を介して前記フィルタユニットを着脱可能であり、前記フィルタユニットの装着時には、その内側の面と前記フィルタユニットの外側の面とが気密性を保つように接した状態で前記フィルタによる濾過が可能であり、かつ、その濾液を第二の開口部を介して排出するアタッチメントカバーと、(3) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部の側を前記フィルタユニットの内側に着脱可能であり、前記フィルタユニットへの装着時には、その外側の面と前記フィルタユニットの内側の面とが気密性を保つように接するアタッチメントインナーとを有するフィルタリング部材」がある。
【0023】
また例えば手段の一つには、「(1) 液体を保持する容器の底部に液体を濾過するフィルタを有するフィルタユニットと、(2) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部を介して前記フィルタユニットを着脱可能であり、前記フィルタユニットの装着時には、その内側の面と前記フィルタユニットの外側の面とが気密性を保つように接した状態で前記フィルタによる濾過が可能であり、かつ、その濾液を第二の開口部を介して排出するアタッチメントカバーと、(3) 第一の開口部と第二の開口部を有し、かつ、第一の開口部の側を前記フィルタユニットの内側に着脱可能であり、前記フィルタユニットへの装着時には、その外側の面と前記フィルタユニットの内側の面とが気密性を保つように接するアタッチメントインナーとをそれぞれ装着したフィルタリング部材を用い、サンプルの濾過処理を制御するステップと、制御部がアームを制御し、前記フィルタユニットから前記アタッチメントインナーを取り外すステップと、制御部が、アタッチメントインナーを取り外した前記フィルタユニット内への反応液の添加を制御し、フィルタに捕捉されたサンプルと反応液とを少なくとも1回反応させるステップと、制御部がアームを制御し、前記フィルタユニットから前記アタッチメントカバーを取り外すステップと、制御部が、前記フィルタユニット内で前記サンプルの反応物と新たに添加した反応液とを反応させるステップとを有するフィルタリング方法」がある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、生物発光法による測定に際し、外部由来の汚染による測定結果への影響を防止でき、高感度かつ高精度でサンプルを解析することができる。前述以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1-1】フィルタユニットの断面構造例を示す図(実施例)。
図1-2】アタッチメントカバーの断面構造例と装着例を示す図(実施例)。
図1-3】アタッチメントインナーの断面構造例と装着例を示す図(実施例)。
図1-4】フィルタリング部材の組立状態と使用例を示す図(実施例)。
図2】フィルタリング部材による濾過工程を説明する図(実施例)。
図3】フィルタリング部材を使用した大量のサンプルの濾過工程を説明する図(実施例)。
図4】サンプルのフィルタリング方法を説明する図(実施例)。
図5】サンプルのフィルタリング方法及び生菌由来のATPの検出方法を説明する図。
図6-1】フィルタユニットがATPで汚染される原因を説明する図(従来構造)。
図6-2】フィルタユニットがATPで汚染される原因を説明する図(従来構造)。
図7】濾過中に空気閉塞が生じて濾過が困難となる場合を説明する図(従来構造)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0027】
〔実施例〕
まず、実施例に係るフィルタリング部材を説明する。以下で説明するフィルタリング部材は、作業者や測定環境からの汚染の防止、サンプルの残留防止(交差汚染の防止)、濾過中の空気閉塞防止に加え、操作の容易さを提供する構造的特徴を有し、当該特徴により生物発光法による高感度・高精度な解析を実現可能とする。
【0028】
[フィルタリング部材を構成する部品の構造]
図1−1は、フィルタユニット3010の構造例を示している。フィルタユニット3010は、例えば円筒形状のハウジング3040の一方の開口にフィルタ3020を固定した構造を有している。フィルタ3020は液体を濾過することができる。このフィルタ3020は、ハウジング3040の底部を形成し、ハウジング3040とフィルタ3020で囲まれた内空間に、液体を保持することができる。ハウジング3040の他方の開口部は、サンプル導入口3030として使用される。後述するように、アタッチメントインナー3500は、サンプル導入口3030からフィルタ3020の方向に装着される。なお、サンプル導入口3030付近のハウジング3040には、側面から外方に突き出た鍔部が形成されている。鍔部は、アタッチメントインナー3500をフィルタユニット3010に装着する際のストッパとして用いられる。
【0029】
図1−2は、フィルタユニット3010を着脱自在に装着するアタッチメントカバー3100の構造例と装着例を示している。構造例(1)に示すように、アタッチメントカバー3100は、例えば円筒形状のハウジング3110を基本構造とする。本明細書では、円筒の一方の開口を第一の開口部と呼び、他方の開口を第二の開口部と呼ぶ。
【0030】
アタッチメントカバー3100には、第一の開口部の側からフィルタユニット3010を着脱自在に装着することができる。アタッチメントカバー3100は、フィルタユニット3010の側面及び底部を覆うカバーとして機能する。すなわち、作業者が直接触れるのはアタッチメントカバー3100のみであり、作業者はフィルタ3020及びフィルタユニット3010に触れずに済む。このため、従来構造とは異なり、フィルタ3020及びフィルタユニット3010に対する作業者由来の汚染を防止することができる。
【0031】
また、アタッチメントカバー3100は、フィルタユニット3010の外側面と気密性を保ったまま装着することが可能な内側面(密封部)を有している。このため、アタッチメントカバー3100の内径は、フィルタユニット3010の外径よりもわずかに大きく形成されている。 また、アタッチメントカバー3100のうち第二の開口部付近には、フィルタユニット3010の装着時に、そのフィルタ3020の取付面の方向に延びる濾液流路3120が形成されている。この濾液流路3120の存在により、アタッチメントカバー3100にフィルタユニット3010を取り付けた状態のままサンプルを濾過することができる。因みに、濾液は、濾液流路3120を通り、第二の開口部から排出される。
【0032】
以上の構造により、アタッチメントカバー3100の表面が外部汚染された場合にも、濾液流路3120に濾液が残留した場合にも、アタッチメントカバー3100をフィルタユニット3010から取り外すことにより、アタッチメントカバー3100や濾液流路3120に残留する濾液によってフィルタ3020が汚染される事態を防止することができる。
【0033】
なお、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010との密着部は、フィルタユニット3010に固定されているフィルタ3020の周囲部分やフィルタ底部の周辺部分に設けることが望ましい。
【0034】
また、アタッチメントカバー3100は、第二の開口部側において、後述する濾過口との接続が可能であり、濾過後には濾過口から取り外し可能であるものとする。因みに、濾過後、濾過口に濾液が残留したとしても、フィルタ3020と残留する濾液との間には、新しいアタッチメントカバー3100が介在することになる。従って、新しいアタッチメントカバー3100に装着されている新しいフィルタ3020が、残留する濾液により汚染されるおそれはない。
【0035】
また、濾過口の周辺部を濾液で汚染する可能性を低くするために、アタッチメントカバー3100の第二の開口部側の濾液流路の形状は、濾過口の内側に差し込めるように先細りのテーパー形状であることが望ましい。
【0036】
以下、構造例(2)〜(5)を用い、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010とが密着した状態と、アタッチメントカバー3100の他の構造例について説明する。構造例(2)に示すアタッチメントカバー3100は、ハウジング3110の内側面のほぼ全体で密着する構造である。濾液流路3120は、フィルタ3020と対向するように配置される。構造例(2)に示すアタッチメントカバー3100は、構造がシンプルである。従って、構造例(2)に示すアタッチメントカバー3100は、大量生産する際のコストの削減に有利である。
【0037】
構造例(3)に示すアタッチメントカバー3100は、ハウジング3210の内側面に上段面と下段面を有し、フィルタ3020の外周面付近に設けられた上段面にてフィルタユニット3010と密着する構造を有してる。すなわち、フィルタ3020の外周面付近に密着部3220が形成される例を表している。
【0038】
構造例(3)は、フィルタユニット3010との間の密着面積が構造例(2)に比して少なく済む。このため、フィルタユニット3010をアタッチメントカバー3100から容易に取り外すことが可能である。また、この構造例(3)の場合、ハウジング3210と密着部3220を介して、フィルタ3020を効率的に加熱・冷却することが可能である。この構造例の場合も、フィルタ3020と対向する位置に濾液流路3230が形成されている。
【0039】
構造例(4)に示すアタッチメントカバー3100は、構造例(2)に示すアタッチメントカバー3100の変形例である。構造例(4)に示すアタッチメントカバー3100におけるハウジング3310では、濾液流路3320が先細りのテーパー状に形成されている。濾液流路3320がテーパー状であるため、濾液流路3320を濾過口内に容易に差し込むことが可能となる。また、濾液流路3320の斜面が中心軸方向に傾斜しているため、濾液は中心軸方向に流出される。すなわち、濾液の飛散範囲が流出口の口径よりも広がり難い。このため、濾過口の周辺における濾液の汚染を最小限に留めることができる。
【0040】
構造例(5)に示すアタッチメントカバー3100は、構造例(3)に示すアタッチメントカバー3100の変形例である。構造例(3)との違いは、構造例(5)に示すアタッチメントカバー3100におけるハウジング3410では、濾液流路3430がテーパー状に形成されている点である。この形状は、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010の取り外しが容易であり、かつ、ハウジング3410と密着部3220を介して、フィルタ3020を効率的に加熱・冷却することが可能である。また、濾液流路3430を濾過口の内側に差し込むのが容易になるため、濾過口の周辺部が濾液によって汚染されるのを最小限に留めることができる。
【0041】
図1−3は、フィルタユニット3010の内側に着脱自在に装着されるアタッチメントインナー3500の構造例と装着例を示している。
アタッチメントインナー3500は、構造例(1)に示すように、例えば円筒形状のハウジング3505を基本構造とする。本明細書では、円筒の一方の開口を第一の開口部と呼び、他方の開口を第二の開口部と呼ぶ。
【0042】
図1−3の場合、フィルタユニット3010に挿入されるハウジング部分が第一の開口部に対応し、このハウジング部分をサンプル通路3520と呼ぶ。また、アタッチメントインナー3500のフィルタユニット3010への装着時に、フィルタユニット3010の上面部を覆うハウジング部分が第二の開口部に対応する。このハウジング部分を、本明細書では、サンプル導入口3510と呼ぶ。
【0043】
サンプル通路3520の外周面は、その装着時に、フィルタユニット3010の内側面との間で気密性を保ち得る形状に加工されている。すなわち、サンプル通路3520の外周面の直径は、フィルタユニット3010の内周面の直径よりもわずかに小さく形成されている。サンプル通路3520は、装着時に、フィルタユニット3010の内側面のカバーとして機能する。
【0044】
このように、サンプル通路3520によってフィルタユニット3010の内側面が覆われるため、測定終了後に、フィルタユニット3010の内側面部にサンプルが残留するのを防ぐことができる。また、アタッチメントインナー3500の内側にサンプルが残留した場合でも、アタッチメントインナー3500を取り除くだけで、残留したサンプルがフィルタ3010を汚染するのを防止することができる。
【0045】
一方、サンプル導入口3510には、サンプルを外部から内側に導入するための貫通孔(不図示)が形成されている。このサンプル導入口3510によりフィルタユニット3010の上面部を覆うことにより、作業者や測定環境によるフィルタユニット3010の汚染を防止することができる。
【0046】
以下、構造例(2)〜(3)を用い、アタッチメントインナー3500とフィルタユニット3010とが密着した状態と、アタッチメントインナー3500の他の構造例について説明する。
【0047】
構造例(2)に示すアタッチメントインナー3500は、構造例(1)と同じである。アタッチメントインナー3500をフィルタユニット3010に装着した状態で、サンプル通路3520の先端部がフィルタ3020と接触することはない。本明細書では、サンプル通路3520の先端部とフィルタ3020の間に形成される隙間部分を非接触部3530と呼ぶ。非接触部3530は、サンプルをフィルタユニット3010に導入する際に混入した気泡の逃げ道を形成する。この非接触部3530の存在により、空気閉塞の発生が回避され、フィルタ3020の濾過面積が損なわれるのを防ぐことができる。また、非接触部3530を設けることにより、サンプルがフィルタユニット3010の内周面に吸着するのを防ぎ易い。
【0048】
構造例(3)に示すアタッチメントインナー3500は、先端部分がテーパー状に加工されたサンプル通路3620を有している。図では、サンプル通路3620の外側面側がテーパー状に加工され、フィルタユニット3010の内側面との間に空間が形成されている。なお、この構造例(3)の場合も、構造例(2)と同様に、サンプル通路3620の先端部とフィルタ3020の間には非接触部3530が形成されている。このため、サンプル内に気泡が混入した場合にも、空気の逃げ道を確保し、フィルタ3020の濾過面積が損なわれるのを防いでいる。また、非接触部3530を設けることにより、サンプルがフィルタユニット3010の内周面に吸着するのを防ぎ易い。
【0049】
また、アタッチメントインナー3500のサンプル導入口3610は、その流路の径がサンプルが導入される開口側からサンプル通路3620の方向に広がるように、すなわちテーパー形状に加工されている。サンプル導入口3610がテーパー形状に加工されていることにより、サンプルを導入する際におけるサンプルと流路内壁との間の抵抗を小さくすることができる。結果的に、サンプル導入時に乱流が発生し難くなり、気泡の混入を効果的に防ぐことができる。
【0050】
[ファイルタリング部材の使用例]
図1−4は、フィルタユニット3010、アタッチメントカバー3100、アタッチメントインナー3500を組み立てたフィルタリング部材3700を濾過口3710に配置した状態を表している。なお、図1−4は、図1−1に示すフィルタユニット3010と、図1−2の構造例(5)に示すアタッチメントカバー3100と、図1−3の構造例(3)に示すアタッチメントインナー3500を組み立てた場合について表している。図1−4に示すように、濾液流路3430がテーパー状であるので、濾液流路3430を濾過口3710の内側に差し込むように取り付けることができる。
【0051】
サンプルは、図1−4に矢印で示したように、アタッチメントインナー3500のサンプル導入口3610から導入され、サンプル通路3620を通った後、フィルタユニット3010のフィルタ3020に到達する。ここで、サンプルはフィルタ3020によって濾過され、その濾液はアタッチメントカバー3100の濾液流路3430を通り、濾過口3710の内側に排出される。この際、アタッチメントインナー3500とフィルタユニット3010の密着度A1と、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010の密着度A2は、A2>A1の関係を満たすことが望ましい。
【0052】
サンプル濾過が終了すると、作業者は、アタッチメントインナー3500をフィルタユニット3010から取り外す。この作業により、アタッチメントインナー3500の内側面に残留したサンプルは、アタッチメントインナー3500と一緒に取り除かれる。
【0053】
次に、作業者は、フィルタユニット3010に試薬を加える。その後、作業者は、濾液が残留するアタッチメントカバー3100をフィルタユニット3010から取り外す。密着度が前述の関係を満たす場合、順序良く、かつ、容易に、各部品を取り外すことができる。これにより、フィルタ3020及びフィルタユニット3010への汚染を防止することができる。
【0054】
図2に、実施例に係るフィルタリング部材3700を使用したサンプル4030の濾過動作の詳細を示す。なお、サンプル4030には、生菌4010と死菌4020が含まれている。
【0055】
状態(1)は、濾過開始時におけるフィルタリング部材3700の濾過口3710への設置状態を表している。本図の場合、アタッチメントインナー3500のサンプル導入部3610には、チューブ4040が取り付けられており、不図示のサンプル容器からサンプル4030が供給される仕組みになっている。また、テーパー状に加工された濾液流路3430は、濾過口3710の内側に差し込むように取り付けられている。
【0056】
チューブ4040とサンプル導入部3610の接続部分における流路は、テーパー形状に加工されている。このため、サンプル導入部3610におけるサンプル4030の流れに乱流が発生するのを防ぎ、サンプル4030内に気泡が混入するのを防ぐことができる。
【0057】
この段階で、フィルタ3020と濾過口3710の間に差圧(例えば陰圧)を生じさせると、サンプル4030は、チューブ4040及びサンプル導入口3610を通じ、フィルタリング部材3700の内部に導入される。状態(1)は、アタッチメントインナー3500の内部がサンプル4030で満たされた状態を表している。
【0058】
やがて、状態(2)に移行する。図に示すように、アタッチメントインナー3500のサンプル通路3620の開口とフィルタ3020との間には、非接触部3530が設けられている。また、図に示すように、サンプル通路3620の開口径よりもフィルタユニット3010の内径の方が広いため、サンプル4030は、開口径よりも直径の大きい液滴4060を形成するように成長する。非接触部3530の高さ方向の長さは、液滴の直径以上であることが望ましい。やがて、サンプル4030は、液滴4060の状態で、フィルタ3020の表面に達する。なお、非接触部3530の高さ方向の長さは、液滴の直径の2個以内が望ましい。
【0059】
液滴4060がフィルタ3020の表面に落下すると、状態(3)に移行する。フィルタ3020の表面に付着すると、液滴4060は、フィルタ3020に形成された孔の細さによる抵抗のため、一時的にフィルタ3020の表面に滞留する。滞留により液滴4060は、フィルタ3020の表面に一時的に滞留した状態4070になる。この後、液滴4060は、フィルタ3020の孔を通じて濾過される。
【0060】
液滴4060の移動により、液滴4060とフィルタユニット3010の内壁との間には、空間4080が形成される。この空間4080の存在により、サンプル中に気泡が生じても、気泡は空間4080に逃げることができ、空気による空気閉塞は防止される。
【0061】
また、フィルタ3020上に落下した液適4060は、フィルタ3020の表面に沿って広がり、一時的に滞留した状態4070となる。このため、サンプル4030がフィルタユニット3010の内壁に飛び散ることはない。これにより、外側面としてのアタッチメントインナー3500と内側面としてのフィルタユニット3010の間に形成される隙間4085への毛細管現象によるサンプル4030の流入を防止することができる。
【0062】
サンプル4030中に含まれる生菌4010や死菌4020は、孔の大きさに依存して捕捉される。フィルタ3020により濾過され、濾液流路3430に達したサンプル4030は、そのまま濾過口3710内へ濾液4090として排出される。
【0063】
[サンプルの導入方法の例]
図3に、サンプル導入方法の一形態を示す。作業者は、任意に、フィルタリング部材3700、チューブ4040及びサンプル容器5020を持ち運ぶものとする。その際、作業者は、それらの部材に触ることになるが、フィルタ3020及びフィルタユニット3010を直接触ることはない。前述したように、フィルタ3020及びフィルタユニット3010の表面は、アタッチメントカバー3100とアタッチメントインナー3500で覆われているためである。よって、作業者及び測定環境から、フィルタ3020及びフィルタユニット3010が汚染される可能性は無い。
【0064】
例えば作業者は、任意の場所において、サンプル導入フタ5030を開け、サンプル容器5020に、生菌4010や死菌4020を含む可能性があるサンプル4030を導入する。サンプル4030を確実に濾過したい場合には、傾斜台5040を用いてもよい。チューブ4040は、サンプル容器5020のサンプル導出フタ5050を経由して、アタッチメントインナー3500のサンプル導入部3610と接続されている。
【0065】
前述したように、濾過口3710とフィルタ3020の間に差圧を生じさせることにより、サンプル4030は、チューブ4040の内部を流れ、アタッチメントインナー3500のサンプル導入部3610からサンプル通路3620を通ってフィルタ3020に達する。そして、サンプル4030は、フィルタ3020で濾過される。この結果、菌体は、フィルタ3020に捕捉される。濾液は、アタッチメントカバー3500の濾液流路3430を通り、濾過口3710の内部に排出される。
【0066】
この方法であれば、作業者は、任意に好みのサンプル容器5020を用意することにより、任意の量のサンプル4030をフィルタリング部材3700の形状に依存することなく濾過することができる。チューブ4040を介してフィルタリング部材3700に接続することにより、サンプル容器5020は、ビーカー、三角フラスコ、ペットボトル等でも良い。必要があれば、アタッチメントインナー3500のサンプル導入口3510と注射器の注射針とを接合しても良く、その場合でも、サンプル4030を濾過することができる。
【0067】
[サンプルフィルタリング時の作業・処理の流れ]
図4に、サンプル4030をフィルタリングする際の作業・処理の流れを示す。前述したように、サンプルのフィルタリングは、作業者による手作業によっても行うことができるが、不図示の駆動機構(例えば把持アーム、サンプル注入機構)や発光検出装置を制御部(コンピュータ)により制御することによっても実行可能である。なお、サンプルのフィルタリングに要する全てのステップを、手作業又は制御部による制御により実現する必要は無い。以下では、作業者による作業として説明する。
【0068】
まず、作業者は、フィルタユニット3010、アタッチメントインナー3500及びアタッチメントカバー3100を組み立てたフィルタリング部材3700を濾過口3710に設置する(作業6010)。
【0069】
次に、作業者は、フィルタ3020の上面と濾過口3710の間に差圧を発生させ、フィルタユニット3010に固定したフィルタ3020でサンプルを濾過する(作業6020)。
濾過の終了後、作業者は、フィルタユニット3010からアタッチメントインナー3500を取り除く(作業6030)。
【0070】
次に、作業者は、試薬をフィルタユニット3010に加え、第一反応を実施する(作業6040)。第一反応として、例えばATPの除去反応とATPの増幅反応を実行する。
【0071】
次に、作業者は、フィルタユニット3010をアタッチメントカバー3500から分離する(作業6050)。この後、作業者は、アタッチメントカバー3500を除去する(作業6060)。また、作業者は、フィルタユニット3010について第二反応を実施する(作業6070)。第二反応として、例えばATPの抽出反応を実行する。
【0072】
[サンプルのフィルタリング方法及びATP生物発光法の実施例]
図5に、実施例に係るフィルタリング部材3700を使用したサンプルのフィルタリング方法及びATP生物発光法の実施例を示す。ATP生物発光法では、例えば以下に示すように、サンプル中の生菌を計測する。前提作業として、まず、作業者は、無菌状態の環境内に、濾過口3710、ヒートブロック7010、把持アーム、ノズルを配置する。なお、把持アームやノズルは、殺菌又は滅菌済みのピンセットやチップ等により置き換え可能である。以下では、無菌状態の環境(例えば無菌室)内に、フィルタリング部材3700が設置され、制御部(コンピュータ)の自動制御の下に、フィルタリング動作が実行されるものとして説明する。
【0073】
まず、状態(1)において、作業者は、ヒートブロック7010が取り付けられた濾過口3710にフィルタリング部材3700を設置し、アタッチメントインナー3500のサンプル導入部3610にチューブ4040を接続する。この際、作業者は、フィルタリング部材3700やチューブ4040の任意の場所に触れることができる。このため、フィルタリング部材3700を容易に濾過口3710に設置できる。その際、作業者や測定環境からフィルタリング部材3700の表面やチューブ4040に外来の菌体やATP汚染物7075が付着しても、フィルタ3020やフィルタユニット3010を汚染する心配はない。
【0074】
チューブ4040からアタッチメントインナー3500のサンプル導入部3610には、生菌7080(生菌内のATP7085を含む。)、死菌7090(死菌7090内に留まるATP7100)、遊離状態のATP7105を含むサンプル4030が含まれている。サンプル4030は、フィルタ3020の上面と濾過口3710との間に発生された差圧によりフィルタユニット3010に導入され、フィルタ3020で濾過される。差圧の発生によるサンプル4030の濾過は、制御部(コンピュータ)の制御により実行される。
【0075】
状態(2)は、サンプル4030の濾過終了状態を示す。濾過終了時、アタッチメントインナー3500の内壁面上には、遊離状態のATPを含む不要なサンプル7130が残留することがある。なお、アタッチメントインナー3500に付着した遊離状態のATPを含む不要なサンプル7130は、汚染物7075と共に、アタッチメントインナー3500ごと取り除かれる。アタッチメントインナー3500の取り外しは、制御部による把持アームとその駆動部の制御を通じて実行される。
【0076】
また、アタッチメントインナー3500を取り除くことにより、サンプル通路3620の内壁に付着している不要なサンプル7130が、フィルタユニット3010の内部に落下するのを未然に防ぐことができる。
【0077】
また、状態(2)に示すように、アタッチメントカバー3100と濾過口3710の表面には、遊離状態のATPを含む不要な濾液7140及び7150が残留する場合があるが、フィルタユニット3010の内側及びフィルタ3020の表面には、不要なサンプル7130が残留することはない。
【0078】
状態(3)は、アタッチメントインナー3500を取り除いた後のフィルタリング部材3700(フィルタユニット3010とアタッチメントカバー3100)である。この状態では、死菌7090由来のATP7100を分解するために、不図示のノズルにより、ATP消去液7160がフィルタユニット3010内に加えられる。必要に応じ、ATP消去液7160の反応を促すため、ヒートブロック7010によりATP消去液7160が加温される。ここで、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010のフィルタ3020の側面部分で密着している。このため、フィルタ3020の周囲に配置されたヒートブロック7010からの熱は、フィルタ3020内のATP消去液7160に効率良く伝播する。ATP消去液7160のフィルタユニット3010への追加やヒートブロック7010の加温は、制御部により制御される。ATP消去液7160の追加は、不図示のノズルやノズル駆動機構を通じて実行される。
【0079】
状態(4)は、死菌7090由来のATP7100の消去後(ATPを含まない死細胞7170は残るが、ATP生物発光反応には関与しない)の状態を表している。この時点で、把持アームにより、フィルタユニット3010とアタッチメントカバー3100が分離される。把持アームの動きは、制御部により制御される。分離後のフィルタユニット3010を表したのが状態(6)であり、分離後のアタッチメントカバー3100が残る濾過口3710を表したのが状態(5)である。
【0080】
状態(5)に示すように、アタッチメントカバー3100の表面には、測定には不要な濾液7140はそのまま残留する。このため、不要な濾液7140とフィルタユニット3010との再接触の可能性が防止される。なお、濾過口3710にも不要な濾液7150がそのまま残るため、不要な濾液7150とフィルタユニット3010との再接触の可能性が防止される。この後、アタッチメントカバー3100は、濾過口3710からも取り除かれる。使用済みのアタッチメントカバー3100が濾過口3710から取り除かれることで、濾液による交差汚染が生じることも無い。
【0081】
状態(6)に示すように、アタッチメントカバー3100から取り外されたフィルタユニット3010は、非汚染状態に保たれている。この状態で、ATP抽出液による生菌からのATP抽出反応が実施され、続いて、抽出されたATPとルシフェラーゼとルシフェリン等を含む発光試薬との反応で生じた発光に基づいて、ATP数、すなわち生菌数を正確に見積もることが可能になる。ATP抽出反応や発光の検出は、制御部の制御の下に実行される。発光の検出には撮像装置や受光センサが用いられる。
【0082】
[まとめ]
以上説明したように、本実施例に係る構造を有するフィルタリング部材3700を用いることにより、サンプル中の細胞を解析するための測定を高感度かつ高精度に実行することができる。また、前述したフィルタリング部材3700及びフィルタリング方法を用いることにより、生菌や死細胞、細菌や真菌(酵母・カビ等)、芽胞や胞子、非芽胞、好気性や嫌気性、グラム陰性やグラム陽性など複数種の細胞を直接、又はそれらを含むサンプルについて、作業者は、サンプルを簡便にフィルタリングすることができる。これにより、作業者とサンプル間の汚染だけでなく、サンプル間の交差汚染も防止し、汚染の心配無く細胞の解析を行うことができる。
【0083】
また、本実施例に係る構造を有するフィルタリング部材3700やフィルタリング方法は、サンプル中の細胞数が少ない場合や細胞中のATP量が少ない場合には、さらに有効に、細胞を計測することができる。
【0084】
また、本実施例に係る構造を有するフィルタリング部材3700やフィルタリング方法は、各種医薬品製造分野・化粧品製造分野・臨床医学・基礎生化学等の現場に適応でき、製薬用水の管理など貧栄養環境下の細胞及び菌体の検出に有効である。
【0085】
[他の実施例]
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、前述した複数の構造例を任意に組み合わせることも可能であり、また、不図示の部品を追加したり、不図示の部品で一部の部品を置換することもできる。
【0086】
〔比較例〕
ここでは、比較例として、従来構造のフィルタリング部材を説明する。前述したように、従来構造のフィルタリング部材を生物発光法での測定に使用すると、外部由来の汚染(例えばATP汚染)が生じる問題がある。さらに、従来構造のフィルタリング部材を生物発光法の測定に使用すると、交差汚染と呼ばれる内部由来の汚染も問題となる。ここでは、交差汚染について説明する。
【0087】
フィルタやフィルタを固定した容器にサンプルを注ぎ込む際には、サンプルが飛び跳ねることがあり、飛び跳ねたサンプルがフィルタ近傍の壁面等に付着して残る可能性がある。フィルタ近傍の壁面等にサンプルが残留していると、続く複数の操作において、残留したサンプルが試薬と混合し、汚染の原因となる。
【0088】
特に、生物発光法では、菌体を含むサンプルをフィルタリングした後にフィルタ上の菌体を溶解し、溶解された菌体から抽出したATPを発光計測するため、内部由来の汚染も避ける必要がある。この生物発光法で特に問題になるのが、サンプル中に含まれる遊離状態のATPである。なお、サンプル中には死菌が有するATPも存在しているが、このATPは死菌と共にフィルタに捕捉することが可能である。一方、遊離状態のATPは、フィルタで捕捉することはできず、フィルタを通過する。このため、フィルタより下流に、つまり、濾液内に遊離状態のATPが含まれることになる。従って、この濾液の残留も汚染源となる。
【0089】
なお、前述の特許文献1が想定する蛍光染色法では、原理的にも、測定対象物(菌体)が濾液内に含まれることはない。すなわち、交差汚染を考慮する必要があない。このため、特許文献1に記載された微生物採取キットを、そのままATP発光計測法による測定に使用することはできない。仮に使用すると、濾液に含まれる遊離状態のATPが交差汚染の原因となり、高感度かつ高精度での測定が困難となる。
【0090】
まず、図6−1及び図6−2を使用し、従来構造のフィルタリング部材を生物発光法による測定に使用する際に想定される汚染の問題を説明する。
【0091】
図6−1は、筒状の容器の底面にフィルタ1210を取り付けたフィルタユニット1220について示している。状態(1)は、サンプル1240を収容するフィルタユニット1220を筒状の濾過口1230の上に載置し、陰圧によりサンプル1240を濾過する様子を表している。サンプル1240内には、生菌1260、死菌1270、遊離状態のATP1275が含まれている。状態(2)は、濾過後の状態を表している。図に示すように、フィルタユニット1220の内壁と濾過口1230の近傍に、遊離状態のATP1280を含むサンプル1240と遊離のATP1290を含む濾液が残留している。また、フィルタユニット1220の外壁には、作業者や測定環境に由来した汚染ATP1295が残留している。
【0092】
状態(3)は、濾過終了後のフィルタユニット1220を試験管1291内に装着した状態で、フィルタユニット1220内にATP抽出液1300を加え、フィルタ1210からATP1310を抽出する場合を表している。ところが、状態(2)のように、フィルタユニット1220の内壁にサンプル1240が残留していると、ATP抽出液1300には、フィルタ1210から抽出されたATP1310だけでなく、サンプル1240に含まれていた遊離状態のATP1280も含まれてしまう。すなわち、サンプル1240に含まれていた遊離状態のATP1280により、フィルタ1210から抽出されたATP1310が汚染されてしまう。
【0093】
状態(4)は、新たなフィルタユニット1250を濾過口1230の上に載置して、新たなサンプル1240を濾過する場合を表している。この場合、濾過口1230の近傍に残留していた濾液内に存在する遊離状態のATP1290が、フィルタ1210を通じて回帰し、フィルタユニット1250内のサンプル1240を交差汚染してしまう。
【0094】
このような汚染は、特許文献1の微生物採取キットでも生じる。特許文献1の微生物採取キットは、(1) プレフィルタとして機能する異物除去用フィルタが組込まれた液状検体注入容器としてのファンネルと、(2) 微生物採取用フィルタが組み込まれたファンネルの外側底部に嵌合して用いられる濾過プレートと、(3) 濾過クッションが組み込まれたベースとで構成される。この構造の場合、フィルタとしての濾過プレートにアクセスするためには、異物除去フィルタが組み込まれたファンネルを除去する必要がある。しかし、濾過プレートだけでは、十分な量のATPを抽出するために必要な試薬の保持が困難である。また、ベース本体に組み込まれた濾過クッションが濾液を保持する構造のため、濾液中に遊離した状態で含まれるATPがフィルタに回帰し、別のサンプルをATP汚染する問題がある。
【0095】
図6−2に、別の従来例を示す。状態(1)は、シリンジ1020の先端に、シリンジフィルタ1010を装着してサンプル1030を濾過する様子を表している。なお、シリンジフィルタ1010の開口の一方は、シリンジ1020の先端に接続できるように規格化されている。また、シリンジフィルタ1010の内部には、フィルタ1040が固定されている。一般に、作業者は、シリンジ1020に、生菌1050、死菌1060、遊離状態のATP1065を含むサンプル1030を導入した後、シリンジフィルタ1010をシリンジ1020の先端に取り付けた後、シリンジ1020のブランジャー(不図示)を押すことにより、サンプル1030を濾過する。因みに、シリンジフィルタ1010やシリンジ1020の表面は、作業者由来の汚染ATP1070で汚染されている。
【0096】
状態(2)は、濾過終了後に、シリンジフィルタ1010をシリンジ1020から取り外した状態を表している。本図に示すように、シリンジフィルタ1010の先端側の窪みには、遊離状態のATP1080を含む濾液が残留する場合がある。濾液がシリンジフィルタ1010に残留していると、フィルタ1040に捕捉した菌体や菌体内物質を回収する際に、残留した遊離状態のATP1080を含む濾液が最終サンプルを汚染する可能性がある。
【0097】
状態(3)は、フィルタ1040に捕捉された菌体を溶解して菌体内のATP1100を抽出するために、ATP抽出液1090をシリンジフィルタ1010の窪みに加えた状態を表している。なお、図では、シリンジフィルタ1010を試験管1110に載置した状態で遠心力を加え、又は吸引力を加え、又は上方から加圧して、抽出されたATP1100を回収する状態を表している。
【0098】
状態(4)は、試験管1110内に標的とするATP1100が回収された状態を表している。なお、状態(4)は、標的とするATP1100だけでなく、作業者由来の汚染ATP1070や遊離状態のATP1080を含む濾液もチューブ1110内に回収される様子を表している。すなわち、汚染ATP1070と遊離状態のATP1080を含む濾液の両方が、標的とするATP1100を汚染する。
【0099】
また、特許文献2には、フィルタを内部に固定したハウジングであって、フィルタの出口側からハウジングの出口方向にテーパー状の流路を形成したハウジングが記載されている。この形状の場合、濾過終了後、フィルタの出口側から流路の出口までの区間に濾液が残留することがある。この流路上の濾液を破棄・回収する場合、フィルタの入口側から空気を導入して濾液を押し出す方法が用いられる。しかし、導入した空気やその作業のため、フィルタの無菌状態が損なわれる危険性がある。
【0100】
この他、特許文献3には、2つのカバーでフィルタを挟み、一方のカバーにサンプル供給チューブを接続し、他方のカバーに容器を取り付けた濾過組立品が記載されている。特許文献3の組立品の場合、フィルタの上面側と容器内の間に圧力差を発生させてサンプルを濾過し、濾液を容器内に収納する。なお、この濾過組立品の場合、フィルタの下面側のカバー内部に、濾液が通過する通路が設けられている。この濾過組立品の場合、粘性等で通路に残る可能性がある不要な濾液がフィルタと再び接触するのを避けるため、フィルタを回収する必要がある。ただし、この場合、フィルタの交換時に、作業者がフィルタを直接手で掴む必要があり、やはりフィルタの汚染を避けることが難しい。
【0101】
次に、図7を使用し、空気閉塞の問題を説明する。図7は、図6−2に示す構造のフィルタリング部材をサンプルの濾過に使用する場合について表している。図7は、シリンジ1020とシリンジフィルタ1010の接続部分を拡大して表している。
【0102】
この種のフィルタリング部材では、サンプル1030の濾過中に、気泡がシリンジ1020内に混入することがある。このとき、サンプル1030によって湿潤しているフィルタ1040とサンプル1030との間に空気2000が挟み込まれることがある。空気2000は、フィルタ1040の孔を通過することができないため、空気2000がフィルタ1040の表面全体を覆う状態になる。その結果、サンプル1030を濾過することができない空気閉塞が生じやすい。
【0103】
なお、加圧濾過方式の場合には、サンプル1030に加える圧力を増加させることにより、空気閉塞を回避することが可能である。しかし、この場合には、フィルタ1040や各種接続部を破断させない圧力コントロール・モニタリングが別途必要となる問題がある。
【0104】
また、陰圧濾過方式の場合、陰圧力は最大でも大気圧程度が一般的には限界である。このため、閉塞した空気の通過に大気圧以上の陰圧力を要する場合には、サンプルを濾過できない問題がある。いずれにしても、従来構造では、空気閉塞を効果的に防止することができないか、新たな対策が必要とされ、装置構成の大型化や複雑化が要求される。
【符号の説明】
【0105】
3010…フィルタユニット、3020…フィルタ、3030…サンプル導入口、3040…ハウジング、3100…アタッチメントカバー、3110…ハウジング、3120…濾液流路、3210…ハウジング、3220…密着部、3230…濾液流路、3310…ハウジング、3320…濾液流路、3410…ハウジング、3430…濾液流路、3500…アタッチメントインナー、3505…ハウジング、3510…サンプル導入口、3520…サンプル通路、3530…非接触部、3610…サンプル導入口、3620…サンプル通路、3700…フィルタリング部材、3710…濾過口、4010…生菌、4020…死菌、4030…サンプル、4040…チューブ、4060…液滴、4070…一時的に滞留した状態、4080…空間、4085…隙間、4090…濾液、5020…サンプル容器、5030…サンプル導入フタ、5050…サンプル導出フタ、5040…傾斜台、7010…ヒートブロック、7075…外来の細胞やATP汚染物、7080…生菌、7085…生菌内ATP、7090…死菌、7100…死細胞内へ留まるATP、7105…遊離状態のATP、7130…遊離状態のATPを含む不要なサンプル、7140…遊離状態のATPを含む不要な濾液、7150…遊離状態のATPを含む不要な濾液、7160…ATP消去液、7170…ATPを含まない死細胞。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
【手続補正書】
【提出日】2017年7月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【特許文献1】特開2005−291940号公報
【特許文献2】特許第3527153号公報
【特許文献3】米国特許第5141639号明細書
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
フィルタリング部材の使用例]
図1−4は、フィルタユニット3010、アタッチメントカバー3100、アタッチメントインナー3500を組み立てたフィルタリング部材3700を濾過口3710に配置した状態を表している。なお、図1−4は、図1−1に示すフィルタユニット3010と、図1−2の構造例(5)に示すアタッチメントカバー3100と、図1−3の構造例(3)に示すアタッチメントインナー3500を組み立てた場合について表している。図1−4に示すように、濾液流路3430がテーパー状であるので、濾液流路3430を濾過口3710の内側に差し込むように取り付けることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
サンプルは、図1−4に矢印で示したように、アタッチメントインナー3500のサンプル導入口3610から導入され、サンプル通路3620を通った後、フィルタユニット3010のフィルタ3020に到達する。ここで、サンプルはフィルタ3020によって濾過され、その濾液はアタッチメントカバー3100の濾液流路3430を通り、濾過口3710の内側に排出される。この際、アタッチメントインナー3500とフィルタユニット3010の気密性の度合いA1と、アタッチメントカバー3100とフィルタユニット3010の気密性の度合いA2は、A2>A1の関係を満たすことが望ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
次に、作業者は、フィルタユニット3010に試薬を加える。その後、作業者は、濾液が残留するアタッチメントカバー3100をフィルタユニット3010から取り外す。気密性の度合いが前述の関係を満たす場合、順序良く、かつ、容易に、各部品を取り外すことができる。これにより、フィルタ3020及びフィルタユニット3010への汚染を防止することができる。