特開2017-225583(P2017-225583A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225583(P2017-225583A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】皮膚状態の評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20171201BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   A61B5/10 300Q
   G01N33/50 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-122999(P2016-122999)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 敦
【テーマコード(参考)】
2G045
4C038
【Fターム(参考)】
2G045CB09
2G045FA01
4C038VB22
(57)【要約】
【課題】各個人の肌の状態を、簡便に評価する手段の提供。
【解決手段】表面粗さが相違する複数の平板上に皮膚を接触させて平板表面に対して平行に動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された複数の摩擦係数相互の関係を指標とすることを特徴とする皮膚状態の評価方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さが相違する複数の平板上に皮膚を接触させて平板表面に対して平行に動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された複数の摩擦係数相互の関係を指標とすることを特徴とする皮膚状態の評価方法。
【請求項2】
評価する皮膚状態が、皮膚の乾燥状態、しっとり感、柔軟性、油性感及び汗のかきやすさから選ばれる状態である請求項1記載の皮膚状態の評価方法。
【請求項3】
表面粗さと摩擦係数の変化との相関関係に基づいて皮膚状態を評価する請求項1又は2記載の皮膚状態の評価方法。
【請求項4】
前記平板の表面粗さが、Ra=0.001〜5μmの範囲から選ばれる相互に相違する2種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚状態の評価方法。
【請求項5】
平板上に皮膚を接触させて平行に動かす際の垂直応力が0.1〜5Nの範囲である請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚状態の評価方法。
【請求項6】
同一粗さの平板で複数回の計測を行い、摩擦係数が安定した後、これとは異なる粗さの1種以上の平板で計測を行う、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚状態の評価方法。
【請求項7】
肌に適用される剤を、肌に適用する前と適用した後との各々において評価した皮膚状態により、肌に適用される剤が肌に与える効果を評価する方法であって、請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚状態の評価方法により皮膚状態の評価を行う、肌に適用される剤が肌に与える効果を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥状態等の皮膚の状態を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の乾燥状態等を測定する方法としては、角層の水分量を測定する方法、皮脂量を測定する方法が知られている。水分量の測定法としては、肌の電気伝導度や電気容量を測定する方法等が知られている(特許文献1)。また、皮脂量の測定法としては、反射光の屈折率で油分の割合を推定する方法等が知られている(特許文献2)。
一方、環境の肌に与える影響を観察するために、皮膚表面の平板に対する摩擦係数を測定することが試みられている(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−19060号公報
【特許文献2】特開2002−85356号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.P.Hendriks・S.E.Franklin(2009Tribol Left)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の角層の水分量の測定法や皮脂の測定法は、原理が複雑なので高価な機器が必要になる、発汗や乾燥など経時的に変化する皮膚の状態を正確に評価できない等の問題がある。
一方、環境の肌に対する影響を板などとの摩擦力を計測することで観察することは試みられているが、その場合、各人の肌の違いは平均値として取り扱われており、個人差を調べる検討は行われていない。
本発明は、各個人の肌の状態を、簡便に評価する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、皮膚の状態と平板上での摩擦との関係を検討してきたところ、全く意外にも、特定の平板上における皮膚の摩擦だけで皮膚状態を評価するのではなく、表面粗さの異なる複数の平板を用意して、それらの平板上における皮膚の摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された複数の摩擦係数相互の関係を指標とすることにより、皮膚の乾燥状態等を簡便かつ正確に評価できることを見出した。
より詳細には、以下のとおりである。すなわち、皮膚の評価に好適な平板がどのようなものであるかの探索を行っていく中で、表面粗さの違いによる摩擦係数の測定を行っていたところ、柔らかな肌では表面粗さが小さくなるにしたがって、摩擦係数が大きくなるのに対し、固い、あるいは潤いのない肌ではそのようなことはなく、表面粗さに依らず摩擦係数がほぼ一定であるということを見出した(図1)。本発明者は、この表面粗さと摩擦係数の関係を用いれば、皮膚の状態を評価できるのではとの着想に至り、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、表面粗さが相違する複数の平板上に皮膚を接触させて平板表面に対して平行に動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された摩擦係数相互の関係を皮膚状態の指標とすることを特徴とする皮膚状態の評価方法を提供するものである。
また、本発明は、肌に適用される剤を、肌に適用する前と適用した後との各々において評価した皮膚状態により、肌に適用される剤が肌に与える効果を評価する方法であって、前記の皮膚状態の評価方法により皮膚状態の評価を行う、肌に適用される剤が肌に与える効果を評価する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
指等を、表面粗さが相違する複数の平板上を擦過させるだけで、簡便かつ正確に、皮膚がどの程度乾燥しているか、しっとりしているか、皮脂が過剰に分泌されているか等の皮膚の状態が評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】皮膚の性状(柔軟性)の評価例を示す。
図2】化粧品の効果(潤い、柔軟化)の評価例を示す。
図3】油性感の評価例(摩擦係数と繰り返し回数との関係)を示す。
図4】汗のかきやすさの評価例(摩擦係数と繰り返し回数との関係)を示す。
図5】被験者5名の摩擦係数の違いを示す。
図6】摩擦係数測定装置のSUS板の配置を示す。
図7】未加工SUS板との摩擦係数を示す。
図8】ブラスト処理板との摩擦係数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膚状態の評価方法は、表面粗さが相違する複数の平板上に皮膚を接触させて平板表面に対して平行に動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された複数の摩擦係数相互の関係を指標とすることを特徴とする。
【0011】
本発明方法に用いる平板は、表面粗さが相違する複数の平板である。複数の平板の素材は、金属板、樹脂板、木板、石板、紙板等のいずれでもよいが、同一であるのが好ましい。また、平板の大きさは、指、手のひら、手の甲、顔などの皮膚の一部を接触させて動かすことができる大きさであれば、特に限定されない。表面粗さは、市販の表面粗さ計、例えば(株)東京精密SURFCOM FLEX-50Aにより測定できる。
【0012】
本発明で用いる複数の平板の表面粗さは、相互に相違しており、Ra=0.001〜5μmの範囲であるのが、皮膚状態の評価性能の点から好ましい。さらに、Ra=0.001〜0.10μmの範囲から選択される1種以上の平板と、Ra=0.10〜3μmの範囲から選択される1種以上の平板とを組み合わせて用いるのがより好ましい。表面粗さが相違する平板の数は2以上であればよく、2〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。なお、平板は水平に設置されていてもよいが、垂直や斜めに設置されていてもよい。また、平板は、固定して設置されておらず、摩擦力を検出するための力覚センサと一体となって例えば把持具に取り付けられその全体が動かせるものでもあってもよい。
また、複数の平板の材質は同一であることが好ましい。すなわち、材質を一定とし、表面粗さのみ相互に異った複数の平板を用いるのが好ましい。
【0013】
前記複数の平板上に皮膚を接触させて皮膚表面と平板表面とが平行な状態を維持して皮膚(体)もしくは平板を動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定する。すなわち、複数の平板の表面で皮膚を擦過させて摩擦係数を測定する。この際の垂直応力は、一定とするのが好ましく、例えば0.1〜5Nの範囲内で所定の垂直応力とするのが好ましい。皮膚もしくは平板を動かす速度は、0.1〜20cm/secが好ましい。皮膚を動かす場合は、垂直応力を一定とする、すなわち加える力を加減するために、力覚センサによって検出される力をリアルタイムでモニタするのが好ましい。固定して設置されていない平板を用いる場合も、同様にリアルタイムでモニタするのが好ましい。あるいは、例えばばねを用いて押しつけ力を一定にするなど、周知の手段を用いて、平板に加わる垂直応力を一定に維持することができる。
【0014】
摩擦係数は、前記平板に設けられた垂直応力と水平応力の計測が可能な周知の力覚センサを用いて測定することができる。
【0015】
得られる複数の摩擦係数相互の関係、すなわち変化の向きや大小を皮膚状態の指標とすれば、皮膚状態が評価できる。例えば、乾燥状態にある皮膚においては、表面粗さの小さい平板の摩擦係数が低く、表面粗さの大きい平板においても摩擦係数が低いままである。一方、しっとり、柔らかい皮膚においては、表面粗さの小さい平板での摩擦係数が高く、表面粗さの大きい平板での摩擦係数が低くなる(図1)。これは、化粧料が潤いや柔軟性を肌に与える性能の評価に用いることができる。すなわち、潤いや柔軟性を肌に与える性能が高い化粧料を皮膚に塗布すると表面粗さの小さい平板での摩擦係数が高く、表面粗さの大きい平板での摩擦係数が低くなることを利用して、表面粗さの小さい平板での摩擦係数と表面粗さの大きい平板での摩擦係数の差を、潤いや柔軟性を肌に与える性能の指標とすることができる(図2)。
【0016】
このような評価は、化粧料に限られるものではなく、他にも医薬品外用剤などについても行うことができる。すなわち、化粧料や医薬品外用剤などの肌に適用(塗布のみならずパップ剤などによる場合も含む)する剤を、肌に適用する前と適用した後との各々において、表面粗さが相違する複数の平板上に皮膚を接触させて平板表面に対して平行に動かしたときの摩擦係数をそれぞれ測定し、測定された複数の摩擦係数相互の関係の変化から化粧料や医薬品が肌に与える効果を評価することができる。
【0017】
また、油性感のある皮膚においては、表面粗さの小さい平板の測定1回目の摩擦係数が低いものの、皮膚の同じ位置を同一の表面粗さの平板で繰り返し測定すると徐々に摩擦係数が上昇する(図3)。これは表面にある油性成分が除去されるためであり、摩擦係数が一定になったところが肌本来の性質となる。摩擦係数が一定になった後で表面粗さの異なる平板で計測すると肌本来の状態を評価できる。濡れた状態や、クリームなどの剤が付着した皮膚も、同様に皮膚の同じ位置を常に同一の表面粗さの平板で繰り返し測定すると、当初は変動している摩擦係数が一定になるので、そのあとで、表面粗さの異なる平板で計測することで、肌本来の状態を評価できる。
このように、平板の表面粗さと摩擦係数の変化との相関関係から、皮膚状態を評価することができる。
【0018】
表面粗さの相違する平板を2枚だけでなく、3枚〜8枚と増加させることにより、さらに詳細な皮膚状態を評価することができる。例えば、Ra=0.01〜0.1(0.025)の平板を基準とし、Ra=0.1〜0.3(0.254)の平板、Ra=0.3〜0.5(0.341)の平板、Ra=0.5〜0.6(0.56)の平板、Ra=0.6〜0.7(0.645)の平板、Ra=0.7〜0.8(0.738)の平板、及びRa=0.8〜1.0(0.817)の平板を用いて、摩擦係数の変化を測定すれば、乾燥状態の度合、しっとり感の度合、油性感の度合も含めた多段階の皮膚状態が評価できる。
【0019】
また、上述したように、一般的な皮膚では、表面粗さの小さい平板での摩擦係数と表面粗さの大きい平板での摩擦係数の差を、潤いあるいは柔らかさの指標とすることができるが、3枚あるいはそれ以上の平板を用いると、皮膚の発汗の有無を容易に観察できる。すなわち、発汗状態の皮膚では、水分が供給されることで、摩擦係数が不安定となり、表面粗さの小さい平板での摩擦係数と表面粗さの大きい平板での摩擦係数の大小関係が逆転する。このことを利用して、測定した皮膚の発汗状態若しくは被験者の肌が発汗しやすいか否かを判定することができる(図4)。発汗のしやすさは摩擦係数の変動により判定できるが、その際の皮膚の柔軟性も同時に判別することができる。この判定は、測定を繰り返し行えば2枚の平板で行うことも可能だが、3枚以上が好ましく、5枚以上用いることが更に好ましい。測定の煩雑さを考えると10枚以下が好ましい。
【実施例】
【0020】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
実施例1
高密度ポリエチレン板(HDPE)(表面粗さRa=0.08)と同(表面粗さRa=2.5)の平板の下部に摩擦係数測定装置を設置した。これらの平板上を垂直応力約0.5Nの力で手指の腹を擦過し、摩擦係数を測定した。
【0022】
それぞれ指の乾燥状態の異なる被験者5名(A、B、C、D、E)の摩擦係数を図5に示す。
図5中、被験者Dは、指が乾燥しており、カサカサして硬い状態であった。この被験者Dは、表面粗さの小さいHDPE板では摩擦係数が低く、一方表面粗さの大きい板でも摩擦係数は低かった。この結果から、乾燥状態の皮膚は、表面粗さの小さい平板では摩擦係数が低く、表面粗さの大きい平板も低いままであることがわかる。
【0023】
一方、図5中、被験者Cは、指がしっとり、柔らかい状態であった。この被験者Cは、表面粗さの小さいHDPE板では摩擦係数が高く、一方表面粗さの大きい板では摩擦係数が低くなった。この結果から、しっとりした状態の皮膚は、表面粗さの小さい平板では摩擦係数が高く、表面粗さの大きい平板では摩擦係数が低くなることがわかる。
【0024】
これらの結果に基づき、表面粗さと摩擦係数の変化と皮膚状態との相関性を予め求めておけば、皮膚状態の評価が可能になる。
【0025】
実施例2
図6のような表面粗さを相互に異ならせたSUS板を7板配置した摩擦係数測定装置を作製した。図6中、中心は未加工SUS板(Ra=0.025)であり、その周囲には、ブラスト処理により表面粗さを変化させた(Ra=0.2〜0.9)SUS板を配置した。
被験者11名が、指で未加工板を擦過(0.5N)したときの摩擦係数を図7に示す。実施例1の場合と同様に、皮膚の状態により摩擦係数は大きく変化した。なお、回数の変化により摩擦係数が変化するのは、発汗などにより皮膚状態が変化するからである。
【0026】
被験者11名が、指でブラスト処理板を擦過(0.5N)したときの摩擦係数の変化を図8に示す。図8より、表面粗さが小さい場合は個人差が大きく、表面粗さが大きくなると個人差が縮小し、実施例1と同じ傾向があった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8