(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225615(P2017-225615A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】変動磁場磁気治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 2/12 20060101AFI20171201BHJP
A61N 2/08 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
A61N2/12
A61N2/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-123504(P2016-123504)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 邦親
(72)【発明者】
【氏名】島川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 高志
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA04
4C106BB01
4C106CC02
4C106FF06
4C106FF13
(57)【要約】
【課題】本発明は、使用者の皮膚に取り付けて使用することができ、使用者が動くことがない場合であっても、広い範囲で変動磁場を生じさせることができる携帯型の変動磁場磁気治療器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の変動磁場磁気治療器は、使用者の皮膚Sに取り付けて使用される携帯型の変動磁場磁気治療器1であって、内部空間21と、変動磁場磁気治療器1が皮膚Sに取り付けられたときに皮膚Sに接触する底面24とを有する容器2と、内部空間21に回転可能に収容される磁石部3と、底面24に対して略垂直な方向に延びる回転軸Xを中心として、底面24に対して略平行な面内で磁石部3を回転駆動する回転駆動機構4とを備え、磁石部3が、磁気シールド部と、磁石とを備え、磁気シールド部は、磁石により発生した磁場が容器2の底面24とは反対側に漏洩するのを遮蔽するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の皮膚に取り付けて使用される携帯型の変動磁場磁気治療器であって、
内部空間と、前記変動磁場磁気治療器が前記皮膚に取り付けられたときに前記皮膚に接触する底面とを有する容器と、
前記内部空間に回転可能に収容される磁石部と、
前記底面に対して略垂直な方向に延びる回転軸を中心として、前記底面に対して略平行な面内で前記磁石部を回転駆動する回転駆動機構とを備え、
前記磁石部が、
磁気シールド部と、磁石とを備え、
前記磁気シールド部は、前記磁石により発生した磁場が前記容器の前記底面とは反対側に漏洩するのを遮蔽するように構成されていることを特徴とする変動磁場磁気治療器。
【請求項2】
前記磁石部が、それぞれ前記容器の前記底面に対して略垂直に延びる磁極方向を有する複数の磁石を備え、
前記複数の磁石のそれぞれが、前記磁石部の回転方向に沿って互いに離間して配置され、
前記複数の磁石のうち、前記磁石部の回転方向で隣り合う磁石同士が、互いに略反対方向を向く磁極方向を有し、
前記磁石部が、前記磁石部の回転により交番磁界を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の変動磁場磁気治療器。
【請求項3】
前記磁石部に設けられた磁石が、前記磁石部の回転方向に沿って延びる略部分環状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の変動磁場磁気治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変動磁場磁気治療器に関する。より詳細には、使用者の皮膚に取り付けて使用され、変動磁場を生じさせる携帯型の変動磁場磁気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の血行を良くし、肩こりや腰痛の症状を緩和するために、磁石が固定された絆創膏等を使用者の皮膚に取り付けて使用する磁気治療器が広く普及している。このような磁気治療器は、コンパクトであるとともに、使用者の皮膚に直接取り付けて使用できるので、使用者は、活動中であるか就寝中であるかの別を問わずいかなる状態でも使用でき、効果的に治療効果を得ることができる。
【0003】
ところが、このような磁気治療器では、磁石が皮膚に対して特定位置に固定され、磁場が固定(静磁場が形成)されてしまうので、体内の血管や組織に対して大きな刺激を与え、高い磁気治療効果を発揮するために、磁石を大きくして磁力を大きくしなければならないという問題があった。そのような問題に対して、たとえば特許文献1は、保護ケース部内に永久磁石が移動可能に収容された磁気治療器を提案している。特許文献1の磁気治療器は、使用者の皮膚に取り付けられて使用されると、使用者の動きに従って永久磁石が保護ケース部内で移動するので、変動磁場を生じさせ、高い磁気治療効果を発揮することができる。特に、この磁気治療器は、皮膚に平行な面内で永久磁石が移動するように構成されているので、薄く形成できて皮膚に貼付しやすいだけでなく、広い範囲に変動磁場を生じさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−83394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の磁気治療器では、使用者が動かない限り永久磁石が移動することがない。たとえば磁気治療器が使用者の就寝時に使用される場合には、使用者が動くことがほとんどないので、永久磁石が移動して変動磁場が発生することがほとんどない。このように使用者が動くことがないような状態で使用される場合には、特許文献1の磁気治療器では十分な磁気治療効果を期待することができない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、使用者の皮膚に取り付けて使用することができ、使用者が動くことがない場合であっても、広い範囲で変動磁場を生じさせることができる携帯型の変動磁場磁気治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の変動磁場磁気治療器は、使用者の皮膚に取り付けて使用される携帯型の変動磁場磁気治療器であって、内部空間と、前記変動磁場磁気治療器が前記皮膚に取り付けられたときに前記皮膚に接触する底面とを有する容器と、前記内部空間に回転可能に収容される磁石部と、前記底面に対して略垂直な方向に延びる回転軸を中心として、前記底面に対して略平行な面内で前記磁石部を回転駆動する回転駆動機構とを備え、前記磁石部が、磁気シールド部と、磁石とを備え、前記磁気シールド部は、前記磁石により発生した磁場が前記容器の前記底面とは反対側に漏洩するのを遮蔽するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記磁石部が、それぞれ前記容器の前記底面に対して略垂直に延びる磁極方向を有する複数の磁石を備え、前記複数の磁石のそれぞれが、前記磁石部の回転方向に沿って互いに離間して配置され、前記複数の磁石のうち、前記磁石部の回転方向で隣り合う磁石同士が、互いに略反対方向を向く磁極方向を有し、前記磁石部が、前記磁石部の回転により交番磁界を生成するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記磁石部に設けられた磁石が、前記磁石部の回転方向に沿って延びる略部分環状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用者の皮膚に取り付けて使用することができ、使用者が動くことがない場合であっても、広い範囲で変動磁場を生じさせることができる携帯型の変動磁場磁気治療器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変動磁場磁気治療器の内部構造を示す側面図である。
【
図2】
図1の変動磁場磁気治療器の内部構造を示す上面図である。
【
図3】
図1の変動磁場磁気治療器の内部構造を示す下面図である。
【
図4】(a)は、
図1の変動磁場磁気治療器の磁石部の下面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【
図5】
図1の変動磁場磁気治療器の磁石部により生成する磁束線を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る変動磁場磁気治療器を詳細に説明する。なお、以下の説明の中で、「上側」および「下側」という用語を用いるときは、それぞれ、変動磁場磁気治療器が使用者の皮膚に取り付けられて使用されるときの、皮膚とは反対側が「上側」、皮膚側が「下側」を意味するものとする。
【0013】
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る変動磁場磁気治療器(以下、単に「治療器」という)1は、
図1に示されるように、使用者の皮膚Sに取り付けて、携帯型として使用される。治療器1は、使用者の皮膚Sに取り付けて使用されることにより、使用者の皮膚S表面および皮膚S表面近傍の体内に変動磁場を与え、磁気治療効果をもたらす。治療器1は、血行を促進したり、代謝を向上したりするなどの磁気治療効果を利用できるいかなる磁気治療目的にも用いることができる。また、治療器1が取り付けられる位置は、特に限定されることはなく、肩や腰の皮膚など、磁気治療効果を利用できる位置であればいかなる位置であってもよい。
【0014】
治療器1は、
図1に示されるように、内部空間21と底面24とを有する容器2と、内部空間21に回転可能に収容される磁石部3と、底面24に対して略垂直な方向に延びる回転軸Xを中心として、底面24に対して略平行な面内で磁石部3を回転駆動する回転駆動機構4とを備えている。治療器1は、回転駆動機構4により、底面24に対して略平行な面内で磁石部3が回転駆動させられることにより、使用者が動くことがない場合であっても、広い範囲で変動磁場を生じさせることができる。
【0015】
容器2は、
図1に示されるように、内部空間21に磁石部3を回転可能に収容し、治療器1が使用者の皮膚Sに取り付けられたときに皮膚Sに直接的または間接的に接触する部材である。容器2は、本実施形態では、
図1〜
図3に示されるように、全体として略円柱状に形成され、内部空間21を囲繞する、上面22と、側面23と、治療器1が皮膚Sに取り付けられたときに皮膚Sに直接的または間接的に接触する底面24とを有している。しかし、容器2は、磁石部3を回転可能に収容することができる大きさの内部空間21を有し、皮膚Sに直接的または間接的に接触する底面24を有していればよく、略角柱状や略円錐状など他の形状であってもよい。
【0016】
治療器1は、たとえば上側から覆うように設けられた粘着テープや、バンドなどの取付手段により、底面24が皮膚Sに直接的に接触するように、使用者の皮膚Sに取り付けることもできるし、たとえば底面24と皮膚Sとの間に粘着シートを設けて、底面24が皮膚Sに間接的に接触するように、使用者の皮膚Sに取り付けることもできる。このように、治療器1は、容器2の底面24が皮膚Sに直接的または間接的に接触するように皮膚Sに取り付けられればよく、特にその取付方法は限定されないが、後述する磁石部3による磁気治療効果を最大限に発揮するためには、底面24が皮膚Sに直接的に接触するように皮膚Sに取り付けられることが好ましい。
【0017】
容器2の成形材料は、外部から力を受けた時に内部空間21の形状を維持することができ、磁石部3の生成する磁束線が容易に透過することができる(磁石部3の生成する磁場を遮蔽することのない)材料であればよく、特に限定されることはないが、たとえばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン(PC−ABS)、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂材料を好適に用いることができる。特に、磁場の強さは磁石部3から遠ざかると急速に減衰するので、磁石部3は可能な限り皮膚Sに近い場所に設けることが好ましく、底面24はできる限り薄く形成されることが好ましい。
【0018】
磁石部3は、回転可能に収容された容器2の内部空間21内において、回転駆動機構4により回転させられることにより、変動磁場を生成する。なお、本明細書では、「変動磁場」という用語は、磁界の向きや強度が変動する磁場のことを意味する。治療器1は、磁石部3が、回転駆動機構4により回転させられて変動磁場を生成することにより、皮膚S表面および皮膚S表面近傍の体内の血管や組織に大きな刺激を与えて、高い磁気治療効果を発揮することができる。磁石部3は、容器2の内部空間21に回転可能に収容され、回転駆動機構4により回転させられて変動磁場を生成することができれば、その構成は特に限定されるものではないが、以下に説明する好適な構成を採用することができる。
【0019】
図4(a)、
図4(b)および
図5を参照して、本実施形態に係る治療器1の磁石部3を説明する。磁石部3は、磁気シールド部31と、磁石32a、32bとを備え、磁気シールド部31は、磁石32a、32bにより発生した磁場が容器2の底面24とは反対側(
図4(a)中紙面裏側、
図4(b)中上側、
図5中上側)に漏洩するのを遮蔽するように構成されている。より具体的には、磁石部3は、
図5に示されるように、磁石32a、32bにより発生した磁束線Mのうち、容器2の底面24とは反対側を向く方向、ならびに磁石部3の回転軌道の径方向内側および外側を向く方向の磁束線Mの延びる方向が、磁気シールド部31により、容器2の底面24側を向く方向に変更させられるように構成されている。したがって、治療器1は、皮膚Sとは反対側である上側への、すなわち使用者から離間する方向への磁場漏洩を回避することができる。治療器1は、皮膚Sに取り付けられて、携帯用として使用されるので、たとえば、使用者は、治療器1の使用時において、漏洩磁場の影響を受けて破損する可能性がある磁気カードなどを使用しなければならない場面に遭遇する場合がある。そのような場合でも、使用者は、磁気カードの損傷を気にすることなく治療器1を使用することができる。さらに、磁石部3は、容器2の底面24側以外の方向に磁場が漏洩しないように構成されているので、後述する回転駆動機構4や電子基板6への磁場漏れを防止でき、これらの部分の磁場による誤作動や無駄なエネルギー消費が回避される。また、磁石32a、32bにより発生した磁束線Mが、容器2の底面24側を向く方向に集中的に延びることにより、磁石部3の下側の皮膚S表面および皮膚S表面近傍の体内に集中的に磁場を与えることができ、磁石32a、32bを小さく形成しても、より大きな磁気治療効果をもたらすことができる。
【0020】
磁気シールド部31は、磁場を遮蔽することができる材料を含み、磁石32a、32bにより発生した磁場が容器2の底面24とは反対側に漏洩するのを遮蔽する。磁気シールド部31は、本実施形態では、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、磁石部3の回転方向に略垂直な断面が略U字状で、全体として磁石部3の回転方向に沿って延びる略環状に形成されている。より具体的には、磁気シールド部31は、略環状の略平板状に形成された磁石保持部31aと、磁石保持部31aの径方向外側の外周から皮膚S側(容器2の底面24側)に延びる外周部31bと、磁石保持部31aの径方向内側の内周から皮膚S側(容器2の底面24側)に延びる内周部31cとを備えている。磁気シールド部31は、内周部31cに固定され、シャフトX1(
図1参照)を挿入可能な孔Hが設けられた固定部34により、シャフトX1に相対回転不能に固定される。本実施形態では、磁気シールド部31の磁石保持部31aの皮膚S側であって、磁気シールド部31の外周部31bおよび内周部31cの間に磁石32a、32bが設けられて、磁石32a、32bから発生した磁束線Mの方向が変更され、磁石32a、32bにより発生する磁場が磁気シールド部31の上側ならびに径方向外側および内側に漏洩するのを防止している。ただし、磁気シールド部31は、磁石32a、32bにより発生した磁場が容器2の底面24とは反対側に(または底面24側以外の方向に)漏洩するのを遮蔽することができればよく、その形状は、特に限定されることはなく、磁石32a、32bの形状に応じて適宜変更が可能である。
【0021】
磁気シールド部31に含まれる、磁場を遮蔽することができる材料としては、特に限定されることはないが、高透磁率材料を用いることができ、たとえばパーマロイ、純鉄、珪素鋼などを用いることができる。その中でも、保磁力に優れたパーマロイが好ましく、より保磁力に優れたMo系パーマロイがより好ましい。
【0022】
磁石部3は、本実施形態では、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、それぞれ容器2の底面24に対して略垂直に延びる磁極方向を有する複数(本実施形態では、2つ)の磁石32a、32bを備えている。そして、複数の磁石32a、32bのそれぞれが、磁石部3の回転方向に沿って互いに離間して配置され、複数の磁石32a、32bのうち、磁石部3の回転方向で隣り合う磁石32a、32b同士が、互いに略反対方向を向く磁極方向を有している。本実施形態では、磁石32aは、下側がN極で、上側がS極になるように(磁極方向が上側を向くように)磁化され、磁石32bは、下側がS極で、上側がN極になるように(磁極方向が下側を向くように)磁化されている。磁石部3は、それぞれが互いに離間して、それぞれが互いに略反対方向を向いた磁極方向を有する複数の磁石32a、32bを備えることにより、磁石部3の回転により交番磁界を生成する。磁石部3は、それぞれの磁極方向が互いに反対方向を向く磁石32a、32bを複数備えることにより、磁石部3を回転した時に皮膚Sが受ける磁界強度の変化が、同じ方向を向く磁極方向を有する磁石を複数用いる場合と比べて、ほぼ倍の大きさになり、より大きな交番磁界を生成することができる。さらに、用いる磁石32a、32bの磁極方向が容器2の底面24(および皮膚S表面)に対して略垂直に延びることにより、磁極方向が底面24(および皮膚S表面)に対して略平行に延びる磁石を用いる場合と比べて、皮膚S表面に対して略垂直な方向の磁界強度が大きくなり、皮膚S表面からより深い体内まで磁気が作用することになる。また、磁石32a、32bが、磁石部3の回転方向に沿って互いに離間しているので、磁石部3が回転したときに、皮膚S表面および皮膚S表面近傍の血管や内部組織が磁場を感じない時間、すなわち磁場の影響を受けずに弛緩する時間を確保することができる。したがって、皮膚S表面および皮膚S表面近傍の血管や内部組織が、交互に弛緩と緊張とをより確実に繰り返すことができるので、治療器1は、皮膚S表面および皮膚S表面近傍の血管や内部組織に大きな刺激を与えて、高い磁気治療効果を発揮することができる。
【0023】
磁石部3の磁石32a、32bは、本実施形態では、磁石部3が回転したときに、皮膚Sの同一箇所において、互いに略同一の大きさで、互いに反対方向を向く磁界を生成するように構成されている。磁石32a、32bは、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、ともに磁石部3の回転方向に沿って延びる略部分環状に形成され、ともに同じ大きさに形成されている。より詳細には、磁石32a、32bはそれぞれ、磁石部3の回転方向に沿って略1/4周分だけ延び、その内周径が外周径の略半分以上である略部分環状に形成されている。言い換えると、磁石32a、32bは、扇形の径方向内側を取り除いた弧状の帯状に形成され、磁石部3が回転したときに、略環状の軌跡を形成するように配置されている。磁石部3は、磁石32a、32bが略部分環状(帯状)に形成されることにより、同量で扇状に形成された磁石を用いる場合と比べて、直径がより大きくなるように形成することができ、皮膚S表面近傍のより多くの血管に磁力を作用させることができる。強い磁場を発生させられる希土類磁石は比較的比重が大きいため、治療器1内で使用できる体積が限られるが、本実施形態のように磁石を略部分環状(帯状)に形成することにより、小さい体積でもより多くの血管に磁力を作用させることができ、より大きな磁気治療効果を得ることができる。さらに、磁石部3を軽量化することができるので、磁石部3から回転駆動機構4が受けるトルクを小さくすることができ、回転駆動機構4をよりコンパクトに設計することができる。したがって、治療器1は、より小さくすることができ、皮膚Sに取り付け易くなる。
【0024】
磁石32a、32bは、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、2つの磁石32a、32bと略同一の形状および大きさを有する2つの空洞部33a、33bを介して、磁石部3の回転方向で互いに離間して配置されている。このような配置を有する磁石部3が一定の速度で回転すると、磁石32a、空洞部33a、磁石32bおよび空洞部33bの順に(またはその逆順に)磁石部3が皮膚S表面を通過するので、皮膚S表面に対して単一の周波数を有する交番磁界が生成する。治療器1は、単一の周波数を有する交番磁界を生成することにより、使用者の皮膚S表面および皮膚S表面近傍の体内の組織内に単一の周波数を有する交番磁界を曝すことができるので、組織内の細胞を刺激して、炎症などの細胞機能障害を治癒する効果をもたらすこともできる。
【0025】
本実施形態における磁石部3では、2つの磁石32a、32bが設けられているが、磁石部3は、上述した単一の周波数を有する交番磁界を生成することができれば、磁石の個数は1つであっても3つ以上であってもよい。このとき、磁石部3は、磁石と略同一形状で同一数の空洞部を有し、磁石と空洞部とが磁石部3の回転方向に沿って交互に配置されることで、磁石部3の回転により単一周波数の交番磁界を生成することができる。
【0026】
磁石32a、32bの材料としては、特に限定されることはなく、たとえばネオジウム、フェライト、サマリウムコバルト、人工磁性材料などを採用することができる。ただし、その出力レベルは、厚生労働省の認証基準の範囲内であることが望ましい。
【0027】
再び
図1〜
図3を参照すると、回転駆動機構4は、底面24に対して略垂直に延びる回転軸Yを中心とした回転駆動力を生成する電動駆動源41と、回転駆動力を磁石部3に伝達する回転駆動力伝達機構42とを備えている。そして、電動駆動源41は、底面24に対して略平行な面内で磁石部3から離間して設けられている。つまり、電動駆動源41は、底面24に対して略垂直な方向に沿って磁石部3と重ならないように配置されている。したがって、電動駆動源41に磁石が備えられていたとしても、磁石部3から皮膚S側に生成する変動磁場に電動駆動源41の磁石が及ぼす影響を小さく抑えることができる。ただし、回転駆動機構4は、容器2の底面24に対して略平行な面内で磁石部3を回転させることができれば、上述した構成に限定されることはなく、たとえば電動駆動源41が、底面24に対して略垂直な方向に沿って磁石部3と重なって配置されて、磁石部3に直接連結されてもよい。
【0028】
電動駆動源41は、電源供給部5により駆動される。より詳細には、電動駆動源41は、
図1および
図2に示されるように、電源供給部5に電気的に接続された電子基板6に電気的に接続され、電源供給部5から電子基板6を介して電力が供給され、回転軸Yを中心とした回転駆動力を生成する。電動駆動源41は、電動で回転駆動力を生成することができれば、特に限定されることはなく、公知の直流モータなどを用いることができる。
【0029】
電源供給部5は、本実施形態では、容器2に取り外し不能に固定されている。電源供給部5は、取り換え可能な電池とすることもできるが、容器2に取り外し不能に固定されることにより、子どもが誤って電池を飲み込むなどの事故の発生を抑制することができる。ここで、「取り外し不能」という用語は、容器2から取り外すことができないことを意味するものであるが、それは、通常使用時において取り外すことできないことを意味するものであり、通常使用時以外のたとえば分解修理のために取り外す必要があるときにまで取り外すことができないことをも包含する意味ではない。電源供給部5は、本実施形態では、USB端子7を介して充電可能な二次電池である。したがって、電源供給部5は、容易に充電可能であるので、治療器1を気軽に携帯して持ち運ぶことができる。また、電源供給部5は、繰り返し使用可能であるので、充電式でない電池のように取り換える手間が省ける。
【0030】
回転駆動力伝達機構42は、本実施形態では、電動駆動源41が生成する回転駆動力を磁石部3に伝達する際に、電動駆動源41の回転数を減速するように構成されている。より詳細には、回転駆動力伝達機構42は、
図1および
図2に示されるように、電動駆動源41から回転軸Yに沿って延びるシャフトY1に相対回転不能に固定された第1歯車42aと、第1歯車42aと歯合し、第1歯車42aよりも大径で歯数が多く、磁石部3から回転軸Xに沿って延びるシャフトX1に相対回転不能に固定された第2歯車42bとを備えている。治療器1では、電動駆動源41が回転駆動力を生成すると、シャフトY1および第1歯車42aが回転軸Yを中心に回転し、それに伴って第1歯車42aと歯合する第2歯車42bがシャフトX1とともに回転軸Xを中心に回転し、シャフトX1に相対回転不能に固定された磁石部3が回転軸Xを中心に回転する。このとき、第1歯車42aの歯数が、第2歯車42bの歯数よりも少ないため、電動駆動源41の回転数が減速されて磁石部3が回転させられるので、磁石部3をより低速回転で回転させることができる。さらに、磁石部3の重量が大きくなっても、電動駆動源41が磁石部3から受けるトルクを小さくすることができる。
【0031】
治療器1はさらに、
図1および
図2に示されるように、電子基板6に電気的に接続されて、電源供給部5が充電状態にあるときに点灯し、電源供給部5の充電が完了すると消灯するように構成されたLEDランプ8を備えている。したがって、治療器1は、電源供給部5が充電状態にあることや、電源供給部5が充電を完了したかどうかを容易に判別できるので、充電作業が容易となり、使用中に充電切れになるような事態を避けやすくなる。また、治療器1はさらに、電子基板6に電気的に接続され、電動駆動源41をオン/オフするためのスイッチ9を備えている。治療器1は、使用者がスイッチ9をオン操作することで、磁石部3が回転を開始し、磁気治療効果をもたらす。
【符号の説明】
【0032】
1 変動磁場磁気治療器
2 容器
21 内部空間
22 上面
23 側面
24 底面
3 磁石部
31 磁気シールド部
31a 磁石保持部
31b 外周部
31c 内周部
32a、32b 磁石
33a、33b 空洞部
34 固定部
4 回転駆動機構
41 電動駆動源
42 回転駆動力伝達機構
42a 第1歯車
42b 第2歯車
5 電源供給部
6 電子基板
7 USB端子
8 LEDランプ
9 スイッチ
H 孔
M 磁束線
S 皮膚
X、Y 回転軸
X1、Y1 シャフト