特開2017-225630(P2017-225630A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225630(P2017-225630A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】返し縫いレバー付ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 73/00 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   D05B73/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-123853(P2016-123853)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】鎌塚 昭光
(72)【発明者】
【氏名】山岡 淳郎
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE22
3B150CE23
3B150DE10
3B150DE20
3B150GA01
3B150GA02
(57)【要約】
【課題】返し縫いレバーの操作レバーの交換を容易に行なうことができる返し縫い用レバー付ミシンを提供する。
【解決手段】返し縫いレバー付ミシンにおいて、ベッド部の上面に設けられ、縫製する布を係脱可能に係止して水平方向に移動させる送り歯と、ベッド部にミシンヘッドに対向して設けられ縫製する布を前進方向または後退方向に切り替え可能に布送りするために送り歯を運動させる送り歯運動機構と、脚柱部およびベッド部に亘って設けられ送り歯運動機構の前記布送りの方向を前進方向と後退方向とに切替える切替機構と、脚柱部の前面を覆うフロントパネルと、フロントパネルに設けられたフロント貫通穴を貫通してフロントパネルの内側で切替機構に着脱可能に連結される連結部が一端部に設けられ、フロントパネルの外側に突出して切替機構を操作する操作部が他端部に設けられた操作部材と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延在するベッド部と、
前記ベッド部の一端部から上方へ立設された脚柱部と、
前記脚柱部の上端から前記ベッド部に対面して水平方向に沿って延在するアーム部と、
前記アーム部の端部に設けられたミシンヘッドと、
前記ベッド部の上面に設けられ、縫製する布を係脱可能に係止して水平方向に移動させる送り歯と、
前記ベッド部に前記ミシンヘッドに対向して設けられ前記縫製する布を前進方向または後退方向に切り替え可能に布送りするために前記送り歯を運動させる送り歯運動機構と、
前記脚柱部および前記ベッド部に亘って設けられ前記送り歯運動機構の前記布送りの方向を前進方向と後退方向とに切替える切替機構と、
前記脚柱部の前面を覆うフロントパネルと、
前記フロントパネルに設けられたフロント貫通穴を貫通して前記フロントパネルの内側で前記切替機構に着脱可能に連結される連結部が一端部に設けられ、前記フロントパネルの外側に突出して前記切替機構を操作する操作部が他端部に設けられた操作部材と、
を備える返し縫いレバー付ミシン。
【請求項2】
前記フロントパネルと前記切替機構の操作入力部との間には、前記操作部材の前記連結部が貫通する貫通穴を有し、前記フロント貫通穴の周縁と前記操作入力部の外周との間の隙間を埋めるカバー部材がさらに設けられている請求項1に記載の返し縫いレバー付ミシン。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記操作部材の操作部側に設けられたフロント側係止部と前記操作入力部側に設けられたリヤ側係止部とを有し、
前記操作部には、前記フロント側係止部と着脱可能に係止する操作部被係止部が設けられ、
前記切替機構には、前記リヤ側係止部と係止する切替機構被係止部が設けられている請求項2に記載の返し縫いレバー付ミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、返し縫いに用いられるレバーが付いたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
返し縫いは、ミシン縫いの縫い始めと縫い終わりに行われるものである。縫い始めにおいては、先ず、縫い開始位置より縫い方向に4〜5目縫って布送りを停止させ、次に、本来の縫い方向から逆方向に開始位置まで縫いながら戻る。そして、開始位置から本来の縫い方向に布を送りながら縫う。
縫い終わりにおいては、縫い進めた終了位置で一旦布送りを停止させ、次に、本来の縫い方向から逆方向に4〜5目縫いながら縫い戻り布送りを戻り位置で停止させる。次に、戻り位置より終了位置まで再度縫い進め、終了位置で停止させる。
このように返し縫いは、縫い始めと縫い終わりにおいて、縫い糸により3重にステッチを掛けることで、縫い目がほどけてこないようにする。
【0003】
特許文献1には、このような返し縫いを行うため、縫われる布を本来の縫い方向と逆方向に送る送り機構の切換スイッチとして返し縫いレバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−58335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1におけるミシンにおける返し縫い用レバーは、特許文献1における図6に示すように、使用者が指を掛けて操作する操作レバーと、使用者の指が操作レバー(操作部)と操作レバー取付部(操作入力部)との間の隙間に入らないようにする保護カバーと、が一体に形成されている。そのため、操作機構を覆うフロントパネル取り付けると、フロントパネルに設けられた操作口から操作レバーのみがフロントパネルから露出し、保護カバーはフロントパネルの内側に配置される構造となっている。生産後に返し縫いレバーの変更対応が必要となった場合に、フロントパネルを外して返し縫いレバーを交換しなければならず、仕様変更の際の工数が増加し手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、返し縫いレバーの交換を容易に行なうことができる返し縫いレバー付ミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、返し縫いレバー付ミシンにおいて、水平方向に沿って延在するベッド部と、前記ベッド部の一端部から上方へ立設された脚柱部と、前記脚柱部の上端から前記ベッド部に対面して水平方向に沿って延在するアーム部と、前記アーム部の端部に設けられたミシンヘッドと、前記ベッド部の上面に設けられ、縫製する布を係脱可能に係止して水平方向に移動させる送り歯と、前記ベッド部に前記ミシンヘッドに対向して設けられ前記縫製する布を前進方向または後退方向に切り替え可能に布送りするために前記送り歯を運動させる送り歯運動機構と、前記脚柱部および前記ベッド部に亘って設けられ前記送り歯運動機構の前記布送りの方向を前進方向と後退方向とに切替える切替機構と、前記脚柱部の前面を覆うフロントパネルと、前記フロントパネルに設けられたフロント貫通穴を貫通して前記フロントパネルの内側で前記切替機構に着脱可能に連結される連結部が一端部に設けられ、前記フロントパネルの外側に突出して前記切替機構を操作する操作部が他端部に設けられた操作部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
これによると、操作部材の連結部は、フロントパネルのフロント貫通穴を貫通して、切替機構に連結する。また、連結部と切替機構とは着脱可能なので、操作部材が、使用により劣化した場合、別のデザインの操作部に変更したい場合に、フロントパネルを取り外すことなく新たな操作部材に容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態における返し縫いレバー付ミシン全体を斜視図で表す概略図である。
図2】フロントパネル、ミシン機構部、カバー部材、操作部材を斜視図で表す概要図である。
図3】切替機構および送り歯運動機構を斜視図で示す概略図である。
図4】送り歯を上下方向に運動させる送り歯運動機構を示す概略図である。
図5】送り歯を前進方向に運動させる送り歯運動機構を示す概略図である。
図6】送り歯を後退方向に運動させる送り歯運動機構を示す概略図である。
図7】操作部材、カバー部材および入力操作部の組み合わせ状態を斜め前方からの斜視図で示す概略図である。
図8】操作部材、カバー部材および入力操作部の組み合わせ状態を斜め後方からの斜視図で示す概略図である。
図9】操作部材、カバー部材および入力操作部が互いに係止された状態を側方から見た断面図で示す概略図ある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明に係る返し縫いレバー付ミシンを具体化した実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明に係る返し縫いレバー付ミシン1の全体の外観を示している。
本明細書において、返し縫いレバー付ミシン1を操作する使用者が位置する前方側から見た場合、返し縫いレバー付ミシン1の左右方向を左側・右側方向とし、返し縫いレバー付ミシン1の前後方向を前側・後側方向とする。返し縫いレバー付ミシン1を使用者が位置する前方側から見た場合、使用者側を前側或いは正面側といい、使用者の反対側を後側或いは背面側というものとする。
【0011】
返し縫いレバー付ミシン1は、縫製する布Cが載せられる針板11(図2参照)が設けられ水平方向に延在するベッド部2、ベッド部2の右側の端部より上方に沿って延在する脚柱部3、脚柱部3の上端部より水平方向に沿って左側に延在するアーム部4、およびアーム部4の先端部より下方に延在するミシンヘッド5を備えている。
【0012】
ベッド部2、脚柱部3およびアーム部4は、全体がハウジングを構成するパネル6で覆われている。脚柱部3は、駆動モータ31を備えている。また、アーム部4には、前記駆動モータ31に一端側が連結し、水平方向に沿って延在する上駆動軸41が設けられている。ベッド部2には、前記駆動モータ31に一端側が連結され、水平方向に沿って延在する下駆動軸21が設けられている。さらに、ミシンヘッド5は、針12が取り付けられ上下方向に昇降可能な針棒51と、布押さえ13を保持する押え棒52とを備えている。
【0013】
アーム部4、脚柱部3の前面およびベッド部2の前面は、図2で示すように、装飾性に優れた板材であるフロントパネル61で覆われている。フロントパネル61は、例えば、アルミニウム合金製部材やABS等の硬質樹脂製部材で形成されている。
【0014】
脚柱部3の前面には、図1に示すように、模様選択ダイヤル14と返し縫いレバー7とが上下に設けられている。上方に設けられた模様選択ダイヤル14は、使用者がダイヤルを回して縫いたい模様を示す記号に合せることで、縫い模様を選択する。下方に設けられた返し縫いレバー7は、返し縫いレバー7を使用者が押し下げている間、低速で返し縫いを行わせるものである。
【0015】
(送り歯運動機構)
次に、この返し縫いレバー7により操作される送り歯16と送り歯運動機構8とについて、図3図5に基づいて以下に説明する。
送り歯16は、布C(図1参照)が搬送される方向に沿って逆L字形の水平の上端面に山形が並んで形成されている。送り歯16は、上下に駆動する針12を挟んで一対の左右送り歯16R,16L、針12(図1参照)を挟んで前後方向に一対の前後送り歯16FRを備えている(図3参照)。送り歯16は、針板11の上面に載置された縫製される布Cを連続した山形に係合して、返し縫いレバー付ミシン1の前後方向に搬送する。山形は、前進方向(図5において左方向)側の斜面が略垂直に形成され、後退方向(図5において右方向)側の斜面がなだらかに形成されている。送り歯16は、下端部が左右方向に延在する支持台16aが形成され、支持台16aは後述する送り台17に固定されている。送り歯16は、針板11(図4参照)に前後方向に所定長さで形成された送り歯ガイド溝11aによって、前後方向および上下方向に所定範囲で移動可能に、左右方向には移動不能に構成されている。
【0016】
送り歯運動機構8は、下駆動軸21の左端側に連結されている。送り歯運動機構8は、水平送り機構81と昇降機構82とを備えている。
【0017】
(水平送り機構)
水平送り機構81は、図3および図5に示すように、送り歯16を支持する送り台17と、水平送り腕83と、水平送りロッド84と、水平送りロッド軸85と、偏心カム86と送り調整器87とを備える。
【0018】
送り台17は、送り歯16を支持する水平支持面17aと、水平支持面17aの左右両側の端面が下方に折曲され前方へ向かって突出して形成された一対の突出リンク部17bと、を備えている。各突出リンク部17bの前側端部は、第一連結軸17cを介して水平送り腕83の上部に回動可能に連結されている。
【0019】
水平送り腕83は、全体として矩形板状に形成され、上下方向に立設されている。水平送り腕83は、左右両側の端面部が直角に所定幅折曲された一対の折曲部83aが形成されている。一対の折曲部83aは、上下方向に延在し、下部においてベッド部2の機枠15に支持された回動中心軸83cによって回動自在に軸支されている。各折曲部83aの上部は、送り台17の突出リンク部17bの前端部に第一連結軸17cにより夫々回動可能に連結されている。
【0020】
水平送り腕83の右側折曲部83aの中央の上部側には、水平送りロッド84の前端部が第二連結軸83bを介して回動可能に軸支されている。水平送りロッド84は、前後方向に延在し、断面U字状の細板部材で形成されている。水平送りロッド84は、機枠15に下端部が固定されたばね部材84bによって下方に付勢されている。水平送りロッド84のU字状に形成された下面84aは、カムフォロアとして偏心カム86の外周86a(カム面)に摺動可能に当接する。
この偏心カム86は、後述するように外周86aと端面86bとに夫々カム面を有する(図4参照)。水平送りロッド84の後端部は、第二連結軸83bを中心に上下方向に回動する自由端であり、左右方向に沿って延在する水平送りロッド軸85が固定されている。水平送りロッド軸85は、(図3において)右側に突出し、水平送りロッド軸85の右側端部は送り調整器87の角駒87aに嵌合している。角駒87aは、断面矩形状に形成され水平送りロッド軸85を嵌合させる長穴状のガイド溝87bを有している(図5参照)。水平送りロッド軸85は、送り調整器87のガイド溝87bの長穴に沿って摺動可能となっている。送り調整器87の角駒87aは、図5および図6に示すように、所定の傾斜角度の範囲で傾動可能であり、角駒87aの外周には、角駒87aを傾動させる操作レバー87cが設けられている。操作レバー87cは、後述する上下スライド部材92、第一ベルクランク93、水平スライド部材94および第二ベルクランク95を備えた切替機構9によって操作される。切替機構9を作動させる力は抵抗力となるので、角駒87aは、傾動された位置で、切替機構9の抵抗力により機枠15に固定される。
【0021】
偏心カム86は、左右方向に延在する下駆動軸21の他端部に一体回転可能に形成されている。偏心カム86の外周86aと左側の端面86b(図4においては、右側)は、カム面を構成し、偏心カム86の回転中心CLは外周86aのカム面に対し中心より偏心した位置に形成されている。
【0022】
例えば、図5に示すように、送り調整器87の角駒87aを左側へ前傾するように傾動させた場合、偏心カム86の回転によって水平送りロッド84を上方に移動させ、水平送りロッド84は水平送りロッド軸85が送り調整器87の角駒87aに沿って斜め後方へ移動する。水平送りロッド84が斜め後方に移動することから、水平送り腕83を後方に傾動させる。水平送り腕83の後方への傾動によって、送り台17および送り歯16を後側方向へ移動させる。このようにして、水平送り機構81は、送り歯16の水平方向の送り成分を生じさせる。送り調整器87の角駒87aの後傾量によって、送り歯16の水平方向の送り量が調整される。送り調整器87の角駒87aを傾動させずに真っ直ぐに位置決めすると、止め縫いを行なうことができ、送り調整器87の角駒87aを前傾させると、返し縫いを行なうことができる。
【0023】
(昇降機構)
昇降機構82は、図4に示すように、偏心カム86(上下送りカム)と、上下送りリンク88と可動子89とを備えている。なお、図4は、返し縫いレバー付ミシン1を後側から見た図であるため、右側と左側とが反対に表示されている。
偏心カム86は、前述のように外周86aのカム面に加えて下駆動軸21(偏心カム86)の回転中心CLに直交する端面86bにもカム面を有している。端面86bのカム面は、偏心カム86の回転に伴って上下送りリンク88に設けられた従動子88aを端面に交差する方向に移動させる。上下送りリンク88は、略逆L字状に形成され、右側の下端に従動子88aが形成されている。従動子88aは、端面86bのカム面に摺動可能に当接する。上下送りリンク88の中央部は、機枠15に設けられた図略の軸受に回動自在に支持された回動軸88cに軸支された、上下送りリンク88の左側(図4においては右側)の端部は、第三連結軸88bを介して可動子89に回動可能に連結されている。可動子89は、送り台17に高さ調整ねじ89aを介して連結されている。偏心カム86(上下送りカム)を回転させると、端面86bのカム面が左側(図4においては右側)へ突出する高さが、低い位置から高い位置に移動する際に、送り歯16を針板11の上面より上方へ突出させ、端面86bのカム面が左側(図4においては右側)へ突出する高さが高い位置から低い位置に移動する際に、送り歯16を針板11の上面より下方へ退入させる。
【0024】
このように、送り歯運動機構8の水平送り機構81と昇降機構82とは、一つの偏心カム86の回転によって駆動され、送り歯16が昇降機構82により針板11の上面より上方に突出した状態にあるときに、水平送り機構81の水平送り腕83が、送り歯16を搬送方向(後側方向)に揺動する。これにより、送り歯16は、縫製する布Cを搬送方向(後側方向)に搬送する。送り歯16が昇降機構82により針板11より下方に退入した状態にあるときに、水平送り機構81の水平送り腕83が、送り歯16を搬送方向の逆方向(前側方向)に揺動する。このようにして、送り歯16は、垂直の平面内に略矩形状の運動軌跡を描くことができる。
【0025】
(切替機構)
次に、布Cが搬送する方向を、返し縫いを行うために逆方向に切替える切替機構9について、図3および図7に基づき以下に説明する。切替機構9は、送り歯運動機構8の送り歯16による搬送方向を操作するものである。
切替機構9は、操作入力部91、上下スライド部材92、第一ベルクランク93、水平スライド部材94および第二ベルクランク95を備えている。切替機構9は、脚柱部3からベッド部2に亘って設けられている。
【0026】
操作入力部91は、直角三角形の板状部91aと、後述する返し縫いレバー7の連結部71が連結する一対の被連結部91bと、後述するカバー部材の内壁が当接する当接部91cとを備えている(図7参照)。板状部91a、被連結部91bおよび当接部91cは、一体に形成されている。
板状部91aと被連結部91bとの間には、機枠15に支持される回転支持部91dが設けられ、板状部91aと被連結部91bとは、回転支持部91dに回動可能に支持されている。板状部91aの直角な角部には、左方向に突出する係合爪91eが設けられている。操作入力部91の板状部91aは、図略のばね部材により、下方に常時付勢されている。被連結部91bは、当接部91cの両側側面に開口部が矩形状に形成された矩形枠で形成されている。当接部91cの上面には、切替機構被係止部としての当接部係止溝91fが設けられている。
【0027】
上下スライド部材92は、例えば短冊状の鉄製板部材で形成され、上部に矩形状の上部係合穴92a、下部に矩形状の下部係合穴92bが形成されている。上部係合穴92aには、操作入力部91の係合爪91eが係合され、下部係合穴92bは第一ベルクランク93の一端側に設けられた入力側係合爪93aに係合している。第一ベルクランク93は、中央の角部が、機枠15に固定された回動支持軸93c(図3は、回動支持軸93cが支持する位置のみ表示)に回転自在に軸支されている。第一ベルクランク93の他端には、出力側係合爪93bが設けられ、出力側係合爪93bは水平スライド部材94の右端側に設けられた入力側係合溝94aに係合している。水平スライド部材94の左端側は、第二ベルクランク95の入力側係合爪95aが係合される出力側係合溝94bが設けられている。水平スライド部材94は、水平方向に延在する薄板棒状部材である。
【0028】
第二ベルクランク95は、中央の角部が機枠15に固定された回動支持軸95c(図3は、回動支持軸95cが支持する位置のみ表示)に回転自在に軸支されている。第二ベルクランク95の一端には、入力側係合爪95aが形成され、第二ベルクランク95の他端には出力側係合爪95bが設けられている。出力側係合爪95bは、送り調整器87の角駒87aの操作レバー87cに係合し、操作レバー87cをON状態に操作することで、角駒87aを返し縫い位置に傾動させることができるよう構成されている。操作レバー87cのON状態が解除された場合には、角駒87aは、例えば、図略のばね部材によって、返し縫い位置から布Cを搬送方向(後側方向)に搬送する通常縫製位置に戻るよう構成されている。
また、上下スライド部材92の上部は、図略のリンクを介して図略の送り規制カムが接続されている。この送り規制カムの操作によっても、角駒87aの傾動が操作され、送り歯16による布Cの送り量の増減、送り方向の切替えが行われる。
【0029】
(操作部材)
操作部材としての返し縫いレバー7は、図7および図8に示すように、連結部71と操作部72とを備えている。連結部71は、断面形状が十字を二つ横に連結させた、例えば鉄製棒状部材であり、使用の際水平方向に一対並べるよう形成されている。各連結部71は、開口が矩形状となった操作入力部91の被連結部91bに緩みなく嵌合する。操作部72は、後側が二重となった薄板状に例えば硬質樹脂製部材で連結部71と一体に形成されている。操作部72の二重になった隙間72aには、後述するカバー部材101のフロント側係止部101bが嵌入するとともにフロント側係止部101bの先端鈎部101b1が係止する係止穴73(操作部被係止部)が設けられている(図9参照)。
【0030】
フロントパネル61は、返し縫いレバー7の一対の連結部71が遊びを有して貫通するフロント貫通穴61aが形成されている(図2参照)。フロント貫通穴61aは、一対の連結部71が一度に嵌入する矩形穴状に形成されている。
【0031】
カバー部材101は、例えば、ABS等の硬質樹脂製部材により、上下方向および左右方向に所定範囲で延在する薄板状に形成されている。カバー部材101の中央部には、返し縫いレバー7の連結部71が遊びを有して貫通する一対の貫通穴101aが設けられている。カバー部材101の前側上部は、回動支持部91dを曲率中心とする曲面101eが形成されている。この曲面101eは、返し縫いレバー7を操作する際に、カバー部材101の前側上部が、フロントパネル61の後面に接触しないように作用する。
カバー部材101の前側表面には、前側に向かって突出する細板状のフロント側係止部101bが設けられている。フロント側係止部101bの先端には下に突出する鈎部101b1が設けられている。図9に示すように、フロント側係止部101bが操作部72の隙間72aに嵌入されたときに、隙間72aの下側内壁と鈎部101b1の下端が当接し、フロント側係止部101bは少し曲げられる。鈎部101b1は、少し曲げられたフロント側係止部101bの復元力により下方に向かって付勢され、係止穴73(操作部被係止部)に係止する。
カバー部材101の裏側上部には、後側に向かって突出する細板状のリヤ側係止部101cが設けられている。リヤ側係止部101cの先端には下に突出する鈎部101c1が設けられている。カバー部材101が操作入力部91に組み付けられる際に、鈎部101c1が当接部91cの上面に接触することで、リヤ側係止部101cは、上側に少し曲げられる。鈎部101c1は、少し曲げられたリヤ側係止部101cの復元力により下方に向かって付勢され、当接部係止溝91f(切替機構被係止部)に係止する(図9参照)。カバー部材101の裏側下部の両側には、水平の支持面を有する一対の支持杆101dが設けられ、リヤ側係止部101cを当接部係止溝91fに係止した場合に、操作入力部91の前側下端を支持するよう構成されている。
【0032】
(駆動力伝達機構)
次に、送り歯運動機構8を駆動させる下駆動軸21に駆動力を伝達する駆動力伝達機構120を、図2に基づき簡単に説明する。
駆動力伝達機構120は、駆動モータ31、上駆動軸41、ハンドホイール121、プーリ122、第一のタイミングプーリ123、駆動ベルト124、下駆動軸21、第二のタイミングプーリ125およびタイミングベルト126等を備えている。
【0033】
駆動モータ31は、例えば、ステッピングモータであり、脚柱部3の下部の機枠15に固定されている。駆動モータ31の出力軸31aの回転中心は、左右方向に沿って設けられている。駆動モータ31の上方には、上駆動軸41が配置されている。上駆動軸41は、図示されない軸受によって機枠15に回転自在に支持されている。上駆動軸41は、左右方向に延在して設けられ、右端にハンドホイール121およびプーリ122が相対回転不能に固定されている。駆動モータ31の出力軸31aに固定されたモータプーリ31bとプーリ122に形成された従動プーリには、エンドレス状の駆動ベルト124が掛けられている。上駆動軸41の左端には、図略の針棒クランクが固定されている。
【0034】
駆動モータ31の後側には、下駆動軸21が配置されている。下駆動軸21は、左右方向に延在して設けられ、図示されない軸受によって機枠15に回転自在に支持されている。下駆動軸21の右端には、第二のタイミングプーリ125が固定されている。下駆動軸21の左端には、図示しない釜、送り歯運動機構8の偏心カム86等が設けられている。プーリ122に同軸で設けられた第一のタイミングプーリ123と第二のタイミングプーリ125とには、エンドレス状のタイミングベルト126が掛けられている。上駆動軸41と下駆動軸21とは通常等速回転するように構成されている。第一のタイミングプーリ123と第二のタイミングプーリ125との間には、テンションプーリ127が、タイミングベルト126の緩み側に外側から配置されている。
【0035】
(返し縫いレバーの交換)
上記のように構成した返し縫いレバー付ミシン1の返し縫いレバーを交換する手順を、図2図7図9に基づいて以下に説明する。
図9に示すように、操作入力部91に組付けられた返し縫いレバー7を取り外す場合、作業者は、カバー部材101のフロント側係止部101bを、返し縫いレバー7の操作部72の裏側で係止穴73に係止するカバー部材101のフロント側係止部101bの係合を解除する。作業者は、フロント側係止部101bの鈎部101b1を下方から指や棒の先端で押すことで、簡単に係止穴73とフロント側係止部101bとの係合を解除することができる。
次に、作業者は、操作部72を手で把持して、前側(手前側)に引張ることで、返し縫いレバー7を取り外すことができる。
次に、新たな返し縫いレバーとして、例えば、返し縫いレバー7b(または、返し縫いレバー7a)に交換する場合、返し縫いレバー7bの連結部71の先端を、操作入力部91の被連結部91bに挿入する。返し縫いレバー7bの連結部71を奥まで挿入すると、カバー部材101のフロント側係止部101bが返し縫いレバー7の操作部72の裏側の係止穴73に係合する。このように、返し縫いレバー付ミシン1は、フロントパネル61を取り外すことなく新たな返し縫いレバー7bに極めて容易に交換することができる。
【0036】
(返し縫いレバーの作動)
次に、返し縫いレバー7による返し縫い作動を図3および図6に基づいて以下に説明する。
先ず、作業者は、図3に示すように、右側の返し縫いレバー7を上から下に押える。返し縫いレバー7により操作された操作入力部91は、回転支持部91dを中心に時計回りに回動するとともに係合爪91eを上方に移動させる。
上下スライド部材92は、係合爪91eによって、上方へ移動し、さらに、上下スライド部材92は、第一ベルクランク93の入力側係合爪93aに係合して第一ベルクランク93を反時計回りに回動させる。
第一ベルクランク93の回動により、出力側係合爪93bが係合する水平スライド部材94の入力側係合溝94aは、右側へ引かれる。これによって、水平スライド部材94は、右側へ水平移動する。
水平スライド部材94の右側への移動により、出力側係合溝94bが係合する第二ベルクランク95の入力側係合爪95aは、右側へ引かれる。これによって、第二ベルクランク95は、反時計回りに回動する。第二ベルクランク95の回動によって、出力側係合爪95bが回動する。そして、図6に示すように、出力側係合爪95bは、角駒87aの操作レバー87cを操作して角駒87aのガイド溝87bを前傾するように傾動させる。
これによって、布Cを搬送方向の反対方向(前側方向)に搬送して縫製する返し縫いを実現させる。
【0037】
上記の説明で明らかなように、実施形態の返し縫いレバー付ミシン1において、水平方向に沿って延在するベッド部2と、ベッド部2の一端部から上方へ立設された脚柱部3と、脚柱部3の上端からベッド部2に対面して水平方向に沿って延在するアーム部4と、アーム部4の端部に設けられたミシンヘッド5と、ベッド部2の上面に設けられ、縫製する布Cを係脱可能に係止して水平方向に移動させる送り歯16と、ベッド部2にミシンヘッド5に対向して設けられ縫製する布Cを前進方向または後退方向に切り替え可能に布送りするために送り歯16を運動させる送り歯運動機構8と、脚柱部3およびベッド部2に亘って設けられ送り歯運動機構8の布送りの方向を前進方向と後退方向とに切替える切替機構9と、脚柱部3の前面を覆うフロントパネル61と、フロントパネル61に設けられたフロント貫通穴61aを貫通してフロントパネル61の内側で切替機構9に着脱可能に連結される連結部71が一端部に設けられ、フロントパネル61の外側に突出して切替機構9を操作する操作部72が他端部に設けられた返し縫いレバー7と、を備える。
【0038】
これによると、返し縫いレバー7の連結部71は、フロントパネル61のフロント貫通穴61aを貫通して、切替機構9に連結する。また、連結部71と切替機構9とは着脱可能なので、返し縫いレバー7が、使用により劣化した場合、別のデザインの操作部72に変更したい場合に、フロントパネル61を取り外すことなく新たな返し縫いレバー7(a、b)に容易に変更することができる。
【0039】
また、返し縫いレバー付ミシン1において、フロントパネル61と切替機構9の操作入力部91との間には、返し縫いレバー7の連結部71が貫通する貫通穴101aを有し、フロント貫通穴61aの周縁と操作入力部91の外周との間の隙間を埋めるカバー部材101がさらに設けられている。
【0040】
これによると、フロントパネル61と切替機構9の操作入力部91との間に設けられたカバー部材101によって、フロント貫通穴61aの周縁と操作入力部91の外周との間の隙間を埋めることで、使用者の指が操作入力部91に触れたり、隙間に使用者の手や指が挟み込まれたりするのを防止することができる。また、返し縫いレバー7側からフロント貫通穴61aを通して切替機構9が視覚で認識されるのを防ぎ、美観性を向上することができる。また、カバー部材101は、切替機構9とは別体の部材であるため、カバー部材101が破損した場合には、安いコストで交換することができる。
【0041】
また、カバー部材101は、返し縫いレバー7の操作部72側に設けられたフロント側係止部101bと切替機構9側に設けられたリヤ側係止部101cとを有し、操作部72には、フロント側係止部101bと着脱可能に係止する係止穴73が設けられ、切替機構9には、リヤ側係止部101cと係止する当接部係止溝91fが設けられている。
【0042】
これによると、カバー部材101は、フロント側係止部101bにおいて返し縫いレバー7の係止穴73に係止される。また、カバー部材101は、リヤ側係止部101cにおいて切替機構9の当接部係止溝91fに係止される。そのため、カバー部材101は、フロントパネル61と切替機構9との間でガタつくことなく、返し縫いレバー7および切替機構9にしっかりと保持される。また、返し縫いレバー7を交換する際には、フロント側係止部101bと係止穴73とが、着脱可能なので、フロント側係止部101bから係止穴73を取り外して容易に交換することができる。
【0043】
なお、上記実施形態において、連結部71を一対の鉄製棒状部材としたが、これに限定されず、例えば、断面長方形で左右方向に広がった一本の連結部でもよく、三本の棒状部材でもよい。
また、カバー部材101は、切替機構9に後側に向かって突出するリヤ側係止部101cによって係合するものとしたが、これに限定されず、例えば、切替機構にねじ等によって固定されていてもよい。また、切替機構に前側に向かって突出する係止部を設け、この係止部に係止する被係止穴をカバー部材に設けてもよい。
【0044】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・返し縫いレバー付ミシン、16・・・送り歯、2・・・べッド部、3・・・脚柱部、4・・・アーム部、5・・・ミシンヘッド、61・・・フロントパネル、61a・・・フロント貫通穴、7・・・返し縫いレバー(操作部材)、71・・・連結部、72・・・操作部、73・・・係止穴(操作部被係止部)、8・・・送り歯運動機構、9・・・切替機構、91f・・・当接部係止溝(切替機構被掛止部)、101・・・カバー部材、101a・・・貫通穴、101b・・・フロント側係止部、101c・・・リヤ側係止部、15・・・機枠、C・・・布。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9