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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225907(P2017-225907A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20171201BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C02F1/32
   B63B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-121391(P2016-121391)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智陽
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA06
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA02
(57)【要約】
【課題】濾過装置のフィルタにかかる負担を小さくしつつ且つ適切にバラスト水を濾過処理することができるバラスト水処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、系外から流入したバラスト水を濾過処理する濾過装置と、前記濾過処理されたバラスト水に含有される微生物を紫外線により殺滅処理する紫外線照射手段とを備えたバラスト水処理装置であって、前記バラスト水における光の透過率を測定する透過率測定手段と、前記濾過装置に流通させる前記バラスト水の流量を調節する制御手段とを備え、前記透過率測定手段は、前記バラスト水における第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率を測定するように構成され、前記制御手段は、前記複数の波長帯の透過率に基づいて前記流量を調節する流量制御を実行する、バラスト水処理装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系外から流入したバラスト水を濾過処理する濾過装置と、前記濾過処理されたバラスト水に含有される微生物を紫外線により殺滅処理する紫外線照射手段とを備えたバラスト水処理装置であって、
前記バラスト水における光の透過率を測定する透過率測定手段と、
前記濾過装置に流通させる前記バラスト水の流量を調節する制御手段と、
を備え、
前記透過率測定手段は、前記バラスト水における第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率を測定するように構成され、
前記制御手段は、前記複数の波長帯の透過率に基づいて前記流量を調節する流量制御を実行する、
バラスト水処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、第1及び第2波長帯それぞれの透過率に基づいて前記流量の第1及び第2適正値をそれぞれ算出又は設定し且つこれらのうち小さい方に前記流量を調節する、請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記系外から流入した前記バラスト水を前記濾過装置を介さず再び系外に流出させるバイパスラインを更に備え、
前記透過率測定手段は、前記バイパスラインを流通する前記バラスト水における第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率を測定するように構成される、
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
第1波長帯の前記透過率が所定割合以下である場合に前記流量の第1適正値にし、
第2波長帯の前記透過率と総浮遊物量との関係に基づいて前記総浮遊物量を算出し、これが所定割合未満である場合に前記流量を第2適正値にする、
請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記バラスト水を処理するバラスト処理の前に前記流量制御を実行する、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のバラスト水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。バラスト水は、基本的に荷上港で取水されて、荷積港で排出される。そのため、それらの場所が異なっていれば、バラスト水中に含まれるプランクトンや細菌類の微生物が世界中を移動することになる。従って、荷上港と異なる水域の荷積港でバラスト水を排出すると、その港に別の水域の微生物を放出することになり、その水域の生態系を破壊するおそれがある。
【0003】
そこで、バラスト水中に含まれる微生物の含有量を低減するために、バラスト水処理装置が用いられている。例えば、特許文献1に記載のバラスト水処理装置は、バラスト水を濾過処理するフィルタと、バラスト水に紫外線を照射して、微生物の殺滅処理(殺菌処理)をする紫外線照射手段(紫外線照射装置)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−248510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地域(水域)によっては未処理のバラスト水に含有される夾雑物が多く、このようなバラスト水は濁度が高い。濁度が高いとバラスト水に対して十分な紫外線照度すなわち十分な殺菌効果が得られない。その結果、特許文献1に開示されるようなバラスト水処理装置では、十分に殺菌処理のなされていないバラスト水がバラストタンクに貯留されたり、更にはかかるバラスト水が系外(船外)に排出されるおそれがある。また、濁度の高いバラスト水は、夾雑物を多く含有するので濾過装置への流量が大きいとフィルタにかかる負荷が大きいものとなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、濾過装置のフィルタにかかる負担を小さくしつつ且つ適切にバラスト水を濾過処理することができるバラスト水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、系外から流入したバラスト水を濾過処理する濾過装置と、前記濾過処理されたバラスト水に含有される微生物を紫外線により殺滅処理する紫外線照射手段とを備えたバラスト水処理装置であって、前記バラスト水における光の透過率を測定する透過率測定手段と、前記濾過装置に流通させる前記バラスト水の流量を調節する制御手段とを備え、前記透過率測定手段は、前記バラスト水における第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率を測定するように構成され、前記制御手段は、前記複数の波長帯の透過率に基づいて前記流量を調節する流量制御を実行する、バラスト水処理装置が提供される。
【0008】
このような構成によれば、制御手段が、第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率に基づいて濾過装置に流通させるバラスト水の流量を調節するため、適切に濾過処理及び殺菌処理されたバラスト水がバラストタンクに貯留され又は系外に排出されるようになる。また、濾過装置のフィルタにかかる負荷を軽減することができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記制御手段は、第1及び第2波長帯それぞれの透過率に基づいて前記流量の第1及び第2適正値をそれぞれ算出又は設定し且つこれらのうち小さい方に前記流量を調節する。
【0011】
好ましくは、前記系外から流入したバラスト水を前記濾過装置を介さず再び系外に流出させるバイパスラインを更に備え、前記透過率測定手段は、前記バイパスラインを流通する前記バラスト水における第1及び第2波長を含む複数の波長帯の透過率を測定するように構成される。
【0012】
好ましくは、前記制御手段は、第1波長帯の前記透過率が所定割合以下である場合に前記流量の第1適正値にし、第2波長帯の前記透過率と総浮遊物量との関係に基づいて前記総浮遊物量を算出し、これが所定割合未満である場合に前記流量を第2適正値にする。
【0013】
前記制御手段は、前記バラスト水を処理するバラスト処理の前に前記流量制御を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るバラスト水処理装置の概略を示す図である。
図2】バラスト処理を説明するための図である。
図3】デバラスト処理を説明するための図である。
図4】バラスト水濾過装置2に流通させるバラスト水の流量を調節する処理手順を示すフローチャートである。
図5】バラスト水をバイパスライン10に流通させたときの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るバラスト水処理装置の実施形態について、以下図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0016】
1.バラスト水処理装置の構成
図1は、本実施形態に係るバラスト水処理装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態のバラスト水処理装置は、海水等の船外(系外)の水をシーチェストSCから船内(系内)に取り込んでバラスト水として圧送するポンプ1と、フィルタによりバラスト水を濾過処理するバラスト水濾過装置2と、バラスト水に紫外線を照射してバラスト水に含有される微生物を殺菌処理する紫外線リアクタ3(特許請求の範囲における「紫外線照射手段」の一例)と、バラスト水を貯留するバラストタンク4と、バラスト水処理装置の各処理の制御を行う制御手段5と、紫外線、可視光等を含む複数の波長帯の透過率を測定する透過率測定手段6と、バラスト水の塩分濃度を測定する塩分濃度測定手段7とを備える。なお、透過率測定手段6は、異なる波長帯を有する複数の光源(図示せず)と、透過率を測定する濁度計(図示せず)とからなるものとする。
【0017】
ここで、本明細書において「バラスト水」については、バラストタンク4に導入(流入)される前又はバラストタンク4から排出(流出)された後に拘わらず、また、バラスト水濾過装置2に導入(流入)される前又はバラスト水濾過装置2から排出(流出)された後に拘わらず、更には、紫外線リアクタ3に導入(流入)される前又は紫外線リアクタ3から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現し、これは、海水、淡水、汽水等を含む。
【0018】
また、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、上記各構成要素を流通する複数のラインL1〜L9を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1においては、ラインL1〜ラインL9それぞれの両端に、ラインの数字と同一の数字を付している。
【0019】
具体的には、図1に示すように、ラインL1はシーチェストSCとポンプ1を接続するラインであり、開閉弁V1を有する。ラインL2はポンプ1とバラスト水濾過装置2を接続するラインであり、開閉弁V3を有する。ラインL3はバラスト水濾過装置2と紫外線リアクタ3を接続するラインであり、開閉弁V4を有する。また、ラインL4は、紫外線リアクタ3とバラスト水を船外へ排出する排出口DRを接続するラインであり、開閉弁V2、開閉弁V6を有する。なお、ラインL1〜ラインL4は、これらを合わせて、シーチェストSCと排出口DRとを接続する主管とも呼ばれる。
【0020】
次に、ラインL5は、一端がラインL2と接続され、他端がラインL3と接続されて、バラスト水濾過装置2をバイパスするラインであり、塩分濃度測定手段7を有する。ラインL6は、一端がラインL3と塩分濃度測定手段7の間の位置においてラインL5に接続され他端が開閉弁V6と開閉弁V2の間の位置においてラインL4に接続されて、紫外線リアクタ3をバイパスするラインであり、開閉弁V5を有する。特にラインL5、ラインL6は、流入したバラスト水をバラスト水濾過装置2を介さず再び系外に流出させるラインであるため、バイパスライン10とも呼ばれる。
【0021】
ラインL7は、一端が開閉弁V6と開閉弁V2の間の位置においてラインL4と接続され、他端がバラストタンク4に接続されて、紫外線リアクタ3とバラストタンク4を接続するラインであり、開閉弁V7を有する。そして、ラインL8は、一端が開閉弁V7とバラストタンク4の間の位置においてラインL7と接続され、他端が開閉弁V1とポンプ1の間の位置においてラインL1と接続されて、バラストタンク4とポンプ1を接続するラインであり、開閉弁V8を有している。
【0022】
また、本実施形態において、バラスト水濾過装置2は、濾過処理中にフィルタの洗浄を行うフィルタ洗浄手段(図示せず)を備えており、フィルタ洗浄手段により排出される洗浄汚水を船外へ排出するラインL9が接続される。ラインL9には、開閉弁V9が設けられる。
【0023】
制御手段5は、バラスト水のバラストタンク4への漲水(バラスト処理)制御及びバラストタンク4からの排水(デバラスト処理)制御を行う。これらの制御は、ポンプ1及び、上述した開閉弁V1〜V9の開閉を制御することにより行われる。
【0024】
2.バラスト水の処理運転
次に、以上のように構成された本実施形態のバラスト水処理装置において、バラスト水を処理する処理運転について説明する。
【0025】
2.1 バラスト処理
図2は、本実施形態に係るバラスト水処理装置におけるバラスト処理(漲水処理)時にバラスト水が流れる経路を示している。この工程では、図2における太線で示されるラインにバラスト水を流通させてバラストタンク4にバラスト水を導入する。詳細は次に説明する。
【0026】
バラストタンク4にバラスト水を導入する際には、制御手段5は、開閉弁V1、開閉弁V3、開閉弁V4、開閉弁V6、開閉弁V7、開閉弁9を開き、開閉弁V2、開閉弁V5、開閉弁V8を閉じ、ポンプ1を起動するとともに、紫外線ランプに通電する。ポンプ1の起動により、シーチェストSCから船外の水(海水等)が取り込まれ、ラインL1、ラインL2を通ってバラスト水濾過装置2へと通水される。バラスト水濾過装置2へ通水されたバラスト水は、フィルタにより濾過処理された後、ラインL3を通って紫外線リアクタ3へと流れる。ここで、上述したバラスト水濾過装置2のフィルタ洗浄手段により、バラスト水濾過装置2へ流入したバラスト水の一部は、フィルタ洗浄の汚水としてラインL9を通って船外へと排出される。紫外線リアクタ3を通過するバラスト水には紫外線が照射され、殺菌処理がなされる。そして、殺菌処理がなされたバラスト水はラインL7を通過してバラストタンク4へと送り込まれる。
【0027】
2.2 デバラスト処理
図3は、本実施形態に係るバラスト水処理装置におけるデバラスト処理(排水処理)時にバラスト水が流れる経路を示している。この工程では、図3における太線で示されるラインによりバラストタンク4内のバラスト水が船外に排出される。詳細は次に説明する。
【0028】
バラストタンク4から排出口DRを介してバラスト水を船外へ排出する際には、図3に示すように、制御手段5は、開閉弁V8、開閉弁V6、開閉弁V2を開き、開閉弁V1、開閉弁V3、開閉弁V4、開閉弁V5、開閉弁V7を閉じ、ポンプ1を起動するとともに紫外線ランプに通電する。ポンプ1の起動により、バラストタンク4の水がラインL8、ラインL1、ラインL2、ラインL5、ラインL4を通って排出口DRから船外へと排出される。ここで、船外へ排出するバラストタンク4内のバラスト水がバラスト水濾過装置2を通らず、ラインL5によりバイパスされているのは、バラストタンク4内のバラスト水が、上述したバラスト処理時に一度濾過処理を行っているためである。
【0029】
3.透過率に基づく流量制御
続いて、以上のように構成された本実施形態のバラスト水処理装置において、バラスト水濾過装置2に流通させるバラスト水の流量を制御する方法について、図4にフローチャートとして示す次のステップに沿って説明する。なお、本ステップは、上述のバラスト処理をする前に実行することが好ましく、以下、かかるタイミングでの実行を前提として説明するものとする。
【0030】
なお、後述の波長帯λ1、λ2は、例えば一方が可視光、他方が紫外線光の波長帯である。また、後述の適正値とは、制御手段5がバラスト水の透過率に基づいて調節の要不要に関わらず適切であると判断した流量の値である。また、調節が不要な場合にあっては、かかる適正値は、通常の流量(以後、通常値と称し予め決定されていることが好ましい)に設定されるものとする。
【0031】
[開始]
(ステップS1−1)
図5に示すように、制御手段5は、開閉弁V1、開閉弁V2、開閉弁V5を開き、開閉弁V3、開閉弁V4、開閉弁V6、開閉弁V7を閉じ、ポンプ1を起動する。ポンプ1の起動により、シーチェストSCから船外の水(海水等)を取り込んで、ラインL1、ラインL2、ラインL5、ラインL6、ラインL4を通って再び船外へと流通させる。
【0032】
(ステップS1−2)
透過率測定手段6は、ステップS1−1によって流通しているバラスト水に対して波長帯λ1(特許請求の範囲における「第1波長帯」の一例)の透過率T1を測定する。
【0033】
(ステップS1−3a)
ステップS1−2における透過率T1の測定結果が、
T1≧T0(又はT1>T0) (1)
を満たす場合(T0は、特許請求の範囲における「所定割合」の一例)は、制御手段5は、通常値をバラスト水濾過装置2のフィルタに流通させてもフィルタにかかる負荷は大きくないと判断する。換言すると、制御手段5は、流量の第1適正値を通常値に設定する。
【0034】
(ステップS1−3b)
ステップS1−2における透過率T1の測定結果が、
T1<T0(又はT1≦T0) (2)
を満たす場合は、制御手段5は、通常の流量(予め決定されていることが好ましい)をバラスト水濾過装置2のフィルタに流通させるとフィルタにかかる負荷が大きいと判断する。より好ましくは、フィルタにかかる負荷、予想される濾過処理の精度、フィルタの耐久時間等を判断する。そして、T1の値に基づいて、流量の第1適正値を算出する。なお、T1と第1適正値との関係は予め決定されたデータベースに基づいて算出されてもよく、所定の法則に基づいてリアルタイムに算出されてもよい。また、連続的に算出されてもよいし離散的に算出されてもよい。
【0035】
(ステップS1−4)
透過率測定手段6は、ステップS1−1によって流通しているバラスト水に対して波長帯λ2(特許請求の範囲における「第2波長帯」の一例)の透過率T2を測定する。更に、制御手段5は、透過率T2から当該バラスト水の総浮遊物量(TTS:Total Suspended Solids)を算出する。なお、T2とTTSとの関係は予め得られているものとする。
【0036】
(ステップS1−5a)
ステップS1−4におけるTTSの算出結果が、
TTS≧TTS0(又はTTS>TTS0) (3)
を満たす場合(TTS0は、特許請求の範囲における「所定割合」の一例)は、制御手段5は、通常値をバラスト水濾過装置2のフィルタに流通させてもフィルタの負荷は大きくないと判断する。換言すると、制御手段5は、流量の第2適正値を通常値に設定する。
【0037】
(ステップS1−5b)
ステップS1−4におけるTTSの算出結果が、
TTS<TTS0(又はTTS≦TTS0) (4)
を満たす場合は、制御手段5は、通常の流量(予め決定されていることが好ましい)をバラスト水濾過装置2のフィルタに流通させるとフィルタにかかる負荷が大きいと判断する。より好ましくは、フィルタにかかる負荷、予想される濾過処理の精度、フィルタの耐久時間等を判断する。そして、TTSの値に基づいて、流量の第2適正値を算出する。なお、TTSと第2適正値との関係は予め決定されたデータベースに基づいて算出されてもよく、所定の法則に基づいてリアルタイムに算出されてもよい。また、連続的に算出されてもよいし離散的に算出されてもよい。
【0038】
(ステップS1−6)
制御手段5は、ステップS1−3a若しくはS1−3b、及びステップS1−5a若しくはS1−5bによって得られた第1及び第2適正値の大小を比較し、何れか小さい方に流量を調節する。すなわち、バラスト水処理を実行する際には、当該流量のバラスト水がバラスト水濾過装置2に流通されて実行されることとなる。
[終了]
【0039】
4.塩分濃度に基づく紫外線照射強度制御
上述の流量制御によれば、バラスト水濾過装置2におけるフィルタの負荷を軽減し且つ適切に濾過処理がなされるため、適切に濾過処理及び殺菌処理されたバラスト水がバラストタンクに貯留され又は系外に排出されるようになる。また、濾過装置のフィルタにかかる負荷を軽減することができる。
【0040】
一方で、一般的に淡水性の微生物と海洋性の微生物とを比較すると前者の方が紫外線照射に対する耐性があることがわかってきた。そこで、本実施形態では、塩分濃度で水域を特定し、水域に応じた紫外線照射強度でバラスト処理時(漲水時)に殺菌処理を行うものとする。
【0041】
紫外線リアクタ3の紫外線照射強度を制御する方法について、次のステップに沿って説明する。なお、本ステップは、その水域に住んでいる生物を判定するため上述のバラスト処理より前に実行すればよく、例えば上述の流量制御と同じタイミングで行ってもよい。以下、かかるタイミングでの実行を前提として説明するものとする。
【0042】
[開始]
(ステップS2−1)
図5に示すように、制御手段5は、開閉弁V1、開閉弁V2、開閉弁V5を開き、開閉弁V3、開閉弁V4、開閉弁V6、開閉弁V7を閉じ、ポンプ1を起動する。ポンプ1の起動により、シーチェストSCから船外の水(海水等)を取り込んで、ラインL1、ラインL2、ラインL5、ラインL6、ラインL4を通って再び船外へと流通させる。
【0043】
(ステップS2−2)
塩分濃度測定手段7は、ステップS2−1によって漲水中のバラスト水の塩分濃度Cを測定する。
【0044】
(ステップS2−3)
ステップS2−2における塩分濃度Cの測定結果に応じて、制御手段5は、紫外線リアクタ3の紫外線照射強度を制御する。すなわち、塩分濃度Cが低ければ、紫外線リアクタ3の紫外線照射強度を通常よりも高めに設定することとなる。なお、塩分濃度Cに基づいて連続的に紫外線強度を変化させてもよいし2値に係る等離散的に制御してもよい。
[終了]
【0045】
4.作用効果
以上説明した実施形態によれば次の作用効果を奏することができる。
【0046】
(イ)本実施形態に係るバラスト水処理装置は、好ましくはバラスト処理前に、バラスト水における波長帯λ1及びλ2の光の透過率T1及びT2をそれぞれ測定し、それらの値に基づいてバラスト水濾過装置2に流入させるバラスト水の流量の第1及び第2適正値を算出し、このうち小さい方に流量が制御される。これによって、適切に濾過処理及び殺菌処理されたバラスト水がバラストタンク4に貯留され又は系外に排出されるようになる。更に、バラスト水濾過装置2におけるフィルタにかかる負荷を低減することができる。
【0047】
(ロ)本実施形態に係るバラスト水処理装置は、好ましくはバラスト処理前に、バラスト水における波長帯λ1及びλ2の光の透過率T1及びT2をそれぞれ測定し、それらの値に基づいてバラスト水濾過装置2に流入させるバラスト水の流量の第1及び第2適正値を算出し、このうち小さい方に流量が制御される。これによって、バラスト水濾過装置2によって適切にバラスト水が濾過処理され、紫外線リアクタ3の紫外線照射強度を上昇させなくとも殺菌効果を維持又は向上させることができる。
【0048】
(ハ)本実施形態に係るバラスト水処理装置は、バラスト水の塩分濃度Cを測定し、これに基づいて紫外線リアクタ3の紫外線照射強度を制御する。これによって、微生物の紫外線耐性に合わせてより適切に殺菌処理をすることができる。
【0049】
5.変形例
本発明に係るバラスト水処理装置を以下の形態においても実施することができる。
【0050】
第1に、本実施形態に係る透過率測定手段6は、ラインL6上に設けられたが、ラインL6以外、例えばラインL1、ラインL2、ラインL3、ラインL4、ラインL5等上に設けてもよい。その中でも、L6と同じくバイパスライン10であるラインL5に設けられることが好ましい。
【0051】
第2に、本実施形態に係る塩分濃度測定手段7は、ラインL5上に設けられたが、どこに設けられてもよい。
【0052】
第3に、本実施形態に係る紫外線リアクタ3とともに、次亜塩素酸等の薬剤によって殺菌処理する薬剤導入部を有するように実施してもよい。かかる場合、デバラスト処理の際には、当該薬剤を中和する中和剤導入部を合わせて備える必要があることに留意したい。
【0053】
第4に、本実施形態に係る紫外線リアクタ3とともに、バラスト水を電気分解することで塩素を生成させ、その酸化作用によって殺菌処理する電解装置を有するように実施してもよい。
【0054】
第5に、本実施形態に係る紫外線リアクタ3とともに、オゾンを生成させ、その酸化作用によって殺菌処理するオゾン発生装置を有するように実施してもよい。
【0055】
第6に、塩分濃度に基づき判断した微生物の紫外線耐性に合わせて流量を変更する制御を行うこともできる。具体的には、微生物の紫外線耐性が高い水域では流量を減少させて紫外線の照射時間が長くなるよう制御を行う。これにより、紫外線照射強度を調節しなくても、微生物の紫外線耐性に合わせてより適切な殺菌処理を行うことが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。特に、圧送部はポンプに制限されず、発明の均等な範囲において開閉弁やポンプの上流下流に係る順序を一部入れ替えたり、新たなライン、開閉弁、ポンプ等を追加してもかまわない。
【符号の説明】
【0057】
1 :ポンプ
2 :バラスト水濾過装置
3 :紫外線リアクタ
4 :バラストタンク
5 :制御手段
6 :透過率測定手段
7 :塩分濃度測定手段
10 :バイパスライン
L1〜L9 :ライン
SC :シーチェスト
DR :排出口
V1〜V9 :開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5