(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225914(P2017-225914A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】脱気装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/00 20060101AFI20171201BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20171201BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20171201BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20171201BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
B01D61/00
B01D19/00 H
B01D63/06
B01D71/32
B01D71/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-122185(P2016-122185)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
【テーマコード(参考)】
4D006
4D011
【Fターム(参考)】
4D006GA32
4D006HA27
4D006JA01B
4D006MA02
4D006MA33
4D006MC28
4D006MC30
4D011AA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脱気処理効率が高く脱気ユニットの長さを短くすることが可能で、圧力損失が低く、コンパクトにすることができる脱気装置の提供。
【解決手段】複数本の熱溶融性フッ素樹脂製のチューブ111で構成される脱気ユニット110が、減圧チャンバー120内に配置された脱気装置100において、フッ素樹脂製のチューブ111は内径が0.5mm以下であり、(フッ素樹脂チューブ111内径×有効チューブ本数)/(チューブ束外径)の式で求められる処理能力の係数が、6以上である脱気装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の熱溶融性フッ素樹脂製のチューブで構成される脱気ユニットが、減圧チャンバー内に配置された脱気装置において、前記フッ素樹脂製のチューブは内径が0.5mm以下であり、(前記フッ素樹脂チューブ内径×有効チューブ本数)/(チューブ束外径)の比で求められる処理能力の係数が、6以上である脱気装置
【請求項2】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、請求項1に記載の脱気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の溶存ガスを脱気処理する脱気装置には、例えば気体透過性チューブの束の両端を融着し、これを減圧チャンバーに設けられた液体流入口及び液体排出口に接続して減圧チャンバー内に収容したものがある。この脱気装置によれば、減圧チャンバー内を減圧し、気体透過性チューブへ液体を流入することにより、液体中の溶存ガスを気体透過性チューブの外へ排出させ、脱気処理することができる。
【0003】
このような構成の脱気装置において、脱気処理液の供給量が多い場合には、脱気効率を良くするために複数の脱気装置を並列あるいは直列に接続する必要があった。複数の脱気装置を並べて配置すると、減圧チャンバーが個々に必要であり、各脱気装置を減圧するための真空吸引口も並列接続する必要があるため、配管の取り回しに手間がかかり、脱気装置のスペースも大きくなるという問題がある。そこで、かかる問題を解消する脱気装置として、複数の液体流入口及び液体排出口を減圧チャンバーに設け、複数のチューブ束を1つの減圧チャンバー内に収容して各チューブ束の両端を各液体流入口及び液体排出口に接続した一体型の脱気装置が提案されている(特許文献1参照)。また、脱気処理液の供給量の増加とともに高性能化を図るためには、チューブ長を長くするか、チューブの本数を増やす必要がある。しかし、チューブ長を長くすると圧力損失が増大するという問題がある。一方、チューブ本数を増やすと、チューブ端末を融着する際に融着不良が発生し、液漏れあるいは減圧チャンバー内の真空吸引に悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−28307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を鑑みて、本発明の目的は、複数本の熱溶融性フッ素樹脂製のチューブで構成される脱気ユニットが、減圧チャンバー内に配置された脱気装置において、処理能力が高く脱気ユニットの長さを短くすることが可能で、省スペースな脱気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱気装置は、複数本の熱溶融性フッ素樹脂製のチューブで構成される脱気ユニットが、減圧チャンバー内に配置された脱気装置であり、前記フッ素樹脂製のチューブは内径が0.5mm以下であり、(前記フッ素樹脂チューブ内径×有効チューブ本数)/(チューブ束外径)の比で求められる処理能力の係数が、6以上であることを特徴としている。
ここで、有効チューブ本数とは、内径が閉塞せずに、脱気チューブとして機能するチューブの本数のことである。また、チューブ束外径とは、チューブの束を、断面がハニカム構造になるように配列して束ねたときの束の外径のことである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱気装置は上記式で求められる処理能力の係数が6以上であるため、脱気処理効率が高く脱気ユニットの長さを短くすることが可能で、圧力損失が低く、脱気装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る脱気装置の断面平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る脱気ユニットの端末加工の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る脱気装置の断面平面図の一例である。この脱気装置100は、
図1に示すように、脱気ユニット110と、減圧チャンバー120とを備えている。脱気ユニット110は、熱溶融性フッ素樹脂製のチューブ111を複数本束ねて構成されており、チューブの端末部は、その断面がハニカム構造となるように束ねて融着されている。脱気装置外から流入した液体は、脱気ユニット内部を通過し、脱気装置外へ排出される。減圧チャンバー120と蓋材121はそれぞれ配置されて密着され、ボルト及びナット(2つとも図示していない)により締結されて一体化された構造になっている。
【0011】
本発明の脱気ユニット110のチューブ111は、耐圧に問題がない範囲で、できるだけ薄肉で成形した方が好ましく、チューブ内径は小さい方が好ましい。チューブを薄肉にした方が気体の透過が早く、チューブ内径が小さいことで、流体とチューブとの接触の機会が増えて脱気効率が高くなる。例えば内径0.5mm、外径0.6mmのものが使用される。
【0012】
本発明の脱気ユニット110のチューブ111は、熱溶融性フッ素樹脂で構成されている。熱溶融性フッ素樹脂で構成することにより樹脂に流動性があり、チューブ111の本数を150本より多くしても、チューブ束の端末を融着するときに、融着不良を大幅に減少させることができる。チューブ111に用いる材料は熱溶融性のフッ素樹脂であればよく、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などから成るチューブを用いればよい。脱気ユニット110のチューブに使用する材質は、流体と脱気する対象の気体に合わせて、任意に選ぶことができる。例えば、液体から溶存酸素または溶存窒素を脱気する場合には、酸素または窒素の透過率が高いPFAなどを用いることが好ましい。
【0013】
脱気ユニット110のチューブ111がハニカム構造となるように束ねたチューブ束の外周は、PFAで成る薄肉チューブ112で被覆されている。薄肉チューブ112で被覆することにより、チューブ111が接続部分で折れ曲がるのを防止するとともに、チューブ端末が破損することを防止することができる。なお、薄肉チューブの代わりに、薄肉テープや薄肉シートを用いても良い。脱気ユニット110は、チューブ両端部が減圧チャンバーの接続具にそれぞれ接続されている。
【0014】
減圧チャンバー120は、本体121と蓋材122とで構成されている。本体と蓋材の接合部分は、一方の接合面にはOリングなどのパッキング材が嵌め込まれる溝122aが形成されており、配置したOリングによって、本体121の接合面と蓋材122の接合面が密着したときの気密性を持たせることができる。減圧チャンバー本体121と蓋材122とを連結するボルト及びナットは、例えばステンレスなどの金属、もしくはポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂により構成することができる。
【0015】
減圧チャンバー120は、例えばポリプロピレンなどの樹脂により成形される。形状は、円筒形、矩形など脱気装置のスペースに合わせて任意の形状にすることができる。
【0016】
先述のフッ素樹脂製の脱気ユニットを用いた従来の脱気装置では、脱気ユニット110のチューブ111の材質にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが多かった。その理由は、PTFEが薬品に対して安定で、気体透過率が高いという特性を有する樹脂である為である。PTFEは、チューブ111を熱融着する際にも流動性がないため、熱によりチューブの形状が維持できずにチューブ内径が閉塞するという不具合がない反面、脱気ユニットのチューブ本数が多くなると融着不良が発生するという不具合があった。
【0017】
また、本発明の脱気装置の脱気ユニット112のチューブ111のように、チューブを熱溶融性樹脂で構成した場合、チューブ111の端末を融着する際に流動性があるため融着不良が発生しにくい。しかし、チューブ111の本数が多い場合はチューブ端末の温度を均一にそろえるのが難しいため、温度が上昇した部分ではチューブの形状を保てなくなりチューブ内径が閉塞する不良が発生するという不具合があり、チューブの本数は多くても150本程度に留まっていた。この不具合は、チューブ内径0.5mm以下の薄肉チューブの場合、とくに顕著で、通常の作り方では、半数以上が閉塞することもあり、実用できなかった。
【0018】
本発明の脱気装置の脱気ユニットでは、チューブ111の端末を融着するときの融着方法と、仕上げを工夫することにより、閉塞していない、有効なチューブの割合(開口率)を80%以上とすることが可能になり、(前記フッ素樹脂チューブ内径×有効チューブ本数)/(チューブ束外径)の比で求められる、処理能力の係数を6以上とすることが可能になった。
【0019】
具体的な製造方法について、
図2を用いて説明する。本発明の脱気装置の脱気ユニット110のチューブ111には、内径0.5mm、外径0.6mmのPFAで成るチューブを用い、その断面がハニカム構造となるように束ねた後、チューブ束の端末にPFA粉末を塗布し、チューブ束の外周をPFAで成る薄肉チューブ112で被覆した。そのチューブ束の先端側から加熱するとともに、チューブ111の外周に配置したPFAで成る薄肉チューブ112の外側からも加熱した。チューブ端末の加熱温度は370度であり、中心部は5℃高く設定した。これにより、チューブ端末からのチューブの融着ラインAまで長さを、3〜10mmとした。チューブ111は融着後に、余分なPFA粉末の付着部分や、変形して閉塞したチューブ先端部分を切除する仕上げを行う。このチューブ端末の切除工程において、通常はチューブ長手方向と直行する方向に、チューブ先端から3〜5mm程度切除する。これに対し、本発明の脱気装置の脱気ユニットにおいては、
図2の切除ラインBのように、チューブ111の束の角を10°〜30°の角度で切除する。この融着時の調整と、端末切除の形状により、チューブ開口率を86%〜100%とすることが可能になった。チューブ111の束の融着長さと切除角度は、チューブ束の本数(外径)により適宜設定する。例えば、チューブ束の外径が10mmの場合、融着長さ5mm以上、切除角度20°程度とすると良い結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の脱気装置は、脱気された液体を必要とする機器であれば、どのような機器にも適用可能である。例えば、半導体ウエハへのフォトレジスト等の塗布装置や現像装置、液晶製造装置に使用される液体の脱気装置として好適である。
【符号の説明】
【0021】
100:脱気装置、110:脱気ユニット、111:チューブ、112:PFA薄肉チューブ、120:減圧チャンバー、121:本体、122:蓋材、123:溝、A:融着ライン、B:切除ライン