(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-225961(P2017-225961A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】微細気泡発生ノズル
(51)【国際特許分類】
B01F 5/00 20060101AFI20171201BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20171201BHJP
B01F 5/06 20060101ALI20171201BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
B01F5/00 G
B01F3/04 F
B01F5/06
B05B1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-125918(P2016-125918)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 清
(72)【発明者】
【氏名】大槻 和行
【テーマコード(参考)】
4F033
4G035
【Fターム(参考)】
4F033BA02
4F033BA03
4F033KA02
4F033LA06
4F033NA01
4G035AA01
4G035AB15
4G035AB20
4G035AC23
4G035AC26
4G035AC44
(57)【要約】
【課題】マイクロレベルおよびナノレベルの微細気泡の発生割合を大幅に高めた微細気泡発生ノズルを提供する
【解決手段】液体Lが流入する流路11と、流路11内の液体Lを旋回させるとともに、旋回中の液体Lに乱流を生じさせる旋回乱流発生部40と、旋回した液体Lを噴射する噴射口31とを備えることを微細気泡発生ノズル1による。また、旋回乱流発生部40の旋回流路43は、段形状に形成されている。このような構成により、旋回中の液体Lに乱流が生じるので、大量の渦が発生する。このように、大量の渦を含む状態で旋回する液体Lを噴射することにより、マイクロレベルおよびナノレベルの微細気泡が大量に生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流路と、
前記流路内の液体を旋回させるとともに、旋回中の液体に乱流を生じさせる旋回乱流発生部と、
旋回した液体を噴射する噴射口と、
を備えることを特徴とする微細気泡発生ノズル。
【請求項2】
前記旋回乱流発生部は、流路の内部に配設される中子であって、その表面に旋回流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生ノズル。
【請求項3】
前記中子は、略円錐形状であって、その側面および底面に旋回流路が形成されており、頂部を上流側に向けて流路の内部に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の微細気泡発生ノズル。
【請求項4】
前記旋回流路の内面は段形状であることを特徴とする請求項2又は3に記載の微細気泡発生ノズル。
【請求項5】
前記噴射口には気泡切断部が連接してあり、この気泡切断部は、噴射口から噴射した液体が通過可能な孔を複数有することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の微細気泡発生ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回流方式により微細気泡を発生する微細気泡発生ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋回流方式の微細気泡発生ノズルの一例として、特許文献1に開示されたものがある。従来の微細気泡発生ノズルは、一端に液体を導入する導入口を有するとともに、他端に液体を導出する導出口を有する筒状のケーシング体内に、ケーシング体の周壁に開口した吸気口から気体を導入して液体と混合させる気液混合部と、気液混合体を旋回流となす旋回流形成部とを備えている。旋回流となった気液混合体は、放出される際に強い回転の影響で横にはじき飛ばされる力を受け、気体が渦の崩壊に伴ってねじりと引っ張りの作用を受けて分断される。このようにして分断化されることにより、微細気泡が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特 開 2 0 0 7 − 2 1 3 4 3号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の微細気泡発生ノズルでは、マイクロレベル(数十〜数百μm)およびナノレベル(1μm未満)の気泡の発生割合が低く、マイクロレベル以下の気泡が求められる産業分野に活用できない問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて創生されたものであり、マイクロレベルおよびナノレベルの微細気泡の発生割合を大幅に高めた微細気泡発生ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体が流入する流路と、前記流路内の液体を旋回させるとともに、旋回中の液体に乱流を生じさせる旋回乱流発生部と、旋回した液体を噴射する噴射口とを備える微細気泡発生ノズルによる。
【0007】
なお、前記旋回乱流発生部は、流路の内部に配設される中子であって、その表面に旋回流路が形成されているが好ましい。
【0008】
なお、前記中子は、略円錐形状であって、その側面および底面に旋回流路が形成されており、頂部を上流側に向けて流路の内部に配設されていることが好ましい。
【0009】
なお、前記旋回流路の内面は段形状であることが好ましい。
【0010】
なお、前記噴射口には気泡切断部が連接してあり、この気泡切断部は、噴射口から噴射した液体が通過可能な孔を複数有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロレベルおよびナノレベルの微細気泡を大量に発生可能な微細気泡生成ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの正面視の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの中子の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの中子の平面側からの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの中子の底面図である。
【
図5】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの中子の底面側からの斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態を示した微細気泡発生ノズルの中子を取り除いた状態を示す正面視の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1において、1は、微細気泡発生ノズルであり、流入口21から噴射口31へと連通する流路11が形成されたノズル本体10を有している。ノズル本体10は、流入管20と噴射管30とを接続して成る。
【0014】
前記流入管20は、両端に流入口21および接続口22を備えており、流入口21から接続口22へ向かうにしたがって内径が漸次細径となる流入室23が成形されている。
【0015】
前記噴射管30は、両端に接続口32および噴射口31を備えており、接続口32から噴射口31へ向かうにしたがって途中までは内径が漸次拡径となるとともに、途中からは内径が漸次細径となる旋回室33が形成されている。
【0016】
前記流路11は、流入管20の接続口21と、噴射管30の接続口31とを接続して、流入室23と旋回室33とを連通させることにより、流入口21から流入する液体Lを噴射口31から噴出するように構成されいている。流体Lは、酸素、オゾン等の気体を十分に溶解させた加圧溶解液である。また、ノズル本体10には、流路11に交差する吸気孔2が穿設されており、旋回室33に流入する前の液体Lに気体Gを混合するように構成されている。
【0017】
前記噴射管30の旋回室33の内部には、旋回乱流発生部として中子40が配設されている。中子40は、略円錐形状(具体的には栗形状)に成形されており、その側面41が旋回室33の内壁において漸次拡径になっている部分33aに沿うように形成されている。また、底面44は、旋回室33の内壁において漸次細径になっている部分33bに沿うように形成されている。このため、中子40は、頂部42を上流側へ向け、旋回室33の内部に嵌合させるように配設されている。
【0018】
図2および
図3に示すように、平面視において、中子40の側面41には、所定の旋回角度で時計回りに方向転換する上流側羽根部43dが突設されており、同様の上流側羽根部43aが等間隔に六本配置されている。そして、隣接する上流側羽根部43d間の隙間によって、上流側旋回流路43が形成されている。
【0019】
前記上流側旋回流路43は、底面43bと、内側側面43cと、外側側面43dとを備えており、中子40を旋回室33の内部に配設したとき、底面43bに対向する上流側旋回流路43の開口部分は、噴射管30の旋回室33の内壁33aによって閉ざされる。要するに、上流側旋回流路43の内面は、底面43b、内側側面43c、外側側面43dおよび旋回室33の内壁33aの四面によって構成されている。このため、上流側旋回流路43には、
図3の二点鎖線で示すように液体Lが流れ、上流側旋回流路43は、流入室23を通過して流れ込んだ液体Lに対し、旋回方向の速度成分を生じさせるように構成されている。
【0020】
また、上流側旋回流路43の内面のうち、底面43bおよび外側側面43dは、液体Lの流れる方向に対して段差を有するように、複数の段部を有する段形状に形成されており、ここを流れる液体Lに乱流を生じることによって渦流が生じるように構成されている。なお、上流側旋回流路の内側側面43cは、液体Lの旋回方向の内側に位置するので流量が少なく、渦流の発生に期待できないため、中子の加工効率に鑑みて段形状に形成していない。
【0021】
また、
図6に示すように、上流側旋回流路43の内面のうち、噴射管30の旋回室33の内壁33a(つまり上流側旋回流路43の上面)は、底面43bおよび外側側面43dと同様に、液体Lの流れる方向に対して段差を有するように、複数の段部を有する段形状に形成されている。
【0022】
また、
図3に示すように、上流側旋回流路43の入口Aおよび出口Bは、入口Aの溝深さが出口Bの溝深さよりも深く、かつ入口Aの開口面積が出口Bの開口面積より大きくなるように構成されている。
【0023】
図4および
図5に示すように、底面視において、前記中子40の底面44には、所定の旋回角度で時計回りに方向転換する下流側羽根部45a,45bが突設されている。下流側羽根部45aと下流側羽根部45bとでは、旋回角度が異なり、旋回角度の異なる下流側羽根部45a,45bが所定の間隔をおいて交互に六本配置されている。そして、隣接する下流側羽根部45aと下流側羽根部45bとの隙間によって、液体Lの流路としての下流側旋回流路45が形成されている。
【0024】
中子40を旋回室33の内部に配設したとき、前記下流側旋回流路45は、その底面44に対向する開口部分が旋回室33の内壁33bによって閉ざされるように構成されている。このため、下流側旋回流路45には、
図5の二点鎖線で示すように液体Lが流れ、下流側旋回流路45は、上流側旋回流路43を通過して流れ込んだ液体Lに対し、さらに旋回方向の速度成分を生じさせるように構成されている。
【0025】
また、中子40の底面44の中央部分には、窪み46が形成されており、この窪み46によって負圧を生じさせることにより、液体Lの旋回力を高めるように構成されている。このように、中子40の側面41に形成された上流側旋回流路43と、中子40の底面44に形成された下流側旋回流路45とによって、中子40の表面には旋回流路が構成されている。
【0026】
図1に示すように、前記噴射口には気泡切断部50が連接してある。この気泡切断部50は、両端開口の筒状であり、側面に複数の孔が穿設されている。噴射口31から噴射された液体Lは、気泡切断部50の筒内を通過するが、気泡切断部50の一端は蓋体51によって閉じられているため、液体Lは、気泡切断部50の側面に形成された孔を通過して外部に流出する。そして、蓋体51に穿設された吐出口52から噴射される。
【0027】
以上のように、構成された微細気泡発生のノズルの基本動作を説明する。
【0028】
流入口21から流入した液体Lは、流入室23を流れ、流入管20と噴射管30の接続部分付近で、吸気口2から空気Gが混合される。旋回室23に流入した液体Lは、上流側旋回流路43および下流側旋回流45へ流れ込むことにより旋回流となる。ここで、上流側旋回流路43の内面が段形状になっていることにより、乱流が生じる。このとき、大量の渦が発生する。しかも、上流側旋回流路43の断面積は、入口Aから出口Bにかけて徐々に小さくなるため、発生する渦のサイズは非常に小さくなる。このような構成により、小さな渦を大量に含んだ旋回流を生成することが可能になる。こうして、旋回流となった液体Lは、噴射口31から噴射される。このとき、放出される際に強い回転の影響で横にはじき飛ばされる力を受け、気体が渦の崩壊に伴ってねじりと引っ張りの作用を受けて分断される。分断化されることにより、微細気泡が生成される。さらに、噴射口31には、気泡切断部50が連接してあるため、微細気泡がさらに微細化される。このように、大量の渦を含む状態で旋回する液体Lを噴射することにより、マイクロレベルおよびナノレベルの微細気泡が大量に生成される。
【0029】
なお、前記上流側旋回流路43の内面は、段形状に限定されるものではなく、例えば、複数の窪み部を有するティンプル形状や、複数の突部を備える構成であってよい。このような構成であっても、上流側旋回流路43を流れる液体Lに乱流を生じさせて大量の渦流を発生させることは可能である。また、上流側旋回流路43の内面において、段形状に形成する面は、上記の実施形態に限定されるものではなく、四面のいずれかを段形状にすればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 微細気泡発生ノズル
10 ノズル本体
11 流路
21 流入口
31 噴射口
40 中子(旋回乱流発生部)
43 上流側旋回流路
45 下流側旋回流路
50 気泡切断部