【課題】造型現場での作業性の改善を効果的に図り得る鋳型の製造方法を提供する。また、成形型の設計を複雑にすることや鋳型形状を制限する必要なく、目的とする鋳型を有利に製造出来る方法の提供。
【解決手段】耐火性骨材の表面を水ガラスにて被覆して得られる乾態のコーテッドサンドを予め準備し、次いで、造型現場で、かかるコーテッドサンドに対して、水を添加して湿態化させた後、その得られた湿態化コーテッドサンド14を、成形型46に充填して、目的とする鋳型を造型する方法。
耐火性骨材の表面を水ガラスにて被覆して得られる乾態のコーテッドサンドを予め準備する工程と、かかるコーテッドサンドに対して、水を添加して湿態化させる工程と、その得られた湿態化コーテッドサンドを成形型に充填して、造型する工程とを有することを特徴とする鋳型の製造方法。
前記湿態化コーテッドサンドが、砂貯蔵用のホッパに収容され、次いで該砂貯蔵用ホッパからブローヘッドに供給された後、かかるブローヘッドから前記成形型に充填せしめられる請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型の製造方法。
前記ブローヘッド内および/または前記砂貯蔵用ホッパ内に水分を供給して、前記湿態化コーテッドサンドの乾燥を抑制乃至は阻止せしめる水分供給手段が、設けられている請求項9記載の鋳型の製造方法。
前記ブローヘッド内および/または前記砂貯蔵用ホッパ内に収容された前記湿態化コーテッドサンドが1質量%以下の水分率であるとき、かかる湿態化コーテッドサンドに対して、更に水を添加して湿らせた後、前記造型を行うことを特徴とする請求項9乃至請求項13の何れか1項に記載の鋳型の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、造型現場での作業性の改善を効果的に図り得る鋳型の製造方法を提供することに有り、また他の課題とするところは、成形型の設計を複雑にすることなく、また鋳型形状を制限する必要がなく、目的とする鋳型を有利に製造することの出来る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載及び添付図面から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0012】
(1) 耐火性骨材の表面を水ガラスにて被覆して得られる乾態のコーテッドサンドを予 め準備する工程と、かかるコーテッドサンドに対して、水を添加して湿態化させる 工程と、その得られた湿態化コーテッドサンドを成形型に充填して、造型する工程 とを有することを特徴とする鋳型の製造方法。
(2) 前記水が、前記乾態のコーテッドサンドの100質量部に対して、1〜5質量部 の割合において添加せしめられる前記態様(1)記載の鋳型の製造方法。
(3) 前記成形型が、40〜250℃の温度に加熱されている前記態様(1)または前 記態様(2)に記載の鋳型の製造方法。
(4) 前記成形型内に充填された前記湿態化コーテッドサンドが、マイクロ波にて加熱 せしめられる前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の鋳型の製造 方法。
(5) 前記湿態化コーテッドサンドを充填した前記成形型内に、加熱空気または乾燥空 気が通気される前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の鋳型の製 造方法。
(6) 前記湿態化コーテッドサンドを充填した前記成形型内が、減圧乾燥せしめられる 前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。
(7) 前記湿態化コーテッドサンドを充填した前記成形型内に、炭酸ガスが、更に通気 される前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。(8) 前記水ガラスにおけるSiO
2 /Na
2O のモル比が、1.9以上である前記態 様(1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。
(9) 前記湿態化コーテッドサンドが、砂貯蔵用のホッパに収容され、次いで該砂貯蔵 用ホッパからブローヘッドに供給された後、かかるブローヘッドから前記成形型に 充填せしめられる前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳型の 製造方法。
(10) 前記ブローヘッド内および/または前記砂貯蔵用ホッパ内に水分を供給して、 前記湿態化コーテッドサンドの乾燥を抑制乃至は阻止せしめる水分供給手段が、設 けられている前記態様(9)記載の鋳型の製造方法。
(11) 前記水分供給手段が、スチーム若しくはミスト発生装置を備えている前記態様 (10)記載の鋳型の製造方法。
(12) 前記ブローヘッドに、冷却手段が設けられている前記態様(9)乃至前記態様 (11)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。
(13) 前記ブローヘッドが、前記冷却手段によって40℃以下の温度に冷却されてい る前記態様(12)記載の鋳型の製造方法。
(14) 前記ブローヘッド内および/または前記砂貯蔵用ホッパ内に収容された前記湿 態化コーテッドサンドが1質量%以下の水分率であるとき、かかる湿態化コーテッ ドサンドに対して、更に水を添加して湿らせた後、前記造型を行うことを特徴とす る前記態様(9)乃至前記態様(13)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明にあっては、粘結剤として水ガラスを用いて、先ず、乾態のコーテッドサンドを準備しておき、そしてそれを造型の現場に持ち込む一方、造型の現場では、かかる乾態のコーテッドサンドを湿態化させるための水を準備するのみで、目的とする鋳型の造型が可能となるところから、作業環境の悪い造型現場において、粘稠な水ガラスを耐火性骨材に混練せしめる必要がなく、そのために、造型現場での作業性が著しく改善されることとなるのである。しかも、乾態のコーテッドサンドに、ミキサー内において、水を添加して湿潤化させても、ミキサー内に付着したり、造型に用いられる金型などの成形型に付着することが少なく、装置が汚れ難いことに加えて、造型現場において水ガラスを扱うことはないところから、そのような水ガラスにて、作業者が薬傷を受ける恐れも全くなくなったのである。
【0014】
また、本発明において、予め準備される乾態のコーテッドサンドは、水を添加しない限り、空気中の炭酸ガスにて経時変化することは殆どなく、貯蔵安定性に優れているところから、乾態のコーテッドサンドを予め大量に作製しておき、その一部を用いて、水を加えて、湿態化した後、目的とする鋳型の造型を行うことが出来る実用的な利点を有していると共に、そのような乾態のコーテッドサンドを湿態化したものは、従来の如く造型現場で作製される湿態のコーテッドサンドよりも、成形型への充填性が良好であり、しかも造型された鋳型の成形型からの離型性も向上するという格別な特徴を発揮するものである。
【0015】
さらに、かかる本発明に従う鋳型の製造方法によれば、造型現場において、湿態化されたコーテッドサンドを成形型に充填して、加熱等するだけで、水を蒸発せしめ、乾燥固化乃至は硬化させるものであるところから、乾態のコーテッドサンドをそのまま用いる場合の如く、水蒸気発生装置や水蒸気の通気機構等の特別な装置を新たに設置する必要は全くなく、また、成形型の設計を複雑にすることや鋳型形状を制限する必要がなく、これによって、装置コストの増大、ひいては鋳型の製造コストの上昇を回避することが出来ると共に、水蒸気の吹込み工程を追加する必要もないため、それによって、造型サイクルが長くなるようなことも、有利に回避することが出来ることとなったのである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ところで、本発明に従う鋳型の製造方法において、予め準備される乾態のコーテッドサンドは、一般に、耐火性骨材に対して、粘結剤として、水溶液の状態にある水ガラスを混合せしめ、そしてその混合物から水分を蒸発させることにより、換言すれば水溶液の状態にある水ガラスの水分を蒸発させることによって、製造され、粘結剤である水ガラスの固形分からなる乾燥した被覆層が、耐火性骨材の表面に形成されてなる、乾態のものであって、良好な常温流動性を有しているものである。特に、本発明にあっては、そのようなコーテッドサンドは、その水分率が0.1〜0.8質量%、好ましくは0.15〜0.75質量%、更に好ましくは0.2〜0.6質量%となるように調整されているものである。この水分率が0.1質量%よりも小さくなると、水ガラスがガラス化して、再び水を添加しても、溶液状に戻らなくなってしまい、一方0.8質量%よりも大きくなると、乾態にならないという問題が生じる。このように、上述の如きコーテッドサンドを用いることにより、その可使時間が長くなり、貯蔵安定性が有利に向上せしめられ得るところから、そのような乾態のコーテッドサンドを、工場において、予め大量に準備しておき、その一部を造型現場に運搬して、目的とする鋳型の造型に用いるようにすることが出来ることとなり、以て、造型作業の効率化にも大いに寄与せしめ得ることとなるのである。
【0018】
なお、上述の如きコーテッドサンドを構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来から鋳型用として用いられている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂をはじめ、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂または回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40〜130程度の粒度のものとして、好ましくは、60〜110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0019】
また、本発明において、乾態のコーテッドサンドを得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスは、可溶性のケイ酸化合物の水溶液であって、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等を挙げることが出来るが、特に、本発明にあっては、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が有利に用いられることとなる。なお、そのようなケイ酸ナトリウムは、通常、SiO
2 /Na
2O のモル比により、1号〜5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が2.0〜2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が2.4〜2.5であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が3.1〜3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が3.3〜3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO
2 /Na
2O のモル比が3.6〜3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号〜3号は、JIS−K−1408にても規定されている。そして、これらのケイ酸ナトリウムは、単独での使用の他、混合して用いられても良く、また混合することで、SiO
2 /Na
2O のモル比を調整することも可能である。
【0020】
そして、本発明において用いられる乾態のコーテッドサンドを有利に得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムは、SiO
2 /Na
2O のモル比が1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上であることが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号及び2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号及び2号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な乾態のコーテッドサンドを与えるものである。また、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO
2 /Na
2O のモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。ここで、SiO
2 /Na
2O のモル比が1.9よりも小さくなると、水ガラスの粘性が低くなり、水分量をかなり低くしなければ、乾態とすることが困難となるのであり、一方3.5よりも大きくなると、水への溶解度が低下して、接着面積が稼げず、鋳型強度が低下する問題を生じる。
【0021】
なお、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の、揮発する物質を除いた固形分(水ガラス成分)を不揮発分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するするものである。また、そのような不揮発分(固形分)の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度は、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの不揮発分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた割合に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた割合が、使用される水ガラスの不揮発分に相当することとなる。
【0022】
また、そのような水ガラス中の不揮発分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20〜45質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この不揮発分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめることによって、耐火性骨材との混合(混練)時に、かかる耐火性骨材に対して、ムラなく、均一に、水ガラス成分を被覆させることが出来、それによって、目的とする鋳型を、本発明に従って、有利に造型することが可能となる。なお、水ガラス中における水ガラス成分の濃度が低くなり過ぎて、不揮発分の合計量が20質量%未満となると、コーテッドサンドの乾燥のために、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりする必要があり、そのために、エネルギーロス等の問題が惹起されるようになる。また、水ガラス中における不揮発分の割合が高くなり過ぎると、耐火性骨材の表面を、水ガラス成分にて均一に被覆することが困難となり、目的とする鋳型の特性の向上にも問題を惹起するところから、かかる不揮発分は45質量%以下、従って水分量が55質量%以上の割合となるように、水溶液の形態にある水ガラスを調整することが望ましい。
【0023】
さらに、水ガラスは、耐火性骨材の100質量部に対して、不揮発分のみとして考えた場合の固形分換算で0.1〜2.5質量部の割合において用いられることが望ましく、中でも、0.2〜2.0質量部の割合が特に有利に採用されて、耐火性骨材の表面に、水ガラスの被覆層が形成されることとなる。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施される。即ち、アルミ箔製皿(縦:90mm、横:90mm、高さ:15mm)内に、試料10gを秤量して収容し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を、反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。次いで、かかる試料皿を、加熱板上から取り出して、デシケーター中で放冷した後、秤量を行って、次式により、固形分(質量%)が算出されるのである。
固形分(質量%)=[乾燥後の質量(g)/乾燥前の質量(g)]×100
なお、この水ガラスの使用量が少なくなり過ぎると、耐火性骨材の表面に、水ガラスの有効な被覆層が形成され難くなって、コーテッドサンドの固化乃至は硬化が充分に行われ難くなる問題を生じる。また、水ガラスの使用量が多くなり過ぎても、耐火性骨材の表面に、余分に、水ガラスが付着して、均一な被覆層が形成され難くなると共に、コーテッドサンドが相互に固着して団塊化(複合粒子化)する恐れもあり、そのために、鋳型物性に悪影響をもたらし、また金属を鋳込んだ後の中子の砂落としを難しくする問題も惹起するようになる。
【0024】
そして、本発明にあっては、上記した水ガラスを用いて、それによる被覆層を耐火性骨材の表面に形成してなる乾態のコーテッドサンドが、その対象とされるものであるが、そのような被覆層には、必要に応じて、公知の添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。なお、そのような添加剤を被覆層に含有せしめるには、水ガラスに、所定の添加剤を予め配合した後、耐火性骨材と混練または混合せしめる方法や、水ガラスとは別個に、所定の添加剤を、耐火性骨材に対して添加して、全体を均一に混練乃至は混合せしめる方法等が、採用される。
【0025】
そのような添加剤の一つとして、本発明においては、固形酸化物や塩が、有利に用いられることとなる。それら固形酸化物や塩の含有によって、コーテッドサンドの耐湿性が有利に向上せしめられ得るのである。なお、それらの中で、固形酸化物としては、例えば、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、鉛、ホウ素の酸化物の使用が有効である。特に、その中でも、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ホウ素の使用が望ましい。また、二酸化ケイ素の中では、沈殿ケイ酸、発熱性ケイ酸が好ましく用いられる。一方、塩としては、ケイフッ化塩、ケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、炭酸塩等があり、その中でも、炭酸亜鉛、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウムの使用が、望ましい。そして、これら固形酸化物や塩は、水ガラス中の不揮発分に対して、100質量%以下、好ましくは0.5〜5質量%程度の割合において、用いられるのである。
【0026】
また、その他の添加剤として、耐火性骨材と水ガラス(バインダー)との結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。また、コーテッドサンドの流動性の向上に寄与する滑剤の含有も有効であり、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も使用可能である。そして、これらその他の添加剤は、それぞれ、水ガラス中の不揮発成分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合において、含有せしめられる。
【0027】
ところで、本発明において、予め準備される乾態のコーテッドサンドを製造するに際しては、一般に、耐火性骨材に対して、粘結剤としての水ガラスを、必要応じて添加剤と共に、混練乃至は混合せしめて、均一に混和し、かかる耐火性骨材の表面を水ガラスにて被覆するようにすると共に、そのような水ガラスの水分を蒸散せしめることによって、常温流動性を有する乾態の粉末状コーテッドサンドを得る手法が、採用されることとなるが、その際における水ガラス(被覆層)の水分の蒸散は、水ガラスの固化乃至は硬化が進む前に迅速に行われる必要があり、そのために、本発明にあっては、耐火性骨材に対して、水溶液の形態にある水ガラスを投入(混合)してから、5分以内に、より好ましくは3分以内に、含有水分を飛ばして、乾態の粉末状コーテッドサンドとすることが望ましい。かかる蒸散の時間が長くなると、混和(混練)サイクルが長くなり、生産性が低下する他、水ガラスが空気中のCO
2 に触れる時間が長くなって、失活する等の問題を生じる恐れが高くなるからである。なお、このようにして得られる乾態の粉末状コーテッドサンドは、一般に、0.1〜0.8質量%、好ましくは0.15〜0.75質量%、より好ましくは0.2〜0.6質量%の水分率に調整されてなるものとして、得られることとなる。
【0028】
さらに、そのような乾態のコーテッドサンドの製造工程において、かかる水ガラス中の水分を迅速に蒸散せしめるための有効な手段の一つとして、耐火性骨材を予め加熱しておき、それに、水溶液の形態にある水ガラスを混練乃至は混合して、混和せしめるようにする手法が採用される。この予め加熱された耐火性骨材に、水ガラスを混練乃至は混合せしめるようにすることによって、水ガラス中の水分は、そのような耐火性骨材の熱にて、極めて迅速に蒸散せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られるコーテッドサンドの水分率を効果的に低下せしめ得て、常温流動性を有する乾態の粉体が、有利に得られることとなるのである。なお、この耐火性骨材の予熱温度としては、水ガラスの含有水分量やその配合量等に応じて、適宜に選定されることとなるが、一般に100〜150℃程度、好ましくは100〜120℃程度の温度に、耐火性骨材を加熱して行うことが望ましい。なお、この予熱温度が低くなり過ぎると、水分の蒸散を効果的に行うことが出来ず、乾燥に時間がかかるようになるところから、100℃以上の温度を採用することが望ましいのであり、また予熱温度が高くなり過ぎると、得られるコーテッドサンドの冷却時に、水ガラス成分の硬化が進み、加えて複合粒子化が進行するようになるところから、コーテッドサンドとしての機能、特に強度の如き物性に問題を生じるようになる。
【0029】
そして、本発明にあっては、上述の如くして得られた乾態のコーテッドサンドを用い、それを、鋳型の製造場所たる造型現場まで運搬した後、その造型現場において、水を添加して、湿態化させた後、その得られた湿態化コーテッドサンドを成形型に充填して、目的とする鋳型の造型を行うものであるが、そこにおいて、乾態のコーテッドサンドに水を加えて湿態化する工程は、単に、乾態のコーテッドサンドと所定量の水とを適当なミキサーに投入して、混合せしめることにより、コーテッドサンドを湿らせれば足りるものであるところから、極めて単純な作業にて実施され得て、作業環境の悪い造型現場においても、極めて簡単に且つ容易に行い得るのである。
【0030】
しかも、そのような乾態のコーテッドサンドの湿態化には、単に水のみの添加で済み、粘性のある水ガラスを耐火性骨材に混練せしめるものではないところから、作業性が極めて良好であって、その湿態化されたコーテッドサンドが、ミキサーや成形型等に付着し難いために、装置が汚れ難い特徴を発揮するものであると共に、造型現場においては、水ガラスを取り扱うことがないために、作業者が薬傷を受ける恐れもない等の利点も生じることとなるのである。
【0031】
なお、かかる乾態のコーテッドサンドの湿態化に際しては、鋳型の造型現場において、乾態のコーテッドサンドに対して、所定量の水を添加して、通常のミキサーにより混合せしめることによって、目的とする湿態化コーテッドサンドが形成されることとなるが、そこで用いられる水の量は、コーテッドサンドを構成する水ガラス成分の種類や使用量に応じて、適宜に決定されるところであり、一般に、コーテッドサンドの100質量部に対して、1〜5質量部の割合において、好ましくは1.5〜4質量部の割合において、より好ましくは2〜3質量部の割合において、適宜に決定されることとなる。なお、この水の添加量が少な過ぎると、乾態のコーテッドサンドの湿態化を充分に実現することが出来ず、そのために、コーテッドサンド間の相互の接着が弱くなることにより、またコーテッドサンドの流動性が悪化して、成形型への充填性が悪くなる結果、得られる鋳型の強度が低下する等の問題がある。一方、水の添加量が多くなり過ぎると、成形型への充填作業が困難となる問題に加えて、成形型への充填後の乾燥操作に時間を要し、造型時間が長くなってしまう等の問題を惹起する。そして、このようにして、乾態のコーテッドサンドに水を添加して得られる、湿潤化されたコーテッドサンドは、一般に、1質量%を超えるような水分率を有するものとなっているのである。
【0032】
そして、本発明にあっては、上述の如くして得られた乾態のコーテッドサンドの湿態化物を用いて、それを、所定の成形型、具体的にはその成形キャビティ内に充填して、かかる湿態化コーテッドサンドの乾燥を図ることにより、目的とする形状の鋳型が造型されることとなるのであるが、その際、用いられる湿態化コーテッドサンドは、水ガラスを直接に耐火性骨材に混練せしめて得られる湿態のコーテッドサンドよりも、流動性が良く、また砂同士の固着や粘着力が低下したものであるところから、充填性が効果的に向上せしめられ、更に成形型に対する付着も効果的に低減され得ることによって、成形型の汚れが有利に抑制され得、そして成形型からの鋳型の離型性も、有利に向上せしめられ得ることとなったのである。
【0033】
このように、成形型内に充填された湿態化コーテッドサンドを乾燥させて、固化乃至は硬化させることにより、目的とする鋳型の造型を行うに際しては、湿態化コーテッドサンドの乾燥を有利に図るべく、成形型を予め加熱しておくことが望ましく、本発明において推奨されるところである。この加熱された成形型を用いることにより、充填された湿態化コーテッドサンドの乾燥が、効果的に進行せしめられることによって、造型時間が有利に短縮せしめられ得るのである。なお、そのような成形型の加熱温度としては、一般に、40〜250℃、好ましくは70〜200℃、更に好ましくは100〜175℃の範囲内の温度が、採用されることとなる。この加熱温度が、40℃未満となると、加熱による乾燥促進効果を充分に発揮させ難く、造型時間が長くなる問題があり、また250℃よりも高くなると、成形型内に充填される湿態化コーテッドサンドの固化が早くなり過ぎ、その充填性が悪化することとなる他、湿態化コーテッドサンドが乾燥し過ぎて、粘着性がなくなり、接着効果が低くなって、得られる鋳型の強度が低下する等の問題も惹起されるようになる。
【0034】
また、成形型内に充填された湿態化コーテッドサンドの乾燥を促進せしめるべく、かかる充填された湿態化コーテッドサンドを、マイクロ波にて、加熱することも有効であり、特に成形型が樹脂型である場合において、好適に採用されるところである。更に、湿態化コーテッドサンドを充填した成形型内に、加熱空気または乾燥空気を通気せしめて、湿態化コーテッドサンドの充填層を通過させることによって、乾燥を促進し、より迅速に、充填された湿態化コーテッドサンドの固化乃至は硬化を図るようにすることも有効である。加えて、湿態化コーテッドサンドを充填した成形型を減圧吸引することにより、かかる成形型内を減圧乾燥させることも、有効な乾燥手段の一つであり、特に、樹脂型の如き熱影響を受けやすい材質の成形型においては、有利に採用されるところである。
【0035】
このように、成形型内に充填された湿態化コーテッドサンドから、その水分を除去せしめることにより、目的とする鋳型が造型されることとなるのであるが、その際、コーテッドサンドの表面の被覆層を構成する水ガラスは、通常、何等の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また硬化剤として、酸化物や塩等が加えられておれば、硬化することとなる。そして、そのような水ガラスの硬化のために、湿態化コーテッドサンドを充填した成形型内に、炭酸ガスを、更に通気せしめることも可能であり、これによって、従来と同様に、水ガラスを迅速に硬化せしめて、造型速度を有利に高めることが可能となる。
【0036】
ところで、本発明に従って、湿態化コーテッドサンドを成形型に充填して、造型する方式としては、公知のコーテッドサンドを用いた各種の造型手法が、適宜に採用され得るところであるが、特に、本発明にあっては、湿態化コーテッドサンドを砂貯蔵用のホッパに収容せしめ、次いでその砂貯蔵用ホッパからブローヘッドに供給した後、かかるブローヘッドから所定の成形型にブロー充填せしめて、乾燥固化乃至は硬化を行うようにしたブローモールディング手法が、好適に採用されるところであって、その代表的な実施の形態が、添付の図面に示されている。
【0037】
すなわち、
図1は、本発明に従う鋳型の製造方法の一例における、湿態化コーテッドサンドの成形型充填前の待機状態を示す造型装置の断面概略説明図である。そこにおいて、10は、外部から閉鎖された空間からなる造型室12が設けられた造型装置であって、成形型として金型を用いる場合において、有効な構造とされている。具体的には、造型装置10は、その天井壁上に載置された形態において、前述の如き湿態化コーテッドサンド14を収容したホッパ16が設けられている一方、かかる天井壁の下面には、二本のガイドレール18,18(ここでは一本のみ図示)が、互いに平行に配設されている。それらガイドレール18,18にて、図において左右方向に案内されて、移動せしめられる保持体20には、従来と同様な構造のブローヘッド22とガッシングボックス24とが、それぞれ着脱可能に取り付けられている。
【0038】
また、
図1に示される保持体20の待機状態においては、ホッパ16とブローヘッド22とが連通せしめられ得るように構成され、ホッパ16の下部に設けられた弁体26の開閉作動によって、ホッパ16内に収容された湿態化コーテッドサンド14が、ブローヘッド22内に導き入れられるようになっている。更に、ホッパ16とブローヘッド22との連通部内には、導入管28が挿入配置され、スチーム/ミスト発生装置30において発生せしめられたスチーム(水蒸気)または水のミストが、導入管28を通じて導入されて、ブローヘッド22内に収容された湿態化コーテッドサンド14が濡らされ、湿態砂の状態が維持されるようになっている。
【0039】
さらに、ブローヘッド22の下部は、ブロープレート32にて閉塞され、このブロープレート32内に形成された冷媒通路(図示せず)に対して、外部に配置された冷却装置34から供給される冷媒が流通せしめられるようになっている。これによって、かかるブロープレート32が冷却せしめられて、その加熱が阻止され、以てブローヘッド22内の湿態化コーテッドサンド(14)の加熱による乾燥(固化)の進行が、効果的に抑制乃至は阻止されるようになっている。なお、このような冷却構造の採用によって、ブローヘッド22は、一般に40℃以下、好ましくは5〜35℃程度に、更に好ましくは10〜30℃程度に冷却されるようになっている。そして、このブローヘッド22には、従来と同様な圧縮空気導入管(図示せず)が取り付けられており、この圧縮空気導入管を通じて導入された圧縮空気の作用によって、ブローヘッド22内の湿態化コーテッドサンド14が、ブロープレート32を貫通して設けられた複数のブローノズル36を通じて、後述する成形型内にブローイングされるようになっている。
【0040】
また、
図1に示される待機状態において、ブローヘッド22の下方には、スチーム/ミストボックス38が配置され、その内部に、スチーム/ミスト発生装置40が配設されていると共に、外装筒体42が上下方向に移動可能とされて、その上昇によって、ブローヘッド22のブロープレート32に近接配置せしめられることにより、ブローノズル36の周りを実質的に閉鎖した空間として、スチーム/ミスト発生装置40において発生せしめられたスチームまたは水のミストを、その閉鎖空間内に導入することによって、ブローノズル36内の湿態砂の乾燥を抑制乃至は阻止するようになっている。
【0041】
一方、
図1において、ガッシングボックス24の移動位置に対応する天井壁部位を貫通するように、上下動シリンダ44が配設されており、この上下動シリンダ44にブローヘッド22またはガッシングボックス24が着脱されて、上下動せしめられ得るようになっている。そして、ガッシングボックス24の下方に位置するように、成形型としての金型46が、上型46aと下型46bとから構成されて、金型取付けテーブル48上に配置されている。また、この金型取付けテーブル48は、テーブル移動シリンダ50によって、上下方向に移動せしめられ得るようになっていると共に、押出しピン52とピン移動シリンダ54とによって、金型46の成形キャビティ内で造型された鋳型が、下型46bから突き出されるようになっている。
【0042】
さらに、造型装置10の造型室12内には、熱風装置56が配設されており、外部から取り入れられる空気を加熱して、ガッシングボックス24に供給せしめ得るようになっている。そして、ガッシングボックス24では、熱風装置56から供給される熱風が、ガッシングプレート25を通じて、後述せるように、金型46内に吹き込まれるようになっているのである。
【0043】
そして、
図1に示される待機状態から、保持体20が、ガイドレール18にて案内されて、右方に移動せしめられ、ブローヘッド22が金型46の上方に位置せしめられた後、ブローヘッド22に対して、上下動シリンダ44のピストンロッドの先端部が連結される一方、保持体20によるブローヘッド22の保持が解除され、次いで、上下動シリンダ44の下降作動にて、ブローヘッド22のブローノズル36を金型46内に挿入して、セットしてなる
図2に示される状態において、従来と同様に、圧縮空気が、図示されていない圧縮空気供給管を通じて、ブローヘッド22内に導入されることによって、ブローヘッド22内の湿態化コーテッドサンド14が、ブローノズル36を通じて、金型46内に形成された成形キャビティ内にブローイング(砂の吹込み)されて、充填せしめられるようになっている。
【0044】
次いで、かかる湿態化コーテッドサンド14のブローイング(ブロー充填)が終了した後、ブローヘッド22は再び保持体20に保持されて、スチーム/ミストボックス38上に移動せしめられた後、ホッパ16から弁体26を介して、湿態化コーテッドサンド14が収容されて、
図3に示される如き、待機状態とされる。一方、湿態化コーテッドサンド14が充填されてなる金型46に対しては、ガッシングボックス24が保持体20から取り外されて、上下動シリンダ44のピストンロッド先端部に取り付けられて、かかる上下動シリンダ44の作動によって、下降せしめられ、
図3に示されるように、セットされた状態において、熱風装置56から供給される熱風をガッシングプレート25を通じて、金型46内に吹き込み、通気させる(ガッシングする)ことが行われる。これによって、金型46内に充填された湿態化コーテッドサンド14は乾燥せしめられ、固化させられることとなり、以て目的とする鋳型が造型されるのである。
【0045】
なお、かかる造型工程において、湿態化コーテッドサンド14を固化乃至は硬化させて得られる鋳型60は、
図4に示されるように、ガッシングボックス24を上下動シリンダ44にて上昇せしめて、保持体20に保持させる一方、テーブル移動シリンダ50とピン突出しシリンダ54の下降作動によって、金型46を構成する上型46aと下型46bとの型開きが行われると共に、鋳型60は、押出しピン52によって、下型46bから突き出されて、金型46外に取り出されることとなるのである。
【0046】
従って、このような造型装置10を用いた造型操作によれば、スチーム/ミスト発生装置30、40から供給されるスチームやミストによって、ブローヘッド22内に収容された湿態化コーテッドサンド14の乾燥固化が効果的に抑制乃至は阻止され得て、金型46内へのブローイングを有利に行い得ることとなるのであり、またブローヘッド22には、ブロープレート32が設けられて、冷却され、そこに収容された湿態化コーテッドサンド14が加熱されることが回避され得るようになっているところから、造型操作が繰り返し行われることによって受ける、金型46からの加熱作用の影響を、ブローヘッド22が受けるようなことがなく、この点においても、ブローヘッド22内に収容された湿態化コーテッドサンド14が加熱されることによって惹起される問題が、有利に回避され得るようになっているのである。しかも、金型46には、ガッシングボックス24のガッシングプレート25を通じて、熱風が吹き込まれることによって、金型46の成形キャビティ内に充填された湿態化コーテッドサンド14の乾燥固化が、迅速に行われ得ることとなるのである。また、そこでは、金型46を適当な加熱手段にて加熱することも、有利に採用され得て、それにより、湿態化コーテッドサンド14の乾燥固化に有利に寄与せしめることが出来るようになっている。
【0047】
ところで、本発明に従う鋳型の製造方法において用いられる成形型としては、上例の如き金型がよく用いられ得る他、樹脂型や木型等の公知の型を用いることも可能であり、
図5〜
図8には、そのような樹脂型や木型からなる成形型を用いた鋳型の一つの造型例が、示されている。
【0048】
具体的には、
図5には、樹脂型70を用いた造型例における、湿態化コーテッドサンド14のブローイング(砂充填)形態が示されており、それぞれ樹脂材質の上型70a及び下型70bからなる樹脂型70の上に、湿態化コーテッドサンド14が収容されたブローヘッド72とホッパ74とが載置固定されて、従来と同様なブローイング操作によって、湿態化コーテッドサンド14が、樹脂型70内に、ブロー充填せしめられるようになっている。なお、ブロープレート76には、前述した実施形態と同様に、冷却装置78から供給される冷媒の流通路(図示せず)が設けられており、これによって、ブロープレート76やブローヘッド72を冷却せしめて、その内部に収容された湿態化コーテッドサンド14の加熱が、抑制乃至は阻止され得るようになっている。また、ホッパ74内には、スチーム/ミスト発生装置80において発生せしめられたスチーム(水蒸気)または水のミストが、供給管81を通じて導入されて、そこに収容されている湿態化コーテッドサンド14が、乾燥しないようになっている。
【0049】
そして、
図5において湿態化コーテッドサンド14がブロー充填されてなる樹脂型70は、次いで、
図6に示されるように、真空吸引装置82内に配置されて、真空ポンプ84にて減圧吸引されることにより、樹脂型70内に充填された湿態化コーテッドサンド14を減圧乾燥せしめて、固化させ、目的とする鋳型が形成されるのである。
【0050】
また、
図5において湿態化コーテッドサンド14をブロー充填してなる樹脂型70は、
図7に示されるように、密閉されたガッシング装置86内において、減圧乾燥操作と炭酸ガス(CO
2 ガス)の通気処理を受けるようにして、硬化された鋳型が形成されるようにすることも可能である。そこでは、湿態化コーテッドサンド14がブロー充填されてなる樹脂型70は、固定シリンダ88にて固定せしめられてなる形態において、先ず、真空タンク90がガッシング装置86に連通されることにより、ガッシング装置86内が真空吸引されて、樹脂型70がその作用を受けて、減圧状態とされた後、ガッシング装置86に対して、炭酸ガスタンク92が連通せしめられて(このとき、真空タンク90は非連通状態とされる)、ガッシング装置86内に炭酸ガスが導入せしめられるようにされる。これによって、樹脂型70内にも炭酸ガスが入り込み、それによって、充填された湿態化コーテッドサンド14の乾燥・硬化が促進されることとなる。
【0051】
さらに、樹脂型70に充填された湿態化コーテッドサンド14を乾燥固化乃至は硬化させるべく、図示はしないが、マイクロ波を用いて、湿態化コーテッドサンド14を選択的に加熱するようにすることも有効である。このマイクロ波による加熱作用を利用することによって、厳密に気密化された処理空間(室)を準備する必要がない利点がある。
【0052】
そして、上述の如くして、樹脂型70内において、充填された湿態化コーテッドサンド14(充填物)が乾燥固化乃至は硬化せしめられて得られる、目的とする形状を有する鋳型94は、
図8に示されるように、樹脂型70(上型70a及び下型46b)が手動にて、または機械的に型開きされて、取り出されることとなるのである。
【0053】
このように、
図5乃至
図8に示される造型方式によれば、成形型としての樹脂型70自体を加熱することなく、充填された湿態化コーテッドサンド14の乾燥固化乃至は硬化を行うことが出来る特徴があり、そのために、樹脂型や木型等の加熱を避けることが望ましい材質の成形型を用いた造型において、好ましく採用されるものであると言うことが出来る。
【0054】
なお、上述の如く、湿態化コーテッドサンド14を砂貯蔵用ホッパ16,74に収容せしめ、次いでこの砂貯蔵用ホッパから、ブローヘッド22,72に供給した後、かかるブローヘッドから、成形型46,70に充填せしめる工程において、ブローヘッド22,72内及び/または砂貯蔵用ホッパ16,74内に湿態化コーテッドサンド14が長く収容されていたり、何らかの加熱作用を受けたりして、かかる湿態化コーテッドサンド14の水分率が1質量%以下となると、造型作業が困難となったり、得られる鋳型の強度などの物性が低下したりするようになるところから、そのような1質量%以下の水分率の湿態化コーテッドサンド14には、ブローヘッドや砂貯蔵用ホッパ内において、或いは、それらから取り出して、更に水を添加せしめて、充分に湿らせ、そして必要に応じて混練せしめた後、再び造型に供することが、有利に採用されることとなる。
【0055】
また、本発明に従って、乾態のコーテッドサンドを湿態化して、それを、所定の成形型により造型する方法としては、上記例示の造型方法が好適に採用されるところであるが、また、その他公知の各種造型方法を採用して、鋳型を製造することも可能で有り、更に本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において、実施され得るものであり、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【実施例】
【0056】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものでないことが理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されている。また、実施例や比較例で得られたコーテッドサンド(CS)の水分率や充填率、離型性の評価は、それぞれ、以下のようにして行った。
【0057】
−水分率(%)の測定−
空焼きして秤量したルツボに、各CSを10g秤量して収容し、900℃にて1時間曝熱した後の質量減少率(%)(=水分率)を、以下の式を用いて算出した。なお、秤量は、小数点以下第4位まで計測した。
水分率(%)=[(焼成前のルツボとCSの合計質量)
−(焼成後のルツボとCSの合計質量)]/焼成前のCSの質量×100
【0058】
−充填率(%)の測定−
各実施例または各比較例において造型して得られた、幅:2.54cm×高さ:2.54cm×長さ:20cmの大きさの鋳型を、それぞれ試験片として用いて、骨材の真比重に対する各試験片の比重(質量を試験片の体積で除して算出する)の割合を、百分率で算出する。
充填率(%)=[各試験片の質量(g)/体積(cm
3 )]
/骨材の真比重(g/cm
3 )×100
【0059】
−離型性の評価−
各CSを用いて、それぞれ成形型に充填し、鋳型の造型を行った後、その得られた鋳型を成形型から取り出した際に、成形型表面(成形キャビティ面)に付着物が存在しているかどうかを、目視にて観察し、下記の判定基準により評価した。
○:成形型表面に付着物が全くなく、鋳型を取り出すことが出来た。
△:成形型表面に付着物が認められるが、鋳型を取り出すことが出来た。
×:成形型表面に充填されたCSが張り付いて、鋳型を取り出す際に鋳型が崩れた。
【0060】
−乾態CSの製造例1−
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#80(商品名:花王クエーカー株式会社製)を準備すると共に、粘結剤である水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO
2 /Na
2O のモル比:2.5、固形分:41.3%)を準備した。
【0061】
次いで、約120℃の温度に加熱した上記のルナモス#80を、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入し、更に前記水ガラスを、ルナモス#80の100部に対して、1.82部(固形分:0.75部)の割合で添加して、3分間の混練を行い、水分を蒸発せしめる一方、砂粒塊が崩壊するまで攪拌混合を行った後に、取り出すことにより、常温で自由流動性のある乾態のコーテッドサンド(CS)1を得た。そして、この得られたCS1の水分率(%)を測定したところ、0.2%であった。
【0062】
−乾態CSの製造例2−
粘結剤である水ガラスの添加量を、ルナモス#80の100部に対して、4.12部(固形分:2.00部)としたこと以外は、上記の製造例1と同様の手順に従って、乾態のCS2を得た。この得られたCS2の水分率は、0.5%であった。
【0063】
−乾態CSの製造例3−
粘結剤である水ガラスとして、市販品:1号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO
2 /Na
2O のモル比:2.1、固形分:48.5%)を準備し、この水ガラスの添加量を、ルナモス#80の100部に対して、1.55部(固形分:0.75部)にしたこと以外は、上記の製造例1と同様の手順に従って、乾態のCS3を得た。このCS3の水分率は、0.2%であった。
【0064】
−乾態CSの製造例4−
粘結剤である水ガラスとして、市販品:3号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO
2 /Na
2O のモル比:3.2、固形分:38%)を準備し、この水ガラスの添加量を、ルナモス#80の100部に対して、1.97部(固形分:0.75部)にしたこと以外は、前記の製造例1と同様の手順に従って、乾態のCS4を得た。このCS4の水分率は、0.2%であった。
【0065】
−鋳型の製造例−
(実施例1)
上記の製造例1において得られた乾態のCS1を用い、それを、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入すると共に、更に水を、CS1の100部に対して、2部の割合で添加して、1分間の攪拌を行うことにより、かかる乾態のCS1を湿態化せしめた。次いで、この得られた湿態化CS1をブロータンクに収容して、125℃に加熱した成形型(金型)内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した。そして、その状態において90秒間保持することにより、充填されたCS1の乾燥固化を行って、造型された2.54cm×2.54cm×20cmのサイズの鋳型を、成形型より取り出し、それを試験片とした。
【0066】
(実施例2)
水の添加量を、CS1の100部に対して、3部とすること、及び湿態化CS1を充填した成形型の保持時間を105秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0067】
(実施例3)
水の添加量を、CS1の100部に対して、4部とすること、及び湿態化CS1の充填後の成形型の保持時間を120秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0068】
(実施例4)
成形型の加熱温度を75℃とし、成形型の保持時間を180秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0069】
(実施例5)
成形型の加熱温度を200℃とし、湿態化CS1の充填された成形型の保持時間を60秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0070】
(実施例6)
湿態化CS1を成形型に充填した後、60秒間保持すると共に、その保持の開始から40秒後に、0.03MPaのゲージ圧力のもとで、温度:150℃の加熱空気を20秒間通気させたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0071】
(実施例7)
乾態のCS1を、乾態のCS2に代えたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0072】
(実施例8)
乾態のCS1を、乾態のCS3に代えたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0073】
(実施例9)
乾態のCS1を、乾態のCS4に代えたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0074】
−湿態CSの製造例1−
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#80(商品名:花王クエーカー株式会社製)を準備すると共に、粘結剤である水ガラスとして、前記した市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製)を準備した。次いで、常温の状態にある上記のルナモス#80を、品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入せしめ、更に前記水ガラスを、ルナモス#80の100部に対して、1.82部(固形分:0.75部)を添加して、3分間の混練を行い、湿態のCS11を得た。この湿態のCS11の水分率(%)を測定したところ、1.1%であった。
【0075】
−湿態CSの製造例2−
粘結剤である水ガラスとして、前記した市販品:1号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製)を準備し、この水ガラスの添加量を、ルナモス#80の100部に対して、1.55部(固形分:0.75部)としたこと以外は、上記の湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS12を得た。この得られた湿態のCS12の水分率は、0.9%であった。
【0076】
−湿態CSの製造例3−
粘結剤である水ガラスとして、前記した市販品:3号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製)を準備し、この水ガラスの添加量を、ルナモス#80の100部に対して、1.97部(固形分:0.75部)としたこと以外は、上記の湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS13を得た。この得られた湿態のCS13の水分率は、1.2%であった。
【0077】
(比較例1)
上記で得られた、湿態のCS11を用い、これをブロータンクに入れて、125℃の温度に加熱した成形型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填せしめた。その後、かかる成形型を90秒間保持して、造型を行うことにより、2.54cm×2.54cm×20cmのサイズの鋳型を形成せしめた後、成形型より取り出し、これを試験片とした。
【0078】
(比較例2)
成形型の加熱温度を75℃とし、成形型の保持時間を180秒間としたこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0079】
(比較例3)
成形型の加熱温度を200℃とし、成形型の保持時間を60秒間としたこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0080】
(比較例4)
湿態のCS11を成形型に充填した後、60秒間保持すると共に、その保持の開始から40秒後に、0.03MPaのゲージ圧力のもとで、温度:150℃の加熱空気を20秒間通気させること以外は、比較例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0081】
(比較例5)
湿態のCS11をCS12に代えたこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0082】
(比較例6)
湿態のCS11をCS13に代えたこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作製した。
【0083】
−鋳型特性の評価−
上記の実施例1〜9及び比較例1〜6において得られた各種鋳型(試験片)について、前述した測定法乃至は評価法に従って、充填率の測定及び離型性の評価を行い、それらの結果を、下記表1及び表2に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
かかる表1及び表2の結果より明らかな如く、水分率が0.8%よりも高い湿態のCS11〜13を用いて得られた、比較例1〜6で造型された鋳型(試験片)にあっては、その離型性が悪いのに対して、水分率が0.8%以下とされた乾態のCS1〜4に、それぞれ水を添加して、湿態化させた後、造型して得られた実施例1〜9に係る各鋳型(試験片)は、良好な離型性を示していることが、認められる。
【0087】
また、実施例1〜9において得られた鋳型(試験片)は、湿態のCS11〜13を用いて得られた鋳型(試験片)と比較して、CS1〜CS4の充填率が向上していることが認められ、更に実施例5の如く、成形型の温度を200℃以上に加熱したり、或いは実施例6の如く、成形型内に加熱空気を通気させることにより、成形型の保持時間(乾燥固化時間)を短縮することが出来ると共に、良好な鋳型特性が実現され得ていることを、認めることが出来る。