温度調節媒体を溜めるタンク11と、タンク11から対象Aに温度調節媒体を供給するための供給配管12と、対象Aからタンク11に温度調節媒体を戻すための戻し配管13と、戻し配管13を流れる温度調節媒体の少なくとも一部を冷却するための冷却器15と、戻し配管13の途中に介在される三方弁18とを備える温度調節装置1において、三方弁18の開度を制御することにより、戻し配管13から冷却器15へ流れる温度調節媒体の量を調節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の金型温度調節装置では、媒体タンク内の温調媒体の冷却が開始されると、媒体タンクから金型へ向かう温調媒体の一部を熱交換器に送るので、金型へ向かう温調媒体が減少する。
【0006】
金型へ向かう温調媒体の量が変動すると、金型の温度が不安定になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、対象の温度を安定性よく調節することができる温度調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、温度調節媒体を溜めるタンクと、前記タンクから対象に前記温度調節媒体を供給するための供給配管と、前記対象から前記タンクに前記温度調節媒体を戻すための戻し配管と、前記戻し配管を流れる前記温度調節媒体の少なくとも一部を冷却するための冷却器であって、前記温度調節媒体が流れる媒体流路と、外部から供給される冷却水が流れる冷却水流路とを有する冷却器と、前記戻し配管の途中に介在される三方弁であって、前記戻し配管を流れる前記温度調節媒体の少なくとも一部を前記媒体流路に流すための三方弁と、前記三方弁に接続されるとともに、前記媒体流路の入口に接続される第1配管と、前記媒体流路の出口に接続されるとともに、前記三方弁と前記タンクとの間において前記戻し配管に接続される第2配管と、前記三方弁の開度を制御することにより、前記戻し配管から前記第1配管へ流れる前記温度調節媒体の量を調節する制御部とを備える、温度調節装置である。
【0009】
このような構成によれば、戻し配管の途中に介在される三方弁の開度を、制御部によって制御することで、戻し配管から第1配管へ流れる温度調節媒体の量を調節している。
【0010】
三方弁が戻し配管の途中に介在されているので、三方弁が作動しても、供給配管を流れる温度調節媒体の量は変動せず、タンクから対象に供給される温度調節媒体の量が変動しない。
【0011】
また、三方弁が作動することにより、対象からタンクに戻る温度調節媒体を冷却器で部分的に冷却して、対象からタンクに戻る温度調節媒体の温度を調節できる。
【0012】
これにより、タンクから対象に供給される温度調節媒体の量を変動させずに、タンク内の温度調節媒体の温度変化を抑制し、タンクから対象へ供給される温度調節媒体の温度を安定させることができる。
【0013】
その結果、対象の温度を安定性よく調節することができる。
[2]本発明は、前記供給配管は、前記タンクから前記対象に供給される前記温度調節媒体の温度を測定するための温度計を備え、前記制御部は、前記温度計が測定した温度に基づいて、前記三方弁の開度を制御する、上記[1]に記載の温度調節装置を含む。
【0014】
このような構成によれば、タンクから対象へ供給される温度調節媒体の温度に基づいて、対象からタンクに戻る温度調節媒体の冷却を制御できる。
【0015】
そのため、タンクから対象へ供給される温度調節媒体の温度を、より安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、対象の温度を安定性よく調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、温度調節装置1は、対象Aの温度を調節するための装置である。対象Aとしては、例えば、射出成形機や圧縮成形機などの金型や、押出成形機のロールや、混合機や反応釜などのジャケットなどが挙げられる。温度調節装置1は、対象Aに温度調節媒体を循環させるための温度調節回路2と、温度調節回路2の冷却器11A(後述)および冷却器15(後述)に冷却水を流すための冷却水回路3とを備える。
【0019】
温度調節回路2は、タンク11と、供給配管12と、戻し配管13と、バイパス配管14と、冷却器15と、ヒータユニット16と、制御部17とを備える。
【0020】
タンク11は、温度調節媒体を溜める。温度調節媒体としては、例えば、熱媒体油などの油や、工業用水などの水などを用いることができる。タンク11は、冷却器11Aを備える。冷却器11Aは、タンク11内に設けられている。冷却器11Aは、冷却器11Aの内部を流れる冷却水との熱交換により、タンク11内の温度調節媒体を冷却する。
【0021】
供給配管12は、タンク11から対象Aに温度調節媒体を供給するための配管である。供給配管12の一端は、タンク11の下端部に接続される。また、供給配管12の他端は、対象Aに接続される。供給配管12は、バルブV1と、ポンプ12Aと、温度計12Bとを備える。バルブV1は、供給配管12の他端に設けられる。バルブV1は、グローブバルブであり、手動で開閉される。ポンプ12Aは、タンク11とバルブV1との間に設けられる。温度計12Bは、ポンプ12AとバルブV1との間に設けられる。温度計12Bは、タンク11から対象Aに供給される温度調節媒体の温度を測定する。
【0022】
戻し配管13は、対象Aからタンク11に温度調節媒体を戻すための配管である。戻し配管13の一端は、対象Aに接続される。また、戻し配管13の他端は、タンク11の上端部に接続される。戻し配管13は、バルブV2を備える。バルブV2は、戻し配管13の一端に設けられる。バルブV2は、グローブバルブであり、手動で開閉される。
【0023】
バイパス配管14は、供給配管12と戻し配管13とをバイパスする配管である。バイパス配管14の一端は、温度計12BとバルブV1との間において、供給配管12に接続されている。バイパス配管14の他端は、バルブV2と三方弁18(後述)との間において、戻し配管13に接続されている。バイパス配管14は、バルブV3を備える。バルブV3は、手動で開閉される。
【0024】
冷却器15は、戻し配管13を流れる温度調節媒体の少なくとも一部を冷却する。冷却器15は、温度調節媒体が流れる媒体流路と、外部から冷却水回路3を介して供給される冷却水が流れる冷却水流路とを、内部に有する。冷却器15は、冷却水流路を流れる冷却水との熱交換により、間接的に媒体流路を流れる温度調節媒体を冷却する。冷却器15は、三方弁18、第1配管19および第2配管20により、バルブV2とタンク11との間において戻し配管13に接続されている。すなわち、温度調節回路2は、さらに、三方弁18と、第1配管19と、第2配管20とを備える。
【0025】
三方弁18は、戻し配管13の途中に介在される。三方弁18は、戻し配管13を流れる温度調節媒体の少なくとも一部を媒体流路に流す。三方弁18は、いわゆる、Lポートタイプの三方ボールバルブである。三方弁18は、制御部17によって制御され、自動で開閉する。
【0026】
詳しくは、
図2Aに示すように、三方弁18は、入口21A、第1の出口21B、第2の出口21Cを有するボディ21と、L字形状の流路22Aを有するボール22とを備える。なお、戻し配管13は、戻し配管13を流れる温度調節媒体の流れ方向において、三方弁18よりも上流側の部分13A(
図1参照)と、三方弁18よりも下流側の部分13B(
図1参照)とを備える。
【0027】
入口21Aは、上流側の部分13Aに接続される。第1の出口21Bは、下流側の部分13Bに接続される。第2の出口21Cは、第1配管19に接続される。なお、第1配管19は、三方弁18の第2の出口21Cに接続されるとともに、媒体流路の入口に接続される。また、第2配管20は、媒体流路の出口に接続されるとともに、三方弁18とタンク11との間において、戻し配管13の下流側の部分13Bに接続される。
【0028】
ボール22は、ボディ21内に収容されている。ボール22は、ボディ21に対して回転可能である。ボール22は、第1位置(
図2A参照)と、第2位置(
図2B参照)との間を回転可能である。
【0029】
ボール22が第1位置に配置されているときには、流路22Aは、入口21Aおよび第1の出口21Bと連通し、第2の出口21Cとは連通しない。言い換えると、ボール22が第1位置に配置されているときには、第1の出口21Bの開度は、100%であり、第2の出口21Cの開度は、0%である。これにより、ボール22が第1位置に配置されているときには、対象Aからタンク11に戻される温度調節媒体は、冷却器15を通らずに、上流側の部分13Aから下流側の部分13Bへ流れる。
【0030】
一方、ボール22が第2位置に配置されているときには、流路22Aは、入口21Aおよび第2の出口21Cと連通し、第1の出口21Bとは連通しない。言い換えると、ボール22が第2位置に配置されているときには、第2の出口21Cの開度は、100%であり、第1の出口21Bの開度は、0%である。これにより、ボール22が第2位置に配置されているときには、対象Aからタンク11に戻される温度調節媒体は、上流側の部分13Aから、第1配管19を介して冷却器15の媒体流路を通った後、第2配管20を介して下流側の部分13Bへ流れる。
【0031】
また、三方弁18は、
図2Cに示すように、ボール22を第1位置と第2位置との間で止めることにより、温度調節媒体の一部を冷却器15に流しつつ、残りの温度調節媒体を、冷却器15を通さないで上流側の部分13Aから下流側の部分13Bへ流すことができる。この場合、第1の出口21Bの開度と、第2の出口21Cの開度とを調節することにより、冷却器15へ向かう温度調節媒体の流量と、冷却器15を通らないで上流側の部分13Aから下流側の部分13Bへ流れる温度調節媒体の流量とを、調節できる。
【0032】
図1に示すように、ヒータユニット16は、タンク11と対象Aとの間において、供給配管12の途中に介在され、かつ、戻し配管13の途中に介在されている。詳しくは、ヒータユニット16は、タンク11とポンプ12Aとの間において、供給配管12の途中に介在されている。また、ヒータユニット16は、第2配管20とタンク11との間において、戻し配管13の途中に介在されている。ヒータユニット16は、複数(具体的には2つ)のヒータタンク16Aを備える。複数のヒータタンク16Aは、水平方向に並んでおり、互いに直列的に接続されている。複数のヒータタンク16Aには、それぞれ、温度調節媒体が貯留される。また、複数のヒータタンク16Aには、それぞれ、ヒータ16Bが設けられている。ヒータ16Bは、ヒータタンク16Aに貯留された温度調節媒体を加熱する。これにより、タンク11内の温度調節媒体を対象Aに供給するときに、ヒータ16Bで適温まで加熱してから供給することができる。また、ヒータユニット16は、戻し配管13の途中にも介在されているので、対象Aからタンク11へ戻す温度調節媒体を、一旦、ヒータユニット16に溜めて、部分的にタンク11に戻すことができる。
【0033】
制御部17は、温度計12Bと三方弁18とに電気的に接続されている。制御部17は、温度計12Bが測定した温度に基づいて、三方弁18の開度、より具体的には、第1の出口21Bの開度と、第2の出口21Cの開度とを制御する。すなわち、制御部17は、三方弁18の開度を制御することにより、戻し配管13から第1配管19へ流れる温度調節媒体の量を調節する。
【0034】
冷却水回路3は、冷却器11Aおよび冷却器15に冷却水を供給するための供給配管31と、冷却器11Aおよび冷却器15を通った冷却水を排出するための排出配管32とを備える。
【0035】
供給配管31は、一端が外部の水源に接続される。冷却水としては、例えば、工業用水などを用いることができる。供給配管31は、途中で分岐され、一方の配管31Aが冷却器11Aの入口に接続され、他方の配管31Bが冷却器15の冷却水流路の入口に接続される。
【0036】
排出配管32は、冷却器11Aの出口に接続される配管32Aと、冷却器15の冷却水流路の入口に接続される配管32Bとを備える。配管32Aと配管32Bとは、途中で合流している。排出配管32の出口は、開放されている。
【0037】
次いで、
図1および
図3を参照して、温度調節装置1の動作について説明する。
【0038】
温度調節装置1を用いて対象Aの温度を調節するには、温度調節装置1は、設定温度Tに基づいて温度調節された温度調節媒体を、対象Aに供給する。
【0039】
具体的には、対象Aが射出成形機の金型である場合、対象Aに樹脂が射出されたときに、対象Aの温度を調節する。タンク11内の温度調節媒体は、必要によりヒータユニット16で加熱されて、設定温度Tに調節される。
【0040】
このとき、バルブV1、V2は開かれ、バルブV3は閉じられる。なお、対象Aの温度調節を一旦停止する場合など、温度調節媒体を対象Aに供給しないときには、バルブV1、V2を閉じ、バルブV3を開いて、タンク11、ヒータユニット16、供給配管12、戻し配管13およびバイパス配管14で、温度調節媒体を循環させることもできる。また、温度調節装置1が作動している間、冷却器11Aおよび冷却器15には、供給配管31および排出配管32を介して、常に、冷却水が流れている。
【0041】
また、三方弁18のボール22は、第1位置(
図2A参照)に配置される。
【0042】
すると、対象Aから戻し配管13に排出された温度調節媒体は、冷却器15を通らないで、ヒータユニット16に戻る。すると、対象Aから戻し配管13に排出された温度調節媒体は、対象Aとの熱交換により加熱されているので、ヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が上昇する。なお、ヒータユニット16から溢れた温度調節媒体は、ヒータユニット16とタンク11との間の戻し配管13を通じてタンク11に戻され、タンク11内の冷却器11Aによって冷却される。
【0043】
そして、
図3に示すように、時点t0から時点t1の間においてヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が上昇し、温度計12Bで計測された温度T1が設定温度Tを超過すると、制御部17は、時点t1における温度T1と設定温度Tとの差に基づく比例制御により、三方弁18のボール22の位置を、第1位置と第2位置との間(
図2C参照)で調節する。
【0044】
これにより、制御部17は、第1の出口21Bの開度と、第2の出口21Cの開度とを調節し、冷却器15へ向かう温度調節媒体の流量と、冷却器15を通らないで上流側の部分13Aから下流側の部分13Bへ流れる温度調節媒体の流量とを、調節する。
【0045】
すると、対象Aからヒータユニット16へ戻される温度調節媒体が、部分的に冷却器15によって冷却され、ヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が、設定温度Tに近づくように調節される。
【0046】
このようにして、温度調節装置1は、設定温度Tに基づいて温度調節された温度調節媒体を対象Aに供給し、対象Aの温度を調節する。
【0047】
この温度調節装置1によれば、
図1に示すように、戻し配管13の途中に介在される三方弁18の開度を、制御部17によって制御することで、戻し配管13から第1配管19へ流れる温度調節媒体の量を調節している。
【0048】
三方弁18が戻し配管13の途中に介在されているので、三方弁18が作動しても、供給配管12を流れる温度調節媒体の量は変動せず、タンク11から対象Aに供給される温度調節媒体の量が変動しない。
【0049】
また、三方弁18が作動することにより、対象Aからタンク11に戻る温度調節媒体を冷却器15で部分的に冷却して、対象Aからタンク11に戻る温度調節媒体の温度を調節できる。
【0050】
これにより、タンク11から対象Aに供給される温度調節媒体の量を変動させずに、タンク11内の温度調節媒体の温度変化を抑制し、タンク11から対象Aへ供給される温度調節媒体の温度を安定させることができる。
【0051】
その結果、対象Aの温度を安定性よく調節することができる。
【0052】
ここで、
図1を参照して、三方弁18の代わりに、温度調節媒体の流量を調節しないで、温度調節媒体の流れを切り換える切替手段が設けられている場合を参考例として、本発明の温度調節装置1の作用について、より詳細に説明する。参考例の切替手段としては、具体的には、第1配管19の途中と、下流側の部分13Bの途中とに、それぞれ、開閉弁が設けられており、それらが切替手段を構成する場合が挙げられる。なお、参考例において、上記した温度調節装置1と同様の部材には同様の符号を用いて説明する。
【0053】
参考例では、第1配管19の途中の開閉弁が閉じ、下流側の部分13Bの途中の開閉弁が開いている場合、温度調節媒体は、冷却器15へ流れず、下流側の部分13Bへ向かって流れる。また、第1配管19の途中の開閉弁が開き、下流側の部分13Bの途中の開閉弁が閉じている場合、温度調節媒体は、下流側の部分13Bへ流れず、冷却器15へ流れる。
【0054】
参考例において、
図4に示すように、時点t0から時点t1の間においてヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が上昇した場合に、第1配管19の途中の開閉弁が開き、下流側の部分13Bの途中の開閉弁が閉じる。
【0055】
すると、対象Aからヒータユニット16へ戻される温度調節媒体の全てが冷却器15によって冷却され、ヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が、上記した温度調節装置1(
図3参照)と比べて、急激に低下する。
【0056】
そのため、参考例では、温度調節装置1と比べて、ヒータユニット16内の温度調節媒体の温度が安定しにくく、対象Aへ供給される温度調節媒体の温度が安定しにくい。
【0057】
言い換えると、温度調節装置1は、参考例と比べて、タンク11から対象Aへ供給される温度調節媒体の温度を安定性よく調節できる。
【0058】
また、この温度調節装置1によれば、
図1に示すように、制御部17は、温度計12Bが測定した温度に基づいて、三方弁18の開度を制御する。
【0059】
そのため、タンク11から対象Aへ供給される温度調節媒体の温度に基づいて、対象Aからタンク11に戻る温度調節媒体の冷却を制御できる。
【0060】
その結果、タンク11から対象Aへ供給される温度調節媒体の温度を、より安定させることができる。