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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226232(P2017-226232A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20171201BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   B60C9/18 G
   B60C9/18 K
   B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-121449(P2016-121449)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 賢太郎
(57)【要約】
【課題】本発明は、転がり抵抗を低減した重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の重荷重用空気入りタイヤは、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°〜30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備え、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との最短距離dを0.64mm以下としてなる。また、カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°〜30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、
前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、
前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との最短距離dを0.64mm以下としたことを特徴とする、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側にトレッドを備え、
前記トレッドの厚さは、20〜35mmである、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、
前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、
前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、
前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、
前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、
前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、
前記外側ベルト層の補強素子及び前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、
前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下であり、
前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びる、請求項3又は5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びる、請求項4又は5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1のベルト層の補強素子の径をr1、前記第2のベルト層の補強素子の径をr2とするとき、
d+r1+r2
が2.7mm以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラック・バス等の負荷荷重の大きい車両に用いられる重荷重用空気入りタイヤにおいては、耐久性の向上や高内圧充填時のタイヤ形状の保持の観点、及び径方向成長抑制による耐偏摩耗性の向上の観点等から、複数層のベルト層からなるベルトをカーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−189243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては環境問題への関心の高まりから、タイヤの低燃費性への要求が高まっており、複数層のベルト層を備える上記のような重荷重用空気入りタイヤにおいては、該ベルト層による重量増によって転がり抵抗が増大する場合があるため、エネルギーロスを抑制することにより、転がり抵抗を低減して燃費性を向上させることが希求されている。
【0005】
このような事情に鑑みて、本発明は、転がり抵抗を低減した重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°〜30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備え、
前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、
前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との最短距離dを0.64mm以下としたことを特徴とする。
この構成によれば、第1のベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子との間のゴムのエネルギーロスを低減してタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0007】
本明細書において、「傾斜角度」及び「最短距離」は、重荷重用空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態での傾斜角度及び最短距離をいうものとする。また、「最短距離」とは、図4に示すように、補強素子の表面間の最短距離をいうものとする。
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す。また、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいい、「最大負荷能力」とは、上記規格でタイヤに負荷されることが許容される最大の質量をいう。
【0008】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側にトレッドを備え、前記トレッドの厚さは、20〜35mmであることが好ましい。
上記の範囲のトレッドの厚さにすることによって、トレッドゴムのボリュームを抑えて、耐発熱性を向上させ、また、転がり抵抗をさらに低減しうる。
ここで、「トレッドの厚さ」は、上記基準状態において、タイヤ赤道面位置における、トレッドの表面からタイヤ内面までのタイヤ径方向の距離をいうものとする。ただし、タイヤ赤道面位置において溝が設けられている場合には、その溝がないとしたトレッド輪郭線を仮想し、タイヤ赤道面位置における、該トレッド輪郭線からタイヤ内面までのタイヤ径方向の距離をいうものとする。
【0009】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、外側ベルト層によりタイヤの耐久性等をより向上させつつも、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子との間のゴムのエネルギーロスを低減して、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、内側ベルト層によりタイヤの耐久性等を向上させつつも、第2のベルト層の補強素子と内側ベルト層の補強素子との間のゴムのエネルギーロスを低減して、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子及び前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下であり、前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、外側ベルト層及び内側ベルト層によりタイヤの耐久性等を向上させつつも、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子との間のゴムのエネルギーロス及び第2のベルト層と補強素子と内側ベルト層の補強素子との間のゴムのエネルギーロスを低減して、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びることが好ましい。
この構成によれば、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスを低減して、転がり抵抗の増大をより抑制することができる。
【0013】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びることが好ましい。
この構成によれば、第2のベルト層の補強素子と内側ベルト層の補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスを低減して、転がり抵抗の増大をより抑制することができる。
【0014】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記第1のベルト層の補強素子の径をr1、前記第2のベルト層の補強素子の径をr2とするとき、
d+r1+r2
が2.7mm以上であることが好ましい。
上記の範囲とすることにより、より一層転がり抵抗を低減させることができる。
【0015】
また、本発明の重荷重用空気入りタイヤにあっては、前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さいことが好ましい。
この構成によれば、より一層転がり抵抗を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転がり抵抗を低減した重荷重用空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる重荷重用空気入りタイヤのタイヤ幅方向部分断面図である。
図2図1に示す重荷重用空気入りタイヤのベルト構造を示す模式図である。
図3】(a)従来の一例の重荷重用空気入りタイヤのタイヤ幅方向概略部分断面図である。(b)本発明の一実施形態にかかる重荷重用空気入りタイヤのタイヤ幅方向概略部分断面図である。
図4】第1のベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子との距離について説明するための図である。
図5】タイヤの負荷転動時におけるベルト層の曲げ変形の中立軸について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる重荷重用空気入りタイヤ(以下、単にタイヤともいう)のタイヤ幅方向部分断面図である。図1は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の一方の半部のみを示しているが、他方の半部についても同様の構成である。なお、図1は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態におけるタイヤを示している。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部に埋設されたビードコア間をトロイダル状に跨るカーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側にベルト3及びトレッド4をこの順に備えている。
【0020】
図1に示す例では、カーカス2は1枚のカーカスプライから構成されているが、必要に応じて2枚以上のカーカスプライで構成することもできる。カーカス2のコードの材質は、特には限定しないが、例えばスチールコード等の金属繊維コード等を用いることができる。
なお、カーカス2は、一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部2aと、該カーカス本体部2aから延び、ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部2bと、からなる。タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、カーカス折り返し部2bのタイヤ径方向外側端2b1は、タイヤ最大幅位置Mよりタイヤ径方向内側に位置する。
【0021】
本実施形態では、ベルト3は、第1のベルト層3cと、該第1のベルト層3cのタイヤ径方向内側に位置する(この例では隣接して位置する)第2のベルト層3bとの2層からなる傾斜ベルト3bcと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側に位置する1層の外側ベルト層3dと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向内側に位置する1層の内側ベルト層3aと、の4層のベルト層3a〜3dからなる。なお、本実施形態では、ベルト層の層数を4層としているが、軽量化の観点からは、外側ベルト層3d及び内側ベルト層3aのうちの一方又は両方を設けずに、2層又は3層のベルト層からなる構成とすることもできる。また、タイヤの耐久性の観点からは、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側又は内側に位置するベルト層の層数を増やして5層以上のベルト層からなる構成とすることもできる。あるいは、第1のベルト層と第2のベルト層とのタイヤ径方向の間に、他のベルト層を備える構成とすることもできる。
【0022】
図2は、図1に示す重荷重用空気入りタイヤのベルト構造を示す模式図である。図2に示すように、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とは、層間で互いに交差するように、タイヤ周方向に対して5°〜30°の角度で傾斜して延びている。図2に示すように、本実施形態においては、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とが、タイヤ周方向に対して、層間で互いに交差するように反対向きに同角度で傾斜して延びている。しかし、本発明においては、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とは、タイヤ周方向に対して、層間で互いに交差するように反対向きに異なる角度で傾斜して延びていてもよい。また、本発明においては、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とは、タイヤ周方向に対して、層間で互いに交差するように同じ向きに(タイヤ周方向の一方側がタイヤ幅方向の同じ方向に傾斜するように)異なる角度で傾斜して延びていてもよい。なお、本実施形態では、補強素子はスチールコードであるが、他の材質のコードやフィラメントを用いることができる。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態のタイヤでは、外側ベルト層3dの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい。さらに、図2に示すように、本実施形態では、内側ベルト層3aの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい。
【0024】
また、図2に示すように、本実施形態のタイヤでは、外側ベルト層3dの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子とは、タイヤ周方向に対して互いに交差するように反対向きに同角度で傾斜して延びている。しかし、本発明においては、外側ベルト層3dの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子とは、タイヤ周方向に対して互いに交差するように反対向きに異なる角度で傾斜して延びていてもよい。また、本発明においては、外側ベルト層3dの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子とは、タイヤ周方向に対して互いに交差するように同じ向きに(タイヤ周方向の一方側がタイヤ幅方向の同じ方向に傾斜するように)異なる角度で傾斜して延びていてもよい。
【0025】
図3(a)は、従来の一例の重荷重用空気入りタイヤのタイヤ幅方向概略部分断面図であり、図3(b)は、本発明の一実施形態にかかる重荷重用空気入りタイヤのタイヤ幅方向概略部分断面図である。図4は、第1のベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子との距離について説明するための図である。
【0026】
従来、重荷重用空気入りタイヤにおいては、重荷重が負荷された状態で補強素子間の接触によるフレッティング摩耗が生じて補強素子の耐久性が低下する場合があるため、ベルト層間での補強素子間の最短距離は比較的大きく確保していた。図3(b)に図3(a)との対比で概略的に示すように、本実施形態のタイヤは、これに対し、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子との最短距離d(図4参照)を0.64mm以下としたことを特徴とする。
以下、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0027】
本実施形態のタイヤによれば、まず、ベルト3として4層のベルト層3a〜3dを備えているため、重荷重が負荷される場合においてもタイヤの耐久性を向上させ、高内圧充填時のタイヤ形状を保持することができ、さらに径方向成長を抑制して耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0028】
図5は、タイヤの負荷転動時におけるベルト層の曲げ変形の中立軸について説明するための図である。ここで、補強素子がタイヤ周方向に対して低角度、すなわち、5°〜30°の角度で傾斜して延びる、上述の傾斜ベルト3bcを備えるタイヤにおいては、負荷転動時におけるベルト層の曲げ変形の中立軸は、図5に示すように、該傾斜ベルト3bcを構成する2層のベルト層3c、3bの間に位置する。なお、ベルト3が傾斜ベルト3bcのみからなる(すなわち2層のベルト層3c、3bのみからなる)場合には、上記曲げ変形の中立軸は、該傾斜ベルト3bcを構成する2層のベルト層3c、3bの間に位置する。外側ベルト層3d及び内側ベルト層3aのいずれか一方又は両方を備える3層又は4層のベルト層からなる構成の場合は、上記曲げ変形の中立軸は、(外側ベルト層3dを有する場合に)外側ベルト層3dの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度と(内側ベルト層3aを有する場合に)内側ベルト層3aの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度とが、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい場合には、該傾斜ベルト3bcを構成する2層のベルト層3b、3cの間に位置する。また、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側又は内側のベルト層の層数が2層以上である場合も同様である。さらに、第1のベルト層3cと第2のベルト層3bとのタイヤ径方向の間にベルト層を有する場合においても、該ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度が、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい場合には、上記曲げ変形の中立軸は、第1のベルト層3cと第2のベルト層3bとの間に位置する。
【0029】
そして、本実施形態のタイヤによれば、上記最短距離dを0.64mm以下としたことにより、上記曲げ変形の中心軸と第1のベルト層3cの補強素子との距離と、上記曲げの中心軸と第2のベルト層3bの補強素子との距離と、の和を小さくすることができ、傾斜ベルト3bcの補強素子が受ける圧縮及び引張の力を低減し、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスを低減させて、転がり抵抗を低減させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態のタイヤによれば、傾斜ベルト3bcの補強素子が受ける圧縮及び引張の力が低減するため、補強素子の耐久性も向上させることができる。
【0031】
以上のように、本実施形態のタイヤによれば、4層のベルト層3a〜3dにより重荷重用空気入りタイヤの上記の諸性能を確保しつつも、傾斜ベルト3bcのゴムのエネルギーロスを低減して転がり抵抗を低減させることができ、その際に、補強素子の耐久性も確保することができる。
【0032】
ここで、傾斜ベルト3bcのゴムの歪エネルギーロスをさらに低減させて、転がり抵抗をさらに低減させる観点からは、上記最短距離dは、0.60mm以下とすることがさらに好ましい。一方で、補強素子間のフレッティング摩耗を抑制する観点からは、上記最短距離dは、0.50mm以上とすることが好ましい。
【0033】
ここで、本発明にあっては、本実施形態のように、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側にトレッド4を備え、トレッド4の厚さtは、20〜35mmであることが好ましい。図3(b)に図3(a)との対比で示すように、本実施形態のタイヤにおいては、ベルト層の層間での補強素子間の最短距離を小さくしているため、トレッド表面からタイヤ径方向最外側ベルト層3dまでのタイヤ径方向の距離、及び、タイヤ径方向最内側ベルト層3aからカーカス2までのタイヤ径方向の距離を一定に保ちつつも、トレッド4の厚さtを薄くすることができる。そして、上記の範囲のトレッド4の厚さtにすることによって、トレッドゴムのボリュームを抑えて、耐発熱性を向上させ、また、転がり抵抗をさらに低減しうる。なお、図1には、図示の範囲で3つの溝がトレッド4に設けられているが、本発明においては、トレッドパターンは特に限定されない。
【0034】
また、本発明にあっては、傾斜ベルト3bのタイヤ径方向外側に、外側ベルト層3dを備える場合に、第1のベルト層3cの補強素子と外側ベルト層3dの補強素子との最短距離daは、0.6mm以下であることが好ましい。外側ベルト層3dの補強素子と上記曲げの中立軸との距離を小さくして、外側ベルト層3dの補強素子と第1のベルト層3cの補強素子との間のゴムのエネルギーロスを低減して、より一層転がり抵抗を低減させることができるからである。ここで、外側ベルト層3dの補強素子と第1のベルト層3cの補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスをさらに低減させて、転がり抵抗をさらに低減させる観点からは、上記最短距離daは、0.70mm以下とすることがより好ましく、0.60mm以下とすることがさらに好ましい。一方で、補強素子間のフレッティング摩耗を抑制する観点からは、上記最短距離daは、0.50mm以上とすることが好ましい。
【0035】
また、本発明にあっては、傾斜ベルト3bのタイヤ径方向内側に、内側ベルト層3aを備える場合に、第2のベルト層3bの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子との最短距離dbは、0.6mm以下であることが好ましい。内側ベルト層3aの補強素子と上記曲げの中立軸との距離を小さくして、内側ベルト層3aの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とのゴムのエネルギーロスを低減して、より一層転がり抵抗を低減させることができるからである。ここで、内側ベルト層3aの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスを低減させて、転がり抵抗を低減させる観点からは、上記最短距離dbは、0.70mm以下とすることがより好ましく、0.60mm以下とすることがさらに好ましい。一方で、補強素子間のフレッティング摩耗を抑制する観点からは、上記最短距離dbは、0.50mm以上とすることが好ましい。
【0036】
同様の理由により、本発明にあっては、傾斜ベルト3bのタイヤ径方向外側及び内側のそれぞれに、外側ベルト層3dと内側ベルト層3aとを備える場合には、上記最短距離daを0.70mm以下とし、且つ、上記最短距離dbを0.70mm以下とすることが好ましく、上記最短距離daを0.60mm以下とし、且つ、上記最短距離dbを0.60mm以下とすることがより好ましい。一方で、各補強素子間のフレッティング摩耗を抑制する観点からは、上記最短距離daを0.50mm以上とし、且つ、上記最短距離dbを0.50mm以上とすることが好ましい。
【0037】
また、本発明では、外側ベルト層3dの補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びることが好ましい。外側ベルト層3dのタイヤ周方向に対する剛性を適度に低下させて、第1のベルト層3cの補強素子と外側ベルト層3dの補強素子との間のゴムのせん断変形を抑制して、さらに転がり抵抗を低減させることができるからである。同様の理由により、外側ベルト層3dの補強素子は、タイヤ周方向に対して、60°〜90°の角度で傾斜して延びることがより好ましい。
【0038】
また、本発明では、内側ベルト層3aの補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°〜90°の角度で傾斜して延びることが好ましい。内側ベルト層3aのタイヤ周方向に対する剛性を適度に低下させて、第2のベルト層3bの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子との間のゴムのせん断変形を抑制して、さらに転がり抵抗を低減させることができるからである。同様の理由により、内側ベルト層3aの補強素子は、タイヤ周方向に対して、60°〜90°の角度で傾斜して延びることがより好ましい。
【0039】
また、本発明では、第1のベルト層3cの補強素子の径(直径)をr1、第2のベルト層3bの補強素子の径(直径)をr2とするとき、
d+r1+r2
が2.7mm以上であることが好ましい。
補強素子の径r1、r2をある程度大きくすることにより、より確実に曲げ変形を第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層の補強素子との間のゴムに負担させることができ、上記最短距離dを0.64mm以下とした効果を得られやすくして、転がり抵抗をより一層低減することができるからである。
従って、補強素子の径r1、r2は、0.8〜1.3mmとすることが好ましい。
【0040】
また、本発明では、第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層3cの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さいことが好ましい。
これにより、曲げの中立軸を、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子との間で、タイヤ径方向内側に若干移動させ、相対的にエネルギーロスの大きい圧縮側のゴムの変形を引張側より相対的に小さくして、転がり抵抗をさらに低減させることができるからである。
【0041】
ここで、本発明では、図1に示すように、第1のベルト層3cのタイヤ幅方向外側端と第2のベルト層3bのタイヤ幅方向外側端との最短距離Dを15mm以上とすることが好ましい。ベルト端セパレーションを抑制することができるからである。
【0042】
本発明では、図1に示すように、第1のベルト補強層3cのタイヤ幅方向の幅及び第2のベルト補強層3bのタイヤ幅方向の幅は、外側ベルト層3dのタイヤ幅方向の幅及び内側ベルト層3aのタイヤ幅方向の幅より大きいことが好ましい。外側ベルト層3dは、外傷保護の役割を果たすものであり、張力の大きいセンター領域を保護すれば十分であり、一方で、ベルト層間の引張を低減して転がり抵抗を低減することができるからである。また、偏摩耗性とベルト耐久性との両立の観点から、第2のベルト補強層3bのタイヤ幅方向の幅を最大とすることが好ましい。さらに、外側ベルト層3dのタイヤ幅方向の幅は、第2のベルト補強層3bのタイヤ幅方向の幅の40〜60%程度とすることが好ましい。突起入力に対する耐久性を向上させるためである。一方で、本発明においては、各ベルト層のタイヤ幅方向の幅の大小は、図1の実施形態の例には限定されない。
【0043】
ここで、図4では、説明の便宜のため、隣接する層間の補強素子が等しい間隔で、かつ、位相を揃えて配置された例を示しているが、本発明においては、各層で補強素子の打ち込み数を変更してもよく、また、位相をずらして配置しても良い。
【0044】
また、本発明において、タイヤの偏平率は、50〜90%とすることが好ましい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を確かめるため、タイヤサイズ315/70R22.5の発明例1〜9及び比較例にかかるタイヤを試作して、転がり抵抗、耐偏摩耗性、及び補強素子の耐久性に関する試験を行った。発明例1〜7及び比較例にかかるタイヤは、図1に示すようなタイヤ構造を有しており、表1に示すように、上記最短距離d、da、db、及び上記距離d+r1+r2が異なっている。なお、表1に示さない諸元については、各タイヤで共通している。以下、上記試験の評価方法について説明する。表1において、「傾斜角度」とは、タイヤ周方向に対する傾斜角度をいう。また、補強素子としてはスチールコードを用いた。
【0047】
<転がり抵抗>
国際標準規格ISO28580に準拠したフォース法により転がり抵抗を測定した。表1においては、比較例の評価結果を100とした指数で相対的に示しており、数値が小さい方が転がり抵抗が小さく、性能に優れていることを示している。
<耐偏摩耗性>
上記各タイヤをサイズ9.00×22.5のリムに装着し、900kPaの内圧を充填し、室内ドラム試験機に取り付けて、荷重39.2kNを負荷し、速度80km/hで距離10000kmを走行させた。そして、走行後の各タイヤのトレッドのショルダー部分での偏摩耗量を測定した。表1において、耐偏摩耗性は、トレッド踏面側からの摩耗深さ(mm)と偏摩耗のタイヤ幅方向の長さとを乗じて2で除して得られた値の逆数をとり、比較例の評価結果を100とした指数で相対的に示しており、数値が大きい方が、耐偏摩耗性が良いことを示している。
<補強素子の耐久性>
上記各タイヤをサイズ9.00×22.5のリムに装着し、900kPaの内圧を充填し、室内ドラム試験機に取り付けて、荷重39.2kNを負荷し、速度80km/hで距離10000kmを走行させた。そして、タイヤからベルトを切り出してコードの削れ量を測定した。
表1においては、比較例の評価結果を100とした指数で相対的に示しており、数値が大きい方が補強素子の耐久性が高いことを示している。
以下、表1に各タイヤの諸元とともに評価結果を示している。
【0048】
【表1】
【0049】
表2に示すように、発明例1〜7は、比較例と比較して、いずれも耐偏摩耗性及び補強素子の耐久性を確保しつつも、転がり抵抗を低減することができていることがわかる。また、発明例2〜7は、発明例1よりもさらに転がり抵抗を低減することができていることがわかる。
【符号の説明】
【0050】
1:重荷重用空気入りタイヤ 2:カーカス 2a:カーカス本体部
2b:カーカス折り返し部 2b1:タイヤ径方向外側端 3:ベルト
3a:内側ベルト層 3b:第2のベルト層 3c:第1のベルト層
3d:外側ベルト層 4:トレッド CL:タイヤ赤道面 M タイヤ最大幅位置
図1
図2
図3
図4
図5