特開2017-226244(P2017-226244A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000003
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000004
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000005
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000006
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000007
  • 特開2017226244-車両用フロントスポイラー装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226244(P2017-226244A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】車両用フロントスポイラー装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   B62D37/02 A
   B62D37/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-121838(P2016-121838)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀 健二
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 規子
(57)【要約】
【課題】エンジンコンパートメントにおける占有スペースが小さい車両用フロントスポイラー装置を提供する。
【解決手段】車両用フロントスポイラー装置1は、エンジンコンパートメント2の下部を覆うアンダーカバーとしての機能を有する固定スポイラー10と、固定スポイラー10に設けられる格納部13に格納される格納位置と、格納部13から展開された展開位置との間で変位する可動スポイラー20と、可動スポイラー20を格納位置と展開位置との間で変位させるアクチュエータとを備えることを要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンコンパートメントの下部を覆うアンダーカバーとしての機能を有する固定スポイラーと、
前記固定スポイラーに設けられる格納部に格納される格納位置と、前記格納部から展開された展開位置との間で変位する可動スポイラーと、
前記エンジンコンパートメントに設けられて、前記可動スポイラーを前記格納位置と前記展開位置との間で変位させるアクチュエータとを備える車両用フロントスポイラー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用フロントスポイラー装置において、
前記固定スポイラーは、前記可動スポイラーが前記格納位置にあるとき、車両前面視において前記可動スポイラーとオーバーラップする第1スポイラー部と、当該第1スポイラー部の後方に連続するアンダーカバー部とを有し、
前記可動スポイラーは、第2スポイラー部と、当該第2スポイラー部の後方に連続する支持部とを有し、
前記格納部は、下方に向かって開放されて前記第2スポイラー部が格納される部位であって、
前記格納部と前記エンジンコンパートメントとを繋ぎ、前記支持部が挿通される開口部を有し、
前記可動スポイラーは、前記支持部を介して前記アクチュエータに接続される車両用フロントスポイラー装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用フロントスポイラー装置において、
前記可動スポイラーと連動し、前記可動スポイラーが前記格納位置から前記展開位置へ変位するのに伴い、車両前面視においてフロントタイヤに対してオーバーラップするように変位するスパッツを備える車両用フロントスポイラー装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の車両用フロントスポイラー装置において、
前記アクチュエータと前記可動スポイラーとの間に介在されるリンク機構を備える車両用フロントスポイラー装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用フロントスポイラー装置において、
前記リンク機構は、前記アクチュエータが駆動により回転する出力軸に固定されるクランクを有し、
前記クランクは、前記可動スポイラーが前記格納位置又は前記展開位置又はこれらの位置の両方に位置するとき、重力方向に延びるように位置する車両用フロントスポイラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロントスポイラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車速に応じて可動式のスポイラーを変位させて車両の挙動を安定させる車両用フロントスポイラー装置が周知である。
特許文献1の車両用フロントスポイラー装置に採用される可動式のスポイラーは、車両のエンジンコンパートメントの下部を覆うアンダーカバーとしての機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−103775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用フロントスポイラー装置に採用される可動式のスポイラーは、アンダーカバーとしての機能を有しているため、スポイラーとアンダーカバーとが別体であるものと比較して重い。このため、可動式のスポイラーを変位させるためのアクチュエータを大型にする必要があり、エンジンコンパートメントにおける占有スペースが大きかった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンコンパートメントにおける占有スペースが小さい車両用フロントスポイラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、車両用フロントスポイラー装置は、エンジンコンパートメントの下部を覆うアンダーカバーとしての機能を有する固定スポイラーと、前記固定スポイラーに設けられる格納部に格納される格納位置と、前記格納部から展開された展開位置との間で変位する可動スポイラーと、前記可動スポイラーを前記格納位置と前記展開位置との間で変位させるアクチュエータとを備えることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、アクチュエータの駆動により変位するのはアンダーカバーとしての機能を有しない可動スポイラーのみである。このため、従来と比較して、可動させる部分の重量が軽いので、アクチュエータが小型化される。これにより、エンジンコンパートメントにおける占有スペースが小さくなり、他の車両構成要素の配置自由度が高まる。さらに、可動スポイラーと固定スポイラーとの協働により、より大きな空力効果が得られる。これにより、走行中における車両の挙動がより安定する。
【0008】
上記構成において、前記固定スポイラーは、前記可動スポイラーが前記格納位置にあるとき、車両前面視において前記可動スポイラーとオーバーラップする第1スポイラー部と、当該第1スポイラー部の後方に連続するアンダーカバー部とを有し、前記可動スポイラーは、第2スポイラー部と、当該第2スポイラー部の後方に連続する支持部とを有し、前記格納部は、下方に向かって開放されて前記第2スポイラー部が格納される部位であって、前記格納部と前記エンジンコンパートメントとを繋ぐ開口部を有し、前記可動スポイラーは、前記支持部を介して前記アクチュエータに接続されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、開口部は、第1スポイラー部の後方に位置し、車両前面視において、第1スポイラー部とオーバーラップする位置関係であるため、車両の走行時において、開口部を通じてエンジンコンパートメントに異物が進入しにくい。
【0010】
上記構成において、前記可動スポイラーと連動し、前記可動スポイラーが前記格納位置から前記展開位置へ変位するのに伴い、車両前面視においてフロントタイヤに対してオーバーラップするように変位するスパッツを備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、可動スポイラー及びスパッツの協働により空力効果が高められて走行中における車両の挙動が安定する。また、可動スポイラーの変位及びスパッツの変位にアクチュエータを共用できるので、その分、構成が少なくなる。
【0012】
上記構成において、前記アクチュエータと前記可動スポイラーとの間に介在されるリンク機構を備えることが好ましい。
リンク機構により、小さな駆動力で大きな変位が得られるので、より小型のアクチュエータを採用することができる。
【0013】
上記構成において、前記リンク機構は、前記アクチュエータが駆動により回転する出力軸に固定されるクランクを有し、前記クランクは、前記可動スポイラーが前記格納位置又は前記展開位置又はこれらの位置の両方に位置するとき、重力方向に延びるように位置することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、クランクが重力方向に延びていれば、クランクから出力軸に対し可動スポイラーやリンク機構の重量に伴う回転力が入力されない。したがって、アクチュエータを駆動させることなくクランクの位置が維持されるので、その分、アクチュエータにおいて消費されるエネルギーが小さい。また、別途、クランクの位置や、可動スポイラーの位置を維持するための構成を追加する必要もない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用フロントスポイラー装置は、エンジンコンパートメントにおける占有スペースが小さいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両用フロントスポイラー装置の分解斜視図。
図2】固定スポイラーを除く車両用フロントスポイラー装置の斜視図。
図3】可動スポイラーが格納位置にあるときの車両用フロントスポイラー装置の側面図。
図4】可動スポイラーが展開位置にあるときの車両用フロントスポイラー装置の側面図。
図5】可動スポイラーが格納位置にあるときの車両前面視図。
図6】可動スポイラーが展開位置にあるときの車両前面視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、車両用フロントスポイラー装置の一実施形態について図面に従って説明する。
車両用フロントスポイラー装置1(以下、スポイラー装置1)は、固定スポイラー10と、可動スポイラー20と、駆動部30とを備える。
【0018】
図1図3、及び図4に示すように、固定スポイラー10は、車両幅方向に延びる第1スポイラー部11と、当該第1スポイラー部11の後縁部全体から車両後方に向かって延びて、エンジンコンパートメント2の下部を覆うアンダーカバー部12とを備える。なお、車両が前進する方向(図3及び図4中の左方向)が車両前方に、車両が後進する方向(図3及び図4中の右方向)が車両後方に、それぞれ相当する。
【0019】
より詳述すると、図3及び図4に示すように、アンダーカバー部12は、車両前方に向かうにつれて徐々に上昇するように傾斜する第1板状部12aと、第1板状部12aの前縁部から上方に向かって延びる第2板状部12bと、第2板状部12bの上縁部から前方に向かって延びる第3板状部12cとを有する。
【0020】
第1スポイラー部11は、第3板状部12cの前縁部から下方に向かうに連れて徐々に前方に向かうように延びる前傾壁11aと、前傾壁11aの下縁部から下方に向かうに連れて徐々に後方に向かうように延びる後傾壁11bとを有する。なお、後傾壁11bの下縁部の位置は、おおよそ第1板状部12aを前方に延ばした位置と等しい。
【0021】
これら、第2板状部12b、第3板状部12c、前傾壁11a、及び後傾壁11bにより囲まれ、下方に開口する部位を格納部13と規定する。格納部13は、第1スポイラー部11の後方に位置し、車両幅方向に延びている。すなわち、格納部13は、車両前面視において、第1スポイラー部11とオーバーラップする位置関係のため、当該第1スポイラー部11に隠れて視認できない(図5参照)。
【0022】
なお、図1図3、及び図4に示すように、第2板状部12bの車両幅方向両端部には、格納部13とエンジンコンパートメント2とを連通する開口部15が設けられている。先述の通り、車両前面視において、第1スポイラー部11とオーバーラップする位置関係とされているため、車両前面視において、開口部15は、第1スポイラー部11に隠れて視認できない(図5参照)。
【0023】
図2図3、及び図4に示すように、可動スポイラー20は、車両幅方向に延びる第2スポイラー部21と、当該第2スポイラー部21の車両幅方向両端部のそれぞれから後方に向かって延びる一対の支持部材22とを備える。なお、支持部材22は、支持部に相当する。
【0024】
より詳述すると、第2スポイラー部21は、前方に向かうにつれて徐々に先鋭となる頂部21aを有する断面略五角形の中実体である。第2スポイラー部21の後方側の下縁部には、後方に向かって延びる突起部21bが設けられている。支持部材22は、第2スポイラー部21の後方側の上縁部に連続し、後方に向かって延びている。
【0025】
なお、頂部21aと突起部21bとの間の前後方向寸法は、格納部13の前後方向寸法、より正確には、後傾壁11bの下縁部と第2板状部12bの前面との間の前後方向寸法よりも小さく設定されている。また、第2スポイラー部21の上下方向寸法は、格納部13の上下方向寸法、より正確には、後傾壁11bの下縁部と第3板状部12cの下面との間の上下方向寸法よりも小さく設定されている。このため、第2スポイラー部21は、格納部13への格納が許容されている。
【0026】
支持部材22は、開口部15における開口面積に対して小さい断面積を有する軸状部材であって、開口部15に挿通されている。支持部材22は、開口部15に挿通された状態で、上下方向に変位可能とされている。これにより、可動スポイラー20は、図3に示す格納部13に格納された格納位置と、図4に示す格納部13から展開された展開位置との間で変位する。なお、図3及び図5に示すように、格納位置の可動スポイラー20は、固定スポイラー10(第1スポイラー部11)とオーバーラップする位置関係のため、車両前面視において、第1スポイラー部11に隠れて視認できない。
【0027】
駆動部30は、リンク機構40とアクチュエータ50とを有し、各支持部材22と図示しない車両フレームとの間に介在されるものである。なお、車両幅方向に2箇所設けられる駆動部30の構成は共通であることから、共通の符号を用いて説明する。
【0028】
リンク機構40は、図示しない車両フレームに固定される固定側ブラケット41と、可動スポイラー20の支持部材22に取り付けられる可動側ブラケット42とを備える。固定側ブラケット41には、アクチュエータ50が固定されている。
【0029】
また、リンク機構40は、固定側ブラケット41と可動側ブラケット42との間に介在されるクランク43、コネクティングロッド44、第1リンク45、及び第2リンク46を備える。
【0030】
クランク43は、軸状部材であって、その一方の端部はアクチュエータ50が駆動することにより回転する出力軸51に固定され、他方の端部はコネクティングロッド44の一方の端部に相対回転可能に軸支されている。なお、クランク43とコネクティングロッド44との連結部分を回転軸47と規定する。
【0031】
コネクティングロッド44は、クランク43よりも長い軸状部材であって、その一方の端部は先述のとおりクランク43に対して相対回転可能に軸支され(回転軸47)、他方の端部は第1リンク45の中央部(両端部の間)に相対回転可能に軸支されている。
【0032】
第1リンク45及び第2リンク46は、互いに等しい寸法を有する軸状部材であって、互いに平行な位置関係とされる状態で、それぞれの一方の端部が固定側ブラケット41に対して相対回転可能に軸支されるとともに、それぞれの他方の端部が可動側ブラケット42に対して相対回転可能に軸支されている。
【0033】
第1リンク45は、第2リンク46の後方に位置し、先述の通りその中央部においてコネクティングロッド44に相対回転可能に軸支されている。
アクチュエータ50は、図示しない制御部により駆動が制御される。
【0034】
制御部は、出力軸51を中心としたとき、回転軸47が図3に示す12時の位置と3時側を含み図4に示す5時の位置との間に位置するようにアクチュエータ50の駆動を制御する。
【0035】
制御部は、図示しない車速センサにより検出される車速に応じて、アクチュエータ50を駆動させて、回転軸47の位置を適宜変更する。
詳述すると、制御部は、車速が0(零)のとき出力軸51に対して回転軸47が12時の位置(図3参照)に位置するようにアクチュエータ50を駆動させる。このとき、可動スポイラー20は、格納部13に格納された格納位置に位置する。なお、この状態にあるとき、第2スポイラー部21の頂部21aは、後傾壁11bの下縁部よりも上方に位置する。
【0036】
制御部は、車速に応じて、出力軸51に対する回転軸47の位置を段階的に変化させる。例えば、制御部は、車速が速度A(A>0)の場合、出力軸51に対して回転軸47が3時の位置(図示省略)に位置するようにアクチュエータ50を駆動させる。このとき、図示は省略するが、可動スポイラー20は、格納部13から一部が展開された展開位置に位置する。なお、この状態にあるとき、第2スポイラー部21の頂部21aは、後傾壁11bの下縁部よりも上方に位置する。また、第2スポイラー部21は、頂部21aよりも下側の部位が、後傾壁11bの下縁部よりも下方向に位置する。
【0037】
また、制御部は、車速が速度B(B>A)の場合、出力軸51に対して回転軸47が5時の位置(図4参照)に位置するようにアクチュエータ50を駆動させる。このとき、可動スポイラー20は、格納部13から完全に展開した展開位置に位置する。なお、この状態にあるとき、第2スポイラー部21は、頂部21aが、後傾壁11bの下縁部よりも下方向に位置する。
【0038】
なお、本例では、出力軸51に対する回転軸47の位置が、3段階に変化するものとして説明したが、この出力軸51に対する回転軸47の位置に段階数は適宜変更してもよい。また、滑らかに連続する無段階変化であってもよい。
【0039】
次に、スポイラー装置1の作用及びその効果について説明する。
スポイラー装置1は、固定スポイラー10、可動スポイラー20、及び可動スポイラー20を変位させる駆動部30を備える。
【0040】
固定スポイラー10は、エンジンコンパートメントの下部を覆うアンダーカバー部12を備え、アンダーカバーとしての機能を有するものであって、車両フレームに固定されている。これにより、常時、エンジンコンパートメントへの異物の進入が抑制される。また、エンジンコンパートメントの下部における空気の整流効果もある。
【0041】
駆動部30は、アンダーカバーとしての機能を有しない可動スポイラー20のみを変位させる。したがって、従来と比較して、駆動部30が変位させる対象の重量が軽いので、当該駆動部30に採用されるアクチュエータ50を小型のものとすることができる。これにより、スポイラー装置1の構成要素によるエンジンコンパートメント2における占有スペースが小さくなり、他の車両構成要素の配置自由度が高まる。
【0042】
さらに、従来のように、アンダーカバー一体の可動スポイラーを採用する場合、可動スポイラーの可動によって、当該可動スポイラーとフロントバンパーとの間に開口部が生じる。当該開口部は、外部、より正確には車両前方の空間とエンジンコンパートメントとを連通するように、車両幅方向全体に延びることになる。したがって、開口部の開口面積は大きく、車両の走行中にエンジンコンパートメントへ異物が進入してしまうおそれが高い。このため、従来の構成では、開口部を通じてエンジンコンパートメントへの異物の進入を抑制するために、当該開口部を覆うシール部材を配置する必要がある。
【0043】
その点、本例のスポイラー装置1によれば、車両前面視において、開口部15は、第1スポイラー部11に対してオーバーラップするように設けられている。これにより、従来の構成と比較して、車両の走行中にエンジンコンパートメントへの異物の進入が抑制される。また、開口部15は、車両幅方向に2箇所設けられるのみであり、支持部材22が挿通されるだけである。すなわち、開口部15の開口面積は、従来の開口部と比較しても十分に小さいので、よりエンジンコンパートメントへの異物の進入が抑制される。
【0044】
可動スポイラー20は、固定スポイラー10に設けられる格納部13に格納される格納位置と、当該格納部13から展開された展開位置との間で変位する。可動スポイラー20が格納位置にあるとき、第2スポイラー部21は、車両前面視において、第1スポイラー部11にオーバーラップする位置関係である。このため、第2スポイラー部21による空力効果は得られないが、固定スポイラー10により、空力効果が得られるので、車体が安定する。なお、可動スポイラー20が格納位置にあるとき、第2スポイラー部21の頂部21aは、後傾壁11bの下縁部よりも上方に位置する。このため、後傾壁11bの下側を車両前方から後方に向かって通過する空気が格納部13内に進入しにくくなる。したがって、格納部13の周辺で乱流が発生しにくくなる。
【0045】
可動スポイラー20が展開位置にある場合には、可動スポイラー20においても空力効果が得られる。すなわち、可動スポイラー20と固定スポイラー10との協働により、より大きな空力効果が得られるので、より車体が安定する。なお、可動スポイラー20が展開位置にあっても、第2スポイラー部21の頂部21aが、後傾壁11bの下縁部よりも上方に位置する場合(車速が速度Aの場合)には、車両前方から後方に向かって通過する空気が格納部13内に進入しにくいので、格納部13の周辺で乱流が発生しにくくなる。
【0046】
車両前面視において、第1スポイラー部11にオーバーラップする位置関係とされる格納部13を構成する第2板状部12bに、エンジンコンパートメント2と格納部13とを繋ぐ開口部15を設け、当該開口部15に可動スポイラー20の支持部材22を挿通させた。これにより、駆動部30が支持部材22を介して可動スポイラー20を変位させることができる。また、開口部15は、車両前面視において、第1スポイラー部11にオーバーラップする位置関係であるため、車両の走行により、開口部15を介してエンジンコンパートメント2への異物の進入が抑制される。
【0047】
なお、駆動部30は、リンク機構40及びアクチュエータ50を備え、アクチュエータ50の駆動による出力軸51の回転を、リンク機構40を介して可動スポイラー20に伝達している。リンク機構40は、出力軸51に固定されるクランク43と当該クランク43よりも寸法が長い第1リンク45及び第2リンク46との間にコネクティングロッド44を介在させたいわゆるてこクランク機構である。このため、小さな駆動力で可動スポイラー20を駆動させることができるので、より小型のアクチュエータ50を採用することができる。
【0048】
また、図3に示すように、可動スポイラー20が格納位置にあるとき、クランク43とコネクティングロッド44とが重力方向に並ぶように、すなわち、クランク43が重力方向に延びるように、リンク機構40、ひいては駆動部30を構成した。これにより、可動スポイラー20の重量に伴う回転力がコネクティングロッド44及びクランク43を介して出力軸51に入力されない。このため、アクチュエータ50を駆動させることなくクランク43の位置が維持されるので、その分、アクチュエータ50において消費されるエネルギーが小さい。また、別途、クランク43の位置や、可動スポイラー20の位置を維持するための構成を追加する必要もない。
【0049】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、タイヤにおける抵抗を軽減するスパッツを可動スポイラーに連動させてもよい。
【0050】
すなわち、図3及び図4に示すように、スパッツ60は、支持部材22の後端部に固定されるものであって、可動スポイラー20に連動する。図3及び図5に示すように、スパッツ60は、可動スポイラー20が格納位置に位置するときフロントタイヤTの前方を開放し、図4及び図6に示すように、可動スポイラー20が展開位置に位置するとき、フロントタイヤTの前方に位置する。すなわち、可動スポイラー20が展開位置に位置するとき、スパッツ60とフロントタイヤTとがオーバーラップする位置関係となる。これにより、可動スポイラー20が展開し、固定スポイラー10との協働でより大きな空力効果を得ようとするとき、フロントタイヤTの前方にはスパッツ60が位置してフロントタイヤTへの空気抵抗を軽減するので、より高い空力効果が得られる。これに伴い、走行中における車両の挙動が安定する。
【0051】
・上記実施形態では、リンク機構40がてこクランク機構であるものとして説明したが、てこクランク機構以外のリンク機構を採用してもよい。
・上記実施形態において、クランク43は、可動スポイラー20が格納位置に位置するとき重力方向に延びるように位置したが、可動スポイラー20が展開位置に位置するときに重力方向に延びるように位置してもよい。また、クランク43は、可動スポイラー20が展開位置に位置するときのみ重力方向に延びるように位置してもよい。
【0052】
・上記実施形態において、開口部15は、車両幅方向に延びていてもよい。
・上記実施形態において、開口部15に、支持部材22の変位に追従するリップ部材等を設けて、より開口部15からエンジンコンパートメント2への異物の進入を抑制してもよい。
【0053】
・上記実施形態において、格納位置に位置する可動スポイラー20は、空力効果を発揮しないとされたが、格納位置にあっても可動スポイラー20が空力効果を発揮してもよい。
【0054】
・上記実施形態において、固定スポイラー10の形状や可動スポイラー20の形状は、適宜変更してもよい。例えば、前傾壁11a及び後傾壁11bの寸法を上記実施形態よりも短くすることを通じて、格納部13の上下方向の寸法を小さくし、格納位置の可動スポイラー20が空力効果を発揮するようにしてもよい。また、例えば、突起部21bを省略してもよい、第2スポイラー部21の前後方向寸法を小さくできるので、格納部13の小型化が可能になる。なお、突起部21bは、整流効果に寄与する。
【符号の説明】
【0055】
1…車両用フロントスポイラー装置、2…エンジンコンパートメント、4…コネクティングロッド、10…固定スポイラー、11…第1スポイラー部、11a…前傾壁、11b…後傾壁、12…アンダーカバー部、12a…第1板状部、12b…第2板状部、12c…第3板状部、13…格納部、15…開口部、20…可動スポイラー、21…第2スポイラー部、21a…頂部、21b…突起部、22…支持部材(支持部)、30…駆動部、40…リンク機構、41…固定側ブラケット、42…可動側ブラケット、43…クランク、44…コネクティングロッド、45…第1リンク、46…第2リンク、47…回転軸、50…アクチュエータ、51…出力軸、60…スパッツ、T…フロントタイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6