特開2017-226292(P2017-226292A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226292(P2017-226292A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20171201BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-122890(P2016-122890)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋明
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA43
2H199DA46
3D344AA21
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】運転者がHUDの表示を見ないとき、及び見ようとするときの両局面において、視覚的な負担を軽減する。
【解決手段】被写界深度算出部12は、運転者の眼の焦点が合っているとみなす距離の範囲を表す運転者被写界深度を算出する。表示距離設定部15は、算出された運転者被写界深度に応じて運転者の眼から虚像までの距離である表示距離を設定する。具体的には、表示距離設定部15は、算出された運転者被写界深度の範囲外で、かつ、運転者被写界深度を基準とする所定の範囲内において運転者被写界深度よりも近距離又は遠距離となる距離を、表示距離として設定する。表示距離設定部15は、設定された表示距離において虚像が表示されるように、情報を構成する光をフロントガラス6に投射する光学系4を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、運転者に対して表示すべき情報を構成する光を被投射部材(6)に投射して前記運転者に向けて反射させることにより、前記情報を前記運転者の視界前方において認識される虚像として表示するように構成された車載表示装置(1)であって、
前記運転者の眼の焦点が合っているとみなす距離の範囲を表す運転者被写界深度を特定するように構成された深度特定部(12)と、
前記深度特定部により特定された運転者被写界深度の範囲外で、かつ、前記運転者被写界深度を基準とする所定の範囲内において前記運転者被写界深度よりも近距離又は遠距離となる距離を、前記運転者の眼から前記虚像までの距離である表示距離に設定するように構成された距離設定部(15)と、
前記距離設定部により設定された表示距離において前記虚像が表示されるように、前記情報を構成する光を前記被投射部材に投射する投射機構(4)を制御するように構成された制御部(15)と、
を備える車載表示装置。
【請求項2】
前記運転者の視線が合っている位置が、前記虚像の表示位置において定められた視認範囲に入っているか否かを判定する判定部(14)を更に備え、
前記制御部は、前記判定部により前記視線の位置が前記視認範囲に入っていないと判定された場合、前記距離設定部によって設定された表示距離に従って前記虚像の表示距離を可変に制御する一方、前記視線の位置が前記視認範囲に入っていると判定された場合、前記虚像の表示距離を変化させないように構成された、請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記視線の位置が前記視認範囲に入っていると判定された場合、その時点における当該虚像の表示距離を固定するように構成されている、請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記視線の位置が前記視認範囲に入っていると判定された場合、当該虚像の表示距離を前記運転者被写界深度に入れた状態で固定するように構成されている、請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記車載表示装置は、前記虚像の表示距離を前記運転者被写界深度より近距離側に設定するモードである近表示モードと、前記虚像の表示距離を前記運転者被写界深度より遠距離側に設定するモードである遠表示モードとを択一的に選択可能に構成されており、
前記距離設定部は、前記近表示モード及び前記遠表示モードの中から選択された表示モードに従って前記虚像の表示距離を設定するように構成されている、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車載表示装置。
【請求項6】
前記運転者被写界深度の遠点側が無限遠方に相当する場合、前記距離設定部は、前記虚像の表示距離を前記運転者被写界深度より近距離側に設定するように構成されている、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用可能な車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転手の前方視界に虚像を形成することにより、運転者の視線の先の背景に情報を重ねて表示する、いわゆるヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)が知られている。例えば、特許文献1には、自車両の速度と前方車両までの距離とに基づいて運転者の前方視界に形成される虚像の表示距離を調整することにより、視認負荷の低減を図る技術が記載されている。ここでいう虚像の表示距離とは、運転者の眼の位置から虚像までの距離である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−197981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、車両の速度や車間距離等から推定される運転者の視認距離に近くなるように、HUDが投影する情報の表示距離を制御するものである。ここでいう視認距離とは、運転者の眼の位置から運転者の眼の焦点が合っている位置までの距離である。すなわち、運転者の視認距離とHUDにより投影される情報の表示距離とを合わせることにより、運転者がHUDの情報を視認する際に焦点を調節する負担を軽減することを目的とする技術である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、運転者がHUDの表示を見ずに他の物を見て運転しているときであっても、HUDの表示に運転者の眼の焦点が合うようになる。つまり、運転者が情報を必要としないときにも強制的に情報を与え続けられる状態となるため、運転者がHUDの表示を視認しないときにおける視覚的な負担が大きいという問題がある。
【0006】
本開示は、上述の問題を解決するためになされたものである。本開示は、運転者がHUDの表示を見ないとき、及び見ようとするときの両局面において、視覚的な負担を軽減するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る車載表示装置(1)は、運転者に対して表示すべき情報を構成する光を被投射部材(6)に投射して運転者に向けて反射させることにより、当該情報を運転者の視界前方において認識される虚像として表示するように構成されている。この車載表示装置は、深度特定部(12)と、距離設定部(15)と、制御部(15)とを備える。なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
深度特定部は、運転者の眼の焦点が合っているとみなす距離の範囲を表す運転者被写界深度を特定するように構成されている。距離設定部は、運転者の眼から虚像までの距離である表示距離を設定するように構成されている。具体的には、距離設定部は、深度特定部により特定された運転者被写界深度の範囲外で、かつ、運転者被写界深度を基準とする所定の範囲内において運転者被写界深度よりも近距離又は遠距離となる距離を、表示距離として設定する。制御部は、距離設定部により設定された表示距離において虚像が表示されるように、情報を構成する光を被投射部材に投射する投射機構(4)を制御するように構成されている。
【0009】
本開示に係る車載表示装置によれば、運転者の眼の焦点があっていない範囲に虚像の表示距離が設定される構成により、虚像により構成されるHUDの表示を運転者が視認しないときには、過度の情報提示を抑制し、運転視界を視認する運転者の負担を軽減できる。また、運転者被写界深度から離れ過ぎない適度な位置に虚像の表示距離が設定される構成により、運転者がHUDの表示を視認しようとする際に、運転者が焦点を僅かに調節するだけで焦点を合わせることができるので、HUDの表示を視認する運転者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車載表示システムの全体構成を表すブロック図。
図2】近表示パターンの一例を表す説明図。
図3】遠表示パターンの一例を表す説明図。
図4】固定表示パターンの一例を表す説明図。
図5】運転者被写界深度が無限遠方であるときの表示例を表す説明図。
図6】表示距離制御処理の手順を表すフローチャート。
図7】視線位置に応じた表示例を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[車載表示システムの構成の説明]
実施形態の車載表示システムの構成について、図1を参照しながら説明する。車載表示システムは、運転者に対して表示すべき情報を運転者の視界前方において認識される虚像として表示するHUDを構成するシステムである。図1に例示されるとおり、車載表示システムは、表示制御装置1と、情報入力部2と、視覚情報センサ3と、光学系4とを備える。
【0012】
表示制御装置1は、図示しないCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、入出力インタフェース等を中心に構成された情報処理装置である。表示制御装置1は、例えば、コンピュータシステムとしての機能が集約されたマイクロコントローラ等により具現化される。表示制御装置1の機能は、CPUがROMや半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。なお、表示制御装置1を構成するマイクロコントローラの数は1つでも複数でもよい。
【0013】
表示制御装置1は、機能の構成要素として、画像作成部11と、被写界深度算出部12と、視覚情報特定部13と、視認判定部14と、表示距離設定部15とを備える。なお、表示制御装置1を構成するこれらの要素を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素を論理回路やアナログ回路等を組合せたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0014】
画像作成部11は、情報入力部2から入力された各種車両情報に基づいて、運転者に対して提示すべき情報を表す画像を作成する機能を有する。ここでいう車両情報とは、例えば、自車両の速度、燃費、シフトポジション等、車両の状態を表す情報である。画像作成部11は、作成された画像を表す映像信号をプロジェクター41に出力する。
【0015】
被写界深度算出部12は、運転者被写界深度を算出する機能を有する。運転者被写界深度とは、運転者の眼の焦点が合っているとみなす視線方向の距離の範囲である。具体的には、被写界深度算出部12は、視覚情報センサ3により測定された運転者の瞳孔位置や瞳孔径を判断材料として運転者被写界深度を算出する。
【0016】
例えば、所与の被写界深度テーブルに基づいて、運転者の瞳孔位置及び瞳孔径に対応する運転者被写界深度を特定して取得するようの構成することが考えられる。なお、ここでいう被写界深度テーブルとは、瞳孔位置及び瞳孔径と、運転者被写界深度との対応関係を定義したテーブルである。この被写界深度テーブルは、瞳孔位置に応じて焦点が合う位置が定まり、また瞳孔径の大小に応じて焦点が合うとみなせる範囲の深さが定まるものとして、予め実験等によって得られたものである。
【0017】
視覚情報特定部13は、運転者における視認距離及び視線位置を算出する機能を有する。ここでいう視認距離とは、運転者の眼の位置と、運転者の眼の焦点が合っている位置、すなわち運転者が注視している位置との距離である。また、視線位置とは、運転者の視線が向いている方向である。具体的には、視覚情報特定部13は、視覚情報センサ3により測定された運転者の視線、瞳孔位置、瞳孔径に基づいて、視認距離及び視線位置を算出する。
【0018】
視認判定部14は、視覚情報特定部13により算出された運転者の視線の位置が、現に運転者に対して表示されている虚像に対応付けられた視認判定範囲に合っているか否かを判定する機能を有する。ここでいう視認判定範囲とは、運転者の視線が表示中の虚像に合っているとみなす範囲である。この視認判定範囲は、例えば、虚像が表示されている位置を基準にして運転者に対面する平面状の範囲として定められているものとする。
【0019】
表示距離設定部15は、画像作成部11により作成された画像を表す虚像の表示距離を設定し、設定された表示距離に合わせて虚像が表示されるように光学系4を制御する機能を有する。ここでいう表示距離とは、運転者の眼の位置と、画像作成部11により作成された画像を表す虚像が運転者に認識される位置との距離である。図1の事例では、アイポイントEから、虚像V1又は虚像V2までの距離が表示距離に相当する。
【0020】
なお、表示制御装置1は、図示しないユーザインタフェースを介して近表示モード又は遠表示モードを運転者が指定できるようになっているものする。近表示モードは、運転者に提示すべき車両情報を表す虚像を、運転者被写界深度よりも運転者側に近い位置に表示する動作態様である。遠表示モードは、運転者に提示すべき車両情報を表す虚像を、運転者被写界深度より遠い位置に表示する動作態様である。
【0021】
情報入力部2は、車載表示システムにおいて運転者に対して表示すべき情報を入力する機能を有する。具体的には、情報入力部2は、CAN(すなわち、Controller Area Network)等の車載ネットワークに接続された車載機器から出力される車両情報を表示制御装置1に入力する。表示制御装置1に入力される車両情報としては、例えば、自車両の速度、燃費、シフトポジション等といった車両の状態を表す情報が挙げられる。
【0022】
視覚情報センサ3は、運転者の視線、瞳孔位置、瞳孔径を測定する機能を有するセンサである。視覚情報センサ3としては、例えば、赤外線カメラにより運転者の眼を撮像し、撮像された眼の画像から画像処理により視線、瞳孔位置、瞳孔径を測定する機能を有するカメラシステム等を適用することができる。
【0023】
光学系4は、プロジェクター41と、可動鏡42と、駆動部43と、凹面鏡44とを備える。光学系4は、車両のフロントガラス6の下方、車両の前席正面に設けられたダッシュボード5の内部に収納されている。この光学系4において、プロジェクター41から投射された映像光が、可動鏡42及び凹面鏡44において反射されてフロントガラス6に投影される。フロントガラス6において反射された映像光は、車両の前景に表示される虚像として運転者に認識される。これにより、運転者は、虚像として表示された情報を、フロントガラス6を透して視認する車両の前景と重畳して認識することができる。
【0024】
プロジェクター41は、画像作成部11から入力された映像信号に基づいて画像を構成する映像光を生成し、生成された映像光を可動鏡42に投射する機能を有する。そのため、プロジェクター41は、画像を生成する液晶パネル等の画像生成手段と、映像光を投射するための光源とを備える。
【0025】
可動鏡42は、プロジェクター41の光軸上に配置された反射部材であり、プロジェクター41から投射された映像光を凹面鏡44に向けて反射するように構成されている。この可動鏡42は、駆動部43により駆動されることによりプロジェクター41の光軸に平行な方向に沿って前後に移動可能に構成されている。可動鏡42をプロジェクター41の光軸に沿って前後に移動させることにより、フロントガラス6に投射される映像光の光路長を任意に調節することができるようになっている。駆動部43は、表示距離設定部15からの指令に基づいて可動鏡42をプロジェクター41の光軸に沿って平行な方向に移動させる機能を有するアクチュエータである。
【0026】
運転者の眼の位置であるアイポイントEから光学系4により形成される虚像までの表示距離は、プロジェクター41からの映像光がフロントガラス6に投射されるまでの光路長によって決まる。すなわち、図1に例示されるように、可動鏡42が駆動部43によってプロジェクター41及び凹面鏡44から近い位置に移動されると、映像光の光路長が短くなり、アイポイントEから近い側に虚像V1が現れる。一方、図1に例示されるように、可動鏡42が駆動部43によってプロジェクター41及び凹面鏡44から遠い位置に移動されると映像光の光路長が長くなり、アイポイントEから遠い側に虚像V2が現れる。
【0027】
凹面鏡44は、可動鏡42により反射された映像光を拡大してフロントガラス6に向けて反射する機能を有する。フロントガラス6は、車両の運転席前方に設けられた風防ガラスである。このフロントガラス6は、運転者の視線を透過させ、光学系4から投射された映像光を運転者に向けて反射するハーフミラーとして機能するように構成されている。
【0028】
[表示距離の具体例]
表示制御装置1は、運転者被写界深度に応じて光学系4によって表示される虚像の表示距離を可変にする制御を行う。その具体的な事例について、図2〜5を参照しながら説明する。
【0029】
(1)近表示パターン
図2の事例において、視認距離は、運転者のアイポイントEと運転者が注視している対象物(例えば、前方車両)との距離である。この事例において、被写界深度算出部12により、運転者が注視している位置よりも視線方向に沿って手前側の近点から遠方側の遠点までの範囲が、運転者の眼の焦点が合っているとみなす運転者被写界深度として算出されているものとする。
【0030】
図2の事例では、近表示モードが選択されているものとする。したがって、虚像Vは、運転者被写界深度の範囲外で、かつ、運転者被写界深度の近点より運転者側に近い表示距離に表示されている。このとき、表示距離設定部15は、運転者被写界深度の範囲外の近傍に虚像Vが表示されるように、運転者被写界深度の近点から所定距離(例えば、1m)だけ運転者に近い位置に表示距離を設定する。そして、表示距離設定部15は、設定された表示距離に虚像Vが表示されるべく光学系4の可動鏡42を所定の位置に移動させる。
【0031】
(2)遠表示パターン
図3の事例において、視認距離及び運転者被写界深度は図2の事例と同様である。図3の事例では、遠表示モードが選択されているものとする。したがって、虚像Vは、運転者被写界深度の範囲外で、かつ、運転者被写界深度の遠点より運転者から遠い表示距離において虚像Vが表示されている。このとき、表示距離設定部15は、運転者被写界深度の範囲外の近傍に虚像Vが表示されるように、運転者被写界深度の遠点から所定距離(例えば、1m)だけ運転者から遠い位置に表示距離を設定する。そして、表示距離設定部15は、設定された表示距離に虚像Vが表示されるべく光学系4の可動鏡42を所定の位置に移動させる。
【0032】
(3)固定表示パターン
運転者の視線の位置が虚像Vの視認判定範囲に合っていると判定された場合、視線の位置が視認判定範囲に合っている間、表示距離設定部15は虚像Vの表示距離を変えないように制御してもよい。すなわち、運転者の視線の位置が視認判定範囲に合うことで虚像Vに対する視認行為と判断し、虚像Vの表示距離を固定することで、運転者が虚像Vを視認可能となる。このとき、図4に例示されるように、表示距離設定部15は、虚像Vが運転者被写界深度内に表示されるように表示距離を調節した状態で、表示距離を変えないように制御してもよい。
【0033】
(4)運転者被写界深度が無限遠方である場合
図5に例示されるように、運転者の視認距離がある一定以上の距離であると、運転者の眼の焦点が合う範囲が無限遠方まで延びるようになる。すなわち運転者被写界深度の遠点が無限遠方となる。そこで、表示距離設定部15は、運転者被写界深度の遠点が無限遠方と判断したときには、近表示モードが選択されているか遠表示モードが選択されているかに関わらず、運転者被写界深度の近点より運転者側に近い表示距離において虚像Vを表示させる。
【0034】
[表示距離制御処理の説明]
表示制御装置1の各部が実行する表示距離制御処理の手順について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、車載表示システムが稼働中において所定の制御周期で繰返し実行される。
【0035】
S100では、運転者の視認距離と視線位置とを、視覚情報特定部13が算出する。視認距離は、運転者の眼の位置と運転者が注視している位置との距離である。視線位置は、運転者の視線が向いている方向である。
【0036】
S102では、S100において算出された視線位置が現時点で表示されている虚像に対応付けられた視認判定範囲に合っているか否かを、視認判定部14が判定する。視認判定範囲は、運転者の視線が表示中の虚像に合っているとみなす範囲であり、例えば、虚像が表示されている位置を基準にして運転者に対面する平面状の範囲である。運転者の視線位置が視認判定範囲に合っていない場合(すなわちS102:NO)、表示制御装置1はS104に移る。S104では、運転者の眼の焦点が合っているとみなす距離の範囲である運転者被写界深度を、被写界深度算出部12が算出する。
【0037】
S106では、虚像の表示態様として近表示モードが指定されているか否かを、表示距離設定部15が判定する。近表示モードが指定されている場合(すなわちS106:YES)、表示制御装置1はS108に移る。S108では、表示距離設定部15が、運転者被写界深度の近点から例えば1mだけ運転者近い位置に虚像の表示距離を設定する。そして、表示距離設定部15は、設定された表示距離において虚像が表示されるように光学系4の駆動部43を作動させる。S108の後、表示制御装置1はS100に戻る。
【0038】
一方、S106において遠表示モードが指定されていると判定された場合(すなわちS106:NO)、表示制御装置1はS110に移る。S110では、運転者被写界深度の遠点が無限遠方であるか否かを、表示距離設定部15が判定する。運転者被写界深度の遠点が無限遠方でない場合(すなわちS110:NO)、表示制御装置1はS112に移る。S112では、表示距離設定部15が、運転者被写界深度の遠点から例えば1mだけ運転者から遠い位置に虚像の表示距離を設定する。そして、表示距離設定部15は、設定された表示距離において虚像が表示されるように光学系4の駆動部43を作動させる。S112の後、表示制御装置1はS100に戻る。
【0039】
一方、S110において運転者被写界深度の遠点が無限遠方であると判定された場合(すなわちS110:YES)、表示制御装置1はS108に移る。S108では、表示距離設定部15が、運転者被写界深度の近点から例えば1mだけ運転者近い位置に虚像の表示距離を設定する。そして、表示距離設定部15は、設定された表示距離において虚像が表示されるように光学系4の駆動部43を作動させる。S108の後、表示制御装置1はS100に戻る。
【0040】
一方、S102において運転者の視線位置が視認判定範囲に合っていると判定された場合(すなわちS102:YES)、表示制御装置1はS114に移る。S114では、表示距離設定部15が、虚像の表示距離の設定を固定する。具体的には、表示距離設定部15は、現時点での虚像の表示距離を変えないでそのまま維持する。あるいは、現時点において虚像が運転者被写界深度の範囲外に表示されている場合、表示距離設定部15は、虚像が運転者被写界深度の範囲内に表示されるように表示距離を変えたうえで、その表示距離を維持する。S114の後、表示制御装置1はS100に戻る。
【0041】
[効果]
実施形態の車載表示システムによれば、以下の効果を奏する。
運転者被写界深度の範囲外に虚像の表示距離が設定される構成により、虚像により示される情報を運転者が視認しないときには過度の情報提示を抑制することで、運転視界を視認する運転者の負担を軽減できる。また、運転者被写界深度から離れ過ぎない適度な位置(例えば、運転者被写界深度の±1m)に虚像の表示距離が設定される構成により、虚像により示される情報を視認しようとする際に、運転者が焦点を僅かに調節するだけで焦点を合わせることができる。したがって、表示を視認する運転者の負担が軽減される。
【0042】
表示された虚像に運転者が視線を合わせることにより、その時点で虚像の表示距離を固定したり、虚像の表示距離を運転者被写界深度内に変更したうえで固定することができる。これにより、運転者が虚像を視認することが可能となる。
【0043】
また、虚像を運転者被写界深度の近点側に表示させる近表示モードと、遠点側に表示させる遠表示モードとを選択可能な構成にしたことで、運転者の好みに合わせた表示を行うことができる。さらに、運転者被写界深度の遠点が無限遠方にある場合、表示モードの選択に関わらず、虚像を運転者被写界深度の近点側に表示させることができる。
【0044】
[特許請求の範囲に記載の構成との対応]
実施形態の各構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。
表示制御装置1が車載表示装置に相当する。光学系4が投射機構に相当する。フロントガラス6が被投射部材に相当する。被写界深度算出部12が深度特定部に相当する。視認判定部14が判定部に相当する。表示距離設定部15が、距離設定部及び制御部に相当する。
【0045】
[変形例]
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0046】
上述の実施形態においては、運転者被写界深度の範囲外に虚像を表示させることで、過度な情報提示を抑制する構成について説明した。このような構成において、表示された虚像を運転者が視認していないときには、焦点の合わない虚像が視界内に存在することになる。そこで、運転者被写界深度の範囲外に表示される虚像に対して運転者が煩わしいと感じる場合には、図7に例示されるように、運転者の任意により表示を消したり目立たない表示態様に変えられるように構成してもよい。その場合、一旦消去又は目立たなくした虚像の視認判定範囲に運転者の視線位置が入ったことを条件に、表示制御装置1は、虚像Vを本来の視認可能な態様にて表示するとよい。
【0047】
上述した表示制御装置1を構成要件とするシステム、表示制御装置1としてコンピュータを機能させるプログラム、プログラムを記録した非遷移的実態的記録媒体、プログラムにより実現される表示制御方法等の種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…表示制御装置、11…画像作成部、12…被写界深度算出部、13…視覚情報特定部、14…視認判定部、15…表示距離設定部、2…情報入力部、3…視覚情報センサ、4…光学系、41…プロジェクター、42…可動鏡、43…駆動部、44…凹面鏡、5…ダッシュボード、6…フロントガラス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7