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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226305(P2017-226305A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20171201BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20171201BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20171201BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171201BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20171201BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   B62D6/00
   H02P27/06
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-123406(P2016-123406)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】草谷 征也
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲史
【テーマコード(参考)】
3D232
5H505
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232CC34
3D232CC37
3D232CC40
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA63
3D232DA64
3D232DA65
3D232DC08
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD01
3D232DD03
3D232DD05
3D232DD10
3D232DD17
3D232DE09
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC23
3D232GG01
5H505AA16
5H505BB10
5H505CC04
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505GG08
5H505HA09
5H505HA10
5H505HA16
5H505HB02
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL38
5H505LL41
5H505LL58
5H505LL60
5H505PP01
(57)【要約】
【課題】操舵に対して運転者が覚える違和感を緩和する電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ECU50は、異常相が検出された場合に、異常相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちのいずれか1つ)に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電し、車速Vが高いほど、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電する電流値を小さくする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の巻線を有する3相交流式のモータと、
前記モータの各巻線を励磁すべく通電する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する駆動制御装置と、
前記3相のうちで異常が発生した相である異常相を検出する異常相検出部と
を備える電動パワーステアリング装置であって、
車速を検出する車速センサを更に備え、
前記駆動制御装置は、前記異常相検出部により前記異常相が検出された場合に、前記異常相の前記巻線に対する通電を停止すると共に前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電するように前記駆動回路を制御し、前記車速センサにより検出される車速が高いほど、前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電する電流値を小さくする
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記駆動制御装置は、前記車速センサにより検出される車速が所定車速以上である場合に、前記異常相以外の2相の前記巻線に対する通電を停止させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
3相の巻線を有する3相交流式のモータと、
前記モータの各巻線を励磁すべく通電する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する駆動制御装置と、
前記3相のうちで異常が発生した相である異常相を検出する異常相検出部と
を備える電動パワーステアリング装置であって、
舵角を検出する舵角センサを更に備え、
前記駆動制御装置は、前記異常相検出部により前記異常相が検出された場合に、前記異常相の前記巻線に対する通電を停止すると共に前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電するように前記駆動回路を制御し、前記舵角センサにより検出される前記舵角がゼロを含む所定範囲内にあるときに前記舵角が前記所定範囲外にあるときと比較して、前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電する電流値を小さくする
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記駆動制御装置は、前記舵角センサにより検出される前記舵角が前記所定範囲内にある場合に、前記異常相以外の2相の前記巻線に対する通電を停止させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操向ハンドルの操作に際し、運転者の操舵を補助する力(操舵アシスト力)をモータから付与する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられる電動パワーステアリング装置は、電動モータを駆動させることにより操舵アシスト力を発生させる。電動モータとしては、例えばU相、V相、W相の巻線を有する3相交流式のモータが使用される。3相交流式のモータは、いずれかの相に断線等の異常が発生すると、通常の制御では駆動しなくなる。特許文献1、2は、異常が発生した相(異常相と称する)を除く残りの2相を使用してモータ(ブラシレスモータ)を駆動させる制御(異常発生時通電制御と称する)を開示する。特許文献1、2の発明は、異常発生時通電制御によりモータを駆動させる場合に、ロータの磁極が異常相、例えばU相の巻線上を通過する際に、V相及びW相の電流を大きくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−147531号公報
【特許文献2】特開2012−147532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の発明によれば、モータの電流の変動幅が大きくなり、操舵アシスト力の変動幅も大きくなるため、運転者は操舵操作に違和感を覚える場合がある。例えば、電流が急激に増加すると操舵アシスト力が急激に増加するため、運転者は操舵力が一時的に軽くなる違和感を覚える。電流が急激に減少すると操舵アシスト力が急激に減少するため、運転者は操舵力が一時的に重くなる違和感を覚える。こうした操舵アシスト力の変化は、車両の高速走行時や、舵角ゼロを含む所定範囲内(舵角中立点)で操向ハンドルが操作されるときに顕著に生じる。
【0005】
また、ロータの磁極が異常相を通過する際に、相電流を大きくし且つ高デューティとするため、バッテリ等の電源からモータに供給される電源電流は大きくなる。しかし、電源電流が大きい状態が続くと車両のヒューズが切れる虞がある。これを防止するために、ロータの磁極が異常相を通過する際には電源電流を制限する必要があるが、電源電流を制限すると操舵アシスト力が減少することになり、運転者はステアリングホイールが操舵方向にひっかかる感じを受ける。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、操舵に対して運転者が覚える違和感を緩和する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、3相の巻線を有する3相交流式のモータと、前記モータの各巻線を励磁すべく通電する駆動回路と、前記駆動回路を制御する駆動制御装置と、前記3相のうちで異常が発生した相である異常相を検出する異常相検出部とを備える電動パワーステアリング装置であって、車速を検出する車速センサを更に備え、前記駆動制御装置は、前記異常相検出部により前記異常相が検出された場合に、前記異常相の前記巻線に対する通電を停止すると共に前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電するように前記駆動回路を制御し、前記車速センサにより検出される車速が高いほど、前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電する電流値を小さくする。
【0008】
第1発明によれば、異常相が検出された場合に、異常相の巻線に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線に対して通電し、その際に、車速が高いほど、異常相以外の2相の巻線に対して通電する電流値を小さくする。このように、異常発生時通電制御において、運転者が操舵に違和感を覚える車両の高速走行時に操舵アシスト力を小さくするため、操舵に対する運転者の違和感を緩和することができる。また、車両の高速走行時に操舵アシスト力を小さくすることにより、車両を安定して走行させることができる。
【0009】
前記駆動制御装置は、前記車速センサにより検出される車速が所定車速以上である場合に、前記異常相以外の2相の前記巻線に対する通電を停止させるように前記駆動回路を制御してもよい。このように、運転者が操舵アシストに対して違和感を覚える車両の高速走行の場面で通電を停止して操舵アシスト力をゼロにするため、操舵に対する運転者の違和感を無くすことができる。
【0010】
第2発明は、3相の巻線を有する3相交流式のモータと、前記モータの各巻線を励磁すべく通電する駆動回路と、前記駆動回路を制御する駆動制御装置と、前記3相のうちで異常が発生した相である異常相を検出する異常相検出部とを備える電動パワーステアリング装置であって、舵角を検出する舵角センサを更に備え、前記駆動制御装置は、前記異常相検出部により前記異常相が検出された場合に、前記異常相の前記巻線に対する通電を停止すると共に前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電するように前記駆動回路を制御し、前記舵角センサにより検出される前記舵角がゼロを含む所定範囲内にあるときに前記舵角が前記所定範囲外にあるときと比較して、前記異常相以外の2相の前記巻線に対して通電する電流値を小さくする。
【0011】
第2発明によれば、異常相が検出された場合に、異常相の巻線に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線に対して通電し、その際に、舵角がゼロを含む所定範囲内にあるときに舵角が所定範囲外にあるときと比較して、異常相以外の2相の巻線に対して通電する電流値を小さくする。このように、異常発生時通電制御において、運転者が操舵に違和感を覚える舵角中立点辺りで操舵アシスト力を小さくするため、操舵に対する運転者の違和感を緩和することができる。
【0012】
前記駆動制御装置は、前記舵角センサにより検出される前記舵角が前記所定範囲内にある場合に、前記異常相以外の2相の前記巻線に対する通電を停止させるように前記駆動回路を制御してもよい。このように、運転者が操舵アシストに対して違和感を覚える舵角中立点辺りで通電を停止して操舵アシスト力をゼロにするため、操舵に対する運転者の違和感を無くすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異常発生時通電制御において、運転者が操舵に違和感を覚える場面で操舵アシスト力を小さくするため、操舵に対する運転者の違和感を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2】前記電動パワーステアリング装置の一部についての回路構成図である。
図3】駆動制御装置(ECU)への入力及び出力並びにECUの内部構成及び機能を示す図である。
図4】本実施形態におけるECUの処理の全体を示すフローチャートである。
図5】通常時通電制御におけるECUの機能的なブロック図である。
図6】通常時通電制御における各相のトルクと、操舵アシストトルクと、各相の電流との波形の一例を示す図である。
図7】ECUによる異常判定処理のフローチャートである。
図8】ECUによる異常相特定処理のフローチャートである。
図9】異常発生時通電制御におけるECUの機能的なブロック図である。
図10】異常相がU相である場合の電気角と相指示電流とを関連付けるマップである。
図11】異常相がV相である場合の電気角と相指示電流とを関連付けるマップである。
図12】異常相がW相である場合の電気角と相指示電流とを関連付けるマップである。
図13】車速とゲインとの関係を示す図である。
図14図10で示すマップを修正したマップである。
図15図11で示すマップを修正したマップである。
図16図12で示すマップを修正したマップである。
図17】舵角とゲインとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電動パワーステアリング装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、下記実施形態の基となる構成、及び、下記実施形態で行われる通常時通電制御に関しては、上記特許文献1、2(特開2012−147531号公報、特開2012−147532号公報)で開示されている。
【0016】
I.一実施形態
A.構成の説明
1.電動パワーステアリング装置10の全体
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置10(以下「パワーステアリング装置10」とも称する。)の概略構成図である。図2は、パワーステアリング装置10の一部についての回路構成図である。
【0017】
図1に示すように、パワーステアリング装置10は、操向ハンドル12(ステアリングホイール)と、ステアリングシャフト14と、ラック軸16と、タイロッド18と、転舵輪としての左右の前輪20とを有する。ステアリングシャフト14、ラック軸16及びタイロッド18は、操向ハンドル12に対する運転者の操舵動作を前輪20に直接伝えるマニュアル操舵系を構成する。
【0018】
また、図1及び図2に示すように、パワーステアリング装置10は、モータ22と、ウォームギア24と、ウォームホイールギア26と、トルクセンサ28と、車速センサ30と、舵角センサ32と、バッテリ34と、インバータ36と、電流センサ38、40と、レゾルバ42と、電圧センサ44、46、48と、駆動制御装置50(以下「ECU50」という。)とを有する。モータ22、ウォームギア24及びウォームホイールギア26は、運転者の操舵を補助する力(操舵アシスト力)を生成するアシスト駆動系を構成する。また、トルクセンサ28、車速センサ30、舵角センサ32、インバータ36、電流センサ38、40、レゾルバ42、電圧センサ44、46、48及びECU50は、アシスト駆動系を制御するアシスト制御系を構成する。以下では、アシスト駆動系、アシスト制御系及びバッテリ34を合わせて転舵アシスト系とも称する。
【0019】
2.マニュアル操舵系
ステアリングシャフト14は、操向ハンドル12に一体結合されたメインステアリングシャフト52と、ラック&ピニオン機構のピニオン56が設けられたピニオン軸54と、メインステアリングシャフト52及びピニオン軸54を連結するユニバーサルジョイント58とを備える。
【0020】
ピニオン軸54はその上部、中間部、下部を軸受60a、60b、60cによって支持されており、ピニオン56はピニオン軸54の下端部に設けられている。ピニオン56は、車幅方向に往復動可能なラック軸16のラック歯62に噛合する。
【0021】
従って、運転者が操向ハンドル12を操作することによって生じた操舵トルクTr(回転力)は、メインステアリングシャフト52及びユニバーサルジョイント58を介してピニオン軸54に伝達される。そして、ピニオン軸54のピニオン56及びラック軸16のラック歯62により操舵トルクTrが推力に変換され、ラック軸16が車幅方向に変位する。ラック軸16の変位に伴ってタイロッド18が前輪20を転舵させることで、車両の向きを変えることができる。
【0022】
3.転舵アシスト系
(1)アシスト駆動系
モータ22は、ウォームギア24及びウォームホイールギア26を介してラック軸16に連結されている。すなわち、モータ22の出力軸22aは、ウォームギア24に連結されている。また、ウォームギア24と噛合するウォームホイールギア26は、ピニオン軸54に形成され、ピニオン軸54はラック軸16に連結されている。
【0023】
モータ22は、3相交流ブラシレス式であり、ECU50に制御されるインバータ36を介してバッテリ34から電力が供給される。そして、当該電力に応じた駆動力(操舵アシスト力)を生成する。当該駆動力は、出力軸22a、ウォームギア24及びピニオン軸54(ウォームホイールギア26及びピニオン56)を介してラック軸16に伝達される。これにより、運転者の操舵を補助する。
【0024】
(2)アシスト制御系
(a)フィードフォワード系センサ類
トルクセンサ28は、ピニオン軸54の中間部の軸受60bと上部の軸受60aとの間に設けられ、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいて操舵トルクTrを検出し、ECU50に出力する。
【0025】
車速センサ30は、車速V[km/h]を検出し、ECU50に出力する。舵角センサ32は、操向ハンドル12の舵角θs[度]を検出し、ECU50に出力する。
【0026】
操舵トルクTr、車速V及び舵角θsは、ECU50においてフィードフォワード制御に用いられる。
【0027】
(b)インバータ36
インバータ36は、3相フルブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、バッテリ34からの直流を3相の交流に変換してモータ22に供給する。
【0028】
図2に示すように、インバータ36は、3相の相アーム70u、70v、70wを有する。U相アーム70uは、上スイッチング素子74u(以下「上SW素子74u」という。)及びダイオード76uを有する上アーム素子72uと、下スイッチング素子80u(以下「下SW素子80u」という。)及びダイオード82uとを有する下アーム素子78uとで構成される。
【0029】
同様に、V相アーム70vは、上スイッチング素子74v(以下「上SW素子74v」という。)及びダイオード76vを有する上アーム素子72vと、下スイッチング素子80v(以下「下SW素子80v」という。)及びダイオード82vを有する下アーム素子78vとで構成される。W相アーム70wは、上スイッチング素子74w(以下「上SW素子74w」という。)とダイオード76wを有する上アーム素子72wと、下スイッチング素子80w(以下「下SW素子80w」という。)とダイオード82wを有する下アーム素子78wとで構成される。
【0030】
上SW素子74u、74v、74wと下SW素子80u、80v、80wには、例えば、MOSFET又はIGBTが採用される。
【0031】
なお、以下では、各相アーム70u、70v、70wを相アーム70と総称し、各上アーム素子72u、72v、72wを上アーム素子72と総称し、各下アーム素子78u、78v、78wを下アーム素子78と総称し、各上SW素子74u、74v、74wを上SW素子74と総称し、各下SW素子80u、80v、80wを下SW素子80と総称する。
【0032】
各相アーム70において、上アーム素子72と下アーム素子78の中点84u、84v、84wは、モータ22の巻線86u、86v、86wに連結されている。以下では、巻線86u、86v、86wを巻線86と総称する。
【0033】
各上SW素子74及び各下SW素子80は、ECU50からの駆動信号UH、VH、WH、UL、VL、WLにより駆動される。
【0034】
(c)フィードバック系センサ類
電流センサ38は、モータ22の巻線86uにおけるU相の電流(U相電流Iu)を検出し、ECU50に出力する。同様に、電流センサ40は、巻線86wにおけるW相の電流(W相電流Iw)を検出し、ECU50に出力する。なお、電流センサ38、40は、モータ22の3相のうちの2つの相を検出するものであれば、U相とW相の組合せ以外の電流を検出するものであってもよい。
【0035】
レゾルバ42は、モータ22の図示しない出力軸又は外ロータの回転角度である電気角θを検出する。
【0036】
電圧センサ44は、U相アーム70uの中点84uにおける電圧(以下「U相電圧Vu」という。)を検出し、ECU50に出力する。電圧センサ46は、V相アーム70vの中点84vにおける電圧(以下「V相電圧Vv」という。)を検出し、ECU50に出力する。電圧センサ48は、W相アーム70wの中点84wにおける電圧(以下「W相電圧Vw」という。)を検出し、ECU50に出力する。
【0037】
(d)ECU50
図3には、ECU50への入力及び出力並びにECU50の内部構成及び機能が示されている。ECU50は、各センサからの出力値に基づき、モータ22の出力を制御する。
【0038】
図1及び図3に示すように、ECU50は、ハードウェアの構成として、入出力部90と、演算部92と、記憶部94とを有する。図3に示すように、ECU50の演算部92は、異常判定機能100と、異常相特定機能102と、通電制御機能104とを有する。このうち通電制御機能104は、更に、通常時通電制御機能106と、異常発生時通電制御機能108とを含む。これらの機能は、記憶部94に記憶されたプログラムを実行することにより実現される(詳細は後述する。)。
【0039】
(3)バッテリ34
バッテリ34は、低電圧(本実施形態では12ボルト)を出力可能な蓄電装置であり、例えば、鉛蓄電池等の2次電池を利用することができる。
【0040】
B.ECU50の処理及び機能
1.全体の流れ
図4は、本実施形態におけるECU50の処理の全体を示すフローチャートである。ステップS1において、ECU50は、通常時通電制御機能106を用いて通常時通電制御を実行する。通常時通電制御では、インバータ36の3つの相アーム70(図2)を用いてモータ22の出力を制御する(詳細は後述する。)。
【0041】
ステップS2において、ECU50は、レゾルバ42からの電気角θに基づいてモータ22の回転速度ω[度/sec]を算出する。
【0042】
ステップS3において、ECU50は、ステップS2で算出した回転速度ωが閾値TH_ω以下であるか否かを判定する。閾値TH_ωは、ステップS4における異常判定処理を行うか否かを判定するための閾値である。より具体的には、閾値TH_ωは、前記異常判定処理の精度が不十分になるほどモータ22が過度の逆起電力を生じさせているか否かを判定するための閾値であり、記憶部94に記憶されている。
【0043】
回転速度ωが閾値TH_ω以下でない場合(S3:NO)、ステップS1に戻る。回転速度ωが閾値TH_ω以下である場合(S3:YES)、ステップS4において、ECU50は、異常判定機能100を用いて異常判定処理を実行する。ステップS4の異常判定処理の結果、異常が発生していない場合(S5:NO)、ステップS1に戻る。
【0044】
ステップS4の異常判定処理の結果、異常が発生している場合(S5:YES)、ステップS6において、ECU50は、異常相特定処理を実行する。そして、ECU50は、前記異常相特定処理の結果に基づいて、ステップS7において、異常発生時通電制御を実行する(詳細は後述する。)。
【0045】
2.通常時通電制御(通常時通電制御機能106)
図5は、通常時通電制御におけるECU50の機能的なブロック図である。図5に示すように、通常時通電制御におけるECU50は、トルク指令値算出部110と、位相補償部112と、3相−dq変換部114と、q軸電流目標値算出部116と、第1減算器118と、q軸PI制御部120と、d軸電流目標値設定部122と、第2減算器124と、d軸PI制御部126と、dq−3相変換部128と、PWM制御部130とを有する。これらの構成要素を用いてインバータ36の制御が行われる。なお、インバータ36の制御系としては、基本的に、特開2009−090817号公報や特開2006−256542号公報に記載のものを用いることが可能であり、本実施形態において省略されている構成要素についても付加的に適用可能である。
【0046】
トルク指令値算出部110は、トルクセンサ28からの操舵トルクTrと車速センサ30からの車速Vに基づいて第1トルク指令値Tr_c1を算出する。位相補償部112は、第1トルク指令値Tr_c1に位相補償処理を行って第2トルク指令値Tr_c2を算出する。
【0047】
3相−dq変換部114は、電流センサ38からのU相電流Iuと、電流センサ40からのW相電流Iwと、レゾルバ42からの電気角θとを用いて3相−dq変換を行い、d軸方向の電流成分(界磁電流成分)としてのd軸電流Idと、q軸方向の電流成分(トルク電流成分)としてのq軸電流Iqとを算出する。そして、3相−dq変換部114は、q軸電流Iqを第1減算器118に出力し、d軸電流Idを第2減算器124に出力する。
【0048】
なお、3相−dq変換は、U相電流Iuと、W相電流Iwと、これらから求められるV相電流Iv(=−Iu−Iw)との組を、電気角θに応じた変換行列によりd軸電流Idとq軸電流Iqとの組に変換する処理である。
【0049】
q軸電流目標値算出部116は、位相補償部112からの第2トルク指令値Tr_c2と、車速センサ30からの車速Vと、舵角センサ32からの舵角θsと、レゾルバ42からの電気角θとに基づいて、q軸電流Iqの目標値であるq軸電流目標値Iq_tを算出する。q軸電流目標値算出部116では、例えば、基準アシスト制御と、イナーシャ制御と、ダンパ制御とを組み合わせてq軸電流目標値Iq_tを算出する。基準アシスト制御、イナーシャ制御及びダンパ制御については、例えば、特開2009−090817号公報、特開2006−256542号公報又は特開2009−214711号公報に記載のものを用いることができる。このq軸電流目標値Iq_tは、第2トルク指令値Tr_c2のトルクをモータ22の出力軸22aに発生させるためのd軸電流及びq軸電流のフィードフォワード指令値としての意味を持つ。
【0050】
第1減算器118は、q軸電流目標値Iq_tとq軸電流Iqとの偏差(=Iq_t−Iq)(以下「q軸電流偏差ΔIq」という。)を算出してq軸PI制御部120に出力する。q軸PI制御部120は、q軸電流偏差ΔIqをゼロに近づけるように、フィードバック制御としてのPI制御(比例・積分制御)により、q軸電圧の目標値であるq軸電圧目標値Vq_tを演算し、dq−3相変換部128に出力する。
【0051】
d軸電流目標値設定部122は、モータ22の巻線86を磁石とするのに必要なd軸電流Idの目標値(以下「d軸電流目標値Id_t」)を設定し、第2減算器124に出力する。
【0052】
第2減算器124は、d軸電流目標値Id_tとd軸電流Idとの偏差(=Id_t−Id)(以下「d軸電流偏差ΔId」という。)を算出してd軸PI制御部126に出力する。d軸PI制御部126は、d軸電流偏差ΔIdをゼロに近づけるように、フィードバック制御としてのPI制御(比例・積分制御)により、d軸電圧の目標値であるd軸電圧目標値Vd_tを演算し、dq−3相変換部128に出力する。
【0053】
dq−3相変換部128は、q軸PI制御部120からのq軸電圧目標値Vq_tと、d軸PI制御部126からのd軸電圧目標値Vd_tと、レゾルバ42からの電気角θとを用いてdq−3相変換を行い、U相、V相、W相の相電圧目標値Vu_t、Vv_t、Vw_tを算出し、PWM制御部130に出力する。なお、dq−3相変換は、d軸電圧目標値Vd_t及びq軸電圧目標値Vq_tの組を、電気角θに応じた変換行列により相電圧目標値Vu_t、Vv_t、Vw_tの組に変換する処理である。
【0054】
PWM制御部130は、これらの相電圧目標値Vu_t、Vv_t、Vw_tに応じて、パルス幅変調(PWM)制御によりインバータ36を介してモータ22の各相の巻線86を通電する。PWM制御部130は、インバータ36の各上SW素子74及び各下SW素子80のオンオフを制御することで、各相の巻線86を通電する。
【0055】
より具体的には、PWM制御部130は、スイッチング周期毎に各相アーム70への駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLを生成する。ここで、1スイッチング周期全体におけるデューティ値DUTを100%とすると、下SW素子80のデューティ値DUT2は、100%から上SW素子74へのデューティ値DUT1を引いたものとして演算され、更に、上SW素子74及び下SW素子80それぞれのデューティ値DUT1、DUT2にデッドタイムdtを反映させたものが、実際に出力される駆動信号UH、UL、VH、VL、WH、WLとなる。
【0056】
上記のような通常時通電制御を用いると、通常時通電制御における各相が発生させるトルク(以下「U相トルクTr_u」、「V相トルクTr_v」、「W相トルクTr_w」という。)と、その合計としてのモータ22が出力するトルク(以下「モータトルクTr_m」という。)と、各相における電流(以下「U相電流Iu」、「V相電流Iv」、「W相電流Iw」という。)として、例えば、図6に示す波形を得ることができる。
【0057】
3.異常判定処理(異常判定機能100)
図7は、ECU50による異常判定処理(異常判定機能100)のフローチャート(図4のS4の詳細)である。ステップS11において、ECU50は、d軸電圧Vdとq軸電圧Vqを演算により求める。具体的には、ECU50は、電圧センサ44からのU相電圧Vuと、電圧センサ46からのV相電圧Vvと、電圧センサ48からのW相電圧Vwとを電気角θを用いて3相−dq変換し、d軸電圧Vdとq軸電圧Vqを求める。
【0058】
ステップS12において、ECU50は、ステップS11で求めたq軸電圧Vqが閾値TH_Vqを上回っているか否かを判定する。閾値TH_Vqは、q軸電圧Vqが出力されているか否かを判定するための閾値である。
【0059】
q軸電圧Vqが閾値TH_Vqを上回っていない場合(S12:NO)、ステップS13において、ECU50は、異常が発生していないと判定し、図4の処理に戻る。q軸電圧Vqが閾値TH_Vqを上回っている場合(S12:YES)、ステップS14に進む。
【0060】
ステップS14において、ECU50は、q軸電流Iqがゼロであるか否かを判定する。これにより、q軸電流Iqが発生しているか否かを判定することができる。当該判定の代わりに、q軸電流Iqの絶対値についての正の閾値を設け、q軸電流Iqが当該閾値以下であるか否かを判定することで、q軸電圧Vqに対応するq軸電流Iqの発生の有無を判定することもできる。
【0061】
q軸電流Iqがゼロでない場合(S14:NO)、ステップS13に進む。q軸電流Iqがゼロである場合(S14:YES)、q軸電圧Vqが出力されているにもかかわらず、q軸電流Iqが流れていないこととなる。この場合、いずれかの相(相アーム70)について電流が発生しない異常(例えば、電力線又はPWM制御部130から各SW素子74、80までの信号線の断線)が発生しているといえる。そこで、ECU50は、ステップS15において、異常の発生を特定する(この時点では、異常が発生している相までは特定されていない。)。
【0062】
4.異常相特定処理(異常相特定機能102)
図8は、ECU50による異常相特定処理(異常相特定機能102)のフローチャート(図4のS6の詳細)である。ステップS21において、ECU50は、電圧センサ46からのV相電圧Vvと電圧センサ48からのW相電圧Vwとの相関電圧(以下「VW相間電圧Vvw」という。)の絶対値が、閾値THv未満であるか否かを判定する。VW相間電圧Vvwは、V相電圧VvとW相電圧Vwとの差として定義される(Vvw=Vv−Vw)。閾値THvは、VW相間電圧Vvwがゼロ又はその近傍の値であるか否か(換言すると、V相電圧VvとW相電圧Vwとが略等しいか否か)を判定するためのものである。
【0063】
VW相間電圧Vvwの絶対値が、閾値THv未満である場合(S21:YES)、VW相間電圧Vvwは略ゼロということとなり、V相とW相は、正常に機能していることがわかる。このため、断線等の異常が発生しているのはU相であることがわかる。そこで、ステップS22において、ECU50は、U相に異常が発生していると特定する。VW相間電圧Vvwの絶対値が、閾値THv未満でない場合(S21:NO)、ステップS23に進む。
【0064】
ステップS23において、ECU50は、電圧センサ48からのW相電圧Vwと電圧センサ44からのU相電圧Vuとの相関電圧(以下「WU相間電圧Vwu」という。)の絶対値が、前記閾値THv未満であるか否かを判定する。WU相間電圧Vwuは、W相電圧VwとU相電圧Vuとの差として定義される(Vwu=Vw−Vu)。これにより、WU相間電圧Vwuがゼロ又はその近傍の値であるか否か(換言すると、W相電圧VwとU相電圧Vuとが略等しいか否か)を判定することができる。
【0065】
WU相間電圧Vwuの絶対値が、閾値THv未満である場合(S23:YES)、WU相間電圧Vwuは略ゼロということとなり、W相とU相は、正常に機能していることがわかる。このため、断線等の異常が発生しているのはV相であることがわかる。そこで、ステップS24において、ECU50は、V相に異常が発生していると特定する。WU相間電圧Vwuの絶対値が、閾値THv未満でない場合(S23:NO)、ステップS25に進む。
【0066】
ステップS25において、ECU50は、電圧センサ44からのU相電圧Vuと電圧センサ46からのV相電圧Vvとの相関電圧(以下「UV相間電圧Vuv」という。)の絶対値が、前記閾値THv未満であるか否かを判定する。UV相間電圧Vuvは、U相電圧VuとV相電圧Vvとの差として定義される(Vuv=Vu−Vv)。これにより、UV相間電圧Vuvがゼロ又はその近傍の値であるか否か(換言すると、U相電圧VuとV相電圧Vvとが略等しいか否か)を判定することができる。
【0067】
UV相間電圧Vuvの絶対値が、閾値THv未満である場合(S25:YES)、UV相間電圧Vuvは略ゼロということとなり、U相とV相は、正常に機能していることがわかる。このため、断線等の異常が発生しているのはW相であることがわかる。そこで、ステップS26において、ECU50は、W相に異常が発生していると特定する。UV相間電圧Vuvの絶対値が、閾値THv未満でない場合(S25:NO)、異常が発生している相(異常相)を特定することができない。このような場合としては、例えば、2つの相に異常が発生し、電流が流れないことが考えられる。この場合、ステップS27において、ECU50は、異常相が特定できないと判定する。そして、ECU50が有するフェールセーフ機能により、モータ22を停止する。
【0068】
5.異常発生時通電制御(異常発生時通電制御機能108)
(1)全体
図9は、異常発生時通電制御におけるECU50の機能的なブロック図である。以下では、図5と同じ構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、異常発生時通電制御におけるECU50は、トルク指令値算出部110と、位相補償部112と、マップ設定部140と、修正範囲設定部142と、車速ゲイン設定部144と、マップ修正部146と、指示電流算出部148と、舵角ゲイン設定部150と、第1乗算器152と、第2乗算器154と、第3乗算器156と、電流/電圧変換部158と、PWM制御部130とを有する。これらの構成要素を用いてインバータ36(図3参照)の制御が行われる。
【0070】
(2)トルク指令値算出部110及び位相補償部112
通常時通電制御と同様、トルク指令値算出部110は、トルクセンサ28からの操舵トルクTrと車速センサ30からの車速Vに基づいて第1トルク指令値Tr_c1を算出する。位相補償部112は、第1トルク指令値Tr_c1に位相補償処理を行って第2トルク指令値Tr_c2を算出する。
【0071】
(3)マップ設定部140
マップ設定部140は、第2トルク指令値Tr_c2と異常相特定機能102の特定結果(いずれの相に異常が発生しているか)とに基づいて、記憶部94に記憶されるマップMの中から、使用するマップMを選択する。
【0072】
記憶部94(図3参照)には、異常発生時通電制御で使用されるマップMが記憶される。マップMとしては、異常相がU相である場合に使用されるマップMvw(図10参照)と、異常相がV相である場合に使用されるマップMwu(図11参照)と、異常相がW相である場合に使用されるマップMuv(図12参照)とがある。図10図12に示すように、各マップM(Mvw、Mwu、Muv)では、異常発生時通電制御の際に検出される電気角θと、指示すべき相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iとの対応付けが設定されている。更に、電気角θと相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iとの対応付けは、トルク指令値(ここでは第2トルク指令値Tr_c2)毎に設定される。
【0073】
図10に示すように、マップMvwでは、電気角θが90°及び270°を中心とする所定範囲(ここでは±10°)で最大となるV相指示電流値Iv_i及びW相指示電流値Iw_iが設定される。図11に示すように、マップMwuでは、電気角θが30°及び210°を中心とする所定範囲(ここでは±10°)で最大となるW相指示電流値Iw_i及びU相指示電流値Iu_iが設定される。図12に示すように、マップMuvでは、電気角θが150°及び330°を中心とする所定範囲(ここでは±10°)で最大となるU相指示電流値Iu_i及びV相指示電流値Iv_iが設定される。
【0074】
(4)修正範囲設定部142
修正範囲設定部142は、異常相特定機能102の特定結果(いずれの相に異常が発生しているか)に基づいて、マップMの修正範囲(電気角θの範囲)を設定する。修正範囲は、異常が発生する相に応じて、すなわちマップMに応じて設定される。例えば、異常相がU相である場合は、図10に示すマップMvwのうち、V相指示電流値Iv_i及びW相指示電流値Iw_iが最大でない0°〜80°、100°〜260°、280°〜360°が修正範囲として設定される。異常相がV相である場合は、図11に示すマップMwuのうち、W相指示電流値Iw_i及びU相指示電流値Iu_iが最大でない0°〜20°、40°〜200°、220°〜360°が修正範囲として設定される。異常相がW相である場合は、図12に示すマップMuvのうち、U相指示電流値Iu_i及びV相指示電流値Iv_iが最大でない0°〜140°、160°〜320°、340°〜360°が修正範囲として設定される。
【0075】
(5)車速ゲイン設定部144
車速ゲイン設定部144は、車速センサ30からの車速Vに応じたゲインG1を出力する。図13に示す車速V−ゲインG1の関係は、記憶部94に記憶される。図13に示すように、ゲインG1は、車速Vが高いほど小さく、所定車速Vth以上では0である。ゲインG1として0が出力されると、後述のマップ修正部146で相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iはゼロとなる。これにより、通電が停止され、操舵アシストが停止されることになる。
【0076】
(6)マップ修正部146
マップ修正部146は、マップ設定部140で選択されたマップMのうち、修正範囲設定部142で設定された修正範囲の相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iを、車速ゲイン設定部144から出力されたゲインG1を用いて修正する。具体的には、相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iとゲインG1とを乗算する。ゲインG1を用いて相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iを修正することにより、車速Vに応じた相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iが得られる。この際、車速Vが高くなるほど相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iは小さくなる。
【0077】
例えば、図10で示すマップMvwが修正されると、図14に示すマップM´vwが得られる。マップM´vwでは、0°〜80°、100°〜260°、280°〜360°のV相指示電流値Iv_i及びW相指示電流値Iw_iが、修正前よりも大きくなっている。図11で示すマップMwuが修正されると、図15に示すマップM´wuが得られる。マップM´wuでは、0°〜20°、40°〜200°、220°〜360°のW相指示電流値Iw_i及びU相指示電流値Iu_iが、修正前よりも大きくなっている。図12で示すマップMuvが修正されると、図16に示すマップM´uvが得られる。マップM´uvでは、0°〜140°、160°〜320°、340°〜360°のU相指示電流値Iu_i及びV相指示電流値Iv_iが、修正前よりも大きくなっている。図10図12に示す各マップMと図14図16に示す各マップM´とを比較すると、図14図16に示す修正後の各マップM´の方が、相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iの最大値と最小値の差が小さくなっている(I´d<Id)。
【0078】
(7)指示電流算出部148
指示電流算出部148は、修正後のマップM´を使用してレゾルバ42からの電気角θに対応する2相の相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iのうちの2つを求める。この際、異常相の相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iのいずれかはゼロ(通電停止)である。
【0079】
(8)舵角ゲイン設定部150
舵角ゲイン設定部150は、舵角センサ32からの舵角θsに応じたゲインG2を出力する。図17に示す舵角θs−ゲインG2の関係は、記憶部94に記憶される。図17に示すように、ゲインG2は、舵角θsが舵角中立点、すなわちゼロを含む第1範囲θs1内で0であり、第2範囲θs2内でθsの増加に伴い漸増し、第3範囲θs3内で1である。なお、図17は舵角θsの絶対値を示す。
【0080】
(9)第1乗算器152、第2乗算器154及び第3乗算器156
第1乗算器152は、指示電流算出部148で求められたU相指示電流値Iu_iと、舵角ゲイン設定部150から出力されたゲインG2とを乗算し、U相目標電流値Iu_tとして出力する。第2乗算器154は、指示電流算出部148で求められたV相指示電流値Iv_iと、舵角ゲイン設定部150から出力されたゲインG2とを乗算し、V相目標電流値Iv_tとして出力する。第3乗算器156は、指示電流算出部148で求められたW相指示電流値Iw_iと、舵角ゲイン設定部150から出力されたゲインG2とを乗算し、W相目標電流値Iw_tとして出力する。
【0081】
(10)電流/電圧変換部158
電流/電圧変換部158は、第1乗算器152から出力されたU相目標電流値Iu_tを電圧に変換し、U相電圧目標値Vu_tとして出力する。また、電流/電圧変換部158は、第2乗算器154から出力されたV相目標電流値Iv_tを電圧に変換し、V相電圧目標値Vv_tとして出力する。また、電流/電圧変換部158は、第3乗算器156から出力されたW相目標電流値Iw_tを電圧に変換し、W相電圧目標値Vw_tとして出力する。
【0082】
(11)PWM制御部130
通常時通電制御と同様、PWM制御部130は、相電圧目標値Vu_t、Vv_t、Vw_tに応じて、パルス幅変調(PWM)制御によりインバータ36を介してモータ22の各相の巻線86を通電する。PWM制御部130は、インバータ36の各SW素子74、80のオンオフを制御することで、各相の巻線86を通電する。
【0083】
その結果、異常相がU相である場合には、V相にV相目標電流値Iv_tに相当する電流が通電され、W相にW相目標電流値Iw_tに相当する電流が通電される。異常相がV相である場合には、U相にU相目標電流値Iu_tに相当する電流が通電され、W相にW相目標電流値Iw_tに相当する電流が通電される。異常相がW相である場合には、V相にV相目標電流値Iv_tに相当する電流が通電され、U相にU相目標電流値Iu_tに相当する電流が通電される。
【0084】
C.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、3相の巻線86u、86v、86wを有する3相交流式のモータ22と、モータ22の各巻線86u、86v、86wを励磁すべく通電するインバータ36(駆動回路)と、インバータ36を制御するECU50(駆動制御装置)と、3相のうちで異常が発生した相である異常相を検出する異常相特定機能102(異常相検出部)と、車速Vを検出する車速センサ30とを備える。ECU50は、異常相特定機能102により異常相が検出された場合に、異常相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちのいずれか1つ)に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電するようにインバータ36を制御する。その際、ECU50は、車速センサ30により検出される車速Vが高いほど、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電する電流値を小さくする。
【0085】
本実施形態によれば、異常相が検出された場合に、異常相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちのいずれか1つ)に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電し、その際に、車速Vが高いほど、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電する電流値を小さくする。このように、異常発生時通電制御において、運転者が操舵に違和感を覚える車両の高速走行時に操舵アシスト力を小さくするため、操舵に対する運転者の違和感を緩和することができる。また、車両の高速走行時に操舵アシスト力を小さくすることにより、車両を安定して走行させることができる。
【0086】
更に、ECU50は、車速センサ30により検出される車速Vが所定車速Vth以上である場合に、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対する通電を停止させるようにインバータ36を制御する。このように、運転者が操舵アシストに対して違和感を覚える車両の高速走行の場面で通電を停止して操舵アシスト力をゼロにするため、操舵に対する運転者の違和感を無くすことができる。
【0087】
また、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、舵角θsを検出する舵角センサ32を備える。そして、ECU50は、異常相特定機能102により異常相が検出された場合に、異常相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちのいずれか1つ)に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電するようにインバータ36を制御する。その際、ECU50は、舵角センサ32により検出される舵角θsがゼロを含む第1範囲θs1(所定範囲)内にあるときに舵角θsが第1範囲θs1外にあるときと比較して、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電する電流値を小さくする。
【0088】
本実施形態によれば、異常相が検出された場合に、異常相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちのいずれか1つ)に対する通電を停止すると共に異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電し、その際に、舵角θsがゼロを含む第1範囲θs1内にあるときに舵角θsが第1範囲θs1外にあるときと比較して、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対して通電する電流値を小さくする。このように、異常発生時通電制御において、運転者が操舵に違和感を覚える舵角中立点辺りで操舵アシスト力を小さくするため、操舵に対する運転者の違和感を緩和することができる。
【0089】
更に、ECU50は、舵角センサ32により検出される舵角θsが第1範囲θs1内にある場合に、異常相以外の2相の巻線(巻線86u、86v、86wのうちの2つ)に対する通電を停止させるようにインバータ36を制御する。このように、運転者が操舵アシストに対して違和感を覚える舵角中立点辺りで通電を停止して操舵アシスト力をゼロにするため、操舵に対する運転者の違和感を無くすことができる。
【0090】
また、ECU50は、マップ修正部146により、マップM毎に設定される修正範囲(電気角θの範囲)を、車速Vに応じて設定されるゲインG1で修正する。この際、マップMのうち、相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iが最大でない電気角θの範囲が修正範囲として設定される。このように、マップMを修正することにより、電流値の変動を抑制することができ、操舵アシスト力を安定させることができる。このため、操舵に対する運転者の違和感を無くすことができる。
【0091】
II.変形例
なお、上記B.5で説明した異常発生時通電制御では、電気角θと相指示電流値Iu_i、Iv_i、Iw_iとを対応付けたマップM(Mvw、Mwu、Muv)を用いているが、電気角θと相指示電圧値とを対応付けたマップMを使用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…電動パワーステアリング装置 22…モータ
30…車速センサ 36…インバータ(駆動回路)
42…レゾルバ 50…ECU(駆動制御装置)
86u、86v、86w…巻線
102…異常相特定機能(異常相検出部)
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